JP2010005633A - 鋳片の冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】連続鋳造機1で鋳片2を鋳造した後に当該鋳片2を切断して、当該切断した鋳片2を、加熱炉3に装入する前に冷却する冷却方法において、加熱炉3への装入前の鋳片2の表面温度を冷却する冷却速度を4℃/min以上で且つ6℃/min以下とする。また、鋳片2の表面温度を450〜670℃の範囲とする。さらに、鋳片2の同一断面内の温度バラツキを100℃以下にする。
【選択図】図1
Description
しかしながら、鋳片の割れが進展し割れが深くなった場合(大きな割れとなった場合)、前述のホットスカーフ処理だけでは対応できないことがある。このような場合、鋳片において疵が残存することになることから、ホットスカーフとは異なる他の工程で疵取りを行う作業が発生したり、製造品の品質の低下に繋がる問題となる。
この3次冷却では、鋳片を冷却することで鋳片のオーステナイト組織を例えばベイナイト組織に変態させて微細化させ、連続鋳造後の工程において鋳片に応力等がかかっても鋳片の組織の粒界に沿って鋳片の割れが進展しないようにするものである。
したがって、特許文献1〜2に示すような冷却方法であっても、安定的に鋳片の組織全体を微細組織に変態させることは非常に難しいのが実情である。
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、安定的に鋳片を微細組織にして鋳片の割れが進展することを防止する連続鋳造機の冷却設備と冷却方法を提供することを目的とする。
連続鋳造機で鋳造した後に切断した鋳片を、加熱炉に装入する前に冷却する冷却方法において、前記鋳片の表面を冷却する冷却速度を4〜6℃/minとし、前記加熱炉への装入前の鋳片の表面温度を450〜670℃の範囲とすると共に、鋳片の同一断面内の温度バラツキを100℃以下にする点にある。
発明者は、安定的に鋳片を微細組織にして鋳片の割れが進展することを防止する方法について、様々な観点から検証した。その結果、鋳片を微細なフェライト−パーライト組織に変態することができ、鋳片の表面の割れが進展し難いことを実験等により見出した。
図1は、鋳片を製造する製造ラインにおいて、連続鋳造機から冷却設備を経て加熱炉までの全体図を示している。
図1に示すように、連続鋳造機1は、例えば、鋳片(例えば、ブルーム)2を鋳造する連続鋳造機であって、鋳造後の鋳片2を加熱する加熱炉3の上流側に設置されている。加熱炉3は、図示しない分塊圧延ラインの上流側に配置されていて鋳片2を圧延に適した温度まで上昇させるものである。連続鋳造機1と加熱炉3とは近接していて連続したライン上に設置された状態となっている。加熱炉3と連続鋳造機1との間には、鋳造した鋳片2を冷却する冷却設備4が設置されている。
タンディッシュ10は、全体として有底箱形となっており、タンディッシュ10の底部に2つの浸漬ノズル13が設けられている。浸漬ノズル13は、スライドバルブにより開閉可能となっており、浸漬ノズル13の開閉によりタンディッシュ10による鋳型11への溶鋼の注入が停止又は再開できるようになっている。
図1、2に示すように、冷却設備4は、切断装置14で切断された鋳片2を下流側に搬送する搬送装置15と、この搬送装置15の横側で近接配置され且つ搬送された鋳片2を空冷等により冷却する冷却装置16とに大別される。
図2に示すように、搬送装置15は、切断した鋳片2を搬送する複数の搬送ロール17と、搬送ロール17で所定の位置まで搬送された鋳片2を冷却装置16に引き渡す引き渡し機構18とを有している。
図2、3に示すように、冷却装置16は、冷却床20と、冷却ファン21とを有している。
冷却床20は、鋳片2のスライド方向に延び且つ移動不能に固定された複数の固定バー22と、スライド方向に延び且つ搬送方向に移動可能な複数の可動バー23とを有している。各固定バー22には、鋳片2の下面を載置する載置部25が長手方向に複数設けられている。固定バー22に対する載置部25の配列ピッチ(長手方向の配列間隔)は、一定値であって、固定バー22に設けられた載置部25を平面視すると、各載置部25は長手方向と直交する方向に直線状に並んだ状態となっている。
可動バー23は、固定バー22の間に配置され且つスライド方向(搬送方向)に往復移動するものであって、スライド部材18aにより冷却床20の近傍まで搬送された鋳片2を持ち上げて、下流側に搬送して固定バー22の載置部25に据え置くように構成されている。
図4に示すように、各冷却ファン21は、当該冷却ファン21の中心から冷却床20に据え置かれた鋳片2の下面の中央部を結ぶ角度(以降、吹きつけ角ということがある)θ1,θ2が調整可能となっている。冷却ファン21の風速も調整可能となっている。
以下、本発明の鋳片の冷却方法を詳しく説明する。
切断装置14で切断された鋳片2を、冷却設備4で冷却するにあたっては、鋳片の表面(鋳片表面)を冷却する冷却速度を4℃〜6℃/minとしている。 具体的には、図3に示すように、鋳片2の表面において、冷却床20に接する面を底面30、この底面30に対向する面を上面31、冷却ファン21に近い面を第1狭面(狭面A)32、この第1狭面32と対向する面であって冷却ファン21から遠い面を第2狭面(狭面B)33としたとき、底面30、上面31、第1狭面32、第2狭面33の中央部分(各面の中心)での冷却速度が4〜6℃/minとなるように、鋳片2を冷却床20に載置すると共に、冷却ファン21によって冷却を行っている。
そこで、本発明の鋳片の冷却方法においては、上述した問題に鑑み、鋳片2の表面の冷却速度が適切な4〜6℃/minとしている。
ここで、鋳造後の鋳片2の表面にはスケールが付着しているため、2面が交差する真コーナ部(エッジ部分)41aでの表面温度を測定することは実質的に難しい。そこで、この実施形態では、図5(b)、図5(c)に示すように、真コーナ部41aから内側へ100mm入った部分の表面温度を測定することとしている。そして、真コーナ部41aから100mm入る部分から表面の中心部分40までの表面温度が450〜670℃の範囲に入るように制御している。
このように、鋳片2を加熱炉3に装入する前の鋳片2の表面温度を450〜670℃の範囲内とすることによって、鋳片2の表面温度をAc1変態温度以下にすることができる。図6のポイントEに示すように鋳片2の表面温度をAc1変態温度以下にすると、鋳片2の組織を粒の大きいオーステナイト組織(γ組織)から粒の小さなフェライト−パーライト組織(α+P組織)へと変態する。鋳片2の組織をフェライト−パーライト組織にした状態で、当該鋳片2を加熱炉3に装入すると加熱後の組織を粒の非常に小さな新たな組織とすることができる(ポイントF)。
また、鋳片2の表面温度を450℃未満とした場合、鋳片2を加熱炉3に装入すると、装入時の鋳片2の表面温度が低過ぎるために、急な熱膨張が生じて割れが発生する可能性がある。
ゆえに、本発明の鋳片の冷却方法では、上述したように、鋳片2の表面温度を450〜670℃の範囲としている。
以上、本発明の鋳片の冷却方法においては、鋳片2の表面を冷却する冷却速度を4〜6℃/minとし、鋳片2の表面温度を450〜670℃の範囲とし、鋳片2の同一断面内の温度バラツキを100℃以下となるように、冷却設備4における制御を行っている。
表1〜表3は、鋳片2ピッチL1,L2、吹きつけ角(鋳片2冷却角度)θ1、θ2、風速V1〜V2を適宜変化させて、鋳片2を冷却した実験結果(鋳片2冷却テスト結果)である。
連続鋳造機1で300×430mmとなるブルーム(鋳片2)を鋳造し、当該鋳片2をAc3変態温度以上(800〜950℃)で切断して搬送及び冷却を行った。鋳片2ピッチL1〜L3を0〜1500mmの間で変化させ、吹きつけ角θ1、θ2を−10〜60°の間で変化させた。固定バー22と可動バー23との距離P、即ち、冷却床20のピッチPを、1000〜2500mmとした。
各実験において、鋳片2を切断してから切断した鋳片2を冷却床20まで搬送する時間は1〜2分であり、鋳片2の冷却を終了してからは、直ぐに(1〜2分以内)加熱炉に鋳片2を入れることとした。また、鋳片2を冷却した時間(切断後から加熱炉投入までの時間)は、30分〜60分としている。鋳片2の表面温度は、加熱炉3の装入直前に、最高温度及び最低温度を測定できるサーモトレーサ(NEC三栄(株)製TH9100MLN)によって測定した。
表1〜3において、表面欠陥[なし:○][あり:×]は、磁粉探傷試験JIS-G-0565(鉄鋼材料の磁粉探傷試験方法及び磁粉検査)に基づいて試験を行い、表面の中心部付近の割れの評価を示したものである。磁粉探傷試験は、冷却後の鋳片2を分塊圧延(加熱→圧延→ホットスカーフ→圧延)及び平滑化処理(表面スケール除去)して後に試験を行った。
表1、表2において、コーナ部欠陥[なし:○][あり:×]は、表面欠陥と同様に、磁粉探傷試験JIS-G-0565(鉄鋼材料の磁粉探傷試験方法及び磁粉検査)に基づいて試験を行い、コーナ部における表面割れを上述した表面欠陥と同様に評価したものである。
表1に示すように、冷却ファン21の風速V1〜V2を0m/secにした場合、即ち、冷却ファン21で鋳片2に対して送風を行わなかった場合は、鋳片2ピッチL1,L2をいかなる状態にしても、鋳片2の表面温度(表1に示す最低温度から最高温度の範囲)を450〜670℃の範囲内にすることができなかった。その結果、表面欠陥やコーナ部欠陥が確認された(表面欠陥「×」、コーナ部欠陥「×」)。
即ち、冷却ファン21で鋳片2を冷却しなかった場合(風速V1〜V2=0m/sec)、鋳片2の底面30側や狭面側は鋳片2の上面31と比較して熱が滞留し易いだけでなく、全体的に鋳片2の表面温度を、Ac1変態温度の領域以下まで降下させることができなかった。
しかしながら、表3に示すように、冷却ファン21の風速V1〜V2を20m/secよりも大きくしてしまうと、鋳片2の表面温度がAc1変態温度以下にすることができるものの、鋳片2の表面を過冷却(特に、冷却ファン21に近い狭面Aを過冷却)してしまい、その結果、表面欠陥やコーナ部欠陥が確認された(表面欠陥「×」、コーナ部欠陥「×」)。
以上のように、本発明の冷却方法では、鋳片2を冷却する際は、過冷却ならにように風速V1〜V2を2〜20m/secの範囲として、鋳片2の表面温度を450〜670℃の範囲内にすることが必要である。
本発明の鋳片の冷却方法の条件にするためには、冷却ファン21の風速V1〜V2を2〜20m/secに制御するだけでなく、鋳片2ピッチL1を制御する必要があることを確認した。
表1、表2に示すように、冷却ファン21の風速V1〜V2を2〜20m/secであっても、鋳片2ピッチ(隣り合う鋳片2の側面間の距離)L1が200mm未満の場合は、隣り合う鋳片2同士が互いの輻射熱の影響を大きく受けるため、この輻射熱によって鋳片2の表面温度の最高温度が高くなるという傾向がある。
一方で、冷却ファン21の風速V1〜V2を2〜20m/secとして、鋳片2ピッチL1を1200mmよりも大きくした場合は、隣り合う鋳片2の輻射熱の影響が少なくすることができるものの、輻射熱の影響が小さ過ぎて、鋳片2の表面温度の最低温度が低くなるという傾向がある。
これに加え、鋳片2ピッチL1を1200mmよりも大きくした場合は、輻射熱の影響が小であるために冷却速度が速くなる(冷却速度の最大値が大きく8.0℃/minとなる)傾向があり、冷却速度を4〜6℃/minの範囲にすることができなかった。
このように、本発明の鋳片の冷却方法では、鋳片2を冷却する際は、鋳片2ピッチL1を200〜1200mmとして、輻射熱の良い影響を与えるようにし、鋳片2同士の輻射熱によって鋳片2の表面温度の制御を行う役割を担っている。
[吹きつけ角について]
本発明の鋳片の冷却方法の条件にするためには、冷却ファン21の風速V1〜V2を2〜20m/secに制御し且つ鋳片2ピッチL1を200〜1200mmに制御するだけでなく、吹きつけ角θ1、θ2も制御する必要があることを確認した。
その結果、鋳片2の表面温度の最高温度が高くなるという傾向があり、鋳片2の表面温度を上限値である670℃以下にすることができず、表面欠陥やコーナ部欠陥が確認された(表面欠陥「×」、コーナ部欠陥「×」)。
以上、本発明の鋳片の冷却方法によれば、冷却ファン21の風速V1〜V2を2〜20m/secに制御し、鋳片2ピッチL1を200〜1200mmに制御し、吹きつけ角θ1、θ2を0°〜50°に制御することによって、表面欠陥やコーナ部欠陥を無くすことができる(表面欠陥「○」、コーナ部欠陥「○」)。
[鋳片の搬送について]
本発明の鋳片の冷却方法の条件にするためには、冷却ファン21の風速V1〜V2を2〜20m/secに制御し、鋳片2ピッチL1を200〜1200mmに制御し、吹きつけ角θ1、θ2を0°〜50°に制御するのに加え、載置した鋳片2を長時間留めておくことなく搬送する必要がある。
表4の最高温度の欄には、鋳片2を3次冷却後の各表面において、中央部分の温度が最も温度が高かった面とその温度(最高温度)と冷却速度を示した。表4の面部最低温度の欄には、鋳片2冷却後の各表面において、中央部分の温度が最も低かった面とその温度(最低温度)と冷却速度を示した。表4のコーナ部温度の欄には、鋳片2冷却後の各表面において、後述するように、集中的に冷却したコーナ部での温度と冷却速度を示した。
実験番号181〜実験番号186は、図8(a)に示すように、本発明の条件下(冷却速度:4〜6℃/min、表面温度:450〜670℃)で、鋳片2のコーナ部を集中的に冷却した結果をまとめたものである。
また、表4の実験番号187〜実験番号192は、図8(b)に示すように、本発明の条件下で、鋳片2の第1狭面32を集中的に冷却した結果をまとめたものである。表4の最高温度の欄には、鋳片2冷却後の各表面において最も温度が高かった面とその温度(最高温度)を示した。表4の最高温度の欄には、鋳片2冷却後の各表面において最も温度が高かった面とその温度(最高温度)を示した。
実験番号185及び実験番号186に示すように、コーナ部を集中的に冷却した場合であって、鋳片2の搬送ピッチを15分よりも長くして、図8(a)の状態で長時間留めると、コーナ部が強冷却され、コーナ部温度欄の温度と最高温度欄の温度との差が100℃よりも大きくなり、コーナ部の欠陥が確認された(コーナ部欠陥「×」)。
実験番号191及び実験番号192に示すように、第1狭面32を集中的に冷却した場合であって、鋳片2の搬送ピッチを15分よりも長くして、図8(b)の状態で長時間留めると、第1狭面32が強冷却され、面部最低温度欄の温度と最高温度欄の温度との差が100℃よりも大きくなり、表面欠陥が確認された(表面欠陥「×」)。
2 鋳片
3 加熱炉
4 冷却設備
16 冷却装置
20 冷却床
21 冷却ファン
Claims (1)
- 連続鋳造機で鋳造した後に切断した鋳片を、加熱炉に装入する前に冷却する冷却方法において、
前記鋳片の表面を冷却する冷却速度を4〜6℃/minとし、前記加熱炉への装入前の鋳片の表面温度を450〜670℃の範囲とすると共に、鋳片の同一断面内の温度バラツキを100℃以下にすることを特徴とする鋳片の冷却方法。
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