JP2015193536A - 酸化ガリウム粉末 - Google Patents
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IGZO焼結体は、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化インジウムなどの原料粉末を混合し、得られた混合粉末を加圧成形し、焼結して製造するのが一般的である。
したがって、本発明の酸化ガリウム粉末は、例えば酸化インジウム粉末などと混合して混合粉末(「プレミックス粉体」ともいう)を得る際に、プレミックス粉体における酸化ガリウム粉末の均一性及び最密混合性を高めることができ、より均質で高密度なIGZO焼結体などのスパッタリングターゲットを製造することができる。
本実施形態に係る酸化ガリウム粉末(以下、「本酸化ガリウム粉末」という)は、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径0.1μm〜1.0μmの範囲内にピーク、好ましくは最も高いピーク(最頻径)が存在し、且つ空隙容積径0.1μm〜1.0μmの空隙累積容積が0.35cm3/g〜0.60cm3/gであることを特徴とする酸化ガリウム粉末である。
よって、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径0.1μm〜1.0μmの範囲内にピーク、好ましくは最も高いピーク(最頻径)が存在し、且つ空隙容積径0.1μm〜1.0μmの空隙累積容積が0.35cm3/g〜0.60cm3/gであることは、一次粒子間によって形成される空隙(「一次粒子間空隙」とも称する)のピーク位置とその容量を示しており、一次粒子間空隙の位置とその容量が前記範囲にあれば、超音波分散前後のD50の差が殆ど無くなり、分散性をより優れたものとすることができる。
本酸化ガリウム粉はさらに、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径10μm〜350μmの空隙累積容積が0.10cm3/g〜0.30cm3/gであるのが好ましい。
本酸化ガリウム粉末の比表面積(SSA)は、7.0〜16.0m2/gであるのが好ましく、特に9.0m2/g以上或いは13.0m2/g以下、その中でも特に10.0m2/g以上であるのがより一層好ましい。SSAがこのような範囲であれば、一次粒子の空隙がより一層十分であり、物理的な衝撃により粒子がより一層破壊され易いため、より一層流動性を高めることができる。他方、16.0m2/gを超えると、破壊され易過ぎて超微粒子になって製造設備等に付着してしまう可能性がある。
本酸化ガリウム粉末の粒度分布、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布による(超音波分散後)D50は、0.5μm〜3.0μmであるのが好ましい。本酸化ガリウム粉末のD50の値が3.0μm以下であれば、粒径が大き過ぎることがないため、より一層均一且つ最密に充填することができる。他方、0.5μm以上であれば、微粉が多いために分散性が低下するのを避けることができる。
かかる観点から、本酸化ガリウム粉末のD50は、0.8μm以上であるのがより一層好ましく、中でも1.0μm以上、或いは、2.7μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準累積度数50%の粒子径の意味である。
次に、本酸化ガリウム粉末の製造方法の一例について説明する。但し、あくまで一例であって、本酸化ガリウム粉末の製造方法が以下に説明する製造方法に限定されるものではない。
中和にはアンモニア水以外にも、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、尿素などの他のアルカリを用いることもできる。
具体的には、ガリウム塩溶液とアルカリ溶液の液温の差が±5℃以下となるように制御するのが好ましい。ガリウム塩溶液とアルカリ溶液の液温の差が小さければ、混合中に温度変化することがなく、一定温度で中和することができる。
また、ガリウム塩溶液及びアルカリ溶液の液温(初期)は、中和段階で熟成が進行するのを防ぐために、50℃以下、特に10〜50℃、中でも15〜40℃となるように調整するのが好ましい。
この際、温度制御手段としては、中和に要する時間を十分長くとることで、一気に中和熱が発生するのを抑える方法を挙げることができる。また、ガリウム塩溶液及びアルカリ溶液においてガリウム濃度或いはアルカリ濃度を薄くすることによって、中和反応の進行速度を遅くして中和熱が高くならないように制御する方法を挙げることもできる。
かかる観点から、ガリウム塩溶液のガリウム濃度は50〜300g/Lが好ましく、また、アルカリ溶液、例えばアンモニア水におけるアンモニア濃度は1〜10wt%とするのが好ましい。
この際、熟成温度及び時間は、粒子の形状や形成度合に影響するため、70℃以上で1時間以上熟成することが好ましい。
このように水熱合成にて十分に粒子形成されたガリウム含水水酸化物を得ることが重要である。十分に粒子形成された粒子を焼成することで、含有している水分が蒸発し、その部分がポアとなってSSAを高めることができる。
水酸化ガリウム(中間体)を洗浄濾過乾燥する手段としては、例えば純水を用いてデカンテーションを繰り返すなどして、例えば硝酸根等を洗浄除去した後、濾過等によって固液分離し、乾燥させて乾燥体(ケーキ)を得るようにすればよい。
焼成前に乾燥体(ケーキ)を解砕する程度は、手で解す程度の軽い解砕では解砕が十分ではなく、焼成時に凝集が起こって目的とする粒度分布、タップ密度、嵩密度に調整することができないため、例えばハンマーミル、ピンミルなどの高速回転型の解砕機や、ボールミルやビーズミルなどのメデイアを使用する解砕機、振動篩、ヘンシェルミキサーなどの機械的手段で解砕することが重要である。
焼成温度(保持温度)は、600℃以上の適宜温度で行うのが好ましい。水酸化ガリウムから酸化ガリウムに変化する温度領域は500℃程度であるため、500℃以上であれば通常は十分であるが、実際の焼成工程では温度ムラを生じることもあるため、粉体全体を酸化ガリウムにするために、600℃以上とするのが好ましい。
また、保持温度での保持時間は、1時間〜6時間、特に1時間〜5時間とするのが好ましい。この際、焼成時間については、水酸化ガリウムから酸化ガリウムへ均一に転移させるために1時間以上とするのが好ましい。他方、長すぎても均一焼成の効果は変わらないので不経済であるため、長くとも6時間程度とするのが好ましい。
そして最後に、凝集粒子間空隙の累積容積を調整するために、例えば60メッシュの網目の振動篩によって造粒するのが好ましい。
本酸化ガリウム粉末は、ターゲット材料、例えばIGZOなどのように、酸化インジウム粉末などと混合して圧縮成形する用途に特に好適に用いることができる。例えばIGZO焼結体であれば、本酸化ガリウム粉末と、酸化インジウム粉末及び酸化亜鉛粉末とを混合して圧縮成型した後、焼結してIGZO焼結体を製造することができる。
対数微分空隙容積分布に関する全ての値(空隙容積径、空隙容積度数、対数微分空隙容積分布等)は、水銀圧入ポロシメータの測定値或いは該測定値から算出される値である。水銀圧入ポロシメータは、水銀の表面張力が大きいことを利用して、試料(測定対象)となる酸化ガリウム粉末中に圧力を加えて水銀を侵入させ、その時の圧力と圧入された水銀量から空隙容積径及び対数微分空隙容積分布を測定する装置である。
したがって、本発明が対象とする空隙は、オープンポア(外と連通している空隙)だけで、クローズドポア(独立した空隙)は対象に含まれない。
dr=−4σcosθ/p(σ:表面張力、θ:接触角、p:圧力)
この式において、水銀の表面張力は既知であり、接触角は装置毎で固有の値を示すため、圧入した水銀の圧力から空隙容積径を算出することができる。
なお、実際には、島津製作所社製オートポア9200(最小測定可能孔径34Å)で実測することができる。
水銀圧入ポロシメータで測定される「空隙容積最高度数径」とは、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布(チャート)において、最も空隙容積度数の高い空隙容積径、言い換えれば、最も度数の高いピークにおける最も空隙容積度数の高い空隙容積径である。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくYより小さい」の意を包含する。
対数微分空隙容積分布の測定は、水銀圧入ポロシメータ(島津製,オートポア9200:最小測定可能孔径34Å)を用いて行った。
測定の諸条件は、上記水銀圧入ポロシメータの通常の使用方法に従ったが、測定開始前の水銀圧入ポロシメータのステム部分(測定セルの毛細管部分)に封入された水銀量を100%とした時に測定後のステム部分の水銀量が20%〜90%の範囲となるように、測定に用いる酸化ガリウムの量を調整した。この範囲外となった場合は、再測定を行った。
ユアサアイオニクス(株)製のモノソーブ(商品名)を用いて、JIS R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2流動法の(3.5)一点法」に準拠して、BET比表面積(SSA)の測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。
酸化ガリウム粉末を少量ビーカーに取り、2%ヘキサメタリン酸ナトリウムを2、3滴添加して、粉末になじませてから、純水を50mL添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300(日機装製)を用いて、体積累積基準D50を測定した。
なお、超音波分散の有無によるD50の差を測定する際には、上記測定方法において、超音波分散の有の場合は、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて5分間分散処理し、他方、超音波分散無しの場合は、超音波分散せずに薬さじで撹拌して、3分間循環させてから測定を開始し、D50を測定し、両者の差を算出した。
嵩密度は、JIS K 5101に準拠して、蔵持科学器械製作所製カサ比重測定器を使用して測定した。その際、いずれの粉末も粉砕してから3時間以内に測定を開始した。
ホソカワミクロン社製パウダーテスターを用い、本体付属のマニュアルに従って測定した。すなわち、試料をパウダーテスター付属のロートより投入し、受け皿に十分な山を形成するまで試料の供給を行い、形成した山の角度を測定した。
35℃に調整したGa濃度90g/Lの硝酸ガリウム塩水溶液を、35℃に調整したアンモニア水に加えてpH8に調整した。調整後の混合液温度は40℃であった。
液温を40℃に保持しつつ5分間攪拌した後、撹拌を継続したまま90℃まで昇温した。昇温にかかった時間は40分間であった。更に、90℃を保持しつつ撹拌を継続したまま3時間熟成させた。
熟成途中、pHが低下するのでアンモニア水を追加し、pHを8に維持した。
熟成終了後、常温まで自然冷却し、純水によるデカンテーションを繰り返し、アンモニア、硝酸成分を洗浄した。
洗浄した後、濾過により固液分離を行い、更に105℃にて24時間乾燥させ、ガリウム含水水酸化物の乾燥体(塊状)を得た。
このようにして得られたガリウム含水水酸化物の乾燥体(塊状)を、ヘンシェルミキサーを用いて、回転数800rpmにて解砕処理を行い、150meshの篩で僅かに残留した凝集物を除去し、分散したガリウム含水水酸化物の乾燥体(粉状)を得た。
そして、得られたガリウム含水水酸化物の乾燥体(粉状)をセラミック製の焼成容器(焼成匣鉢)に入れ、大気雰囲気にて常温から1.5時間で1000℃迄昇温し(昇温速度10℃/min)、保持温度1000℃で3時間焼成を行い、60メッシュの網目の振動篩によって造粒して酸化ガリウム粉末を得た。
表1に示すように、焼成温度を変更した以外は、実施例1と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
3社から市販されている3種類の酸化ガリウム粉末(市販製品A、B、C)を用意して、実施例と同様に物性を測定した。
実施例1−4と比較例1−3とを対比すると、空隙容積径0.1μm〜1.0μmの範囲内にピークが存在し、且つ空隙容積径0.1μm〜1.0μmの空隙累積容積が0.35cm3/g〜0.60cm3/gであれば、超音波分散前後のD50に差が無く、分散性に優れていることが分かった。
焼成前に乾燥体(ケーキ)を解砕する程度は、手で解す程度の軽い解砕では解砕が十分ではなく、焼成時に凝集が起こって目的とする粒度分布、タップ密度、嵩密度に調整することができないため、例えばハンマーミル、ピンミルなどの高速回転型の解砕機や、ボールミルやビーズミルなどのメディアを使用する解砕機、振動篩、ヘンシェルミキサーなどの機械的手段で解砕することが重要である。
ユアサアイオニクス(株)製のモノソーブ(登録商標)を用いて、JIS
R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET 法による比表面積の測定方法)の「6.2流動法の(3.5)一点法」に準拠して、BET比表面積(SSA)の測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。
Claims (8)
- 水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径0.1μm〜1.0μmの範囲内にピークが存在し、且つ空隙容積径0.1μm〜1.0μmの空隙累積容積が0.35cm3/g〜0.60cm3/gであることを特徴とする酸化ガリウム粉末。
- 水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積径10μm〜350μmの空隙累積容積が0.10cm3/g〜0.30cm3/gであることを特徴とする請求項1に記載の酸化ガリウム粉末。
- 比表面積が7.0〜16.0m2/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ガリウム粉末。
- レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が0.5μm〜3.0μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の酸化ガリウム粉末。
- 請求項1〜4の何れかに記載の酸化ガリウム粉末を原料としてなるスパッタリングターゲット。
- 請求項1〜4の何れかに記載の酸化ガリウム粉末の製造方法であって、
ガリウム塩溶液を、アルカリに添加して中和することによって含水酸化ガリウムを沈澱生成させると共に、この際、中和時の液温が10〜50℃となるように制御する工程と、中和完了後、該含水酸化ガリウムの熟成を行う工程と、熟成後の含水酸化ガリウムを乾燥して乾燥体を得る工程と、該乾燥体を焼成する工程と、を有する酸化ガリウムの製造方法。 - 熟成を70〜90℃で1時間以上行うことを特徴とする請求項6に記載の酸化ガリウムの製造方法。
- 焼成する前に、上記乾燥体を機械的手段で解砕することを特徴とする請求項6又は7に記載の酸化ガリウムの製造方法。
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