JP2015201476A - 半導体装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高耐圧とスナッピーな挙動の緩和とを両立させた、薄板の半導体装置を提供する。【解決手段】表面と裏面とを有する第1導電型の半導体基板と、半導体基板の裏面側に設けられた第1の導電型の第1不純物層と、第1不純物層より裏面側に設けられた第1の導電型の第2不純物層と、を含み、第1不純物層中の、熱平衡時の多数キャリア濃度は、半導体基板の裏面から表面に向かう板厚方向に、単調に減少し、かつ下に凸な分布を有し、その最大値は、第2不純物層中の最大値よりも小さくて、半導体基板中の最大値よりも大きく、第1不純物層の、板厚方向の厚みは、半導体基板の厚みの0.15倍以上であり、第2不純物層中の、熱平衡時の多数キャリア濃度の最大値は、第1不純物層中の最大値の2倍以上であり、第2不純物層の板厚方向の厚みは、第1不純物層の板厚方向の厚みの0.1倍以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、パワーエレクトロニクス用の半導体装置およびその製造方法に関する。
パワーエレクトロニクスに用いられる半導体装置(以下「パワー半導体デバイス」と記載する場合がある。)は、多くの場合、スイッチングデバイスであるトランジスタと、整流デバイスであるダイオードとを対にして、パワー半導体モジュールに搭載される。トランジスタとしては、ユニポーラデバイスである金属−酸化膜−半導体電界効果型トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor: MOSFET)、バイポーラデバイスである絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor: IGBT)が挙げられる。ダイオードとしては、ユニポーラデバイスであるショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode: SBD)、バイポーラデバイスである真性半導体層を挟んだPN接合ダイオード(P-Intrinsic-N diode: PIN)が挙げられる。耐圧600ボルト以上のパワー半導体モジュールにおいては、多くの場合、高耐圧性や低抵抗性、大電流容量性の観点から、半導体基板の板厚方向の、一方側の表面(以下「基板表面」と記載する場合がある。)に対して垂直に電流を流す、縦型のバイポーラデバイスが使用される。
パワー半導体モジュールにおいては、パワー半導体デバイスに流れる電流を遮断した際に(以下、通電状態から電流阻止状態に移行させることを「遮断」と定義する。)、電圧の大きなオーバーシュート(以下「電圧サージ」と記載する場合がある。)、および、電圧波形および電流波形の振動(以下「リンギング」と記載する場合がある。)が観測されることがある。電圧サージおよびリンギングは、パワー半導体モジュールに搭載される回路配線が持つ寄生インダクタンスと、電流が遮断されたパワー半導体デバイスとの相互作用によって生じる。電圧サージは、パワー半導体デバイス内部のキャリアの消失に伴う電流変化による、回路配線の電磁誘導に起因する。パワー半導体デバイス内部のキャリアが急激に消失すると、電流変化が急峻になり、電圧サージは大きくなる。それだけでなく、急峻な電流変化(以下「スナッピーな挙動」、「スナッピネス」と記載する場合がある。)は、回路配線の寄生インダクタンスとパワー半導体デバイスが持つ寄生キャパシタンスとの共鳴、すなわち、リンギングを引き起こす。ここで、電圧サージは、パワー半導体デバイスの性能の低下、寿命の短縮、または、故障(破壊)といった信頼性の問題に繋がる。一方、リンギングは、パワー半導体モジュールの動作を妨害するだけでなく、放射ノイズによってパワー半導体モジュールの外部に対して電磁干渉(Electro Magnetic Interference: EMI)を引き起こす。
近年、低オン抵抗化およびスイッチング高速化の要請から、縦型のバイポーラデバイスを構成する半導体基板の薄板化が進んでいる。その結果、基板表面と、半導体基板の板厚方向の、他方側の表面(以下「基板裏面」と記載する場合がある。)との距離が縮まり、半導体基板のオリジナルの不純物濃度を保った領域(以下「ドリフト層」と記載する場合がある。)の板厚方向の幅も縮まる。そのため、このようなデバイスでは、電流阻止状態において、比較的低い電圧で、空乏層がドリフト層の基板裏面側の底部まで到達する。縦型のIGBTでは、基板裏面に設けられた、ドリフト層と異なる極性を持つ比較的高濃度な不純物層(以下「コレクタ層」と記載する場合がある。)まで空乏層が到達すると、パンチスルーと呼ばれる状態になり、リーク電流が著しく増加する。そこで、縦型のIGBTでは、基板裏面に、ドリフト層と同じ極性を持つ比較的高濃度な不純物層(以下「バッファ層」と記載する場合がある。)を設け、パンチスルーを防止している。
また、薄板の縦型のバイポーラデバイスを搭載したパワー半導体モジュールでは、そのデバイスの高速スイッチング性により、従来よりも、大きな電圧サージおよびリンギングが生じやすくなっている。このような大きな電圧サージおよびリンギングを抑制するためには、バッファ層を設ける領域を基板表面に向かって広げ、スナッピーな挙動を緩和することが有効である(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に示されるように、このようなバッファ層によるスナッピーな挙動の緩和は、IGBTだけでなく、PINでも有効である。したがって、ユニポーラデバイスであるMOSFETの寄生ダイオードであるPINにも有効である。
しかしながら、薄板の縦型デバイスにおいて、スナッピーな挙動を緩和するためにバッファ層を設ける領域を基板表面に向かう方向に拡張すると、デバイスの耐圧が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、高耐圧とスナッピーな挙動の緩和とを両立させた、薄板の半導体装置の提供を目的とする。
本発明は、表面と裏面とを有する第1導電型の半導体基板と、
該半導体基板の裏面側に設けられた第1の導電型の第1不純物層と、
該第1不純物層より該裏面側に設けられた第1の導電型の第2不純物層と、を含み、
該第1不純物層中の、熱平衡時の多数キャリア濃度は、該半導体基板の裏面から表面に向かう板厚方向に、単調に減少し、かつ下に凸な分布を有し、その最大値は、該第2不純物層中の最大値よりも小さくて、該半導体基板中の最大値よりも大きく、
該第1不純物層の、板厚方向の厚みは、該半導体基板の厚みの0.15倍以上であり、
該第2不純物層中の、熱平衡時の多数キャリア濃度の最大値は、該第1不純物層中の最大値の2倍以上であり、
該第2不純物層の板厚方向の厚みは、該第1不純物層の板厚方向の厚みの0.1倍以下であることを特徴とする半導体装置である。
該半導体基板の裏面側に設けられた第1の導電型の第1不純物層と、
該第1不純物層より該裏面側に設けられた第1の導電型の第2不純物層と、を含み、
該第1不純物層中の、熱平衡時の多数キャリア濃度は、該半導体基板の裏面から表面に向かう板厚方向に、単調に減少し、かつ下に凸な分布を有し、その最大値は、該第2不純物層中の最大値よりも小さくて、該半導体基板中の最大値よりも大きく、
該第1不純物層の、板厚方向の厚みは、該半導体基板の厚みの0.15倍以上であり、
該第2不純物層中の、熱平衡時の多数キャリア濃度の最大値は、該第1不純物層中の最大値の2倍以上であり、
該第2不純物層の板厚方向の厚みは、該第1不純物層の板厚方向の厚みの0.1倍以下であることを特徴とする半導体装置である。
本発明によれば、高耐圧とスナッピーな挙動の緩和とを両立した薄板の半導体装置を提供することができる。
実施の形態1.
図1は、全体が100で表される、本発明の実施の形態1にかかるIGBTの断面図である。また、図2は、図1のII−II線における不純物濃度のプロファイルである。ここでは、不純物の活性化率を100%とし、正味の不純物濃度は、熱平衡時の多数キャリア濃度とほぼ等しいものとする。
図1は、全体が100で表される、本発明の実施の形態1にかかるIGBTの断面図である。また、図2は、図1のII−II線における不純物濃度のプロファイルである。ここでは、不純物の活性化率を100%とし、正味の不純物濃度は、熱平衡時の多数キャリア濃度とほぼ等しいものとする。
図1に示すように、IGBT100は、表面(図1では上側)と裏面(図1では下側)とを有する、低濃度n型の半導体基板50を含む。半導体基板50は、表面において開口した複数のトレンチを有する。ここで、半導体基板50の、トレンチ底部から基板表面に至る部分(換言すれば、トレンチ底部から基板表面までの範囲において、トレンチの形成後に残っている部分)を、メサ部と呼ぶ。つまり、隣り合うトレンチの間の部分がメサ部であり、隣り合うメサ部の間の空間がトレンチである。
トレンチ内には、絶縁ゲート電極であるトレンチゲート2が埋め込まれている。トレンチゲート2は、トレンチ内に、トレンチゲート2を囲むゲート絶縁膜3によって半導体基板50から絶縁されるように設けられる。
一方、メサ部には、p型不純物層であるベース層4が設けられている。ベース層4の表面(すなわち基板表面)の一部には、高濃度のn型不純物層であるエミッタ層5が設けられている。エミッタ層5はゲート絶縁膜3に接しており、ゲート絶縁膜3と反対側の側面および底面はベース層4に接している。
ベース層4とエミッタ層5とは、基板表面においてエミッタ電極6に接続されている。エミッタ電極6とトレンチゲート2との間には層間絶縁膜7が設けられており、層間絶縁膜7によりエミッタ電極6はトレンチゲート2から絶縁されている。なお、トレンチゲート2は、図1に示されていない部分でゲート電極(図示せず)に接続されている。
半導体基板50の裏面側には、n型不純物層である第1バッファ層8と、n型不純物層である第2バッファ層9と、p型不純物層であるコレクタ層10とが設けられている。コレクタ層10と、第2バッファ層9と、第1バッファ層8とは、所定の深さで基板の裏面から見てこの順に設けられている。さらにコレクタ層10の裏面側にはコレクタ電極11が設けられている。
半導体基板50の厚み(単位:μm)は、たとえば、材料がシリコン(Si)の場合は、定格電圧(単位:V)の0.1倍以下である。なお、半導体基板50のうち、ベース層4の直下から第1バッファ層8の直上までの低濃度n型の半導体層を「ドリフト層1」と呼ぶ場合もある。
第1バッファ層8の不純物濃度は、半導体基板の裏面側から表面側に向かう板厚方向に(図1では上方向に)単調減少し、かつ下に凸の分布(プロファイル)である。換言すれば、半導体基板の裏面側から表面側に向かう板厚方向に関する1階微分が負であり、板厚方向に関する2階微分が正であるような分布となる。そして、第1バッファ層8とドリフト層1との境界において、第1バッファ層8の不純物濃度はドリフト層1の不純物濃度と等しくなる。
第2バッファ層9は、板厚方向に対してほぼ一定の熱平衡キャリア濃度のプロファイル、もしくは、極大を持つ不純物濃度のプロファイルを備える。
第1バッファ層8の不純物の積算濃度(不純物濃度を板厚方向の距離で積分した値で、単位はcm−2)は、後述するリサーフ条件を満たす値と同程度、好適には、リサーフ条件を満たす値の0.5倍から1.5倍である。
ここで、リサーフ条件とは、低濃度n型基板の表面に低濃度p型不純物層を形成することにより、基板表面の電界を緩和した構造(リサーフ構造:REduced SURface Field)において、電界の緩和(耐圧の向上)に最適な条件をいい、低濃度p型不純物層の不純物面密度で表される。リサーフ条件を満たすリサーフ構造においては、定格電圧近傍で低濃度p型不純物層がほぼ完全に空乏化する。
また、第2バッファ層9の不純物の積算濃度も、リサーフ条件を満たす値と同程度、好適には、この値の0.5倍から1.5倍である。リサーフ条件は、半導体基板50を構成する材料で決まる値であり、材料がSiの場合、約1×1012cm−2となり、材料がポリタイプ4Hの炭化珪素(SiC)の場合、約1×1013cm−2となる。
なお、第1バッファ層8および第2バッファ層9の不純物の活性化率が100%未満であるときは、不純物濃度を増やして補償すれば良い。例えば、不純物の活性化率がX%(0<X<100)であるときは、不純物濃度を(100/X)倍にすればよい。
第1バッファ層8の厚み(図1では上下方向の長さ)は、Siでは、20μm以上であることが好ましい。一方で、第2バッファ層9の厚みは、第1バッファ層8に比べて十分薄くて良く(たとえば、0.1倍以下)、Siでは1μm程度である。
上述のような構成では、必然的に、第1バッファ層8の不純物濃度は、半導体基板50(すなわちドリフト層1)の不純物濃度よりも高く、第2バッファ層9の不純物濃度よりも低くなる。そして、通常は、第2バッファ層9の不純物濃度の最大値は、第1バッファ層8の不純物濃度の2倍以上になる。
次に、本実施の形態1にかかるIGBT100の動作について説明する。IGBT100では、ゲートがオフ状態からオン状態になると(すなわち、エミッタ電極に対して閾値電圧以上の正の電圧がゲート電極に印加されると)、ベース層4のうちでゲート絶縁膜3に接する部分にチャネルが形成される。そして、このチャネルを介してエミッタ層5からドリフト層1に、半導体基板50と同じ導電型のキャリアである電子が注入される。これに伴い、コレクタ層10からドリフト層1に正孔が注入され、伝導度変調効果が生じて、低いオン電圧で電流が流れる。
一方、IGBT100のゲートがオフに切り替わる(たとえば、ゲート電極の電圧がエミッタ電極と同じになる)とドリフト層1への電子および正孔の注入が止まり、半導体基板50に溜まった電子はコレクタ電極11から吸い出され、半導体基板50に溜まった正孔はエミッタ電極6から吸い出される。これと同時に、ベース層4の底面から基板裏面に向かって、ドリフト層1内に空乏層が広がる。コレクタ電極11のエミッタ電極6に対する電位差(コレクタ−エミッタ間電圧)が比較的高い場合、空乏層はドリフト層1を突き抜け、第1バッファ層8まで広がる。コレクタ−エミッタ間電圧がさらに高い場合、空乏層は第1バッファ層8を突き抜け、第2バッファ層9まで広がる。ただし、コレクタ−エミッタ間電圧がIGBT100の耐圧に達しても、空乏層が第2バッファ層9を突き抜けることはない。すなわち、IGBT100では、パンチスルーは発生しない。ただし、第1バッファ層8の不純物の積算濃度が高すぎる場合、例えば、リサーフ条件の2倍以上である場合、空乏層は第1バッファ層8を突き抜けられず、耐圧が大幅に低下する。
本発明の実施の形態1にかかるIGBT100を高耐圧にするためには、第1バッファ層8のn型不純物が、基板裏面から見て、板厚方向に単調減少し、かつ下に凸のプロファイルを有すること、第1バッファ層8の不純物の積算濃度はリサーフ条件を満たすこと、および、第2バッファ層9の板厚方向が短い(すなわち、第2バッファ層9が薄い)ことが好ましい。なぜなら、このような構成において、IGBT100が降伏する際には、空乏層がIGBT100の大部分に広がっているからである。
また、IGBT100のスナッピーな挙動を抑制するためには、第1バッファ層8のn型不純物が、基板裏面から見て、板厚方向に単調減少し、かつ下に凸のプロファイルを有すること、および第1バッファ層8が厚いことが好ましい。第1バッファ層8の存在により、通電状態において基板の裏面側のキャリアの量が増え、電流遮断時に基板の裏面側で生じるキャリアの消失が緩やかになる。この結果、IGBT100のスナッピーな挙動が抑制される。したがって、IGBT100を搭載したパワー半導体モジュールは、電圧サージおよびリンギングを抑制できる。
さらに、第1バッファ層8がこのような不純物濃度のプロファイルを有することにより、十分に高いコレクタ−エミッタ間電圧に至るまで、コレクタ−エミッタ間電圧の増加に伴い、空乏層の板厚方向の幅(空乏層幅)は滑らかに、かつ、緩やかに伸び続ける。ここで、空乏層が広がった状態では、IGBT100の寄生キャパシタンスは空乏層のキャパシタンスでほぼ決まり、空乏層のキャパシタンスは空乏層幅の逆数に比例する。
図3は、第1バッファ層8を設けないIGBTと、第1バッファ層8を設けた本発明の実施の形態1にかかるIGBT100との、寄生キャパシタンスのコレクタ−エミッタ間電圧依存性を示したものである。図3において、横軸はコレクタ−エミッタ間電圧、縦軸は寄生キャパシタンスを表す。第1バッファ層8を設けないIGBTは符号51を付した破線で示され、IGBT100は符号52を付した実線で示されている。
第1バッファ層8を設けないIGBTの場合(破線51)、比較的低いコレクタ−エミッタ間電圧で空乏層が第2バッファ層9にまで到達する。ここで、比較的低いコレクタ−エミッタ間電圧とは、たとえば、定格電圧の0.5倍程度である。そこから、コレクタ−エミッタ間電圧をさらに上げても、空乏層幅はほぼ一定となり、寄生キャパシタンスもほぼ一定となる。
これに対して、本発明の実施の形態1にかかるIGBT100では、空乏層が第1バッファ層に広がり切り、第2バッファ層9にまで到達するには、比較的高いコレクタ−エミッタ間電圧が必要になる。ここで、比較的高いコレクタ−エミッタ間電圧とは、たとえば、定格電圧程度である。したがって、IGBT100の寄生キャパシタンスは、コレクタ−エミッタ間電圧が定格電圧程度に達するまで、滑らかに、かつ、緩やかに減り続ける。このため、寄生キャパシタンスと回路配線の寄生インダクタンスで決まる共鳴周波数が一定値とならず、共鳴が起こりにくくなる。すなわち、IGBT100を搭載したパワー半導体モジュールは、リンギングを大きく抑制できる。
このように、本発明の実施の形態1にかるIGBT100では、高耐圧とスナッピーな挙動の緩和との双方を同時に実現できる。また、IGBT100を搭載するパワー半導体モジュールのサージ電圧やリンギングを抑制できる。
表1は、本発明の実施の形態1にかかるIGBT100について、電流遮断をシミュレーションした結果である。シミュレーションに用いたIGBT100は、厚さ120μm、n型、不純物濃度1×1014cm−3のSi基板50に形成したトレンチ型IGBTである。定格電圧は1200Vに相当する。第1バッファ層8の板厚方向の幅は29μm、第2バッファ層9の板厚方向の幅は0.5μm、コレクタ層10の板厚方向の幅は0.5μmである。
動作温度は125℃、通電する電流は有効面積1cm2当たり150A、電流阻止状態で定常的に印加される電圧(電源電圧)は600Vおよび1200Vとした。ゲート抵抗は典型的な値とした。通常の使用では、電源電圧は定格電圧の半分程度である。したがって、電源電圧を定格電圧とする条件は限界試験に相当する。
表1において、仕様1は、第1バッファ層の濃度を一定にしたもの、仕様2は、第1バッファ層の濃度を、基板裏面から見て、板厚方向に線形に減少させたもの、仕様3は、第1バッファ層の濃度を、基板裏面から見て、板厚方向に二次関数的に減少させたもの、仕様4は、第1バッファ層の濃度を、基板裏面から見て、板厚方向に指数関数的に減少させたもの、そして仕様5は、第1バッファ層を省略したものである。この中で、仕様3と仕様4は、第1バッファ層の濃度が、基板裏面から見て、板厚方向に単調減少し、かつ下に凸になっている。また、仕様4は、ガウス分布のテール部に近い濃度プロファイルを持つ。各仕様の通電状態のオン電圧は、コレクタ層の濃度を調整して、一定値に揃えている。仕様5の第1バッファ層の不純物の積算濃度の欄に括弧書きで示されている値は、板厚方向の幅29μmに含まれるSi基板の不純物の積算濃度である。
サージ電圧、耐圧、ともに、仕様1<仕様2<仕様3<仕様4<仕様5となっているが、仕様5のみ、電源電圧1200Vで激しいリンギングが発生している。換言すれば、仕様2、仕様3および仕様4は、仕様1に比べて、サージ電圧を抑制する効果は小さいが、耐圧の低下は小さく、電源電圧1200Vでも十分にリンギングを抑制できている。一方、仕様1は、動作温度下限、例えば−40℃で耐圧1200Vを維持できないレベルまで耐圧が下がっている。すなわち、仕様2、仕様3および仕様4は、少なくとも仕様1よりは、サージ電圧抑制と耐圧低下のバランスが取れている。
サージ電圧抑制が不十分だと、電流遮断時の降伏によるデバイス破壊や、リンギングによる電磁ノイズの増大等が問題となる。耐圧が低いと、低温での降伏によるデバイス破壊や長時間のバイアス印加試験に対する裕度の不足等が問題になる。したがって、本発明の実施の形態1にかかるIGBT100では、例えば構成を仕様2、3、4とすることにより、電流遮断時の降伏によるデバイス破壊の抑制、リンギングの抑制、長時間のバイアス印加試験に対する裕度確保を同時に行うことができる。
実施の形態2.
図4は、全体が200で表される、本発明の実施の形態2にかかるPINの断面図である。また、図5は、図4のIV−IV線における不純物濃度のプロファイルである。ここでは、不純物の活性化率を100%とし、正味の不純物濃度は熱平衡時の多数キャリア濃度とほぼ等しいとする。図4、5中、図1、2と同一符号は、同一又は相当箇所を示す。
図4は、全体が200で表される、本発明の実施の形態2にかかるPINの断面図である。また、図5は、図4のIV−IV線における不純物濃度のプロファイルである。ここでは、不純物の活性化率を100%とし、正味の不純物濃度は熱平衡時の多数キャリア濃度とほぼ等しいとする。図4、5中、図1、2と同一符号は、同一又は相当箇所を示す。
図4に示すPIN200では、半導体基板50の基板表面に、p型不純物層であるアノード層12が設けられている。アノード層12は、基板の表面においてアノード電極13に接続されている。半導体基板50の裏面側には、n型不純物層である第1バッファ層8と、n型不純物層であるカソード層14が設けられている。カソード層14は、基板の裏面から、予め定められた深さまで設けられており、続いて、第1バッファ層8が設けられている。カソード層14は基板の裏面でカソード電極15に接続されている。
カソード層14は、実施の形態1のIGBT100における第2バッファ層14に相当する。ただし、カソード層14の不純物の積算濃度に上限はなく、リサーフ条件を満たす不純物濃度の0.5倍以上であれば良い。また、カソード層14とカソード電極15との接触抵抗を低減するために、カソード層14の基板裏面の不純物濃度は、第1バッファ層8の不純物濃度の最大値の100倍以上にしても良い。
PIN200では、電流の遮断は、アノード電極13の、カソード電極15に対する電位差(アノード−カソード間電圧)を正から負に切り替えることで実行される。このような動作は、パワー半導体モジュールにおいて、IGBTのゲートがオフからオンに切り替わるときに発生する。正確に言えば、還流動作でPINに通電されていて、IGBTが電流阻止状態から通電状態に移行するときに発生する。
PIN200でも、実施の形態1のIGBT100と同様の理由で、高耐圧とスナッピーな挙動の緩和を両立できる。また、PIN200を搭載するパワー半導体モジュールのサージ電圧やリンギングも抑制できる。
また、パワー半導体モジュールにIGBT100とPIN200の両方を搭載することにより、パワー半導体モジュールをどのように動作させても、サージ電圧やリンギングを効果的に抑制することが可能になる。
半導体装置がMOSFETである場合も、寄生ダイオードであるPINのスナッピーな挙動を抑制するために、第1バッファ層8を設けても良い。
次に、実施の形態2にかかるPIN200の製造方法(第1の製造方法)について、図6〜図11を参照しながら説明する。図6、8、10は製造工程の途中におけるPIN200の断面図であり、図7、9、11は、それぞれの不純物濃度の分布を示す。ここでは、説明を簡単にするために、比較的単純な構造のPIN200を挙げているが、実施の形態1にかかるIGBT100についても同様の製造方法を適用できる。
製造工程では、まず、図6のPIN201aに示すように、高濃度n型の支持基板21の表面に、少しずつ不純物濃度を減少させた複数のn型のエピタキシャル層22と、低濃度n型のエピタキシャル層23を備えた、エピタキシャル基板を準備する。図7に示すように、エピタキシャル層22の不純物濃度は、支持基板21のそれよりも低く、エピタキシャル基板23のそれよりも高い。
次に、エピタキシャル基板201aの基板表面、すなわち、エピタキシャル層23の表面にp型不純物を注入し、高温の熱処理で活性化させ、アノード層12を形成する。この高温の熱処理により、支持基板21の表面、および、エピタキシャル層22のn型不純物が拡散し、ドリフト層1と、滑らかな濃度プロファイルを持つ第1バッファ層8が形成される。この結果、図8に示すPIN201bのような構造となり、このときの不純物濃度分布は図9のようになる。
次に、図10に示すように、アノード層12の表面に、アノード電極13を形成した後、支持基板21を基板裏面から研削し、支持基板21の表面部だけを残す。支持基板21の表面部はカソード層14となる。図10のPIN201cにその断面図を示す。このときの不純物濃度分布は図11のようになる。
最後に、カソード電極15を基板の裏面に形成し、図4に示すPIN200が完成する。
なお、支持基板21を基板の裏面から研削するときに支持基板21を全て除去し、基板裏面からリンなどのn型不純物を第2バッファ層の深さまでイオン注入した後に、基板裏面部を局所的に熱処理し、たとえば、レーザーアニールを行い、カソード層14を形成しても構わない。
なお、実施の形態1にかかるIGBT100の製造工程では、まず、基板表面部の構造を全て形成した後に、第1バッファ層8を残して支持基板21を全て除去する。続いて、基板の裏面からリンなどのn型不純物を注入し、局所的な熱処理を行うことで、第2バッファ層9を形成する。最後に、基板の裏面からホウ素などのp型不純物を注入し、局所的な熱処理を行うことで、コレクタ層10を形成し、IGBT100が完成する。
続いて、実施の形態2にかかるPIN200の、他の製造方法(第2の製造方法)について、図12〜図17を参照しながら説明する。図12、14、16は製造工程の途中におけるPIN200の断面図であり、図13、15、17は、それぞれの熱平衡時の多数キャリア濃度(実線)および水素原子濃度(破線)の分布を示す。ここでは、説明を簡単にするために、比較的単純な構造のPIN200を挙げているが、実施の形態1にかかるIGBT100についても同様の製造方法を適用できる。
この製造方法では、質量数1の水素(H)原子(正確には、質量数1の水素イオン、すなわち、陽子、プロトン)を半導体基板50に照射し、水素原子を半導体材料の格子間に位置させ、水素原子による欠陥準位を形成する。そして、この欠陥準位がドナー準位として働くことを利用する。換言すれば、格子間水素原子の寄生ドナー化(n型の寄生ドーパント化)を利用する。
水素原子による欠陥準位は、熱処理やその他不純物との相互作用により多様に変化し、欠陥準位がドナー準位として働くのは、ごく一部の様態のみである。このため、格子間水素原子の濃度に比べて、格子間水素原子の寄生ドナー化により放出される電子の濃度は、小さくなる。
ここでは、水素原子濃度(破線)と、熱平衡時の多数キャリア濃度(実線)とを分けて説明する。
ここでは、水素原子濃度(破線)と、熱平衡時の多数キャリア濃度(実線)とを分けて説明する。
具体的な製造工程では、まず、一般的な方法で、図12に示すようなPIN202aを作製する。PIN202aでは、低濃度n型の半導体基板50の基板表面部にアノード層12とアノード電極13が形成され、基板裏面部にはカソード層14が形成されている。このときの熱平衡時の多数キャリア濃度の分布は図13のようになる。
次に、図14に示すように、PIN202aの基板裏面から、1MeV以上の一定の加速エネルギーで、水素原子を照射し、水素含有層31を形成する。図15に破線33で示したように、照射された水素原子の濃度および位置は、半導体基板50の内部で板厚方向にガウス分布となる。ガウス分布のピーク位置、すなわち、水素原子濃度が最大になる位置は、半導体基板50の内部に位置するように調整される。また、ガウス分布の基板表面側のテールの位置、すなわち、最も深くに到達した水素原子の位置は、最終的に形成される第1バッファ層8よりも深くなるように調整される。
水素原子の通った部分は、イオン照射のダメージにより、ダメージ層32となっている。図14に示すように、高濃度水素含有層31およびダメージ層32には、高濃度の格子空孔や格子間Siが欠陥として存在しており、半導体基板50のドナーの一部が不活性化している。
次に、PIN202bを400〜500℃で熱処理すると、ゲッタリングにより、水素原子が基板の裏面側に移動し、図16に示すような水素含有層34が形成される。また、熱処理を行い、水素原子を寄生ドナー化することにより、水素含有層34の水素原子濃度に比例して、熱平衡時の多数キャリア濃度(電子濃度)が増加する。さらに、図17に破線35で示すように、水素原子が基板裏面側に移動するにしたがって、水素原子濃度のガウス分布の半値幅が大きくなる。また、熱処理により、照射のダメージが回復し、半導体基板50のドナーの不活性化は解消される。この結果、図16に示すような構造のPIN202cとなる。
次に、PIN202cを400℃以上で熱処理すると、水素原子濃度のガウス分布の半値幅がさらに大きくなるとともに、照射した水素原子の過半数が基板裏面から放出されるそして、図19に破線36で示すような、ガウス分布のテール部のみが残った、水素原子濃度のプロファイルが得られる。この水素原子濃度に比例して、熱平衡時の多数キャリア濃度(電子濃度)が増加し、結果として、第1バッファ層8を備えるPIN202dが得られる。
最後に、カソード電極15を基板の裏面に形成し、図4に示すようなPIN200が完成する。
水素イオンを照射した直後には、水素原子が半導体基板50および半導体基板50と同程度の比重を持つアブソーバー(図示せず)により散乱されるため、照射の加速エネルギーが高いほど水素原子濃度のガウス分布の半値幅は大きくなる。熱拡散により、ガウス分布の半値幅は増加するが、半値幅の増加分は、水素原子深さの減少分と同程度である。
ここで、アブソーバーは、軽元素イオンをMeVレベルの加速エネルギーで照射すると飛程が長すぎるので、基板中での停止位置を調整するために用いられるマスクで、例えばSiに近い原子量・比重のAlが用いられる。なお、加速エネルギーを下げると飛程を短くできるが、通過領域での散乱が弱まるため、軽元素の分布の半値幅が狭くなる。このため、軽元素の分布の半値幅が広い状態で停止位置を浅くするにはアブソーバーが必要である。
ここで、水素原子の加速エネルギーを固定すると、板厚方向の幅の大きな第1バッファ層8を得るためには、照射時により深い位置まで水素原子を到達させなければならない。しかし、水素原子の到達位置は基板表面で制限される。換言すれば、半導体基板50の厚みよりも深い位置に到達した水素原子は、半導体基板50を突き抜けるため、第1バッファ層8の形成には寄与しない。このため、板厚方向の幅の比較的大きな第1バッファ層8を得るためには、比較的高い加速エネルギー、たとえば、Siでは、4MeV以上を使用して、熱拡散前の水素原子濃度のガウス分布の半値幅を大きくすることが好ましい。
また、水素原子の加速エネルギーを上げ、それに伴い、アブソーバー(図示せず)を厚くすると、水素原子照射後に、図15に破線33で示された水素原子濃度のプロファイルではなく、直接、図17に破線35で示された水素原子濃度のプロファイルを得ることができる。このような場合でも、熱処理により、図19に破線36で示された水素プロファイルとすることができる。つまり、水素原子の加速エネルギーを上げることにより、PIN202dの状態に至るまでの熱処理の時間を短縮できる。
また、水素原子の加速エネルギーをさらに上げて、水素原子照射後に、図19に破線36で示す水素原子濃度のプロファイルを得ることは、理論上、可能である。そして、比較的短時間の熱処理により、水素原子の移動を抑えて、照射ダメージを回復することも可能である。しかし、この方法により、Siで30μm以上の第1バッファ層8を得るためには、16MeV以上の加速エネルギー、および、μmオーダで高精度に厚みを制御された極端に厚いアブソーバー(Alで1.5cm以上)が必要になるため、現実的には困難であろう。
なお、実施の形態1のIGBT100を作製する場合は、まず、基板の表面部の構造と、第2バッファ層9、コレクタ層10を形成した後に、上述の一連の工程で、第1バッファ層8を形成すれば良い。
さらに、実施の形態2にかかるPIN200の、他の製造方法(第3の製造方法)について、図20、21を参照しながら説明する。この製造方法では、低濃度n型の半導体基板50をベースにして、半導体基板の材料の原子と置換して活性化する不純物、たとえば、半導体基板がSiの場合、リン(P)などを使用して、第1バッファ層8を形成する。
図20は、製造工程の途中のPIN203aの断面図であり、図21は、図20中のXXIV−XXIV線における正味の不純物濃度のプロファイルである。
製造工程の途中のPIN203aは、低濃度n型の半導体基板50であり、基板裏面から、50keV以下のごく低い加速エネルギーでリンなどのn型不純物が浅く注入される。続いて、強い熱処理により、不純物を半導体基板50の内部に拡散し、n型不純物層41を形成する。
製造工程の途中のPIN203aは、低濃度n型の半導体基板50であり、基板裏面から、50keV以下のごく低い加速エネルギーでリンなどのn型不純物が浅く注入される。続いて、強い熱処理により、不純物を半導体基板50の内部に拡散し、n型不純物層41を形成する。
n型不純物層41において、不純物濃度のプロファイルは、基板裏面を中心とするガウス分布になっている。つまり、n型不純物層41は、基板裏面から見て、図21に示す深さDまでは、半導体基板の板厚方向に対して単調減少し、かつ上に凸の分布となる。換言すれば、基板裏面から見て板厚方向に関する1階微分が負であり、板厚方向に関する2階微分が負であるような不純物濃度のプロファイルとなる。一方、深さDより深い領域では、半導体基板の板厚方向に対して単調減少し、かつ下に凸の分布となる。換言すれば、基板裏面から見て板厚方向に関する1階微分が負であり、板厚方向に関する2階微分が正であるような不純物濃度のプロファイルとなる。
従って、n型不純物層41のうち、基板裏面側を少なくとも深さDまで研削すれば、第1バッファ層8を形成することができる。
なお、実施の形態1のIGBT100を形成する場合は、基板表面部の構造を全て形成した後に、n型不純物層41のうち、基板裏面側を少なくとも深さDまで研削し、第1バッファ層8を形成すれば良い。
本発明の実施の形態2で述べた製造方法1、3では、第1バッファ層8において不純物原子が半導体材料の原子と置換してドーパントとして活性化しているので、熱的に非常に安定である。
本発明の実施の形態2で述べた製造方法2では、基板の表面部を形成し、半導体基板50を薄板にした後に、第1バッファ層8を形成できるという利点がある。また、例えば、完成した半導体装置に対し、水素原子を照射し、熱処理を施すことで、第1バッファ層8を形成することも可能である。換言すれば、まずは第1バッファ層8を持たない薄板の半導体装置を製造した後に、第1バッファ層8を追加で形成することにより、高耐圧とスナッピーな挙動の緩和とを両立させた、薄板の半導体装置を得ることも可能となる。
実施の形態3.
図22は、全体が300で表される、本発明の実施の形態3にかかるIGBTの断面図である。図22中、図1と同一符号は、同一または相当箇所を示す。また、図23は、図22のXX−XX線における不純物濃度のプロファイルである。また、図24は、全体が301で表される、本発明の実施の形態3にかかるPINの断面図である。図24中、図4と同一符号は、同一または相当箇所を示す。また、図25は、図24のXXII−XXII線における不純物濃度のプロファイルである。
図22は、全体が300で表される、本発明の実施の形態3にかかるIGBTの断面図である。図22中、図1と同一符号は、同一または相当箇所を示す。また、図23は、図22のXX−XX線における不純物濃度のプロファイルである。また、図24は、全体が301で表される、本発明の実施の形態3にかかるPINの断面図である。図24中、図4と同一符号は、同一または相当箇所を示す。また、図25は、図24のXXII−XXII線における不純物濃度のプロファイルである。
実施の形態1、2に示すIGBTやPIN(図1〜21)では、ドリフト層1の板厚方向の幅は、第1バッファ層8の板厚方向の幅よりも大きいか、もしくは、同等程度としているが、半導体装置(縦型デバイス)の薄板化の結果、本実施の形態3にかかるIGBT300(図22、23)やPIN301(図24、25)のように、ドリフト層1の板厚方向の幅が第1バッファ層8の板厚方向の幅よりも小さくなっても良い。このような構造では、PIN301は、基板表面部のトレンチがない分だけ、IGBT300よりも薄板化できる。
実施の形態3は、半導体装置の薄板化を進める上で、半導体装置のスナッピーな挙動の緩和、および、パワー半導体モジュールのサージ電圧やリンギングの抑制において、大きな効果をもたらす。具体的には、実施の形態3にかかる発明は、半導体基板50の厚み(単位:μm)を、たとえばシリコン(Si)基板を、定格電圧(単位:V)の0.085倍未満まで薄板化する場合に、特に重要となる。そして、この薄板化を進めた半導体装置を用いることにより、さらに低いオン抵抗と高速なスイッチングが実現できる。
また、通常の薄板化した半導体装置、たとえば、Siでは、半導体基板50の厚み(単位:μm)を定格電圧(単位:V)の0.085倍から0.12倍とした場合でも、実施の形態3は、実施の形態1および2に比べて、半導体装置のスナッピーな挙動の緩和、および、パワー半導体モジュールのサージ電圧やリンギングの抑制において、大きな効果をもたらす。
たとえば、半導体装置のスイッチング速度を高速化するために、電子線照射などで半導体基板50の全体のライフタイムを下げた場合、電流遮断時における半導体基板50の内部のキャリアの消失が促進され、スナッピーな挙動が強化される。このような場合は、実施の形態3の構造を用いることにより、スナッピーな挙動をより緩和できる。
なお、実施の形態1、2ではn型半導体基板にIGBTおよびPINを形成する例を説明したが、半導体基板および不純物層の導電型を全て逆にしても(すなわちn型をp型に、p型をn型にしても)、同様の効果を得ることできる。
また、スイッチングデバイスおよび整流デバイスには、バイポーラデバイスを使用しても良いし、バイポーラデバイスとユニポーラデバイスを組み合わせて使用しても良い。また、1つのデバイスにスイッチングデバイスと整流デバイスの両方の機能を持たせても良い。
また、半導体基板の材料は、Si(シリコン)に限定されず、ワイドバンドギャップを有する半導体材料、たとえばSiC(炭化珪素)系材料、または、GaN(窒化ガリウム)系材料、ダイヤモンド系材料、または、Ga2O3(酸化ガリウム)系材料等を用いても良い。
特に、ワイドバンドギャップ半導体材料を用いたスイッチングデバイスや整流デバイスは、耐圧(耐電圧性)が高く、許容電流密度も高い。このため、シリコンを用いた場合に比べて小型化が可能となる。このように小型化されたスイッチング素子またはダイオード素子を用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体装置モジュールの小型化が可能となる。
また、ワイドバンドギャップ半導体は耐熱性も高いので、ヒートシンクの放熱フィンを小型化できる。また、水冷ではなく空冷による冷却も可能である。これらの結果、半導体装置モジュールのいっそうの小型化が可能となる。
また、半導体材料を構成する原子と置換させてドーパント化させる不純物は、B(ホウ素)、N(窒素)、Al(アルミニウム)、P(リン)、As(ヒ素)、In(インジウム)などであるが、半導体材料の原子と置換して活性化するものであれば、これらに限定されない。
また、半導体材料を構成する原子の格子間に位置させて寄生ドーパント化させる不純物は、H(水素)、He(ヘリウム)のような軽元素、Au(金)、Pt(白金)のような重金属などであるが、半導体材料の格子間に位置して欠陥準位を形成し、寄生ドーパント化するものであれば、これらに限定されるものではない。ただし、原子核の陽子数、質量数によって、不純物濃度のプロファイル、欠陥濃度のプロファイル、および、寄生ドーパント化により得られる熱平衡時の多数キャリア濃度のプロファイルは異なる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
1 ドリフト層、2 トレンチゲート、3 ゲート絶縁膜、4 ベース層、5 エミッタ層、6 エミッタ電極、7 層間絶縁膜、8 第1バッファ層、9 第2バッファ層、10 コレクタ層、11 コレクタ電極、12 アノード層、13 アノード電極、14 カソード層、15 カソード電極、21 支持基板、22、23 エピタキシャル層、31、33 水素含有層、41 n型不純物層、50 半導体基板、100、300 IGBT(半導体装置)、200、301 PIN(半導体装置)。
Claims (9)
- 表面と裏面とを有する第1導電型の半導体基板と、
該半導体基板の裏面側に設けられた第1の導電型の第1不純物層と、
該第1不純物層より該裏面側に設けられた第1の導電型の第2不純物層と、を含み、
該第1不純物層中の、熱平衡時の多数キャリア濃度は、該半導体基板の裏面から表面に向かう板厚方向に、単調に減少し、かつ下に凸な分布を有し、その最大値は、該第2不純物層中の最大値よりも小さくて、該半導体基板中の最大値よりも大きく、
該第1不純物層の、板厚方向の厚みは、該半導体基板の厚みの0.15倍以上であり、
該第2不純物層中の、熱平衡時の多数キャリア濃度の最大値は、該第1不純物層中の最大値の2倍以上であり、
該第2不純物層の板厚方向の厚みは、該第1不純物層の板厚方向の厚みの0.1倍以下であることを特徴とする半導体装置。 - 上記第1不純物層中の熱平衡時の多数キャリア濃度は、上記板厚方向の積算濃度が、上記半導体基板を構成する半導体材料のリサーフ条件を満たす値の、0.5倍以上2倍未満であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
- 上記第1不純物層の上記板厚方向の厚みは、上記半導体基板の厚みの0.5倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
- 上記半導体基板の材料は、ワイドバンドギャップ半導体材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
- 上記半導体基板の、上記第1不純物層の表面側に接した領域は、ドリフト層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
- 絶縁ゲートバイポーラトランジスタまたはPIN接合ダイオードを構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
- 請求項1〜6のいずれかに1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
上記第1不純物層は、エピタキシャル成長で作製することを特徴とする製造方法。 - 請求項1〜6のいずれかに1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
上記第1不純物層は、上記半導体基板に格子間不純物原子を導入して形成することを特徴とする製造方法。 - 請求項1〜6のいずれかに1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
上記第1不純物層は、上記半導体基板の裏面から不純物を熱拡散させ、その後に、該半導体基板の一部を裏面から除去することにより形成することを特徴とする製造方法。
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