JP2015199656A - セラミックロール及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧延した金属箔の表面への斑点の転写を抑制したセラミックロール、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】初径から廃却径までの可使領域における平均気孔面積率が0.2%以下であり、前記廃却径より中心軸側における平均気孔面積率が前記可使領域における平均気孔面積率より高く、少なくとも前記可使領域に、円相当径が0.3〜10μmの気孔が密集してなる80μm以上の直径の気孔密集域が実質的にない窒化珪素質焼結体からなる長尺のセラミックロール1。前記窒化珪素質焼結体がMg及び少なくとも一種の希土類元素を酸化物換算で合計3〜20質量%含み、Mgと希土類元素との酸化物換算質量比(MgO/希土類元素の酸化物)が0.2〜5であるセラミックロール1。
【選択図】図1

Description

本発明は窒化珪素質焼結体からなるセラミックロール、特に金属箔又は金属薄帯の冷間圧延に用いるのに好適なセラミックロール、及びその製造方法に関する。
従来から金属薄帯を冷間圧延するロールとして、ハイス鋼からなるロール(ハイスロール:特許文献1)又はセラミックスからなるロール(セラミックロール:特許文献2)が用いられてきた。ハイスロールを金属薄帯の仕上げ圧延に用いると、摩耗の進行が早いのでロール表面の肌が荒れて、短期間で表面の再研磨が必要になり、長期間連続して使用することができない。これに対して、セラミックロールは硬質であるので、摩耗の進行が遅いという利点を有する。セラミックロールは、例えば窒化珪素、サイアロン、ジルコニア、アルミナ等からなる(特許文献3)。中でも、窒化珪素、サイアロン等の窒化珪素質焼結体は圧延ロールに適した高い靱性を有する。
窒化珪素質焼結体のセラミックロールを金属箔(例えば厚さ5〜100μmのステンレス箔)の圧延に用いると、圧延した金属箔の表面に約100〜500μmの円形状の斑点(又は斑点模様)が形成されることがある。斑点は0.1〜10μmの高さを有する凸部と、直径が約100〜500μmの円形状で深さ0.1〜20μmの凹部からなる。セラミックロールの胴部表面を金属箔の圧延前後で詳細に調べた結果、金属箔の圧延前の窒化珪素質焼結体のロール表面に気孔の密集域が存在しており、金属箔の圧延により気孔密集域が優先的に摩耗するのでロール表面に凹部が形成され、それが金属箔に転写されることが分った。
ロール表面に気孔が少ない窒化珪素質焼結体セラミックロールを得るために種々の提案がされているが、例えば特許文献4に記載されているように窒化珪素質焼結体をHIPにより形成すると、窒化珪素質焼結体の気孔率を0.5%以下に低減できる。しかし、金属箔又は金属薄帯の冷間圧延用ロールは通常全長300 mm以上と長尺であるので、大型のHIP装置が必要となり、製造コストが過大となるという問題がある。
特開2012-157899号公報 特開2002-59203号公報 特開平3-268809号公報 特開2002-326875号公報
従って、本発明の目的は、圧延した金属箔又は金属薄帯の表面への斑点の転写が抑制されるとともに、安価な長尺の窒化珪素質焼結体からなるセラミックロール、その製造方法を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、(a) プレス成形による圧縮で均一な気孔分布の成形体が得られるような造粒粉を用いるとともに、(b) 焼結前に複数の予備焼結工程を行うことにより、可使領域での気孔面積率が小さく、80μm以上の直径を有する気孔密集域が実質的にない窒化珪素質焼結体からなる長尺のセラミックロールが安価に得られることを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の窒化珪素質焼結体からなる長尺のセラミックロールは、
初径から廃却径までの可使領域における平均気孔面積率が0.2%以下であり、
前記廃却径より中心軸側における平均気孔面積率が前記可使領域における平均気孔面積率より高く、
少なくとも前記可使領域に、円相当径が0.3μm以上10μm以下の気孔が密集してなる直径80μm以上の気孔密集域が実質的にないことを特徴とする。
前記窒化珪素質焼結体はMg及び少なくとも一種の希土類元素を酸化物換算で合計3〜20質量%含み、Mgと希土類元素との酸化物換算質量比(MgO/希土類元素の酸化物)が0.2〜5であるのが好ましい。
本発明のセラミックロールは850 MPa以上の曲げ強度を有するのが好ましい。
本発明のセラミックロールは、300 mm以上の軸方向長さを有する胴部と、前記胴部の軸方向両端の軸部とからなるのが好ましい。前記胴部の直径は10〜200 mmであるのが好ましい。前記軸部の各々に金属キャップが設けられているのが好ましい。
前記窒化珪素質焼結体の組織は、少なくとも初径から廃却径までの可使領域において、20μm以下の長軸及び0.2〜0.4μm2の平均面積を有する窒化珪素粒子を70〜90%の面積比率で含有し、粒界相の面積比率は30〜10%であるのが好ましい。
本発明のセラミックロールは、金属箔又は金属薄帯の圧延に用いるのに好適である。
上記セラミックロールを製造する本発明の方法は、
窒化珪素粉末と、焼結助剤粉末と、ポリエーテルと、前記ポリエーテルを溶解する溶媒とを含むスラリーを調製し、
前記スラリーをスプレードライ法により乾燥することにより、窒化珪素粉末及び焼結助剤粉末の合計充填密度が45〜70%の造粒粉を形成し、
前記造粒粉を円柱状にCIP成形し、
得られた円柱状成形体を加熱して脱脂し、
脱脂した円柱状成形体に対して、真空中で液相生成温度より200℃低い温度以上液相生成温度未満の第一の温度に保持する第一の加熱工程と、圧力p1の窒素ガス雰囲気中で液相生成温度以上焼結温度未満の第二の温度に少なくとも1回保持する第二の加熱工程とを有する予備焼結工程を行い、次いで
圧力p2の窒素ガス雰囲気中、1600〜2000℃の温度で本焼結することを特徴とする。
前記第二の加熱工程における窒素ガス雰囲気の圧力p1は本焼結工程における窒素ガス雰囲気の圧力p2より低いのが好ましい。
前記第二の加熱工程は、第一の加熱温度超で本焼結温度未満の範囲内の異なる温度に保持する複数の加熱工程からなるのが好ましい。
前記ポリエーテルは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。前記ポリエーテルはポリエチレングリコールが特に好ましい。ポリエチレングリコールの分子量は1,000〜11,000であるのが好ましい。
本発明の窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールは、可使領域において平均気孔面積率が0.2%以下と小さいだけでなく、圧延により早く摩耗する80μm以上の直径を有する気孔密集域が実質的にないので、圧延した金属箔又は金属薄帯の表面に斑点が転写されるのを抑制することができ、高品質の圧延箔又は薄帯を得ることができる。また、本発明のセラミックロールの製造方法は、HIPのような高価な製造プロセスを用いずに、所望の造粒粉を用いて成形体を形成するとともに、焼結前の昇温工程で複数の予備焼結を行うことにより、平均気孔面積率が小さくて80μm以上の直径を有する気孔密集域が実質的にないセラミックロールを低コストで製造することができるという利点を有する。
セラミックロールを示す斜視図である。 本発明の方法により窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールを製造するための焼結パターンを示すグラフである。 図1のセラミックロールの軸部に金属キャップを焼嵌めしてなるセラミックロール組立体を示す断面図である。 図3(a) のセラミックロール組立体の一端側を示す拡大分解部分断面図である。 実施例1の窒化珪素質焼結体の研磨断面(軸方向に直交)において、外周面から深さ550μmまでの領域の顕微鏡写真である。 実施例1の窒化珪素質焼結体の研磨断面(軸方向に直交)において、外周面から深さ1.0〜1.6 mmの領域の顕微鏡写真である。 実施例1の窒化珪素質焼結体の研磨断面(軸方向に直交)において、外周面から深さ2.0〜2.6 mmの領域の顕微鏡写真である。 外周面から深さ2.0 mmにおける実施例1の窒化珪素質焼結体の組織を示すSEM写真である。 比較例4の窒化珪素質焼結体の研磨断面(軸方向に直交)において、外周面から深さ550μmまでの領域の顕微鏡写真である。 比較例4の窒化珪素質焼結体の研磨断面(軸方向に直交)において、外周面から深さ1.0〜1.6 mmの領域の顕微鏡写真である。 比較例4の窒化珪素質焼結体の研磨断面(軸方向に直交)において、外周面から深さ2.0〜2.6 mmの領域の顕微鏡写真である。 比較例の方法により窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールを製造するための焼結パターンを示すグラフである。
[1] セラミックロール
本発明のセラミックロールは、長尺の(例えば、300 mm以上の軸方向長さを有する)窒化珪素質焼結体からなり、(a) 初径から廃却径までの可使領域における平均気孔面積率が0.2%以下であり、(b) 前記廃却径より中心軸側における平均気孔面積率が前記可使領域における平均気孔面積率より高く、(c) 少なくとも前記可使領域に、円相当径が0.3μm以上10μm以下の気孔が密集してなる直径80μm以上の気孔密集域が実質的にないので、金属箔又は金属薄帯の圧延に用いた際に表面に凹部が形成され難い。そのため、圧延された金属箔又は金属薄帯の表面に斑点がほとんど転写されない。
用語「可使領域」は、セラミックロールの初径から廃却径までの範囲を意味する。通常焼結したままのセラミックロールには変形や表面粗さ表面の凹凸があるので、ロールとして使用可能な寸法精度の表面が露出するまで、研摩する。従って、ロールとして使用可能な最大の外径を「初径」と呼ぶ。また、セラミックロールを圧延に使用していくと、表面が摩耗により荒れてくるので、定期的に研摩しなければならない。この研摩の結果、例えば外径45 mmのロールで5〜10 mm程度径が小さくなり、使用できなくなったロールの外径を「廃却径」と呼ぶ。
気孔面積率は、窒化珪素質焼結体の研磨面のレーザー顕微鏡写真(視野300μm×300μm)を粒子解析ソフト「Quick Grain Standard」(株式会社イノテック製)により画像解析し、測定した気孔のうち、円相当径が0.3μm未満10μm超の気孔を除外し、円相当径が0.3μm以上10μm以下の気孔の合計面積を集計し、視野の面積で割ることにより求める。気孔の円相当径は、気孔と同じ面積を有する円の直径で表わされる。可使領域における「平均気孔面積率」は、初径から廃却径までの範囲内の複数の点で気孔面積率を測定し、それらを平均することにより求める。平均気孔面積率を求めるのに円相当径が0.3μm以上10μm以下の気孔を対象にしたのは、円相当径が0.3μm未満の気孔は圧延した金属箔の表面状態にほとんど影響を与えず、また円相当径が10μm超の気孔はそれ自体が問題であるからである。一般に、窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールの可使領域に円相当径が20μm以上の気孔が存在しないのが好ましく、15μm以上の気孔が存在しないのがより好ましく、10μm超の気孔が存在しないのが最も好ましい。
円相当径が0.3μm以上10μm以下の気孔が密集してなる気孔密集域の直径とは、3μm以下の距離で隣接する円相当径が0.3μm以上10μm以下の気孔を内包する最小の円の直径である。
セラミックロールの可使領域における平均気孔面積率が0.2%以下であると、セラミックロールの耐摩耗性が向上するだけでなく、可使領域に80μm以上の直径を有する気孔密集域が実質的になくなる。平均気孔面積率は0.1%以下であるのが好ましい。
本発明の窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールは、一般的に200 MPa程度の高圧での加圧が必要なHIP処理を行わずに窒素ガス雰囲気中で焼結することにより製造されるので、廃却径より中心軸側における平均気孔面積率が可使領域における平均気孔面積率より高いことを特徴とする。可使領域における平均気孔面積率が小さければ、廃却径より中心軸側における平均気孔面積率が多少大きくなっても問題ない。それよりも、0.2〜10 MPa程度の窒素ガス圧焼結により安価に製造することによるコスト低減の効果の方が大きい。廃却径より中心軸側における平均気孔面積率と可使領域における平均気孔面積率との差は0.1〜1%程度であるのが好ましい。
気孔密集域は圧延により金属箔又は金属薄帯に転写されるので、80μm以上の直径を有する気孔密集域が実質的にないセラミックロールとすることにより、きれいな表面の圧延金属箔又は金属薄帯を得ることができる。本発明のセラミックロールはさらに、50μm以上の直径を有する気孔密集域もないのが好ましく、30μm以上の直径を有する気孔密集域もないのがより好ましい。
前記窒化珪素質焼結体は、焼結助剤としてMg及び少なくとも一種の希土類元素(RE)を酸化物換算で3〜20質量%含むのが好ましい。気孔面積率を低減するためには、MgとREの合計は5〜10質量%が好ましい。また、MgとREとの酸化物換算質量比(MgO/RE酸化物)は0.2〜5が好ましく、0.4〜3がより好ましい。例えば、2〜5質量%のMgO及び2〜5質量%のRE酸化物を添加する。RE酸化物の具体例として、Y2O3、Er2O3、Lu2O3、CeO2等が挙げられる。RE酸化物はY2O3が好ましい。
機械的特性を向上させるために、前記窒化珪素質焼結体はTi化合物(例えばTiN)を含んでも良い。Ti含有量は1.2質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
前記窒化珪素質焼結体は、不純物として0.1質量%以下のAl、500質量ppm以下のFe、及び0.2質量%以下のCを含有しても良い。
前記窒化珪素質焼結体の組織は、少なくとも初径から廃却径までの可使領域において、20μm以下の長軸及び0.2〜0.4μm2の平均面積を有する窒化珪素粒子を70〜90%の面積比率で含有し、粒界相の面積比率は30〜10%であるのが好ましい。
金属箔又は金属薄帯の冷間圧延での圧下率を高め、冷間圧延時間を短縮するために、窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールの室温曲げ強度(JIS R 1601による4点曲げ強度)は850 MPa以上が好ましく、1000 MPa以上がより好ましい。
図1に示すように、本発明のセラミックロール1は圧延材に直接接触する胴部1aと、胴部1aの軸方向両端に一体的に連結する軸部1b,1bとからなる。胴部1aは300 mm以上の軸方向長さを有するのが好ましい。銅又はステンレスの箔又は薄帯を例えば厚さ5〜100μmに冷間圧延するには、胴部1aの直径は10〜200 mmが好ましく、10〜60 mmがより好ましい。胴部1aの直径が小さいと冷間圧延での面圧が高く、圧下率を向上できるが、セラミックロール1の強度を確保する観点から、胴部1aの直径は10 mm以上であるのが好ましい。
本発明のセラミックロール1の胴部1aの軸方向長さは500 mm以上がより好ましく、700 mm以上が最も好ましい。好ましい一例では、セラミックロール1の胴部1aの軸方向長さは700〜1000 mmである。
窒化珪素質焼結体の室温でのヤング率が280 GPa以上であると、セラミックロールの変形が抑制され、金属薄帯又は金属箔の冷間圧延の圧下率を向上でき、圧延時間の短縮につながるので好ましい。窒化珪素質焼結体の室温でのヤング率は300 GPa以上がより好ましい。ヤング率は、窒化珪素質焼結体の試料に対してJIS R 1602の動的弾性率測定方法により測定する。
窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールの算術平均表面粗さRa(JIS B 0601:2001)が0.5μm未満であると、圧延した金属箔又は金属薄帯の表面の面粗さRaが抑制されるので好ましい。
[2] セラミックロールの製造方法
本発明のセラミックロールの製造方法は、
(1) 窒化珪素粉末と、焼結助剤粉末と、ポリエーテルと、前記ポリエーテルを溶解する溶媒とを含むスラリーを調製する工程、
(2) 前記スラリーをスプレードライ法により乾燥することにより、窒化珪素粉末及び焼結助剤粉末の合計充填密度が45〜70%の造粒粉を形成する工程、
(3) 前記造粒粉を円柱状にCIP(Cold Isostatic Pressing)成形する工程、
(4) 得られた円柱状成形体を加熱して脱脂する工程、
(5) 脱脂した円柱状成形体に対して、真空中で液相生成温度より200℃低い温度以上液相生成温度未満の第一の温度に保持する第一の加熱工程と、圧力p1の窒素ガス雰囲気中で液相生成温度以上焼結温度未満の第二の温度に少なくとも1回保持する第二の加熱工程とを行う予備焼結工程、及び
(6) 予備焼結した成形体を圧力p2の窒素ガス雰囲気中、1600〜2000℃の温度で本焼結する工程を有する。
(1) スラリーの調製工程
窒化珪素粉末に、焼結助剤としてMg酸化物粉末及び少なくとも一種の希土類元素の酸化物粉末を合計3〜20質量%配合し、さらにセラミック成分(窒化珪素粉末+焼結助剤粉末)に対してポリエーテルをバインダとして配合する。焼結助剤の含有量は好ましくは5〜10質量%であり、より好ましくは5〜8質量%である。Mgと希土類元素との酸化物換算質量比(MgO/希土類元素の酸化物)は0.2〜5であるのが好ましく、0.4〜3であるのがより好ましい。バインダの含有量は、セラミック成分100重量部に対して好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜10重量部である。
焼結性を考慮し、窒化珪素粉末の酸素含有量は5質量%以下が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましい。窒化珪素粉末中のα型窒化珪素の割合(α化率)は60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。窒化珪素粉末の平均粒径d50は0.2〜3μmであるのが好ましい。
焼結助剤に関して、Mg粉末及びRE粉末の平均粒径d50はいずれも0.1〜3μmであるのが好ましい。
以下の造粒工程により造粒粉を得るためにバインダとして使用するポリエーテルとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。これらのポリエーテルは単独又は組合せて使用することができる。中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリエーテルの分子量は1000〜11000であるのが好ましい。上記ポリエーテルは通常粉末状である。
スラリー用溶媒は窒化珪素粉末の加水分解を防ぐため、エタノール等のアルコール類が好ましく、中でもエタノールが好ましい。スラリー中の固形分(セラミック粉末)濃度は30〜70質量%が好ましく、40〜65質量%がより好ましい。
造粒粉用スラリーは、例えば窒化珪素粉末と焼結助剤粉末とをエタノール中でボールミル粉砕により混合し、得られた窒化珪素粉末/焼結助剤粉末スラリーに、ポリエーテルの水溶液を混合することにより調製することができる。ポリエーテル水溶液中の水分の割合は限定されないが、水の揮発を容易にするために70質量%以下が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
(2) 造粒工程
バインダとしてポリエーテルを用いることにより、スプレードライ法によりセラミック粉末(窒化珪素粉末及び焼結助剤粉末)の充填密度が45〜70%と比較的多孔質で、気孔分布が均一な造粒粉を形成することができる。前記充填密度は好ましくは48〜60%であり、より好ましくは50〜55%である。この造粒粉は、粒径の10〜70%程度の大きな気孔又は空洞を実質的に含有しないことを特徴とする。この理由は以下の通りであると考えられる。すなわち、70〜180℃でスプレードライ法を実施する際に、造粒粉の内部に溶媒が残存している状態で表面のバインダが固化すると、内部の溶媒が揮発しても表面層がほとんど収縮しないと考えられ、内部が空洞化した造粒粉が得られる傾向がある。これに対して、バインダとしてポリエーテルを使用すると、造粒粉の内部に溶媒が残存している状態で表面のポリエーテルが固化することがないと考えられるので、内部の溶媒が揮発するにつれて表面層が収縮し、内部が空洞化しない。その結果、内部に大きな気孔又は空洞が実質的になく、気孔分布が均一な造粒粉が得られる。
造粒粉中のセラミック粉末の充填密度は、造粒粉を樹脂で固化した後、研摩により断面を露出させ、断面の顕微鏡写真(5000倍)の画像解析によりセラミック粉末の合計断面積を15μm×15μmの範囲で測定し、造粒粉の断面積に対するセラミック粉末の合計断面積の割合(%)を計算することにより求める。
内部が空洞化した造粒粉でもCIP成形により圧壊するが、空洞部による気孔が成形体に残存することがある。このような気孔は焼結を行う際に密集することがあるので、気孔密集域を形成する一因であると推定される。これに対して、バインダとしてポリエーテルを使用することにより得られた造粒粉は、内部が空洞化しておらず気孔分布が均一であるので、空洞部に起因する気孔の残存がない成形体が得られ、セラミック粉末の分布が均一化する。すなわち、気孔率が小さく気孔分布が均一な成形体が得られる。このような成形体でなければ、可使領域において平均気孔面積率が0.2%以下と小さいだけでなく、80μm以上の直径を有する気孔密集域が実質的にない緻密な窒化珪素質焼結体は得られない。
(3) 成形工程
円柱状で長尺のセラミックロール用の成形体を均一な密度で得るために、CIP成形法を用いる。CIP圧力は50〜300 MPaが好ましい。図1に示すようにセラミックロール1は胴部1aと軸部1b,1bからなるが、円柱状に成形した後で、成形体の軸方向両端に加工を施して軸部1b,1bを形成する。
(4) 脱脂工程
成形体を400〜700℃で大気中又は真空(例えば、50 Pa以下)中で加熱することにより、成形体中のバインダを分解し、揮発させる。脱脂温度は500〜700℃がより好ましい。脱脂時間は0.5〜72時間が好ましく、10〜72時間がより好ましい。
(5) 予備焼結工程
(a) 第一の加熱工程P1
図2に示すように、脱脂した成形体を、第一の加熱温度t1で真空(例えば、50 Pa以下)中で加熱することにより、成形体中に含まれるガス化し得る成分(たとえば炭素、炭化水素等の不純物)を揮発させ、その後、焼結する際に成形体に残存するガス化し得る成分に起因する粗大な気孔の発生を抑制する。第一の温度t1は液相生成温度より200℃低い温度以上液相生成温度未満である。液相生成温度は組成及び粒度等により異なるが、例えば92質量%の窒化珪素と、3.5質量%のMgOと、4質量%のY2O3と、0.5質量%のTiO2からなる組成の場合、1380℃である。第一の加熱工程P1の時間は0.5〜20時間が好ましく、2〜15時間がより好ましい。第一の加熱工程P1が0.5時間未満であると、ガス化し得る成分の揮発の効果がなく、また20時間超としてもそれに見合う効果の向上が得られない。
液相生成温度は、成形体試料のDTA(示差熱分析)の温度特性の吸熱ピークから求めることができる。温度特性を得る際に、吸熱ピークが明瞭に現われるように昇温速度を設定する。
(b) 第二の加熱工程P2〜P4
図2に示すように、第一の加熱温度t1に加熱した成形体を、窒素ガス雰囲気(例えば、0.2〜10 MPa)中で液相生成温度以上の第二の温度に加熱する第二の加熱工程を少なくとも1回行うことにより、全体的に均熱化されて均一な窒化珪素質焼結体となり、更に気孔率も低減化される。第二の加熱工程における温度は、一般に第一の加熱工程P1の温度t1と本焼結工程P5の温度t5との間で設定する。例えば、第二の加熱工程P2を一段で行う場合、温度t2は第一の加熱工程P1の温度t1と本焼結工程P5の温度t5との中間で良い。また第二の加熱工程P2を三段で行う場合、温度t2,t3、t4は第一の加熱工程P1の温度t1と本焼結工程P5の温度t5との間を三段階に分けた温度にして良い。勿論、温度t2,t3、t4の間隔は均等である必要はない。図2に示す例では、第二の加熱工程P2〜P4の第一〜第三の温度t2,t3、t4はそれぞれ1400℃、1500℃及び1650℃である。このように、第一の加熱工程P1の温度t1と本焼結工程P5の温度t5との間を複数段に分けて第二の加熱工程を行うことにより、長尺の窒化珪素質焼結体をより均熱化することができ、気孔率を低減化できる。
第二の加熱工程P2〜P4において、窒化珪素の分解を抑えるために、窒素ガス雰囲気の圧力p1は0.1〜9 MPaとするのが好ましく、0.2〜7 MPaとするのがより好ましい。
(6) 本焼結工程P5
上記工程で得られた予備焼結体に対して、窒素ガス雰囲気中で1600〜2000℃の温度t5に保持する本焼結を行う。本焼結温度t5は1650〜1800℃がより好ましい。また、本焼結時間は0.5〜15時間が好ましく、3〜7時間がより好ましい。気孔面積率を低減するために、本焼結工程P5の窒素ガス雰囲気の圧力p2は、第二の加熱工程P2〜P4における圧力p1より高いのが好ましい。具体的には、本焼結工程P5の窒素ガス雰囲気の圧力p2は0.6〜10 MPaとするのが好ましく、1〜10 MPaとするのがより好ましい。圧力p2と圧力p1との差は0.5 MPa以上が好ましく、1 MPa以上がより好ましい。
(5) 冷却工程P6
本焼結工程P5後の冷却工程P6では、少なくとも液相生成温度まで0.5〜10℃/分の速度で冷却するのが好ましい。液相生成温度未満になった後は炉冷で良い。
上記の通り、ポリエーテルを用いた造粒粉の成形体に対して、第一の加熱工程と第二の加熱工程とを有する予備焼結工程を行った後に本焼結を行うことにより、長尺(例えば、300 mm以上)でも可使領域において気孔面積率及びその分布が小さく、80μm以上の直径を有する気孔密集域が実質的にないセラミックロールを作製することができる。本発明の方法はHIP処理を行わないので、製造コストを著しく低減することができる。セラミックロールが長尺になるほど、コスト低減効果は大きくなる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
窒化珪素粉末(α化率:97%、平均粒径d50:1μm、酸素含有量:1.5質量%、Fe含有量:300質量ppm)92質量%に対して、焼結助剤としてMgO粉末(平均粒径d50:0.1μm)3.5質量%と、Y2O3粉末(平均粒径d50:1μm)4質量%と、TiO2粉末(平均粒径d50:2μm)0.5質量%とを、窒化珪素ボールを粉砕メディアとしたボールミルを用いてエタノール中で12時間混合し、混合粉末のスラリーを得た。このスラリーに、分子量6,000のポリエチレングリコール(PEG)の水溶液(PEG/水の質量比=1/1)を、混合粉末100質量部に対してPEGが7質量部となる割合で添加し、スラリーを作製した。スラリーの固形分(窒化珪素粉末+焼結助剤粉末)濃度は40質量%であった。
スラリーをスプレードライヤー法で乾燥して造粒粉を作製し、篩分けにより分級し、平均粒径(d50)が80μmの造粒粉を得た。造粒粉におけるセラミック粉末(窒化珪素粉末+焼結助剤粉末)の充填密度は48%であった。造粒粉を圧力100 MPaでCIP成形し、直径39 mm及び長さ455 mmの円柱状成形体を作製した。
成形体を大気中500℃で12時間加熱して脱脂した後、図2に示す焼結パターンで予備焼結工程及び本焼結工程を行い、各条件で複数個の窒化珪素質焼結体を作製した。予備焼結工程の第一の加熱工程P1及び第二の加熱工程P2,P3,P4、本焼結工程P5、及び冷却工程P6の条件を表1に示す。各温度域間の昇温速度はいずれも1.0℃/分とした。また、実施例1の成形体で液相生成温度は1380℃であった。
同条件で作製した複数個の窒化珪素質焼結体のうちセラミックロールに用いないものをサンプルとして選び、窒化珪素質焼結体の切断面(軸方向に直交)を平均粒径が1μm以下のダイヤモンド砥粒で研磨し、JIS B 0601:2001に規定される表面粗さ(最大高さ)Rzを0.07μm以下とした。研磨断面において、焼結したままの外周面(焼結肌)から深さ550μmまでの領域、深さ1.0〜1.6 mmの領域、及び深さ2.0〜2.6 mmの領域の顕微鏡写真をそれぞれ図4(a),図4(b),及び図4(c) に示す。また、深さ2.0 mmにおける窒化珪素質焼結体の組織(SEM写真)を図5に示す。図5において、微小な黒い点が気孔であり、気孔密集域は例えばAで示す領域である。
実施例1の窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールでは、初径及び廃却径が外周面から平均2 mm及び5 mmの深さにあるので(外周面から平均深さ2〜5 mmの範囲が可使領域)、このサンプルの外周面からそれぞれ平均深さ2 mm,3 mm,4 mm及び5 mmにおいて300μm×300μmの領域に存在する円相当径0.3μm以上10μm以下の気孔の面積率を集計し、平均することにより、可使領域における平均気孔面積率を求めた。また、廃却径より中心軸側における平均気孔面積率求めるために、中心軸において300μm×300μmの領域に存在する円相当径0.3μm以上10μm以下の気孔の面積率を集計し、平均した。得られた平均気孔面積率(可使領域内、及び廃却径より中心軸側)を表4に示す。観察したいずれの領域でも、円相当径10μm超の気孔はなかった。
初径より1 mmの深さにおける窒化珪素質焼結体の組織は以下の通りであった。前記組織は、プラズマエッチング処理を施してから観察した。なお、窒化珪素粒子の長軸及び短軸はそれぞれ重心を通る最大径及び最小径に相当する。
窒化珪素粒子の長軸の最大値:6.1μm
窒化珪素粒子の面積比率:78.2%
窒化珪素粒子の平均面積:0.35μm2
窒化珪素粒子のアスペクト比率(短軸/長軸):0.54
粒界相の面積比率:21.8%
また、外周面から深さがそれぞれ2 mm,3 mm,4 mm及び5 mmで、300μm×300μmの領域に存在する円相当径が0.3μm以上10μm以下の気孔が3μm以下の距離で隣接する気孔群(気孔密集域)の直径を求めた。気孔密集域の直径のうち最大のものを表4に示す。
窒化珪素質焼結体から縦3 mm×横4 mm×長さ40 mmの4点曲げ試験片を切り取り、JIS R 1601に基づく4点曲げ強度を室温で測定した。結果を表4に示す。
セラミックロール用の窒化珪素質焼結体の外周面を研削して焼結肌を除去し、算術表面粗さRaを0.2μmとした。また、胴部1aの軸方向両端部を研削して、軸部1b,1bを形成した。その結果、図1及び図3に示すように、直径Daが30 mmで、長さLaが300 mmの胴部1aと、直径Dbが25 mmで、長さLbが25 mmの軸部1b,1bとからなるセラミックロール1を得た。
図3に示すように、各軸部1bに高速度鋼製キャップ2を焼嵌めした。キャップ2は、外径Doが29 mmで、内径Diが25 mmで、長さL2aが25 mmの円筒部2aと、直径Doが29 mmで、長さL2bが25 mmの円柱部胴部2bとからなり、全長L2(L2a+L2b)は50 mmであった。円柱部胴部2bは中心軸線に沿って円筒部2aの底面4とキャップ2の端面5との間を連通する通気孔3を有していた。通気孔3は、セラミックロール1の軸部1bにキャップ2を焼嵌めするときに、軸部1bと円筒部2aとの間の空気を逃がす機能を有する。
得られたセラミックロール組立体を用いて、中間パスの圧延を経た厚さ200μmのステンレス箔に対して仕上げ圧延を行ったが、圧延したステンレス箔に転写斑点は観察されなかった。
実施例2
円柱状成形体の直径を91 mmとし、軸方向長さを1380 mmとした以外実施例1と同様にして、セラミックロール用の窒化珪素質焼結体を作製した。窒化珪素質焼結体の外周及び端部を研削し、直径Daが70 mmで長さLaが1000 mmの胴部1aと、直径Dbが65 mmで、長さLbが30 mmの軸部からなるセラミックロール1を得た。セラミックロール1に通気孔付きの金属キャップを焼嵌めした。得られたセラミックロール組立体を用いて、厚さ200μmのステンレス箔に対して仕上げ圧延を行ったが、圧延したステンレス箔に転写斑点は観察されなかった。
実施例3
配合粉末の組成を、窒化珪素粉末92.5質量%、MgO粉末2.5質量%、Y2O3粉末4質量%、及びTiO2粉末1.0質量%に変更した以外実施例1と同様にして造粒粉を作製し、窒化珪素質焼結体のセラミックロールを作製した。造粒粉におけるセラミック粉末(窒化珪素粉末+焼結助剤粉末)の充填密度は52%であった。この組成の液相生成温度は1350℃であった。この造粒粉を用いて、実施例1と同じ条件で窒化珪素質焼結体のセラミックロールを作製した。このセラミックロールを実施例1と同じ条件でステンレス箔の圧延に用いたところ、圧延したステンレス箔には転写斑点が観察されなかった。
実施例4
配合粉末の組成を、窒化珪素粉末93.8質量%、MgO粉末4質量%、Y2O3粉末2質量%、及びTiO2粉末0.2質量%に変更し、かつ第二の加熱工程の工程P2の温度t2を1450℃に変更した以外実施例1と同様にして造粒粉を作製し、窒化珪素質焼結体のセラミックロールを作製した。造粒粉におけるセラミック粉末(窒化珪素粉末+焼結助剤粉末)の充填密度は51%であった。この組成の液相生成温度は1420℃であった。このセラミックロールを実施例1と同じ条件でステンレス箔の圧延に用いたところ、圧延したステンレス箔には転写斑点が観察されなかった。
比較例1
セラミック粉末100質量部に対してバインダとして1質量部のポリビニルブチラール(PVB)を添加し、かつスラリーの固形分濃度を50質量%に変更した以外実施例1と同様にして造粒粉を作製し、直径130 mm及び軸方向長さ2030 mmの円柱状成形体を作製した。造粒粉におけるセラミック粉末(窒化珪素粉末+焼結助剤粉末)の充填密度は43%であった。この成形体を実施例2と同様に脱脂処理した後焼結し、セラミックロール用の窒化珪素質焼結体を作製した。
セラミックロール用の窒化珪素質焼結体の外周及び胴部の軸方向両端を研削することにより軸部を形成し、直径Daが100 mmで長さLaが1500 mmの胴部1aと、直径Dbが90 mmで長さLbが30 mmの軸部1b,1bとからなるセラミックロール1を作製した。このセラミックロール1の各軸部1bに通気孔付きの金属キャップを焼嵌めした。得られたセラミックロール組立体を実施例1と同じステンレス箔の圧延に用いた結果、圧延したステンレス箔には直径が約100μmの転写斑点が観察された。
比較例2
窒化珪素粉末85質量%、Y2O3粉末7質量%、Al2O3粉末5質量%、及びAlN粉末3質量%からなるセラミック粉末にエタノールを添加して窒化珪素ボールのボールミルで12時間混合し、次いでバインダとしてポリビニルブチラールのエタノール溶液を、セラミック粉末100質量部当たりポリビニルブチラールが1質量部となる割合で混合し、スラリーを作製した。スラリーの固形分濃度は50質量%であった。このスラリーを実施例1と同じ条件で造粒粉を作製した。造粒粉におけるセラミック粉末(窒化珪素粉末+焼結助剤粉末)の充填密度は40%であった。造粒粉を分級した後CIP成形し、直径130 mm及び軸方向長さ2030 mmの円柱状成形体を作製した。
成形体に対して大気中500℃で12時間脱脂処理をした後、図7に示す焼結パターンで予備焼結及び本焼結をした。この焼結パターンは、予備焼結工程のうち第一の加熱工程P1を行わない以外実施例1における焼結パターン(図2)と同じであった。また、温度域t2〜t4の間の昇温速度をいずれも1.0℃/分とした。成形体の液相生成温度は1400℃であった。
セラミックロール用の窒化珪素質焼結体の外周及び胴部の軸方向両端を研削し、直径Daが100 mmで長さLaが1500 mmの胴部1aと、直径Dbが90 mmで長さLbが30 mmの軸部1b,1bとからなるセラミックロール1を作製した。このセラミックロール1の各軸部1bに通気孔付きの金属キャップを焼嵌めした。得られたセラミックロール組立体を実施例1と同じステンレス箔の圧延に用いた結果、圧延したステンレス箔には直径が約100μmの転写斑点が観察された。
比較例3
比較例1と同じスラリーを用い、実施例1と同様にして造粒粉を形成した。造粒粉におけるセラミック粉末(窒化珪素粉末+焼結助剤粉末)の充填密度は43%であった。造粒粉を80μmの平均粒径(d50)に分級し、圧力100 MPaでCIP成形し、直径39 mm及び長さ455 mmの円柱状成形体を作製した。
成形体を大気中500℃で12時間加熱して脱脂した後、図7に示す比較例2と同じ焼結パターンで予備焼結工程及び本焼結工程を行った。得られたセラミックロール用の窒化珪素質焼結体の外周及び胴部の軸方向両端を研削し、直径Daが30 mmで長さLaが300 mmの胴部1aと、直径Dbが25 mmで長さLbが25 mmの軸部1b,1bとからなるセラミックロール1を作製した。
このセラミックロール1の各軸部1bに通気孔付きの金属キャップを焼嵌めした。得られたセラミックロール組立体を実施例1と同じステンレス箔の圧延に用いた結果、圧延したステンレス箔には直径が約100μmの転写斑点が観察された。
比較例4
実施例1と同じ造粒粉を用いた以外比較例3と同様にして、窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールを作製した。窒化珪素質焼結体のサンプルの可使領域及び廃却径より中心軸側における平均気孔面積率、可使領域における気孔密集域の最大直径、及び室温における曲げ強度を測定した。
実施例1と同様に研磨した窒化珪素質焼結体のサンプルの切断面(軸方向に直交)において、焼結したままの外周面(焼結肌)から深さ550μmまでの領域、深さ1.0〜1.6 mmの領域、及び深さ2.0〜2.6 mmの領域の顕微鏡写真をそれぞれ図6(a),図6(b) 及び図6(c) に示す。
このセラミックロール1の各軸部1bに通気孔付きの金属キャップを焼嵌めした。得られたセラミックロール組立体を実施例1と同じステンレス箔の圧延に用いた結果、圧延したステンレス箔には直径が約100μmの転写斑点が観察された。
実施例1〜4及び比較例1〜4における窒化珪素質焼結体の製造条件を表2に示す。
実施例1〜4及び比較例1〜4の窒化珪素質焼結体からなるセラミックロールの胴部及び軸部のサイズを表3に示す。また、実施例1及び比較例4の窒化珪素質焼結体からなるサンプルの平均気孔面積率(可使領域内、及び廃却径より中心軸側)、可使領域内の気孔密集域の最大直径、及び室温での曲げ強度を表4に示す。
注:(1) 可使領域における気孔密集域の最大直径。
表4から明らかなように、バインダとしてポリエチレングリコールを用いて作製した造粒粉をCIP法で成形することにより成形体を形成し、第一の加熱工程及び第二の加熱工程からなる予備焼結工程と、本焼結工程とを有する焼結パターンにより焼結すると、可使領域における平均気孔面積率が0.2%以下で、廃却径より中心軸側における平均気孔面積率が可使領域における平均気孔面積率より高く、可使領域に80μm以上の直径の気孔密集域が実質的になく、高い室温曲げ強度を有する窒化珪素質焼結体からなるサンプル及び長尺のセラミックロールが得られた(実施例1)。実施例1のセラミックロールでステンレス箔の圧延を行っても斑点の転写がなかったのは、可使領域に80μm以上の直径を有する気孔密集域が実質的にないからであると考えられる。
これに対して、バインダとしてポリエチレングリコールを用いて造粒粉を作製しても、第一の加熱工程P1を行わない焼結パターンで焼結を行うと、可使領域における平均気孔面積率が0.2%以下で、廃却径より中心軸側における平均気孔面積率が可使領域における平均気孔面積率より高く、可使領域に80μm以上の直径の気孔密集域が実質的になく、高い室温曲げ強度を有する窒化珪素質焼結体からなる長尺のセラミックロールが得られなかった(比較例4)。
1:セラミックロール
1a:胴部
1b:軸部
2:金属キャップ
2a:金属キャップの円筒部
2b:金属キャップの円柱部
3:金属キャップの通気孔
4:金属キャップの円筒部の底面
5:金属キャップの円柱部の端面
Da:セラミックロールの胴部の直径
Db:セラミックロールの軸部の直径
Di:金属キャップの円筒部の内径
Do:金属キャップの外径
La:セラミックロールの胴部の長さ
Lb:セラミックロールの軸部の長さ
L2a:金属キャップの円筒部の長さ
L2b:金属キャップの円柱部の長さ
P1:第一の加熱工程
P2,P3,P4:第二の加熱工程
P5:本焼結工程
P6:冷却工程
p1:第二の加熱工程における窒素ガス雰囲気の圧力
p2:本焼結工程における窒素ガス雰囲気の圧力
t1:第一の加熱工程の温度
t2,t3,t4:第二の加熱工程における温度
t5:本焼結工程の温度

Claims (14)

  1. 窒化珪素質焼結体からなる長尺のセラミックロールであって、
    初径から廃却径までの可使領域における平均気孔面積率が0.2%以下であり、
    前記廃却径より中心軸側における平均気孔面積率が前記可使領域における平均気孔面積率より高く、
    少なくとも前記可使領域に、円相当径が0.3μm以上10μm以下の気孔が密集してなる80μm以上の直径の気孔密集域が実質的にないことを特徴とするセラミックロール。
  2. 請求項1に記載のセラミックロールにおいて、前記窒化珪素質焼結体がMg及び少なくとも一種の希土類元素を酸化物換算で合計3〜20質量%含み、
    Mgと希土類元素との酸化物換算質量比(MgO/希土類元素の酸化物)が0.2〜5であることを特徴とするセラミックロール。
  3. 請求項1又は2に記載のセラミックロールにおいて、850 MPa以上の曲げ強度を有することを特徴とするセラミックロール。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックロールにおいて、300 mm以上の軸方向長さを有する胴部と、前記胴部の軸方向両端の軸部とからなることを特徴とするセラミックロール。
  5. 請求項4に記載のセラミックロールにおいて、前記胴部の直径が10〜200 mmであることを特徴とするセラミックロール。
  6. 請求項4又は5に記載のセラミックロールにおいて、前記軸部の各々に金属キャップが設けられていることを特徴とするセラミックロール。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックロールにおいて、前記窒化珪素質焼結体の組織が、少なくとも初径から廃却径までの可使領域において、20μm以下の長軸及び0.2〜0.4μm2の平均面積を有する窒化珪素粒子を70〜90%の面積比率で含有し、粒界相の面積比率が30〜10%であることを特徴とするセラミックロール。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のセラミックロールにおいて、前記セラミックロールを金属箔又は金属薄帯の圧延に用いることを特徴とするセラミックロール。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のセラミックロールを製造する方法であって、
    窒化珪素粉末と、焼結助剤粉末と、ポリエーテルと、前記ポリエーテルを溶解する溶媒とを含むスラリーを調製し、
    前記スラリーをスプレードライ法により乾燥することにより、窒化珪素粉末及び焼結助剤粉末の合計充填密度が45〜70%の造粒粉を形成し、
    前記造粒粉を円柱状にCIP成形し、
    得られた円柱状成形体を加熱して脱脂し、
    脱脂した円柱状成形体に対して、真空中で液相生成温度より200℃低い温度以上液相生成温度未満の第一の温度に保持する第一の加熱工程と、圧力p1の窒素ガス雰囲気中で液相生成温度以上焼結温度未満の第二の温度に少なくとも1回保持する第二の加熱工程とを有する予備焼結工程を行い、次いで
    圧力p2の窒素ガス雰囲気中、1600〜2000℃の温度で本焼結することを特徴とする方法。
  10. 請求項9に記載のセラミックロールの製造方法において、前記第二の加熱工程における窒素ガス雰囲気の圧力p1が本焼結工程における窒素ガス雰囲気の圧力p2より低いことを特徴とする方法。
  11. 請求項9又は10に記載のセラミックロールの製造方法において、前記第二の加熱工程が、第一の加熱温度超で本焼結温度未満の範囲内の異なる温度に保持する複数の加熱工程からなることを特徴とする方法。
  12. 請求項9〜11のいずれかに記載のセラミックロールの製造方法において、前記ポリエーテルが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする方法。
  13. 請求項12に記載のセラミックロールの製造方法において、前記ポリエーテルがポリエチレングリコールであることを特徴とする方法。
  14. 請求項13に記載のセラミックロールの製造方法において、前記ポリエチレングリコールの分子量が1,000〜11,000であることを特徴とする方法。
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