JP2019520596A - 超解像顕微鏡法 - Google Patents

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Abstract

比較的高いスループット用に構成された例示的な超解像顕微鏡法システムが開示される。開示の顕微鏡法システムは画像化のために回折限界以下の領域のアレイを生成することができる。この顕微鏡法システムは、超解像画像を時間とともに生成するために時間遅延積分を用いる画像化技術を利用することができる。開示の顕微鏡法システムは、長寿命の蛍光プローブを広視野のパターン化された照明と併用して試料の超解像画像を比較的高いスループットで生成することができる。

Description

関連出願の相互参照
本願は、2016年6月21日に出願された米国仮特許出願第62/352,892号の優先権を主張するものであり、その全開示内容は参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。
関連技術の説明
光学顕微鏡法はサブミクロン分解能で試料を検査するための強力なツールである。例えば、生物学及び医学の分野では、蛍光及び免疫蛍光タグ等の適切な分子タグが個々の分子をラベル付けするために使用されている。タグからの固有の信号は光学顕微鏡により検出され、細胞及び組織の周囲及び内における又はマイクロアレイ上におけるそれらの存在及び位置が識別される。しかしながら、光学顕微鏡法は数百ナノメートルサイズの特徴部を画像化することができるのみである。このサイズ未満の細胞又は組織内の特徴部サイズは光の物理的波長と同程度か、それより小さくなる。この場合には、細胞、組織又はマイクロアレイの特徴部は、光が微小開口を通過するとき又は小スポットに収束されるとき、光の回折のために解像することができない。この微小特徴部の分解不能は回折限界として知られている。回折限界とは、一例ではアーネストアッベにより定義されているように、2つの点光源物体が互いに離れた物体として区別できなければならない距離である。アッベの回折限界は0.5λ/NAに等しく、ここでλは光の波長であり、NAは光を集光する対物レンズの開口数である。
いくつかの光学顕微鏡法技術が回折限界を超えるために開発されている。これらの技術は超解像顕微鏡法として総称されている。いくつかのこのような超解像顕微鏡法技術は、解像可能な低い空間周波数に分解し得ない高い周波数の光を移動させる必要がある。いくつかの超解像顕微鏡法技術は、活性化及び脱活性化し得る蛍光プローブを用いて回折限界を超える解像度を有する像を生成することができる。標的プローブを選択的に又はランダムに活性化させ、それらの蛍光を検出することによって、これらの超解像技術は回折限界距離内に位置する2つの分子からの発光を区別するように構成することができる。概して、これらの超解像顕微鏡法技法は、明状態と暗状態の間での蛍光プローブのスイッチングと空間照明法とを組み合わせて解説限界以下の領域でのスイッチング挙動を分離している。
本明細書には、光学顕微鏡法システムに関するいくつかの例が提供される。
本明細書に記載される実施形態は革新的な態様を有し、それらの1つがそれらの所望の特性に不可欠又は必須であるわけではない。開示及び/又は請求項の範囲を制限することなく、有利な特徴のいくつかをここで要約する。
第1の態様において、超解像顕微鏡法システムが提供される。本システムは、励起光源、抑制光源及び光路を含む。いくつかの実施形態では、本システムは領域のアレイを生成する光学素子を備え、このアレイの各領域は抑制光源からの光よりなる抑制領域で囲まれた励起光源からの光よりなる活性領域を備える。いくつかの実施形態では、本システムは1つ以上の検出器を備え、これらの領域からの信号を受信し時間とともに積分して個々のリング領域で照明された個々の点に対する積分信号を生成する。いくつかの実施形態では、プロセッサは積分信号から個々の点の蛍光を決定するように構成される。
第1の態様のいくつかの実施形態では、個々の点は個体支持体上の蛍光核酸分子に対応する。第1の態様のいくつかの実施形態では、個々の領域は円形のリング状領域である。第1の態様のいくつかの実施形態では、前記励起光源は前記アレイの各領域に対して1つの励起レーザを備え、前記抑制光源は前記アレイの各領域に対して1つの抑制レーザを備え、前記光路は前記リング領域のアレイの各リング領域に対して、対応する励起レーザ及び抑制レーザからの光をリング領域を生成するように導く。他の実施形態では、前記1つ以上の検出器は領域のアレイの各領域に対して1つの検出器を備える。
第1の態様のいくつかの実施形態では、前記光路は前記励起光源からの光及び前記抑制光源からの光を前記領域のアレイを生成するように時間に依存して導くために偏向器を含む。他の実施形態では、前記1つ以上の検出器は前記領域のアレイ内の各領域に対して1つの検出器を備える。
第1の態様のいくつかの実施形態では、前記光路は、前記領域のアレイを生成するために前記励起光源からの光を複数の励起光ビームに分割するとともに前記抑制光源からの光を複数の抑制ビームに分割する位相マスクを含む。第1の態様のいくつかの実施形態では、前記光路は前記抑制光源からの光と定在波を生成する導波路を含む。
第1の態様のいくつかの実施形態では、前記1つ以上の検出器は試料からの光を検出する単一の検出器を含む。他の実施形態では、前記単一の検出器はマルチチャネル光子検出器を含む。他の実施形態では、前記マルチチャネル光子検出器は電荷結合デバイス(CCD)イメージセンサを含む。
第1の態様のいくつかの実施形態では、前記領域のアレイ内の領域は第1の方向に配列され、第1の方向に対して非直角で非平行の第2の方向に試料を横切って走査される。他の実施形態では、第1の方向は第2の方向に直角である。
第1の態様のいくつかの実施形態では、前記領域のアレイの領域は複数の行及び複数の列よりなる格子に配列される。いくつかの実施形態では、試料は前記領域のアレイに対して、前記複数の行及び複数の列に対して非直角で非平行の方向に移動する。
第1の態様のいくつかの実施形態では、本システムは前記領域のアレイが前記試料と相対的に移動するように前記試料を移動させる走査システムを含む。他の実施形態では、プロセッサが走査システムからの情報を使用して、前記試料上の個々の点に対する積分信号が前記試料上の個々の点から放出された光を受信した前記1つ以上の検出器により生成された信号を選択的に積分した結果となるように、前記1つ以上の検出器により生成された信号を前記試料上の個々の点と関連させる。
第1の態様のいくつかの実施形態では、前記光路は前記領域のアレイを生成する1つ以上の光学部品を含み、前記アレイ内の個々の領域は活性領域と該活性領域により囲まれた抑制領域を備え、該活性領域及び抑制領域の組み合わせが露光された後に回折限界以下の領域内の蛍光プローブのみが活性化されたままとなるようにする。
第2の態様では、試料を読み取るための超解像顕微鏡法システムが提供される。本システムは抑制光源を含む。本システムは、複数のパターン化された領域を生成する1つ以上の光学部品を備える光路を含み、各パターン化された領域は励起光源からの励起光と抑制光源からの抑制光とよりなる。本システムは、パターン化された領域により照明された蛍光プローブからの信号を受信し積分し、試料上の個々の点に対する積分信号を生成する1つ以上の検出器を含む。本システムは、1つ以上の検出器からの積分信号を受信し、積分信号に基づいて蛍光プローブの蛍光を決定するように構成されたプロセッサを含む。
第2の態様のいくつかの実施形態では、前記蛍光プローブは約100msより長い又はそれに等しい寿命を有する暗状態を有する。第2の態様のいくつかの実施形態では、蛍光プローブは少なくとも約10秒間安定であるオフ状態を有する色素を含む。他の実施形態では、前記色素はローダミン、オキサジン、カルボシアニン、又はそれらの組み合わせを含む。第2の態様のいくつかの実施形態では、蛍光プローブは低い酸素濃度内で光スイッチされる。
第2の態様のいくつかの実施形態では、走査システムは、試料が画像化サイクル中に移動されるにつれてパターン化された抑制領域が試料に対して静止するようにパターン化された抑制照明を移動させる。他の実施形態では、走査システムはパターン化された抑制照明が1つの画像化サイクルから別の画像化サイクルへシフトされるようにパターン化された抑制照明を移動させる。
第2の態様のいくつかの実施形態では、試料は、蛍光プローブが少なくとも10秒間脱活性化されたままとなるように低酸素又は低易酸化色素を含むオーダメイドのイメージングバッファとともに使用する。
第2の実施形態のいくつかの実施形態では、本顕微鏡法システムは各画像化サイクルに対して単一の飽和サイクルを使用する。第2の態様のいくつかの実施形態では、本システムは、広視野活性照明及びパターン化された抑制照明が試料と相対的に移動するように、
試料を移動させる又は光路内の1つ以上の光学部品を走査する走査システムを含む。他の実施形態では、プロセッサは、走査システムからの情報を用いて1つ以上の検出器により生成された信号を試料上の個々の点と関連させて、試料上の個々の点に対する積分信号が試料上の個々の点から放出された光を受信した1つ以上の検出器により生成された信号を選択的に積分した結果となるようにする。
第2の態様のいくつかの実施形態では、パターン化された領域は抑制光の第2領域により囲まれた活性光の第1光領域を含む。
第3の態様では、試料を読み取るために超解像顕微鏡法を実行する方法が提供される。本方法は、(i)活性光を用いて試料上の蛍光プローブを選択的に活性化し、(ii)抑制光を用いて前記試料上の蛍光プローブを選択的に脱活性化することによって、抑制領域により囲まれた活性領域より成る領域のアレイを生成するステップと、前記領域からの信号を1つ以上の検出器を用いて時間とともに検出し積分するステップと、前記積分信号から前記試料上の個々の点の蛍光を決定するステップと、を備える。
第3の態様のいくつかの実施形態では、試料は固体支持体上の核酸特徴部のアレイである。第3の態様のいくつかの実施形態では、個々の領域は円形リング状領域である。第3の態様のいくつかの実施形態では、前記領域のアレイを生成するステップは、前記領域のアレイ内の各領域に対して、励起光源及び抑制光源からの光を前記領域を生成するように導くステップを含み、前記励起光源は前記アレイ内の各領域に対して1つの励起レーザを備え、前記抑制光源は前記アレイ内の各領域に対して1つの抑制レーザを備える。他の実施形態では、前記1つ以上の検出器は前記アレイ内の各領域に対して1つの検出器を備え
る。
第3の態様のいくつかの実施形態では、前記領域のアレイを生成するステップは、前記励起光源及び前記抑制光源からの光を偏向器によって時間依存的に偏向するステップを含む。他の実施形態では、前記1つ以上の検出器は前記リング状領域のアレイ内の各領域に対して1つの検出器を備える。
第3の態様のいくつかの実施形態では、前記領域のアレイを生成するステップは、前記励起光源からの光を複数の励起光ビームに分割し、前記抑制光源からの光を複数の抑制光ビームに分割するステップを備える。第3の態様のいくつかの実施形態では、前記領域のアレイを生成するステップは、前記抑制光源からの光と定在波を生成するステップを備える。
第3の態様のいくつかの実施形態では、前記1つ以上の検出器は試料からの光を検出するために単一の検出器を備える。他の実施形態では、前記単一の検出器はマルチチャネル光子検出器を備える。他の実施形態では、マルチチャネル光子検出器はCCDイメージセンサを備える。
第3の態様のいくつかの実施形態では、本方法は更に、前記領域のアレイを、前記試料を横切って第1の方向に走査させるステップ、及び前記領域のアレイを、前記試料を横切って前記第1の方向に対して非平行の第2の方向に走査させるステップを備える。他の実施形態では、第1の方向は第2の方向に対して直角である。
第3の態様のいくつかの実施形態では、前記アレイ内の領域は複数の行及び複数の列よりなる格子に分布され、本方法は更に、試料を前記領域のアレイと相対的に複数の行及び複数の列に対して非直角及び非平行の方向に移動させるステップをそなえる。第3の態様のいくつかの実施形態では、本方法は、記領域のアレイが試料と相対的に移動するように前記試料を移動させる、又は1つ以上の光学部品を走査させるステップを含む。他の実施形態では、本方法は、走査システムからの情報を使用して、前記試料上の個々の点に対する積分信号が前記試料上の個々の点から放出された光を受信した前記1つ以上の検出器により生成された信号を選択的に積分した結果となるように、前記1つ以上の検出器により生成された信号を前記試料上の個々の点と関連させるステップを含む。
第3の態様のいくつかの実施形態では、前記アレイの個々の領域は活性領域と該活性領域を囲む抑制領域を備え、この活性領域と抑制領域の組み合わせへの露光後に回折限界以下の領域内の蛍光プローブのみが活性化されたままとなる。
第4の態様では、試料を読み取るために超解像顕微鏡法を実行する方法が提供される。本方法は、照明領域内の蛍光プローブを励起するために広視野活性照明を生成するステップと、前記照明領域の標的部分内の蛍光プローブを脱活性化するためにパターン化された抑制照明を生成するステップと、前記照明領域内の励起された蛍光プローブからの信号を1つ以上の検出器を用いて受信し積分するステップと、試料上の個々の点に対する積分信号を生成するステップと、前記積分信号から前記試料上の個々の点の蛍光を決定するステップと、を備える。
第4の態様のいくつかの実施形態では、前記蛍光プローブは約100msより大きい又はそれに等しい寿命を有する暗状態を有する。第4の態様のいくつかの実施形態では、少なくとも10秒間安定であるオフ状態を有する色素を含む。第4の態様のいくつかの実施形態では、前記色素はローダミン、オキサジン又はカルボシアニンを含む。
第4の態様のいくつかの実施形態では、本方法は、走査システムを用いて、前記パターン化された抑制照明が前記試料に対して静止するように前記パターン化された抑制照明を移動させるステップを備える。他の実施形態では、本方法は、前記パターンかされた抑制照明が1つの画像化サイクルから別の画像化サイクルへシフトされるようにパターン化された抑制照明を移動させるステップを含む。
第4の態様のいくつかの実施形態では、試料は、蛍光プローブが少なくとも10秒間脱活性化されたままとなるように低酸素又は低易酸化色素を含むオーダメイドのイメージングバッファとともに使用する。第4の態様のいくつかの実施形態では、各画像化サイクルに対して単一の飽和サイクルを用いる。
第4の態様のいくつかの実施形態では、本方法は、広視野活性照明及びパターン化された抑制照明が試料と相対的に移動するように、試料を移動させる又は光路内の1つ以上の光学部品を走査させるステップを含む。他の実施形態では、本方法は、試料上の個々の点に対する積分信号が試料上の個々の点から放出された光を受信した1つ以上の検出器により生成された信号を選択的に積分した結果となるように、走査システムからの情報を用いて1つ以上の検出器により生成された信号を試料上の個々の点と関連させるステップを含む。
第4の態様のいくつかの実施形態では、前記パターン化された照明は、標的領域内の蛍光プローブを選択的に脱活性化するために零点強度の領域を生成するが零点強度の領域内の蛍光プローブは活性化されたままにする。
上述の概念のあらゆる組み合わせ(但し、これらの概念が相互に矛盾しなければ)は本明細書に開示した発明の要旨の一部であるとみなせることを理解すべきである。特に、本開示の末尾に添付された請求の範囲に記載された要旨のあらゆる組み合わせは本明細書に開示した発明の要旨の一部であるとみなせる。
本明細書で提供される実施形態の態様及び利点は添付図面と関連して以下に詳細に説明する。全図を通して、参照番号は関連要素間の対応を示すために再使用され得る。これらの図は本明細書に記載する例示的な実施形態を説明するために提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
並列化を用いる超解像顕微鏡法システムの一例を示す。 図2A−2Dは図1の超解像顕微鏡法システムの例示的な実施形態を示す。 図2Dの顕微鏡法システムの光路内にあって定在波を生成する導波路の一例を示す。 図4A及び図4Bは誘導放出抑制(STED)ライン走査の例を示す。 走査方向に対して傾いたSTEDリングのアレイによる試料の走査の一例を示す。 図1の超解像顕微鏡法システムの別の例示的な実施形態を示す。 図6の超解像顕微鏡法システムを用いてデータを収集する一連のステップを示す。 図6の超解像顕微鏡法システムを用いてデータを収集する一連のステップを示し、この場合にはフローセルがデータ収集中移動する。 図6の超解像顕微鏡法システムにより生成されるパターン化された照明の、フローセルの移動に適合した移動を示す。
本開示の態様は蛍光プローブの活性化及び脱活性化の並列化を各プローブの蛍光の検出前に使用する超解像顕微鏡法に関する。開示のシステムは、光源(例えば、レーザ)、光学部品、走査システム、及び検出器を備え、それらが相まって本明細書に記載する利点及び機能を提供する。加えて、上述した機能及び利点のいくつかを可能にするためにオーダメイドの特徴を有する蛍光プローブ又は色素の使用を実施することができる。本開示の態様は超解像顕微鏡法システムに並列化を提供する方法にも関し、この方法によれば光源の電力要求が様々な方法で低減される。これによりレーザの電力消費を実用又は所望レベル内に維持しつつ並列化を高めることができる。まとめると、開示の技術の実施形態は超解像顕微鏡法を通常の顕微鏡法に匹敵するスループットを有するものとすることができる。
本明細書に記載する例及び実施形態は、説明のために、誘導放出抑制(STED)顕微鏡法システム及び方法に焦点をあてるが、開示の特徴及び利点は他の決定論的な超解像顕微鏡法システム及び/又は確率論的な超解像顕微鏡法において実現することもできる。例えば、開示の特徴及び利点は、可逆的飽和性光学蛍光遷移(RESOLFT)、基底状態抑制(GSD)、飽和構造化照明顕微鏡法(SSIM)、過渡的に活性化されるクエンチャによる超解像(STAQ)、確率的光学再構築顕微鏡法(STORM)、光活性化局在顕微鏡法(PALM)、単分子局在顕微鏡法(SMLM)、超解像光ゆらぎイメージング(SOFI)、スペクトル精密距離顕微鏡法(SPDM)等の技術を用いるシステムにおいて実現することができる。加えて、いくつかの例がDNAシークエンシングの文脈で記載されるが、開示のシステム及び方法は高いスループットを有する超解像顕微鏡法の恩恵を受ける様々な用途に実装することができる。代表的な用途は、限定されないが、標的と相互作用する分子プローブの光学的検出を実行する方法、例えば核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、抗体結合アッセイ、タンパク質相互作用アッセイ、タンパク質−核酸相互作用アッセイ等を含む。他の代表的な用途は、光学的反応物質の消費又は生成に基づく酵素反応の検出、タンパク質、細胞又は他の生体分子と相互作用して光学的に検出可能な信号変化を生成する候補治療薬などの小分子の検出、光学的にラベル付けされた細胞又は組織の検出、等を含むことができる。本開示の様々な態様が特定の例及び実施形態に関して以下に記載されるが、それらは説明のためであって、本開示を限定するものではない。
いくつかの実施形態は他の光学顕微鏡法技術と比較して高いスループットを有する超解像顕微鏡法技術に関する。一実施形態では、これは並列化技術によって達成できる。例えば、本明細書に開示する並列化技術は、試料上の複数の位置を超解像技術を用いて同時に又はほぼ同時に画像化するために使用するころができる。別の例として、本明細書に開示する技術は、関心特徴部を解像するために時間遅延積分を利用するデータ収集技術を用いて十分な光を収集することを可能にしつつ、スループットを増加させるために使用することができる。別の例として、本明細書に開示する技術は、蛍光プローブが励起及び脱励起される頻度を減少させることによってデータ収集レートを増加させるために使用することができる。有利には、本明細書に開示する超解像顕微鏡法のためのシステム及び方法は、例えば所定の画像化用途における試薬の使用を少なくすること、超解像顕微鏡法と関連するコストを低減すること、及び/又は約100nm以下又は50nm以下のサイズを有する標的(いくつかの核酸配列ベースの用途において1平方ミリメートル当たり約1ヒト遺伝子に相当する)を解像すること、を可能にする。
微小構造を解像しようとしながら同時にスループットを増加させようと試みる際の問題は画像化に利用し得る十分な光子の欠如にある。例えば、蛍光プローブを使用する場合、結像する領域に存在する少数の蛍光プローブが少数の光子を生じする。一般的に、この問題は、長時間に亘る積分により十分な光子を収集して画像信号を生成する(例えば、信号対雑音比を向上させて構造又は特徴部を解像する)ことによって解決し得るが、これはデータ収集レートに悪影響を与え、ひいてはスループットに悪影響を与え得る。例えば、目標分解能が約100nm以下であるシークエンシング用途では、結像するクラスタ内に数十の分子が存在し得る。本明細書に記載するように、この問題は、システムが十分な光子を収集して目標の信号対雑音比を達成するために各特徴部に十分長くドゥエルするように、データ収集プロセスを並列化することによって解決することができる。いくつかの実施形態では、並列化は1つの場所ではなく複数の場所の蛍光プローブを同時に活性化することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、並列化はこれらの活性化された場所からの蛍光を同時に検出することによって達成することもできる。
一実施形態では、システムは、レーザパワー要件を低減するとともに並列化を高スループットで可能にするために有機蛍光プローブの光スイッチングを用いる。誘導放出と異なり、いくつかの有機蛍光プローブの光学遷移は比較的僅かなレーザエネルギーで達成できる。加えて、安定な暗状態を有するいくつかの有機蛍光プローブを使用することができる。一例では、このような蛍光プローブは、他の超解像技術における毎秒何千又は何百万の光飽和サイクルと対照的に、各画像化サイクルに対して単一の飽和サイクルで十分とすることができる。
加えて、本明細書に記載するように、標的蛍光プローブの励起及び抑制を達成するために、より少ないレーザパワーを使用する他の超解像技術を使用することができる。例えば、制限なしに、1つのこのような技術は過渡的に活性化された消光剤による超解像(STAQ)と称され、発光機能と消光機能を2つの結合した分子に分離する2部蛍光プローブを用いる。これは超解像画像化に必要とされる脱活性化パワーの低減をもたらす。STAQ技術の他の例及び説明は、2013年10月1日に発行された、「Composite probes and use thereof in super resolution methods」と題する、米国特許第8,547,533号明細本発明に含まれており、この特許明細書の全内容はあらゆる目的のために参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
STAQ技法は超解像光学技術であり、励起光ビーム内のプローブ集団の点広がり関数を縮小するために複合プローブ、例えば新型のリンカで分離された蛍光共鳴エネルギー転移(ERET)対、を使用する。点広がり関数の縮小は、例えば蛍光顕微鏡のスポットサイズを縮小する。複合プローブはポリプロリンなどのリンカで結合されたドナー部と過渡的に活性化される消光部(TAQ)からなる。一例では、TAQは、その基底状態において、ドナー発光バンド域で吸収を生じない。しかし、TAQは活性化された状態ではドナー発光域で有意の吸収を生じる。STAQ技術では、ドナー励起光ビームでドナー部を励起し、消光ビームで過渡的に活性化された消光部を励起し、ドナー発光の一部分をリンカを横断又は通過し得る消光機構によって有効に遮断する。
加えて、蛍光プローブの励起波長及び抑制波長を更に分離するために長いストークスシフト色素を用いることができる。いくつかの実施形態では、これにより抑制レーザの波長を抑制スペクトルのより効果的な部分にすることができ、それによってより低いレーザエネルギーを用いてこのような色素を有する標的蛍光プローブを脱活性化することができる。いくつかの実施形態では、これは約150nmのストークスシフトを有する色素を用いて達成することができる。様々な実施形態では、これにより同程度の抑制レーザエネルギーで典型的な色素と比較して約10倍以上効率の良い抑制を達成することができる。
これらの技術は超解像顕微鏡法技術で要求されるレーザパワーの量を低減するために使用できるが、光子の欠如という課題がまだ残る。本明細書に記載するように、十分な光子を収集して目標又は所望の信号対雑音比を達成するために各回折限界以下の領域が十分長く結像されるように効果的にドウェルする技術を用いる。
例えば、データ収集のために時間遅延積分(TDI)を利用するシステムを回折限界以下の領域を結像するために実装することができる。このようなシステムは、一列の回折限界以下の領域を走査し(例えば、試料のx次元に沿って一列に並ぶ複数の回折限界以下の領域であって、x次元以外の次元、例えばy次元方向に走査され)、試料上の一連の平行列をトレースする、及び/又は回折限界以下の領域の格子を走査する(例えば、試料のx及びy次元に沿って配列された複数の回折限界以下の領域であって、試料上の一連の平行列をトレースするように線形次元で走査される)。典型的なSTEDシステムはライン走査を使用し、単一のリング状励起領域を生成し、該リング状励起領域は試料を横切ってラスタ上にライン走査される。本明細書に記載するいくつかの例では、リング状領域は励起領域を表現するために使用される。しかしながら、領域及びリングは必ずしも円形である必要はない。むしろ、励起源及び整形光学技術を用いて他の形、例えばクローバ形、六角形又は三角形のアレイを生成してもよく、また高いレーザ強度の領域と低/ゼロレーザパワー強度の他の領域を生成する明及び暗領域の任意の変形例を生成してもよい。
本明細書に開示する改良型のSTEDシステムの実施形態では、リングのアレイを生成し、試料上を走査させて異なる領域を並列に走査することができる。いくつかの実施形態では、このアレイは並列ライン走査と事実上等価であり、システムは試料の個々の点がアレイ内の多数のリングを通過するように試料を走査することができる。照明点が通過する各STEDリングに対して、データ収集システムは生じる光子信号を積分するため、結像する点に対して事実上長い露光時間が得られる。一般的に、記載のTDIのような技術は検出光子が結像点に追従するように光子をアルゴリズム的にシフトさせるように構成することができる。これにより、超解像顕微鏡法システムは、結像点が異なる走査ラインに移動するときこれらの点に対する信号を積分することが可能になる。例えば、システムは、異なるセンサ(例えば、異なる光検出器又はイメージセンサ内の異なる画素)を持ち知恵異なる走査ラインからの信号を検出する、又は検出するように構成することができる。システムは、異なる検出器デバイス収集されたデータをそれぞれの走査ライン内の結像点と関連づけることができる。これはアレイの点に対して並列に起こり得る。従って、これらのTDIのような技術は、異なるSTEDリングにより複数回励起される試料上の同じ位置からの光子を収集することによって、試料の点に有効にドウェルする。
これらの超解像技術はDNAシークエンシングに関して特に有益である。超解像技術は、ウェルなどのアレイの回折限界以下のサイズの特徴部又は単核酸分子又は核酸アンプリコンのクラスタを提示する固体支持体上の他の特徴部に位置する核酸をシークエンシングするために適用するのが望ましい。超解像により許容されるより高い密度はより低いコストパーゲノムをもたらす。例えば、シークエンシングフローセルの特徴密度の増加は所定のシークエンシング試薬の溶液がより多くの核酸と相互作用し、より多くのシークエンシングデータを生成する。これは、ひいては、シークエンシングコストのかなりの低減をもたらし、それは試薬がシークエンシングランの多数のサイクルに亘って少しずつ消費されるためである。更に、超解像技術は試薬のより効率的な使用をもたらし、単位試薬当たりより多くのシークエンシングデータをもたらすことができる。消耗品コストは、機器コストパーゲノムに対比して、コストパーゲノムの大きな割合を占めるため、消耗品コストの低減の更なる進歩は有益である。画像化速度の向上は超解像シークエンシングの実施に大きな向上をもたらすことができる。従って、本明細書に記載するいくつかの実施形態はシークエンシング用の超解像顕微鏡法システムの画像化の速度を増加する技術を含む。
本明細書に記載する超解像顕微鏡法の改善点は様々な超解像技術に適用することができる。超解像顕微鏡法は「誘導放出」を利用する技術を含むが、より一般的には、分子を明状態と暗状態の間で空間的に制御された方法でスイッチするシステム及び方法に適用可能である。誘導放出は光スイッチングを達成する1つの方法である。いくつかの実施形態では、誘導放出が分子をスイッチするために非現実的に高いレーザ強度を必要とする場合には、異なる光スイッチング機構を使用することができる。代替光スイッチング機構は、例えば、限定ではないが、シングレット状態とトリプレット状態との間の遷移、消光状態と非消光状態との間の遷移、光化学遷移、光異性化、等を含む。
高スループットを有する超解像顕微鏡法システムの概説
次に図1につき説明すると、並列化を用いる超解像顕微鏡法システム100の一例が示されている。この例示的な顕微鏡法システム100は、本明細書に記載する並列化技術の1つ以上及び/又は超解像画像化を達成するために使用される光強度の量を低減する技術の1つ以上を実装すること及び/又は実施するように構成することができる。顕微鏡法システム100の特定の例示的実施形態は図2A−2D及び図6に関して説明される。顕微鏡法システム100は本明細書に記載する技術の任意の適切な組み合わせを用いて試料130の超解像画像を生成する。顕微鏡法システム100は、限定ではないが、例えばSTED、STAQ,SSIM,GSD,PALM,SMLM,SOFI,SPDM等及びこれらの技術の変形例等のような超解像技術を実装することができる。
顕微鏡法システム100は光源110を含み、光源110は試料上の目標点で蛍光プローブを選択的に活性化及び/又は脱活性化するための光を提供する。光源110は1つ以上のレーザとしてよい。光源110は異なる波長の光を提供する光源を含んでよい。光源110は選択的に蛍光発光を活性化する及び/又は蛍光発光を禁止するよう調整される波長を有する光を提供してもよい。
顕微鏡法システム100は光源110から試料130までの光路120を含む。光路120はミラー、レンズ、4分の一波長板、半波長板、偏光子、フィルタ、ダイクロイックミラー、ビーム分割器、ビーム合成器等の1つ以上の組み合わせを含む。光路120は光源110からの光を試料に導くことができる。更に、光路120は、試料130から発光される光を積分検出システム150に導く光学部品を含む、又は導くように構成することができる。いくつかの実施形態では、光源からの光を試料に導くために用いる光学素子の一部分は試料130からの光を積分検出システム150に導くためにも使用する。光路120は対物レンズを含んでもよい。対物レンズは水又はオイル中に浸漬してよいが、浸漬せずに使用してもよい。超解像顕微鏡法と共に使用される光路及び光学系の例は、2009年9月15日に発行された、「Confocal Imaging Method and Apparatus」と題する、米国特許第7,589,315号明細書、2015年2月10日に発行された、「Systems, Methods and Apparatuses to Image a Sample for Biological or Chemical Analysis」と題する、米国特許第8,951,781号明細書、及び2015年11月24日に発行された、「Integrated Optoelectronic Read Head and Fluidic Cartridge Useful for Nucleic Acid Sequencing」と題する、米国特許第9,193,996号明細書に含まれている。
顕微鏡法システム100は画像を生成するために光を試料130と相対的に効率的に移動させて試料を走査する走査システム140を含む。走査システム140はいくつかの実施形態では光路120内に実装することもできる。例えば、走査システム140は光路120内で互いに相対的に移動して光源110からの光を試料130横切って効率的に移動させる1つ以上の走査ミラーを含んでもよい。走査システム140は、試料が光源110からの光に対して移動するように試料130を物理的に移動させる機械的システムとして実装してもよい。操作システム140は、光路120内の光学部品と、光源からの光と試料130が互いに相対的に移動するように試料130を物理的に移動させる機械的システムとの組み合わせとすることもできる。
顕微鏡法システム100は積分検出システム150を含み、システム150は試料130の画像データを収集し処理するために1以上の光検出器並びに関連の電子回路、プロセッサ、データストレージ、メモリ及び同類のものを含む。積分検出システム150は光電子増倍管、アバランシフォトダイオード、イメージセンサ(例えば、CCD,CMOSセンサ等)及び同類のものを含んでよい。いくつかの実施形態では、積分検出システム150の光検出器は光信号を増幅する構成要素を含んでよく、単光子に感応するものとしてもよい。いくつかの実施形態では、積分検出システム150の光検出器は複数のチャネル又は画素を有してよい。積分検出システム150は試料130から検出した光に基づいて超解像画像を生成することができる。
光路120は、試料130上に複数の活性化及び/又は脱活性化領域を生成するアレイ生成器121を含む。これらの領域は走査システム140によって試料130上を走査されて、回折限界以下の領域を画像化のために選択的に活性化することができる。積分検出システム150は、複数の活性化及び/又は脱活性化領域が試料130上を走査されるとき、試料130の個々の点に対応する信号を積分することができる。試料130上の個々の点に対して、積分検出システム150は、異なる活性化及び/又は脱活性化領域により異なる時間に活性化される個々の点に対応する検出信号を選択的に集計することができる。従って、アレイ生成器121と積分検出システム150の組み合わせは試料130上の複数の点からの光を同時に又はほぼ同時に検出し、複数の点からの検出光を時間とともに積分して試料の少なくとも一部分の超解像画像を生成することができる。
STEDリングのアレイを生成する顕微鏡法システムの実施形態
図2A−2Dは図1の超解像顕微鏡法システム100の種々の実施形態を示す。これらの例示的な顕微鏡法システムはSTED超解像技術を実装するものとして記載するが、これらのシステムは蛍光プローブを選択的に活性化するために励起光源と抑制光源を利用する任意の適切な超解像技術を利用することができる。これらのシステムはTDIのようなデータ収集手法を利用し、試料の超解像イメージを生成するために、試料上の個々の点からの信号を複数の走査に亘って積分する。例えば、これらのシステムは並列ライン走査のアレイを生成し、画像化される1つの点がアレイ内の各ライン走査を通るようにし、検出システムが各ライン走査からの信号を積分する。一例として、アレイ内に10のラインがある場合、このシステムは、単一のライン走査を有するSTEDシステムと比較して、システム中の試料の移動速度がほぼ同じであれば、約10倍の露光時間を効率的に提供することができる。
それぞれの顕微鏡法システム200a−200dの積分検出システム250a−250dは信号を積分するために検出信号を試料130上の対応する点と関連させる、又は関連させるように構成できる。積分検出システム250a−250dは、例えばCCDカメラ、スターリングセンサ、複数のPMT等のイメージセンサを利用し得る。積分検出システム250a−250dは、検出信号を信号検出の空間情報に基づいて対応する点と関連させる、又は関連させるように構成することができる。例えば、光子を検出するセンサの位置を特定のライン走査と関連させることができる。別の例では、センサからの信号のタイミングを試料上のライン走査の特定の位置と関連させることができる。タイミング情報と位置情報を組み合わせて、積分検出システム250a−250dは異なる時点の異なるセンサからの信号を試料上の適切な点と関連させることができる。こうして、検出システムは試料上の特定の点から放出された光子に対応する異なるセンサからの信号を正確に積分することができる。
概して、STED顕微鏡法では、抑制レーザは抑制領域により囲まれた「放出許可」領域を生成するように励起レーザと同軸配置される。抑制レーザは本明細書ではリングの孔が放出許可領域となるリング状の抑制領域を生成するものに関して例示される。放出許可領域は通常の顕微鏡の通常の回折限界スポットより大幅に小さく、この放出許可領域で試料を走査することによって超解像イメージが得られる。STED顕微鏡法は2つの回折限界強度分布(例えば、本明細書に記載するように、他の分布構成もあり得るが、ガウス励起分布及びリング状抑制分布)を蛍光励起及び誘導放出に基づく光スイッチング機構とともに組み合わせる。これらの特徴を組み合わせは試料からの蛍光放出の空間閉じ込めを可能にし、ひいては超解像画像化を可能にする。
より詳しくは、共焦点点広がり関数(PSF)を用いて回折限界領域内の蛍光分子を励起することができる。その後直ちに、分子が緩和して光子を放出する前に、「抑制パルス」(例えば、リング状抑制パルス)を用いてPSFの外周内の励起分子を誘導放出の過程を経て基底状態に戻すことができる。十分に高いレーザ強度を用いることによって、このリングは基底状態への遷移を飽和させ、リングの中心部が励起されたままリング状抑制パルス内のほぼすべての分子を基底状態にすることができる。抑制パルス後に、リングの中心部に空間的に閉じ込められた励起分子はそれらの蛍光発光タイムスケールに従って緩和し、光子を放出し、これらの光子はその後検出される。これらの光子は回折限界以下の領域から発生するため、これらの光子を用いて超解像画像データを生成することができる。フル画像はこのPSFリングで試料を走査し、信号を光検出器で収集することによって生成することができる。
従来のSTEDシステムは、試料内の各位置をスポットで走査し、スポットは信頼できる測定(例えばDNAシークエンシングのための基本的要求)のために十分な光子が収集されるように十分長い間所定の位置に存在させるために、低速である。本明細書に記載するように、顕微鏡法システム200a−200dはSTEDリングのアレイを生成する、又は生成するように構成することができ、データ収集はTDI走査と同様に行うことができる。例えば、一連のSTEDリングライン走査を用いることによって、試料上の個々の点のより長い有効露光を提供することができる。従って、本システムは、より高い実効画像化速度で単一リングSTEDシステムに匹敵する信号対雑音比を有するデータを得ることができる。
本明細書に記載するように、TDIのようなデータ収集は、同時に試料を移動させつつ試料上のそれぞれの点に対して長い露光時間を達成する一つの方法である。例えば、物体は一連のセンサを通過する(例えば、個々のセンサはCCDチップ上のピクセル、APD上のチャネル、個別のフォトダイオード、個別のPMT等とすることができる)。物体が移動すると、光子がセンサに収集され、物体が1つのセンサから次のセンサへ移動すると、累積された信号が一連のセンサに沿ってシフトされる。この信号のシフトは信号をセンサからセンサへ物理的にシフトさせる及び/又は積分検出システム250a−250d内でアルゴリズム的にシフトさせることができる。物体が一連のセンサの終りに到達する時点で、物体のイメージは異なるセンサからの複数の露光を含む。異なるセンサからの信号を集計(例えば積分)すると、試料上の点の単一露光を集計する類似のシステムと同等もしくはそれよりより良い信号対雑音比を有するイメージを生成することができる。
一例として、単一リングを有するSTED顕微鏡法システムは、100nmウェルを毎秒約20,000〜100,000ウェルのスループットで走査する、又は走査するように構成することができる。このスループットは約毎秒500Mウェルに増加することが望ましい。本明細書に記載する超解像顕微鏡法システムは、イメージを生成するために使用するPSFの数を増加することによって、この目標スループットを達成又は超えることができる。例えば、25,000のスポットを有するSTED顕微鏡法システムは同じ解像度(例えば100nmウェル走査)を維持しながらこの目標スループットを達成することができる。
図2Aは、複数の励起レーザ212a、複数の抑制レーザ214a及び複数の検出器252aを用いて複数のSTEDリングを生成する、又は生成するように構成されている、例示的な顕微鏡法システム200aを示す。顕微鏡法システム200aは独立レーザ(例えば、励起レーザ212a及び抑制レーザ214a)、ビームステアリング(例えば、光路220a又は走査システム240aの一部分)、及びSTEDリングのアレイ内のすべてのリングに対する検出装置(例えば検出器252a)を含むことができる。顕微鏡法システム200aは典型的なSTED顕微鏡法システムで使用される光路及び検出装置をアレイ内の各リングに対して複製する、又は複製するように構成することができる。走査システム240aは、それぞれの励起レーザ212a及び抑制レーザ214aを用いて生成されたリングを試料130を横切って走査させるライン走査モジュール242aを含む。リングのアレイのライン走査の例は図4A及び4Bに関して本明細書に詳しく説明される。
積分検出システム250aは検出器252aからの信号を積分して試料130上の個々の点に対する積分信号を生成することができる。積分検出システム250aは走査システム240aからの情報を、例えば試料130上の個々の点に対するこれらの積分信号を生成するために検出器252aからのどの信号を積分するかを決定するために使用することができる。
図2Bは、光路220b内に偏向器222を含む例示的な顕微鏡法システム200bを示す。偏向器222は励起レーザ212b及び抑制レーザ214bからの光をそれぞれ偏向してSTEDリングのアレイを生成するように構成されている。偏向器222を有する顕微鏡法システム200bは、タイムシェアリング手法を用いてSTEDリングのアレイを提供することができ、この場合には同じレーザ源がアレイ内の各リングのための励起パルを生成するために(例えば励起レーザ212b)及び抑制パルスを生成するために(例えば、抑制レーザ214b)が使用される。偏向器222は高速偏向器等の任意のタイプの高周波数ビームステアリング装置、例えば音響光学偏向器としてよい。より良い説明のために、偏向器222は本明細書では高速偏向器と称するが、偏向器222は本明細書に記載するように任意の適切な偏向器としてよい。
走査システム240bはそれぞれの励起レーザ212b及び抑制レーザ214bを用いて生成されたリングを試料130を横切って走査させるライン走査モジュール242bを含む。リングのアレイのライン走査の例は図4A及び4Bに関して後に詳述される。
いくつかの実施形態では、積分検出システム250bはSPAD、APD、PMT等の高周波数単光子検出器を含むことができる。検出器は様々なSTEDライン(例えば、アレイ内のリング)の間でタイムシェアすることができる。積分検出システム250bは時間の関数として発生した信号を対応するリング及び試料130上の位置と相関させるデータ収集システムを含むことができる。これにより積分検出システム250bは複数のリングからの信号を積分することが可能になり、積分された信号は試料上の特定の点のデータに対応する。
いくつかの実施形態では、積分検出システム250bは空間コンポーネントを有する検出器を含むため、検出器で検出された光子の位置を検出光子のタイミングと一緒に用いて試料130上の個々の位置のイメージデータを生成することができる。例えば、検出器はAPDアレイ、イメージセンサ、マイクロチャネル光検出器等としてよい。顕微鏡法システム200bの回折限界より遠く離れた試料130上の点からの光は検出器の異なる位置に向けることができる。リングのアレイは、図4A,4B及び図5に関して詳細に説明されるように、アレイ内の個々のリングがそれぞれ顕微鏡法システム200bの回折限界を超える距離で互いに離れるように構成することができる。
いくつかの実施形態では、個々のリングに対応する試料上の個々の点から放出される光は光路220b及び/又は高速偏向器222を用いて検出器上の異なる位置に向けることができる。高速偏向器222を用いて生成されたリングは走査システム240bによって試料130を横切って走査される。走査システム240bはリングのアレイを試料を横切って走査させる走査ミラーを含んでよい。積分検出システム250bは高速偏向器222及び/又は走査システム240bからの情報を用いて検出器からのどの信号が試料130上の個々の点と対応するかを決定することができるため、積分検出システム250Bは試料130上の個々の点に対応する検出器からの信号を積分することができる。
図2Cは、光路220c内に位相マスク224を含む例示的な顕微鏡法システム200cを示す。位相マスク224は励起レーザ212c及び抑制レーザ214cからのそれぞれの光を偏向してSTEDリングを生成する。位相マスク224を有する顕微鏡法システム200cはそれぞれのレーザビームを複数のビームに分割する。いくつかの実施形態では、単一の励起レーザ212c及び単一の抑制レーザ214cを用いてアレイ内のすべてのリングにそれぞれの励起及び抑制パルスを提供することができる。いくつかの実施形態では、位相マスク224は回折格子を含んでよい。
顕微鏡法システム200cの走査システム240cはアレイ内のリングを試料130を横切って走査させることができる。走査システム240cは試料をアレイ内のリングに対して移動させることができる。
いくつかの実施形態では、積分検出システム250cは試料130上の点からの信号を検出する複数の検出器252cを含み、これらの点は生成されたアレイのリングが入射する試料130上の位置に対応する。検出器252cは本明細書に記載するような任意の適切な光子検出器、例えば、限定されないが、PMT,APD,CCDカメラ、スターリングセンサ等を含んでよい。積分検出システム250cは信号を試料30上の対応するリング及び位置と相関させるデータ収集システムを含んでよい。これは積分検出システム250cが複数のリングからの信号を積分することを可能にし、積分された信号は試料130上の特定の点の画像データに対応する。
いくつかの実施形態では、検出器252cはSTEDリングのアレイ内の各リングに対して1つの検出器を備える。特定の実施形態では、検出器252cはアレイ内の各STEDリングに対応するチャネルまたはセンサを有するアレイ検出器を備える。このようにすると、各検出器又はセンサはアレイ内の特定のリングで励起された試料上の点から放出された光に対応する信号を発生する。積分検出システム250cは走査システム240cからの情報及びタイミング情報を用いて個々の検出器又はセンサからのどの信号が試料上の特定の点に対応するかを決定することができる。例えば、本明細書に記載の走査及び時間遅延積分技術を用いて、複数の異なる検出器は異なる時点で試料130上の特定の点から放出される光を検出することができる。積分検出システム250cはそれぞれの検出器からの適切な信号を積分して試料130上の個々の点に対する積分信号を決定することができる。
いくつかの実施形態では、積分検出システム250cは空間コンポーネントを有する検出器を含むため、検出器で検出された光子の位置を検出した光子のタイミングと一緒に用いて試料130上の個々の位置のイメージデータを生成することができる。例えば、検出器はAPDアレイ、イメージセンサ、マイクロチャネル光検出器等としてよい。顕微鏡法システム200cの回折限界より遠く離れた試料130上の点からの光を検出器の異なる位置に向けることができる。リングのアレイは、図4A,4B及び図5に関して詳細に説明されるように、アレイ内の個々のリングがそれぞれ顕微鏡法システム200bの回折限界を超える距離で互いに離間するように構成することができる。
いくつかの実施形態では、個々のリングに対応する試料上の個々の点から放出される光は光路220cを用いて異なる検出器252cに向けることができる。位相マスク224を用いて生成されるリングは、走査システム240c、特に走査システム240cのライン走査モジュール242c、によって、試料130を横切って走査させることができる。走査システム242cはリングのアレイを試料130を横切って移動させる走査ミラーを含んでよい。積分検出システム250cは、走査システム240cからの情報及び検出器252cに関する情報を用いてそれぞれの検出器252cからのどの信号が試料130上の個々の点に対応するかを決定することができるため、積分検出システム250cは試料130上の個々の点に対応する特定の検出器からの信号を積分することができる。走査システム240cは、それぞれの励起レーザ212c及び抑制レーザ214cを用いて生成されたリングを試料130を横切って走査させるライン走査モジュール242cを含む。リングのアレイのライン走査の例は図4A及び4Bに関して詳細に説明される。
図2Dは、光路220d内に導波路226を含む例示的な顕微鏡法システム200dを示す。導波路226は導波路226の内部で定在モードを生じる。顕微鏡法システム200dは抑制レーザ214dにより提供される光の波長をシフトさせて導波路226内の定在モードのピーク及び谷の試料130に対する位置を移動させることができる。導波路226を有する顕微鏡法システム200dは、励起レーザ212dを用いて試料を照明し、抑制レーザ214dに対して、複数のノード及びアンチノードを含み、ノードが抑制レーザのゼロ強度、従って試料上の励起領域、の位置に対応する、定常モードを生成することによって、STEDリングのアレイを提供することができる。いくつかの実施形態では、単一の励起レーザ212d及び単一の抑制レーザ214dを用いてアレイの全リングに対するそれぞれの励起光及び抑制パルスを提供することができる。いくつかの実施形態では、導波路226は導波路カプラに対して互いに直角に配置された複数の導波路を含む。いくつかの画像化では、導波路226は光キャビティを含む。特定の実施形態では、導波路226はファブリペロ干渉計を含む。
図3は図2Dの顕微鏡法システム200dの光路内の導波路226の一例を示し、導波路226は定在波227を生成する。定在波227のピーク(又はアンチノード)はクラスタのような結像すべき試料130上の抑制位置に対応し、定在波のノード229は抑制光源のゼロ強度の位置に対応し得る。導波路226は入来光223を反射して定在波227を生成するための反射器225を含んでよい。
定在波のピーク228及びノード229の位置をシフトさせるために、注入光223のノード波長を変更することができる。例えば、光源がダイオードレーザである場合には、レーザダイオードの温度を変更してレーザの出力波長を変更することができる。別の例では、熱を導波路22内で用いてピーク228及びノード229の位置をシフトさせることもできる。導波路226内の温度変化は屈折率の変化を生じ、それによって導波路226内の光路長が増減する。
図2Dに戻り説明すると、顕微鏡法システム200dは、導波路内の定在波227の特性を変化させるため及び/又は導波路226に供給される光223の波長を変調するために、試料130を導波路226に対して移動させる走査システム240dを含んでよい。
顕微鏡法システム200dは試料130上の複数の点からの光を検出する積分検出システム250dを含んでよい。図1及び図2A−2Cに関して記載した検出システムと同様に、検出システム250dは試料130からの信号を積分し、試料130上の多数の点に対してTDIのようなデータ収集を提供することができる。これは、複数の検出器、複数のチャネル又はセンサを有する1以上の検出器、異なるSTEDリングの間でタイムシェアされる複数の検出器、空間的に依存する複数の検出器(例えば、検出信号の位置が試料130上のSTEDリング及び/又は位置に関する情報を提供する)、時間依存である1以上の検出器(例えば、検出信号の時刻が試料130上のSTEDリング及び/又は位置に関する情報を提供する)、又はこれらの任意の組み合わせ、を用いて達成することができる。
STEDリングのアレイを用いるTDIのようなデータ収集
図4A及び4BはSTEDライン走査の例を示す。STEDライン走査は、試料を横切って(例えば、図では水平に)走査される複数のSTEDリング415を含み、各リングは励起領域416及び抑制領域418を有する。試料とSTEDリングのアレイ415は、試料上の点432が複数のSTEDリング415の少なくとも一部分を通過するように互いに相対的に移動する。STEDリングが点432に入射するたびに、点432は光を放出し、それらの光は、本明細書に記載されるように、1つ以上の検出器により検出される。これらの検出器からの信号を時間とともに積分して点432に対する積分信号454を生成することができる。検出システムは試料上の点に対する信号を時間とともに積分するTDIのようなデータ収集システムを含んでよい。STEDリング415のアレイを使用することによって、信号を目標の又は所望の信号対雑音比で収集すると同時により速い走査時間を達成することができる。
本明細書に記載するTDIのようなデータ収集技術を説明するために、これから特定の例について説明するが、これは本開示の範囲を制限することを意図するものではない。図4Aを参照するに、期間T1中に、点432は“A”STEDリングライン走査と一致し、光を放出する。期間T2中に、点432は“B”STEDリングライン走査と一致する。期間T3中に、点432は“C”STEDリングライン走査と一致し、以下同様で、期間T10中に“J”ライン走査と一致する。各期間T1−T10中に点432により放出される光は特定の検出器で検出することができる。例えば、期間T1中に点432により放出される光は検出器D1で検出することができ、期間T2中に点432により放出される光は検出器D2で検出することができ、期間T3中に点432により放出される光は検出器D3で検出することができ、以下同様である。検出システムは適切な期間及び適切な検出器からの信号を合計して点432に対する積分信号454を生成することができる。例えば、検出システムはそれぞれの期間T1−T10中にそれぞれの検出器D1−D10により収集された信号S1−S10を加算して、積分された信号S_Total:
S_Total=S1+S2+...+S10
を決定することができる。ここで、SNは期間TN中に検出器DNにより検出される信号である(ここでN=1,2,3,...10)である。これは試料上の複数の点に対して行うことができ、試料上の各点は光を放出し、その光は特定の期間中に特定の検出器で検出される。
検出システムは試料上のどの位置からの光子が検出されるか追跡することができる。これはソフトウェア、ハードウェア又は両方の組み合わせを用いて行うことができる。例えば、個別の検出器は特定のSTEDリングからの励起に応答して放出される信号を検出することができる。従って、その検出器は当該STEDリングと関連する。検出システムは特定の時点で検出された信号を試料上の特定の点と関連づけることができる。検出器はCCDカメラ、PMT,APD、スターリングセンサ等としてよい。
いくつかの実施形態では、検出器は光子検出素子のアレイを有するイメージセンサ又は類似の検出器としてよい。特定の実施形態では、試料を試料走査方向(例えば図4A及び4Bでは垂直方向)に機械的にステップ移動させ、各機械的ステップは新画素又は光子検出素子へのシフトに対応させることができる。これは、各STEDリングが顕微鏡法システムの回折限界より大きい又はそれに等しい距離だけ離れている場合に有利である。様々な実施形態では、試料上の特定の点に対する信号を積分するために、試料が機械的に走査されるにつれて、電荷を画素から画素へ(又は光子検出素子から光子検出素子へ)シフトさせて試料上の特定の点を検出器に追従させることができる。このようにして、各点の信号を検出ハードウェアを用いて積分することができる。
図4Aは、試料を横切るライン走査の間ほぼ垂直方向に整列して配置されたSTEDリング415のアレイを示す。各STEDリングに対する励起領域416は使用中の特定の顕微鏡法システムの回折限界より大きい又はそれに等しい距離だけ離すことができる。更に、STEDリング415のアレイは、隣接するリングの抑制領域418が隣接するリングの励起領域416と重複しないように配置することができる。
図4Bは、試料を横切るライン走査中に水平方向及び垂直方向にずらせて配置されたSTEDリングのアレイ415を示す。各STEDリングの励起領域416は使用中の特定の顕微鏡法システムの回折限界より大きい又はそれに等しい距離だけ離すことができる。更に、STEDリング415のアレイは、隣接するリングの抑制領域418が隣接するリングの励起領域416と重複しないように配置することができる。リングを水平方向及び垂直方向にずらせることによって、隣接するリングの励起領域416は、走査される励起領域が試料を横切る各走査に対して(走査方向に直角の次元で)互いにほぼ隣接するように走査することができる。この場合、図4Aに示す配置と比較して、走査される励起領域が互いに離間されるため、試料を横切る各走査に対して励起領域の間に(走査方向に直角の次元で)空間が存在する。
図5は、STEDリング510の格子による試料の走査の一例を示し、本例では格子線は走査方向に対して非直角で非平行である。STEDリングの格子は本明細書に詳述したように生成することができる。いくつかの実施形態では、STEDリング510の格子内の各リングは隣接するSTEDリングから顕微鏡法システムの回折限界より大きい又はそれに等しい距離だけ離すことができる。例えば、隣接するSTEDリングは少なくとも約200nmだけ、少なくとも約250nmだけ、又は少なくとも約300nmだけ離すことができる。
STEDリング510の格子を試料に向けて試料を選択的に励起することができる。放出される光はCCDイメージセンサ等の複数の画素を有するイメージセンサ505で検出することができる。いくつかの実施形態では、STEDリング510を通る格子線(ひいては、STEDリング510により励起される試料上の格子領域)は、図に示すように、イメージセンサ505の画素の配列に対して非直角で非平行である。特定の実施形態では、STEDリング510を通る格子線はイメージセンサの画素の幾何学配置に対して直角又は平行である。イメージセンサ505は毎秒何千フレームのイメージデータを収集する高速イメージセンサとしてよい。いくつかの実施形態では、イメージセンサ505は少なくとも毎秒約10,000フレームでデータ収集し、STEDリング510の格子は少なくとも約10,000リングを含む。いくつかの実施形態では、倍率が十分高い場合には通常のTDIセンサを使用することもできる。この場合には、ニプコー円板共焦点顕微鏡に類似するセンサで画像を形成することができる。
試料はSTEDリング510の格子に対して傾いた方向に機械的に走査することができる。このようにすると、各STEDリング510は唯一つのパスを辿って試料を横切るため、STEDリングの集合は実質上試料全体を画像化することができる。試料を撮像するために、試料を位置させ、励起及び抑制光源を発光させ、放出される光を検出し、試料を新たな位置に移動させることができる。このプロセスは試料がSTEDリング510の格子を通過するまで繰り返される。これにより超解像顕微鏡法システムは単一のSTEDリングを有するSTED顕微鏡法システムと比較して大きな試料を比較的短時間で走査することが可能になる。
超解像顕微鏡法システムのレーザパワーの低減
しかしながら、リングの数の増加はレーザパワー消費を非実用的な高レベルに増加する可能性がある。これは、少なくとも部分的に、抑制又はSTEDレーザは色素の発光スペクトルに対して赤方シフトした波長で色素発光スペクトルの尾部を標的とするために起こり得る。これは、基底状態への色素の誘導放出を刺激するとともに励起スペクトルとの重複による色素の再励起を避けるために行われる。発光スペクトルの尾部において、STEDレーザと誘導放出プロセスとの間の断面は極めて低く、基底状態に起因する誘導放出を達成するために比較的高いパワー密度を必要とする。望ましくない高いレーザパワー消費の別の潜在的な原因は、誘導放出が急速に(例えば、サブナノ秒タイムスケールで)起こり、蛍光発光前に抑制を生起せしめることにある。これらの短いタイムスケールのために、STEDパルスは比較的強く且つ毎秒およそ百万回発生するように 構成される。
このようなシステムにおいて消費されるレーザパワーの量を低減するために、異なる光スイッチング機構を用いて回折限界以下の画像化を達成する技術を本明細書に記載する。同様に、このようなシステムにおいて消費されるレーザパワーの量を低減するために、抑制レーザがスペクトルのより有効な部分に作用して誘導放出を生じるように長いストークスシフト色素を用いることができる。
広視野パターン化照明及び化学光スイッチングを用いる顕微鏡法システムの例
図6は、図1の超解像顕微鏡法システム600の別の実施形態を示す。顕微鏡法システム600は、励起レーザ612及び抑制レーザ614を有する光源610を含む。顕微鏡法システム600は、広視野光学系621及び干渉格子光学系623を含む光路620を含み、光路620は光源からの光を試料630に導き、試料630からの光を積分検出システム650に導く。顕微鏡法システム600は、イメージデータを生成するために試料630と光源610からの光を互いに相対的に移動させて試料630を走査する走査システム640を含む。広視野光学系621は励起レーザ612からの光を試料の比較的大きな領域全体に広げて照明領域内のすべての蛍光プローブを活性化することができる。干渉格子光学系623は、回折限界以下の領域内の標的蛍光プローブ(例えば、単一の又はほんの数個の分子)を活性のままにしながら、励起レーザ612により照明された領域(又は画像化すべき領域)内のほとんどのすべての蛍光プローブを選択的に脱活性化する抑制レーザ614からの光のパターンを生成することができる。
顕微鏡法システム600は、広視野のパターン化された照明を有機蛍光プローブの化学光スイッチングと組み合わせることによって、超解像顕微鏡法を低減された又は低いレーザパワー消費及び比較的高いスループットで達成することができる。これにより長期間安定な回折限界以下の活性化領域を生成するために使用することができる。これらの活性化領域は本明細書に記載した検出技術の1つ以上を用いて高いスループットで画像化することができる。
顕微鏡法システム600は本明細書に記載した高速走査技術及びTDIのようなデータ収集技術とともに使用することができる。更に、顕微鏡法システム600は、(例えば、誘導放出技術と対照的に)比較的僅かなレーザパワーで作動する光学遷移を用いることによって比較的僅かなレーザパワーを消費するものとし得る。同様に、顕微鏡法システム600は安定でその上可逆的な暗状態の使用により比較的僅かなレーザパワーを消費するものとし得る。安定な暗状態の利用は顕微鏡法システム600、他の超解像技術における毎秒何千又は何百万の光飽和サイクルと対照的に、各画像化サイクルに対して単一の飽和サイクルの使用を可能にすることができる。これは、一般的に光学遷移を急速に飽和させるために高いレーザパワーが繰り替えし使用されるため、レーザパワーを低減する。顕微鏡法システム600の別の利点は、システム600は光学パターン化ステップと読み取り/画像化ステップを分離することができることにある。
顕微鏡法システム600はSTORM顕微鏡法及び他の同様の技術を用いて実装することができる。STORM顕微鏡法はオン/オフ遷移を誘起するために光化学スイッチング機構を使用する。例えば、STORM顕微鏡法は単分子蛍光信号の統計スイッチングに基づくタイプの超解像光学顕微鏡法技術である。STORMは蛍光状態と暗状態の間で切り替え可能な蛍光プローブを利用し、顕微鏡法システム600は蛍光プローブの光学的に分解可能な部分を励起することができる。蛍光プローブの一部分のみが励起されるため、顕微鏡法システム600は蛍光プローブの位置を検出した蛍光信号の中心位置に基づいて比較的高い精度で決定することができる。本明細書に記載するパターン化照明に基づいて蛍光プローブのサブセットをそれぞれキャプチャする試料の複数のスナップショットを用いて、最終超解像は像を蓄積した位置から再構成することができる。
顕微鏡法システム600は、蛍光色素を還元又はそれと反応する還元剤(例えばMEA)を含むイメージングバッファを利用することができる。これは、その後非蛍光暗状態に存在するラジカルアニオン又は化学的に変更された色素を生成する。特定の実施形態では、この反応は蛍光プローブをシングレット状態に励起することによって光化学的に高めることができる。還元後に、蛍光プローブは、色素が酸素等の酸化剤と反応するまで、ある期間暗状態にとどまる。特定の実施形態では、この反応もUV光(例えば、役405nmの光)を使って光化学的に高めることができ、酸素濃度をオンスイッチングのレートを調整するために使用することができる。
STORMでは、バッファ内の酸素濃度を、色素が目標又は所望のレートでオン状態にスイッチバックするような色素のオフ状態の安定性に合致するように調整することができる。安定なオフ状態を有する色素(例えば、ローダミン及びオキサジン色素)は、色素が目標レートでオン状態(又はオキサジン)にスイッチバックするように、環境レベル(比較的高いレベル)の酸素中で光スイッチすることができる。不安定なオフ状態色素(例えば、カルボシアニン色素)は、色素が目標又は所望の期間に亘ってオフ状態にとどまるように、低い酸素濃度(酵素的酸素排除システムを用いて達成される)中で光スイッチすることができる。顕微鏡法システム600は、安定なオフ状態色素を抑制酸素レベルで使用して色素の安定性を更に高め、長いオフ状態(例えば、約1秒より大きい又はそれに等しいタイムスケールで)を達成することができる。本システムはこれらの色素の組み合わせを使用してもよい。特定の実施形態では、例えば100mWのレーザを用いて50×50μmの視野内でオン及びオフ状態間のスイッチングを誘起することができる。このような実施形態では、顕微鏡法システム600は、誘導放出を用いる典型的な超解像技術(例えば、STED超解像顕微鏡法システム)より、オン及びオフ状態間のスイッチングを約2500倍効率的にすることができる。
一般的に、STORM顕微鏡法で使用される光化学遷移は低速すぎる(例えば、ミリ秒程度)ために高スループットの超解像顕微鏡法システムに使用されない。しかし、顕微鏡法システム600は、広視野励起と抑制パターン化の組み合わせにより高いスループットを達成しながらSTORMのような光化学反応を利用する。例えば、顕微鏡法システム600は、蛍光分子を長寿命暗状態(例えば典型的なSTORM応用における暗状態より約10−1000倍長い、又は約10ms以上、約100ms以上、又は約1s以上のオフ状態)にスイッチし、広視野パターン化照明を用いて試料全域に亘るオン/オフ活性化を標的回折限界領域が活性化されるように成形することができる。いくつかの実施形態では、オフ状態は少なくとも約1秒、2秒、5秒、10秒、20秒,30秒,40秒,50秒,60秒,2分,5分,10分等の間持続してよい。長寿命暗状態は回折限界以下のパターン化試料を画像化することを可能にする。画像化の後で、蛍光プローブは再活性化することができ(例えば、UV光を用いて)、回折限界領域の別のサブセットを再活性化することができる。
この光化学スイッチング法は蛍光プローブの大部分をオフ状態にバイアスするために使用することができる。残りの十分に離れた「オン」分子は積分検出システム650を用いて画像化することができる。積分検出システム650は、個々の分子又は2,3〜4,5個の分子を検出し、対応する点広がり関数(PSF)の中心を決定することによって分子位置を回折限界以下の精度で決定することができる。蛍光プローブの統計的オン及びオフスイッチングは画像の構築にしようすることができる。
特定の実施形態では、有機蛍光プローブを顕微鏡法システム600と関連して使用することができる。例えば、プッシュプルフルオロゲンを使用することができる。様々な実施形態では、光スイッチ可能なたんぱく質よりむしろ有機色素を顕微鏡法システム600と関連して使用することができる。有機色素の場合、遷移は光化学的であり、従って少なくとも部分的に所要の化学反応のためにその繊維は光スイッチ可能なたんぱく質の遷移より一般的に遅い。オフ状態への遷移はミリ秒単位又は秒単位の時間スケールで起り、オン状態への戻り遷移も低速であり、両遷移とも光化学反応に依存する。記載した顕微鏡法システム600のいくつかの態様は、有機色素のより低速のスイッチング反応を利用してパターン化と画像化の分離を可能にし、より低いレーザ強度の使用を可能にすることを実現することに関連する。オフ状態が比較的長寿命である場合、1画像化サイクルにつき1飽和スイッチングサイクルを使用することができる。蛍光プローブのオフ状態の長さは本明細書に記載したように、酸素との反応を用いて調整することができる。例えば、酸素濃度を低減すると、オフ時間は増長又は増加し得る。オフ状態において容易に酸化されにくい色素(例えば、ローダミン/オキサジン類の色素))を用いることによって、オフ状態を比較的長い時間(例えば、数十秒)持続させることができる。
図7は、図6の超解像顕微鏡法システム600を用いてデータを収集する一連のステップを示す。顕微鏡法システム600は画像化より前に活性化された回折限界以下の領域のアレイを生成し、画像化を本明細書に記載したTDIのようなデータ収集システム及び技術を用いて遂行する。活性化された回折限界以下の領域のアレイはその後試料に対してシフトされ、再び画像化される。このプロセスは試料の画像を構築するために時間とともに繰り返される。
顕微鏡法システム600は標的領域内の色素を活性化し、活性化された蛍光プローブ705のアレイを生成する。活性化は、例えば励起レーザ612及び広視野光学系621を用いて達成することができる。励起レーザ612はUV光源であってよく、その光は、例えば広視野光学系621で標的領域全域に広がる。
広視野活性化に続いて、顕微鏡法システム600は、例えば正弦波強度格子又はパターン710を用いて活性化されたアレイを生成し、活性化された領域内の標的色素を光化学反応によりスイッチオフする。例えば、抑制レーザ614からの光を干渉格子光学系623のような光学系に通して回折限界領域内の標的色素を除くすべての活性化された色素を脱活性化するパターン化照明710を形成することができる。特定の実施形態では、パターン化された格子は試料(例えば、フローセル)の移動と同期して移動する。
顕微鏡法システム600は、得られた回折限界以下の活性化領域のアレイを本明細書に記載したTRIのようなデータ収集及び画像化技術を用いて画像化するために積分検出システム650を用いることができる。顕微鏡法システム600は、暗状態を本明細書に記載の如く長寿命化することに少なくとも部分的に起因して、これらの画像化プロセスを実装することができる。
画像化後に、顕微鏡法システム600は標的波長の光715(例えば、UV光)を用いて分子を再活性化することができる。顕微鏡法システム600は、光路620の要素(例えば干渉格子光学系623)及び/又は走査システム640を用いて、異なる回折限界以下の領域が画像化されるようにパターン化された光の格子710をシフトさせることができる。顕微鏡法システム600はこの一連のステップを繰り返して試料630の超解像画像を構築することができる。
図8は、図6の超解像顕微鏡法システム600を用いるデータ収集の一例に含まれるプロセスを示し、試料(例えば、フローセル)はデータ収集中移動する。顕微鏡法システム600は広視野照明を生成して活性化された蛍光プローブのアレイ705を生成する。顕微鏡法システム600は抑制照明710のための定在波格子を生成して試料内に「ゼロ強度点」(例えば、スイッチオフされない領域)のアレイを生成する。高強度領域内の蛍光プローブは飽和してオフ状態になるが、パターン化照明の「ゼロ点」領域の蛍光プローブは活性化されたままである。活性化されたままであるこれらの領域のサイズは光の強度と露光時間に少なくとも部分的に依存する。「オン」のままである領域は回折限界領域内にあり、これらの領域からの蛍光の収集は試料630に関する超解像情報を提供する。積分検出システム650を用いてこの蛍光を収集した後に、顕微鏡法システム650は広視野照明715を用いて蛍光プローブを「オン」にスイッチバックする。顕微鏡法システム600は、抑制格子710を「ゼロ点」の位置が移動する試料630に対して変化し、試料630の次の点が検出されるようにシフトさせ、試料の超解像画像を構築する。
顕微鏡法システム600はパターン化抑制格子710を用いて、「ゼロ強度点」位置の蛍光プローブは除いて、蛍光プローブを光化学的に「オフ」状態に誘起する。「オフ」蛍光プローブは、例えばオーダメイドのイメージングバッファによって数十秒(例えば、少なくとも10秒)の間オフのままにすることができる。例えば、オーダメイドのイメージングバッファは、本明細書に記載したように、低い酸素、低い酸化可能な色素を含むことができる。パターン化後に、これらの蛍光プローブは画像化され、その後試料の移動によってシフトされ、異なるサブセットの蛍光プローブが活性化され、プロセスが繰り返される。
図9は、図6の超解像顕微鏡法システム600で生成されたパターン化照明710の、試料(例えば、フローセル)の移動に適合する移動の一例を示す。このモダリティは高速走査TDIのような画像化技術を実装する顕微鏡法システム600と関連して利用することができる。このような実施形態では、パターン化抑制格子710は試料630(例えばフローセル)と同期して移動し、試料630上に標的オン/オフパターンを生成することができる。顕微鏡法システム600はその後試料630を画像化し、抑制格子710を試料630に対してシフトさせることができる。試料630が(例えばx方向に)移動されている間、抑制格子710が試料630に対して静止するように抑制格子710は試料630と一緒に移動することができる。例えば、抑制格子710は特徴部がy軸に対して移動する間y軸に対して静止したままである特徴部を有する。顕微鏡法システム600は試料630の一部分をこのように走査した後、抑制格子710を試料630に対して横方向及び長さ方向に目標の量だけシフトさせ、異なるセットの蛍光プローブの画像化を可能にする。
顕微鏡法システム600は蛍光プローブの長寿命暗状態を使用してパターン化及び画像化を簡略化する有利な方法を提供することができる。典型的な超解像技術では、パターン化及び画像化はほぼ同時に、時間的にインテリーブされる。典型的な超解像顕微鏡法システムのように高速反応光遷移を使用すると、抑制及び励起レーザの高速パルス化及びインタリーブがシステムを更に複雑化し得る。顕微鏡法システム600は、本明細書に記載の如く、画像化前のパターン化に少なくとも部分的に起因して、この複雑化を有利に低減することができる。
更に、顕微鏡法システム600は典型的な超解像技術と比較してレーザパワーの消費を低減することができる。例えば、パターン化と画像化をインタリーブする典型的な超解像技術は一般的に、抑制のための光遷移を比較的短期間(例えば、μ秒又はナノ秒領域の時間スケール)で飽和するために必要とされるレーザパワー強度に少なくとも部分的に起因して、高いレーザパワーを必要とする。これらのレーザパワー要求は、励起及び光子放出サイクルを反復する周波数に少なくとも部分的に起因して、さらに増加する。顕微鏡法システム600は、安定な可逆的遷移を有利に使用し、画像化前にオン−オフ遷移を(1サイクルにつき100万回とは対照的に)1画像化サイクルにつき1回行うことに少なくとも部分的に起因して、レーザパワー要求を低減することができる。
顕微鏡法システム600は、試料が一般的に時間とともに静止である用途に特に有利である。比較的長い時間スケールでスイッチングされる有機蛍光プローブを広視野パターン化と組み合わせて使用すると、時間分解能が空間分解能より重要でない用途向けの超解像画像化技術を有利に提供することができる。例えば、シークエンシング用途において、フローセル試料は比較的静止であり且つ不変であり、低い実効「時間分解能」が容認可能であるとともに、比較的大きい視野を高速画像化する能力が特に有利である。顕微鏡法システム600はこれらの有利な特性を提供することができる。
補注及び用語
本明細書に記載した実施形態は例示である。これらの実施形態に様々な変更、再配置、置換などを行うことができ、それらは本明細書に記載した技術の範囲に含まれる。本明細書に記載したステップ、プロセス又は方法の1つ以上は適切にプログラムされた1つ以上のプロセス及び/又はディジタルデバイスで実施することができる。
本明細書に開示した実施形態と関連して記載した様々な例示的な画像化及び処理技術は電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はそれらの両者の組み合わせとして実装することができる。このハードウェアとソフトウェアの互換性を説明するために、様々な例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール及びステップは概してそれらの機能に関して記述されている。それらの機能がハードウェアとして実装されるか、或いはソフトウェアとして実装されるかは、特定の用途及びシステム全体に課される設計制約により決まる。記載した機能は個別の用途に対して様々な方法で実装することができるが、このような実装決定は開示の範囲からの逸脱を生じさせるものと解釈すべきでない。
本明細書に開示した実施形態と関連して記載した様々な例示的な実施形態は、特定の命令で構成されたプロセッサ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は他のプログラマブル論理回路、個別ゲート又はトランジスタ論理、個別ハードウェアコンポーネント、又は本明細書に記載の機能を実行するように設計されたそれらの組み合わせ、等のマシンによって実装又は実行することができる。プロセッサはマイクロプロセッサとし得るが、代替実施形態では、プロセッサはコントローラ、マイクロコントローラ、又は状態マシン、その組み合わせ、等としてもよい。プロセッサは、コンピュータ装置の組み合わせとしてもよく、例えばDSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のこのような構成としてもよい。例えば、本明細書に記載のTDIのような画像化システムは、個別のメモリチップ、マイクロプロセッサ内のメモリの一部分、フラッシュ、EPROM、又は他のタイプのメモリを用いて実装することができる。
本明細書に開示の実施形態と関連して記載された方法、プロセス又はアルゴリズムの要素はハードウェア内で、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュール内で、又はその両者の組み合わせ内で具体化することができる。ソフトウェアモジュールはRAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM、又は従来知られている他の任意のコンピュータ可読媒体に存在させてよい。典型的な記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み出し、記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合することができる。代替例では、記憶媒体はプロセッサに一体化することができる。プロセッサと記憶媒体はASICに内蔵することができる。ソフトウェアモジュールはコンピュータ実効可能命令を含み、ハードウェアプロセッサにコンピュータ実行可能命令を実行させることができる。
「・・・できる」、「・・・し得る」、「・・・してよい」、「・・・してもよい」「・・・可能性がある)」「例えば」等の本明細書で使用される条件言語は、特に明記しない限り、または使用される文脈の中で他の意味で理解されない限り、特定の実施形態が特定の特徴、要素、及び/または状態を含み、一方他の実施形態は特定の特徴、要素、及び/またはステップを含まないことを概して伝えることを意図している。したがって、係る条件言語は、特徴、要素、及び/又は状態が1つ以上の実施形態にいずれにせよ必要とされること、または1つ以上の実施形態が必ず、著者の入力またはプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、及び/もしくは状態を含むのか、それとも任意の特定の実施形態で実行すべきかを決定する論理を含むことを暗示することを概して意図していない。用語「・・・含む」、「・・・備える」、「・・・有する」等は同義語であり、オープンエンド方式で包括的に使用され、追加の要素、特徴、作動、動作等を排除しない。また、用語「又は」はその包括的な意味で(及びその排他的な意味ではなく)使用され、例えば要素のリストを接続するために使用されるとき、用語「又は」はリスト中の要素の1つ、いくつか、またはすべてを意味する。
「X、Y、及びZの少なくとも1つ」等の接続的言語は、特に明記しない限り、項目、用語等がX、Y、又はZ、もしくはその任意の組合せ(例えば、X,Y及び/又はZ)のいずれかであってよいことを伝えるために一般的に使用される文脈で理解される。したがって、係る接続的言語は概して、特定の実施形態がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、及びZの少なくとも1つがそれぞれ存在することを必要とすることを暗示することを意図していない。
用語「約」又は「およそ」等は同義語であり、この用語で修飾された値はそれと関連する了解範囲を有することを示すために使用され、その範囲は±20%、±15%、±10%、±5%、又は±1%とし得る。用語「ほぼ」は、結果(例えば、測定値)が目標値に近いことを示し、近いとは、例えば、結果が目標値の80%以内、目標値の90%以内、目標値の95%以内、又は目標値の99%以内であることを意味し得る。
特に個数を明記しない限り、単数表現の項目は概して1つ以上の記載の項目を含むと解釈すべきである。従って、「〜構成された装置」又は「〜ための装置」は1つ以上の列挙された装置を含むことを意図している。このような1つ以上の列挙された装置は集団で列記事項を実施するように構成してもよい。例えば、「列記事項A,B及びCを実行するためのプロセッサ」は、列記事項B及びCを実行するよう構成された第2のプロセッサと関連して列記事項を実行するように構成された第1のプロセッサを含み得むことができる。
以上の詳細な説明は例示的な実施形態に適用される新規な特徴について示し、説明し、指摘したが、例示した装置又はアルゴリズムの構造及び詳細に、本開示の精神から逸脱することなく、様々な省略、代替及び変更を加えることができることは理解されよう。認識されるように、本明細書に記載した特定の実施形態は、本明細書に記載した特徴及び利点いくつかは他の特徴及び利点から切り離して使用または実施することができるので、すべての特徴及び利点を提供しない形態で具体化してもよい。請求項の意義及び同等範囲に入るすべての変更はそれらの範囲内に包含されるべきである。
上述の概念のあらゆる組み合わせ(但し、これらの概念が相互に矛盾しなければ)は本明細書に開示した発明の要旨の一部であるとみなせることを理解すべきである。特に、本開示の末尾に添付された請求の範囲に記載された要旨のあらゆる組み合わせは本明細書に開示した発明の要旨の一部であるせる。

Claims (32)

  1. 励起光源と、
    抑制光源と、
    領域のアレイを生成する光学部品を備える光路であって、前記アレイ内の各領域は前記抑制光源からの光よりなる抑制領域で囲まれた前記励起光源からの光よりなる活性領域を含む、光路と、
    前記領域からの信号を検出し、時間とともに積分し、個々のリング状領域により照明された個々の点に対する積分信号を生成する1つ以上の検出器と、
    前記積分信号から前記個々の点の蛍光を決定するようにプログラムされたプロセッサと、
    を備える、超解像顕微鏡法システム。
  2. 前記個々の点は固体支持体上の蛍光核酸分子に対応する、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記個々の領域は円形のリング状領域である、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記励起光源は前記アレイ内の各領域に対して1つの励起レーザを備え、前記抑制光源は前記アレイ内の各領域に対して1つの抑制レーザを備え、
    前記光路は、前記アレイ内の各領域に対して、対応する励起レーザ及び抑制レーザからの光を前記リング状領域を生成するように導く、
    請求項1に記載のシステム。
  5. 前記1つ以上の検出器は前記アレイ内の各領域に対して1つの検出器を備える、請求項4に記載のシステム。
  6. 前記光路は、前記励起光源からの光及び前記抑制光源からの光を時間に依存して前記アレイの領域に導く偏向器を含む、請求項1に記載のシステム。
  7. 前記光路は、前記領域のアレイを生成するために、前記励起光源からの光を複数の励起光ビームに分割し、前記抑制光源からの光を複数の抑制光ビームに分割する位相マスクを含む、請求項1に記載のシステム。
  8. 前記光路は、導波路内で前記抑制光源からの光と定在波を生成する導波路を含む、請求項1に記載のシステム。
  9. 前記1つ以上の検出器は試料からの光を検出するために単一の検出器を備える、請求項1に記載のシステム。
  10. 前記単一の検出器はマルチチャネル光子検出器を備える、請求項9に記載のシステム。
  11. 前記マルチチャネル光子検出器はCCDイメージセンサを備える、請求項10に記載のシステム。
  12. 前記アレイ内の前記領域は複数の行及び複数の列を備える格子に分布されている、請求項1に記載のシステム。
  13. 前記領域のアレイが前記試料と相対的に移動するように前記試料を移動させるべく構成された走査システムを更に備える、請求項1に記載のシステム。
  14. 励起光源と、
    抑制光源と、
    複数のパターン化された領域を生成する1つ以上の光学部品を備える光路であって、各パターン化された領域は前記励起光源からの励起光と前記抑制光源からの抑制光とで構成される、光路と、
    前記パターン化された領域により照明された蛍光プローブからの信号を受信し積分し、試料上の個々の点に対する積分信号を生成する1つ以上の検出器と、
    前記1つ以上の検出器からの前記積分信号を受信し、前記積分信号に基づいて前記蛍光プローブの蛍光を決定するように構成されたプロセッサと、
    を備える、超解像顕微鏡法システム。
  15. 前記蛍光プローブは約100msより長い又はそれに等しい寿命を有する暗状態を有する、請求項14に記載のシステム。
  16. 前記蛍光プローブは少なくとも約10秒間安定であるオフ状態を有する色素を含む、請求項14に記載のシステム。
  17. 前記色素はローダミン、オキサジン又はカルボシアニンを含む、請求項16に記載のシステム。
  18. 前記パターン化された領域は抑制光の第2の領域により囲まれた励起光の第1の領域より成る、請求項14に記載のシステム。
  19. 試料を読み取るために超解像顕微鏡法を実行する方法であって、前記方法は、
    (i)励起光を用いて試料上の蛍光プローブを選択的に活性化し、(ii)抑制光を用いて前記試料上の蛍光プローブを選択的に脱活性化することによって、抑制領域により囲まれた活性領域より成る領域のアレイを生成するステップと、
    前記領域からの信号を1つ以上の検出器を用いて時間とともに検出し積分するステップと、
    前記積分信号から前記試料上の個々の点の蛍光を決定するステップと、
    を備える、方法。
  20. 前記試料は固体支持体上の核酸特徴部のアレイである、請求項19記載の方法。
  21. 前記個々の領域は円形のリング状領域である、請求項19に記載の方法。
  22. 前記1つ以上の検出器は前記アレイ内の各領域に対して1つの検出器を備える、請求項19に記載の方法。
  23. 前記領域のアレイを生成するステップは、高速偏向器を用いて前記励起光源及び前記抑制光源からの光を偏向するステップを備える、請求項19に記載の方法。
  24. 前記領域のアレイを生成するステップは、前記励起光源からの光を複数の励起光ビームに分割し、前記抑制光源からの光を複数の抑制光ビームに分割するステップを備える、請求項19に記載の方法。
  25. 前記領域のアレイを生成するステップは、前記抑制光源からの光と定在波を生成するステップを備える、請求項19に記載の方法。
  26. 前記領域のアレイを、前記試料を横切って第1の方向に走査させるステップ、及び前記領域のアレイを、前記試料を横切って前記第1の方向に対して非平行の第2の方向に走査させるステップを更に備える、請求項19に記載の方法。
  27. 試料を読み取るために超解像顕微鏡法を実行する方法であって、前記方法は、
    照明領域内の蛍光プローブを励起するために広視野活性照明を生成するステップと、
    前記照明領域の標的部分内の蛍光プローブを脱活性化するためにパターン化された抑制照明を生成するステップと、
    前記照明領域内の励起された蛍光プローブからの信号を1つ以上の検出器を用いて受信し積分するステップと、
    試料上の個々の点に対する積分信号を生成するステップと、
    前記積分信号から前記試料上の個々の点の蛍光を決定するステップと、
    を備える、方法。
  28. 前記蛍光プローブは約100msより長い又はそれに等しい寿命を有する暗状態を有する、請求項27に記載の方法。
  29. 前記色素はローダミン、オキサジン又はカルボシアニンを含む、請求項27に記載のシステム。
  30. 走査システムを用いて、前記パターン化された抑制領域が前記試料に対して静止するように前記パターン化された抑制照明を移動させるステップを更に備える、請求項27に記載の方法。
  31. 前記試料上の個々の点に対する積分信号が前記試料上の個々の点から放出された光を受信した前記1つ以上の検出器により生成された信号を選択的に積分した結果となるように、前記1つ以上の検出器により生成された信号を前記走査システムからの情報を用いて前記試料上の個々の点と関連させるステップを更に備える、請求項27に記載の方法。
  32. 前記パターン化された照明は、標的領域内の蛍光プローブを選択的に脱活性化するために零点強度の領域を生成するが、零点強度の領域内の蛍光プローブは活性されたままにする、請求項27に記載の方法。
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