JP2015186450A - 微生物を用いた有機化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微生物を用いて有機化合物を生産する際、特に、当該有機化合物が高濃度に蓄積した条件下において生産速度を向上させ、有機化合物を効率よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】有機化合物生産能を有する微生物またはその処理物を、水性媒体中、ヒドロキシアセトンの存在下で、糖類含有原料に作用させることにより有機化合物を生産させる工程(以下、「発酵工程」という)を有することを特徴とする、有機化合物の製造方法。前記糖類含有原料が、ヒドロキシアセトンを含有する原料であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、微生物を用いた効率的な有機化合物の製造方法に関するものである。
糖類を原料とした有機化合物の発酵生産プロセスは、広く利用されており、また前記各プロセスを経て得られた生産物は、種々の工業原料として利用されている。
特許文献1には、微生物を用いたコハク酸発酵生産において、水性媒体中のコハク酸アルカリ金属塩の濃度を特定の範囲とし、次いでアンモニア及び/又はアンモニウム塩を添加することにより、コハク酸高濃度条件における生産速度を向上させる方法が開示されている。
特許文献2には、グリセロールを原料とした嫌気発酵において、ヒドロキシアセトンを添加することによりコハク酸生産速度を向上させる方法が開示されている。グリセロールは、グルコースなどの一般的な糖類に比べて高度に還元された有機原料であるため、大腸菌に消費されにくい。そのため、特許文献2では、ヒドロキシアセトンを1,2−プロパンジオールへ変換して還元力を消費する代謝経路を活性化することで大腸菌のグリセロールの消費を促進させ、生産性を向上させている。
非特許文献1には、微生物を用いたコハク酸発酵生産において、ニュートラルレッド等の電子伝達体となる化合物を添加することにより、還元力を供給し、コハク酸生産性を向上させる方法が開示されている。
国際公開WO2013/069786パンフレット 特表2009−532037号公報
Journal of Bacteriology,1999,181(8),p2403−2410
微生物を用いて有機化合物を生産する場合には、その有機化合物を高濃度に蓄積させることが求められるが、その有機化合物が高濃度に蓄積すると、浸透圧増加によるストレス、生成物阻害による代謝活性低下、それら環境変化に伴う細胞内の酸化還元バランスの悪化などの影響により、その有機化合物が高濃度に蓄積するに従って生産速度が低下するという問題がある。
特許文献1では、ヒドロキシアセトンを添加することについては記載も示唆もなく、また、特許文献1に記載の方法は、原料以外のものから還元力を供給しているわけではないため、生産性向上に改善の余地があるものと考えられる。
特許文献2では、原料としてグリセロールを用いた場合を対象とした発明であり、原料として一般的な糖類を用いた場合については検討がなされていない。また、特許文献2では、ヒドロキシアセトンを添加することで、大腸菌のグリセロールの消費を促進している。即ち、添加されたヒドロキシアセトンは1,2−プロパンジオールへ変換され、これにより、還元力の消費が起こっている。しかし、微生物の細胞内の酸化還元バランスの調整、特に、還元力の供給はできていないものと考えられる。
非特許文献1では、ニュートラルレッド等の化合物を添加し、還元力を供給しているが、これらの化合物は還元力を消費する代謝反応に供されることはないため、還元力の供給と消費のバランスを調節することはできない。また、非特許文献1では、還元力が比較的充足している生産初期から還元力を供給することになるため、低濃度蓄積時には還元力の供給が過剰になり、一方で還元力が不足する高濃度蓄積時に還元力の供給が不十分となる可能性もある。
本発明の課題は、微生物を用いて有機化合物を生産する際、特に、当該有機化合物が高濃度に蓄積した条件下において生産速度を向上させ、有機化合物を効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、微生物を用いた有機化合物の生産をヒドロキシアセトンの存在下で行なうことで、還元力の調節が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
ヒドロキシアセトンは、微生物の代謝反応により、1,2−プロパンジオール、またはメチルグリオキサールへ変換されるので、還元力を消費するだけではなく、供給することもできる。本発明は、このヒドロキシアセトンの効果が、有機化合物が高濃度に蓄積した条件下であっても得られるという知見に基づくものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[11]に存する。
[1]有機化合物生産能を有する微生物またはその処理物を、水性媒体中、ヒドロキシアセトンの存在下で、糖類含有原料に作用させることにより有機化合物を生産させる工程(以下、「発酵工程」という)を有することを特徴とする、有機化合物の製造方法。
[2]前記糖類含有原料が、ヒドロキシアセトンを含有する原料であることを特徴とする、[1]に記載の有機化合物の製造方法。
[3]前記糖類含有原料が、リグノセルロース分解原料であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の有機化合物の製造方法。
[4]前記糖類含有原料が、スクロース含有原料であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の有機化合物の製造方法。
[5]前記発酵工程を、嫌気的雰囲気下で行うことを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[6]前記水性媒体が、炭酸イオン、重炭酸イオン、及び二酸化炭素ガスからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[7]前記有機化合物が、アルコール類、アミン類、カルボン酸類、およびフェノール類からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[8]前記有機化合物が、ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て得られる有機化合物であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[9]前記微生物が、ヒドロキシアセトンを1,2−プロパンジオールに変換する活性、およびヒドロキシアセトンをメチルグリオキサールに変換する活性を有する微生物であることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[10]前記微生物が、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、マンヘミア(Mannheimia)属細菌、バスフィア(Basfia)属細菌、ザイモモナス(Zymomonas)属細菌、ザイモバクター(Zymobacter)属細菌、糸状菌、および酵母菌からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
[11]前記発酵工程で得られる前記有機化合物を精製する工程をさらに有することを特徴とする、[1]〜[10]のいずれかに記載の有機化合物の製造方法。
本発明によれば、目的とする有機化合物が高濃度に蓄積した条件下であっても、微生物における前記有機化合物の生産速度を向上させることができる。
ヒドロキシアセトンの代謝経路を示す。
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
本発明は、有機化合物生産能を有する微生物またはその処理物を、水性媒体中、ヒドロキシアセトンの存在下で、糖類含有原料に作用させることにより有機化合物を生産させる工程(以下、「発酵工程」という)を有することを特徴とする有機化合物の製造方法である(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)。以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
[糖類含有原料]
本発明における「糖類含有原料」の「糖」とは、一般的な糖類、即ち、アルデヒド基を一つ以上有するアルドース、またはケトン基を一つ以上有するケトースを意味する。
以下、糖類含有原料に含まれる糖類、糖類含有原料の由来、製法について説明する。
<糖類含有原料における糖類>
本発明における糖類は、特に限定はされず、いわゆる一般的な糖類を用いることができるが、微生物が炭素源としても活用することができる糖が好ましい。
具体的には、グリセルアルデヒド等の炭素数3の単糖(トリオース);エリトロース、トレオース、エリトルロース等の炭素数4の単糖(テトロース);、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、デオキシリボース、キシルロース、リブロース等の炭素数5の単糖(ペントース);アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、フコース、フクロース、ラムノース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等の炭素数6の単糖(ヘキソース);、セドヘプツロース等の炭素数7の単糖(ヘプトース);スクロース、ラクトース、マルトース、トレハノース、ツラノース、セロビオース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナオリゴ糖などのオリゴ糖類;デンプン、デキストリン、セルロース、ヘミセルロース、グルカン、ペントサン等の多糖類等が挙げられる。
上述した糖類の中でも、炭素数3以上7以下の単糖を構成成分として含む糖類が好ましい。これらの中でも、ヘキソース、ペントース、およびこれらを構成成分とする二糖類からなる群から選ばれる少なくとも一種がより好ましい。これらは自然界、植物の構成成分となっていることから豊富に存在し、原料の入手が容易なためである。
ヘキソースとしては、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトースが好ましく、グルコースがより好ましい。ペントースとしてはキシロース、アラビノースが好ましく、キシロースがより好ましい。ヘキソース、およびペントースを構成成分とする二糖類としては、スクロースが好ましい。グルコース、キシロース、スクロースは、自然界、植物の主な構成成分となっているため、原料の入手が容易なためである。
なお、本発明で用いる糖類含有原料には、1種類の糖が単独で含有されていてもよいし、2種類以上の糖が含有されていてもよい。
<糖類含有原料>
本発明で用いる糖類含有原料は、前記糖類を含んでいれば特に制限はないが、必要に応じて水等を含んでいてもよく、好ましくは水を含んでいてもよい。
本発明で用いる糖類含有原料としては、特に限定はされないが、例えば、1種類以上の前記糖類を水に溶解して水溶液としたもの、1種類以上の前記糖類を構成成分として含む植物体またはその一部を糖類まで分解したもの、1種類以上の前記糖類を構成成分として含む植物体またはその一部から糖類を抽出したもの等を用いることができる。具体的には、後述するようなリグノセルロース分解原料、スクロース含有原料、デンプン分解原料等が挙げられる。
本発明で用いる糖類含有原料は、必要に応じて水等で希釈して糖の濃度を下げて用いてもよいし、濃縮して糖の濃度を高めて用いてもよく、反応開始後に、糖類含有原料を追加することもできる。
本発明における糖類含有原料中に含まれる糖類の濃度としては、糖類含有原料の由来や、含有する糖の種類等によって大きく変動するため、特に限定されないが、発酵生産プロセスおよび化学変換プロセスの生産性を考慮して、通常0.1質量%以上、好ましくは2質量%以上であり、また、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。但し、糖類を2種類以上含む場合は、その合計の濃度を示す。
好ましい糖類含有原料として、リグノセルロース分解原料が挙げられる。即ち、糖類含有原料としては、リグノセルロースを分解したものが好ましい。
リグノセルロースとは、構造性多糖のセルロース、ヘミセルロース、及び芳香族化合物の重合体のリグニンから構成される有機物である。リグノセルロースは、通常、食用にはできず、通常であれば廃棄、焼却処理をされるものが多いため、安定して供給でき、資源を有効利用できる点で好ましい。
リグノセルロース分解原料としては、バガス、コーンストーバー、麦わら、稲わら、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、ササ、ススキ等の草本系バイオマスや、廃木材、オガ粉、樹皮、古紙等の木質系バイオマス等を好適に用いることができる。中でも、バガス、コーンストーバー、麦わらが好ましい。
上述のリグノセルロース分解原料から糖類含有原料を得る方法は、特に限定されないが、例えば、リグノセルロースに対して必要に応じて前処理を施した後、酵素、酸、亜臨界水、超臨界水等による加水分解、または熱分解を行う方法等が挙げられる。
また、好ましい糖類含有原料として、スクロース含有原料が挙げられる。即ち、糖類含有原料としては、スクロースを含むものが好ましい。
また、スクロースは、細胞中にスクロースを蓄積できる植物に含まれ、以下、このような植物のことを「スクロースを含む植物」という。スクロースを含む植物としては、サトウキビ、テンサイ、サトウカエデ、オウギヤシ、ソルガム等の砂糖の原料として使用されるもの等が挙げられ、中でも、サトウキビ、テンサイが好ましい。
スクロースを含む植物から糖類含有原料を得る方法は、特に限定されないが、例えば、当該植物を粉砕した後に圧搾または浸出を行なう方法等が挙げられる。本発明においては、このようにして得られたスクロースを含む植物の搾汁(例えば、サトウキビの場合はケーンジュース)、粗糖、廃糖蜜等も糖類含有原料として用いることができる。
また、好ましい糖類含有原料として、デンプン分解原料が挙げられる。即ち、糖類含有原料としては、デンプンを含むものが好ましい。
また、デンプンは、細胞中にデンプンを蓄積できる植物に含まれ、以下、このような植物のことを「デンプンを含む植物」という。デンプンを含む植物としては、キャッサバ、トウモロコシ、馬鈴薯、小麦、甘藷、サゴヤシ、米、クズ、カタクリ、緑豆、ワラビ、オオウバユリ等が挙げられ、中でも、キャッサバ、トウモロコシ、馬鈴薯、小麦が好ましい。
デンプンを含む植物から糖類含有原料を得る方法は、特に限定されないが、例えば、当該植物から抽出したデンプンを加水分解する方法等が挙げられる。
糖類含有原料から糖類を得た際に、副生成物や不純物として生じ得るカルボニル化合物の中にはヒドロキシアセトンが含まれる場合がある。このようなヒドロキシアセトンを含有する糖類含有原料を用いると、ヒドロキシアセトンを別途準備する必要がないか、あるいは、その使用量を削減できるので好ましい。
ヒドロキシアセトンを含有し得る糖類含有原料としては、リグノセルロース分解原料(例えば、リグノセルロースを加水分解または熱分解して得られた糖液)、スクロース含有原料(例えば、サトウキビ、テンサイ、ソルガムなどの植物を圧搾または浸出して得られたケーンジュース、粗糖、廃糖蜜)などが挙げられる。
また、本発明で用いる糖類含有原料は、本発明の効果が得られる範囲内で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、糖類含有原料から糖類を得た際に生じる、糖類以外の副生成物や不純物等が挙げられる。具体的には、糖類以外のカルボニル化合物、脂肪族共役アルコール等のアルコール化合物、キシリトール、リビトール、ソルビトール、イノシトール、グリセロール等の糖アルコール、リグニン由来のフェノール化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、窒素化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、硫酸イオン等の無機化合物等が挙げられる。但し、リグニン等に由来する固形物に関しては、取扱い性を考慮して濾過や吸着等を用いて除去することが好ましい。
[有機化合物生産能を有する微生物]
本発明で用いる有機化合物生産能を有する微生物(以下、「本発明の微生物」と称することがある。)は、目的とする有機化合物を生産する能力を有する微生物であれば、特に限定はされない本発明における「有機化合物生産能を有する微生物」とは、該微生物を培地中で培養したときに、該培地中に有機化合物を生成蓄積することができる微生物をいう。
<有機化合物>
本発明の微生物が生産する有機化合物としては、微生物が培地中に生成蓄積することができる有機化合物であれば特に限定されないが、具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等のアルコール類;1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン等のアミン類;酢酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、ピルビン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、シス−アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、2−オキソグルタル酸、2−オキソイソ吉草酸、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、レブリン酸、キナ酸、シキミ酸、アクリル酸、メタクリル等のカルボン酸類;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、メチオニン、ヒスチジン、システイン、セリン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、トリプトファン等のアミノ酸類;フェノール、カテコール、ハイドロキノン等のフェノール類;安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸類;イノシン、グアノシン等のヌクレオシド類、イノシン酸、グアニル酸等のヌクレオチド;イソブチレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。
これらの中でも、発酵生産を行なう際に公知の方法を採用でき、かつ、樹脂原料として使用可能であることから、アルコール類、アミン類、カルボン酸類、フェノール類が好ましく、炭素数2〜10の脂肪族アルコール類や、炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸類がより好ましい。
また、微生物によっては、本発明で用いるヒドロキシアセトンをピルビン酸へ変換し得るため、ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て得られる有機化合物が好ましい。糖類含有原料だけでなく、ヒドロキシアセトンも有機化合物生産のための炭素源として利用できるためである。
ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て得られる有機化合物としては、エタノール、ブタノール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類、1,5−ペンタメチレンジアミン等のアミン類、酢酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、シス−アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、2−オキソグルタル酸、2−オキソイソ吉草酸、イタコン酸等のカルボン酸類、アラニン、バリン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸類等が挙げられる。中でも、発酵生産性の観点から、エタノール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、コハク酸がさらに好ましい。
<微生物>
本発明で用いる微生物は、目的とする有機化合物を生産する能力を有する微生物であれば特に限定されないが、ヒドロキシアセトンを1,2−プロパンジオールに変換する活性、およびヒドロキシアセトンをメチルグリオキサールに変換する活性を有する微生物が好ましく、これらに加えてメチルグリオキサールをピルビン酸に変換する活性を有する微生物がさらに好ましい。
ヒドロキシアセトンを1,2−プロパンジオールに変換する活性とは、ヒドロキシアセトンを還元して1,2−プロパンジオールを生成する反応を触媒する活性をいう。この活性は、公知の方法、例えばNiimiらの方法(Niimi S, Suzuki N, Inui M, Yukawa H, Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, Vol.90(5), p1721-9)で測定することによって確認することができる。なお、この酵素反応は、通常、可逆反応であり、逆反応の活性を測定し、確認することもできる。
ヒドロキシアセトンをメチルグリオキサールに変換する活性とは、ヒドロキシアセトンを酸化してメチルグリオキサールを生成する反応を触媒する活性をいう。この活性は、公知の方法、例えばNiimiらの方法(Niimi S, Suzuki N, Inui M, Yukawa H, Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, Vol.90(5), p1721-9)で測定することによって確認することができる。なお、この酵素反応は、通常、可逆反応であり、逆反応の活性を測定し、確認することもできる。
メチルグリオキサールをピルビン酸に変換する活性とは、メチルグリオキサールを酸化してピルビン酸を生成する反応を触媒する活性をいう。この活性は、公知の方法、例えばRayらの方法(Ray S, Ray M, J. Biol. Chem., 1982, Vol.257(18), p10566-70)で測定することによって確認することができる。なお、この酵素反応は、通常、可逆反応であり、逆反応の活性を測定し、確認することもできる。
なお、上記のヒドロキシアセトンを1,2−プロパンジオールに変換する活性、およびヒドロキシアセトンをメチルグリオキサールに変換する活性を、本来的に有していない場合は、育種によりこれらの活性を付与することができる。
育種により有機化合物生産能を付与する手段としては、変異処理や遺伝子組換え処理などが挙げられ、有機化合物生合成経路における酵素遺伝子の発現強化や副生物生合成経路における酵素遺伝子の発現低減など、公知の方法を採用することができる。
本発明で用いる微生物の種類としては、特に限定されないが、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、マンヘミア(Mannheimia)属細菌、バスフィア(Basfia)属細菌、ザイモモナス(Zymomonas)属細菌、ザイモバクター(Zymobacter)属細菌、糸状菌、および酵母菌からなる群より選択される微生物であることが好ましい。これらの中でも、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、マンヘミア(Mannheimia)属細菌、バスフィア(Basfia)属細菌、ザイモバクター(Zymobacter)属細菌、糸状菌、および酵母菌からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはコリネ型細菌、大腸菌、酵母菌であり、特に好ましくはコリネ型細菌である。
上記コリネ型細菌は、これに分類されるものであれば特に制限されないが、コリネバクテリウム属に属する細菌、ブレビバクテリウム属に属する細菌、アースロバクター属に属する細菌などが挙げられ、このうち好ましくは、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)またはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に分類される細菌である。
本発明で使用可能なコリネ型細菌の特に好ましい具体例としては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233(FERM BP−1497)、同MJ−233 AB−41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネスATCC6872、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC31831、およびブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869等が挙げられる。なお、ブレビバクテリウム・フラバムは、現在、コリネバクテリウム・グルタミカムに分類される場合もあることから(Lielbl W, Ehrmann M, Ludwig W, Schleifer KH, Int J Syst Bacteriol., 1991, Vol.41, p255-260)、本発明においては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株、およびその変異株MJ−233 AB−41株はそれぞれ、コリネバクテリウム・グルタミカムMJ−233株およびMJ−233 AB−41株と同一の株とする。
上記ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233は、1975年4月28日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP−1497の受託番号で寄託されている。
本発明で使用可能な大腸菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等が挙げられる。また、本発明で使用可能なアナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌としては、アナエロビオスピリラム・サクシニシプロデュセン(Anaerobiospirillum succiniciproducens)等が挙げられる
また、本発明に使用可能なアクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌としては、アクチノバチルス・サクシノジェネス(Actinobacillus succinogenes)等が挙げられる。また本発明に使用可能なマンヘミア(Mannheimia)属細菌としては、バスフィア・サクシニシプロデュセン(Mannheimia succiniciproducens)等が挙げられる。
また本発明で使用可能なバスフィア(Basfia)属細菌としては、バスフィア・サクシニシプロデュセン(Basfia succiniciproducens)等が挙げられる。また、本発明で使用可能なザイモモナス(Zymomonas)属細菌としては、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)等が挙げられる。また、本発明で使用可能なザイモバクター(Zymobacter)属細菌としては、ザイモバクター・パルメ(Zymobacter palmae)等が挙げられる。
また本発明で使用可能な糸状菌としては、Aspergillus属、Penicillium属、Rhizopus属等が挙げられる。このうち、Aspergillus属では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)等が挙げられ、Penicillium属では、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ペニシリウム・シンプリシシマム(Penicillium simplicissimum)等が挙げられる。また、Rhizopus属では、リゾパス・オリゼー(Rhizopus oryzae)等が挙げられる。
また、本発明で使用可能な酵母菌としては、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Shizosaccharomyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces)、ヤロウィア属(Yarrowia)、チゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)が挙げられる。
上記サッカロミセス属(Saccharomyces)としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・バイアヌス(Saccharomyces bayanus)等が挙げられる。また、上記シゾサッカロミセス属(Shizosaccharomyces)としては、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等が挙げられる。また、上記カンジダ属(Candida)としては、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)等が挙げられる。また、上記ピキア属(Pichia)としては、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)等が挙げられる。
また上記クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces)としては、クルイウェロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイウェロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイウェロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)等が挙げられる。また上記ヤロウィア属(Yarrowia)としては、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)等が挙げられる。また上記チゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)としては、チゴサッカロミセス・バイリイ(Zygosaccharomyces bailii)、チゴサッカロミセス・ロウキシ(Zygosaccharomyces rouxii)等が挙げられる。
上記微生物は、野生株だけでなく、UV照射やNTG処理等の通常の変異処理により得られる変異株、細胞融合若しくは遺伝子組換え法などの遺伝学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株であってもよい。
本発明で用いる微生物は、本来的に有機化合物生産能を有する微生物であっても、育種により有機化合物生産能を付与したものであってもよい。
例えば、上述した微生物にコハク酸、フマル酸、リンゴ酸等のカルボン酸生産能を付与したい場合は、後述するようなラクテートデヒドロゲナーゼ活性を低減する改変、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性を増強する改変などを必要に応じて行なう。また、上記の微生物にエタノール、ブタノール、ブタンジオール等のアルコール生産能を付与したい場合は、後述するようなラクテートデヒドロゲナーゼ活性を低減する改変、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を増強する改変などを必要に応じて行なう。
以下、製造の目的とする有機化合物の種類で場合分けをして、本発明で用いる微生物について具体的に説明する。
目的とする有機化合物がカルボン酸である場合は、ラクテートデヒドロゲナーゼ(以下、LDHとも呼ぶ)活性が低減するように改変された微生物を用いることが好ましい。ここで、「LDH活性」とは、ピルビン酸を還元して乳酸を生成する反応を触媒する活性(EC:1.1.1.27)をいう。「LDH活性が低減された」とは、非改変株と比較してLDH活性が低下していることをいう。LDH活性は非改変株と比較して、単位菌体重量当たり30%以下に低下していることが好ましく、10%以下に低下していることがより好ましい。また、LDH活性は完全に消失していてもよい。LDH活性が低下したことは、公知の方法、例えばKanarekらの方法(Kanarek L, Hill RL, J Biol Chem., 1964, Vol.239, p4202-4206)によりLDH活性を測定することによって確認することができる。
LDH活性が低減した株は、上述した微生物を親株として用い、N−メチル−N’−ニトローN−ニトロソグアニジン(NTG)や亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、LDH活性が低減した株を選択することによってそれぞれ得ることができる。 また、LDHをコードする遺伝子を用いて改変してもよい。具体的には、染色体上のldh遺伝子を破壊したり、プロモーターやシャインダルガルノ(SD)配列等の発現調節配列を改変したりすることなどによって達成される。
LDH活性が低減した株の具体的な作製方法としては、染色体への相同組換えによる方法(特開平11−206385号公報等参照)や、sacB遺伝子を用いる方法(Schafer A, Tauch A, Jager W, Kalinowski J, Thierbach G, Puhler A, Gene 1994 Vol.145(1), p69-73)等が挙げられる。
また、目的とする有機化合物がカルボン酸である場合は、ピルビン酸カルボキシラーゼ(以下、PCとも呼ぶ)活性が増強するように改変された微生物であってもよい。ここで、「PC活性」とは、ピルビン酸をカルボキシル化してオキサロ酢酸を生成する反応を触媒する活性(EC:6.4.1.1)をいう。「PC活性が増強された」とは、非改変株と比較してPC活性が上昇していることをいう。PC活性は非改変株と比較して、単位菌体重量当たり1.5倍以上に増加していることが好ましく、3倍以上に増加していることがより好ましい。PC活性が増強されたことは、公知の方法、例えばFisherらの方法(Fisher SH, Magasanik B, J Bacteriol., 1984, Vol.158(1), p55-62)により、PC活性を測定することによって確認することができる。
PC活性が増強した株は、上述した微生物を親株として用い、N−メチル−N’−ニトローN−ニトロソグアニジン(NTG)や亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、PC活性が増強した株を選択することによってそれぞれ得ることができる。また、PCをコードする遺伝子を用いて改変してもよい。具体的には、pc遺伝子のコピー数を高めることによって達成でき、コピー数を高めることは、プラスミドを用いたり、公知の相同組換え法によって染色体上で多コピー化させたりすることなどによって達成できる。なお、PC活性の増強は、染色体上またはプラスミド上でpc遺伝子のプロモーターへの変異導入、より強力なプロモーターへの置換などによって高発現化させることによっても達成できる。
PC活性の増強に用いるpc遺伝子としては、PC活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の遺伝子を挙げることができる。
さらに、コリネ型細菌以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のpc遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のpc遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてPC活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
上記のようにして単離されたPCをコードする遺伝子を公知の発現ベクターに発現可能に挿入することにより、PC発現ベクターが提供される。この発現ベクターで形質転換することにより、PC活性増強株を得ることができる。あるいは、相同組換えなどによって、宿主微生物の染色体DNAにPCをコードするDNAを発現可能に組み込むことによってもPC活性増強株を得ることができる。なお、形質転換、相同組換えは当業者に知られた通常の方法に従って行うことができる。
染色体上またはプラスミド上にPC遺伝子を導入する場合には、適当なプロモーターを該遺伝子の5’−側上流に、より好ましくはターミネーターを3’−側下流にそれぞれ組み込む。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターであれば特に限定されず、pc遺伝子自身のプロモーターおよびターミネーターであってもよいし、他のプロモーターおよびターミネーターに置換してもよい。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーターおよびターミネーターなどに関しては、例えば「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」などに詳細に記述されている。
目的とする有機化合物がアルコールである場合は、カルボン酸製造方法のときと同様、LDH活性が低減するように改変された微生物を用いることが好ましい。LDH活性が低減した株は、上述の方法と同様にして作製することができる。
また、目的とする有機化合物がアルコールである場合は、アルコールデヒドロゲナーゼ(以下、ADHとも呼ぶ)活性が増強するように改変された微生物であってもよい。ここで、「ADH活性」とは、アルデヒドを還元してアルコールを生成する反応を触媒する活性(EC:1.1.1.1、1.1.1.2)をいう。「ADH活性が増強された」とは、非改変株と比較してADH活性が上昇していることをいう。ADH活性は非改変株と比較して、単位菌体重量当たり1.5倍以上に増加していることが好ましく、3倍以上に増加していることがより好ましい。ADH活性が増強されたことは、公知の方法、例えばKotrbova−Kozakらの方法(Kotrbova-Kozak A, Kotrba P, Inui M, Sajdok J, Yukawa H, Appl Microbiol Biotechnol., 2007, Vol.76(6),p1347-56)により、ADH活性を測定することによって確認することができる。
ADH活性が増強した株は、上述のPC活性を増強する方法と同様にして作製することができる。
ADH活性の増強に用いるadh遺伝子としては、ADH活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)由来のadhB遺伝子、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhE2遺伝子を挙げることができる。
さらに、上記以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のadh遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のadh遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてADH活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
なお、本発明に用いる微生物は、有機化合物生産能を付与するための改変のうちの2種類以上の改変を組み合わせて得られる微生物であってもよい。複数の改変を行う場合、その順番は問わない。
また、本発明の製造方法においては、本発明の微生物の処理物を使用することもできる。微生物の処理物としては、例えば、上述した本発明の微生物の菌体をアクリルアミド、カラギーナン等で固定化した固定化菌体、菌体を破砕した破砕物、その遠心分離上清、またはその上清を硫安処理等で部分精製した画分等が挙げられる。
[有機化合物の製造方法]
本発明の製造方法は、本発明の微生物またはその処理物を水性媒体中、ヒドロキシアセトン存在下で、糖類含有原料に作用させることにより、有機化合物を生産させる工程(以下、「発酵工程」という。)を含むが、前記発酵工程の後に、生産された有機化合物を回収する工程(以下、「回収工程」という。)を有することが好ましい。
本発明の製造方法に本発明の微生物を用いるに当たっては、寒天培地等の固体培地で斜面培養したものを直接用いてもよいが、発酵工程に先立ち、必要に応じて上記微生物を予め液体培地で培養したものを用いてもよい。即ち、後述する種培養や本培養を行なうことで、本発明の微生物を予め増殖させた後に、発酵工程を行なうことができる。
なお、後述する種培養や本培養と、後述する発酵工程は、区別することなく、同時に行なうこともできる。また、種培養または本培養した微生物を反応液中で増殖させながら、ヒドロキシアセトン存在下で糖類含有原料と反応させることによって有機化合物を生産させることもできる。
<種培養>
種培養は、本培養に供する前記微生物の菌体を調製するために行なうものである。種培養に用いる培地は、微生物の培養に用いられる通常の培地を用いることができるが、窒素源や無機塩などを含む培地であることが好ましい。ここで、窒素源としては、本微生物が資化して増殖できる窒素源であれば特に限定されないが、具体的には、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物等が挙げられる。無機塩としては各種リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等の金属塩が用いられる。また、ビオチン、チアミン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加する。
種培養においては、必要に応じて、前記培地に炭素源を添加してもよい。種培養に用いる炭素源としては、前記微生物が資化して増殖し得るものであれば特に限定されないが、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、スクロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセロール、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、スクロース、またはフルクトースが好ましく、特にグルコースまたはスクロースが好ましい。これらの炭素源は、単独で添加してもよいし、組み合わせて添加してもよい。
種培養は、一般的な生育至適温度で行なうことが好ましい。一般的な生育至適温度とは、有機化合物の生産に用いられる条件において最も生育速度が速い温度のことを言う。具体的な培養温度としては、通常25℃〜40℃であり、30℃〜37℃が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常25℃〜35℃であり、28℃〜33℃がより好ましく、約30℃が特に好ましい。
種培養は、一般的な生育至適pHで行なうことが好ましい。一般的な生育至適pHとは、有機化合物の生産に用いられる条件において最も生育速度が速いpHのことを言う。具体的な培養pHとしては、通常pH4〜10であり、pH6〜8が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常pH6〜9であり、pH6.5〜8.5が好ましい。
また、種培養の培養時間は、一定量の菌体が得られる時間であれば特段の制限はないが、通常6時間以上96時間以下である。また、種培養においては、通気したり攪拌したりして、酸素を供給することが好ましい。
種培養後の菌体は、後述する本培養に用いることができるが、種培養については省略してもよく、寒天培地等の固体培地で斜面培養したものを直接本培養に用いてもよい。また、必要に応じて、種培養を何度か繰り返し行ってもよい。
<本培養>
本培養は、後述する有機化合物生産反応に供する前記微生物菌体を調製するために行なうものであり、主として菌体量を増やすことを目的とする。上述の種培養を行う場合は、種培養により得られた菌体を用いて本培養を行う。
本培養に用いる培地は、微生物の培養に用いられる通常の培地を用いることができるが、窒素源や無機塩などを含む培地であることが好ましい。ここで、窒素源としては、本微生物が資化して増殖できる窒素源であれば特に限定されないが、具体的には、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物が挙げられる。無機塩としては各種リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等の金属塩が用いられる。また、ビオチン、チアミン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加する。また、培養時の発泡を抑えるために、培地には市販の消泡剤を適量添加しておくことが好ましい。
また、本培養においては、前記培地に炭素源を添加することが好ましい。本培養に用いる炭素源としては、前記微生物が資化して増殖し得るものであれば特に限定されないが、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、スクロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセロール、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、スクロース、またはフルクトースが好ましく、特にグルコースまたはスクロースが好ましい。
また、前記発酵性糖質を含有する澱粉糖化液、糖蜜なども使用され、前記発酵性糖質がサトウキビ、甜菜、サトウカエデ等の植物から搾取した糖液であるものが好ましい。
これらの炭素源は、単独で添加してもよいし、組み合わせて添加してもよい。
前記炭素源の使用濃度は特に限定されないが、増殖を阻害しない範囲で添加するのが有利であり、培養液に対して、通常0.1〜10%(W/V)、好ましくは0.5〜5%(W/V)の範囲内で用いることができる。また、増殖に伴う前記炭素源の減少にあわせ、炭素源を追加で添加してもよい。
また、本培養は、一般的な生育至適温度で行なうことが好ましい。具体的な培養温度としては、通常25℃〜40℃であり、30℃〜37℃が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常25℃〜35℃であり、28℃〜33℃がより好ましく、約30℃が特に好ましい。
また、本培養は、一般的な生育至適pHで行なうことが好ましい。具体的な培養pHとしては、通常pH4〜10であり、pH6〜8が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常pH6〜9であり、pH6.5〜8.5が好ましい。
また、本培養の培養時間は、一定量の菌体が得られる時間であれば特段の制限はないが、通常6時間以上96時間以下である。また、本培養においては、通気したり攪拌したりして、酸素を供給することが好ましい。
また、本培養においては、より有機化合物の製造に適した菌体の調製方法として、特開2008−259451号公報に記載の炭素源の枯渇と充足を短時間で交互に繰り返すように培養を行う方法も用いることができる。
本培養後の菌体は、後述する有機化合物生産反応に用いることができるが、培養液を直接用いてもよいし、遠心分離、膜分離等によって菌体を回収した後に用いてもよい。
<発酵工程>
発酵工程では、上述の有機化合物生産能を有する微生物またはその処理物を水性媒体中、ヒドロキシアセトン存在下で、糖類含有原料に作用させることにより、有機化合物を生産させる。この発酵工程で起こる反応を、以下、「有機化合物生産反応」という。
(ヒドロキシアセトン)
ヒドロキシアセトンは、微生物の代謝反応により、1,2−プロパンジオール、またはメチルグリオキサールへ変換される。1,2−プロパンジオールへ変換された場合は、NADH、NADPH等の電子伝達体が消費され、一方、メチルグリオキサールへ変換された場合は、逆にNADH、NADPH等の電子伝達体が生成する。つまり、細胞内においてヒドロキシアセトンが代謝される反応により、還元力を消費することも供給することもできる。
また、微生物によってはヒドロキシアセトンからメチルグリオキサールへ変換された後、さらにメチルグリオキサールからピルビン酸へ変換され得る。この代謝反応においても、NADH、NADPH等の電子伝達体が生成するため、還元力をさらに供給することができる。したがって、ヒドロキシアセトンがピルビン酸まで変換される場合は、還元力の供給をさらに効率よく行うことができる。
そのため、発酵工程において、ヒドロキシアセトンが存在することで、以下に説明するように、細胞内の酸化還元バランスを調節することができる。
発酵工程において、ヒドロキシアセトンが存在すると、糖類含有原料からの還元力供給が過剰となっているときには、ヒドロキシアセトンが1,2−プロパンジオールへ変換される反応が優勢となり、還元力を消費することができる。逆に、糖類含有原料からの還元力供給が不足しているときには、ヒドロキシアセトンがメチルグリオキサールへ変換される反応が優勢となり、還元力を供給することができる。さらに、糖類含有原料からの還元力供給が適切な状態のときは、ヒドロキシアセトンから1,2−プロパンジオールへ変換される反応とメチルグリオキサールへ変換される反応とが拮抗するように進行し、還元力の供給と消費のバランスを崩すことなく、適切な状態を維持することができる。
発酵工程においては、有機化合物の生産初期(低濃度蓄積時)には還元力が比較的充足しているが、生産後期(高濃度蓄積時)に還元力が不足する傾向が見られる。したがって、高濃度蓄積条件における生産速度を向上させるという効果を得るためには、生産後期の還元力が不足し始めるタイミングで還元力を供給することが重要となるが、本発明のようにヒドロキシアセトンの存在下で発酵工程を行なえば、上述したように自動的に酸化還元バランスの調整を行なうことができる。
微生物の発酵においては、通常、還元力の供給が不足し始めるタイミングを見極めた上で、例えば、非特許文献1のニュートラルレッド等の化合物を適量添加するのは困難であるので、従来の方法では、目的とする有機化合物が高濃度に蓄積した条件下において生産速度を向上させるという効果を得ることは非常に難しいことであった。
有機化合物生産反応開始時において、水性媒体中のヒドロキシアセトンの濃度は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されないが、水性媒体中で、通常0.01g/L以上、好ましくは3.0g/L以上、さらに好ましくは10g/L以上であり、また、通常100g/L以下、好ましくは50g/L以下、さらに好ましくは30g/L以下である。有機化合物生産反応中の水性媒体中のヒドロキシアセトンの濃度は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されないが、水性媒体中で、0.001g/L以上、好ましくは0.3g/L以上、さらに好ましくは1g/L以上であり、また、通常10g/L以下、好ましくは5g/L以下、さらに好ましくは3g/L以下である。
ヒドロキシアセトンは、水性媒体中へ直接添加すればよいが、これに加えて、あるいは、これに代えてヒドロキシアセトンを含有する糖類含有原料を用いることもできる。
また、ヒドロキシアセトンを水性媒体へ添加する場合のタイミングとしては、微生物の細胞内の酸化還元バランスを調節する機能を発揮できる範囲内であれば特に限定されず、例えば、発酵工程における有機化合物生産反応を開始する前までに予め水性媒体へ添加してもよいし、有機化合物生産反応を開始した後に添加してもよい。
(水性媒体)
また、水性媒体とは、発酵工程における有機化合物生産反応を行う水溶液のことであり、後述するように窒素源、無機塩などを含む水溶液であることが好ましい。当該水性媒体中で、前記微生物またはその処理物と糖類含有原料とを反応させることにより有機化合物生産反応を行うことができる。本明細書において、水性媒体とは、反応容器に含まれる液体全てを意味する。
水性媒体としては、例えば、微生物を培養するための培地であってもよいし、リン酸緩衝液等の緩衝液であってもよいが、反応液は窒素源や無機塩などを含む水溶液であることが好ましい。ここで、窒素源としては、本微生物が資化して有機化合物を生成させうる窒素源であれば特に限定されないが、具体的には、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物が挙げられる。無機塩としては各種リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等の金属塩が用いられる。また、ビオチン、チアミン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加する。また、反応時の発泡を抑えるために、反応液には市販の消泡剤を適量添加しておくことが好ましい。
また、水性媒体には、例えば上述した糖類含有原料、窒素源、無機塩などのほかに、炭酸イオン、重炭酸イオンまたは二酸化炭素ガス(炭酸ガス)を含有させることが好ましい。炭酸イオンまたは重炭酸イオンは、中和剤としても用いることのできる炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウムなどから供給されるが、必要に応じて、炭酸若しくは重炭酸またはこれらの塩或いは二酸化炭素ガスから供給することもできる。炭酸または重炭酸の塩の具体例としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等が挙げられる。
水性媒体中における炭酸イオンまたは重炭酸イオンの濃度は、通常1mM以上、好ましくは2mM以上、さらに好ましくは3mM以上であり、また、通常500mM以下、好ましくは300mM以下、さらに好ましくは200mM以下である。二酸化炭素ガスを含有させる場合は、水性媒体1L当たり通常50mg以上、好ましくは100mg以上、さらに好ましくは150mg以上の二酸化炭素ガスを含有させることが好ましく、一方、水性媒体1L当たり通常25g以下、好ましくは15g以下、さらに好ましくは10g以下の二酸化炭素ガスを含有させることが好ましい。
有機化合物生産反応中の水性媒体のpHは、用いる上記微生物の種類に応じて、その活性が最も有効に発揮される範囲に調整されることが好ましい。具体的には、コリネ型細菌を用いる場合には、反応液のpHを、通常5.5以上、好ましくは6以上、より好ましくは6.6以上、さらに好ましくは7.1以上であり、一方、通常10以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下とすることが好ましい。
水性媒体のpHは、生産される有機化合物が酸性物質である場合には、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア(水酸化アンモニウム)、またはそれらの混合物等を添加することによって調整することができる。生産される有機化合物が塩基性物質である場合には、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、それらの混合物等を添加すること、または二酸化炭素ガスを供給することによって調整することができる。
(糖類含有原料)
本発明で用いる糖類含有原料の種類および好ましい糖類含有原料の例は上述した通りである。
前記糖類含有原料の使用濃度は特に限定されないが、有機化合物の生成を阻害しない範囲で可能な限り高くすると生産性の点で有利であり、好ましい。水性媒体中に含まれる糖類含有原料の濃度は、そこに含まれる糖類の濃度で、水性媒体に対して、通常5%(W/V)以上、好ましくは10%(W/V)以上であり、一方、通常30%(W/V)以下、好ましくは20%(W/V)以下である。また、有機化合物の生産反応の進行に伴う前記糖類含有原料の減少にあわせて、糖類含有原料の追加で添加してもよい。
(その他の条件)
有機化合物生産反応に用いる微生物の菌体量は、特に限定されないが、湿菌体重量として、通常1g/L以上、好ましくは10g/L以上、より好ましくは20g/L以上であり、一方、通常700g/L以下、好ましくは500g/L以下、さらに好ましくは400g/L以下である。
有機化合物生産反応の時間は、特に限定はないが、通常1時間以上、好ましくは3時間以上であり、一方、通常168時間以下、好ましくは72時間以下である。
有機化合物生産反応の温度は、用いる前記微生物の生育至適温度と同じ温度で行ってもよいが、生育至適温度より高い温度で行うことが有利であり、通常2℃〜20℃、好ましくは7℃〜15℃高い温度で行う。具体的には、コリネ型細菌の場合には、通常35℃以上、好ましくは37℃以上、さらに好ましくは39℃以上であり、一方、通常45℃以下、好ましくは43℃以下、さらに好ましくは41℃以下である。有機化合物生産反応の間、常に35℃〜45℃の範囲とする必要はないが、全反応時間の50%以上、好ましくは80%以上の時間において、上記温度範囲にすることが望ましい。
有機化合物生成反応は、通気、攪拌して行ってもよいが、通気せず、酸素を供給しない嫌気的雰囲気下で行なうことが好ましい。ここでいう嫌気的雰囲気下は、例えば容器を密閉して無通気で反応させる、窒素ガス等の不活性ガスを供給して反応させる、二酸化炭素ガス含有の不活性ガスを通気する等の方法によって得ることができる。
本発明の有機化合物の製造方法は、特段の制限はないが、回分反応、半回分反応もしくは連続反応のいずれにも適用することができる。
<回収工程>
本発明は、上記の有機化合物生成反応により有機化合物が生成し、反応液中に蓄積させることができる。蓄積させた有機化合物は、常法に従って、水性媒体より回収する工程をさらに含んでいてもよい。具体的には、例えば、蓄積させた有機化合物がコハク酸、フマル酸、リンゴ酸等のカルボン酸である場合には、遠心分離、ろ過等により菌体等の固形物を除去した後、イオン交換樹脂等で脱塩し、その溶液から結晶化(晶析)あるいはカラムクロマトグラフィーにより精製するなどして、カルボン酸を回収することができる。蓄積させた有機化合物がエタノール、ブタノール、ブタンジオール等のアルコールである場合には、遠心分離、ろ過等により菌体等の固形物を除去した後、蒸留等で濃縮し、その溶液を膜脱水するなどして、アルコールを回収することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
LCの分析方法を以下に示す。
(液相クロマトグラフ(LC)分析−1)
ポンプ:日立ハイテクノロジーズ社製 L−2130
カラムオーブン:日立ハイテクノロジーズ社製 L−2350
UV検出器:日立ハイテクノロジーズ社製 L−2400
RI検出器:日立ハイテクノロジーズ社製 L−2490
カラム:信和化工社製 ULTRON PS−80H 8.0ID×300mmL
温度:60℃
溶離液:0.11質量%過塩素酸溶液 1.0mL/分
検出方法:UV(210nm),RI
注入量:10μL
(液相クロマトグラフ(LC)分析−2)
ポンプ:島津製作所社製 LC−10Ai
カラムオーブン:島津製作所社製 CTO−10A
UV検出器:島津製作所社製 SPD−10A
RI検出器:島津製作所社製 RID−10A
カラム:三菱化学社製 CK08EH 8.0ID×300mmL
温度:60℃
溶離液:0.055質量%過塩素酸溶液 0.8mL/分
検出方法:UV(280nm),RI
注入量:10μL
コハク酸、およびピルビン酸は前記LC分析−1により定量し、ヒドロキシアセトン、および1,2−プロパンジオールは前記LC分析−2で定量した。
前記LC分析−2では、UV(280nm)とRI検出とでヒドロキシアセトンと1,2−プロパンジオールのピークは重なる。ただし、ヒドロキシアセトンのみがUV吸収(280nm)を有するため、ヒドロキシアセトンはUV(280nm)で定量し、RI換算値を差し引いた上でRIから1,2−プロパンジオールを定量した。
(実施例1)
<ヒドロキシアセトン存在下でのコハク酸生産評価>
(A)種培養
A培地[尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・5水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、蒸留水1,000mLに溶解]1,000mLを、121℃、20分間で加熱滅菌し、室温まで冷やした後、200mLの三角フラスコに15mL入れ、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を600μl添加した。ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDH株(XylAB導入、PC増強、LDH破壊株:特願2013−161477)を接種して30℃で5.1時間振とう培養した。
(B)本培養
500mLの三角フラスコに100mLのA培地を入れ、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mL添加した後、上記(A)の種培養で得られた培養液を、O.D.(660nm)が0.02となるように接種し、30℃で、21.5時間振とう培養した。
(C)発酵工程(コハク酸生産反応)
上記(B)の本培養で得られた培養液を5,000×g、7分間の遠心分離により集菌し、菌体懸濁液[硫酸マグネシウム・7水和物:320mg、硫酸第一鉄・7水和物:13mg、硫酸マンガン・5水和物:13mg、リン酸(85%):410mg、水酸化カリウム(48%):540mg、蒸留水1000mLに溶解]にO.D.(660nm)が60になるように懸濁して菌体溶液を調製した。続いて、グルコース水溶液(500g/L):18g、蒸留水:44g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):66mg、塩酸チアミン(100mg/L):66mgを混合して、基質溶液を作成した。基質溶液にヒドロキシアセトン:1.1g、炭酸水素アンモニウム:960mg、菌体溶液を加え、嫌気的雰囲気下において40℃で反応させた(反応開始時のヒドロキシアセトンの濃度は、13.6g/Lであった)。なお、中和剤[アンモニア水(28%):97g、炭酸水素アンモニウム:32g、蒸留水250mLに溶解]を加えることでpHは7.3に維持した。その結果、16.8時間後のコハク酸蓄積量は3.74g(31.7mmol)、ピルビン酸量は0.48g(5.5mmol)、ヒドロキシアセトン量は0.30g(4.1mmol(3.3g/L))、1,2−プロパンジオール濃度は0.59g(7.8mmol)であり、24.1時間後のコハク酸蓄積量は4.69g(39.7mmol)、ピルビン酸量は0.48g(5.5mmol)、ヒドロキシアセトン量は0.10g(1.3mmol(1.0g/L))、1,2−プロパンジオール量は0.71g(9.3mmol)であった。
(比較例1)
コハク酸生産反応において、基質溶液にヒドロキシアセトンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の条件で行った。その結果、16.8時間後のコハク酸蓄積量は3.74g(31.7mmol)、ピルビン酸量は0.33g(3.8mmol)、ヒドロキシアセトン量は0g(0mmol)、1,2−プロパンジオール量は0g(0mmol)であり、24.1時間後のコハク酸蓄積量は4.02g(34.1mmol)、ピルビン酸量は0.25g(2.9mmol)、ヒドロキシアセトン量は0g(0mmol)、1,2−プロパンジオール量は0g(0mmol)であった。
実施例1、比較例1の結果として、コハク酸、ピルビン酸、ヒドロキシアセトン、1,2−プロパンジオールの量を表1に示した。
Figure 2015186450
実施例1、比較例1のコハク酸生産速度、ヒドロキシアセトン消費速度、1,2−プロパンジオール生産速度を表1の数値から算出し、表2に示した。
Figure 2015186450
表2より、ヒドロキシアセトンを添加した実施例1では、比較例1に対して生産初期(反応0時間から16.8時間)におけるコハク酸生産速度はほぼ同等であるが、生産後期(反応16.8時間から24.1時間)におけるコハク酸生産速度が3.4倍に向上した。
また、実施例1において、生産後期におけるヒドロキシアセトン消費速度が生産初期における速度の68%程度であるのに対して、生産後期における1,2−プロパンジオール生産速度は生産初期における速度のわずか43%程度と大幅に低下した。これは、生産後期ではヒドロキシアセトンが1,2−プロパンジオールへ変換される反応速度が大きく低下していることを示しており、その多くがメチルグリオキサールへ変換され、還元力を供給する反応が優勢になっていることが示唆された。
以上の結果より、ヒドロキシアセトン存在下でコハク酸生産反応を行うことによって、高濃度蓄積時における還元力の不足を解消し、生産速度が向上することが明らかとなった。
本発明の有機化合物の製造方法は、微生物の細胞内の酸化還元バランスを調節することによって高濃度蓄積条件における有機化合物の生産速度が向上することができ、高い生産効率で所望の有機化合物を製造することができる。

Claims (11)

  1. 有機化合物生産能を有する微生物またはその処理物を、水性媒体中、ヒドロキシアセトンの存在下で、糖類含有原料に作用させることにより有機化合物を生産させる工程(以下、「発酵工程」という)を有することを特徴とする、有機化合物の製造方法。
  2. 前記糖類含有原料が、ヒドロキシアセトンを含有する原料であることを特徴とする、請求項1に記載の有機化合物の製造方法。
  3. 前記糖類含有原料が、リグノセルロース分解原料であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の有機化合物の製造方法。
  4. 前記糖類含有原料が、スクロース含有原料であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の有機化合物の製造方法。
  5. 前記発酵工程を、嫌気的雰囲気下で行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
  6. 前記水性媒体が、炭酸イオン、重炭酸イオン、及び二酸化炭素ガスからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
  7. 前記有機化合物が、アルコール類、アミン類、カルボン酸類、およびフェノール類からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
  8. 前記有機化合物が、ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て得られる有機化合物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
  9. 前記微生物が、ヒドロキシアセトンを1,2−プロパンジオールに変換する活性、およびヒドロキシアセトンをメチルグリオキサールに変換する活性を有する微生物であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
  10. 前記微生物が、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、マンヘミア(Mannheimia)属細菌、バスフィア(Basfia)属細菌、ザイモモナス(Zymomonas)属細菌、ザイモバクター(Zymobacter)属細菌、糸状菌、および酵母菌からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
  11. 前記発酵工程で得られる前記有機化合物を精製する工程をさらに有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機化合物の製造方法。
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