JP2015193041A - ばね鋼の鋳片の冷却方法 - Google Patents

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剛史 魚田
敦彦 吉田
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敦彦 吉田
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【課題】ばね鋼に対応する三次冷却条件を適正化することによって、安定的に鋳片の組織を微細組織にして割れを防止することができるようにする。【解決手段】ばね鋼を鋳造する際において、鋳造した鋳片を三次冷却で冷却する際での定常部位における冷却水量を(1)及び(2)を満たすようにする。(1)鋳片幅方向の表面温度分布における最高温度と、最低温度との差である温度差をΔTとした際に、ΔT≰160℃とする。(2)鋳片表面温度を800℃から500℃まで冷却する際の冷却速度として、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃では冷却速度を35℃/min以上、699℃〜600℃では冷却速度を30℃/min以上、599℃〜500℃では冷却速度を25℃/min以上とする。【選択図】図3

Description

本発明は、例えば、連続鋳造装置によって鋳造したばね鋼の鋳片を三次冷却する方法であって、ばね鋼の鋳片の冷却方法に関する。
従来より、連続鋳造装置では、転炉や二次精錬装置等から出鋼された溶鋼を取鍋によってタンディッシュまで搬送し、搬送された取鍋内の溶鋼をタンディッシュへ注入後、このタンディッシュから鋳型へ溶鋼を供給することで、溶鋼(鋳片)を連続的に鋳造している。連続鋳造装置によって鋳造された鋳片は、下流側で所定の長さに切断され、その後、圧延等が行われる前に三次冷却帯によって冷却される。
三次冷却帯において、鋳片を冷却する技術として特許文献1及び2に示すものがある。
特許文献1は、低炭素鋼から焼入れ性の高い鋼種までの幅広い鋼種からなる連続鋳造鋳片の冷却時における表面割れと曲がり防止を図りながら、熱間圧延時に表面割れを発生し難い鋳片を製造する方法であって、連続鋳造されたブルームを所定の長さに切断した後、ブルームクーラーで冷却する際に冷却用ノズル列を鋳造方向へ3列以上配置し、冷却水の全周合計流量200〜1000l/minで冷却している。
特許文献2は、連続鋳造ブルームの冷却時に発生する表面疵の発生を防止する冷却であって、上面の水量密度を5×10−4〜4×10−3m/m・S、側面の水量密度を上面の水量密度の1.5倍以上、下面の水量密度を上面の水量密度の2.0倍以上にしてブルーム表面温度がAr3変態点に近づくほど冷却速度を増加させて、ベイナイト変態開始点、B1点より左側の冷却速度でブルームを冷却している。
特許文献3は、分塊圧延時に発生するブルーム鋳片表層割れを効果的に防止することを目的としている。この特許文献3では、ブルーム鋳片の表面温度が1000Kの場合の熱伝達率(W/m・K)をHw、冷却帯(熱伝達率Hw)をブルーム鋳片が通過する時間(min)をTとした場合に、ブルーム鋳片の表面温度がAr変態点を超える温度から、Cs=Hw×Tで定義される冷却強度Csが500〜2500(W・min/m・K)の範囲となる条件で冷却している。
特許文献4は、鋼を連続鋳造して所定の長さに切断した後のビレット鋳片を冷却するに際して、このビレット鋳片に曲がりが発生しないことを目的としている。特許文献4では、鋳片温度が800〜500℃の範囲での鋳片の相対する面における平均冷却速度を夫々C1、C2(℃/分:但しC1≧C2)としたとき、(C1−C2)/C1<0.15 を満たすように冷却している。
特許文献5は、鋳型への溶鋼注入を一旦停止したことによって形成される繋ぎ目部分が過冷却とならないようにすることを目的としている。特許文献5では、二次冷却水量を鋳片引抜速度から算出される二次冷却水量(Q)に引抜停止時間が長くなるほど相対的に小さくなるように鋳片の引抜停止時間に応じて設定した補正係数α(α<1.0)を乗じた二次冷却水量(α×Q)に調整している。
特許文献6は、鋳込み速度が低くなり、鋳型内もしくは最低冷却水量の制約を持つ冷却ゾーンに存在した鋳片が過大に抜熱されても、その下部の各冷却ゾーンにおいて最適な冷却水量を設定することを目的としている。特許文献6では、鋳込み速度が予め定めた所定値以下になった場合、その時に鋳型内に存在していた鋳片が2次冷却帯を通過する際に、鋳込み速度が前記所定値以下となっていた時間とその時の鋳込み速度を考慮して散布する冷却水量に対する補正係数を算出し、その補正係数によって修正した冷却水量を該当鋳片部位が通過する際に散布している。
特開2013−27900号公報 特開2003−181608号公報 特開2008−261036号公報 特開2004−344893号公報 特開2013−123713号公報 特開平4−339555号公報
特許文献1及び2は、いずれも連続鋳造装置で鋳造した鋳片を冷却する技術であるものの、鋳片の組成(鋼種)と冷却条件との関係は示されておらず、これらの技術を用いてもばね鋼から構成される鋳片において、表面割れを防止することができないのが実情である。
また、微細組織を形成して割れを防ぐ観点に立てば、特許文献3〜6のいずれにおいても、詳細な冷却条件、例えば、表面温度分布における最高温度と最低温度との差、表面温度分布に対応した冷却方法、鋳片の非定常部位についての冷却などについて全く示されていない。したがって、これらの技術を用いてもばね鋼から構成される鋳片において、表面割れ等を防止することができないのが実情である。
そこで、本発明では、ばね鋼に対応する三次冷却条件を適正化することによって、安定的に鋳片の組織を微細組織にして割れを防止することができるばね鋼の鋳片の冷却方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明のばね鋼の鋳片の冷却方法は、成分として、C=0.52%〜0.60%(質量%、以下同じ)、Si=0.15%〜0.35%、Mn=0.65%〜0.95%、P≦0.030%、S≦0.030%、Cr=0.65%〜0.95%、残部Feおよび不可避的不純物からなるばね鋼の鋳片を、下記の条件を満たすように三次冷却することを特徴とする。
(1)鋳片幅方向の表面温度分布における最高温度と、最低温度との差である温度差をΔTとした際に、ΔT≦160℃とする。
(2)鋳片表面温度を800℃から500℃まで冷却する際の冷却速度として、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃では冷却速度を35℃/min以上、699℃〜600℃では冷却速度を30℃/min以上、599℃〜500℃では冷却速度を25℃/min以上とする。
また、ばね鋼の鋳片の冷却方法は、成分として、C=0.52%〜0.60%(質量%、以下同じ)、Si=0.15%〜0.35%、Mn=0.65%〜0.95%、P≦0.030%、S≦0.030%、Cr=0.65%〜0.95%、残部Feおよび不可避的不純物からなるばね鋼の鋳片を、三次冷却するに際し、
下記(1)及び(2)の条件で、鋳片の定常部位における三次冷却水量Qを求め、
(1)鋳片幅方向の表面温度分布における最高温度と、最低温度との差である温度差をΔTとした際に、ΔT≦160℃とする。
(2)鋳片表面温度を800℃から500℃まで冷却する際の冷却速度として、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃では冷却速度を35℃/min以上、699℃〜600℃では冷却速度を30℃/min以上、599℃〜500℃では冷却速度を25℃/min以上とする。
下記(3)〜(6)によって、鋳片の非定常部位における三次冷却水量Q’を求め、
(3)鋳片の引抜停止時間に基づいた停止補正係数aを設定する。
(4)鋳片の搬送速度に基づいた搬送補正係数bを設定する。
(5)連続鋳造装置における平均鋳造速度に基づいた鋳造速度補正係数cを設定する。
(6)Q’=Q×a×b×c
前記定常部位に対しては、三次冷却水量Qで三次冷却を行い、前記非定常部位に対しては、三次冷却水量Q’で三次冷却を行うことを特徴とする。
本発明によれば、ばね鋼の鋳片に対応する三次冷却条件を適正化することによって、安
定的に鋳片の組織を微細組織にして割れを防止することができる。
連続鋳造装置、切断装置、三次冷却装置の概念図である。 鋳片の周りに冷却ノズルを配置した配置図である。 鋳片の三次冷却の手順を示すフローチャートである。 上面における温度差とノズルの水量密度との関係図である。 狭面における温度差とノズルの水量密度との関係図である。 下面における温度差とノズルの水量密度との関係図である。 上部冷却ノズルの特性を示す図である。 下部冷却ノズルの特性を示す図である。 狭面冷却ノズルの特性を示す図である。 第2実施形態における鋳片の三次冷却の手順を示すフローチャートである。
本発明の実施形態について図を基に説明する。
本発明のばね鋼の鋳片の冷却方法は、連続鋳造装置によって鋳造した鋳片、即ち、ブルームを切断後に切断した鋳片の三次冷却を行う方法である。なお、この実施形態では、ブルームのことを「鋳片」ということがある。
図1は、連続鋳造装置、この連続鋳造装置の下流側に配備され且つ連続鋳造装置で鋳造された鋳片を所定の長さに切断する切断装置、この切断装置で切断された鋳片を冷却する三次冷却装置を示したものである。
まず、連続鋳造装置、切断装置、三次冷却装置について説明する。
図1に示すように、連続鋳造装置1は、ブルームを連続的に鋳造するものであって、精錬処理された溶鋼2が装入された取鍋3と、取鍋3内の溶鋼が注入されて当該溶鋼2を一時的に貯留するタンディッシュ4と、このタンディッシュ4からの溶鋼2が供給される鋳型5と、この鋳型5により成型された鋳片Sを引き出すと共に、鋳片Sをサポートする複数のサポートロール6とを有している。
タンディッシュ4は、有底箱形となっており、タンディッシュ4の底部に溶鋼を注入する注入口が設けられ、この注入口に浸漬ノズルが接続されている。浸漬ノズルは、スライドバルブにより開閉可能となっており、スライドバルブの開閉によってタンディッシュ4から鋳型5への溶鋼の注入又は停止を行うことができる。
連続鋳造装置1では、転炉や二次精錬装置等から出鋼された溶鋼2を取鍋3によってタンディッシュ4まで搬送し、搬送された取鍋3内の溶鋼2をタンディッシュ4へ注入後、スライドバルブを開くことによって、鋳型5内の溶鋼2を連続的に鋳造することができる。溶鋼2(鋳片S)は、鋳型5によって一次冷却が行われると共に、鋳型5の下流側に配置された冷却ノズル(図示省略)によって二次冷却が行われる。
また、連続鋳造装置1によって鋳造された鋳片Sは、切断装置10に送られ、切断装置10によって所定の長さに切断される。この切断装置10は、連続鋳造装置1の下流側(連続鋳造装置10の最下流に設置されたピンチロール9の下流側)に設置されたもので、例えば、ガスによって鋳片Sの切断を行うガスカッタで構成されている。
三次冷却装置(三次冷却帯)11は、鋳造されたブルームの表面を冷却する設備(ブルームクーラー)であって、切断装置10の下流側に設置され、当該切断装置10で切断された後の鋳片Sの冷却(鋳片Sの三次冷却)を行う。即ち、三次冷却帯11は、所定長さに切断された鋳片を加熱炉に装入する前に冷却を行うものである。なお、三次冷却帯11は切断された鋳片Sの一本毎に冷却を行う。
図1及び図2に示すように、三次冷却帯11は、鋳片Sを搬送する搬送装置12と、鋳片Sの搬送方向に沿って所定の間隔で配置された冷却ノズル13とを備えている。搬送装置12は、載置された鋳片Sをローラによって搬送するローラ搬送装置で構成されている。冷却ノズル13は、鋳片Sの上面(広面側の上面)を冷却する上部冷却ノズル13aと、鋳片Sの下面(広面側の下面)を冷却する下部冷却ノズル13bと、狭面を冷却する一対の狭面冷却ノズル13cを備えている。したがって、上部冷却ノズル13a、下部冷却
ノズル13b、狭面冷却ノズル13cによって矩形状の鋳片Sに対して四面を冷却することができる。
さて、三次冷却帯11において、適正に冷却しないと、鋳片Sの表面等に割れが発生することがある。特に、同じ冷却条件であっても、鋼種が異なれば、過冷却等によって鋳片Sの表面に割れが生じることがあり、鋼種と冷却条件とを適正に制御する必要がある。
本発明では、鋳片Sを三次冷却するにあたって、鋼種に適合した三次冷却を行うことより、鋳片(ブルーム)の鋳片表面において、安定的に鋳片の組織を微細組織にして割れが進展することを防止している。
以下、鋳片Sの三次冷却について詳しく説明する。
連続鋳造装置1によって鋳造する鋳片S、即ち、三次冷却を行う鋳片Sは、ばね鋼であって、成分として、C=0.52%〜0.60%(質量%、以下同じ)、Si=0.15%〜0.35%、Mn=0.65%〜0.95%、P≦0.030%、S≦0.030%、Cr=0.65%〜0.95%、残部Feおよび不可避的不純物を含有している。
このようなばね鋼は、添加する合金が多く、特に成分としてCrを0.65%以上含有し、かつCが0.52%以上と高いため焼入れ性が高い。そのため、鋳片表面の割れ感受性も高く、当該ばね鋼の鋳片Sを三次冷却で冷却する場合には、冷却速度や鋳片の表面温度を細かく管理する必要がある。詳しくは、ばね鋼の鋳片Sを三次冷却で冷却するに際して、条件(1)及び条件(2)を満たすように冷却する必要がある。
詳しくは、図3に示すように、条件(1)では、鋳片幅方向の表面温度分布における最高温度と、最低温度との差である温度差をΔTとした際に、当該温度差であるΔT≦160℃とする。鋳片Sの上面、下面及び狭面の各面において、幅方向に沿う直線L1上(鋳造方向と直交する直線L1上)の温度分布を見たとき、当該直線上における最高温度と最低温度との差(ΔT)は160℃以下とする。言い換えれば、上面における表面温度分布の最高温度と最低温度との差は160℃以下であって、下面における表面温度分布の最高温度と最低温度との差も160℃以下であって、狭面における表面温度分布の最高温度と最低温度との差も160℃以下である。
また、条件(1)で示した最高温度と最低温度との差は、後述する条件(2)で示した各管理区間で満たすようにしている。例えば、後述する第1管理区間、第2管理区間、第3管理区間のそれぞれで、ΔT≦160℃を満たすようにしている。
図4は、ばね鋼で構成された鋳片Sにおいて、上面における温度差ΔTとノズルの水量密度との関係を示し、図5は、狭面における温度差ΔTとノズルの水量密度との関係を示し、図6は、下面における温度差ΔTとノズルの水量密度との関係を示している。
図4〜6は、実機であるブルームクーラー11の三次冷却の水量密度を増減させて、冷却を行った後、鋳片Sの表面を目視で確認して、応力割れの有無をまとめたものである。
図4〜6に示すように、上面、狭面、下面のいずれにおいても最高温度と最低温度との温度差ΔTが160℃を超えると、熱応力割れが発生し、温度差ΔTが160℃以下である場合は、応力割れが発生しなかった。つまり、ばね鋼の鋳片Sでは、三次冷却の際に、温度差ΔT1を160℃以下とすることによって、応力割れを防止することができる。
さて、本発明では、三次冷却後の鋳片S(ばね鋼の鋳片S)に対して、鋳片Sの表層から5mm以上の範囲に亘ってベイナイト(Zw)を単層として形成して、組織の微細化を図っている。つまり、三次冷却後の鋳片Sにベイナイトを形成して、その後に、加熱炉に鋳片を装入することにより、鋳片の表面組織を微細化し、これにより、割れが進展することを防止している。
具体的には、鋳片Sの表層から5mm以上の範囲に亘ってベイナイト(Zw)を形成させるために、条件(2)に示すように、三次冷却の冷却速度を設定している。条件(2)は、鋳片表面温度を800℃から500℃まで冷却する際の冷却速度の条件であって、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃では冷却速度を35℃/min以上、699℃〜600℃では冷却速度を30℃/min以上、599℃〜500℃では冷却速度を25℃/min以上にする。つまり、上部冷却ノズル13a、下部冷却ノズル13b及び狭面冷却ノズル13cにおいて鋳片Sを冷却した場合の冷却速度が、条件(2)を満たすよう
に、上部冷却ノズル13a、下部冷却ノズル13b及び狭面冷却ノズル13cの水量(水量密度)を設定して冷却する。
この条件(2)に示すように、鋳片表面温度を800〜500℃までに冷却するにあたって、冷却速度を管理区分(管理区間)は、800℃〜700℃(第1管理区間)、699〜600℃(第2管理区間)、599〜500℃(第3管理区間)の3区間としており、各管理区間の温度幅(最高温度から最低温度までの温度範囲)は100℃以下としている。このように、各管理区間における温度幅を100℃以下にしているため、条件(1)で示した温度差の条件を満たしやすく、逆に、管理区間の温度幅を100℃よりも大きくしてしまうと、条件(1)で示した温度差の条件を満たすことが難しいばかりか、条件(1)を満たそうとした場合、各管理区間での冷却速度が極端に遅くしなければならず、ベイナイトを形成することが難しくなる。
なお、三次冷却の水量密度と冷却速度との関係は、機外実験等により求めておくことが望ましい。例えば、機外実験において、試験片に熱電対を埋め込んでおき、種々の冷却密度で試験片を冷却して、水量密度と冷却速度との関係を求める。
そして、実際に操業を行う際は、三次冷却の条件として水量とノズル特性とから水量密度を求めておくと共に、機外実験で得られた水量密度と冷却速度との関係から、水量密度に対する冷却速度を求めて、操業を実施する。ここで、条件(2)では、冷却速度の上限値を規定していないが、実機の能力に基づいて設定することが望ましい。即ち、当業者常法の操業範囲から逸脱しない範囲で実機に適合した能力で冷却速度を求める。例えば、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃では冷却速度を35℃/min以上〜200℃/min以下、699℃〜600℃では冷却速度を30℃/min以上〜200℃/min以下、599℃〜500℃では冷却速度を25℃/min以上〜200℃/minにする。当然の如く、冷却速度が速すぎると、マルテンサイトの組織が鋳片にできるため、マルテンサイトの組織が発生しないように、冷却速度を設定する。
つまり、実操業では、条件(1)及び条件(2)を満たすように、定常部位における水量密度(冷却水量Q)を設定する。例えば、鋳片の冷却面(上面、下面、狭面)のそれぞれにおいて、条件(1)及び条件(2)を満たすように、上部冷却ノズル13a、下部冷却ノズル13b及び狭面冷却ノズル13cの冷却水量Qを設定する。
そして、各ノズル13a、13b、13cのそれぞれの冷却水量Qを設定した後は、三次冷却帯11の入側での鋳片の有無を検知し、鋳片Sが有りの場合、即ち、鋳片Sが存在する場合に、設定した冷却水量で鋳片Sを冷却する。鋳片Sの検知は、予め三次冷却帯11の入側にセンサ等を設置し、このセンサにより三次冷却帯11に鋳片Sが入ったか否か(鋳片Sの有無)を行う。なお、作業者が目視にて、鋳片Sの有無を確認してもよい。
次に、上述した成分を有するばね鋼の鋳片Sを鋳造する際において、鋳片Sを三次冷却で冷却する際での定常部位における冷却水量を条件(1)及び条件(2)で設定して、三次冷却帯入口で鋳片Sの有無を検知し、鋳片Sが存在する場合に設定した冷却水量で鋳片を冷却した実施例と、実施例とは異なる方法で冷却を行った比較例について説明する。
この実施例及び比較例では、連続鋳造装置1は「神戸製鋼所製、垂直曲げ型連鋳機」を用いた。鋳型サイズは430×300mmとした。鋳型高さは1200mmとした。鋳造速度は、0.70〜1.05m/min、連続鋳造装置1における二次冷却の比水量は0.20〜0.55L/kg・sとした。三次冷却帯11における三次冷却方法では、ミスト状の冷却水(水+空気)を鋳片Sの上面、下面、狭面の4面に噴射した。三次冷却帯11の冷却ノズルの本数は、1面毎に24本とした。三次冷却帯11の長さは7.23mとした。
また、図7に示す特性を示す上部冷却ノズル13aを使用し、図8に示す特性を示す下部冷却ノズル13bを使用し、図9に示す特性を示す狭面冷却ノズル13cを使用した。また、冷却ノズルの気水体積比31とし、ノズル角は、鋳片Sの上下面に対しては95°、狭面に対しては111°とした。
連続鋳造装置1にて得られた鋳片(鋼塊)を三次冷却後に、加熱炉に装入して1200〜1300℃まで加熱後、分塊圧延し、ビレット(断面155mm×155mm)とした
。分塊圧延等は当業者常法通りに行った。
鋳片の表面疵は、ビレット(155mm角)に圧延した段階において、表面を観察し、割れの有無を調査した。即ち、JISZ2323に基づいて、1ビレット(サイズ:155mm×155mm×10m)について、磁粉探傷検査を行った。磁粉探傷試験では、1視野(2mm×2mm)当たりの輝度のピークを測定し、ピークが検出されたものを疵とした。
冷却速度は、予め機外実験において、鋳片の表層から深さ5mmの位置に熱電対を埋め込み、所定の水量密度で所定の時間鋳片を冷却し、水量密度毎の冷却速度を測定した。この機外実験では、実機と同様の冷却ノズルを用いると共に、冷却ノズルの配置も実機と同じとした。また、機外実験では、鋳片のサイズ(サンプルサイズ)や鋳片の初期温度(サンプル初期温度)も実機と同様とし、機外実験と実機での測定条件に差が出ないように行った。
表1は、鋳造速度(目標の鋳造速度)を1.05m/min、引抜停止時間を0分、平均鋳造速度を1.05m/minとしたうえで、鋳片Sの上面に関して、三次冷却を行った結果をまとめたものである。
実施例(追番)1〜5において、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃の第1管理区間(表面温度:700℃〜800℃)では冷却速度を35℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。また、鋳片表面の冷却前温度が699℃〜600℃の第2管理区間(表面温度:600℃〜699℃)では冷却速度を30℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。さらに、鋳片表面の冷却前温度が599℃〜500℃の第3管理区間
(表面温度:500℃〜599℃)では冷却速度を25℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。それゆえ、鋳片の上面において、鋳片の熱応力割れもなく、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することができた(ベイナイト組織有)。
一方、比較例(追番)6、7、12、19では、第1管理区間での冷却速度が35℃/min未満であっため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。
比較例8、9、13、18では、第2管理区間での冷却速度が30℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例10、11、14〜16では、第3管理区間での冷却速度が25℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例17、20〜22では、第3管理区間における温度差ΔTが160℃を超えているため、表面割れ(熱応力割れ)が発生した。
表2は、鋳造速度(目標の鋳造速度)を1.05m/min、引抜停止時間を0分、平均鋳造速度を1.05m/minとしたうえで、鋳片Sの狭面に関して、三次冷却を行った結果をまとめたものである。
実施例(追番)1〜4において、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃の第1管理区間(表面温度:700℃〜800℃)では冷却速度を35℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。また、鋳片表面の冷却前温度が699℃〜600℃の第2管理区間(表面温度:600℃〜699℃)では冷却速度を30℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。さらに、鋳片表面の冷却前温度が599℃〜500℃の第3管理区間
(表面温度:500℃〜599℃)では冷却速度を25℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。それゆえ、鋳片の上面において、鋳片の熱応力割れもなく、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することができた(ベイナイト組織有)。
一方、比較例(追番)5、6、14では、第1管理区間での冷却速度が35℃/min未満であっため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。
比較例7、8、15では、第2管理区間での冷却速度が30℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例9〜12では、第3管理区間での冷却速度が25℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例16では、第2管理区間での冷却速度が30℃/min未満であり、第3管理区間での冷却速度が25℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例13、17〜19では、第3管理区間における温度差ΔTが160℃を超えているため、表面割れ(熱応力割れ)が発生した。
表3は、鋳造速度(目標の鋳造速度)を1.05m/min、引抜停止時間を0分、平均鋳造速度を1.05m/minとしたうえで、鋳片Sの下面に関して、三次冷却を行った結果をまとめたものである。
実施例1〜4、17において、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃の第1管理区間(表面温度:700℃〜800℃)では冷却速度を35℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。また、鋳片表面の冷却前温度が699℃〜600℃の第2管理区間(表面温度:600℃〜699℃)では冷却速度を30℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。さらに、鋳片表面の冷却前温度が599℃〜500℃の第3管理区間(
表面温度:500℃〜599℃)では冷却速度を25℃/min以上とし、ΔT≦160℃としている。それゆえ、鋳片の下面において、鋳片の熱応力割れもなく、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することができた(ベイナイト組織有)。
一方、比較例(追番)5、6、11では、第1管理区間での冷却速度が35℃/min未満であっため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。
比較例7、8、12では、第2管理区間での冷却速度が30℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例9、10では、第3管理区間での冷却速度が25℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例18では、第2管理区間での冷却速度が30℃/min未満であり、第3管理区間での冷却速度が25℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例19では、第1管理区間での冷却速度が35℃/min未満であり、第2管理区間での冷却速度が30℃/min未満であり、第3管理区間での冷却速度が25℃/min未満であったため、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。比較例13〜16では、第3管理区間における温度差ΔTが160℃を超えているため、表面割れ(熱応力割れ)が発生した。
表4〜表6は、三次冷却の管理区間の温度幅を100℃以上とし、各面を冷却した場合の比較例をまとめたものである、この比較例では、鋳造速度(目標の鋳造速度)は1.05m/min、引抜停止時間は0分、平均鋳造速度は1.05m/minとした。
表4の比較例1〜9では、第4管理区間(650〜800℃)及び第5管理区間(500℃〜649℃)における温度差ΔTは160℃以下であったものの、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。
また、表4の比較例10〜16、19、20では、第4管理区間における温度差ΔTは160℃以下であったものの、熱応力割れが発生した。さらに、表4の比較例17、18でも、応力割れが発生した。
表5の比較例1〜7、12、15、16、18では、第4管理区間及び第5管理区間における温度差ΔTは160℃以下であったものの、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。また、表5の比較例8〜11、13、14、17、19〜21では、第4管理区間における温度差ΔTは160℃以下であったものの、熱応力割れが発生した。
表6の比較例1〜7、16〜21では、第4管理区間及び第5管理区間における温度差ΔTは160℃以下であったものの、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することはできなかった(ベイナイト組織無)。また、表6の比較例8〜15では、第4管理区間における温度差ΔTは160℃以下であったものの、熱応力割れが発生した。
以上、本発明によれば、ばね鋼を鋳造する際において、鋳片Sを三次冷却で冷却する際での定常部位における冷却水量を条件(1)及び条件(2)の条件で設定して、三次冷却帯入口で鋳片の有無を検知し、鋳片Sが存在する場合に設定した冷却水量で鋳片を冷却することによって、鋳片Sを加熱炉に装入する前に、鋳片Sの表層をベイナイト組織にすることができる。それゆえ、鋳片Sに対して、磁粉探傷試験を行ったとしても、その表面に疵が現れることがなく、疵の無い鋳片を製造することができる。即ち、連続鋳造時における鋳片表面において、安定的に鋳片の組織を微細組織にして割れが進展することを防止する。また、鋳片の熱応力割れも防止することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態で示した鋳片の定常部位に加えて、鋳片の非定常部位についても、三次冷却を行う方法である。
具体的には、ばね鋼の鋳片を三次冷却するに際し、条件(1)及び条件(2)で、鋳片の定常部位における三次冷却水量Qを求める。つまり、条件(1)及び条件(2)を満たすように、定常部位における水量密度(三次冷却水量Q)を設定する。例えば、鋳片の冷却面(上面、下面、狭面)のそれぞれにおいて、条件(1)及び条件(2)を満たすように、上部冷却ノズル13a、下部冷却ノズル13b及び狭面冷却ノズル13cの三次冷却水量Qを設定する。なお、ばね鋼の成分及び三次冷却水量Qの求め方は、第1実施形態と同じである。
次のに示す(3)〜(6)の工程にしたがって、鋳片の非定常部位における三次冷却水量Q’を求める。なお、(3)〜(5)の工程の順番は、入れ替わってもよい。なお、三次冷却水量Q’の算出は、第1実施形態と同様に上面、下面及び狭面の各面において行う。
(3)鋳片の引抜停止時間に基づいた停止補正係数aを設定する。
(4)鋳片の搬送速度に基づいた搬送補正係数bを設定する。
(5)連続鋳造装置における平均鋳造速度に基づいた鋳造速度補正係数cを設定する。
(6)Q’=Q×a×b×c
次に、(3)〜(6)の工程について詳しく説明する。
(3)の工程で示した引抜停止とは、連続鋳造装置1において「鋳片Sを引き抜きながら鋳造を行うことを停止する」ことであって、引抜停止時間とは、例えば、前チャージと後チャージとの切り替え時に鋳型5内にシーケンスブロックを装入するために引き抜きを停止した時間のことである。
鋳片Sの引き抜きを停止している間は、連続鋳造装置1に留まっている鋳片Sは余分に冷却されることになる。そのため、引抜停止時間の長さに基づいて停止補正係数aを設定したうえで、三次冷却水量Qに停止補正係数aを乗算することによって非定常部位の三次冷却水量Q’を求めている。表7は、引抜停止時間と停止補正係数aとの関係を示す停止補正テーブル(一覧表)を示している。この停止補正テーブルは実験や操業で求めた数値である。
停止補正係数aは、引き抜き停止時間の長さに応じて所定の値(百分率)で表される。即ち、停止補正係数aは、引き抜き停止時間が長かったとしても、鋳片Sの表層から5mm以上の範囲に亘ってベイナイト(Zw)を形成させ、さらに、過冷却割れが発生しないように、三次冷却水量Q’の設定を行うためのパラメータである。停止補正係数aが「100%」とは、引き抜き停止があったとしても水量を減らす必要が無いことを示している。
(4)の工程で示した搬送速度は、鋳片Sの切断完了後に移動する鋳片Sの速度である。搬送速度は、例えば、鋳片Sがガスカッタ10の出側から三次冷却帯11の入側までの間を移動した時の鋳片Sの平均速度である。なお、三次冷却帯11内を移動する鋳片Sの移動速度を一定に設定する場合は、ガスカッタ10の出側から三次冷却11の出側までの間の鋳片Sの移動速度を、搬送速度としてもよい。
鋳片Sの搬送速度が遅い場合は、鋳片Sが切断されてから三次冷却帯11に入るまでに冷却されることになる。そのため、搬送速度に基づいて搬送補正係数bを設定したうえで、三次冷却水量Qに搬送補正係数bを乗算することによって非定常部位の三次冷却水量Q’を求めている。表8は、搬送速度と搬送補正係数bとの関係を示す搬送補正テーブル(一覧表)を示している。この搬送補正テーブルは実験や操業で求めた数値である。
搬送補正係数bは、搬送速度に応じて所定の値(百分率)で表される。即ち、搬送補正係数bは、搬送速度が遅かったとしても、鋳片Sの表層から5mm以上の範囲に亘ってベイナイト(Zw)を形成させ、さらに、過冷却割れが発生しないように、三次冷却水量Q’の設定を行うためのパラメータである。搬送補正係数bが「100%」とは、水量を減らす必要が無いことを示している。
(5)の工程で示した平均鋳造速度とは、所定の鋳片Sが連続鋳造装置1によって鋳造されて切断されるまでの間の鋳片の速度ある。例えば、平均鋳造速度とは、鋳型5内のメニスカスに位置する鋳片(溶鋼)Sがガスカッタ10に入るまでの経過時間を、連続鋳造装置1の機体の長さ(鋳型5の上端からガスカッタ10までの距離)で割ることにより求め
た値である。即ち、鋳型5内の上部位置する溶鋼が次第に冷却されながら移動して鋳片Sとなり、ガスカッタ10に至るまでの経過時間を機体長さで割った値を平均鋳造速度としている。
鋳片Sの平均鋳造速度が遅い場合は、鋳片Sは連続鋳造装置1内で余計に冷却されることになる。そのため、平均鋳造速度に基づいて鋳造速度補正係数cを設定したうえで、三次冷却水量Qに、鋳造速度補正係数cを乗算することによって非定常部位の三次冷却水量Q’を求めている。表9は、平均鋳造速度と、鋳造速度補正係数cとの関係を示す鋳造補正テーブル(一覧表)を示している。この鋳造補正テーブル実験や操業で求めた数値である。
鋳造速度補正係数cは、平均鋳造速度に応じて所定の値(百分率)で表される。即ち、鋳造速度補正係数cは、平均鋳造速度が遅かったとしても、鋳片Sの表層から5mm以上の範囲に亘ってベイナイト(Zw)を形成させ、さらに、過冷却割れが発生しないように、三次冷却水量Q’の設定を行うためのパラメータである。鋳造速度補正係数cが「100%」とは、水量を減らす必要が無いことを示している。
以上のように、停止補正係数a、搬送補正係数b、鋳造速度補正係数cの設定を行った後は、(6)の工程において、「Q’=Q×a×b×c」によって、非定常部位の三次冷却水量Q’を求める。(6)の工程では、定常部位に対応する三次冷却水量Qに、補正係数(停止補正係数a、搬送補正係数b、鋳造速度補正係数c)を乗算することによって、非定常部位の三次冷却水量Q’を求めている。
このように、非定常部位の三次冷却水量Q’を求めた後は、非定常部位に対して三次冷却水量Q’で三次冷却を行う。
表10〜45は、本発明のばね鋼の鋳片の冷却方法で三次冷却を行った結果と、本発明の方法とは異なる方法で三次冷却を行った結果とをまとめたものである。なお、連続鋳造装置や冷却ノズル等の実施条件は、第1実施形態で示した条件(実施例及び比較例で示した条件)と同じである。表10〜22は、鋳片の上面における三次冷却の結果である。表23〜33は、鋳片の狭面における三次冷却の結果を示している。表34〜45は、鋳片の下面における三次冷却の結果を示している。
図10に示すように、S1〜S3では、定常部位における鋳片の流量(三次冷却水量Q)を求める。S4では、各面毎に停止補正係数aの設定を行い、S5では、各面毎に搬送補正係数bの設定を行い、S6では、各面毎に鋳造速度補正係数cの設定を行う。そして、S7では、非定常部位における鋳片の流量(三次冷却水量Q’)を求める。S8では、三次冷却帯入口で鋳片の有無を検知し、鋳片Sが存在する場合において、定常部位では三次冷却水量Qで三次冷却を行い、非定常部位では三次冷却水量Q’で三次冷却を行う。
なお、鋳片の引き抜き停止時間は、前チャージと後チャージとの間での時間とした。搬送速度は、鋳片Sがガスカッタ10から三次冷却帯11に至るまでの実績値を用いた。平均鋳造速度は、鋳片Sが鋳造中の実績値を用いた。搬送速度及び平均鋳造速度は、所定時間(例えば1秒)毎に行った。詳しくは、ガスカッタ10の下流側に設置された搬送ロール8の回転速度により搬送速度を計算すると共に、ガスカッタ10の上流側に設置されたピンチロール9の回転速度により平均鋳造速度を計算した。
表10〜45において、定常部位の三次冷却は、第1実施形態と同様に、条件(1)及び条件(2)を満たすように、三次冷却水量Qを設定して、三次冷却を行った(冷却速度判定の欄「○」)。また、非定常部位の三次冷却において、停止補正係数a、搬送補正係
数b及び鋳造速度補正係数cを適正に設定し、非定常部位の三次冷却水量Q’で三次冷却した場合、鋳片の熱応力割れもなく、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することができた(ベイナイト組織有)。
例えば、実験(追番)1では、引抜停止時間が1.0minに対して停止補正係数aは100%(補正率の欄)に設定しており、当該停止補正係数aを停止補正テーブルで示した値に応じて適正に設定している。また、平均搬送速度が1.0m/minに対して搬送補正係数bは100%(補正率の欄)に設定しており、当該搬送補正係数bを搬送補正テーブルで示した値に応じて適正に設定している。また、平均鋳造速度が1.0m/minに対して鋳造速度補正係数cは100%(補正率の欄)に設定しており、当該鋳造速度補正係数cを鋳造補正テーブルルで示した値に応じて適正に設定している。そして、これらの値を用いて、非定常部位の三次冷却水量Q’を求めて、三次冷却水量Q’にて三次冷却を行っている(補正後水量の欄)。その結果、すべての区間において温度差ΔTを130℃以下にすることができると共に、熱応力割れも発生することがなかった。加えて、鋳片に疵が発生することもなかった。
一方、非定常部位において、適正に三次冷却水量Q’を設定しなかった場合、鋳片の熱応力割れが発生したり、鋳片の表層5mm以内の組織にベイナイトを形成することができなかった(ベイナイト組織無)。
例えば、実験(追番)2では、引抜停止時間が6.0minにも関わらず、停止補正係数aは100%に設定している。即ち、引抜停止時間が長いのにも関わらず、三次冷却水量の補正を行っていない。また、実験(追番)11では、平均搬送速度が0.85m/minに対して搬送補正係数bは100%に設定している。即ち、平均搬送速度が遅いのにも関わらず、三次冷却水量の補正を行っていない。また、実験(追番)20では、平均鋳造速度が0.90m/minに対して鋳造速度補正係数cは100%に設定している。即ち、平均鋳造速度が遅いのにも関わらず、三次冷却水量の補正を行っていない。
以上、第2実施形態によれば、鋳片の引抜停止時間に基づいた停止補正係数aを設定し、鋳片の搬送速度に基づいた搬送補正係数bを設定し、連続鋳造装置における平均鋳造速度に基づいた鋳造速度補正係数cを設定している。そのうえで、停止補正係数a、搬送補正係数b及び鋳造速度補正係数cで三次冷却水量Qを補正して、非定常部位における三次冷却水量Q’を求めて、非定常部位に対して三次冷却水量Q’で三次冷却しているため、安定的に鋳片の組織を微細組織にして割れを防止することができた。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
1 連続鋳造装置
2 溶鋼
3 取鍋
4 タンディッシュ
5 鋳型
6 サポートロール
8 搬送ロール
9 ピンチロール
10 切断装置
11 三次冷却装置
12 搬送装置
13 冷却ノズル
13a 上部冷却ノズル
13b 下部冷却ノズル
13c 狭面冷却ノズル
S 鋳片

Claims (2)

  1. 成分として、C=0.52%〜0.60%(質量%、以下同じ)、Si=0.15%〜0.35%、Mn=0.65%〜0.95%、P≦0.030%、S≦0.030%、Cr=0.65%〜0.95%、残部Feおよび不可避的不純物からなるばね鋼の鋳片を、下記の条件を満たすように三次冷却することを特徴とするばね鋼の鋳片の冷却方法。
    (1)鋳片幅方向の表面温度分布における最高温度と、最低温度との差である温度差をΔTとした際に、ΔT≦160℃とする。
    (2)鋳片表面温度を800℃から500℃まで冷却する際の冷却速度として、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃では冷却速度を35℃/min以上、699℃〜600℃では冷却速度を30℃/min以上、599℃〜500℃では冷却速度を25℃/min以上とする。
  2. 成分として、C=0.52%〜0.60%(質量%、以下同じ)、Si=0.15%〜0.35%、Mn=0.65%〜0.95%、P≦0.030%、S≦0.030%、Cr=0.65%〜0.95%、残部Feおよび不可避的不純物からなるばね鋼の鋳片を、三次冷却するに際し、
    下記(1)及び(2)の条件で、鋳片の定常部位における三次冷却水量Qを求め、
    (1)鋳片幅方向の表面温度分布における最高温度と、最低温度との差である温度差をΔTとした際に、ΔT≦160℃とする。
    (2)鋳片表面温度を800℃から500℃まで冷却する際の冷却速度として、鋳片表面の冷却前温度が800℃〜700℃では冷却速度を35℃/min以上、699℃〜600℃では冷却速度を30℃/min以上、599℃〜500℃では冷却速度を25℃/min以上とする。
    下記(3)〜(6)によって、鋳片の非定常部位における三次冷却水量Q’を求め、
    (3)鋳片の引抜停止時間に基づいた停止補正係数aを設定する。
    (4)鋳片の搬送速度に基づいた搬送補正係数bを設定する。
    (5)連続鋳造装置における平均鋳造速度に基づいた鋳造速度補正係数cを設定する。
    (6)Q’=Q×a×b×c
    前記定常部位に対しては、三次冷却水量Qで三次冷却を行い、前記非定常部位に対しては、三次冷却水量Q’で三次冷却を行うことを特徴とするばね鋼の鋳片の冷却方法。
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