JP2015198060A - 誘導加熱装置の制御回路 - Google Patents
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Abstract
Description
図9(a),(b),(c)は、誘導加熱装置の主回路部の構成例を示しており、最初に、図9(a)に基づいて主回路部の構成及び動作を説明する。なお、この回路構成及び動作は、例えば特許文献1に記載されている。
ダイオード8を流れる電流は、加熱コイル11と共振コンデンサ12との共振現象により反転し、加熱コイル11→スイッチング素子6→共振コンデンサ12→加熱コイル11の経路で流れる。この状態でスイッチング素子6をオフすると、加熱コイル11の電流は、加熱コイル11→スナバコンデンサ10→共振コンデンサ12→加熱コイル11の経路と、加熱コイル11→スナバコンデンサ9→直流平滑コンデンサ4→共振コンデンサ12→加熱コイル11の経路に転流し、スナバコンデンサ10の電圧は緩やかに上昇することから、スナバコンデンサ10に並列接続されたスイッチング素子6はソフトスイッチング動作となる。
ダイオード7を流れる電流は、加熱コイル11と共振コンデンサ12との共振現象により反転し、加熱コイル11→共振コンデンサ12→直流平滑コンデンサ4→スイッチング素子5→加熱コイル11の経路で流れる。
以上の動作を高周波で繰り返すことにより、加熱コイル11に高周波の交流電流を供給することができ、加熱コイル11に近接配置された被加熱物(図示せず)を誘導加熱することが可能になる。
図10は、図9(a)における各部の動作波形であり、上から加熱コイル11の電流iLo、スイッチング素子5及びダイオード7の電圧v5,電流i5、スイッチング素子6及びダイオード8の電圧v6,電流i6を示している。図示するように、電流i5,i6が同時に零となる期間tsが存在し、この期間tsにスナバコンデンサ9,10の充放電が行われている(以後、期間tsをスナバコンデンサ充放電期間と呼ぶ)。
スナバコンデンサ9,10がない場合には、電圧v5、電流i5の波形は破線のようになり、大きなターンオフ損失Ploss5が発生する。これに対し、図9(a)のようにスナバコンデンサ9,10を設けると、スイッチング素子5,6のターンオフ後にスナバコンデンサ9,10が充放電され、図11に実線で示すように、例えば電流i5が迅速にほぼ零に収束し、電圧v5の立ち上がりが遅くなるので、ターンオフ損失を大幅に低減することができる。
従って、スイッチング損失が非常に小さいことが、図9(a)の回路の特徴である。また、この回路では急峻な電圧変動を抑制できるため、ノイズ低減にも大きな効果がある。
第1の電力調整方法は周波数制御によるものであり、この制御方法は、例えば特許文献2,3に記載されている。
図12における主回路部1には、例えば図9に示したものが適用可能であり、制御回路20は、電力指令部21、電力検出部22、動作周波数決定部23及び駆動回路部24によって構成されている。なお、以下では、主回路部1を「インバータ」とも言うものとする。
図13(a)のように誘導加熱装置が大電力を供給しているときは、電圧voutと電流iLoとの位相差(voutの基本波成分vout(1)とiLoとの位相差)がほぼ零、すなわち力率1で動作する。このとき、加熱コイル11のインダクタンス及び共振コンデンサの静電容量によって決まる共振周波数fs1と動作周波数とは、ほぼ一致している。
すなわち、動作周波数はfs1<fs2の関係にあり、動作周波数を高めるほど供給する電力は小さくなる。つまり、周波数制御は、力率を調整することで加熱コイル11への供給電力を調整することになる。
このデューティ制御は、インバータの出力電圧を小さくすることで供給電力を低下させる方法である。図14(a),(b)は、デューティ制御時の動作波形であり、各図における上段がインバータの出力電圧vout、下段が出力電流iLoを示している。
このように、前述した周波数制御が、インバータの出力電圧、電流の力率を調整して供給電力を調整するのに対し、デューティ制御は、出力電圧の実効値を調整して供給電力を調整する方式である。
この位相シフト制御は、デューティ制御と同様に、インバータの出力電圧の実効値を調整して供給電力を調整するものであり、各相のスイッチング素子をオンさせる位相角をずらしてスイッチングする方式である。位相シフト制御は、通常、直流−直流変換装置等に適用される制御方法であるが、図9(c)に示す主回路部1Cのように、スイッチング素子5a,5b,6a,6bがフルブリッジ接続されたインバータを有する誘導加熱装置に適用することも容易に想像可能である。
なお、図9(c)において、7a,7b,8a,8bはダイオード、9a,9b,10a,10bはスナバコンデンサであり、他の部品には図9(a)と同一の参照符号を付してある。
図15(a)は大電力供給時の波形であり、図13(a),図14(a)と同様にデューティ50[%]の条件である。一方、図15(b)は電力抑制時の波形であり、インバータの出力電圧voutは、ゼロ電圧期間を設けることにより基本波成分vout(1)を小さくしている。
このように位相シフト制御は、デューティ制御と同様に、インバータの出力電圧の実効値を調整して供給電力を調整する方式であり、図9(c)に示したようなフルブリッジ型の主回路部1Cでなければ実現することができない。
これに対し、位相シフト制御時は、スイッチング素子S1,S2のデューティは、大電力時、小電力時ともに50[%]のままである。しかし、小電力時には、スイッチング素子S1,S2のスイッチングパターンの位相をシフトし、いわゆる「重なり角」を設けることにより、図15(b)に示したゼロ電圧期間を実現している。
まず、第1に、デューティ制御や位相シフト制御では、前述したスナバコンデンサによるスイッチング損失の低減は実現困難である。
スナバコンデンサは、スイッチング素子のターンオフ時のスイッチング損失を大幅に低減できる反面、ターンオン時に損失が大幅に増加する。これは、スナバコンデンサに蓄えられた電荷を、ターンオン時にスイッチング素子により短絡(スナバ短絡)して放電させるためであり、スナバコンデンサによる損失レスのソフトスイッチング動作は成り立たない。
一般的な誘導加熱装置は、鉄や磁性ステンレス等からなる被加熱物を加熱しやすいのに対し、アルミ、銅、非磁性ステンレス等からなる被加熱物を加熱しにくいことが知られている。これは、アルミや銅、非磁性ステンレス等の金属材料は一般に低抵抗であってジュール熱を発生しにくいため、大電流が必要になるからである。
また、図13(b)に示すように三角波の頂点でスイッチングが行われると大電流の遮断動作となり、大きなノイズを発生するという問題もある。
まず、特許文献3には、通常の運転に先だってインバータから加熱コイルに所定周波数の電流を流した時の電流の大きさから負荷(鍋)の材質を判別し、その材質に応じて共振周波数を切り換えるようにした誘導加熱調理器が記載されている。この従来技術によれば、鍋の材質が例えばアルミニウムである場合には、鉄製の鍋の場合よりも共振周波数を高くして動作させることにより、鍋の材質を問わず適用可能であるが、その反面、回路構成が複雑化するという問題がある。
また、特許文献4には、インバータの入力電流が所定値以上になった場合の動作周波数に基づいてアルミや銅などの負荷(鍋)の材質を判別し、インバータを停止させて過電流の流入を防止する電磁調理器が記載されている。
三角波状の大電流を流して加熱する条件は、インバータの出力電流の位相角が電気角90度近くで動作していることに相当する。このような三角波状の大電流でも動作可能なインバータは、アルミ溶解炉等に専用のインバータとして従来から存在している。この種の専用のインバータを設計する際には、種々課題はあるものの、基本的には三角波電流を流せるように各部品を選定し、冷却系を設計すれば良い。しかしながら、専用のインバータは非常に高価かつ大型であり、誘導加熱調理器等、低価格化が求められる各種用途に展開するのは難しい。
この電流制限機能は、インバータが流す最大電流を超えないように、ソフトウェアまたはハードウェアにより出力電流を制限する機能である。このような電流制限機能では、電流波形(正弦波、三角波)の区別は不可能であるが、位相角が90度近い三角波状の電流でも流すことができる。しかしながら、スイッチング損失の増加によってスイッチング素子が破損する恐れや、スナバコンデンサの電流増加による破損がスイッチング素子に波及する恐れがある。
そこで、本発明の解決課題は、誘導加熱装置の主回路部として比較的安価な汎用IHインバータを用いた場合でも、アルミ、銅、非磁性ステンレス等の低抵抗負荷を含む各種の被加熱物を、スイッチング素子や装置を破損させずに安全に加熱することができる制御回路を提供することにある。
前記インバータの駆動周波数を制御して前記加熱コイルへの供給電力を調整するための周波数制御部と、
前記インバータの各相の半導体スイッチング素子をオンさせる位相角を所定の重なり角だけずらして前記加熱コイルへの供給電力を調整するための位相シフト制御部と、
前記周波数制御部及び前記位相シフト制御部からの指令に基づいてスイッチングパターンを設定する制御条件設定部と、
前記制御条件設定部により設定されたスイッチングパターンに従って前記半導体スイッチング素子をオンオフさせる駆動信号を生成する駆動回路部と、を備えたものである。
前記制御条件設定部は、
スイッチング周期における前記インバータの出力電圧波形を、正極側電位が正の直流中間電圧、負極側電位が負の直流中間電圧であり、かつ、正極側電位と負極側電位との間にゼロ電圧期間を有する波形とするためのスイッチングパターンを設定して前記インバータを周波数制御するものである。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載した誘導加熱装置の制御回路において、
前記重なり角をほぼ一定に保ちながら前記インバータを周波数制御することを特徴とする。
前記重なり角を、スイッチング周期内で電気角145度以下に設定したことを特徴とする。
前記重なり角を、スイッチング周期内で電気角110度〜145度の範囲に設定したことを特徴とする。
前記制御条件設定部は、
前記負荷モード切替部により前記通常負荷モードが選択された時に、前記インバータの出力電圧波形を、正極側電位が正の直流中間電圧であり、かつ、負極側電位が負の直流中間電圧である波形とするためのスイッチングパターンを設定して前記インバータを周波数制御し、前記負荷モード切替部により前記低抵抗負荷モードが選択された時に、請求項1〜5の何れか1項に従ってスイッチングパターンを設定するものである。
図1において、三相交流電源2Aには誘導加熱装置の主回路部としてのインバータ1Aが接続され、その出力側には加熱コイル11が接続されている。
なお、加熱コイル11は、インダクタンス成分Lo及び抵抗成分Roを有するものとして表してある。また、図1において、Vdcは直流中間電圧、voutはインバータ1Aの出力電圧、iLoは出力電流(負荷電流)を示す。
この負荷モード切替部103から出力される負荷モード切替指令は制御条件設定部104に入力されており、制御条件設定部104は、選択された負荷モードに応じたスイッチングパターンを設定するように構成されている。
まず、スイッチング素子やインバータの破損、ひいては誘導加熱装置の破損を防止するためには、スイッチング損失を低減すること、及び、スナバコンデンサに蓄えられた電荷を放電する際のターンオン損失を発生させないことが必要であり、言い換えればソフトスイッチング動作を実現することが求められる。
具体的には、図2に示すように、スイッチング周期におけるインバータ1Aの出力電圧voutの波形が、正極側電位が正の直流中間電圧(Vdc)、負極側電位が負の直流中間電圧(−Vdc)となり、かつ、正極側電位と負極側電位との間にゼロ電圧期間を有する波形となるように、図1における周波数制御部101、制御条件設定部104によりスイッチングパターンを設定する。このスイッチングパターンは、周波数制御部101の動作により、インバータ1Aに対する電力指令値と電力検出値との偏差に応じて周波数が制御されるものであり、駆動回路部105を介してスイッチング素子S1〜S4がオンオフ制御される。
また、その際、位相シフト制御部102の動作により、位相シフトにおける重なり角をほぼ一定に保ちながら加熱コイル11への供給電力を調整する。
図3(a)に示すように、デューティ50[%]で動作させると、スイッチング周期内で全てのスイッチング素子S1〜S4はターンオフ動作となるが、スイッチング素子S1〜S4は2個ずつ同時にオフし、かつ、ピーク電流付近でスイッチングしている。このため、スイッチング損失が大きく、スナバコンデンサに過電流が流れると共に、発生ノイズも大きくなる。
これに対し、図3(b)に示すように位相シフト制御を行った場合には、図3(a)と同様に、スイッチング周期内で全てのスイッチング素子S1〜S4がターンオフ動作となるが、スイッチングタイミングが個別に発生するうえに、ターンオフ時に遮断する電流もピーク付近ではなく小さな値となっているため、スイッチング損失の低減、スナバコンデンサの過電流の防止、発生ノイズの低減が可能になる。
図3(b)に示したように、位相シフト制御では全てのスイッチング素子S1〜S4を個別にターンオフ動作させる状態がある。しかしながら、前述した図14(b)に示したように、動作条件によってはターンオン損失が発生する。
そこで、第2実施例では、第1実施例における位相シフト制御の動作条件を、ターンオフが発生しない条件に限定することとした。具体的には、位相シフトにおける重なり角(零電圧期間)を、スイッチング周期に対して電気角145度以下に設定する。
上述した第2実施例では、ターンオン損失が発生しない条件を明確にするために、重なり角を145度以下に限定した。つまり、重なり角が0度〜145度の範囲になるようにスイッチングパターンを設定すれば、何れのスイッチング素子でもターンオン損失が発生することはない。
しかし、重なり角を0度で動作させることは、図3(a)に示したようにデューティ50[%]で動作させることと同じであるから、インバータ1Aの破損を防ぐためには不十分である。
図6によれば、ピーク電流の約0.72倍で電流を遮断していることが確認できる。つまり、一般的なIHインバータは、図6に基づく波形の動作補償までは行っていることになる。
このため、第3実施例では、ピーク電流の約0.72倍となる位相シフトの重なり角の下限値を設定する。この下限値は110度であり、図7に示すような動作波形となる。
この第3実施例によれば、位相シフトの重なり角を110度から145度の範囲とすることで、汎用IHインバータを破損させることなく動作させることができ、かつ、スイッチング損失の低減や低ノイズ化を達成することができる。
前述した第1〜第3実施例は、何れも電磁調理器等に用いられる汎用IHインバータを破損することなく、低抵抗の負荷(被加熱物)に対応させるための技術と言うことができる。
そこで、第4実施例では、低抵抗負荷だけでなく、通常の負荷(比較的大きな抵抗負荷、デューティ50[%]、定格電力供給時に位相角40度以内で動作する負荷)に対応した通常負荷モードと、低抵抗負荷に対応した低抵抗負荷モードと、を切り替える機能を備えることとした。
負荷モード切替部103により通常負荷モードが選択された場合には、制御条件設定部104により、図8(図13(a)も同様)に示すデューティ50[%]のスイッチングパターンを設定して、インバータ1Aを周波数制御する。この場合の出力電圧voutの波形は、正極側電位が正の直流中間電圧であり、かつ、負極側電位が負の直流中間電圧である波形となる。
このように負荷モード切替部103によって負荷モードを切り替え可能とすることにより、誘導加熱装置を様々な種類の負荷に適した条件で、破損させることなく安全に動作させることができる。
2A:三相交流電源
3A:整流回路
4:直流平滑コンデンサ
11:加熱コイル
100:制御回路
101:周波数制御部
102:位相シフト制御部
103:負荷モード切替部
104:制御条件設定部
105:駆動回路部
S1〜S4:半導体スイッチング素子
Cr:共振コンデンサ
Lo:インダクタンス成分
Ro:抵抗成分
Claims (6)
- インバータを構成するフルブリッジ型の複数の半導体スイッチング素子をオンオフさせ、前記インバータに接続された加熱コイルに交流電力を供給することにより、前記加熱コイルに近接配置された被加熱物を誘導加熱する誘導加熱装置の制御回路において、
前記インバータの駆動周波数を制御して前記加熱コイルへの供給電力を調整するための周波数制御部と、
前記インバータの各相の半導体スイッチング素子をオンさせる位相角を所定の重なり角だけずらして前記加熱コイルへの供給電力を調整するための位相シフト制御部と、
前記周波数制御部及び前記位相シフト制御部からの指令に基づいてスイッチングパターンを設定する制御条件設定部と、
前記制御条件設定部により設定されたスイッチングパターンに従って前記半導体スイッチング素子をオンオフさせる駆動信号を生成する駆動回路部と、
を備えたことを特徴とする誘導加熱装置の制御回路。 - 請求項1に記載した誘導加熱装置の制御回路において、
前記制御条件設定部は、
スイッチング周期における前記インバータの出力電圧波形を、正極側電位が正の直流中間電圧、負極側電位が負の直流中間電圧であり、かつ、正極側電位と負極側電位との間にゼロ電圧期間を有する波形とするためのスイッチングパターンを設定して前記インバータを周波数制御することを特徴とする誘導加熱装置の制御回路。 - 請求項2に記載した誘導加熱装置の制御回路において、
前記重なり角をほぼ一定に保ちながら前記インバータを周波数制御することを特徴とする誘導加熱装置の制御回路。 - 請求項2または3に記載した誘導加熱装置の制御回路において、
前記重なり角を、スイッチング周期内で電気角145度以下に設定したことを特徴とする誘導加熱装置の制御回路。 - 請求項4に記載した誘導加熱装置の制御回路において、
前記重なり角を、スイッチング周期内で電気角110度〜145度の範囲に設定したことを特徴とする誘導加熱装置の制御回路。 - 前記被加熱物の抵抗値の大小にそれぞれ応じた通常負荷モードと低抵抗負荷モードとを切り替える負荷モード切替部を備え、
前記制御条件設定部は、
前記負荷モード切替部により前記通常負荷モードが選択された時に、前記インバータの出力電圧波形を、正極側電位が正の直流中間電圧であり、かつ、負極側電位が負の直流中間電圧である波形とするためのスイッチングパターンを設定して前記インバータを周波数制御し、前記負荷モード切替部により前記低抵抗負荷モードが選択された時に、請求項1〜5の何れか1項に従ってスイッチングパターンを設定することを特徴とする誘導加熱装置の制御回路。
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