JP2015200693A - 誘導放射抑制顕微鏡装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】解像度及び所要時間に関して使用者の利便性を向上することができるSTED顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】STED顕微鏡装置1Aは、STED光LSを発生するSTED光源11と、励起光LEを発生する励起光源12と、位相変調によりSTED光LSを円環状に成形するための位相パターンが呈示される位相変調型のSLM13と、観察対象領域に励起光LE及び位相変調後のSTED光LSを照射するための光学系15Aと、観察対象領域から発生する蛍光PLを検出する検出器16と、位相パターンを制御する制御部17aとを備える。制御部17aが位相パターンを変更することによって、位相変調後のSTED光LSの円環の内径が変更可能とされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、誘導放射抑制顕微鏡装置に関するものである。
非特許文献1には、誘導放射抑制(Stimulated Emission Depletion;STED)顕微鏡に関する技術が記載されている。この文献に記載されたSTED顕微鏡では、位相変調型の空間光変調器を用いて環状のSTEDビームを生成している。
特開2013−92687号公報
Travis J. Gould et al., "Adaptive optics enables 3D STED microscopy in aberrating specimens", OPTICS EXPRESS, Vol.20, No. 19, pp.20998-21009, 2012
現在、光学的な回折限界以下の解像度により画像を取得する、いわゆる超解像顕微鏡が開発されている。この超解像顕微鏡に用いられる超解像技術として様々な手法が提案されているが、その一つにSTED顕微鏡が挙げられる。STED顕微鏡は、観察用励起光(以下、励起ビームと称する)としてのレーザ光と、誘導放出用の短パルスレーザ光(以下、STEDビームと称する)とを観察対象物にほぼ同時に照射することによって、観察対象物からの蛍光を局所的に発生させることを可能にしている。
STED顕微鏡の原理を以下に示す。図18(a)及び図18(b)は、蛍光の発生原理を示す図である。図18(a)に示されるように、励起波長を有する励起光LEが観察対象物に照射されると、基底状態から励起状態に電子が励起される(図中の矢印A1)。その後、数マイクロ秒の間に励起状態から基底状態へ電子が遷移し(図中の矢印A2)、このとき、基底状態と励起状態との間のエネルギー差に相当する波長の蛍光PLが発生する。
一方、図18(b)に示されるSTED光LSは、上述した励起光LEが照射されてから所定の時間差をもって、観察対象物に照射される。励起光LEにより励起状態とされていた電子は、STED光LSにより誘発され、基底状態に遷移する(図中の矢印A3)。このとき、STED光LSの波長に相当するエネルギーだけ遷移するので、発生する光LAの波長は、STED光LSの波長と等しくなる。このような作用により、励起光LEが照射された後にSTED光LSが照射された領域では、蛍光PLとは波長が異なる光LAが蛍光PLに代えて発生することとなる。また、上記所定の時間差をナノオーダーとすることによって、蛍光PLの発生タイミングと光LAの発生タイミングとの間に時間差を与えることができる。
図19は、(a)励起光LE、(b)STED光LS、及び(c)蛍光PLそれぞれの形状の一例を示す図である。STED顕微鏡では、図19(a)に示されるように、或る観察対象領域に先ず円形状の励起光LEが照射される。その後、図19(b)に示されるように、その円形状の領域に重ねて円環形状のSTED光LSが照射される。これにより、円環形状の領域では蛍光PLの発生が抑制されるので、図19(c)に示されるように、該円環形状の中心付近(該円環形状に囲まれた領域)といった極めて小さな領域のみから蛍光PLを発生させることができ、回折限界以下の解像度による画像取得が可能となる。
上述したSTED顕微鏡において、解像度は、図19(c)に示される蛍光PLの直径Dによって定まる。解像度を向上させるためには、直径Dを小さくすれば良いが、そうすると観察対象領域の全体を走査(スキャン)する為に必要な時間が長くなってしまう。また、観察対象領域の全体を走査(スキャン)する為に必要な時間を短くするために直径Dを大きくすると、解像度が低下してしまう。このため、従来のSTED顕微鏡では、解像度の向上と、所要時間の短縮とのうち何れか一方しか実現することしかできず、利便性を欠くという問題がある。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、解像度及び所要時間に関して使用者の利便性を向上することができるSTED顕微鏡装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明によるSTED顕微鏡装置は、STED光を発生するSTED光源と、励起光を発生する励起光源と、位相変調によりSTED光を円環状に成形するための第1の位相パターンが呈示される位相変調型の第1の空間光変調器と、観察対象領域に励起光及び位相変調後のSTED光を照射するための光学系と、観察対象領域から発生する蛍光を検出する検出器と、第1の位相パターンを制御する制御部と、を備え、制御部が第1の位相パターンを変更することによって、位相変調後のSTED光の円環の内径が変更可能とされていることを特徴とする。
上記のSTED顕微鏡装置では、STED光源から出力されたSTED光が、第1の空間光変調器での位相変調により円環状に成形される。この円環状のSTED光は、観察対象領域に励起光が照射された後、該観察対象領域に照射される。これにより、円環状の領域では蛍光の発生が抑制され、円環状のSTED光に囲まれた領域のみから蛍光が発生する。従って、上記のSTED顕微鏡装置によれば、回折限界以下の解像度による画像取得が可能となる。
また、上記のSTED顕微鏡装置では、制御部が位相パターンを変更することによって、位相変調後のSTED光の円環の内径が変更可能とされている。これにより、解像度の向上が必要なときには円環の内径を小さくし、観察対象領域の全体を走査(スキャン)する為に必要な時間を短くしたいときには円環の内径を大きくすることができる。このように、上記のSTED顕微鏡装置によれば、解像度及び所要時間に関し、使用者の利便性を向上することができる。
また、上記のSTED顕微鏡装置は、位相変調により励起光を円形状に成形するための第2の位相パターンが呈示される第2の空間光変調器を更に備え、制御部が、第2の位相パターンを更に制御することを特徴としてもよい。これにより、励起光の形状を任意に制御することができる。
また、上記のSTED顕微鏡装置は、制御部が、STED光を分割して複数の領域に照射するためのパターンを第1の位相パターンに重畳させるとともに、励起光を分割して複数の領域に照射するためのパターンを第2の位相パターンに重畳させることを特徴としてもよい。これにより、複数の領域について同時に観察することが可能となり、所要時間を更に短縮することができる。
また、上記のSTED顕微鏡装置は、検出器が二次元検出器であることを特徴としてもよい。また、その場合、STED顕微鏡装置は、蛍光を二次元検出器の受光面上において走査させる光スキャナを更に備え、励起光及び誘導放射抑制光の照射時間間隔は、走査方向における受光面の画素の幅及び光スキャナの走査速度に応じて、各画素が蛍光を複数回受光しないように設定されていることを特徴としてもよい。これにより、解像度を向上させることができる。
また、上記のSTED顕微鏡装置は、第1の位相パターンが、或る点を中心としてらせん状に0(rad)〜2π×n(rad)(nは1以上の整数)まで位相が増加するパターンを含み、制御部が整数nを変更することによって、円環の内径を変更可能とされていることを特徴としてもよい。例えばこのような第1の位相パターンによって、位相変調後のSTED光の円環の内径を好適に変更することができる。
また、上記のSTED顕微鏡装置は、第1の位相パターンが、或る点を中心としてらせん状に0(rad)〜2π(rad)までの位相の増加をn回(nは1以上の整数)繰り返すパターンを含み、制御部が整数nを変更することによって、円環の内径を変更可能とされていることを特徴としてもよい。例えばこのような第1の位相パターンによって、位相変調後のSTED光の円環の内径を好適に変更することができる。
また、上記のSTED顕微鏡装置は、制御部が、誘導放射抑制光の円環の複数の内径にそれぞれ対応する複数のパターンを記憶する記憶部を有し、複数のパターンの中から選択されたパターンを第1の位相パターンに含めることを特徴としてもよい。これにより、所望の解像度や所要時間に応じて使用者が第1の位相パターンを容易に変更することができる。
また、上記のSTED顕微鏡装置は、円環の内径の所望値を入力する入力部を更に備え、第1の位相パターンは、或る点を中心としてらせん状に0(rad)〜m(rad)(mは2π以上の実数)まで位相が増加するパターンを含み、制御部が、入力部から入力された円環の内径の所望値に基づいて実数mを設定することを特徴としてもよい。例えばこのような第1の位相パターンによって、位相変調後のSTED光の円環の内径を好適に変更することができる。
本発明によるSTED顕微鏡装置によれば、解像度及び所要時間に関して使用者の利便性を向上することができる。
本発明の第1実施形態に係るSTED顕微鏡装置の構成を示すブロック図である。 (a)SLMに入力されるSTED光の光軸に垂直な断面形状を示す図である。(b)SLMから出力されるSTED光の光軸に垂直な断面形状を示す図である。 (a)〜(d)SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンに含まれる、STED光を円環形状に成形するためのパターンを概念的に示す図である。 (a)〜(d)図3に示されるパターンの各画素における位相値を色の濃淡により表した図である。 (a)〜(d)図3に示されるパターンそれぞれがSLMに呈示されることにより得られるSTED光の形状を示す図である。 STED顕微鏡装置の動作を示すフローチャートである。 このような制御部の処理を示すフローチャートである。 制御部の処理を示すフローチャートである。 比較例としてのSTED顕微鏡装置の構成を示すブロック図である。 SLMに呈示されるSTED光成形用位相パターンに含まれる、STED光を円環形状に成形するためのパターンを概念的に示す図である。 (a),(b)SLMに呈示されるSTED光成形用位相パターンに含まれる、STED光を円環形状に成形するためのパターンを概念的に示す図である。(c)比較例としてのパターンを示す図である。 (a)〜(c)m=2π、2π<m<4π、及びm=4πの場合におけるSTED光の円環形状を模式的に示す図である。 (a)励起光が分割されることにより生成された複数の励起光を示す図である。(b)STED光が分割されることにより生成された複数のSTED光を示す図である。(c)複数の蛍光を示す図である。 STED光を分割して複数のSTED光を生成するためのパターンの一例を示す図である。 第4変形例として、STED顕微鏡装置の構成を示すブロック図である。 (a)第4変形例の二次元撮像装置の受光面において、蛍光の結像点が走査される様子を模式的に示す図である。(b)励起光及びSTED光の照射タイミングを示すグラフである。 第5変形例として、STED顕微鏡装置の構成を示すブロック図である。 (a),(b)蛍光の発生原理を示す図である。 (a)励起光、(b)STED光、及び(c)蛍光それぞれの形状の一例を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明によるSTED顕微鏡装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るSTED顕微鏡装置1Aの構成を示すブロック図である。STED顕微鏡装置1Aは、例えば細胞標本といった観察対象物Bの蛍光画像を得るための装置である。図1に示されるように、本実施形態のSTED顕微鏡装置1Aは、STED光源11、励起光源12、空間光変調器(Spatial Light Modulator;SLM)13及び14、光学系15A、検出器16、並びに演算制御装置17を備える。
STED光源11は、STED光LSを発生する光源である。STED光源11は、例えば、レーザ光などの高いコヒーレント性を有する光を出力するパルス光源である。STED光源11としては、例えば、ランプ系光源、レーザーダイオードなどのレーザ光源、又はLED等が挙げられる。STED光LSの波長は、観察対象物Bにおいて発生する蛍光PLのピーク波長と重ならず、且つ該蛍光PLの波長帯域内に含まれる任意の波長である。なお、STED光源11はパルス光源でなくてもよく、例えば連続光(CW光)を出力する光源と、光シャッタ又はパルス変調用AOM(Acousto-Optic Modulator)との組合せにより構成されてもよい。
励起光源12は、励起光LEを発生する光源である。励起光源12は、例えば、レーザ光などの高いコヒーレント性を有する光を出力するパルス光源である。励起光源12としては、例えば、レーザダイオードなどのレーザ光源、又はLED等が挙げられる。励起光LEの波長は、後述する観察対象物Bに含まれる蛍光物質の励起波長を含む波長である。なお、励起光源12はパルス光源でなくてもよく、例えば連続光(CW光)を出力する光源と、光シャッタ又はパルス変調用AOMとの組合せにより構成されてもよい。
SLM13は、位相変調型SLMであり、二次元の変調面の各部において入力光の位相を変調し、位相変調後の光を出力する。SLM13は、本実施形態における第1の空間光変調器である。SLM13は、STED光源11からSTED光LSを受け、変調後のSTED光LSを出力する。SLM13は、数値計算により求められた位相パターン(キノフォーム)を変調面に呈示することによって、STED光LSの集光位置、集光強度、集光形状などの集光照射条件を制御する。
図2(a)は、SLM13に入力されるSTED光LSの光軸に垂直な断面形状を示す図である。また、図2(b)は、SLM13から出力されるSTED光LSの光軸に垂直な断面形状を示す図である。本実施形態では、図2(a)に示されるような円形状のSTED光LSがSLM13に入力され、SLM13において、位相変調によりSTED光LSを図2(b)に示されるような内径Dを有する円環状とするためのSTED光成形用位相パターン(第1の位相パターン)が呈示される。このSTED光成形用位相パターンは、演算制御装置17の制御部17aから送られるパターン信号SPによって制御される。なお、SLM13は、反射型及び透過型の何れであってもよい。また、SLM13としては、例えば屈折率変化材料型SLMが好適に用いられる。屈折率変化材料型SLMとしては、例えばLCOS(Liquid Crystal on Silicon)型SLM、LCD(Liquid Crystal Display)、電気アドレス型液晶素子、光アドレス型液晶素子、及び可変鏡型SLM(Segment Mirror型SLM、Continuous Deformable Mirror型SLM)などが挙げられる。
再び図1を参照する。SLM14は、本実施形態における第2の空間光変調器である。SLM14は、励起光源12から励起光LEを受け、変調後の励起光LEを出力する。SLM14は、数値計算により求められた位相パターン(キノフォーム)を変調面に呈示することによって、励起光LEの集光位置、集光強度、集光形状などの集光照射条件を制御する。本実施形態では、SLM14において、位相変調により励起光LEを円形状(図19(a)を参照)に成形するための励起光成形用位相パターン(第2の位相パターン)が呈示される。この励起光成形用位相パターンは、制御部17aから送られるパターン信号SPによって制御される。なお、SLM14は、位相変調型であってもよく、強度変調(振幅変調)型であってもよい。位相変調型のSLMとしては、上述したSLM13と同様のものが挙げられる。また、SLM14は、反射型及び透過型の何れであってもよい。また、SLM14に代えて、DOE(Diffractive Optical Element)が設けられてもよい。以下の説明では、SLM14が位相変調型である場合について主に説明する。
光学系15Aは、観察対象物Bの観察対象領域に励起光LE及びSTED光LSを照射するために設けられる。光学系15Aは、ダイクロイックミラー15a及び15b、光スキャナ15c、対物レンズ15d、及び結像光学系15eを有する。
ダイクロイックミラー15aは、STED光LSの波長を含む波長帯域の光を反射し、観察対象物Bにおいて生じる蛍光PLの波長を含む波長帯域の光を透過する。ダイクロイックミラー15aは、対物レンズ15dと結像光学系15eとを結ぶ光軸上に配置される。ダイクロイックミラー15aは、SLM13からSTED光LSを受けて、該STED光LSを観察対象物Bに向けて反射する。また、ダイクロイックミラー15aは、観察対象物Bからの蛍光PLを透過する。
ダイクロイックミラー15bは、励起光LEの波長を含む波長帯域の光を反射し、STED光LS、及び観察対象物Bにおいて生じる蛍光PLの各波長を含む波長帯域の光を透過する。ダイクロイックミラー15bは、対物レンズ15dとダイクロイックミラー15aとを結ぶ光軸上に配置される。ダイクロイックミラー15bは、SLM14から励起光LEを受けて、該励起光LEを観察対象物Bに向けて反射する。また、ダイクロイックミラー15bは、ダイクロイックミラー15aからのSTED光LS及び観察対象物Bからの蛍光PLを透過する。
光スキャナ15cは、観察対象物B上において、STED光LSおよび励起光LEの集光位置を走査するための装置である。光スキャナ15cは、対物レンズ15dとダイクロイックミラー15bとを結ぶ光軸上に配置される。光スキャナ15cとしては、例えばガルバノ、レゾナント、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー、又は音響光学素子(AOM若しくはAOD(Acousto-Optic Deflector))等が好適に用いられる。
対物レンズ15dは、観察対象物Bの上方に配置され、STED光LSおよび励起光LEを集光しつつ観察対象物Bに照射する。このとき、STED光LSおよび励起光LEの各光軸が互いに一致するように、SLM13及び14によってこれらの光軸が制御される。また、対物レンズ15dは、励起光LEの照射により観察対象物Bにおいて発生した蛍光PLをコリメートする。
結像光学系15eは、ダイクロイックミラー15aと検出器16との間の光軸上に配置されている。結像光学系15eは、対物レンズ15dによりコリメートされダイクロイックミラー15a,15bを通過した蛍光PLを受け、該蛍光PLを検出器16の検出面において結像する。
検出器16は、結像光学系15eにより結像された蛍光PLの光強度を検出する。検出器16としては、例えば、光電子増倍管、フォトダイオード、若しくはアバランシェフォトダイオードといった一点の光強度を検出する光センサ、CCDイメージセンサ若しくはCMOSイメージセンサといったエリアイメージセンサ、ラインセンサなどの一次元検出器、又はマルチアノード光電子増倍管が好適に用いられる。検出器16は、蛍光PLの光強度を示す光強度信号SDを、演算制御装置17に提供する。特に、マルチアノード光電子増倍管やエリアイメージセンサを用いる場合、後述する第4変形例のように、SLM13及びSLM14により多点を生成する構成にすれば、スキャンによる影響が低減された固定多点蛍光PLを検出器16において検出することができ、走査時間を低減することができる。なお、マルチアノード光電子増倍管を用いる場合、各検出部毎にゲイン調整が可能な構成とされることが好ましい。
演算制御装置17は、例えばCPU及びメモリを有するコンピュータによって構成される。演算制御装置17は、制御部17a及び画像処理部17bを含む。制御部17aは、SLM13に呈示される第1の位相パターン、及びSLM14に呈示される第2の位相パターンを制御する。すなわち、制御部17aは、STED光LSの波長やSTED光LSの円環形状の所望の内径及び外径に基づいて、SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンを決定する。また、制御部17aは、励起光LEの波長や励起光LEの円形状の所望の径に基づいて、SLM14に呈示される励起光成形用位相パターンを決定する。なお、STED光LS及び励起光LEは、互いに波長が異なるので、それぞれの波長に応じて位相パターンが設計されている。詳述すると、SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンは、STED光LSの波長に基づいて設計され、SLM14に呈示される励起光成形用位相パターンは、励起光LEに基づいて設計されている。
より詳細には、制御部17aは、STED光LSを所定の位置に集光させる位相分布を与えるように設計されたキノフォームの位相パターンφkinoformと、STED光LSを円環形状に成形させるための集光制御パターンφpatとの和φSLM=φkinoform+φpatを、STED光成形用位相パターンとしてSLM13に呈示させる。同様に、制御部17aは、励起光LEを所定の位置に集光させる位相分布を与えるように設計されたキノフォームの位相パターンφkinoformと、励起光LEを円形状に成形させるための集光制御パターンφpatとの和φSLM=φkinoform+φpatを励起光成形用位相パターンとしてSLM14に呈示させる。なお、位相型SLMに入力される光の位相をφin、位相型SLMにおいて付与される位相値をφSLMとすると、出力される変調光の位相φoutは、φout=φSLM+φinとなる。
また、STED顕微鏡では、観察対象物Bに対し、励起光LEを照射してから所定の時間差をもってSTED光LSを照射する必要がある。その為に、制御部17aは、励起光源12がパルス状の励起光LEを照射した後、上記所定の時間が経過した後に、STED光源11がパルス状のSTED光LSを照射するように、STED光源11及び励起光源12の光出射タイミングを制御する。また、制御部17aは、光スキャナ15cを制御することにより、観察対象物B上において励起光LE及びSTED光LSの集光位置を走査させる。
画像処理部17bは、検出器16からの光強度信号SDを入力する。画像処理部17bは、検出器16において検出された蛍光PLの光強度、及び光スキャナ15cによる集光位置に基づいて、蛍光画像を作成する。画像処理部17bにより作成された蛍光画像は、表示装置19に表示される。
ここで、本実施形態では、SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンを制御部17aが変更することにより、STED光LSの円環の内径D(図2(b)を参照)が変更可能とされている。この点について、以下に説明する。
図3(a)〜図3(d)は、SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンに含まれる、STED光LSを円環形状に成形するためのパターンP11〜P14を概念的に示す図である。また、図4(a)〜図4(d)それぞれは、図3(a)〜図3(d)それぞれに示されるパターンP11〜P14の各画素における位相値を色の濃淡により表した図であって、色が淡いほど位相値が0(rad)に近く、色が濃いほど位相値が2π(rad)に近い。図3及び図4に示されるように、これらのパターンP11〜P14は、或る点Aを中心としてらせん状に0(rad)から2π(rad)までの位相の増加をn回(nは1以上の整数)繰り返すパターンである。図3(a)及び図4(a)はn=1の場合を、図3(b)及び図4(b)はn=2の場合を、図3(c)及び図4(c)はn=3の場合を、図3(d)及び図4(d)はn=4の場合を、それぞれ示している。なお、パターンP11〜P14は、いわゆるラゲールガウシアン(LG)ビームの位相パターンである。このようなパターンP11〜P14は、ラゲール多項式を用いても表現することができる。なお、STED光成形用位相パターンにおいて0(rad)から2π(rad)に達するまでの階調幅は、STED光LSの波長に応じて設定される。
図5(a)〜図5(d)それぞれは、上述したパターンP11〜P14それぞれがSLM13に呈示されることにより得られるSTED光LSの形状を示す図である。なお、図5(a)〜図5(d)において、光強度が色の濃淡で示されており、光強度が大きいほど淡く、光強度が小さいほど濃くなっている。図5(a)〜図5(d)を参照すると、繰り返し数nが大きくなるほど、STED光LSの円環の内径が大きくなっていることがわかる。すなわち、制御部17aが繰り返しnを変更することによって、図2(b)に示される円環の内径Dを変更することが可能となる。
制御部17aは、例えば円環の複数の内径Dにそれぞれ対応する繰り返し数の複数のパターンを予め記憶する記憶部17c(図1を参照)を有してもよい。その場合、制御部17aは、入力装置18(入力部、図1を参照)から入力される所望の内径Dに応じて、該内径Dに対応するパターンを選択し、STED光成形用位相パターンに重畳させる。或いは、制御部17aは、入力装置18から入力される所望の内径Dに応じて、該内径Dを実現可能な繰り返し数nを算出し、該繰り返し数nに基づくパターンをSTED光成形用位相パターンに重畳させてもよい。
以上に説明した本実施形態のSTED顕微鏡装置1Aの動作について説明する。図6は、STED顕微鏡装置1Aの動作を示すフローチャートである。同図に示されるように、まず、STED光LS及び励起光LEに関する情報が、入力装置18を介して演算制御装置17に入力される(ステップS1)。次に、演算制御装置17の制御部17aが、STED光成形用位相パターン及び励起光成形用位相パターンを決定する(ステップS2)。
そして、制御部17aからの指示により、励起光源12が励起光LEを出射する(ステップS31)。励起光LEの出射から所定時間だけ遅れて、制御部17aからの指示により、STED光源11がSTED光LSを出射する(ステップS41)。励起光LEはSLM14によって円形状に成形され(ステップS32)、STED光LSはSLM13によって円環形状に成形される(ステップS42)。成形後の励起光LEはダイクロイックミラー15b、光スキャナ15c及び対物レンズ15dを経て、観察対象物Bの観察対象領域に照射される(ステップS33)。その後、上記所定時間ののちに、成形後のSTED光LSがダイクロイックミラー15a、光スキャナ15c及び対物レンズ15dを経て、観察対象物Bの観察対象領域に重ねて照射される(ステップS43)。これにより、円環形状の領域では蛍光PLの発生が抑制され、該円環形状に囲まれた領域のみから蛍光PLが発生する(図19(c)を参照)。続いて、検出器16において蛍光PLの光強度を検出する(ステップS5)。蛍光PLの光強度に関する光強度信号SDは、検出器16から演算制御装置17に送られる。
ステップS5が終了した後、観察対象物B上におけるSTED光LS及び励起光LEの集光位置が、光スキャナ15cにより移動する。そして、上記ステップS2〜S5が再び行われる。このように、集光位置の移動と上記ステップS2〜S5とを交互に繰り返すことによって、観察対象物Bの広い領域における蛍光PLの強度が検出される。続いて、演算制御装置17の画像処理部17bにおいて蛍光画像が作成される(ステップS6)。この蛍光画像は、表示装置19により表示される(ステップS7)。
なお、三次元の蛍光画像を取得する為には、上記ステップS1〜S6ののち、対物レンズ15dと観察対象物Bとの距離を変更し、再び上記ステップS1〜S6を行うとよい。このような動作を複数回繰り返すことによって、平面的な断層画像が蓄積される。その後、画像処理部17bが、その蓄積データを基に、三次元画像再構成処理を行うとよい。なお、複数回の画像取得をカウンタなどを用いて計測し、観察対象物Bを光軸方向に移動させて観察深さを変更する動作を複数回繰り返すことによって、連続的に深さを変えた画像群を取得し、各画像間を補間(線形補間、スプラインなど)することにより、三次元画像を再構成してもよい。
また、制御部17aは、円環の複数の内径Dにそれぞれ対応する複数のパターンP11〜P14を予め記憶しておき、入力装置18からの入力に応じて、これらのパターンP11〜P14から適切なパターンを選択してもよい。図7は、このような制御部17aの処理を示すフローチャートである。図7に示されるように、まず、複数の走査時間又は複数の解像度に応じた複数の動作モード(スキャンモード)の中から、所望の動作モードが使用者によって選択される(ステップS11)。次に、制御部17aは、パターンP11〜P14の中から、選択された動作モードに対応するパターンを選択する(ステップS12)。続いて、制御部17aは、選択したパターンを含むSTED光成形用位相パターンを作成し、そのSTED光成形用位相パターンをSLM13に呈示させる(ステップS13)。
或いは、制御部17aは、次のような処理によってSTED光成形用位相パターンを作成してもよい。図8は、制御部17aの処理を示すフローチャートである。図8に示されるように、まず、使用者によって所望の内径Dが入力される(ステップS21)。次に、制御部17aは、所望の内径Dに応じて、該内径Dを実現可能な繰り返し数nを算出する(ステップS22)。そして、制御部17aは、算出した繰り返し数nに基づくパターンを作成し(ステップS23)、該パターンを含むSTED光成形用位相パターンを作成し、そのSTED光成形用位相パターンをSLM13に呈示させる(ステップS24)。
以上に説明した本実施形態のSTED顕微鏡装置1Aによって得られる効果について説明する。STED顕微鏡装置1Aでは、STED光源11から出力されたSTED光LSが、SLM13での位相変調により円環状に成形される。円環状のSTED光LSは、観察対象領域に励起光LEが照射された後、該観察対象領域に重ねて照射される。これにより、円環状の領域では蛍光PLの発生が抑制され、円環状のSTED光LSに囲まれた領域のみから蛍光PLが発生する。従って、本実施形態のSTED顕微鏡装置1Aによれば、回折限界以下の解像度による画像取得が可能となる。
また、図9は、比較例としてのSTED顕微鏡装置100の構成を示すブロック図である。このSTED顕微鏡装置100は、SLM13,14を備えておらず、STED光LSを円環状に成形するための位相板102を備えている。このような構成では、STED光LSの円環形状の内径Dを変更する為には、位相板102を別の位相板に交換する必要がある。これに対し、本実施形態のSTED顕微鏡装置1Aでは、制御部17aが位相パターンを変更することによって、位相変調後のSTED光LSの円環の内径Dが変更可能とされている。これにより、解像度の向上が必要なときには円環の内径Dを小さくし、観察対象領域の全体を走査(スキャン)する為に必要な時間を短くしたいときには円環の内径Dを大きくすることができる。このように、本実施形態のSTED顕微鏡装置1Aによれば、解像度及び所要時間に関し、使用者の利便性を向上することができる。
また、本実施形態のように、STED顕微鏡装置1Aは、位相変調により励起光LEを円形状に成形するためのSLM14を備え、制御部17aが、SLM14に呈示される励起光成形用位相パターンを制御してもよい。これにより、励起光LEの形状を任意に且つ容易に制御することができる。
また、図3及び図4に示されたように、STED光成形用位相パターンは、或る点Aを中心としてらせん状に0(rad)〜2π(rad)までの位相の増加をn回繰り返すパターンP11〜P14のいずれかを含み、制御部17aが整数nを変更することによって、円環の内径Dを変更可能とされていてもよい。例えばこのようなSTED光成形用位相パターンによって、位相変調後のSTED光LSの円環の内径Dを好適に変更することができる。
また、本実施形態のように、制御部17aは、STED光LSの円環の複数の内径Dにそれぞれ対応する複数のパターンを記憶する記憶部17cを有し、選択されたパターンをSTED光成形用位相パターンに含めてもよい。これにより、所望の解像度や所要時間に応じて使用者がSTED光成形用位相パターンを容易に変更することができる。
また、本実施形態のように、光スキャナ15cを介した光を検出器16が検出してもよい。これにより、一般的な共焦点顕微鏡装置のようにコンフォーカルピンホールを用いなくても、共焦点像を取得することができる。
(第1の変形例)
図10は、SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンに含まれる、STED光LSを円環形状に成形するためのパターンP15を概念的に示す図である。上記実施形態において、制御部17aは、図3に示されたパターンP11〜P14に代えて、図10に示されるパターンP15を、SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンに重畳させてもよい。
図10に示されるように、このパターンP15は、或る点Aを中心としてらせん状に0(rad)から2π×n(rad)(nは1以上の整数)まで位相が増加するパターンである。例えば、n=2の場合、パターンP15は、点Aを中心としてらせん状に0(rad)から4π(rad)まで位相が増加するパターンとなるが、このようなパターンによって実現される円環の内径Dは、らせん状に0(rad)から2π(rad)までの位相の増加を2回繰り返すパターン(図3(b)を参照)によって実現される円環の内径Dと等しい。なお、パターンP15は、いわゆるラゲールガウシアン(LG)ビームの位相パターンである。このようなパターンP15は、ラゲール多項式を用いても表現することができる。
本変形例のように、STED光成形用位相パターンは、或る点Aを中心としてらせん状に0(rad)〜2π×n(rad)まで位相が増加するパターンP15を含み、制御部17aが整数nを変更することによって、円環の内径Dを変更可能とされていてもよい。例えばこのようなSTED光成形用位相パターンによって、位相変調後のSTED光LSの円環の内径Dを好適に変更することができる。なお、SLM13の位相変調幅が0〜2π(rad)である場合には、図3に示されたパターンP11〜P14のように、らせん状に0(rad)から2π(rad)までの位相の増加をn回繰り返す(すなわち、位相2πで折り返された)パターンを用いるとよい。
(第2の変形例)
図11(a)は、SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンに含まれる、STED光LSを円環形状に成形するためのパターンP16を概念的に示す図である。上記実施形態において、制御部17aは、図3に示されたパターンP11〜P14に代えて、図11(a)に示されるパターンP16を、SLM13に呈示されるSTED光成形用位相パターンに重畳させてもよい。
図11(a)に示されるように、このパターンP16は、或る点Aを中心としてらせん状に0(rad)からm(rad)(mは2π以上の実数)まで位相が増加するパターンである。例えば、m=3πの場合、パターンP16は、点Aを中心としてらせん状に0(rad)から3π(rad)まで位相が増加するパターンとなる。STED光成形用位相パターンがこのようなパターンP16を含み、制御部17aが実数mを変更することによっても、円環の内径Dを好適に変更することができる。本変形例において、制御部17aは、入力装置18から入力される所望の内径Dに応じて、該内径Dを実現可能な実数mを算出し、実数mに基づくパターンをSTED光成形用位相パターンに重畳させる。
なお、図11(b)に示されるように、本変形例のパターンは、らせん状に0(rad)から2π(rad)まで位相が増加したのち、2π(rad)にて折り返し、再び0(rad)からπ(rad)まで位相が増加するようなパターンP17であってもよい。このようなパターンP17によって実現される円環の内径Dは、らせん状に0(rad)から3π(rad)まで位相が増加するパターンP16によって実現される円環の内径Dと等しい。但し、図11(c)に示されるように、らせん状に0(rad)から1.5π(rad)まで位相が増加したのち、π(rad)にて折り返し、再び0(rad)から1.5π(rad)まで位相が増加するようなパターンP18では、STED光LSを円環形状に成形することができない。
図12(a)〜図12(c)は、それぞれm=2π、2π<m<4π、及びm=4πの場合におけるSTED光LSの円環形状を模式的に示す図である。図12に示されるように、mの値が小さいほど円環の内径Dが小さくなり、mの値が大きいほど円環の内径Dが大きくなる。従って、制御部17aが実数mを変更することにより、円環の内径Dを好適に変更することができる。
(第3の変形例)
上記実施形態において、制御部17aは、励起光LEを分割し、分割後の励起光LEを上記複数の領域に同時に照射するためのパターンを、励起光成形用位相パターンに更に重畳させてもよい。図13(a)は、励起光LEが分割されることにより生成された複数の励起光LEを示す図である。この場合、制御部17aは、STED光LSを複数に分割し、分割後のSTED光LSを観察対象物Bの複数の領域に同時に照射するためのパターンを、STED光成形用位相パターンに更に重畳させるとよい。
図13(b)は、STED光LSが分割されることにより生成された複数のSTED光LSを示す図である。図13(a)の励起光LEが照射された直後に図13(b)のSTED光LSが照射された場合、図13(c)に示されるように、観察対象物Bの複数の領域から蛍光PLが同時に発生する。なお、図13(a)〜図13(c)において、光強度が色の濃淡で示されており、光強度が大きいほど淡く、光強度が小さいほど濃くなっている。
図14は、STED光LSを分割して複数のSTED光LSを生成するためのパターンの一例を示す図である。図14において、各画素における位相値は色の濃淡によって表されており、色が淡いほど位相値が0(rad)に近く、色が濃いほど位相値が2π(rad)に近い。本変形例では、例えば図14に示されるようなパターンが、円環状に成形するためのパターン(例えば図3に示されたパターンP11〜P14)に重畳されることにより、円環形状の複数のSTED光LSが生成される。なお、励起光LEを分割して複数の励起光LEを生成するためのパターンもまた、励起光LEを円形状に成形するためのパターンに重畳される。なお、図14に示されるパターンは、STED光LSの波長に基づいて設計される。
本変形例によれば、観察対象物Bの複数の領域を同時に観察することが可能となる。従って、光スキャナ15cによる走査時間が少なくて済むので、観察に要する時間を更に短縮することができる。
(第4の変形例)
図15は、上記実施形態の第4変形例として、STED顕微鏡装置1Bの構成を示すブロック図である。本変形例のSTED顕微鏡装置1Bと上記実施形態のSTED顕微鏡装置1Aとの相違点は、蛍光PLの撮像方式である。すなわち、本変形例のSTED顕微鏡装置1Bは、上記実施形態の光学系15A及び検出器16に代えて、光学系15B及び二次元撮像装置20を備える。なお、STED顕微鏡装置1Bにおける他の構成は、上記実施形態と同様である。
光学系15Bは、観察対象物Bの観察対象領域に励起光LE及びSTED光LSを照射するために設けられる。光学系15Bは、ダイクロイックミラー15a及び15b、光スキャナ15c、対物レンズ15d、ダイクロイックミラー15f、並びに結像光学系15gを有する。なお、ダイクロイックミラー15a及び15b、光スキャナ15c、並びに対物レンズ15dの構成は、上記実施形態と同様である。
ダイクロイックミラー15fは、観察対象物Bにおいて生じる蛍光PLの波長を含む波長帯域の光を反射し、STED光LSの波長及び励起光LEの波長を含む波長帯域の光を透過する。なお、本変形例では、STED光LSの波長は、蛍光PLの波長と励起光LEの波長との間の波長に設定される。ダイクロイックミラー15fは、対物レンズ15dと光スキャナ15cとを結ぶ光軸上に配置される。ダイクロイックミラー15fは、観察対象物Bから蛍光PLを受けて、該蛍光PLを二次元撮像装置20に向けて反射する。結像光学系15gは、ダイクロイックミラー15fと二次元撮像装置20との間に配置されており、ダイクロイックミラー15fにおいて反射した蛍光PLを受け、該蛍光PLを二次元撮像装置20の検出面において結像する。
二次元撮像装置20は、結像光学系15gにより結像された蛍光PLの光強度を検出する。二次元撮像装置20としては、例えば、CCDイメージセンサ若しくはCMOSイメージセンサといったエリアイメージセンサが好適に用いられる。二次元撮像装置20は、蛍光PLの光像を示す光像信号SDを、演算制御装置17に提供する。演算制御装置17の画像処理部17bは、二次元撮像装置20において撮像された蛍光PLの光像に基づいて、蛍光画像を作成する。画像処理部17bにより作成された蛍光画像は、表示装置19に表示される。
図16(a)は、本変形例の二次元撮像装置20の受光面20aにおいて、蛍光PLの結像点が走査される様子を模式的に示す図である。図16(a)において、蛍光PLの走査方向は実線の矢印により表されている。受光面20aは、M行N列(M,Nは2以上の整数)の二次元状に配列された複数の画素20bを有する。光スキャナ15cは、蛍光PLが各画素20bを行方向に走査され、一行の走査の完了後に次の行の走査が行われるように、励起光LE及びSTED光LSの照射位置を制御する。なお、二次元撮像装置20の露光時間は、蛍光PLの走査開始から走査終了までの時間に設定される。
また、図16(b)は、励起光LE及びSTED光LSの照射タイミングを示すグラフであって、横軸は、図16(a)に示される一行の走査時間に対応している。本変形例では、解像度を向上させる為に、一つの画素20bが蛍光PLを複数回受光することを避けることが望ましい。従って、励起光LE及びSTED光LSのパルス時間間隔Tは、走査方向における画素20bの幅、光スキャナ15cの走査速度、並びに対物レンズ15d及び結像光学系15gの結像倍率に応じて設定されることが望ましい。
具体的には、図16(b)に示されるように、まず、当該行の最初の画素20bに蛍光PLの光軸が位置するときに、励起光LE及びSTED光LSが連続して照射され、そのとき発生した蛍光PLが最初の画素20bに入射する。続いて、当該行の次の画素20bに蛍光PLの光軸が位置するように、励起光LE及びSTED光LSの光軸が光スキャナ15cによって移動されたのち、励起光LE及びSTED光LSが連続して照射され、そのとき発生した蛍光PLが次の画素20bに入射する。このような動作が当該行の複数の画素20bにわたって繰り返し行われることにより、一行分の蛍光画像が得られる。そして、このような動作が複数行にわたって繰り返し行われることにより、一枚の蛍光画像が得られる。
(第5の変形例)
図17は、上記実施形態の第5変形例として、STED顕微鏡装置1Cの構成を示すブロック図である。本変形例のSTED顕微鏡装置1Cと上記実施形態のSTED顕微鏡装置1Aとの相違点は、励起光源12から励起光LEを受け、変調後の励起光LEを出力するSLM14を用いない点である。すなわち、本変形例のSTED顕微鏡装置1Cは、ミラー22及びダイクロイックミラー23を備えることによって、励起光源12からの励起光LEの光軸とSTED光源11からのSTED光LSの光軸とを互いに一致させ、STED光LS及び励起光LEの双方をSLM13において受ける。なお、STED顕微鏡装置1Cにおける他の構成は、上記実施形態と同様である。
励起光源12からの励起光LEはミラー22において反射され、ダイクロイックミラー23に入力される。ダイクロイックミラー23は、STED光LSの波長を透過し、励起光LEを反射するので、励起光源12からの励起光LEの光軸とSTED光源11からのSTED光LSの光軸とを一致させることができ、SLM13は、励起光LEとSTED光LSとを受ける。ここで、SLM13が例えばLCOS−SLMなどのように特定の偏光の光のみを変調する空間光変調器である場合、STED光LSの偏光を該特定の偏光とし、励起光LEの偏光を該特定の偏光と直交する偏光とすることにより、STED光LSのみを変調することができる。詳述すると、SLM13がLCOS−SLMである場合、LCOS−SLMは、液晶の配向方向と同じ方向の偏光成分(例えば、水平偏光成分)に対してのみ位相変調が可能である。そのため、円環形状となるように位相変調されるべきSTED光LSを水平偏光とし、位相変調が不要である励起光LEを垂直偏光としてこれらを予め同軸で合波し、SLM13に入力すると、STED光LSは位相変調され、STED光LSとして出力される。一方、励起光LEは変調されず、励起光LEのまま出力される。本変形例のSTED顕微鏡装置1Cのような構成によれば、STED光源11及び励起光源12とSLM13との間を、例えば偏光が保存される偏光ファイバを用いて導光することも可能となり、STED光源11及び励起光源12と、光学系15Aとを物理的に分離することができる。これにより、STED光源11や励起光源12において発生する振動や熱による光学系15Aへの影響を緩和し、光学系15Aの小型化・安定化が図れ、STED光源11や励起光源12の変更が容易になる。
1A…STED顕微鏡装置、1B…STED顕微鏡装置、11…STED光源、12…励起光源、13,14…SLM、15A,15B…光学系、15a,15b…ダイクロイックミラー、15c…光スキャナ、15d…対物レンズ、15e…結像光学系、15f…ダイクロイックミラー、15g…結像光学系、16…検出器、17…演算制御装置、17a…制御部、17b…画像処理部、17c…記憶部、18…入力装置、19…表示装置、20…二次元撮像装置、20a…受光面、20b…画素、B…観察対象物、LE,LE…励起光、LS,LS…STED光、PL…蛍光。

Claims (9)

  1. 誘導放射抑制光を発生する誘導放射抑制光源と、
    励起光を発生する励起光源と、
    位相変調により前記誘導放射抑制光を円環状に成形するための第1の位相パターンが呈示される位相変調型の第1の空間光変調器と、
    観察対象領域に前記励起光及び位相変調後の前記誘導放射抑制光を照射するための光学系と、
    前記観察対象領域から発生する蛍光を検出する検出器と、
    前記第1の位相パターンを制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部が前記第1の位相パターンを変更することによって、位相変調後の前記誘導放射抑制光の円環の内径が変更可能とされていることを特徴とする、誘導放射抑制顕微鏡装置。
  2. 位相変調により前記励起光を円形状に成形するための第2の位相パターンが呈示される第2の空間光変調器を更に備え、
    前記制御部は、前記第2の位相パターンを更に制御することを特徴とする、請求項1に記載の誘導放射抑制顕微鏡装置。
  3. 前記制御部は、前記誘導放射抑制光を分割して複数の領域に照射するためのパターンを前記第1の位相パターンに重畳させるとともに、前記励起光を分割して前記複数の領域に照射するためのパターンを前記第2の位相パターンに重畳させることを特徴とする、請求項2に記載の誘導放射抑制顕微鏡装置。
  4. 前記検出器が二次元検出器であることを特徴とする、請求項3に記載の誘導放射抑制顕微鏡装置。
  5. 前記蛍光を前記二次元検出器の受光面上において走査させる光スキャナを更に備え、
    前記励起光及び前記誘導放射抑制光の照射時間間隔は、走査方向における前記受光面の画素の幅及び前記光スキャナの走査速度に応じて、各画素が前記蛍光を複数回受光しないように設定されていることを特徴とする、請求項4に記載の誘導放射抑制顕微鏡装置。
  6. 前記第1の位相パターンは、或る点を中心としてらせん状に0(rad)〜2π×n(rad)(nは1以上の整数)まで位相が増加するパターンを含み、
    前記制御部が整数nを変更することによって、前記円環の内径を変更可能とされていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導放射抑制顕微鏡装置。
  7. 前記第1の位相パターンは、或る点を中心としてらせん状に0(rad)〜2π(rad)までの位相の増加をn回(nは1以上の整数)繰り返すパターンを含み、
    前記制御部が整数nを変更することによって、前記円環の内径を変更可能とされていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導放射抑制顕微鏡装置。
  8. 前記制御部は、前記誘導放射抑制光の円環の複数の内径にそれぞれ対応する複数のパターンを記憶する記憶部を有し、前記複数のパターンの中から選択されたパターンを前記第1の位相パターンに含めることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の誘導放射抑制顕微鏡装置。
  9. 前記円環の内径の所望値を入力する入力部を更に備え、
    前記第1の位相パターンは、或る点を中心としてらせん状に0(rad)〜m(rad)(mは2π以上の実数)まで位相が増加するパターンを含み、
    前記制御部は、前記入力部から入力された前記円環の内径の所望値に基づいて実数mを設定することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導放射抑制顕微鏡装置。
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