JP2015203553A - 旋回流型流動床炉及び炉床注水方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】移動層及び流動層の温度をより低温に適切に保つことができる旋回流型流動床炉及び炉床注水方法を提供する。【解決手段】本発明に係る旋回流型流動床炉10は、移動層22と流動層24とを炉本体11内に形成して廃棄物を処理する旋回流型流動床炉10であって、流動層24の上部に注水するように構成される注水部60を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、移動床と流動床とを形成して廃棄物を処理する旋回流型流動床炉及び炉床注水方法に関する。
未燃物の発生を抑制して廃棄物を処理する装置として流動床炉が知られている。流動床炉は、高温に熱した砂等の流動媒体中に投入された廃棄物の乾燥、熱分解及び燃焼を行う。
この流動床炉の一つとして、砂等の流動媒体に、その中央部よりも周辺部の質量速度が大きくなるように流動化気体を供給することで、炉内の中央部に流動媒体が沈降する移動層と、炉内の周辺部に流動媒体が活発に流動化する流動層を形成した、旋回流型流動床炉が知られている(例えば、特許文献1参照)。この旋回流型流動床炉では、移動層及び流動層に供給された流動化空気により、流動媒体が移動層を下降し周辺部の流動層底部に至り、次に流動層中を上昇し、流動層上部に設けられた傾斜壁(デフレクタ)により流動層上部から移動層上部に移動して、いわゆる旋回流(循環流)を形成する。
従来の旋回流型流動床炉では、流動媒体の循環流により炉床温度を均一に保つことが一般的であり、炉床温度の部分的な低下は流動不良の結果であると考えられていた。そこで、炉床温度が低下した部分に供給する流動化空気を増加させて、炉床温度差を解消する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
流動床炉の炉床温度を調節するためには炉床注水が行われていたが、炉床注水により供給される水が高熱の炉壁に接触すると、炉壁が急激な温度低下により損傷する恐れがある。このため、炉床注水を行うときは、炉壁に水が接触しないように、炉床の中央部、すなわち移動層に炉床注水が行われ、移動層と流動層とを流動媒体が旋回することで炉床全体の温度が均一に調節されていた。
ところで、近年、廃棄物の焼却等においては、排ガスによる持ち出し熱(排ガス損失)を低減して熱回収効率を向上させるために、低空気比で燃焼が行われる。しかしながら、流動床炉においては廃棄物の乾燥・ガス化が流動床内で比較的短時間に行われるので、流動床炉に投入される廃棄物の質や量が変動する。これに伴い、炉床で発生する水蒸気量や可燃ガス量が激しく変動するので、廃棄物の完全燃焼に必要な燃焼用空気の制御が困難であり、低空気比化にも自ずと限界があった。
そこで、移動層と流動層をそれぞれの最適な温度に制御することで、移動層で廃棄物の処理を緩慢に行い、流動層で適度に燃焼させて流動媒体を加熱して移動層の熱源とし、これにより、質や量が不均一な都市ごみ等の廃棄物でも燃焼を安定して行う流動床炉が知られている(特許文献3参照)。
この流動床炉においては、比較的少ない流動化空気が供給され流動媒体が流動しながら沈降する移動層に廃棄物が取り込まれて、流動媒体と共に移動層を沈降する間に廃棄物の乾燥・熱分解が行われ、熱分解ガスが揮発する。揮発した熱分解ガスの一部は移動層において燃焼し、残部は炉内のフリーボードで燃焼する。熱分解ガスが揮発して形成された熱分解残渣は、流動媒体の循環流により流動層に流入し、流動層中を流動媒体と共に上昇する間に、比較的多い流動化空気により燃焼して、流動媒体を加熱する。加熱された流動媒体は流動層上部に設けられた傾斜壁(デフレクタ)により流動層上部から移動層上部に循
環されて、移動層に熱を供給する。即ち、従来の旋回流型流動床炉では、比較的少ない流動化空気が供給される移動層で流動媒体の熱が廃棄物に伝わって廃棄物の乾燥・熱分解が行われ、比較的多い流動化空気が供給される流動層で熱分解残渣が燃焼して流動媒体を加熱するので、流動層は温度が高く維持され易いが、一方で、移動層の温度は低くなりがちである。
近年、不完全燃焼に伴って発生するダイオキシン等の有害物質への対策が厳しく求められている。質や量が不均一な都市ごみ等の廃棄物を焼却する場合には、焼却炉に供給される廃棄物の量や質の変動が大きいので、燃焼量の変動が大きく、燃焼に必要な酸素を流動床炉に適切に供給することが困難になる場合がある。このため、旋回流型流動床炉においても、流動床温度を低温に保持すると共に、流動空気量をできる限り減らして流動化を抑制して流動媒体から廃棄物への熱の伝達速度を減じることにより、流動床内での熱反応を緩やかに行わせて、変動を抑制するようにしている。流動化空気量を極力少なくし、流動層の温度を低温に維持するこの旋回流型流動床炉において、炉床温度制御用の炉床注水を、炉壁と接触しない炉床中央部の移動層に行うと、比較的低い温度に維持されている移動層の温度をより低下させるので、移動層での熱分解ガス生成量が減少する。この場合、熱分解ガス生成量が減少することにより、移動層内での熱分解ガスの燃焼量が減り、移動層の温度を所望の温度に維持することができなくなるという問題があった。移動層温度が極端に低下すると、流動層底部に流入する流動媒体温度も低下し、流動層での燃焼が行われにくくなる結果、流動層においても流動媒体の加熱を十分に行うことができなくなり、極端な場合には炉床全体の温度維持ができなくなるという問題があり、炉床温度を低温化するにも限界があった。
特開昭57−124608号公報 特開2007−113880号公報(段落0011−0013等) 国際公開2012/066802
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動層及び流動層の温度をより低温に適切に保つことができる旋回流型流動床炉及び炉床注水方法を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明の第1形態に係る旋回流型流動床炉は、移動層と流動層とを炉本体内に形成して廃棄物を処理する旋回流型流動床炉であって、前記流動層に注水するように構成される注水部を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第2形態に係る旋回流型流動床炉は、第1形態に係る旋回流型流動床炉において、前記注水部が、水及び空気を前記流動層に供給する注水ノズルを有し、前記注水ノズルの先端が、前記流動層内部に配置される。
上記目的を達成するため、本発明の第3形態に係る旋回流型流動床炉は、第2形態に係る旋回流型流動床炉において、前記注水ノズルから前記流動層に供給される空気が、前記流動層に流動化空気が供給されている間は常時供給される。
上記目的を達成するため、本発明の第4形態に係る旋回流型流動床炉は、第2形態又は第3形態に係る旋回流型流動床炉において、前記注水ノズルの先端が、前記炉本体の壁か
ら100mm以上離間して配置される。
上記目的を達成するため、本発明の第5形態に係る旋回流型流動床炉は、第2形態ないし第4形態のいずれかに係る旋回流型流動床炉において、前記流動層を支持する流動床板を有し、前記注水ノズルの先端が、前記流動床板の上方に位置する。
上記目的を達成するため、本発明の第6形態に係る旋回流型流動床炉は、第2形態ないし第5形態のいずれかに係る旋回流型流動床炉において、前記注水部が、前記注水ノズルの外側に設けられたノズルケースを有する。
上記目的を達成するため、本発明の第7形態に係る旋回流型流動床炉は、第6形態に係る旋回流型流動床炉において、前記ノズルケースが、前記注水ノズルと前記ノズルケースとの隙間に空気を供給するための空気供給口を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第8形態に係る旋回流型流動床炉は、第7形態に係る旋回流型流動床炉において、前記空気供給口から供給される空気が、前記流動層に流動化空気が供給されている間は常時供給される。
上記目的を達成するため、本発明の第9形態に係る旋回流型流動床炉は、第6形態ないし第8形態のいずれかに係る旋回流型流動床炉において、流動層を旋回させるデフレクタを有し、前記デフレクタが、前記流動層に連通する貫通孔と、前記貫通孔に設けられた取付座を有し、前記注水ノズル及び前記ノズルケースが、前記貫通孔に挿入され、前記取付座に対して固定される。
上記目的を達成するため、本発明の第10形態に係る旋回流型流動床炉は、第6形態ないし第9形態のいずれかに係る旋回流型流動床炉において、前記注水ノズルの先端が、前記ノズルケースの外部に配置される。
上記目的を達成するため、本発明の第11形態に係る炉床注水方法は、移動層と流動層とを炉本体内に形成して廃棄物を処理する旋回流型流動床炉に炉床注水する方法であって、前記流動層に注水する工程を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第12形態に係る炉床注水方法は、第11形態に係る炉床注水方法において、水及び空気を前記流動層に供給する注水ノズルを、前記注水ノズルの先端が前記流動層内部に位置するように配置する配置工程を有し、前記流動層に注水する工程は、前記注水ノズルから水及び空気を前記流動層に供給する工程を含む。
上記目的を達成するため、本発明の第13形態に係る炉床注水方法は、第12形態に係る炉床注水方法において、前記流動層に流動化空気が供給されている間は、前記注水ノズルから空気を前記流動層に常時供給する工程を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第14形態に係る炉床注水方法は、第12形態又は第13形態に係る炉床注水方法において、前記配置工程が、前記注水ノズルの先端を前記炉本体の壁から100mm以上離間して配置する工程を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第15形態に係る炉床注水方法は、第12形態ないし第14形態のいずれかに係る炉床注水方法において、前記配置工程が、前記注水ノズルの先端を、前記流動層を支持する流動床板の上方に位置するように配置する工程を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第16形態に係る炉床注水方法は、第12形態ないし第15形態のいずれかに係る炉床注水方法において、前記注水ノズルと前記注水ノズルの外側に設けられたノズルケースとの隙間に空気を供給する工程を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第17形態に係る炉床注水方法は、第16形態に係る炉床注水方法において、前記流動層に流動化空気が供給されている間は、前記注水ノズルと前記ノズルケースとの隙間に空気を常時供給する工程を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第18形態に係る炉床注水方法は、第12形態ないし第17形態のいずれかに係る炉床注水方法において、前記配置工程が、前記注水ノズルと前記注水ノズルの外側に設けられたノズルケースを、前記炉本体のデフレクタに設けられた貫通孔に挿入する工程と、前記注水ノズル及び前記ノズルケースを、前記貫通孔に設けられた取付座に対して固定する工程を有する。
上記目的を達成するため、本発明の第19形態に係る炉床注水方法は、第12形態ないし第18形態のいずれかに係る炉床注水方法において、前記配置工程が、前記注水ノズルの先端を前記注水ノズルの外側に設けられたノズルケースの外部に配置する工程を有する。
本発明によれば、移動層及び流動層の温度をより低温に適切に保つことができる旋回流型流動床炉及び炉床注水方法を提供することができる。
第1実施形態に係る旋回流型流動床炉の概略縦断正面図である。 注水部の拡大断面図である。 第2実施形態に係る旋回流型流動床炉の概略縦断正面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一のまたは相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る旋回流型流動床炉の概略縦断正面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る旋回流型流動床炉10は、廃棄物Wを処理する炉本体11を有する。炉本体11内には、砂等の流動媒体からなる流動床20が形成される。流動床20は、流動化空気により流動する。これにより、流動床20の中央部には、流動媒体が流動しながら上方から下方に移動する移動層22が形成され、流動床20の両側部には、流動媒体が流動しながら下方から上方に移動する流動層24が形成される。
旋回流型流動床炉10は、さらに、移動層22に空気を供給するための移動層風箱32と、流動層24に空気を供給するための第1流動層風箱34及び第2流動層風箱36と、移動層22の温度を測定する移動層温度計52と、流動層24の温度を測定する2つの流動層温度計54と、移動層風箱36に流動化及び燃焼を目的とした気体(例えば、空気)を供給する移動層気体供給手段42と、第1流動層風箱34に流動化及び燃焼を目的とした気体を供給する第1流動層気体供給手段44と、第2流動層風箱36に流動化及び燃焼を目的とした気体を供給する第2流動層気体供給手段46と、炉本体11の壁面に設けられた一対の注水部60と、を有する。注水部60は図1の奥行き方向の長さに応じて複数対設けてもよい。この場合には注水部60の奥行き方向の間隔を500mm以上として配置するのがよい。
炉本体11は、その両側壁に炉本体11の幅を縮小するように形成されたくぼみ部12を有する。くぼみ部12は、炉本体11の側壁が下方から上方に向かって炉本体11の内部方向に傾斜した傾斜壁12a(デフレクタ)と、傾斜壁12aの上端に設けられて下方から上方に向かって外側に広がるように傾斜した拡張壁12bとから構成される。また、炉本体11内部には、移動層22及び流動層24の上部空間であるフリーボード17が形成される。
炉本体11は、廃棄物Wを供給するための投入口15と、廃棄物Wを熱反応させた際に生じる可燃ガス等を排出する排気口16と、廃棄物Wに含まれる不燃物を抜き出す一対の不燃物流路18a,18bとを有する。投入口15は、拡張壁12bの上端よりも上方の壁面に設けられ、投入された廃棄物Wが流動床20上に落下するように廃棄物Wを案内する。排気口16は炉本体11の上部に形成され、炉内で生成した燃焼排ガス等を外部に排気する。不燃物流路18a,18bは、それぞれ傾斜壁12aの下部に下向きに伸びるように形成される。なお、投入口15の位置は、廃棄物Wを流動床20の中央の移動層22上部に落下するように案内できれば、本第1実施形態の位置に特定されるものではない。つまり、炉本体11の側壁周囲で自在な位置に投入口15を設けることができる。
移動層風箱32は、不燃物流路18a,18bの間の炉本体10の底部中央に配置され、その両側に第1流動層風箱34及び第2流動層風箱36が配置される。移動層風箱32の上面には、移動層22を支持する移動床板32aが形成される。また、第1流動層風箱34及び第2流動層風箱36の上面には、それぞれ、流動層24を支持する第1流動床板3(流動床板)4a及び第2流動床板36a(流動床板)が形成される。
移動床板32aは、中央が高く、両側縁に向かうにつれ徐々に低く形成された山形状をなすように形成される。第1流動床板34a及び第2流動床板36aは、山形状の移動床板32aの端部を延長するように、移動床板32aと略同一の傾斜角度で傾斜して形成される。移動床板32a、第1流動床板34a、及び第2流動床板36aには、それぞれの風箱に供給された空気を炉内に噴出するための図示しない散気ノズルが設けられる。
移動層気体供給手段42、第1流動層気体供給手段44、及び第2流動層気体供給手段46は、図示しない調節弁を有する。この調節弁の開度を調節することで、移動層風箱32、第1流動層風箱34、及び第2流動層風箱36に供給する空気流量が調節される。
この旋回流型流動床炉10で廃棄物Wを燃焼させるときは、まず、廃棄物Wが投入口15から移動層22に供給される。このとき、移動層気体供給手段42は、移動床板32aに配置された図示しない散気ノズルから移動層22に比較的小さな流動化速度を与えるように流動化空気を供給する。一方で、第1流動層気体供給手段44及び第2流動層気体供給手段46は、第1流動床板34a及び第2流動床板36aに配置された図示しない散気ノズルから流動層24に比較的大きな流動化速度を与えるように流動化空気を供給する。これにより、流動媒体が比較的ゆっくりした速度で流動しながら上方から下方に移動する移動層22が移動床板32aの上方に形成され、流動媒体が流動しながら下方から上方に移動する流動層24が第1流動床板34a及び第2流動床板36aの上方に形成される。
したがって、流動床20の下部では、移動床板32a、第1流動床板34a、及び第2流動床板36aの傾斜により、流動媒体が移動層22から流動層24へ移動する。一方で、流動床20の上部では、傾斜壁12bがデフレクタとして機能し、流動媒体が流動層24から移動層22へ移動する。これにより、移動層22と流動層24との間を流動媒体が循環する循環流(旋回流)が、流動床20の左右に形成される。
移動層22に供給された廃棄物Wは、流動媒体内に取り込まれて、流動媒体と共に移動層22内を下方に移動する。このとき、供給された廃棄物Wは流動媒体の熱によって乾燥・熱分解されて廃棄物W中の可燃分から可燃ガス等が発生する。その結果、脆い熱分解残渣が生成される。熱分解残渣は、典型的には、不燃物、及び熱分解によって脆くなった未燃物(チャー)を含んでいる。移動層22で生成される熱分解残渣は、流動媒体の流動に従って移動床板32aに至ると、傾斜した移動床板32aに沿って流動層24に向かう。流動層24に至った熱分解残渣は激しく流動する流動媒体と接触して、未燃物が熱分解残渣から剥離する。未燃物が熱分解残渣から剥離することで残った不燃物は、一部の流動媒体と共に不燃物流路18a,18bから排出される。
一方、熱分解残渣から剥離した未燃物は、流動媒体と共に、流動層24内を上方に移動する。このとき、未燃物は、供給された流動化空気によって燃焼し、流動媒体を加熱しつつ燃焼排ガス、可燃ガス等を発生する。これにより、未燃物は微細な未燃物及び灰分粒子となる。流動層24の上部に移動した高温の流動媒体は、デフレクタ12aで反転されて移動層22に流入する。流動層24において、流動媒体の温度を、廃棄物Wの熱分解を適切に行うことができる温度まで上昇させる。移動層22に流入した流動媒体は、再び廃棄物Wを受け入れて、上述した移動層22及び流動層24における熱反応を繰り返す。
ここで、廃棄物Wが都市ごみ等の質や量が不均一な廃棄物である場合には、旋回流型流動床炉10に供給される廃棄物Wの質や量の変動が大きいので、燃焼量の変動が大きく、燃焼に必要な酸素を流動床20に適切に供給することが困難になる恐れがある。そこで、本実施形態に係る旋回流型流動床炉10では、流動層24で未燃分を燃焼させて流動媒体を加熱して適切な温度に維持して移動層22の熱源とし、移動層22で廃棄物Wの処理を緩慢に行うことで、都市ごみ等の質や量が不均一な廃棄物Wでも燃焼を安定して行うことができる。
本実施形態に係る旋回流型流動床炉10では、流動床20内での廃棄物Wの乾燥及び熱分解を緩やかに行うために、移動層22の温度が例えば500℃以上560℃以下となるように移動層気体供給手段42が制御され、流動層24の温度が例えば520℃以上580℃以下となるように第1流動層気体供給手段44及び第2流動層気体供給手段46が制御される。
なお、本第1実施形態では、移動層風箱32を1つとしているが、旋回流型流動床炉10の処理能力が大きい場合には、移動層風箱32を中央で2つに分割してもよい。その場合、それぞれの移動層風箱32に対応させて、移動層温度計52を分割したそれぞれの移動層風箱32の上方に2つ設置して、それぞれの移動層22の温度に応じてそれぞれの移動層風箱32への供給空気量を調節し、それぞれの移動層22の温度を目標温度に維持させる。
また、移動層22及び流動層24の温度を上記のように低い温度範囲に制御するために、移動層気体供給手段42、第1流動層気体供給手段44、及び第2流動層気体供給手段46を制御するだけでなく、炉床注水が行われる場合がある。しかしながら、温度が比較的低い移動層22に炉床注水が行われると、移動層22の温度が極端に低下し、回復が困難となることがあった。このため、本実施形態に係る旋回流型流動床炉10は、傾斜壁12aに注水部60が設けられ、注水部60により流動層24に炉床注水を行うようにする。これにより、移動層に流入する流動媒体の温度を所定の温度範囲に制御できるので、移動層22の温度の極端な低下を防止して、結果として移動層22及び流動層24の温度をより低温に適切に維持することができる。
図2は、図1に示した注水部60の拡大断面図である。なお、図1に示したように、注水部60は一対の傾斜壁12aにそれぞれが左右対称になるように一対設けられているが、ともに同じ構造であるので一方の説明を省略する。なお、本実施形態において、「先端側」は炉本体11の内部側、即ち流動層24に位置する側をいい、「後端側」は炉本体11の外部側をいう。
図2に示すように、注水部60は、水及び空気を流動層24に供給するための炉床注水ノズル61と、炉床注水ノズル61の外側に設けられたノズルケース62とを有する。炉床注水ノズル61は管状のノズルであり、取り付け用のフランジ69を有し、図示しない流体供給手段により、その内腔に水及び空気、又は空気のみが供給される。流動層24に流動化空気が供給されている間は炉床注水ノズル61には常時空気が供給されるように構成され、炉床注水ノズル61に流動媒体が入り込むことを防止するとともに、炉床注水ノズル61を冷却保護している。炉床注水ノズル61に供給する空気量はノズル噴出流速を10m/sec以上とするのがよい。噴出流速がそれ以下の場合には、炉床注水が速やかに流動層24内に拡散しにくく、また、ノズルの冷却効果が小さく、流動媒体がノズル内に入り込むためである。1本のノズルからの注水量は1000l/h以下とするのがよい。1本のノズルからの注水量がそれ以上になると流動層24のノズル周囲温度が極端に低下し、注水が蒸発しきらなくなるからである。
ノズルケース62は、炉床注水ノズル61の外径よりも大きい内径を有する管状のケースである。炉床注水ノズル61及びノズルケース62は、取り付け用のフランジを除いて、例えばSUS304又はSUS316等の金属で形成される。
傾斜壁12aは、炉本体11外部から流動層24に連通する貫通孔63と、貫通孔63に設けられた管状の取付座64とを有する。取付座64は、その外周面が貫通孔63の内周に密着されており、その先端側は、傾斜壁12aの内面と面一となるように配置される。取付座64の後端側には、フランジ65が形成される。
また、ノズルケース62の後端側の端部には、注水ノズル61のフランジ69を取り付けるためのフランジ68が設けられている。炉床注水ノズル61は、ノズルケース62の内腔に配置され、ノズルケース内の略中心に位置させるように図示しないスペーサを設けてもよい。炉床注水ノズル61の先端はノズルケース62の先端から突出するように形成される。即ち、炉床注水ノズル61の先端は、ノズルケース62の外部に配置される。
ノズルケース62は、その長手方向略中央部の外周面に、取付座64のフランジ65に固定される固定フランジ66を有する。ノズルケース62及び炉床注水ノズル61は、傾斜壁12aの貫通孔63、即ち取付座64の内部に挿入される。ノズルケース62の固定フランジ66がフランジ65に密に固定されることで、ノズルケース62及び炉床注水ノズル61は、取付座64に対して固定される。ノズルケース62及び炉床注水ノズル61が取付座64に対して固定されることで、炉床注水ノズル61の先端が流動層24内部に配置される。
炉床注水ノズル61の先端は、炉本体11の壁から100mm以上離間するように配置される。なお、炉床注水ノズル61の先端が炉本体11の壁から100mm未満の距離に位置する場合、炉床注水ノズル61から供給された水が炉本体11の高温の炉壁に接触し、急激な温度低下により炉壁が損傷する恐れがある。
また、炉床注水ノズル61の先端は、図1に示した第1流動床板34又は第2流動床板36の上方に位置する。言い換えると、平面図上で炉床注水ノズル61の先端が、第1流動床板34又は第2流動床板36の面積領域と重なる位置に配置される。これにより、炉
床注水ノズル61の先端は、第1流動床板34又は第2流動床板36の上方に位置する流動層24に確実に位置することとなり、流動層24の上部に確実に注水を行うことができる。
取付座64に固定されたノズルケース62の後端側の外周には、ノズルケース62の管内に連通する空気供給口67(空気供給部)が設けられる。空気供給口67は、図示しない空気供給手段により空気が供給されることで、炉床注水ノズル61とノズルケース62との隙間にパージ空気を供給する。空気供給口67には、流動層24に流動化空気が供給されている間は常時空気が供給されるように構成される。これにより、炉床注水ノズル61とノズルケース62との隙間に流動媒体が入り込むことを防止するとともに、炉床注水ノズル61を冷却保護している。
次に、図2に示した注水部60により流動層24に注水するプロセスを説明する。
図1に示した移動層22の温度及び流動層24の温度は、移動層温度計52及び流動層温度計54により常時連続的に計測される。計測された温度に基づいて、移動層22及び流動層24へ供給される流動化空気量が調節される。流動化空気を調節しても、流動層24の温度が所定の温度を超える場合に、注水部60から炉床注水が行われる。
図2に示した注水部60から、流動層24に炉床注水を行うときは、図示しない流体供給手段により炉床注水ノズル61から、水と空気が流動層24に供給される。流動層24に供給された水は、高熱の流動層24により蒸発するとともに、流動層24の温度を低下させることができる。流動層24の温度が所定の温度以下になると、炉床注水ノズル61から供給される水が停止し、空気のみが供給される。即ち、炉床注水ノズル61から流動層24に供給される空気は、流動層24に流動化空気が供給されている間は常時供給される。なお、このとき炉床注水ノズル61から流動層24に供給される空気の流速は、例えば0℃条件で約10m/sである。
また、流動層24に流動化空気が供給されている間は、炉床注水ノズル61とノズルケース62との隙間に、空気供給口67からパージ空気が常時供給される。なお、このときのパージ空気の流速は、例えば0℃条件で約15m/sであり、パージ空気流量は、炉床注水ノズル61の外径が21.7mmでノズルケース62の内径が52.9mmの場合は例えば99.0m(NTP)/h、炉床注水ノズル61の外径が21.7mmでノズルケース62の内径が41.6mmの場合は例えば53.0m(NTP)/hである。
なお、第1実施形態において、第1流動層空気供給手段44又は第2流動層気体供給手段46からの流動化空気の一部を分岐して、空気供給口67に供給してもよい。この場合、流動層24を流動させているときは必ず空気供給口67からパージ空気を供給することができる。一方で、空気供給口67に空気を供給する別の空気供給手段を設けてもよい。
また、炉床注水ノズル61が流動媒体から受ける抵抗に耐えうる強度を有している場合は、ノズルケース62は設けなくともよい。この場合は、炉床注水ノズル61のフランジ69を取付座64のフランジ65に固定し、ノズル取り付け座64の後端側の外周にノズル取り付け座の管内に連通する図示しない空気供給口(空気供給部)を設けるのがよい。
以上で説明したように、第1実施形態に係る旋回流型流動床炉10は、流動層24に注水するように構成される注水部60を有するので、移動層22の温度を極端に低下させることなく所定温度に維持しながら、流動層24の温度を低下させることができ、移動層22及び流動層24の温度をより低温に適切に保つことができる。また、流動床内で最も温度の高い流動層24の上部に注水して、流動床の最高温度を制御するため、流動層24及び移動層22を流動媒体が旋回することにより、流動層24の温度および移動層22の温度を可能な限り低下させ、安定して低温を維持することができる。
第1実施形態に係る旋回流型流動床炉は、水及び空気を流動層24に供給する炉床注水ノズル61を有し、炉床注水ノズル61の先端が流動層24内部に配置されるので、流動層24の上部に確実に注水することができる。
また、炉床注水ノズル61から流動層24に供給される空気は、流動層24に流動化空気が供給されている間は常時供給される。これにより、流動層24を構成する流動媒体が炉床注水ノズル61内部に入り込むことを防止して炉床注水ノズル61を冷却保護し、炉床注水ノズル61から炉床注水したときに炉床注水ノズル61の内部で水が蒸発することを防止することができ、水の蒸発により生じる急激な圧力変化によって炉床注水ノズル61が損傷することを防止することができる。
注水部60は、炉床注水ノズル61の外側に設けられたノズルケース62を有するので、流動層24の流動媒体からの抵抗により炉床注水ノズル61が屈折又は湾曲することを防止することができる。
また、ノズルケース62は、炉床注水ノズル61とノズルケース62との隙間に空気を供給するための空気供給口67を有する。空気供給口67から供給される空気は、流動層24に流動化空気が供給されている間は常時供給される。これにより、流動像24の流動媒体が、炉床注水ノズル61とノズルケース62との隙間に入り込むことを防止し、炉床注水ノズル61から炉床注水したときにノズルケース62の内部で水が蒸発することを防止することができ、水の蒸発により生じる急激な圧力変化によってノズルケース62及び炉床注水ノズル61が損傷することを防止することができる。
傾斜壁12a(デフレクタ)が、流動層24に連通する貫通孔63と、貫通孔63に設けられた取付座64を有し、炉床注水ノズル61及びノズルケース62が、貫通孔63に挿入され、取付座64に対して固定される。これにより、傾斜壁12aの内側に位置する流動層24に、炉床注水ノズル61の先端を位置させることができ、流動層24の上部に確実に注水することができる。
炉床注水ノズル61の先端は、炉本体11の壁から100mm以上離間して配置されるので、炉床注水ノズル61からの水が高熱の炉壁に接触することを防止でき、炉壁の急激な温度低下により損傷を防止することができる。
炉床注水ノズル61の先端が、ノズルケース62の外部に配置される、即ち、ノズルケース62の先端から出るように配置される。これにより、炉床注水ノズル61から流動層24に確実に炉床注水することができ、注水が高温の炉壁に接触することを防止でき、炉壁の急激な温度低下により損傷を防止することができる。
また、炉床注水ノズル61の先端が、第1流動床板34又は第2流動床板36の上方に位置するので、炉床注水ノズル61の先端が第1流動床板34又は第2流動床板36の上方に位置する流動層24内に確実に位置することとなり、流動層24の上部に確実に注水を行うことができる。
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係る旋回流型流動床炉の概略縦断正面図である。
図3に示すように、第2実施形態に係る旋回流型流動床炉10は、第1実施形態に比べて、炉本体11の正面視で右半分のみから構成されている点が異なる。即ち、第2実施形態に係る旋回流型流動床炉10は、第1流動層風箱34、第1流動層気体供給手段44及び不燃物流路18aを備えておらず、注水部60、移動層温度計52及び流動層温度計5
4がそれぞれ一つずつ設けられている。
また、第2実施形態の旋回流型流動床炉10の炉本体11は、その一側壁のみにくぼみ部12を有する。炉本体11のくぼみ部12が形成された側と逆側の側壁は、かかるくぼみが形成されておらず平板状に構成される。また、廃棄物Wを炉本体11に供給するための投入口15は、炉本体11のくぼみ部12が形成された側と逆側の側壁に設けられ、投入された廃棄物Wを移動層22の上部に案内する。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
第2実施形態に係る旋回流型流動床炉10は、第1実施形態に係る旋回流型流動床炉において説明した発明の効果と同様の効果を有する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
10…旋回流型流動床炉
11…炉本体
12a…傾斜壁
22…移動層
24…流動層
34a…第1流動床板
36a…第2流動床板
60…注水部
61…炉床注水ノズル
62…ノズルケース
63…貫通孔
64…取付座
67…空気供給口

Claims (19)

  1. 移動層と流動層とを炉本体内に形成して廃棄物を処理する旋回流型流動床炉であって、
    前記流動層に注水するように構成される注水部を有する、旋回流型流動床炉。
  2. 前記注水部は、水及び空気を前記流動層に供給する注水ノズルを有し、
    前記注水ノズルの先端は、前記流動層内部に配置される、請求項1に記載された旋回流型流動床炉。
  3. 前記注水ノズルから前記流動層に供給される空気は、前記流動層に流動化空気が供給されている間は常時供給される、請求項2に記載された旋回流型流動床炉。
  4. 前記注水ノズルの先端は、前記炉本体の壁から100mm以上離間して配置される、請求項2又は3に記載された旋回流型流動床炉。
  5. 前記流動層を支持する流動床板を有し、
    前記注水ノズルの先端は、前記流動床板の上方に位置する、請求項2ないし4のいずれか一項に記載された旋回流型流動床炉。
  6. 前記注水部は、前記注水ノズルの外側に設けられたノズルケースを有する、請求項2ないし5のいずれか一項に記載された旋回流型流動床炉。
  7. 前記ノズルケースは、前記注水ノズルと前記ノズルケースとの隙間に空気を供給するための空気供給口を有する、請求項6に記載された旋回流型流動床炉。
  8. 前記空気供給口から供給される空気は、前記流動層に流動化空気が供給されている間は常時供給される、請求項7に記載された旋回流型流動床炉。
  9. 流動層を旋回させるデフレクタを有し、
    前記デフレクタは、前記流動層に連通する貫通孔と、前記貫通孔に設けられた取付座を有し、
    前記注水ノズル及び前記ノズルケースは、前記貫通孔に挿入され、前記取付座に対して固定される、請求項6ないし8のいずれか一項に記載された旋回流型流動床炉。
  10. 前記注水ノズルの先端は、前記ノズルケースの外部に配置される、請求項6ないし9のいずれか一項に記載された旋回流型流動床炉。
  11. 移動層と流動層とを炉本体内に形成して廃棄物を処理する旋回流型流動床炉に炉床注水する方法であって、
    前記流動層に注水する工程を有する、炉床注水方法。
  12. 水及び空気を前記流動層に供給する注水ノズルを、前記注水ノズルの先端が前記流動層内部に位置するように配置する配置工程を有し、
    前記流動層に注水する工程は、前記注水ノズルから水及び空気を前記流動層に供給する工程を含む、請求項11に記載された炉床注水方法。
  13. 前記流動層に流動化空気が供給されている間は、前記注水ノズルから空気を前記流動層に常時供給する工程を有する、請求項12に記載された炉床注水方法。
  14. 前記配置工程は、前記注水ノズルの先端を前記炉本体の壁から100mm以上離間して
    配置する工程を有する、請求項12又は13に記載された炉床注水方法。
  15. 前記配置工程は、前記注水ノズルの先端を、前記流動層を支持する流動床板の上方に位置するように配置する工程を有する、請求項12ないし14のいずれか一項に記載された旋回流型流動床炉。
  16. 前記注水ノズルと前記注水ノズルの外側に設けられたノズルケースとの隙間に空気を供給する工程を有する、請求項12ないし15のいずれか一項に記載された炉床注水方法。
  17. 前記流動層に流動化空気が供給されている間は、前記注水ノズルと前記ノズルケースとの隙間に空気を常時供給する工程を有する、請求項16に記載された炉床注水方法。
  18. 前記配置工程は、前記注水ノズルと前記注水ノズルの外側に設けられたノズルケースを、前記炉本体のデフレクタに設けられた貫通孔に挿入する工程と、前記注水ノズル及び前記ノズルケースを、前記貫通孔に設けられた取付座に対して固定する工程を有する、請求項12ないし17のいずれか一項に記載された炉床注水方法。
  19. 前記配置工程は、前記注水ノズルの先端を前記注水ノズルの外側に設けられたノズルケースの外部に配置する工程を有する、請求項12ないし18のいずれか一項に記載された炉床注水方法。
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