JP2015193750A - 生分解性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリ乳酸等の既に量産化がなされている安価な硬質生分解性樹脂を原料として、生分解性、離型性、耐ブロッキング性、及び強度に優れた樹脂組成物を提供すること。【解決手段】(A)硬質生分解性樹脂(B)軟質生分解性樹脂(C)可塑剤、並びに(D)脂肪酸アミド化合物、脂肪族モノエポキシ化合物及び脂肪族モノカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、該(D)の含有量が樹脂組成物全量に対して0.2重量%以上である樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、離型性、耐ブロッキング性、及び強度に優れた樹脂組成物に関する。
温室効果ガス排出削減による「低炭素化社会」や、環境に調和した「資源循環型社会」の実現に向けた取り組みが強く求められており、これらの社会を実現するために新しい素材「バイオプラスチック」の普及が加速している。
また、原料がバイオマスであるかどうかを問わず、農業用フィルムやコンポスト、メタン発酵等の労力削減のために生分解性樹脂が普及してきている。
その中で、ポリ乳酸は植物由来で生分解する樹脂として使用されているが、ポリ乳酸は末端が金属と結合しやすいOH基又はCOOH基を有するポリエステルであるため成型時の離型性が悪い。また、ポリ乳酸は硬質樹脂であり、フィルムとして使用するには柔軟性と衝撃強度が不足している。そのため、ポリ乳酸を主成分とするインフレーションフィルムが作れないという問題があった。その他のポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸等の植物由来樹脂、生分解性樹脂についても同様に硬質であるため、フィルム用の樹脂として使用しにくい。
柔軟性と衝撃強度を付与するために柔軟性を増す添加剤(可塑剤)を加える方法があるが、離型性がさらに悪化する、樹脂ペレット自体が固着する、又は成形したフィルムにブロッキングが起こるという問題があった。ここで、ブロッキングを抑制するために最も効果があるのがタルクやシリカを添加することであるが、その目的に見合った量を生分解性樹脂に添加すると、衝撃強度が再度低下する。
特開平9−3267号公報 特開2005−220307号公報
本発明の目的は、ポリ乳酸等の既に量産化がなされている安価な硬質生分解性樹脂を原料として、生分解性、離型性、耐ブロッキング性、及び強度に優れた樹脂組成物を提供することである。
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、硬質生分解性樹脂に対して、軟質生分解性樹脂と可塑剤を適量加え、さらに脂肪酸アミド化合物、脂肪族モノエポキシ化合物及び脂肪族モノカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を通常ポリオレフィンに添加する量より多い量を加えることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記項に記載の生分解性樹脂組成物に関する。
項1. (A)硬質生分解性樹脂
(B)軟質生分解性樹脂
(C)可塑剤、並びに
(D)脂肪酸アミド化合物、脂肪族モノエポキシ化合物及び脂肪族モノカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種
を含有し、該(D)の含有量が樹脂組成物全量に対して0.2重量%以上である樹脂組成物。
項2. 前記(A)硬質生分解性樹脂がポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂、ポリヒドロキシ酪酸系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記項1に記載の樹脂組成物。
項3. 前記(A)硬質生分解性樹脂がポリ乳酸であり、前記(A)硬質生分解性樹脂の含有量が樹脂組成物全体重量に対して50重量%以上である、前記項1又は2記載の樹脂組成物。
項4. 前記(B)軟質生分解性樹脂がポリエチレンサクシネート共重合体、ポリブチレンサクシネート共重合体、ポリブチレンサクシネート−アジペート共重合体、ポリブチレンサクシネート−テレフタレート共重合体、ポリブチレンサクシネート−カーボネート共重合体、ポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトン−ブチレンサクシネート共重合体、ポリ乳酸−ポリカプロラクトン共重合体、ヒドロキシ酪酸−ヒドロキシヘキサン酸共重合体、ポリビニルアルコール、及びポリエチレンセバケートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
項5. 前記(B)軟質生分解性樹脂の含有量が樹脂組成物全体重量に対して5〜40重量%である、前記項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
項6. 前記(C)可塑剤が炭素4つ以上のメチレン基を主骨格とする二官能性以上の化合物である、前記項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
項7. 前記(D)の含有量が樹脂組成物全量に対して0.2〜10重量%である、前記項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
項8. 前記(D)がステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
項9. 前記(D)が炭素数8〜30アルコールのグリシジルエーテルである、前記項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
項10. さらに無機アンチブロッキング剤を含有する前記項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
項11. 前記無機アンチブロッキング剤がシリカもしくはタルクである前記項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
項12. 前記無機アンチブロッキング剤が、少なくとも二次粒子の粒径0.3μm以上のシリカを含む、前記項10〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
項13. 前記項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて成形された厚み10〜100μmのフィルム。
項14. インフレーション法によって成形された、前記項13に記載のフィルム。
項15. 前記項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて成形された、射出成形品。
本発明の生分解性樹脂組成物は、耐衝撃性が高く、さらに強度の低下を抑制しながら、離型性、耐ブロッキング性を向上することができる。
本発明の生分解性樹脂組成物は、
(A)硬質生分解性樹脂
(B)軟質生分解性樹脂
(C)可塑剤、並びに
(D)脂肪酸アミド化合物、脂肪族モノエポキシ化合物及び脂肪族モノカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種
を含有する。なお、以下において、「(D)脂肪酸アミド化合物、脂肪族モノエポキシ化合物及び脂肪族モノカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種」を単に「前記(D)成分」ということもある。
本発明の生分解性樹脂組成物は、可塑剤によって引き起こされる離型性と耐ブロッキング性の悪化を前記(D)成分が強度の低下を抑制しながら改良するため、耐衝撃性が高く、かつ離型性及び耐ブロッキング性にも優れている。また、本発明の組成物では、少量の軟質生分解性樹脂で硬質生分解性樹脂の成形性等を向上させることができ、軟質生分解性樹脂に石油由来の成分を用いた場合であっても植物化度の低下を抑えることができる。
(A)硬質生分解性樹脂
硬質生分解性樹脂とは、生分解性樹脂のうち、硬質のものである。具体的には、例えば、曲げ弾性率が1000MPa以上の生分解性樹脂をいう。
硬質生分解性樹脂として、具体的には、ポリ乳酸(PLA)等のポリ乳酸系樹脂、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)等のPHB系樹脂、ポリグリコール酸(PGA)等のPGA系樹脂、リンゴ酸等の他のヒドロキシカルボン酸の重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、石油由来の成分より合成してもよいが、植物由来、微生物由来、天然物からの合成等によって得たものを使用することができる。これらの中でも、コスト及び保存安定性の観点よりポリ乳酸系樹脂が好ましい。
硬質生分解性樹脂の含有量は、要求される物性(曲げ弾性率、衝撃強度等)、用途(生分解速度等)及び目標とする植物化度によって異なるが、通常、全体の重量に対して、50重量%以上であり、好ましくは50〜90重量%であり、より好ましくは60〜85重量%程度である。
一方、例えば、生分解性樹脂組成物の生分解処理の前工程において、アルカリ条件下、短時間で可溶化する場合等では、軟質生分解樹脂が溶解しにくい条件となる。そのため、このような生分解処理の前工程を行う場合等は、硬質生分解性樹脂の含有量は70〜90重量%であることが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂は、乳酸成分を重合成分として含有するポリマーである。乳酸成分としては、例えば、乳酸(D−乳酸、L−乳酸、DL−乳酸)、乳酸の反応性誘導体(例えば、ラクチド(乳酸二量体)、乳酸メチルエステル等の乳酸C1−3アルキルエステル等)等が含まれる。乳酸成分は単独又は2種以上に組み合わせて用いてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、乳酸成分を主成分とするポリマーであればよく、ポリ乳酸のような乳酸成分の単独重合体(例えば、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD,L−乳酸等)であっても、乳酸成分と他の共重合成分との共重合体であってもよい。他の共重合成分としては、ジオール成分(例えば、エチレングリコール等のC2−6アルカンジオール等)、ジカルボン酸成分(例えば、アジピン酸等のC6−12アルカンジカルボン酸、又はそのエステル形成性誘導体(エステル、酸ハライド、酸無水物等)等)、ヒドロキシカルボン酸(例えば、グリコール酸等のヒドロキシC2−6アルカンカルボン酸等)、ラクトン(例えば、グリコリド等のC4−10ラクトン等)等が挙げられる。これらの共重合成分は、単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。共重合体において、乳酸成分の割合は、例えば、全構成モノマーの70モル%以上(例えば、75〜99.5モル%程度)、好ましくは80モル%以上(例えば、85〜99モル%程度)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、92〜98モル%程度)である。
なお、ポリ乳酸系樹脂は、異なる種類(又は重合組成)のポリ乳酸系樹脂を2種以上組み合わせて構成してもよい。
ポリ乳酸系樹脂(特にポリ乳酸)における光学純度(重合体中の全乳酸成分に対するD−又はL−乳酸の割合のうち大きい方の値)は、特に限定されず、目的に応じて選択すればよい。例えば、フィルムの引張強度の観点では、光学純度は通常84%以上であり、94%以上であることが好ましい。さらに、この中でもより優れた耐熱性や結晶化速度が要求される場合、例えば、光学純度は90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、97〜100%程度であることが特に好ましい。一方で、より優れた柔軟性、分解性、透明性が重視される場合、光学純度が適度に低い(例えば、2〜10%程度)ことが好ましい。
上記光学純度は主にL(又はD)−乳酸重合体に重合前のモノマーの時点で混入し、共重合の形で構造に組み込まれるD(又はL)−乳酸に関して述べているが、L(又はD)−乳酸重合体に意図的にD(又はL)−乳酸重合体を混合するステレオコンプレックス、つまり共重合体ではなくL−乳酸重合体とD−乳酸重合体との混合物を用いる場合は、D(又はL)−乳酸重合体の比率が高くても、耐熱性が高く、結晶化速度も速い。この場合は、D(又はL)−乳酸重合体の比率は幅広く選択でき、例えば1〜50%である。
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、5000〜1000000の範囲から選択できる。ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で10000〜800000であることが好ましく、20000〜700000であることがより好ましく、30000〜600000であることがさらに好ましく、50000〜500000であることが特に好ましい。
ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、50〜65℃であることが好ましく、55〜60℃であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度は、慣用の方法で測定することができ、例えば、示差走査熱量計(DSC)によって測定することができる。
ポリ乳酸系樹脂のメルトフローレートは、190℃及び荷重2.16kgの条件下で、例えば、1〜30g/10分であり、好ましくは2〜20g/10分であり、さらに好ましくは3〜15g/10分であり、特に好ましくは4〜10g/10分である。
ポリ乳酸系樹脂の酸価は、例えば、0.1〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.2〜80mgKOH/gであることがより好ましく、0.3〜60mgKOH/g程度であることが特に好ましい。ポリ乳酸系樹脂の水酸基価もまた、上記と同様の範囲から選択できる。
(B)軟質生分解性樹脂
軟質生分解性樹脂とは、生分解性樹脂のうち、軟質のものである。例えば、曲げ弾性率が900MPa未満の生分解性樹脂をいう。
軟質生分解性樹脂は、硬質生分解性樹脂の成形性や衝撃強度、引張伸び等を向上させるために加える。可塑剤のみで軟質化するとブリードアウトやブロッキング、成形時の収縮等の問題が生じやすく、軟質生分解性樹脂のみで軟質化すると、衝撃強度等が不足しやすい。
軟質生分解性樹脂としては、ポリエチレンサクシネート共重合体(PES)、ポリブチレンサクシネート共重合体(PBS)、ポリブチレンサクシネート−アジペート共重合体 (PBSA)、ポリブチレンサクシネート−テレフタレート共重合体、ポリブチレンサクシネート−カーボネート共重合体、ポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体(PBAT)、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトン−ブチレンサクシネート共重合体、ポリ乳酸−ポリカプロラクトン共重合体、ヒドロキシ酪酸−ヒドロキシヘキサン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンセバケート等を挙げることができる。これらの中でもポリ乳酸との親和性、生分解性、衝撃強度、曲げ弾性(柔軟性)等の観点でポリブチレンサクシネート−アジペート共重合体 (PBSA)が好ましい。
軟質生分解性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、30000〜500000の範囲から選択できる。軟質生分解性樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で40000〜400000であることが好ましい。
軟質生分解性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、−130〜10℃であることが好ましく、−120〜−5℃であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度は、慣用の方法で測定することができ、例えば、示差走査熱量計によって測定することができる。
軟質生分解性樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の重量に対して、通常、5〜40重量%程度であり、好ましくは10〜30重量%程度である。
(C)可塑剤
可塑剤は、一般的に樹脂用可塑剤として用いる物質に加えて、柔軟な構造を有し、硬質生分解性樹脂への相溶性を有する物質を用いることができる。
可塑剤としては、特に(1)炭素4つ以上のメチレン基を主骨格とする二官能性以上の化合物、(2)炭素2以上のジオールが2つ以上連なっているもの、(3)ジ(又はトリ)カルボン酸の炭素数4以上のアルキルエステル、(4)グリセリン又はその重合物を主骨格とするものが好ましい。
例えば、前記(1)炭素4つ以上のメチレン基を主骨格とする二官能性以上の化合物としては、アジピン酸エステル類;セバシン酸エステル類;1,6−ヘキサンジオールジグリシジル等の1,6−ヘキサンジオールエーテル類等が挙げられる。
前記(2)炭素2以上のジオールが2つ以上連なっているものとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジ(トリ、テトラ)エチレングリコール、ジ(トリ、テトラ)プロピレングリコール、ジ(トリ、テトラ)テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、又はこれらの誘導体(モノ(ジ)エーテル(グリシジルエーテル、アルキルエーテル、フェニルエーテル等)又はモノ(ジ)エステル等)が挙げられる。
前記(3)ジ(又はトリ)カルボン酸の炭素数4以上のアルキルエステルとしては、主骨格には連続したメチレン基を有していないが、末端構造に脂肪族側鎖を有しているクエン酸トリブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等が挙げられる。
前記(4)グリセリン又はその重合物を主骨格とするものとしては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、又はさらに重合度の高いポリグリセリン、及びそれらのエステル類(例えば、脂肪酸エステル)、エーテル類(例えば、ポリエチレンオキサイドとエーテル結合で結合しているブロック重合体、ポリプロピレンオキサイドとのブロック重合体、及びグリシジルエーテル類)が挙げられる。
可塑剤の添加量は、その種類、樹脂組成物に要求される物性、用途等によって異なるが、通常、樹脂組成物の全重量に対して、3〜20重量%であり、好ましくは5〜18重量%であり、より好ましくは7〜16重量%である。
可塑剤を入れるほど、衝撃強度や引張伸びが向上する。また、曲げ弾性率や溶融粘度が低くなる。通常、フィルム用には低曲げ弾性率、高溶融粘度が好ましく、射出成形用には、高曲げ弾性率、低溶融粘度の樹脂を用いるため、用途に必要な物性と他の配合成分を考慮し適切な量を選択する。
可塑剤が少ないと衝撃強度や引張伸びが不足し、可塑剤が多いと離型不良やブロッキング、樹脂の収縮等の問題が発生し易い。
(D)脂肪酸アミド化合物、脂肪族モノエポキシ化合物及び脂肪族モノカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種
(D−1)脂肪族アミド化合物
脂肪族アミド化合物としては、離型性や耐ブロッキング性及び不揮発性を重視する場合は、C12〜30脂肪酸のアミドが望ましい。C23〜30脂肪酸のアミドを用いた場合でもポリ乳酸系樹脂との相溶性は十分であるが、樹脂との相溶性をより重視する場合はC8〜22脂肪酸のアミドが望ましい。
具体的には、脂肪族アミド化合物として、ブタン酸アミド(炭素数4)、ラウリン酸アミド(炭素数12)、ステアリン酸アミド(炭素数18)、オレイン酸アミド(炭素数18)、べヘン酸アミド(炭素数22)、エルカ酸アミド(炭素数22)、モンタン酸アミド(炭素数28)等の炭素数4〜30の飽和又は不飽和脂肪酸アミドが挙げられる。離型性等と相溶性のバランスから、炭素数12〜22の脂肪酸アミドが好ましく、炭素数18〜28の脂肪酸アミドがより好ましい。
通常、ポリエチレン等の樹脂に脂肪酸アミドを添加する場合、500〜1000ppm程度を加え、表面にブリードアウトして働くため、添加量が多い(例えば、1500ppm以上)と樹脂が滑ることによる成形不良、表面への過度なブリードアウトによるシール不良等の多くの不具合が生じる。しかしながら、硬質生分解性樹脂に添加した場合、上記不具合が生じにくく、逆に多量に添加することで有効に働く。脂肪酸アミド化合物の添加量は、例えば、樹脂組成物の重量全体に対して、0.2重量%以上、好ましくは0.2〜10重量%であり、より好ましくは0.3〜8重量%であり、さらに好ましくは0.4〜5重量%であり、特に好ましくは0.5〜3重量%である。硬質生分解性樹脂に添加する場合に脂肪酸アミドの添加量が多くとも不具合が生じない理由としては、末端のCOOHやOH基と水素結合、化学結合を生じるためであると考えられる。
(D−2)脂肪族モノエポキシ化合物
脂肪族モノエポキシ化合物については、脂肪族アミド化合物より樹脂の末端に化学結合を形成するため、ブリードアウトを起こしにくいと考えられる。よって、主に離型を目的とする場合に使用する。また、それ自体の融点及び/又は沸点が脂肪酸アミド化合物よりも低く、混練時に揮発する可能性もある。
脂肪族モノエポキシ化合物としては、ステアリルアルコールグリシジルエーテル等の直鎖又は分岐鎖(好ましくは直鎖)のC8〜30(好ましくはC12〜25)アルコールのグリシジルエーテルを例示することができる。
脂肪族モノエポキシ化合物の添加量は、例えば、樹脂組成物の重量全体に対して、0.1〜10重量%であり、好ましくは0.2〜5重量%であり、より好ましくは0.4〜3重量%である。別の態様としては、樹脂組成物の重量全体に対して、0.2重量%以上、好ましくは0.2〜10重量%であり、より好ましくは0.3〜8重量%であり、さらに好ましくは0.4〜5重量%であり、特に好ましくは0.5〜3重量%である
(D−3)脂肪族モノカルボン酸化合物
脂肪族モノカルボン酸化合物としては、直鎖又は分岐鎖(好ましくは直鎖)のC12〜30脂肪族モノカルボン酸を例示することができる。
脂肪族モノカルボン酸化合物の添加量は、例えば、樹脂組成物の重量全体に対して、0.1〜5重量%であり、好ましくは0.2〜4重量%であり、より好ましくは0.3〜3重量%である。別の態様としては、樹脂組成物の重量全体に対して、0.2重量%以上、好ましくは0.2〜10重量%であり、より好ましくは0.3〜8重量%であり、さらに好ましくは0.4〜5重量%であり、特に好ましくは0.5〜3重量%である
その他の添加剤
本発明の生分解性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の添加剤を含んでもよい。その他の成分の含有量としては、例えば、生分解性樹脂組成物全体の重量に対して、20重量%以下であり、好ましくは0.2〜15重量%である。
他の添加剤としては、無機添加剤、加水分解防止剤を挙げることができる。
無機添加剤を加えることで耐ブロッキング性、離型性を高めることができる。無機添加剤としては、シリカ、タルク等の無機アンチブロッキング剤が好ましく、透明性の観点からシリカがより好ましい。
無機添加剤として用いるシリカは、二次粒子の粒径が0.3μm以上であることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましく、3〜10μmであることがさらに好ましい。粒径の小さいシリカを使用した場合は透明性と衝撃強度に優れ、粒径の大きいシリカを使用した場合は耐ブロッキング性に優れるため、目的によってシリカの粒径を選択することが好ましい。
無機添加剤を添加する場合、その添加量は、通常、生分解性樹脂組成物全体の重量に対して、15重量%以下であり、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.5〜6重量%である。添加量が多いと衝撃強度と引張伸びが低下するため、耐ブロッキング性、離型性が担保される最低限の量を添加するとよい。
加水分解防止剤としては、カルボジイミドを挙げることができる。加水分解防止剤を添加する場合、その添加量は、通常、生分解性樹脂組成物全体の重量に対して0.1〜1重量%である。
本発明の生分解性樹脂組成物は、各成分を溶融混練することにより得てもよい。溶融混練には、慣用の方法、例えば、押出機(一軸又は二軸押出機等)により溶融混練する方法等が利用できる。溶融混練温度は、例えば、120〜220℃、好ましくは150〜200℃(例えば、180〜200℃)程度であってもよい。なお、溶融混練物は、慣用の方法により、ペレット化してもよい。
本発明の生分解性樹脂組成物による成形体は、当該生分解性樹脂組成物を公知の成形方法[例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレーション法等)、カレンダー法、熱成形法(特に、熱プレス法)、トランスファー成形法、ブロー成形法、キャスティング成形法等]で成形することにより得ることができる。特に、本発明の生分解性樹脂組成物は、衝撃強度、柔軟性、離型性の問題により、硬質生分解性樹脂(特にポリ乳酸系樹脂)では従来困難であったインフレーション法で好適に成形することができる。
なお、成形体は、必要により、加熱処理し、ポリ乳酸の結晶化を進行させて、さらに機械的特性を改善することができる。加熱温度は、ポリ乳酸の融点以下の温度、例えば、50〜140℃、好ましくは60〜120℃程度である。加熱時間は、例えば、0.5分〜5時間、好ましくは1分〜4時間程度である。
成形体の形状は、特に限定されず、フィルム又はシート状等の2次元形状であってもよく、立体形状等の3次元形状であってもよい。フィルム状である場合、用途に応じて厚みを設定すればよいが、例えば、10〜100μmである。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例において用いた各成分及び評価方法は以下の通りである。なお、「部」及び「%」の記載は特に記載のない限り、重量基準とした。
[各成分の内容]
PLA:ポリ乳酸(浙江海正生物材料社製;ポリ乳酸REVODE110)、融点 163℃、L体含有量 97.5%、D体含有量 2.5%、MFR(190℃、荷重2.16kg) 5g/10分、ガラス転移温度 59〜62℃
PBSA:ポリブチレンサクシネート−アジペート共重合体(昭和電工株式会社製)、ガラス転移温度 −45℃
アジピン酸エステル:大八化学工業株式会社製
エルカ酸アミド:日油株式会社製
シリカ: 東ソー・シリカ株式会社製、二次粒子粒径 6μm
タルク:日本タルク株式会社製
ステアリン酸アミド:日油株式会社製
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル:阪本薬品工業株式会社製
テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル:阪本薬品工業株式会社製
ステアリルアルコールグリシジルエーテル:四日市化成社製
[評価方法]
(アイゾット衝撃強度)
アイゾット衝撃試験は、ASTM D256に準拠して、幅10mm及び厚み3mmの試験片を用いて、室温中、ノッチありの条件で行った。
実施例1
PLA 70kg、PBSA 15kg、アジピン酸エステル 15kg及びエルカ酸アミド 3kgを混合し、2軸押出混練機(IKG社製:73mmスクリュー、以下同じ。)を用いて190℃で溶融混練を行い、ペレット化した。得られた樹脂のペレットを190℃で射出成形した結果、離型性は良好であった。得られた射出成形物の試験片を用いてASTM−D256に従い、アイゾット衝撃試験(ノッチあり)を行った。その結果、樹脂は破断しなかった(1000J/m以上)。また、180℃でインフレーションフィルム成形を行い、厚み30μmのフィルムを得た。このフィルムについて、ブロッキングは発生しなかった。
実施例2
PLA 70kg、PBSA 15kg、アジピン酸エステル 15kg、エルカ酸アミド 2kg、及び粒径6μmのシリカ 1kgを混合し、2軸押出混練機を用いて190℃で溶融混練を行い、ペレット化した。得られた樹脂のペレットを190℃で射出成形した結果、離型性は良好であった。得られた射出成形物の試験片を用いて、ASTM−D256に従い、アイゾット衝撃試験(ノッチあり)を行った。その結果、樹脂は破断しなかった(1000J/m以上)。また、180℃でインフレーションフィルム成形を行い、厚み30μmのフィルムを得た。このフィルムについて、ブロッキングは発生しなかった。
実施例3
エルカ酸アミド 2kgに代えて、ステアリン酸アミド 2kgを用いた以外は、実施例2と同様に実験を行った。
実施例4
シリカ 1kgに代えて、タルク 6kgを用いた以外は、実施例2と同様に実験を行った。
実施例5
アジピン酸エステル 15kgに代えて、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 15kgを用いた以外は、実施例2と同様に実験を行った。
実施例6
アジピン酸エステル 15kgに代えて、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル 15kgを用いた以外は、実施例2と同様に実験を行った。
実施例7
エルカ酸アミド 2kgに代えて、ステアリルアルコールグリシジルエーテル 2kgを用いた以外は、実施例2と同様に実験を行った。
比較例1
PLAのみを用いて、2軸押出混練機を用いて190℃で溶融混練を行い、ペレット化した。得られた樹脂のペレットを190℃で射出成形した結果、離型性が悪く、少々金型への張り付きが生じた。得られた射出成形物の試験片を用いてASTM−D256に従い、アイゾット衝撃試験(ノッチあり)を行った。その結果、衝撃強度が非常に低かった。
比較例2
PLA 70kg、PBSA 15kg及びアジピン酸エステル 15kgを混合し、2軸押出混練機を用いて190℃で溶融混練を行い、ペレット化した。得られた樹脂のペレットを190℃で射出成形した結果、離型性が悪く、張り付きが生じた。得られた射出成形物の試験片を用いてASTM−D256に従い、アイゾット衝撃試験(ノッチあり)を行った。その結果、樹脂は破断しなかった(1000J/m以上)。また、180℃でインフレーションフィルム形成を行ったが、不安定で幅が安定しなかった。このフィルムについて、ブロッキングが発生し、1時間後にはフィルムが開かなくなったため、それ以降の物性が測定できなかった。
比較例3
PLA 100kgにエルカ酸アミド 3kgを加えた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
比較例4
PLA 70kg、PBSA 30kgにエルカ酸アミド 3kgを加えた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
比較例5
PLA 70kg、PBSA 15kgに代えて、PLA 85kgを用いた以外は、実施例2と同様に実験を行った。
比較例6
エルカ酸アミド 2kgをエルカ酸アミド 0.1kgにする以外は、実施例2と同様に実験を行った。
比較例7
エルカ酸アミド 3kgに代えて、粒径6μmのシリカ 3kgを用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
比較例8
エルカ酸アミド 3kgに代えて、タルク 12kgを用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
以下、表1において、各実施例及び比較例における射出成形時の金型離型性、試験片の物性、インフレーションフィルムの成形性及びフィルムの物性を示す。なお、各成分におけるかっこ内の数値は用いた成分の量を示す値である。ダート衝撃強度は、各フィルムのPBSA製フィルムとの比を示す値である。
Figure 2015193750
表1の結果より、射出成形時の金型離型性、アイゾット衝撃強度、インフレーションフィルム成形性、耐ブロッキング性、及びフィルムの衝撃強度を両立できていることがわかる。

Claims (15)

  1. (A)硬質生分解性樹脂
    (B)軟質生分解性樹脂
    (C)可塑剤、並びに
    (D)脂肪酸アミド化合物、脂肪族モノエポキシ化合物及び脂肪族モノカルボン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種
    を含有し、該(D)の含有量が樹脂組成物全量に対して0.2重量%以上である樹脂組成物。
  2. 前記(A)硬質生分解性樹脂がポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂、ポリヒドロキシ酪酸系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記(A)硬質生分解性樹脂がポリ乳酸であり、前記(A)硬質生分解性樹脂の含有量が樹脂組成物全体重量に対して50重量%以上である、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. 前記(B)軟質生分解性樹脂がポリエチレンサクシネート共重合体、ポリブチレンサクシネート共重合体、ポリブチレンサクシネート−アジペート共重合体、ポリブチレンサクシネート−テレフタレート共重合体、ポリブチレンサクシネート−カーボネート共重合体、ポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトン−ブチレンサクシネート共重合体、ポリ乳酸−ポリカプロラクトン共重合体、ヒドロキシ酪酸−ヒドロキシヘキサン酸共重合体、ポリビニルアルコール、及びポリエチレンセバケートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 前記(B)軟質生分解性樹脂の含有量が樹脂組成物全体重量に対して5〜40重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 前記(C)可塑剤が炭素4つ以上のメチレン基を主骨格とする二官能性以上の化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 前記(D)の含有量が樹脂組成物全量に対して0.2〜10重量%である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  8. 前記(D)がステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
  9. 前記(D)が炭素数8〜30アルコールのグリシジルエーテルである、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
  10. さらに無機アンチブロッキング剤を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
  11. 前記無機アンチブロッキング剤がシリカもしくはタルクである請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
  12. 前記無機アンチブロッキング剤が、少なくとも二次粒子の粒径0.3μm以上のシリカを含む、請求項10〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて成形された厚み10〜100μmのフィルム。
  14. インフレーション法によって成形された、請求項13に記載のフィルム。
  15. 請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて成形された、射出成形品。
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