JP2015201566A - 結晶配向圧電セラミックス、その製造方法、及び積層型圧電素子 - Google Patents

結晶配向圧電セラミックス、その製造方法、及び積層型圧電素子 Download PDF

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【課題】セラミックス層と電極層の層間の剥離を抑制できる結晶配向圧電セラミックスの製造方法を提供する。【解決手段】結晶配向圧電セラミックスの製造方法は、ペロブスカイト型化合物からなる板状結晶粉末を用意し、板状結晶粉末に添加原料材を混合する工程S11、混合物を板状結晶粉末が配向した配向性成形体とする工程S12、配向性成形体を、酸素分圧が1?10−10kPa超の雰囲気下で予備焼成する工程S13、予備焼成よりも、低い酸素分圧および/または高い温度で本焼成することで、板状結晶粉末を粒成長させて配向結晶を形成する工程S14、本焼成した焼成体を、酸素分圧が1?10−4kPa超の酸化性雰囲気下において本焼成の温度よりも低い温度で再酸化する工程S15からなる。【選択図】図7

Description

本発明は、多結晶体で結晶面が配向した、ペロブスカイト型化合物の結晶配向圧電セラミックス、その製造方法、及び積層型圧電体素子に関する。
最近、環境保全に対する意識の高まりからPb、Hg、Cd、Cr6+などの重金属有害元素を排除する傾向が高まり、欧州を中心に使用禁止令(RoHS指令)が発令され施行されている。電子材料の高機能化に重要な役割を果たす原材料の酸化鉛(PbO)も、廃棄処理問題に関して環境問題が懸念されることから、その対象となっている。
ところで、広くエレクトロニクス・メカトロニクス・自動車等の分野で実用化されている圧電デバイスを構成する圧電材料は、セラミックスを中心として、単結晶や厚膜・薄膜等の多種多様の材料が開発されている。その圧電セラミックスは、Pb系ペロブスカイト型強誘電体セラミックスで、その主流はPbZrO−PbTiO(PZT)であり主成分として多量の酸化鉛を含んでいるため、廃棄処理に関して問題を抱えている。
この様な状況に鑑み、環境に配慮した鉛を含まない非鉛圧電材料の研究は急務かつ、必要不可欠であると考えられ、現在のPZT系圧電セラミックスの性能に匹敵する高性能な非鉛系圧電セラミックスの研究開発が世界的な関心を集めている。
非鉛圧電材料は例えば図11に示すような積層型圧電素子に使用される。積層型圧電素子は、非鉛圧電材料をベースとしたセラミックス層11と、電極層12を交互に積層させた構造を有する。
例えば特許文献1は、非鉛のニオブ酸アルカリ化合物を含有した積層型圧電素子について記載されている。また、電極の材質により酸素分圧を調整すべき点が開示されている(段落番号(0013)、(0014)、(0096)参照)。
特許文献2は、基本的には鉛入りの組成を対象としているが、焼成時の雰囲気として酸素分圧に関して考慮され、所定組成の磁器組成物粉末を含む圧電セラミックス層前駆体と卑金属を導電材料として含む内部電極前駆体とが積層された積層体を酸素分圧が10-6〜10-9atmの還元性雰囲気下で焼成することが開示されている(請求項1,2参照)。上記範囲の酸素分圧で積層体を焼成することで、卑金属を用いた内部電極の酸化を防止又は抑制できることが記載されている(段落番号(0027)参照)。
また非鉛系には限らないが、圧電セラミックスは大きな圧電定数d33(33方向の電界当たりの機械的変位割合)を持つものが求められる。
比較的高い圧電定数d33を有する多結晶のセラミックスとして、従来の配向させない圧電セラミックスに対して、結晶を配向させた圧電セラミックス(以下、結晶配向圧電セラミックスという)が注目されている。
例えば特許文献3には、一般式:ABOで表されるペロブスカイト型化合物であって、Aサイト元素の主成分がK及び/又はNaであり、Bサイト元素の主成分がNb、Sb及び/又はTaである第1のペロブスカイト型5価金属酸アルカリ化合物を主相とする多結晶体からなり、かつ、該多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面が配向した結晶配向圧電セラミックスが記載されている。
また、特許文献3の実施例には、この結晶配向圧電セラミックスを、まず板状、柱状、鱗片状等の粉末(以下、板状結晶粉末という)を製造し、板状結晶粉末と他の原料を混合し、板状結晶粉末を配向するように成形し、焼成して板状結晶粉末の結晶方位に沿って他の原料を成長させることで得られることが記載されている。
特開2006−108652号公報 特開2006−100598号公報 特開2003−12373号公報
結晶配向圧電セラミックスは、断面を観察すると、それぞれの結晶方位が揃った複数の配向結晶(結晶方位は<100>)が存在する。配向結晶は板状結晶粉末が粒成長したものである。配向結晶は板の厚さ方向<100>の方向に結晶方位が存在する。この配向結晶の体積率が増えることで、高い圧電定数d33を有する結晶配向圧電セラミックスとなる。
本発明者らは以下の課題を知見した。つまり、積層型圧電素子のセラミックス層にこの結晶配向圧電セラミックスを用いると、配向結晶が結晶成長しすぎて、45μmを超えてしまう。配向結晶が45μmを超えると、積層圧電素子とする際にセラミックス層と電極層の層間が剥離しやすくなってしまう。
また、局部的に結晶配向した部分が増えることで安定した圧電特性を得ることが難しくなったり、焼結体の強度が低くなったり、分極処理が難しくなって高い圧電定数d33が得られないという問題もある。
本発明は、上記課題を解決し、セラミックス層と電極層の層間の剥離を抑制できる結晶配向圧電セラミックスの製造方法、それにより得られる結晶配向圧電セラミックスおよび積層型圧電素子を提供することを目的とする。
本発明の結晶配向圧電セラミックスの製造方法は、下記(1)〜(5)の工程により製造するものである。(1):A1及びB1(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含む)を含み、ペロブスカイト型化合物からなる板状結晶粉末を用意する工程。(2):前記板状結晶粉末に添加原料材を混合して、全体として、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、0.05<s≦0.15)で表される組成の混合物とする工程。(3):前記混合物を板状結晶粉末が配向した配向性成形体とする工程。(4):前記配向性成形体を、酸素分圧が1×10−10kPa超の雰囲気下で予備焼成し、その後、前記予備焼成よりも、低い酸素分圧および/または高い温度で本焼成することで、板状結晶粉末を粒成長させて配向結晶を形成する工程。(5):前記本焼成した焼成体を、酸素分圧が1×10−4kPa超の酸化性雰囲気下において前記本焼成の温度よりも低い温度で再酸化する工程。 前記予備焼成を、酸素分圧が1×10−4kPa以上の酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。 また、前記板状結晶粉末を、前記一般式における混合物において、0.5mol%以上10mol%以下とすることが好ましい。
上記製造方法により得られる本発明の結晶配向圧電セラミックスは、非鉛でペロブスカイト型化合物である結晶配向圧電セラミックスであって、 前記ペロブスカイト型化合物は、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、0.05<s≦0.15)で表され、 前記結晶配向圧電セラミックスは、結晶方位が揃った複数の配向結晶が存在し、 前記配向結晶の平均結晶粒径が45μm以下であることを特徴とする。 圧電定数d33が250pC/N以上のものを得ることができる。 この結晶配向圧電セラミックスからなるセラミックス層と電極層を交互に積層して積層型圧電素子とすることができる。
本発明によれば、セラミックス層と電極層の層間の剥離を抑制できる結晶配向圧電セラミックスの製造方法を提供できた。
この結晶配向圧電セラミックスを用いて積層型圧電素子とすることで、各セラミックス層がそれぞれ圧電材として確実に動作するので、安定した特性を持つものが製造できる。
また、上記製造方法により得られた本発明の結晶配向圧電セラミックスは、別の効果として、安定した圧電特性を得ることができる。また、焼結体の強度を高めることができる。また、分極が容易となるので高い圧電定数が得られる。
本発明の結晶配向圧電セラミックスの断面SEM観察写真(200倍)である。 比較例の結晶配向圧電セラミックスの断面SEM観察写真(200倍)である。 本発明の製造方法の工程(板状結晶粉末の作製まで)の一例を示す図である。 本発明の製造方法に用いる第1結晶粉末のSEM観察写真(500倍)である。 本発明の製造方法に用いる第1結晶粉末のX線回折結果を示す図である。 本発明の製造方法に用いる第1結晶粉末の組成の詳細を示す図である。 本発明の製造方法の工程(図3の工程以降)の一例を示す図である。 本発明の製造方法に用いる第1結晶粉末の層状構造の模式図である。 本発明の製造方法に用いる、板状結晶粉末が配向したシート状の成形体を示す断面模式図である。 配向結晶を説明するためのSEM観察写真(1500倍)である。 積層型圧電体素子の概略図である。
以下に、本発明の製造方法を製造工程(1)〜(5)ごとに説明する。
以下に本発明の製造方法の第(1)の工程である、A1及びB1(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含む)を含み、ペロブスカイト型化合物からなる板状結晶粉末を用意する工程を説明する。但し、以下の記述にとらわれず公知の板状結晶粉末の製造方法を採用することができる。
先ずは、図3(S1)〜(S5)の工程により、図8に模式図を示すような、(Bi2+層2と擬ペロブスカイト層1が交互に積み重なった結晶構造を持つ第1結晶粉末を製造し、その後、(S6)〜(S10)の工程によりこの第1結晶粉末を上記の板状結晶粉末に変換する。第1結晶粉末は板状であり、その後の(S6)〜(S10)の工程においても板状を保ったまま組成を変えられるので、板状結晶粉末の雛形として使用できる。詳細は後述する。
第1結晶粉末は、一般式:(Bi2+(Bi0.5A3m−1.5Nb3m+12−(但し、A3はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、mは2以上の整数)で表されるものを用いることができる。この一般式において、左側が(Bi2+層を示しており、右側が擬ペロブスカイト層の組成を示している。
他にも、擬ペロブスカイト層がBiを含まない第1結晶粉末として、一般式:(Bi2+(A3m−1B23m+12−(但し、A3はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B2は4,5,6価の元素から選択される少なくとも一つの元素であり、mは2以上の整数)で表されるものを用いることもできる。A3はLi、K、又はNaから選択される少なくとも一つの元素であることが好ましい。B2はNb、Taの少なくとも一つの元素であることが好ましい。
先ず原料を準備し(S1)、混合し(S2)、混合した原料を乾燥後、NaCl等の第1フラックスを添加(S3)する。第1フラックスとして、例えばNaCl,KCl等のアルカリ金属の塩化物やフッ化物、硝酸塩、硫酸塩等を用いることができる。
その後、第1フラックスを添加した原料を大気中で700℃以上1300℃以下で加熱する(S4。以下、この工程を第1加熱という)。第1加熱により、結晶を成長させて、第1結晶粉末とフラックスからなる反応物(以下、第1の中間焼成体という)を得ることができる。第1加熱は、多段熱処理を適用することもできる。第1結晶粉末とフラックスを十分に反応させるためには加熱時間を1分以上とすることが好ましい。長時間の加熱は処理時間が長くなるとともに、得られる板状粉末形状のアスペクト比が小さくなる傾向にあり、10時間以下とすることが好ましい。第1の中間焼成体はその周りにフラックスが充填されており、塊状になる。
その後、第1の中間焼成体から第1フラックスを除去する(S5)。この工程は、反応物を温水中に浸漬して第1フラックスを溶融する手段が採用できる。
これにより第1結晶粉末のみを取り出すことができる。
第1結晶粉末と、板状結晶粉末を生成するためのNaCO等の第1添加材と、第1結晶粉末と第1添加材が反応可能な温度で溶融するNaCl等のフラックス(第2フラックス)とを混合する(S6、S7)。
第1添加材として、上述したA1B1Oで示される結晶配向セラミックスのA1元素の化合物、例えばA1元素の酸化物や炭酸塩等の材料を用いることができる。第1添加材の添加量は、第1結晶粉末に対してA1元素とB1元素のモル比がBi成分の低減(s10)後に1:1になるように仕込み量を調整することが好ましい。
第1添加材を混合するには、例えば、有機溶媒中に原料を添加してボールミル等で混合する手段を用いることができる。
第2フラックスは溶液中で第1結晶粉末と第1添加材が反応して結晶成長を促進させるために用いる。そのため、第1結晶粉末や第1添加材よりも融点が低温で先に溶融するものを用いることが好ましい。また、反応により所望の板状結晶粉末の組成以外の元素が含まれない組成であることが好ましい。例えばNaCl、KCl等のアルカリ金属の塩化物を用いることができる。
この第2フラックスは水や溶媒に溶解しやすいため、有機溶媒等を乾燥した後に第2フラックスを添加して混合することが好ましい。第2フラックスの添加量は第1結晶粉末に対して10mass%以上であることが好ましく、30mass%以上であることがより好ましい。
その後、混合した材料を第1結晶粉末と第1添加材が反応可能な温度で加熱する(S8。以下、この工程を第2加熱という)。第2加熱により板状の粉末とフラックスからなる反応物(以下、第2の中間焼成体という)が得られる。
第2加熱は600℃以上1300℃以下で行うことが好ましい。第2加熱が600℃未満では、第1結晶粉末から板状結晶粉末への組成変換が起こり難く、1300℃超であると、第1結晶粉末が溶解し、一体的に焼成されてしまい、粉末状にすることが難しくなる。
第2加熱は、上記の温度で0.5時間以上保持することが好ましい。0.5時間未満では第1結晶粉末から板状結晶粉末への組成変換が起こり難い。加熱時間は3時間以上とすることがさらに好ましい。また、加熱時間が24時間を超えると製造時間が長くなり生産性が低下するので24時間以下とすることが好ましく、20時間以下とすることがさらに好ましい。
次に、第2の中間焼成体から第2フラックスを除去する(S9)。第2の中間焼成体から第2フラックスを除去するには、第2の中間焼成体を温水中に浸漬して攪拌し、溶融した第2フラックスをろ過する手段が採用できる。これにより第2フラックスを除去することができる。
次に、第2フラックスを除去した後に残る板状の粉末に残存するBi成分を低減する(S10)。水と硝酸等の酸を混合した酸洗い液にこの粉末を入れて酸洗いし、Bi成分を液中に溶解させる。Bi成分が除去された粉末は本発明に用いる板状結晶粉末となり、酸洗い液中に沈殿する。上澄みの酸洗い液を除去し、残留物を乾燥することで板状結晶粉末が抽出できる。酸洗いは複数回繰り返すことができる。
この板状結晶粉末は第1結晶粉末の形状を雛形として板状が維持されているため、アスペクト比の高い板状結晶粉末を得ることができる。
この板状結晶粉末は、一般式A1B1Oで表されるペロブスカイト型化合物とすることができる。この板状結晶粉末において、A1はLi、K及びNaからなる群から選択される少なくとも一つとすることが特に好ましい。また、B1は4、5、6価の元素から選択される少なくとも一つの元素とすることが特に好ましい。
以下に第(2)の工程である、前記板状結晶粉末に添加原料材を混合して、全体として、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、0.05<s≦0.15)で表される組成の混合物とする工程について図7を用いて説明する。
図7においては、工程S11が第(2)の工程に該当する。 板状結晶粉末と添加原料材を混合する。 添加原料材は、板状結晶粉末と混合することで、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、0.05<s≦0.15)で表される組成となる原料を用いる。 焼成の際に一部揮発する等で若干のずれは生じるものの、ここでの組成が実質的に結晶配向圧電セラミックスの組成となる。 組成の限定理由は後述する。 板状結晶粉末は、添加原料材に対して0.1mol%以上10mol%以下の割合で添加することが好ましい。より好ましくは1mol%以上8mol%以下の割合であり、さらに好ましくは、1.5mol%以上6mol%以下である。圧電定数d33を高めることができる。
以下に第(3)の工程である、前記混合物を板状結晶粉末が配向した配向性成形体とする工程について説明する。図7においては、工程S12がその工程に該当する。 板状結晶粉末と添加原料材を混合した後、板状結晶粉末、添加原料材、バインダー、可塑剤、溶剤を混ぜ、スラリー状にし、シート状成形体とすることで、図9に示すような板状結晶粉末3が添加原料材4の中で配向した状態で存在するシート状の配向性成形体10が得られる。 スラリーの粘度と成形するシートの厚さにより、シート状成形体に分散された板状結晶粉末の配向度を変えることができる。 配向性成形体は、シート状の成形体を積層した積層体を用いることもできるし、その層間にAg等の電極を形成したものを用いることもできる。
以下に第(4)の工程である、配向性成形体を、酸素分圧が1×10−10kPa超の雰囲気下で予備焼成し、その後、予備焼成よりも、低い酸素分圧および/または高い温度で本焼成する工程について説明する。図7においては、工程S13およびS14がその工程に該当する。
上記配向性成形体を予備焼成する。酸素分圧が1×10−10kPa超の雰囲気下で予備焼成することで、最終的に得られる結晶配向圧電セラミックスの配向結晶の平均結晶粒径が5μm以上45μm以下となる。 酸素分圧の調整は、例えば、水蒸気及び水素の供給量を調整して行うなど、既知の手段を採用できる。雰囲気の圧力は大気圧であることが好ましい。一般的な炉を適用できるので製造が容易である。 酸素分圧は1×10−4kPa以下の酸化性雰囲気とすることが好ましい。圧電定数d33を高めることができる。
また、予備焼成の温度は800℃以上1190℃以下とすることが好ましい。
その後、上記配向性成形体を本焼成する。
本焼成は、酸素分圧を1×10−8KPa以下の還元雰囲気中で行うことが好ましい。この酸素分圧を超えると、後述の再酸化の工程を行った際に圧電特性の向上効果が十分に得られ難い。また、本焼成の温度は1100℃以上1300℃以下とすることが好ましい。1100℃未満、若しくは1300℃を超えると、得られる結晶配向セラミックスの圧電定数d33が低下してしまう。本焼成の温度は、1135℃以上1250℃以下の温度で焼成することがさらに好ましい。相対密度が95%以上98.5%以下の焼成体とすることができ、さらに圧電定数d33を向上させることができる。
酸素分圧の調整は、予備焼成と同様に、水蒸気及び水素の供給量を調整して行うなど、既知の手段を採用できる。 雰囲気の圧力は、予備焼成と同様に、大気圧であることが好ましい。
以下に、第(5)の工程である前記本焼成した焼成体を、酸素分圧が1×10−4kPa超の酸化性雰囲気下において前記本焼成の温度よりも低い温度で再酸化する工程について説明する。図7においては、工程S15がその工程に該当する。
再酸化中の雰囲気における酸素分圧は、10-4kPaを超えるものとする。これにより、圧電セラミックスの圧電定数d33が向上する。この理由は明らかではないが、10-4kPa超の酸素分圧の雰囲気下で再酸化することによって、BaZrO3-m等の酸素欠陥に酸素が十分に補完され、正方晶−菱面晶の構造相境界が明確に現れることが原因と考えられる。その結果、酸素のモル数が最適化され、Aサイトのモル数:Bサイトのモル数:酸素のモル数が1:1:3に近づいたペロブスカイト構造の圧電セラミックスが得られるものと推定される。
酸素分圧が10-4kPa以下である場合、セラミックスの抵抗が低くなって導通しやすくなるので、圧電特性を持つセラミックスが得られ難い。
本実施形態の結晶配向圧電セラミックスを積層型圧電素子として実現する場合、圧電素子に含まれる内部電極の酸化を抑制するために、酸素分圧は10-4kPaより大きく、10-2kPa以下であることが好ましい。Ag−Pd合金等の貴金属系の電極を用いる場合には、大気中で再酸化することで、圧電定数d33およびキュリー点Tcをさらに高めた圧電セラミックスを得ることができる。
再酸化する際の雰囲気の圧力は大気圧であることが好ましい。理由は、予備焼成の工程と同様である。
また、上述の酸素分圧であれば、再酸化する際の雰囲気は、窒素やアルゴンなど他の不活性ガスを含んでいてもよい。
再酸化のための温度は500℃以上1200℃以下であることが好ましい。温度が500℃未満である場合、酸素欠陥への酸素の補完が十分ではなく、分極処理を施しても分極化ができない圧電セラミックスしか得られず、高い圧電定数d33が得られない。また、再酸化の温度が1200℃より高い場合、セラミックスが融解する可能性がある。より好ましい範囲は600℃以上1100℃以下である。処理時間は、0.5時間以上24時間以下が好ましい。0.5時間よりも処理時間が短い場合、上述した酸素の補完が十分ではなく、十分に高い圧電定数d33が得られない可能性がある。また、24時間よりも処理時間が長い場合、圧電セラミックスを構成する元素の一部が揮散することがある。より好ましい範囲は1時間以上10時間以下である。
上記の製造方法により、本発明の結晶配向圧電セラミックスを得ることができる。
その他の工程として、分極処理(図示せず)について説明する。
上記工程によって得られたセラミックスは、優れた圧電特性を示すが、圧電特性をさらに向上させるためには、セラミックス中の自発分極の向きをそろえるための分極処理を行うことができる。分極処理には圧電セラミックスの製造に一般に用いられる公知の分極処理を用いることができる。例えば、焼成体に電極を形成し、シリコーン浴などによって室温以上200℃以下の温度に保持し、0.5kV/mm以上6kV/mm以下程度の電圧をかける。
本発明の結晶配向圧電セラミックスは、非鉛でペロブスカイト型化合物である結晶配向圧電セラミックスであって、前記ペロブスカイト型化合物は、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、0.05<s≦0.15)で表され、前記結晶配向圧電セラミックスは、結晶方位が揃った複数の配向結晶が存在し、前記配向結晶の平均結晶粒径が45μm以下であることを特徴とする。
この結晶配向圧電セラミックスは、積層型圧電素子のセラミックス層に用いることで、電極層との剥離を抑制することができ、アクチュエータやコンデンサとして動作安定性に優れる。
また本発明の結晶配向圧電セラミックスは、安定した圧電特性を得ることもできる。また、焼結体の強度を高めることもできる。また、分極が容易となるので高い圧電定数、例えばロットゲーリング法による配向度が50%以上で、圧電定数d33が250pC/N以上の圧電セラミックスを得ることも可能である。
本発明における結晶配向圧電セラミックスの結晶構造について補足する。図13に示すように、配向結晶aの他に、添加原料材が結晶化した等方的に結晶方位が存在する複数の非配向結晶bが存在する。配向結晶の平均結晶粒径は配向結晶のみを選別して算出する必要がある。
配向結晶と非配向結晶は、走査型電子顕微鏡(SEM)による背面反射電子像から判断が可能である。配向結晶は粒成長の過程で板状結晶から板状結晶の板面と平行な面を持つ直方体形状に成長する。一方、非配向結晶は不定形状になりやすい。また、非配向結晶は平均粒径が5μm未満であり、配向結晶よりも小さいものが多い。
また、厳密に判断する場合は、後方散乱電子回折像(EBSP:Electron Back Scattering Pattern)で結晶の方位を解析する手段を採用できる。EBSPでの解析は結晶の面方位が{100}の方向からずれた角度によって各結晶を色分けして表示することが可能である。結晶粒径が比較的大きく、同色で表示される結晶が配向結晶であり、それぞれの色が異なった状態で群集する領域の各結晶が非配向結晶である。
配向結晶の粒径(平均結晶粒径。以後も同じ)の測定方法は後述する。
配向結晶の下限は特に限定されないが、5μm以上とすることが好ましい。配向結晶の平均結晶粒径が小さい場合は、添加原料材が配向結晶化されずにその分非配向結晶となる傾向があるので、配向部位の体積率が減って配向度が低下し、その結果として高い圧電特性を得ることが難しくなる。
前記の本発明の製造方法により、配向結晶の粒径が小さくなる原因は不明だが、焼成前に予備焼成することでより多くの板状結晶が粒成長することができるようになり、結果、一つ一つの配向粒子が占める体積は小さくなるものと考えている。
本発明の結晶配向圧電セラミックスの組成は、A1B1O(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含む)で表される板状結晶粉末と他の原料を混合して、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、0.05<s≦0.15)で表される組成を用いる。
この組成のアルカリ金属含有ニオブ酸化物は、非鉛で有りながら高い圧電定数を得やすい。
具体的には、A1B1Oで示される組成物において、A1はアルカリ金属(Li、Na、K)から選ばれる少なくとも一種である。好ましくは、A1はLi、Na及びKのすべてを含むものとする。
より具体的には、A1B1Oはアルカリ金属含有ニオブ酸化物系であり、組成式:K1−x−yNaLi(Nb1−z)Oで表される組成とする。ここで、QはNb以外の遷移金属元素の少なくとも一種であり、例えばTa、V、W、Mo等を用いることができる。また、x、y、zは、0<x<1、0<y<1、0≦z≦0.3を満たす。
アルカリ金属として、K及びNaの両方が含まれていることにより、KまたはNaが単独に含まれる場合に比べて高い圧電定数を発揮し得る。また、Liはキュリー温度を高める効果や、焼結性を高めることで圧電定数を高める効果を得ることが可能であり、機械的強度の向上にも効果を発揮する。但し、Liの含有量yが0.3を超えると圧電定数が下がりやすい。このため、アルカリ金属中のLiの含有量yは好ましくは0<y≦0.3である。x、y、zの範囲は、より好ましくは0.3≦x≦0.7、0.05≦y≦0.2、0≦z≦0.2である。
BaMOは誘電率を高める効果をもつ。Mは4A族としてZrを80mass%以上含む組成が好ましい。
A1B1O及びBaMOは、以下の一般式(1)で表される比率で圧電セラミックスに含まれる。
(1−s)A1B1O−sBaMO(0.05<s≦0.15)・・・(1)
BaMOの含有比率が0.05<s≦0.15の範囲である場合、高い圧電定数d33及び高いキュリー温度を持つ圧電セラミックスを得ることができる。一方、sが0.05以下、もしくは、sが0.15を超えると、圧電定数d33が250pC/N未満になり実用的な圧電セラミックスを得ることが困難となる。好ましいsの範囲は0.065≦s≦0.10である。
上記組成に、さらに(R・A2)TiOで表される組成の材料を添加することができる。その場合、上記一般式は、(1−s−t)A1B1O−sBaMO−t(R・A2)TiO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、Rは希土類元素(Yを含む)の少なくとも一種の元素であり、A2はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、0.05<s≦0.15、0<t≦0.03)で表される。
(R・A2)TiOは菱面晶系のペロブスカイト構造を有するセラミックス組成物である。(R・A2)TiOで表される組成物を、A1B1Oで表される組成物と混合することによって、正方晶―菱面晶等の相境界を持つ圧電セラミックスが得られる。
上記一般式の場合、tが0.03を超えると、高価な希土類の使用量が増え、原料コストが増す。好ましいtの範囲は0.005≦t≦0.02である。
上記(R・A2)TiOのRとA2の比率は(R0.5A20.5)である。0.5は有効数字の範囲を含み、つまりは、RとA2の比は、R:A2=0.45:0.54〜0.54:0.45の範囲である。
Rは、特に、La、Y、Ceから選ばれる少なくとも一種が好ましく、その中でもさらにLaが好ましい。酸化物の標準生成自由エネルギーが低いLa、Y、Ce等の希土類元素を用いるので、これらの元素は焼成中の揮散が少なく、セラミックスの組成の変動を抑えることができる。
A2は、特に、Li、Na、Kからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、その中でもさらにNaが好ましい。この元素を用いることで圧電定数d33を高めることができる。
本発明の結晶配向圧電セラミックスは、バルク状の焼成体とすることができる。また、電極を形成して圧電体素子とすることができる。この圧電体素子は、層状の焼成体の間にAg等からなる内部電極を形成した積層圧電体素子とすることもできる。
以下に、本発明で測定する、予備焼成、本焼成、および再酸化の工程における酸素分圧、配向結晶の平均結晶粒径、配向度、圧電定数d33、相対密度、組成、の測定方法を説明する。
[酸素分圧] 酸素分圧は市販のYTZ(イットリウム安定化ジルコニア)センサーを有する酸素濃度計を用いて評価することができる。測定方法はガス雰囲気を作りだす電気炉内のワーク近傍の雰囲気を直接サンプリングできるようにアルミナ管を用いて炉内から抽出する手法を用いた。 なお酸素分圧の調整は、窒素やアルゴンなどの不活性ガスをベースに水素を0〜4mol%含むガスにバブリング等で一定量の水蒸気を含有させる手法にて調整することができる。このとき作りだせる酸素分圧は水素分圧PH2と水蒸気分圧PH2Oを用いて下記数1、数2から計算することができる。数1中、ΔGfは水蒸気の標準生成ギブスエネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
Figure 2015201566
Figure 2015201566
[配向結晶の平均結晶粒径]
結晶配向セラミックスの断面(板状結晶粉末の板の垂線方向に平行な断面)を観察し、走査型電子顕微鏡(SEM)による背面反射電子像(200倍)で撮影する。この撮影写真の中から任意に配向結晶を30点抽出する。配向結晶の見分け方は、上記の様に、結晶の形状や大きさで判断しても良いし、同視野のEBSPの画像と比較して判断してもよい。抽出した配向結晶の配向方向の粒径aとその垂直方向における粒径bを測定し、(a+b)/2をその結晶の粒径とし、30個の粒径の平均を配向結晶の平均結晶粒径とする。
[配向度] 配向度はロットゲーリング法により測定した。 具体的には、Cu−Kα線を用いてXRDの結果から求めた。XRD評価は焼成体の表面を研削した面で2θ:5°〜80°の範囲で評価した。XRD評価より下記ロットゲーリングの数3及び数4により配向度fを算出した。ここで、Pは圧電セラミックスの残留分極値であり、ΣI{h00}とは{h00}に由来する回折ピークの全積分強度和、ΣI{hkl}は観測されたすべての回折ピークの積分強度を総和した値を示す。またPは無配向の圧電セラミックスの残留分極値であり、板状結晶粉末を用いずに焼成体を作製し、上記と同様にして数3から算出した。
Figure 2015201566
Figure 2015201566
[圧電定数d33] 分極処理を施した後に圧電定数d33を測定する。分極処理は、セラミックスにAg電極をスパッターで形成し、413K(140℃)にて4.0kV/mmの直流電界を10分間印加した。 圧電定数d33はd33メータ(中国科学院声学研究所製)にて測定した。
[相対密度] まず真密度を算出し、真密度を100%として、その真密度に対する実測した密度(アルキメデス法で測定)の割合を%表記した。 真密度は、仕込み組成からペロブスカイト型構造の単位胞の質量を算出し、焼成体のXRD(X−Ray Diffraction)の測定結果より、単位胞の体積を算出し、前記単位胞の質量を除したものを真密度として採用した。
なお結晶配向圧電セラミックスが積層圧電体である場合、内部電極等の別の材料が各セラミックスの層間に存在するので相対密度は測定が難しい。そこで、代わりに空隙率を測定することで相対密度を求めることができる。空隙率φは、セラミックスの断面積S、その断面積上に存在するボイドの面積Spとして、φ=Sp/Sの式から算出することができ、積層圧電体からでも算出できる。この空隙率φの値を100(%)から除算した値は相対密度と同じ値であるので、空隙率φが1.5%以上5%以下かどうかで、本発明の結晶配向圧電セラミックスとしてさらに好ましいものであるか判別可能である。
[組成] 組成は、SEM-EDX ( Energy Dispersive X-ray spectroscopy )により測定した。測定条件として加速電圧を15kV、電流を100nA、ビーム径を1μmとした。
本発明の実施例をさらに詳細に述べる。
(実施例1)
先ず図3に記載の製造工程(S1〜S10)で、(1):A1及びB1(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含む)を含み、ペロブスカイト型化合物からなる板状結晶粉末を用意する工程を実施した。以下にその詳細を記載する。
一般式:(Bi2+(Bi0.5m−1.5Nb3m+12−において、AがNa、m=5となるBi2.5Na3.5Nb18となるように、Bi、NaCO、Nbの原料をそれぞれ秤量した(S1)。
これらの原料をボールミルにより混合した。溶媒としてエタノール、メディアとしてジルコニアボールを用い、回転数94rpmで24時間混合した。ボールミルの容器からメディアと原料を取り出し、130℃の大気中で乾燥した。その後、篩によりメディアと原料を分離した(S2)。
分離した原料に、第1フラックスとしてNaClを原料に対して100mass%混合し、粗粉砕機で10分間乾式混合した(S3)。
第1フラックス添加後の原料に、大気中で850℃×1時間で保持後、1100℃×2時間で保持する2段の第1加熱を行い、第1の中間焼成体を得た。昇温及び降温は約200℃/hとした(S4)。
得られた第1の中間焼成体から第1フラックスの成分を除去するため、95℃〜100℃の温水中に浸漬し、3時間放置した。その後、温水中で60分間攪拌し脱水する工程を3回繰り返した。これにより一般式:Bi2.5Na3.5Nb18からなる第1結晶粉末を得た(S5)。
図4は第1結晶粉末のSEM観察写真である。結晶が板状であることが確認できる。
図5は第1結晶粉末のX線回折結果、図6はそのX線回折結果を用いて化合物の特定を行った結果である。なお、本発明のX線回折は全てCuのKα線源を用いた。
得られた結晶はほとんどが一般式:Bi2.5Na3.5Nb18で表せられるものである。但し、一般式:Bi2.5Na3.5Nb18の他にも、一般式:(Bi2+(Bi0.5m−1.5Nb3m+12−において、m=2となるBi2.5Na0.5Nbと、m=4となるBi2.5Na2.5Nb15の化合物も確認できる。
第1添加材としてNaCOを用い、反応後にNaとNbが1:1になる量を添加した。これらをボールミルにより混合した。溶媒としてエタノール、メディアとしてジルコニアボールを用い、回転数94rpmで4時間混合した。ボールミルの容器から混合物を取り出し、130℃の大気中で乾燥した。その後、篩によりメディアを分離した(S6)。
分離した原料に、第2フラックスとしてNaClを第1結晶粉末に対して100mass%混合し、粗粉砕機で10分間乾式混合した(S7)。
第1結晶粉末、第1添加材、及び第2フラックスからなる混合材料に、大気中で950℃×8時間で保持する第2加熱を行い、第2の中間焼成体を得た。昇温及び降温は約200℃/hとした(S8)。
第2の中間焼成体から第2フラックス成分を低減するため、95℃〜100℃の温水中に浸漬し、3時間放置した。その後、温水中で60分間攪拌し脱水する工程を3回繰り返した(S9)。
その後、酸洗いして第2の中間焼成体からBi成分を除去した。純水と硝酸を3:1〜10:1程度の比率で混合した酸洗い液の中に、工程S9で得られた被処理物を入れ、攪拌した。その後Bi成分が溶融した上澄み液を除去した。さらに、酸洗い液の添加、攪拌、上澄み液の除去を繰り返し行った。その後、残存物を乾燥させて、NaNbOからなる板状結晶粉末を得た(S10)。得られた板状結晶粉末のアスペクト比(板厚と最大直径の比)は約10であった。
次に、図7に記載の製造工程(S11)で、(2):板状結晶粉末に添加原料材を混合して、全体として、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、0.05<s≦0.15)で表される組成の混合物とする工程を実施した。
本実施例では、NaNbOからなる板状結晶粉末Xmolに対し、(K0.414Na0.46−XLi0.046Ba0.08)(Nb0.92−XZr0.08)Oからなる添加原材料を混合した。本実施例では板状結晶粉末の上記Xの値を1(mol)とした。これにより、全体で板状結晶粉末が1mol%含まれる、(K0.414Na0.46Li0.046Ba0.08)(Nb0.92Zr0.08)Oで表される組成とした。上記一般式でのsの値は0.08である(S11)。
次に図7に記載の製造工程(S12)で、(3):混合物を板状結晶粉末が配向した配向性成形体とする工程を実施した。
先ず混合物をスラリー状にするため、得られた混合物に、エタノールを混合物に対して200〜300mass%、ブタノールを混合物に対して50〜100mass%添加した。また、可塑剤を添加した。本実施例では可塑剤としてフタル酸ジオクチルを混合物に対して5〜15mass%添加した。また、バインダーを添加した。本実施例ではバインダーとしてポリビニルブチラールを混合物に対して5〜15mass%添加した。こうして得られたスラリーをシート状に成形した(S12)。
次に、図7に記載の製造工程(S13〜S14)で、(4):配向性成形体を、酸素分圧が1×10−10kPa超の雰囲気下で予備焼成し、その後、前記予備焼成よりも、低い酸素分圧および/または高い温度で本焼成することで、板状結晶粉末を粒成長させて配向結晶を形成する工程を実施した。
水素0.01〜2%を含有する窒素と水蒸気を混合することで、炉内の雰囲気を2.1×10kPaの酸素分圧になるように調製した還元雰囲気とした(S13)。
予備焼成の温度は1150℃とした。
次に、炉内の雰囲気を1.0×10−10kPaの酸素分圧になるように調製した還元雰囲気とした(S14)。 本焼成の温度は1190℃とした。
次に図7に記載の製造工程(S15)で、(5):本焼成した焼成体を、酸素分圧が1×10−4kPa超の酸化性雰囲気下において前記本焼成の温度よりも低い温度で再酸化する工程を実施した。
炉内の雰囲気を2.1×10kPaの酸素分圧になるように調製した酸化性雰囲気とした。再酸化の温度は1000℃とした。
得られた結晶配向圧電セラミックスの、予備焼成の酸素分圧PO、予備焼成の温度、本焼成の酸素分圧PO、本焼成の温度、再酸化の酸素分圧PO、再酸化の温度、配向結晶の平均結晶粒径、配向度、圧電定数d33、相対密度を測定した。表1にその結果を示す。
(比較例1)
実施例1に対して、製造工程(S13)の予備焼成を行わずに結晶配向圧電セラミックスを製造した。
実施例1と同様に、製造工程(S1)〜(S12)を行い、その後、予備焼成を行わずに、製造工程(S14)の本焼成を行った。本焼成は、炉内の雰囲気を3.2×10−11kPaの酸素分圧になるように調製した還元雰囲気とした。本焼成の温度は1150℃とした。
その後の(S15)の再酸化の工程と得られた結晶配向圧電セラミックスの評価は実施例1と同様に行った。 表1にその結果を示す。
実施例1の配向結晶の平均結晶粒径が37μmであるのに対し、比較例の平均結晶粒径は49μmと大きくなっている。 つまり実施例1の結晶配向圧電セラミックスは、予備焼成を行ったことで配向結晶の平均結晶粒径が小さくなることがわかった。
Figure 2015201566
(実施例2)
実施例1に対して、製造工程(S11)における板状結晶粉末と添加原料材の混合において、板状結晶粉末の添加量を変えて結晶配向圧電セラミックスを製造した。
図7に記載の製造工程(S11)で、NaNbOからなる板状結晶粉末Xmolに対し、(K0.414Na0.46−XLi0.046Ba0.08)(Nb0.92−XZr0.08)Oからなる添加原材料を混合した。本実施例では板状結晶粉末の上記Xの値を0.5、2、4(mol)と変えた。これにより、全体で板状結晶粉末がそれぞれ0.5mol%、2mol%、4mol%含まれる、(K0.414Na0.46Li0.046Ba0.08)(Nb0.92Zr0.08)Oで表される組成とした。上記一般式でのsの値は0.08である(S11)。
その後の製造工程、及び得られた結晶配向圧電セラミックスの評価は実施例1と同様に行った。 表2にその結果を示す。実施例1の結果(X=1(mol%))も併記する。
Figure 2015201566
本実施例の結果から、板状結晶粉末の配合量を2mol%以上とすることで、配向結晶の平均結晶粒径を30μm以下にすることができることがわかった。 なお、板状結晶粉末と圧電定数d33の関係を見ると、板状結晶粉末の配合量を1mol%以上とするだけでも、圧電定数d33が400pC/N以上にできることがわかった。
(実施例3)
実施例2−3に対して、製造工程(S13)の予備焼成における雰囲気(酸素分圧)を変えて結晶配向圧電セラミックスを製造した。
水素0.01〜2%を含有する窒素と水蒸気を混合することで、炉内の雰囲気を3.4×10−7kPaの酸素分圧になるように調製した還元雰囲気とした。予備焼成の温度は1150℃とした(S13)。
その後の製造工程、及び得られた結晶配向圧電セラミックスの評価は実施例1と同様に行った。 表3にその結果を示す。実施例2−3の結果も併記する。
Figure 2015201566
本実施例の結果から、予備焼成の酸素分圧を3.4×10−7kPaとしても、配向結晶の平均結晶粒径を30μm以下にできることがわかった。
1:擬ペロブスカイト層、2:(Bi2+層、3:板状結晶粉末、4:添加原料材、10:シート状成形体、a:配向結晶、b:非配向結晶、11:セラミックス層、12:電極層

Claims (6)

  1. 下記(1)〜(5)の工程により製造することを特徴とする結晶配向圧電セラミックスの製造方法。(1):A1及びB1(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含む)を含み、ペロブスカイト型化合物からなる板状結晶粉末を用意する工程。(2):前記板状結晶粉末に添加原料材を混合して、全体として、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、0.05<s≦0.15)で表される組成の混合物とする工程。(3):前記混合物を板状結晶粉末が配向した配向性成形体とする工程。(4):前記配向性成形体を、酸素分圧が1×10−10kPa超の雰囲気下で予備焼成し、その後、前記予備焼成よりも、低い酸素分圧および/または高い温度で本焼成することで、板状結晶粉末を粒成長させて配向結晶を形成する工程。(5):前記本焼成した焼成体を、酸素分圧が1×10−4kPa超の酸化性雰囲気下において前記本焼成の温度よりも低い温度で再酸化する工程。
  2. 前記予備焼成を、酸素分圧が1×10−4kPa以上の酸化性雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1に記載の結晶配向圧電セラミックスの製造方法。
  3. 前記板状結晶粉末を、前記一般式における混合物において、0.5mol%以上10mol%以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶配向圧電セラミックスの製造方法。
  4. 非鉛でペロブスカイト型化合物である結晶配向圧電セラミックスであって、 前記ペロブスカイト型化合物は、一般式:(1−s)A1B1O−sBaMO(但し、A1はアルカリ金属から選択される少なくとも一種の元素であり、B1は遷移金属元素の少なくとも一種の元素であってNbを含み、Mは4A族の少なくとも一種の元素であってZrを含み、0.05<s≦0.15)で表され、 前記結晶配向圧電セラミックスは、結晶方位が揃った複数の配向結晶が存在し、 前記配向結晶の平均結晶粒径が45μm以下であることを特徴とする結晶配向圧電セラミックス。
  5. 圧電定数d33が250pC/N以上であることを特徴とする請求項4に記載の結晶配向圧電セラミックス。
  6. 請求項4または請求項5に記載の結晶配向圧電セラミックスからなるセラミックス層と電極層を有することを特徴とする積層型圧電素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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