JP2015189875A - カーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)分散剤を含む水性媒体中に、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させて懸濁液を得る懸濁液の調製工程、(B)得られた懸濁液にスチレン系単量体と重合開始剤とを加え、該スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させ、得られた反応液を加熱して、該スチレン系単量体を重合させる第1の重合工程、(C)得られた反応液にスチレン系単量体と重合開始剤とをさらに加え、前記ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させつつ該スチレン系単量体を重合させて、複合樹脂粒子を得る第2の重合工程を含み、かつ前記工程(C)までの前記懸濁液または反応液に、重合禁止剤として水溶性重合禁止剤と油溶性重合禁止剤とを存在させることを特徴とするカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
Description
一方、ポリプロピレン系樹脂からなる発泡成形体は、耐衝撃性や柔軟性に優れているが、その成形時に大掛かりな設備を必要とする。また、樹脂の性質上、予備発泡粒子の形態で原料メーカーから成形加工メーカーに輸送しなければならない。そのため、嵩高い予備発泡粒子を輸送することになり、製造コストが上昇するという問題がある。
そこで、上記2つの異なる樹脂の特長を併せもつ、様々なポリスチレン系複合樹脂粒子及びそれらを用いた発泡成形体が提案されている。
また、その用途によっては、黒色の発泡成形体が望まれることがあり、着色剤としては主としてカーボンブラックが用いられている。
すなわち、特許文献1には、重合禁止剤の添加についての記載はない。また特許文献2及び3には、スチレン系単量体に添加されていてもよい添加剤として水溶性重合禁止剤及び油溶性重合禁止剤が他の添加剤と共に例示され、特許文献4にもビニル単量体に添加されていてもよい添加剤として重合禁止剤が他の添加剤と共に例示されているが、具体的な重合禁止剤の記載はなく、得られる発泡成形体の色ムラ(黒色度)や外観美麗性に与える影響についても、記載も示唆もされていない。
(A)分散剤を含む水性媒体中に、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させて懸濁液を得る懸濁液の調製工程、
(B)次いで、得られた懸濁液にスチレン系単量体と重合開始剤とを加え、該スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させ、得られた反応液を加熱して、該スチレン系単量体を重合させる第1の重合工程、
(C)次いで、得られた反応液にスチレン系単量体と重合開始剤とをさらに加え、前記カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させつつ該スチレン系単量体を重合させて、カーボンブラック含有複合樹脂粒子を得る第2の重合工程
を含み、かつ前記工程(C)までの前記懸濁液または反応液に、重合禁止剤として水溶性重合禁止剤と油溶性重合禁止剤とを存在させることを特徴とするカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法が提供される。
すなわち、本発明によれば、重合禁止剤により重合時にポリプロピレン系樹脂粒子に吸収されるスチレン系単量体がより内部に浸透してから重合反応を起こし、カーボンブラック含有複合樹脂粒子の表面におけるポリスチレン系樹脂の存在量(表面ポリスチレン系樹脂量:表面PS量)が少なくなり、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂中に含まれるカーボンによる発色が抑制されないために、得られる発泡成形体における黒色度が改善されるものと考えられる。
(1)水溶性重合禁止剤が工程(A)の懸濁液または工程(B)の反応液に添加され、かつ油溶性重合禁止剤が工程(C)の反応液に添加される、
(2)水溶性重合禁止剤の添加量が水性媒体に対して10〜400ppmであり、油溶性重合禁止剤の添加量がスチレン単量体に対して100〜1000ppmである、
(3)水溶性重合禁止剤が亜硝酸ナトリウムであり、油溶性重合禁止剤が2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)である、
(5)難燃剤がカーボンブラック含有複合樹脂粒子に対して1.5〜6.0質量%のトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネートであり、難燃助剤がカーボンブラック含有複合樹脂粒子に対して0.1〜2.0質量部の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンである
の少なくとも1つの条件を満足する場合に、上記の優れた効果を更に発揮する。
(A)分散剤を含む水性媒体中に、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させて懸濁液を得る懸濁液の調製工程、
(B)次いで、得られた懸濁液にスチレン系単量体と重合開始剤とを加え、該スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させ、得られた反応液を加熱して、該スチレン系単量体を重合させる第1の重合工程、
(C)次いで、得られた反応液にスチレン系単量体と重合開始剤とをさらに加え、前記カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させつつ該スチレン系単量体を重合させて、カーボンブラック含有複合樹脂粒子を得る第2の重合工程
を含み、かつ前記工程(C)までの前記懸濁液または反応液に、重合禁止剤として水溶性重合禁止剤と油溶性重合禁止剤とを存在させることを特徴とする。
1回の重合に用いるスチレン系単量体の量は、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の質量割合が上記のようになるように適宜分割すればよい。
各重合開始剤の添加時期は、特に限定されないが、水溶性重合禁止剤が工程(A)の懸濁液または工程(B)の反応液に添加され、かつ油溶性重合禁止剤が工程(C)の反応液に添加されるのが好ましい。
水溶性重合禁止剤の添加量が、10ppm未満では、重合粉末が多量に発生することがある。一方、水溶性重合禁止剤の添加量が、400ppmを超えると、重合が完了せずに単量体が残留することがある。より好ましい水溶性重合禁止剤の添加量は、30〜200ppmである。
油溶性重合禁止剤の添加量が、100ppm未満では、十分にスチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂粒子が吸収できないことがある。一方、油溶性重合禁止剤の添加量が、1000ppmを超えると、重合が抑制されて粒子の合着が発生することがある。より好ましい油溶性重合禁止剤の添加量は、300〜700ppmである。
(1)工程(A):懸濁液の調製工程
分散剤を含む水性媒体中に、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させて懸濁液を得る。
ポリプロピレン系樹脂粒子は、核樹脂粒子(「種粒子」ともいう)となり、例えば、押出機でポリプロピレン系樹脂を溶融混練後、ストランド状に押し出し、所望の粒子径でカットすることにより得ることができる。
前記スクリュー構造を有する押出機やダイス、押出条件、水中カット条件を組み合わせることで所望の核樹脂粒子が得られる。
また、上記核樹脂粒子は本発明の効果を損なわない限り、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の相容化剤、気泡調整剤、帯電防止剤などの添加剤を含有することができる。
複合樹脂予備発泡粒子のカーボンブラック含有量が0.5質量%未満では、発泡成形体に十分な黒色度を付与できないことがある。一方、複合樹脂予備発泡粒子のカーボンブラック含有量が5.0質量%を超えると、発泡成形体の難燃性の確保が困難になることがある。より好ましい複合樹脂粒子のカーボンブラック含有量は、1.5〜3.0質量%である。
分散剤は、スチレン系単量体の液滴及び核樹脂粒子の分散性を安定させるために用いられ、このことから分散剤は、懸濁安定剤ともいう。
分散剤としては、当該技術分野で用いられる分散剤、特に従来からスチレン系単量体の懸濁重合に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。
また、難溶性無機化合物を用いる場合には、通常アニオン界面活性剤が併用される。
上記のように、水溶性重合禁止剤は、工程(A)の懸濁液または工程(B)の反応液に添加されるのが好ましい。具体的な化合物及びその添加量は上記の通りである。
分散剤を含む水性媒体中に核樹脂粒子を分散させて懸濁液を得るためには、これらを含む水性媒体を公知の方法により機械的に撹拌すればよい。
攪拌条件としては、水性媒体1m3を攪拌させるのに要する撹拌所要動力(Pv)が、0.06〜0.8kw/m3となるように調整された条件が好ましい。
撹拌所要動力は、反応容器内の内容物が攪拌により受けた、正味の単位体積当たりのエネルギーに対応し、0.1〜0.5kw/m3であるのが好ましい。
例えば、核樹脂粒子などを含む、体積V(m3)の水性媒体を重合装置の重合容器内に供給し、攪拌翼を所定の回転数で回転させて水性媒体を攪拌する。このとき、攪拌翼を回転させるのに必要な回転駆動負荷を電流値A1(アンペア)として計測し、この電流値A1に実効電圧(ボルト)を乗じた値をP1(ワット)とする。
一方、重合容器内が空の状態で、上記と同一回転数で攪拌翼を回転させ、攪拌翼を回転させるのに必要な回転駆動負荷を電流値A2(アンペア)として計測し、この電流値A2に実効電圧(ボルト)を乗じた値をP2(ワット)とする。
得られた測定値と次式から撹拌所要動力を算出する。
撹拌所要動力(Pv)=(P1−P2)/V
また、攪拌翼は、撹拌所要動力を所定の範囲に設定可能であれば、特に限定されない。
具体的には、V型パドル翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファードラー翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼、マリンプロペラ翼のようなプロペラ翼等が挙げられる。これら攪拌翼の内、パドル翼が好ましく、V型パドル翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、ファードラー翼、プルマージン翼がより好ましい。攪拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。
また、攪拌翼の大きさについても、撹拌所要動力を所定の範囲に設定可能であれば、特に限定されず、重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
上記の撹拌については、後述する工程(B)及び(C)のスチレン系単量体の重合工程にも共通する。
工程(A)で得られた懸濁液にスチレン系単量体と重合開始剤とを加え、該スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させ、得られた反応液を加熱して、該スチレン系単量体を重合させる。
複合樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂(PS)としては、当該技術分野で用いられるスチレン系単量体を主成分とする樹脂であれば特に限定されず、スチレン又はスチレン誘導体の単独又は共重合体が挙げられる。
スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
工程(B)では、それらの単量体を用いる。
また、単量体を併用する場合、その含有量は、スチレン系単量体が主成分となる量(例えば、50質量%以上)になるように設定されることが好ましい。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
ポリスチレン系樹脂が100質量部未満では、複合樹脂粒子の発泡剤を保持する能力が低下することがあり、高発泡化ができなくなることがあると共に、発泡成形体の剛性が低下することがある。一方、ポリスチレン系樹脂が400質量部を超えると、ポリプロピレン樹脂粒子の内部にまで十分に含浸されずに、ポリスチレン系樹脂が複合樹脂粒子の表面に多量に存在してしまい、白色粒子が発生することがあるため好ましくない。加えて、発泡成形体の耐割れ性が低下するだけでなく、耐薬品性も低下することがあるため好ましくない。
好ましくは、ポリスチレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、120〜300質量部である。
1回の重合に用いるスチレン系単量体の量は、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の質量割合が上記のようになるように適宜分割すればよい。
重合開始剤としては、当該技術分野で用いられる分散剤、特に従来からスチレン系単量体の懸濁重合に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらは単独で用いられても、併用されてもよいが、10時間の半減期を得るための分解温度が60〜130℃にある複数種類の重合開始剤を併用することが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させ、得られた反応液を加熱して、該スチレン系単量体を重合させるためには、例えば、次のように処理すればよい。
まず、スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、スチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させて反応液を得る。
スチレン系単量体が実質的に重合しない温度は、原料樹脂の種類や配合割合、製造する複合樹脂粒子の物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常45〜80℃である。
また、ポリプロピレン系樹脂粒子内部にスチレン系単量体を含浸させる時間は30分〜2時間が適当である。十分に含浸させる前に重合が進行すると、ポリスチレンの重合粉末が生成し易くなる。
本発明の製造方法は、この重合粉末と合一粒子の生成を抑制する効果を有する。
重合温度が(T−10)℃未満では、得られる樹脂粒子の中心部にポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な黒色度や機械物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られないことがある。一方、重合温度が(T+20)℃を超えると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分に含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な黒色度や機械物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られないことがある。
例えば、ポリプロピレン系樹脂の融点が140℃であるとき、重合温度は130〜160℃である。
重合1回当たりの重合時間は、通常1〜6時間程度であり、得られる複合樹脂粒子の品質と生産性を考慮すれば、好ましくは1.5〜3時間である。
また、重合時の系内の圧力は、通常0.05〜0.5MPa程度であり、重合の安定性作業面での安全性を考慮すれば、好ましくは0.1〜0.3MPaである。
重合は、単量体を核樹脂粒子中に吸収させた後、又は単量体を核樹脂粒子に吸収させながら行うことができる。なお、単量体と重合後に得られるポリスチレン系樹脂の量はほぼ同一である。
加えて、各工程の設定温度への昇温または降温時間は外気温により変動するが、開始温度から目的温度に到達するまでの区間全体で換算すると0.3℃/min〜3.0℃/minが適当である。
特に、昇温速度が速すぎると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分に含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な黒色度や機械物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られないことがある。一方で、昇温速度が遅すぎる場合は、工程が長くなり、製造コストが掛かってしまう。より好ましくは0.4℃/min〜2.5℃/minである。
本願発明の複合樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、後述する難燃剤及び難燃助剤を含めて、可塑剤、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、滑剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤などの添加剤が添加されていてもよい。
これらの添加剤は、重合工程において反応液に添加すればよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペート等のアジピン酸エステル、ヤシ油等の可塑剤が挙げられる。
可塑剤の複合樹脂粒子中における含有量は、0.1〜3.0質量%が好ましい。
気泡調整剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
架橋剤としては、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサンなどの有機過酸化物などが挙げられる。
充填材としては、合成又は天然に産出される二酸化ケイ素などが挙げられる。
融着促進剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイルなどが挙げられる。
工程(B)で得られた反応液にスチレン系単量体と重合開始剤とをさらに加え、ポリプロピレン系樹脂に該スチレン系単量体を吸収させつつ該スチレン系単量体を重合させて、複合樹脂粒子を得る。
前項(2)(2−1)と同様である。
(3−2)重合開始剤
前項(2)(2−2)と同様である。
(3−3)油溶性重合禁止剤
上記のように、油溶性重合禁止剤は、工程(C)の反応液に添加されるのが好ましい。具体的な化合物及びその添加量は上記の通りである。
ポリプロピレン系樹脂にスチレン系単量体を吸収させつつスチレン系単量体を重合させるためには、例えば、前記ポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−25)〜(T+15)℃の温度に、得られた反応液を加熱してスチレン系単量体を重合させる。
重合温度が(T−25)℃未満では、得られる樹脂粒子の中心部にポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な黒色度や機械物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られないことがある。一方、重合温度が(T+15)℃を超えると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分に含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な黒色度や機械物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られないことがある。
例えば、ポリプロピレン系樹脂の融点が140℃であるとき、重合温度は115〜155℃である。その他の重合条件については前記第1の重合に準じて処理すればよい。
ここでアニールの必要性について記述する。
アニール工程に至るそれまでの工程において、核樹脂粒子に吸収させたスチレン系単量体及び重合開始剤は完全には反応を完了しておらず、複合樹脂粒子内部には未反応物も少なからず存在している。そのため、アニールせずに得た複合樹脂粒子を用いて発泡成形体を得た場合、スチレン系単量体など低分子量の未反応物の影響により、発泡成形体の機械的物性や耐熱性の低下や揮発性の未反応物を原因とした臭気が問題となる。そこで、アニール工程を導入することによって未反応物が重合反応を起こす時間を確保し、発泡成形体の物性に影響しないように残存する未反応物を除去することができる。
複合樹脂粒子の平均粒子径が0.5mm未満では、高い発泡性を得られないことがある。一方、複合樹脂粒子の平均粒子径が3.0mmを超えると、成形加工時の予備発泡粒子の充填性が不十分になることがある。より好ましい複合樹脂粒子の平均粒子径は、0.5〜2.0mmである。
本発明の複合樹脂粒子の製造方法は、工程(C)で得られた反応液に難燃剤及び難燃助剤を添加し、加熱処理して複合樹脂粒子を難燃化する難燃化処理工程をさらに含むのが好ましい。加熱処理の温度及び時間などの条件は、用いる難燃剤及び難燃助剤や添加量などにより適宜設定すればよい。
難燃剤としては、トリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート、ビス[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などの臭素系難燃剤が挙げられる。これらの中でも、効率よく難燃化できる点で、トリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネートが特に好ましい。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。
難燃助剤の添加量が0.1質量部未満では、難燃性を十分に付与することができないことがある。一方、難燃助剤の添加量が2.0質量部を超えると、発泡成形体の耐熱性が低下することがある。好ましい難燃助剤の添加量は、複合樹脂予備発泡粒子100質量部に対して1.0〜2.0質量部である。
本発明の複合樹脂粒子は、ポリプロピレン系樹脂粒子のカーボンブラックの含有量が0.5〜5質量%であり、かつ公知の方法により、複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させ予備発泡させて複合樹脂予備発泡粒子を得、得られた複合樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形させたときに、
JIS Z8729−2004「色の表示方法−L*a*b*表色系」に基づく色差測定において、次式:
ΔE’=L*+|a*|+|b*|<30
(式中、ΔE’は黒色度、L*は明度、a*及びb*は色座標を表す)
で示される関係式を満足しかつ前記ΔE’の標準偏差σがσ<1.0の関係を満足し、かつ5〜50質量%の表面ポリスチレン系樹脂量を有する発泡成形体が得られる樹脂粒子であるのが好ましい。
黒色度の測定方法については、実施例において詳述する。
黒色度ΔE’が30未満では良好であり、黒色度ΔE’が30を超えると不良である。
また、黒色度ΔE'の標準偏差σが1.0未満では良好であり、標準偏差σが1.0を超えると不良である。
発泡成形体の表面ポリスチレン系樹脂量が5質量%未満では、黒色度のムラといった外観不良が発生することがある。一方、発泡成形体の表面ポリスチレン系樹脂量が50質量%を超えると、十分な黒色度を付与できないことがあり、同時に耐薬品性や耐衝撃性を低下させることがある。
好ましい発泡成形体の表面ポリスチレン系樹脂量は、5〜30質量%である。
実施例及び比較例においては、重合状態及び得られた発泡成形体を次のようにして評価した。
重合時に副生する重合粉末量(g)を秤量し、重合物全量に対する割合を算出し(質量%)から、次の基準により評価する。
重合粉末を、反応液から濾紙を用いて濾過乾燥し、複合樹脂粒子と分別する。
◎(非常に良好):0.1質量%未満
○(良好) :0.1質量%以上0.15質量%未満
×(不良) :0.15質量%以上
重合時に生成する合一粒子(g)を秤量し、重合物全量に対する割合を算出し(質量%)から、次の基準により評価する。
合一粒子を、通常生成される複合樹脂粒子は通過し、樹脂粒子が2粒以上合一した粒子は通過することの無い目開きの篩を用い、重合後の生成物を篩うことにより分別する。
◎(非常に良好):1.5質量%未満
○(良好) :1.5質量%以上2.5質量%未満
×(不良) :2.5質量%以上
成形体の表面の吸光度比(D698/D1376)を次の要領で測定する。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる各吸光度は、成形体に含まれる各樹脂成分の振動に由来するピークの高さをいう。
無作為に選択した10個の成形体試料について、赤外分光分析ATR測定法により表層分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この分析では、成形体表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られる。
各赤外吸収スペクトルから個別吸光度比(D698/D1376)をそれぞれ算出し、表層について算出した個別吸光度比の相加平均を吸光度比とする。
ポリスチレン系樹脂比率(質量%)は、後述の検量線に基づいて、吸光度比(D698/D1376)から算出する。
吸光度D698およびD1376は、Nicolet社製の測定装置;商品名「フーリエ変換赤外分光分析計 MAGNA560」と、ATRアクセサリーとしてSpectra−Tech社製「サンダードーム」を用いて次の条件で測定する。
高屈折率結晶種:Ge(ゲルマニウム)
入射角:45°±1°
測定領域:4,000cm-1〜675cm-1
測定深度の端数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:DTGS KBr
分解能:4cm-1
積算回数:32回
その他:試料と接触させずに赤外線吸収スペクトルを上記の条件で測定し、測定された赤外線吸収スペクトルをバックグラウンドとする。試料の測定時には、バックグラウンドが測定スペクトルに関与しないように、測定データを処理する。ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって、赤外吸収スペクトルの強度が変化する。そのため、ATRアクセサリーの「サンダードーム」で掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行う。
赤外吸収スペクトルから得られる698cm-1での吸光度D698は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、698cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D698は、1,280cm-1と860cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、710cm-1と685cm-1間の最大吸光度を意味する。
また、赤外吸収スペクトルから得られる1,376cm-1での吸光度D1376は、ポリプロピレン系樹脂に含まれる−C−CH3炭化水素のCH3の対称変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、1,376cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D1376は、1,414cm-1と1,340cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、1,400cm-1と1,350cm-1間の最大吸光度を意味する。
なお、前記検量線は、下記の式に近似される。
・D698/D1376<2.35の場合、
Y=−2.5119X1 2+22.966X1
・10.0>(D698/D1376)>2.35の場合、
Y=27.591Ln(X1)+16.225
X1=(D698/D1376)、Y=ポリスチレン系樹脂量(%)
発泡成形体の発泡倍数を次のように測定する。
得られた発泡成形体から10cm×10cm×5cm(体積V)の試験片を切り出し、その重量Wを小数以下2位で秤量する。
得られた発泡成形体の重量W及び発泡成形体の体積Vから、次式により、発泡倍数(倍)を算出する。
発泡成形体の発泡倍数(倍)=1/(発泡成形体の嵩密度)=1/(W/V)=V/W
発泡成形体の黒色度ΔE’を、JIS Z8729−2004「色の表示方法−L*a*b*表色系」に基づく色差測定により評価する。
測定には、色彩色差計(コニカミノルタ株式会社製、型式:CR−400)及び標準合わせに標準白板校正板(Y:94.3、x:0.3144、y:0.3208)を用いる。
具体的には、発泡成形体の縦横面の任意の10点について、測定面積をφ8mmとして測定し平均値を算出した明度L*値、色座標a*値及びb*値から、次式により黒色度としてΔE’を算出する。
ΔE’=L*+|a*|+|b*|
得られたΔE’から次の基準により黒色度を評価する。
ΔE’<30:良好(○)
ΔE’≧30:不良(×)
また、発泡成形体の色ムラ評価のために、上記任意の測定点10点における黒色度ΔE’の標準偏差σを算出する。
σ<1.0:良好(○)
σ≧1.0:不良(×)
発泡成形体の外観(色目/色ムラ/ノビ)を次の基準により評価する。
◎(非常に良好):成形表面100cm2あたりにΔE’≧30の複合樹脂予備発泡粒子が存在せず、成形体表面が均一に成形されて平滑である
○(良好) :成形体100cm2あたりにΔE’≧30の複合樹脂予備発泡粒子が1個以下であり、成形体表面が均一に成形されて平滑である
△(一部不良) :成形体100cm2あたりにΔE’≧30の複合樹脂予備発泡粒子が1個以上2個未満であり、成形体表面が均一に成形されて平滑である
×(不良) :成形体100cm2あたりにΔE’≧30の複合樹脂予備発泡粒子が2個以上である、または、成形体表面に複合樹脂予備発泡粒間の間隙やポリスチレン系樹脂の凝集物が確認される
(核樹脂粒子の作製)
ポリプロピレン系樹脂(株式会社プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロ(フィルム)」、銘柄「F−744NP」、融点140℃)1,900gと、黒色着色剤としてのファーネスブラック(三菱化学株式会社製、商品名「三菱カーボンブラック」、銘柄「中級カラー(MCF)#900」)100gとを、タンブラーミキサーに投入し、7分間混合した。
次いで、得られた混合物を押出機(東芝機械株式会社製、型式:SE−65)に供給し、加熱溶融して押出し、水中カット方式により造粒ペレット化することにより、ポリプロピレン系樹脂にファーネスブラックを5質量%含有させた球状のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。このときの樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
以下の実施例/比較例においては、重合、難燃化及び発泡性複合樹脂粒子の作製について、昇温/降温速度は1℃/minで行った。
(懸濁液の調製)
次いで、得られたポリプロピレン系樹脂粒子760gを、撹拌機付きの容量5リットルのオートクレーブ(日東高圧株式会社製)に入れ、更に水性媒体としての純水2,000g、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム20g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム150mg(水性媒体に対して75ppm)を加えた。得られた混合物を撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間25℃で保持し、その後70℃に昇温して懸濁液とした。
次いで、得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド0.7gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体320gを30分掛けて滴下して、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド3.6g及び油溶性重合禁止剤としての2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)387mg(スチレン単量体に対して450ppm)を溶解させて調製しておいたスチレン単量体860gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、複合樹脂粒子を得た。
次いで、反応液の温度を60℃に降温(冷却)し、反応液中に、難燃剤としてのトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成株式会社製)60gと、難燃助剤としての2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ株式会社製)10gとを投入した。投入後、反応液を140℃に昇温し、同温度、撹拌下で4時間保持し、複合樹脂粒子を難燃化処理した。
次いで、反応液を25℃まで冷却した後、20%塩酸水溶液を用いて酸洗浄を行うことによって分散剤を除去し、オートクレーブから複合樹脂粒子2,000gを取り出した。
次いで、取り出した複合樹脂粒子2,000gと水2,000gとを、再び撹拌機付きの容量5リットルのオートクレーブに投入し、更に発泡剤としてのブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)300gを注入した。注入後、その混合物を70℃に昇温し、同温度、撹拌下で4時間保持した。
その後、混合物を25℃まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出し、脱水乾燥した後に発泡性複合樹脂粒子2,100gを得た。
次いで、得られた発泡性複合樹脂粒子を、缶容量40リットルの予備発泡機(笠原工業株式会社製、型式:PSX40)に1,000g投入し、缶内にゲージ圧力0.04MPaの水蒸気を導入して加熱し、嵩発泡倍数42倍に予備発泡させ、複合樹脂予備発泡粒子を得た。
次いで、得られた予備発泡粒子を、1日間25℃に放置した後、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの内寸のキャビティを有する成形型のキャビティ内に充填し、成形型に0.23MPaの水蒸気を50秒間導入して加熱し、その後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。
得られた複合樹脂発泡成形体を用いて、発泡倍数、黒色度及び外観を評価したところ、黒色度が良好で、色のバラツキが小さかった。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(第2の重合)における油溶性重合禁止剤としての2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)387mg(スチレン単量体に対して450ppm)を568mg(660ppm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(懸濁液の調製)水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム150mg(水性媒体に対して75ppm)を335mg(水性媒体に対して168ppm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(懸濁液の調製)水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム150mg(水性媒体に対して75ppm)を64mg(水性媒体に対して32ppm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(第2の重合)における油溶性重合禁止剤としての2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)387mg(スチレン単量体に対して450ppm)を282mg(スチレン単量体に対して328ppm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
下記の工程以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(懸濁液の調製)
実施例1の(核樹脂粒子の作製)と同様にして得られたポリプロピレン系樹脂粒子600gを、撹拌機付きの容量5リットルのオートクレーブ(日東高圧株式会社製)に入れ、更に水性媒体としての純水2,000g、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム20g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム150mg(水性媒体に対して75ppm)を加えた。得られた混合物を撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間25℃で保持し、その後70℃に昇温して懸濁液とした。
次いで、得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド0.5gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体252gを30分掛けて滴下して、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド4.2g及び油溶性重合禁止剤としての2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)517mg(スチレン単量体に対して450ppm)を溶解させて調製しておいたスチレン単量体1148gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、複合樹脂粒子を得た。
下記の工程以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(懸濁液の調製)
実施例1の(核樹脂粒子の作製)と同様にして得られたポリプロピレン系樹脂粒子1000gを、撹拌機付きの容量5リットルのオートクレーブ(日東高圧株式会社製)に入れ、更に水性媒体としての純水2,000g、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム20g、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム150mg(水性媒体に対して75ppm)を加えた。得られた混合物を撹拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間25℃で保持し、その後70℃に昇温して懸濁液とした。
次いで、得られた懸濁液中に、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド0.8gを溶解させて調製しておいたスチレン単量体420gを30分掛けて滴下して、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。次に、その反応液を140℃に昇温し、同温度で2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合させた。
次いで、反応液をポリプロピレン系樹脂粒子中のポリプロピレン系樹脂の融点より15℃低い125℃に降温(冷却)し、反応液に界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.7gを加えた。その後、予め重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド3.0g及び油溶性重合禁止剤としての2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)261mg(スチレン単量体に対して450ppm)を溶解させて調製しておいたスチレン単量体580gを4時間掛けて滴下し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合させた。滴下終了後、同温度で1時間保持し、その後、反応液を140℃に昇温し、同温度で3時間保持して重合を完結させ、複合樹脂粒子を得た。
(第2の重合)における油溶性重合禁止剤の添加を、(第1の重合)におけるスチレン単量体320gに対して144mg(スチレン単量体に対して450ppm)にしたこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(難燃化)の工程を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(懸濁液の調製)において水溶性重合禁止剤を添加せず、(第2の重合)において油溶性重合禁止剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(第2の重合)において油溶性重合禁止剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
(懸濁液の調製)において水溶性重合禁止剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、複合樹脂予備発泡粒子及び発泡成形体を得て、それらを評価した。
以上の得られた結果を、原料及び製造条件と共に表1に示す。
Claims (6)
- カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して100〜400質量部のポリスチレン系樹脂を含むカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法であり、
(A)分散剤を含む水性媒体中に、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させて懸濁液を得る懸濁液の調製工程、
(B)次いで、得られた懸濁液にスチレン系単量体と重合開始剤とを加え、該スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して、前記カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させ、得られた反応液を加熱して、該スチレン系単量体を重合させる第1の重合工程、
(C)次いで、得られた反応液にスチレン系単量体と重合開始剤とをさらに加え、前記カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子に該スチレン系単量体を吸収させつつ該スチレン系単量体を重合させて、カーボンブラック含有複合樹脂粒子を得る第2の重合工程を含み、かつ前記工程(C)までの前記懸濁液または反応液に、重合禁止剤として水溶性重合禁止剤と油溶性重合禁止剤とを存在させることを特徴とするカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法。 - 前記水溶性重合禁止剤が前記工程(A)の懸濁液または前記工程(B)の反応液に添加され、かつ前記油溶性重合禁止剤が前記工程(C)の反応液に添加される請求項1に記載のカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法。
- 前記水溶性重合禁止剤の添加量が前記水性媒体に対して10〜400ppmであり、前記油溶性重合禁止剤の添加量が前記スチレン単量体に対して100〜1000ppmである請求項1または2に記載のカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法。
- 前記水溶性重合禁止剤が亜硝酸ナトリウムであり、前記油溶性重合禁止剤が2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)である請求項1〜3のいずれか1つに記載のカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法。
- (D)前記工程(C)で得られた反応液に難燃剤及び難燃助剤を添加し、加熱処理して前記カーボンブラック含有複合樹脂粒子を難燃化する難燃化処理工程をさらに含む請求項1〜4のいずれか1つに記載のカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法。
- 前記難燃剤が前記カーボンブラック含有複合樹脂粒子に対して1.5〜6.0質量%のトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネートであり、難燃助剤が前記カーボンブラック含有複合樹脂粒子に対して0.1〜2.0質量部の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンある請求項5に記載のカーボンブラック含有複合樹脂粒子の製造方法。
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