JP2013141432A - コハク酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリマー原料として用いてポリマーを製造した場合に、ポリマーの着色の問題のない、高品質のポリマーを製造することができるコハク酸をバイオマス資源から効率的かつ安定的に製造する。
【解決手段】バイオマス資源から誘導された粗コハク酸組成物を、温風に直接接触させて乾燥する工程を有するコハク酸の製造方法であって、乾燥中のコハク酸の品温が60℃以上130℃となるように乾燥するコハク酸の製造方法。乾燥時間は、0.1時間以上10時間以下で、大気圧より高い圧力条件で乾燥することが好ましい。粗コハク酸組成物は、バイオマス資源に微生物を作用させて誘導されたものであって、1重量%以上20重量%以下の水を含有することが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】バイオマス資源から誘導された粗コハク酸組成物を、温風に直接接触させて乾燥する工程を有するコハク酸の製造方法であって、乾燥中のコハク酸の品温が60℃以上130℃となるように乾燥するコハク酸の製造方法。乾燥時間は、0.1時間以上10時間以下で、大気圧より高い圧力条件で乾燥することが好ましい。粗コハク酸組成物は、バイオマス資源に微生物を作用させて誘導されたものであって、1重量%以上20重量%以下の水を含有することが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は食品添加物、医薬原料、樹脂原料などとして有用なコハク酸の工業的製造方法に関する。
コハク酸は食品添加物、医薬原料、樹脂原料などとして工業的に広く用いられている。従来、コハク酸は、石油由来の無水マレイン酸又はマレイン酸を還元して製造されている。例えば、石化原料由来の無水マレイン酸又はマレイン酸を水溶液中で還元してコハク酸とした後、その水溶液を冷却晶析することによって結晶粒子としてコハク酸を得る方法(例えば、特許文献1参照)などが知られている。
これに対して、最近では、微生物を用いた発酵操作により、広い生物由来原料(即ち、バイオマス資源)から高い炭素収率でコハク酸を製造することが報告されている。例えば、コハク酸のカルシウム塩を硫酸で分解する方法(例えば、特許文献2参照)、イオン交換樹脂を用いる方法(例えば、特許文献3,4参照)、コハク酸アンモニウム塩に硫酸水素アンモニウムおよび/または硫酸を加えコハク酸と硫酸アンモニウム塩を生成させる方法(例えば、特許文献5参照)、電気透析を用いる方法(例えば、特許文献6参照)などが知られている。また、発酵操作で得られたコハク酸を含む溶液を触媒の存在下で水素化処理する方法(例えば、特許文献7参照)も提案されている。
なお、特許文献1〜6のいずれにおいても、回収したコハク酸結晶の乾燥方法に関しては詳細な記載がされておらず、まして、バイオマス資源から製造されたコハク酸をポリマー原料として得られるポリマーの着色の問題とコハク酸の乾燥条件については何らの検討もなされていない。
特許文献7には、バイオマス資源から得られたコハク酸の乾燥について、「加熱タイプにより温風で直接加熱する直接加熱式、蒸気などによる間接加熱式などを用いることができる。」「温風温度は、加熱面温度は通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃で行う。」といった記載がなされているが、この特許文献7においても、このコハク酸を原料とするポリマーの着色の問題とコハク酸の乾燥条件については何らの検討もなされておらず、実施例においては、70℃で7時間又は12時間真空乾燥することが記載されているのみである。
生物由来原料から製造されたコハク酸をポリマー原料として用いると、得られるポリマーが黄色く着色するという問題がある。
本発明は、ポリマー原料として用いてポリマーを製造した場合に、ポリマーの着色の問題のない、高品質のポリマーを製造することができるコハク酸をバイオマス資源から効率的かつ安定的に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、バイオマス資源から誘導された粗コハク酸組成物を特定の条件で温風に直接接触させて乾燥することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] バイオマス資源から誘導された粗コハク酸組成物を、温風に直接接触させて乾燥する工程を有するコハク酸の製造方法であって、乾燥中のコハク酸の品温が60℃以上130℃となるように乾燥する、コハク酸の製造方法。
[2] 乾燥中のコハク酸の品温が60℃以上130℃以下となるように、0.1時間以上10時間以下乾燥する、[1]に記載のコハク酸の製造方法。
[3] 粗コハク酸組成物が、バイオマス資源に微生物を作用させて誘導されたものである[1]または[2]に記載のコハク酸の製造方法。
[4] 粗コハク酸組成物が、該組成物に対して1重量%以上20重量%以下の水を含有する[1]から[3]のいずれかに記載のコハク酸の製造方法。
本発明の方法によれば、バイオマス資源から誘導された粗コハク酸組成物液から、ポリマー原料としても有用な、着色のない高品質のポリマーを製造することができる高純度のコハク酸を、効率的に且つ安定的に製造することができる。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
本発明のコハク酸の製造方法は、バイオマス資源から誘導された粗コハク酸組成物を、所定の条件で温風に直接接触させて乾燥することを特徴とする。
以下にバイオマス資源から粗コハク酸組成物を誘導する工程について説明する。
本発明に係る粗コハク酸組成物は、バイオマス資源から誘導された炭素源の微生物変換により得られるコハク酸及び/又はその塩を含む水溶液から、通常、後述の微生物除去工程、プロトン化工程、抽出工程、溶剤除去(濃縮)、晶析工程及び固液分離工程を経て得られる。
<バイオマス資源>
バイオマス資源としては、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは、木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣であり、最も好ましくはとうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシである。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素元素やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する。
バイオマス資源としては、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは、木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣であり、最も好ましくはとうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシである。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素元素やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する。
そしてこれらのバイオマス資源は、特に限定はされないが、例えば酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導される。その工程には、特に限定はされないが、例えば、バイオマス資源をチップ化する、削る、擦り潰す等の前処理による微細化工程が含まれる。必要に応じて、更にグラインダーやミルでの粉砕工程が含まれる。こうして微細化されたバイオマス資源は、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導されるが、その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸等の強酸での酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理等の化学的方法や、微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法、微生物や酵素処理による加水分解等の生物学的処理が挙げられる。
上記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、通常、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース、マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の脂肪酸、グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、セルロースが好ましい。
<微生物変換工程>
これらのバイオマス資源から誘導される炭素源からコハク酸が誘導される。具体的には、例えば、これらの炭素源を用いて、微生物変換による発酵法や加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応・還元反応等の反応工程を含む化学変換法ならびにこれらの発酵法と化学変換法の組み合わせによりコハク酸が合成されるが、これらの中でもコハク酸生産能を有する微生物を利用した微生物変換による発酵法が好ましい。
これらのバイオマス資源から誘導される炭素源からコハク酸が誘導される。具体的には、例えば、これらの炭素源を用いて、微生物変換による発酵法や加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応・還元反応等の反応工程を含む化学変換法ならびにこれらの発酵法と化学変換法の組み合わせによりコハク酸が合成されるが、これらの中でもコハク酸生産能を有する微生物を利用した微生物変換による発酵法が好ましい。
コハク酸生産能を有する微生物はコハク酸生産能を有する微生物であるかぎり特に制限されないが、エシェリヒア・コリ等の腸内細菌、バチルス属細菌、コリネ型細菌などが挙げられ、好気性微生物、通性嫌気性微生物または微好気性微生物を使用することが好ましい。
好気性微生物としては、コリネ型細菌(Coryneform Bacterium)、バチルス(Bacillus)属細菌、リゾビウム(Rhizobium)属細菌、アースロバクター(Arthrobacter)属細菌、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌、ノカルディア(Nocardia)属細菌、又はストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌などが挙げられ、コリネ型細菌がより好ましい。
コリネ型細菌は、これに分類されるものであれば特に制限されないが、コリネバクテリウム属に属する細菌、ブレビバクテリウム属に属する細菌又はアースロバクター属に属する細菌などが挙げられ、このうち好ましくは、コリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に分類される細菌が挙げられる。
コハク酸生産菌としては、ピルビン酸カルボキシラーゼ活性が増強され、ラクテートデヒドロゲナーゼ活性が低下した株を用いることが好ましい。
微生物変換における反応温度、圧力等の反応条件は、選択される菌体、カビなど微生物の活性に依存することになるが、コハク酸を得るための好適な条件を各々の場合に応じて選択すればよい。
微生物変換においては、pHが低くなると微生物の代謝活性が低くなったり、或いは微生物が活動を停止するようになり、製造歩留まりが悪化したり、微生物が死滅するため、通常には中和剤を使用する。通常はpHセンサーによって反応系内のpHを計測し、所定のpH範囲となるように中和剤の添加によりpHを調節する。pH値は、用いる菌体、カビ等の微生物の種類に応じて、その活性が最も有効に発揮される範囲に調整される。中和剤の添加方法については特に制限はなく、連続添加であっても間欠添加であってもよい。
中和剤としてはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。好ましくはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素である。なお上記アルカリ(土類)金属の水酸化物としてはNaOH、KOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2等、或いはこれらの混合物などが挙げられ、アルカリ(土類)金属の炭酸塩としては、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、NaKCO3等、或いはこれらの混合物などが挙げられる。
微生物変換後の発酵液は、その後の精製工程での操作性や効率性を考慮して適宜濃縮しても良い。濃縮方法としては、特に限定されないが、不活性ガスを流通させる方法、加熱により水を留去させる方法、減圧で水を留去させる方法ならびにこれらを組み合わせる方法などが挙げられる。また濃縮操作は、バッチ操作で行っても、連続操作で行っても良い。
尚、本発明の方法において発酵液を用いる場合、微生物を除去した後の発酵液を用いることが好ましい。微生物の除去方法は特に限定は無いが、沈降分離、遠心分離、濾過分離ならびにそれらを組み合わせた方法などが用いられる。工業的には遠心分離、膜濾過分離などの方法で行われる。遠心分離においては、遠心沈降、遠心濾過などを用いることができる。遠心分離において、その操作条件は特に限定されるものではないが、通常100G〜100,000Gの遠心力で分離される。またその操作は連続式でも、バッチ式でも使用できる。
また膜濾過分離においては、精密濾過および/または限外濾過等を使用することが出来る。膜の材質は特に限定は無く、例えばポリオレフィン、ポリスルフィン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等の有機膜でも、セラミック等の無機材質の膜でも使用できる。また操作方法として、デッドエンド型、クロスフロー型いずれでも用いることができる。膜濾過分離では、微生物が膜に目詰まりすることが多いので、遠心分離などで微生物を粗取りを行ってから膜濾過を行うなどの方法も用いられる。
上記のようにバイオマス資源から誘導される炭素源から微生物変換により得られたコハク酸は、通常水溶液中に溶解した状態で存在することになるが、コハク酸の一部が例えば析出などして固体として存在していても構わない。また、通常、微生物変換により得られたコハク酸を含有する水溶液は、微生物変換の際に用いた糖類やアミノ酸などを含有している。
<プロトン化工程>
上述のように発酵工程で中和剤を用いた場合には、コハク酸の塩が得られ、水溶液中に存在する場合には、得られたコハク酸の塩は水中に安定的に存在するため、塩からコハク酸へ変換することが好ましい。
なお、以下において、コハク酸及び/又はコハク酸塩を「コハク酸(塩)」と記載する。
上述のように発酵工程で中和剤を用いた場合には、コハク酸の塩が得られ、水溶液中に存在する場合には、得られたコハク酸の塩は水中に安定的に存在するため、塩からコハク酸へ変換することが好ましい。
なお、以下において、コハク酸及び/又はコハク酸塩を「コハク酸(塩)」と記載する。
すなわち、コハク酸塩に酸を加え、塩交換することでコハク酸に変換する。この変換を以下プロトン化と呼ぶ場合があり、この工程を以下プロトン化工程と呼ぶ場合がある。
プロトン化工程で用いる酸は、コハク酸塩と塩交換する必要があるので、通常はコハク酸より強い酸、すなわち酸解離定数pKaがコハク酸より小さい酸、通常はpKa<4なる酸を用いる。さらに用いる酸は有機酸よりも無機酸の方が好ましい。
コハク酸塩に無機酸を加えることで無機塩が副生する。例えば発酵操作で中和剤としてアンモニアを用いた場合、コハク酸はアンモニウム塩として存在するが、本工程で硫酸を用いた場合は、硫酸アンモニウムが副生塩として発生する。
酸添加量は用いる酸の強度にもよるが、通常はコハク酸塩を構成するカチオン量に対し0.1〜5倍等量程度の酸を添加する。通常、酸の添加はpHで調整する。pHはコハク酸の酸強度pKaにもよるが、少なくともpKa以下とする。通常はpH4以下で操作する。一方酸を過剰に加えてもpHの下がり方は徐々に鈍化し、過剰の酸はコハク酸塩とは塩交換せず酸として系内に存在することとなる。余剰の酸は中和処理等が必要になり非効率である。従ってpHは通常1以上で制御する。
<濃縮工程>
一般にバイオマス資源由来のコハク酸含有溶液はコハク酸濃度が希薄であるため、通常濃縮操作が必要となる。濃縮度は特に限定されるものではないが、最終濃縮液中のコハク酸の溶解度が飽和溶解度以下であり、かつ極力飽和溶解度に近いほうが好ましい。
一般にバイオマス資源由来のコハク酸含有溶液はコハク酸濃度が希薄であるため、通常濃縮操作が必要となる。濃縮度は特に限定されるものではないが、最終濃縮液中のコハク酸の溶解度が飽和溶解度以下であり、かつ極力飽和溶解度に近いほうが好ましい。
<抽出工程>
抽出工程は、コハク酸(塩)の水溶液、好ましくは必要に応じてプロトン化工程を経たコハク酸(塩)を含む水溶液、好ましくは更に微生物を除去した水溶液から、該水溶液と相分離する抽出溶剤を混合して接触させ、コハク酸(塩)を抽出溶剤中に抽出し、水溶液相と相分離する工程である。
抽出工程は、コハク酸(塩)の水溶液、好ましくは必要に応じてプロトン化工程を経たコハク酸(塩)を含む水溶液、好ましくは更に微生物を除去した水溶液から、該水溶液と相分離する抽出溶剤を混合して接触させ、コハク酸(塩)を抽出溶剤中に抽出し、水溶液相と相分離する工程である。
(抽出溶剤)
抽出工程において使用される抽出溶剤は、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液と相分離可能な溶剤であれば特に制限は無いが、無機性値/有機性値の比(以下、I/O値と略記することがある)が0.2以上2.3以下であることが好ましい。また、より好ましくはI/O値が0.3以上2.0以下である溶剤が用いられる。このような溶剤を用いることにより、コハク酸を選択的に抽出して、効率よく夾雑不純物と分離できる。
抽出工程において使用される抽出溶剤は、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液と相分離可能な溶剤であれば特に制限は無いが、無機性値/有機性値の比(以下、I/O値と略記することがある)が0.2以上2.3以下であることが好ましい。また、より好ましくはI/O値が0.3以上2.0以下である溶剤が用いられる。このような溶剤を用いることにより、コハク酸を選択的に抽出して、効率よく夾雑不純物と分離できる。
また、抽出溶剤は、常圧(1気圧)で沸点が40℃以上の溶剤が好ましく、より好ましくは常圧で沸点が60℃以上の溶剤が用いられる。また、常圧での沸点が120℃以下であることが好ましく、より好ましくは常圧での沸点が100℃以下であって、特に好ましくは常圧での沸点が90℃以下の溶剤が用いられる。このような溶剤を用いることにより、溶剤が気化して引火する危険性や、溶剤が気化してコハク酸の抽出効率が低下するという問題や溶剤のリサイクルがしにくいといった問題を回避することができる。また、使用後の溶剤を蒸留などの方法により分離したり、精製して再利用したりする際の必要熱量が少なくてすむという利点がある。
溶剤の無機性値及び有機性値は、有機概念図論(「系統的有機定性分析」藤田穆、風間書房(1974))により提案されており、有機化合物を構成する官能基に対して予め設定された数値を基に有機性値及び無機性値を算出し、その比を求めて得られる。
抽出溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併合して用いてもよいが、通常は1種のみ用いられる。2種以上の溶剤を混合して用いる場合、混合溶剤のI/O値と沸点が上記好適範囲となるようにする。
I/O値が0.2以上2.3以下であり、常圧で沸点が40℃以上の溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤、プロパノール、ブタノール、オクタノール等の炭素数3以上のアルコールが例示される。
各溶剤のI/O値および常圧での沸点を以下の表に示す。
上記のような抽出溶剤をコハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液に加えてコハク酸の抽出工程を行う。ここで、抽出溶剤は、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液の容量1に対し0.5〜5の容量で加えることが好ましく、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液の容量1に対し1〜3の容量で加えることがより好ましい。
抽出操作により、コハク酸を選択的に抽出溶剤中に抽出回収することができ、生成効率をより高めることができる。発酵液由来の水溶性の高い糖類、アミノ酸類、無機塩類は主に水溶液相側に分配される。また、コハク酸塩のプロトン化工程で発生した副生塩も水溶液相側に分配され、コハク酸と容易に分離できる。例えば副生塩が硫酸アンモニウムの場合はほぼ全ての硫酸アンモニウムが水溶液相側に回収される。同時に硫酸アンモニウムは、水溶液相側に回収されたアミノ酸、糖類とともに濃縮、晶析、乾燥等の処理によりアミノ酸、糖類を有機分含んだ硫酸アンモニウムとして回収することができる。この硫酸アンモニウムは有機物を適度に含むことから肥料として有用である。
(抽出温度)
抽出温度はコハク酸が抽出される温度であればよいが、30〜60℃が好ましい。抽出温度が低いと一般にコハク酸の抽出率は高くなるが、液粘性が上がるためか、以下に記載する抽出工程で発生した固形分の沈降が遅くなり、溶剤相側に固形分が混入する虞が高くなり好ましくない。一方、抽出温度が高いと固形分の沈降は速く、固形分の分離は容易となるが、コハク酸の抽出率が低く、効率が悪い。
抽出温度はコハク酸が抽出される温度であればよいが、30〜60℃が好ましい。抽出温度が低いと一般にコハク酸の抽出率は高くなるが、液粘性が上がるためか、以下に記載する抽出工程で発生した固形分の沈降が遅くなり、溶剤相側に固形分が混入する虞が高くなり好ましくない。一方、抽出温度が高いと固形分の沈降は速く、固形分の分離は容易となるが、コハク酸の抽出率が低く、効率が悪い。
(固形分)
コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液から、脂肪族ジカルボンを抽出溶剤中に抽出する過程において、水溶液相(以下、「抽残相」と称す場合がある。)にも溶剤相(以下、「抽出相」と称す場合がある。)にも溶解しない固形分が生成し、抽出を阻害したり、その後続工程へ悪影響を及ぼしたり、コハク酸の純度悪化を招いたりするなどの問題が発生することがある。特に、バイオマス資源であるグルコース、ブドウ糖、セルロースなどから微生物変換によって得られたコハク酸(塩)及び糖類、アミノ酸、タンパク質、無機塩類等からなる水溶液である発酵液と抽出溶剤とを接触させてコハク酸を抽出する際には、抽出操作や相分離操作を特に困難とする場合があり注意を要する。
コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液から、脂肪族ジカルボンを抽出溶剤中に抽出する過程において、水溶液相(以下、「抽残相」と称す場合がある。)にも溶剤相(以下、「抽出相」と称す場合がある。)にも溶解しない固形分が生成し、抽出を阻害したり、その後続工程へ悪影響を及ぼしたり、コハク酸の純度悪化を招いたりするなどの問題が発生することがある。特に、バイオマス資源であるグルコース、ブドウ糖、セルロースなどから微生物変換によって得られたコハク酸(塩)及び糖類、アミノ酸、タンパク質、無機塩類等からなる水溶液である発酵液と抽出溶剤とを接触させてコハク酸を抽出する際には、抽出操作や相分離操作を特に困難とする場合があり注意を要する。
例えば、通常、発酵液にはタンパク質など高次構造を有した高分子類が不純物として存在する。タンパク質などは通常水溶性が高く、抽出操作においてはその殆どが水溶液相へ分配されるが、抽出工程で溶剤と接触することにより、その高次構造が破壊、変性し、水にも溶剤にも溶解せず前記のような固形分になるものが一部存在する。
抽出工程で生成した固形分は、主に液々界面近傍に集まる傾向にある。通常バッチ抽出では液々界面近傍に固形分が生成しても、固形分を除いて抽出相、抽残相を回収すれば操作上大きな問題とはならない。一方、連続抽出、特に向流多段抽出塔では固形分が連続的に発生するため液々分散、液々分離に支障が生じ、安定運転を妨げるばかりか、抽出ができなくなることさえある。また固形分を含んだ液が後続工程に流れると、後続工程で悪影響を及ぼすことがある。例えば、抽出工程で回収されたコハク酸を含む抽出液は、コハク酸濃度が低いので濃縮する場合があるが、固形分が存在すると、リボイラーなど加熱面に固形分が付着、焦げ付き、伝熱効率を悪化させる。さらに後続工程にもよるが品質上問題になるケースもある。例えば、コハク酸をポリエステル原料として用いる場合においては、窒素原子がポリマー色調に大きく関与していることが判明している。固形分はタンパク質変性物を多く含み、窒素原子を多く含むため、固形分が最終製品にコンタミするとポリエステル色調に影響を及ぼす可能性がある。これらより抽出工程で生成した固形分は除去することが好ましい。
固形分の除去方法は特に拘らないが、固形分のみを選択的に除くことが好ましい。例えばバッチ抽出においては、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液に抽出溶剤を加え、充分混合した後、抽出相、固形物を多く含む中間相、抽残相をそれぞれ分離回収することができる。また連続抽出においては、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液と抽出溶剤を混合するミキサー部と混合液を液々分離するセトラー部からなるミキサーセトラー型抽出装置において、セトラーで抽出相、固形分を多く含む中間相、抽残相をそれぞれ回収することができる。ミキサーはコハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液と抽出溶剤が充分混合すればどのような方式でも良く、攪拌槽、スタティックミキサーなどが挙げられる。ただし、攪拌槽を用いる場合は、発生した固形分に、攪拌により攪拌槽内に巻き込まれた気泡が付着し、後続のセトラーにおける固形分の沈降を著しく阻害するので、攪拌条件の設定には注意を要する。操作許容範囲の広さ、設備費用の観点からはミキサーはスタティックミキサーとするのが望ましい。一方、セトラーのタイプは特に限定しない。一槽式で抽出相、中間相、抽残相をそれぞれ回収するタイプ、多槽式で抽出相、中間相、抽残相をそれぞれ回収するタイプなどが挙げられる。
固形物を多く含む中間相は、抽出相、抽残相も含むため、固液分離し、固形分と抽出相および/または抽残相を分離し、抽出相および/または抽残相を回収することができる。この場合、固液分離方法についても特に限定されるものではないが、沈降分離、濾過分離、いずれの方法も用いることができる。沈降分離においては、重力場で固形分を沈降分離しても、また遠心力場において固形分を沈降分離してもよい。沈降速度の面から遠心沈降分離が望ましい。また、その方式はバッチ操作でも連続操作でもよい。例えば、連続式の遠心沈降機としてはスクリューデカンター、分離板式遠心沈降機が挙げられる。濾過分離において、その方法は、濾材、濾過圧力、連続操作・バッチ操作などで分類されるが、いずれも固形分を抽出相および/または抽残相と分離できれば特に限定するもののではない。ただし、濾材の目開きは0.1μm以上10μm以下が望ましい。濾材の目開きが0.1μm未満では透過流束が小さすぎ濾過に時間がかかりすぎる。一方、濾材の目開きが10μmを超えると固形分の分離が不十分となる。また濾材の材質は抽出溶剤に不溶である必要があることからポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂などを用いることが望ましい。濾過は真空式でも、加圧式でも、遠心式いずれも用いることができる。さらにその方式は連続式でも、バッチ式でも構わない。
(抽出装置)
抽出装置は、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液と抽出溶剤との接触、抽出相と抽残相の分離回収、および固形分を含む中間相の除去ができればどのような装置であってもかまわないが、装置が簡単で操作も容易な、上記のミキサーセトラー型抽出装置が好ましい。
抽出装置は、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液と抽出溶剤との接触、抽出相と抽残相の分離回収、および固形分を含む中間相の除去ができればどのような装置であってもかまわないが、装置が簡単で操作も容易な、上記のミキサーセトラー型抽出装置が好ましい。
(抽出操作)
抽出は一段で行っても、多段で行ってもよい。また、抽出溶剤はコハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液に対してクロスフローで流しても、カウンターフローで流しても構わない。
抽出は一段で行っても、多段で行ってもよい。また、抽出溶剤はコハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液に対してクロスフローで流しても、カウンターフローで流しても構わない。
最も望ましい形態は、コハク酸(塩)、好ましくはコハク酸を含有する水溶液と抽出溶剤をミキサーセトラー型抽出装置で混合した後、液々分離し、抽出相、中間相、抽残相をそれぞれ分離回収し、中間相は固液分離し、固形分と抽出相および/または抽残相に分離し、分離回収した抽出相および/または抽残相は、セトラーで回収された抽出相および/または抽残相に混合し、さらに一段の抽出では充分な収率が得られないため、抽残相と新たな抽出溶剤を向流多段抽出で混合し、抽出相と抽残相を回収する方式である。
図2は、この好適な抽出工程を示す系統図であり、発酵液、好ましくは必要に応じてプロトン化工程と微生物除去工程を経た発酵液は、スタティックミキサー1で抽出溶剤と混合され、ミキサーセトラー型抽出装置2で更に混合された後、液々分離され、抽出相、中間相、抽残相がそれぞれ分離回収される。中間相は遠心沈降機3で固液分離され、固形分と抽出相に分離され、分離回収された抽出相は、ミキサーセトラー型抽出装置2で回収された抽出相と混合される。ミキサーセトラー型抽出装置2からの抽残相は向流多段抽出塔4で新たな抽出溶剤と混合され、更に抽出相と抽残相とに分離されて、抽出相は先のミキサーセトラー型抽出装置2からの抽出相と混合される。
抽出相中に選択的に回収されたコハク酸を最終的にコハク酸結晶として回収するには通常、以下の濃縮による溶剤除去工程と晶析工程等が必要となる。
<溶剤除去工程>
一般に、抽出工程で回収される抽出相におけるコハク酸の濃度は希薄であるため、溶剤を除去して濃縮する操作が必要となる。この操作は通常蒸留により行われる。濃縮度は特に限定されるものではないが、最終濃縮液(蒸留釜残液)中のコハク酸の溶解度が飽和溶解度以下であり、かつ極力飽和溶解度に近いほうが好ましい。
一般に、抽出工程で回収される抽出相におけるコハク酸の濃度は希薄であるため、溶剤を除去して濃縮する操作が必要となる。この操作は通常蒸留により行われる。濃縮度は特に限定されるものではないが、最終濃縮液(蒸留釜残液)中のコハク酸の溶解度が飽和溶解度以下であり、かつ極力飽和溶解度に近いほうが好ましい。
また、抽出溶剤は水と最低共沸組成を形成することが多く、また共沸組成は抽出溶剤リッチな組成であることが多い。従って、蒸留操作に伴い抽出溶剤が多く留去することとなり濃縮液(蒸留釜残液)中の抽出溶剤濃度は蒸留操作前に比べ低下する。コハク酸の溶解度は抽出溶剤が存在するケースよりも水だけのケースのほうが小さいため、蒸留により抽出溶剤濃度が低下するのは後続の晶析工程でのコハク酸回収率という観点でも有利であり、このような溶剤除去後の抽出溶剤濃度は1重量%以下とすることが望ましい。
最終濃縮液(蒸留釜残液)の抽出溶剤濃度を1重量%以下、コハク酸濃度を飽和溶解度近傍とするために濃縮前および/または濃縮(蒸留)操作の過程で水を加えてもよい。
<晶析工程>
晶析工程における晶析操作は、コハク酸(塩)水溶液からコハク酸を析出させて回収することができれば、従前公知の如何なる方法を採用しても構わないが、具体的には例えば冷却晶析、濃縮晶析、断熱減圧冷却晶析等の晶析方法が挙げられる。また晶析操作は回分式で行っても、連続式で行っても構わない。
晶析工程における晶析操作は、コハク酸(塩)水溶液からコハク酸を析出させて回収することができれば、従前公知の如何なる方法を採用しても構わないが、具体的には例えば冷却晶析、濃縮晶析、断熱減圧冷却晶析等の晶析方法が挙げられる。また晶析操作は回分式で行っても、連続式で行っても構わない。
晶析により得られたコハク酸の固形分は、後述の固液分離操作により晶析母液から分離される。
<高度精製工程>
晶析工程で得られるコハク酸結晶はその用途に応じ、さらに高度精製処理を施すこともできる。高度精製処理工程としては、具体的には例えば活性炭や、ゼオライト等の吸着剤による脱色工程、イオン交換樹脂により共存イオン類を除去するイオン交換工程、共存する不飽和ジカルボン酸を水添処理する工程などが挙げられる。
晶析工程で得られるコハク酸結晶はその用途に応じ、さらに高度精製処理を施すこともできる。高度精製処理工程としては、具体的には例えば活性炭や、ゼオライト等の吸着剤による脱色工程、イオン交換樹脂により共存イオン類を除去するイオン交換工程、共存する不飽和ジカルボン酸を水添処理する工程などが挙げられる。
<固液分離工程>
晶析工程からのコハク酸は、通常コハク酸を含む溶液として取り出されるため、通常、従前公知の方法でコハク酸結晶および母液を固液分離処理する。固液分離方法は、コハク酸をコハク酸含有液と分離可能な方法であれば特に限定するものではなく、濾過分離、沈降分離、遠心分離などが挙げられる。また操作はバッチでも連続でもよい。例えば効率の良い固液分離装置として連続式の遠心濾過機、デカンター等の遠心沈降機などが挙げられる。また、固液分離操作で分離した固形分を冷水等でリンス処理して表面に付着したコハク酸含有液を除去することが、得られるコハク酸の純度を高めるという点で好ましい。
本発明において、この固液分離された固形物を「粗コハク酸組成物」と称す。この粗コハク酸組成物は常圧まで圧力低下している。
晶析工程からのコハク酸は、通常コハク酸を含む溶液として取り出されるため、通常、従前公知の方法でコハク酸結晶および母液を固液分離処理する。固液分離方法は、コハク酸をコハク酸含有液と分離可能な方法であれば特に限定するものではなく、濾過分離、沈降分離、遠心分離などが挙げられる。また操作はバッチでも連続でもよい。例えば効率の良い固液分離装置として連続式の遠心濾過機、デカンター等の遠心沈降機などが挙げられる。また、固液分離操作で分離した固形分を冷水等でリンス処理して表面に付着したコハク酸含有液を除去することが、得られるコハク酸の純度を高めるという点で好ましい。
本発明において、この固液分離された固形物を「粗コハク酸組成物」と称す。この粗コハク酸組成物は常圧まで圧力低下している。
[乾燥工程]
本発明においては、バイオマス資源から、上述のような一連の工程を経て得られた粗コハク酸組成物を所定の条件で温風に直接接触させて乾燥を行う。
以下、この乾燥工程について説明する。
本発明においては、バイオマス資源から、上述のような一連の工程を経て得られた粗コハク酸組成物を所定の条件で温風に直接接触させて乾燥を行う。
以下、この乾燥工程について説明する。
本発明において、乾燥工程に供される粗コハク酸組成物は、上述の固液分離工程で固液分離された固形分(脱水ケーキ)であり、通常、この粗コハク酸組成物は1重量%以上20重量%以下、好ましくは5重量%以上20重量%以下の水を含有する。粗コハク酸組成物の含水率が多過ぎるものは凝着などを起こし取り扱いが困難になるほか経済的にも不利であり、少な過ぎるものは無水コハク酸などの副生を促進しかねるため、固液分離においては、上述のような含水率の粗コハク酸組成物が得られるように遠心加速度の調整等を行う。
本発明においては、このような含水率の粗コハク酸組成物に、乾燥中のコハク酸の品温が60〜130℃となる条件下で温風を直接接触させることにより、粗コハク酸組成物に付着している水分を温風に同伴させて除去することにより乾燥する。
この乾燥方式としては、粗コハク酸組成物に温風を直接接触させて乾燥することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機、回転乾燥機(ドラムドライヤー、ロータリーキルン)、流動層乾燥機(フロードライヤー)などを用いることができる。このうち、特に、流動層乾燥機や回転乾燥機のように、乾燥機内に吹き込んだ温風で粗コハク酸組成物を流動させながら乾燥させる方式を採用することが、ムラなく均一に乾燥することができ、温風接触による有効な乾燥面積が増大し、粗コハク酸組成物中の水分が表面蒸発の形で乾燥除去されるようになり、水の沸点である100℃未満の低温でも効率的な乾燥を行えることから、好ましい。
このような乾燥機を用いる乾燥操作はバッチ式であっても連続式であってもよい。
本発明では、このような乾燥機を用いて、粗コハク酸組成物に温風を直接接触させることにより、乾燥中の粗コハク酸組成物のコハク酸の品温が60〜130℃となるような条件で乾燥を行う。
ここで、乾燥中のコハク酸の品温とは、採用される乾燥方式に応じて以下のようにして測定される温度をさす。
(1) 流動層乾燥機の場合:乾燥機内に形成された粗コハク酸組成物の流動層の最上部の温度
(2) 固定床型乾燥機の場合:乾燥機内の温度
(1) 流動層乾燥機の場合:乾燥機内に形成された粗コハク酸組成物の流動層の最上部の温度
(2) 固定床型乾燥機の場合:乾燥機内の温度
上記の品温は、乾燥機内に直接温度計を差し込んで計測することも可能であるが、放射温度計などの非接触式温度計により計測することができる。
本発明においては、このようにして測定される乾燥のコハク酸の品温が60〜130℃、好ましくは70〜100℃となるように粗コハク酸組成物を温風で乾燥する。この品温が低過ぎると乾燥に大風量の温風を要し乾燥効率が悪く、高過ぎるとコハク酸の脱水で無水コハク酸が生成するため好ましくない。
特に本発明では、乾燥中の粗コハク酸組成物を温風で流動させて比較的低めの温度で乾燥を行うことが好ましく、このような低温乾燥は、乾燥後に包装を行う前に別途、冷却装置を設ける必要がなく、また、乾燥機内で必要以上に高温になったコハク酸結晶に備えた乾燥機の耐熱耐腐食対策にかかる費用を低減することができるという点においても好ましい。前述の如く、流動乾燥であれば、粗コハク酸組成物中の水分は殆ど表面蒸発の形で気化されるため、乾燥機内の粗コハク酸組成物の温度は***℃未満を維持することが可能である。乾燥機内で流動状態にある粗コハク酸組成物が乾燥される過程において、一時的に***℃以上になることもありえるが、それでも乾燥機が受ける腐食の頻度は、従来の乾燥機と比較すると、著しく低くなる。
乾燥に用いる温風のガス種としては、大気中空気か不活性ガス、又はそれらの混合ガスであることが望ましい。ここで不活性ガスとは、コハク酸と反応を起こさないガスのことをいい、例えば、窒素ガス、希ガス等が挙げられる。
温風の温度は、前述の品温を維持できる温度であればよく、特に制限はない。また、上述のガスを加熱して所定温度の温風を調製するには、コハク酸製造工程内外の任意の箇所で発生する水蒸気等の熱源を適宜利用することができる。
また、乾燥に用いる温風は、上記乾燥温度において結露しないような湿度を有するガスであり、その同伴する水分量に応じて温風の供給量も配慮する必要がある。特に、乾燥機内の上流側では、水分を同伴する量が下流側に比べて多いので、結露しないように注意を要する。乾燥用の温風に露点−40℃のガスを用いる場合には、この温風の供給量は風速にして、標準状態で1〜30m/sであることが望ましく、より望ましくは、2〜20m/sである。なお、標準状態とは、気温0℃、気圧1atmの状態をいう。
粗コハク酸組成物を温風に接触させて乾燥を行う時間は、前述の品温によっても異なるが、0.05〜10時間、特に0.1〜5時間であることが好ましい。この時間が短か過ぎると乾燥状態が充分ではなく、長過ぎると無水物などの副生を促進させる。
このような乾燥工程で得られるコハク酸の温度は、60〜100℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。この温度が高過ぎると冷却に不利であるだけでなく無水物などの副生を促進させる。逆に、この温度が低く、例えば温度が50℃未満であると、冷却には有利となるが、低温であるために水の蒸発速度と蒸発量とが低下し、本来必要とする乾燥の効果が十分に得られなくなるおそれが出てくる。
また、乾燥工程で得られるコハク酸の含水率は0.01〜3重量%、特に0.1〜1重量%であることが好ましい。この含水率が多過ぎると誘導品を製造する工程で発泡などの不具合が生じるほか品質悪化の影響があり、少な過ぎると無水物などの副生物が副生している恐れがある。
上記乾燥工程を終了したコハク酸は、必要に応じて冷却や窒素雰囲気下での密閉化等の処理を施した後、製品化される。
上記乾燥工程を終了したコハク酸は、必要に応じて冷却や窒素雰囲気下での密閉化等の処理を施した後、製品化される。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
<酸類の定量分析>
酸類の定量分析には、高速液体クロマトグラフィー(LC)を用い、以下の条件で測定を行った。
カラム;信和化工(株)製「ULTRON PS−80H」(8.0mmI.D.×30cm)
溶離液:水(過塩素酸)(過塩素酸60%水溶液1.8mL/1L−H2O)
温度:60℃
酸類の定量分析には、高速液体クロマトグラフィー(LC)を用い、以下の条件で測定を行った。
カラム;信和化工(株)製「ULTRON PS−80H」(8.0mmI.D.×30cm)
溶離液:水(過塩素酸)(過塩素酸60%水溶液1.8mL/1L−H2O)
温度:60℃
〔実施例1〕
[バイオマス資源からのコハク酸の誘導]
(A)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノムDNAの抽出
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233は、1975年4月28日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP−1497の受託番号で寄託されている。
[バイオマス資源からのコハク酸の誘導]
(A)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノムDNAの抽出
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233は、1975年4月28日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP−1497の受託番号で寄託されている。
A培地[尿素:2g、(NH4)2SO4:7g、KH2PO4:0.5g、K2HPO4:0.5g、MgSO4・7H2O:0.5g、FeSO4・7H2O:6mg、MnSO4・4−5H2O:6mg、ビオチン:200μg、チアミン:200μg、イーストエキストラクト:1g、カザミノ酸:1g、グルコース:20gを蒸留水1Lに溶解]10mLに、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株を対数増殖期後期まで培養し、遠心分離(10000g、5分)により菌体を集めた。得られた菌体を10mg/mLの濃度にリゾチームを含む10mM:NaCl/20mMトリス緩衝液(pH8.0)/1mM:EDTA・2Na溶液0.15mLに懸濁した。次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000G、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合した。遠心分離(15,000G、2分)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mMトリス緩衝液(pH7.5)−1mM:EDTA・2Na溶液5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
(B)PCプロモーター置換用プラスミドの構築
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子のN末端領域のDNA断片の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.BA000036のCgl0689)を基に設計した合成DNA(配列番号1および配列番号2)を用いたPCRによって行った。尚、配列番号1のDNAは5’末端がリン酸化されたものを用いた。反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で1分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は4分とした。増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.9kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行い、これをPC遺伝子N末端断片とした。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子のN末端領域のDNA断片の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.BA000036のCgl0689)を基に設計した合成DNA(配列番号1および配列番号2)を用いたPCRによって行った。尚、配列番号1のDNAは5’末端がリン酸化されたものを用いた。反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で1分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は4分とした。増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.9kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行い、これをPC遺伝子N末端断片とした。
一方、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来で構成的に高発現するTZ4プロモーター断片はプラスミドpMJPC1(特開2005−95169)を鋳型とし、配列番号3および配列番号4に記載の合成DNAを用いたPCRにより調製した。尚、配列番号4のDNAは5’末端がリン酸化されたものを用いた。反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒分らなるサイクルを25回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は3分とした。増幅産物の確認は、1.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.5kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行い、これをTZ4プロモーター断片とした。
上記にて調製したPC遺伝子N末端断片とTZ4プロモーター断片を混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、制限酵素PstIで切断し、1.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離し、約1.0kbのDNA断片をQIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて回収し、これをTZ4プロモーター:PC遺伝子N末端断片とした。さらにこのDNA断片と大腸菌プラスミドpHSG299(宝酒造製)をPstIで切断して調製したDNAと混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mL カナマシンおよび50μg/mL X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素PstIで切断することにより、約1.0kbの挿入断片が認められ、これをpMJPC17.1と命名した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子の5’上流領域のDNA断片の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.BA000036)を基に設計した合成DNA(配列番号5および配列番号6)を用いたPCRによって行った。反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO4、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。増幅産物の確認は、1.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.7kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5’末端をリン酸化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて大腸菌ベクターpUC119(宝酒造製)のSmaI部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mL アンピシリンおよび50μg/mL X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを、配列番号7および配列番号6で示した合成DNAをプライマーとしたPCR反応に供した。反応液組成:上記プラスミド1ng、Ex−TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.2μM各々プライマー、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で50秒からなるサイクルを20回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。このようにして挿入DNA断片の有無を確認した結果、約0.7kbの増幅産物を認めるプラスミドを選抜し、これをpMJPC5.1と命名した。
次に、上記pMJPC17.1およびpMJPC5.1をそれぞれ制限酵素XbaIで切断後混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結した。これを制限酵素SacIおよび制限酵素SphIで切断したDNA断片を0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離し、約1.75kbのDNA断片をQIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて回収した。このPC遺伝子の5’上流領域とN末端領域の間にTZ4プロモーターが挿入されたDNA断片を、sacB遺伝子を含むプラスミドpKMB1(特開2005−95169)をSacIおよびSphIで切断して調製したDNAと混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマシンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacIおよびSphIで切断することにより、約1.75kbの挿入断片が認められ、これをpMJPC17.2と命名した(図1)。
(C)PC増強株の作製
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊株:特開2005−95169)の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pMJPC17.2のプラスミドDNAを用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,53,159,1970)により形質転換した大腸菌JM110株から再調製した。ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株の形質転換は電気パルス法(Res.Microbiol.、Vol.144, p.181−185, 1993)によって行い、得られた形質転換体をカナマイシン 25μg/mLを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。この培地上に生育した株は、pMJPC17.2がブレビバクテリウム・フラバムMJ233株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのPC遺伝子とブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子が挿入されているはずである。次に、上記相同組み換え株をカナマイシン25μg/mLを含むLBG培地にて液体培養した。この培養液の菌体数約100万相当分を10%ショ糖含有LBG培地に塗抹にした。結果、2回目の相同組み換えによりsacB遺伝子が脱落しショ糖非感受性となったと考えられる株を数十個得た。この様にして得られた株の中には、そのPC遺伝子の上流にpMJPC17.2に由来するTZ4プロモーターが挿入されたものと野生型に戻ったものが含まれる。PC遺伝子がプロモーター置換型であるか野生型であるかの確認は、LBG培地にて液体培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、PC遺伝子の検出を行うことによって容易に確認できる。TZ4プロモーターおよびPC遺伝子をPCR増幅するためのプライマー(配列番号8および配列番号9)を用いて分析すると、プロモーター置換型では678bpのDNA断片を認めるはずである。上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、TZ4プロモーターが挿入された株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDHと命名した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊株:特開2005−95169)の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pMJPC17.2のプラスミドDNAを用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,53,159,1970)により形質転換した大腸菌JM110株から再調製した。ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株の形質転換は電気パルス法(Res.Microbiol.、Vol.144, p.181−185, 1993)によって行い、得られた形質転換体をカナマイシン 25μg/mLを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。この培地上に生育した株は、pMJPC17.2がブレビバクテリウム・フラバムMJ233株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのPC遺伝子とブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子が挿入されているはずである。次に、上記相同組み換え株をカナマイシン25μg/mLを含むLBG培地にて液体培養した。この培養液の菌体数約100万相当分を10%ショ糖含有LBG培地に塗抹にした。結果、2回目の相同組み換えによりsacB遺伝子が脱落しショ糖非感受性となったと考えられる株を数十個得た。この様にして得られた株の中には、そのPC遺伝子の上流にpMJPC17.2に由来するTZ4プロモーターが挿入されたものと野生型に戻ったものが含まれる。PC遺伝子がプロモーター置換型であるか野生型であるかの確認は、LBG培地にて液体培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、PC遺伝子の検出を行うことによって容易に確認できる。TZ4プロモーターおよびPC遺伝子をPCR増幅するためのプライマー(配列番号8および配列番号9)を用いて分析すると、プロモーター置換型では678bpのDNA断片を認めるはずである。上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、TZ4プロモーターが挿入された株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDHと命名した。
(D)ピルベートカルボキシラーゼ酵素活性の測定
上記(C)で得られた形質転換株ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株をグルコース2%、カナマイシン25mg/Lを含むA培地100mLで終夜培養を行った。得られた菌体を集菌後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)50mLで洗浄し、同組成の緩衝液20mLに再度懸濁させた。懸濁液をSONIFIER 350(BRANSON製)で破砕し、遠心分離した上清を無細胞抽出液とした。得られた無細胞抽出液を用いピルベートカルボキシラーゼ活性を測定した。酵素活性の測定は100mM Tris/HCl緩衝液(pH7.5)、 0.1mg/10mlビオチン、5mM 塩化マグネシウム、50mM 炭酸水素ナトリウム、5mM ピルビン酸ナトリウム 、5mM アデノシン3リン酸ナトリウム、0.32 mM NADH、20units/1.5mlリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(WAKO製、酵母由来)及び酵素を含む反応液中で25℃で反応させることにより行った。1Uは1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量とした。ピルベートカルボキシラーゼの発現を強化した無細胞抽出液における比活性は、0.1U/mg蛋白質であった。尚、親株であるMJ233/△LDH株を同様に培養した菌体では、本活性測定方法検出限界以下であった。
以下、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株を有機酸生産菌として菌体調製用培養、およびコハク酸生産反応に用いた。
上記(C)で得られた形質転換株ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株をグルコース2%、カナマイシン25mg/Lを含むA培地100mLで終夜培養を行った。得られた菌体を集菌後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)50mLで洗浄し、同組成の緩衝液20mLに再度懸濁させた。懸濁液をSONIFIER 350(BRANSON製)で破砕し、遠心分離した上清を無細胞抽出液とした。得られた無細胞抽出液を用いピルベートカルボキシラーゼ活性を測定した。酵素活性の測定は100mM Tris/HCl緩衝液(pH7.5)、 0.1mg/10mlビオチン、5mM 塩化マグネシウム、50mM 炭酸水素ナトリウム、5mM ピルビン酸ナトリウム 、5mM アデノシン3リン酸ナトリウム、0.32 mM NADH、20units/1.5mlリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(WAKO製、酵母由来)及び酵素を含む反応液中で25℃で反応させることにより行った。1Uは1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量とした。ピルベートカルボキシラーゼの発現を強化した無細胞抽出液における比活性は、0.1U/mg蛋白質であった。尚、親株であるMJ233/△LDH株を同様に培養した菌体では、本活性測定方法検出限界以下であった。
以下、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株を有機酸生産菌として菌体調製用培養、およびコハク酸生産反応に用いた。
<コハク酸塩含有培養液の調製>
(種培養)
尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:5g、カザミノ酸:5g、及び蒸留水:1000mLの培地100mLを500mLの三角フラスコにいれ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やし、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mLを添加し、上記で構築したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDHを接種して24時間30℃にて種培養した。
(種培養)
尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:5g、カザミノ酸:5g、及び蒸留水:1000mLの培地100mLを500mLの三角フラスコにいれ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やし、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mLを添加し、上記で構築したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDHを接種して24時間30℃にて種培養した。
(本培養)
硫酸アンモニウム:1.0g、リン酸1カリウム:1.5g、リン酸2カリウム1.5g、塩化カリウム:1.67g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:40mg、硫酸マンガン・水和物:40mg、D−ビオチン:1.0mg、塩酸チアミン:1.0mg、酵母エキス10g、消泡剤(CE457:日本油脂製):1.0g及び蒸留水:1000mLの培地400mLを1Lの発酵糟に入れ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やした後、あらかじめ滅菌した72%グルコース水溶液:20mLを添加し、これに前述の種培養液を20mL加えて、30℃に保温した。pHは9.3%アンモニア水を用いて7.0以下にならないように保ち、通気は毎分300mL、攪拌は毎分600回転で24時間本培養を行った。溶存酸素濃度は培養開始直後から徐々に低下し、培養開始後4時間でほぼ0となった。その後、培養開始後15時間で溶存酸素濃度が上昇したため、あらかじめ滅菌した72%グルコース水溶液を380μL添加したところ、再び急速に低下し、ほぼ0となった。約13分後同様に溶存酸素濃度の上昇が観察されため、あらかじめ滅菌した72%グルコース水溶液を380μL添加し再び低下させた。以後、約13分毎に同様の上昇が見られたが、その都度同様の方法で低下させた。培養24時間後のOD660は87.3であった。
硫酸アンモニウム:1.0g、リン酸1カリウム:1.5g、リン酸2カリウム1.5g、塩化カリウム:1.67g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:40mg、硫酸マンガン・水和物:40mg、D−ビオチン:1.0mg、塩酸チアミン:1.0mg、酵母エキス10g、消泡剤(CE457:日本油脂製):1.0g及び蒸留水:1000mLの培地400mLを1Lの発酵糟に入れ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やした後、あらかじめ滅菌した72%グルコース水溶液:20mLを添加し、これに前述の種培養液を20mL加えて、30℃に保温した。pHは9.3%アンモニア水を用いて7.0以下にならないように保ち、通気は毎分300mL、攪拌は毎分600回転で24時間本培養を行った。溶存酸素濃度は培養開始直後から徐々に低下し、培養開始後4時間でほぼ0となった。その後、培養開始後15時間で溶存酸素濃度が上昇したため、あらかじめ滅菌した72%グルコース水溶液を380μL添加したところ、再び急速に低下し、ほぼ0となった。約13分後同様に溶存酸素濃度の上昇が観察されため、あらかじめ滅菌した72%グルコース水溶液を380μL添加し再び低下させた。以後、約13分毎に同様の上昇が見られたが、その都度同様の方法で低下させた。培養24時間後のOD660は87.3であった。
(コハク酸生産培養)
リン酸1アンモニウム:84.4mg、リン酸2アンモニウム:75.8mg、塩化カリウム149.1mg、硫酸マグネシウム・7水和物:0.2g、硫酸第一鉄・7水和物:8mg、硫酸マンガン・水和物:8mg、D−ビオチン:80μg、塩酸チアミン:80μg及び蒸留水:200mLの培地を500mLの三角フラスコに入れ、120℃、20分加熱滅菌した。室温まで冷やした後、1Lのジャーファーメンターに入れた。この懸濁液200mLに上記の本培養により得られた培養液90mL、あらかじめ滅菌した72%グルコース溶液:40mL、滅菌水:125mLを添加して混合し、35℃に保温した。pHは炭酸アンモニウム:154g、28%アンモニア水:239ml、蒸留水:650mLの水溶液を用いて7.6に保ち、毎分200回転で攪拌しながら有機酸生産反応を行った。反応開始後21時間における生産コハク酸濃度は34.8g/Lであり、少量のフマル酸が含有されていた。
リン酸1アンモニウム:84.4mg、リン酸2アンモニウム:75.8mg、塩化カリウム149.1mg、硫酸マグネシウム・7水和物:0.2g、硫酸第一鉄・7水和物:8mg、硫酸マンガン・水和物:8mg、D−ビオチン:80μg、塩酸チアミン:80μg及び蒸留水:200mLの培地を500mLの三角フラスコに入れ、120℃、20分加熱滅菌した。室温まで冷やした後、1Lのジャーファーメンターに入れた。この懸濁液200mLに上記の本培養により得られた培養液90mL、あらかじめ滅菌した72%グルコース溶液:40mL、滅菌水:125mLを添加して混合し、35℃に保温した。pHは炭酸アンモニウム:154g、28%アンモニア水:239ml、蒸留水:650mLの水溶液を用いて7.6に保ち、毎分200回転で攪拌しながら有機酸生産反応を行った。反応開始後21時間における生産コハク酸濃度は34.8g/Lであり、少量のフマル酸が含有されていた。
このようにして調整したコハク酸発酵液を遠心分離(10,000G、10分)処理して得られたコハク酸アンモニウムを含有する水溶液を得た。
上記で得られたコハク酸アンモニウムを含有する水溶液を減圧加温下で濃縮を行った。濃縮された培養液を攪拌しながら、47%硫酸を培養液に滴下して溶液のpHを2とした。硫酸を添加した培養液に有機溶媒として培養液と等容量のメチルエチルケトン(以下、MEKと略記することがある)を添加し、25℃で、約30分攪拌した。得られた液を静置後、有機層と水層とに分け、分液された水層に水層の体積の半分の容量のMEKを加え、25℃で、30分攪拌した。同様に液を静置後、有機層と水層とに分けた。同様の操作を更に3回繰り返し、全有機層をあわせた。有機層を液体クロマトグラフィー(LC)で分析した結果、有機層には、使用ブロス中に含有していた97.9%量のコハク酸が抽出された。
上記で得られたコハク酸アンモニウムを含有する水溶液を減圧加温下で濃縮を行った。濃縮された培養液を攪拌しながら、47%硫酸を培養液に滴下して溶液のpHを2とした。硫酸を添加した培養液に有機溶媒として培養液と等容量のメチルエチルケトン(以下、MEKと略記することがある)を添加し、25℃で、約30分攪拌した。得られた液を静置後、有機層と水層とに分け、分液された水層に水層の体積の半分の容量のMEKを加え、25℃で、30分攪拌した。同様に液を静置後、有機層と水層とに分けた。同様の操作を更に3回繰り返し、全有機層をあわせた。有機層を液体クロマトグラフィー(LC)で分析した結果、有機層には、使用ブロス中に含有していた97.9%量のコハク酸が抽出された。
次に得られたMEK抽出液から70℃にて400mmHgから100mmHgへ減圧度を調整しながらMEKを留去して、MEK抽出有機層を濃縮した。その後、得られた溶液を70℃から40℃まで30分かけて降温し、その後、40℃で、1時間攪拌した。析出した結晶を濾過後、冷水でリンスして、粗結晶を得た。一方、濾液は、さらに40℃から10℃まで30分かけて降温し、10℃で、1時間攪拌した。析出した結晶を濾過後、冷水でリンスして、粗結晶を得た。得られた粗結晶は先に得られた粗結晶と均一に混合し、次工程に用いた。
得られた粗結晶は、30重量%の粗コハク酸溶液となるよう純水を加え80℃で溶解した後、コハク酸に対して0.3重量%量の粉末活性炭(三菱化学カルゴン株式会社製:ダイヤホープ8ED)を加えた。活性炭処理は、80℃に保温した恒温式振盪器を用いて3時間実施した。その後、80℃で活性炭を濾別した。
さらに得られたコハク酸を含む溶液をSUS316製500ml誘導攪拌オートクレーブに仕込み、5%Pd/C(和光カタログ326−81672、触媒量:コハク酸に対して0.06重量%)存在下、水素圧が0.8MPa、反応温度が80℃、反応時間が3時間の条件下で水素処理を実施した。その結果、粗コハク酸中にコハク酸に対して1.8重量%量含有されていたフマル酸はすべてコハク酸へ誘導された。反応終了後、触媒を濾別した。ここでコハク酸を含む溶液のコハク酸濃度は32重量%であった。また、32重量%コハク酸水溶液の飽和温度は70℃であった。
処理されたコハク酸水溶液を濃縮してコハク酸濃度を24重量%とし、水晶析を実施した。水晶析の条件は、スリーワンモーターを用いて300rpmでの攪拌下、90分間で70℃から10℃まで冷却し、10℃で、1時間保持する条件で実施した。析出したコハク酸を濾過により回収し、冷水で結晶を洗浄して白色の無臭のコハク酸(含水率6.4重量%)を得た。
得られた粗結晶は、30重量%の粗コハク酸溶液となるよう純水を加え80℃で溶解した後、コハク酸に対して0.3重量%量の粉末活性炭(三菱化学カルゴン株式会社製:ダイヤホープ8ED)を加えた。活性炭処理は、80℃に保温した恒温式振盪器を用いて3時間実施した。その後、80℃で活性炭を濾別した。
さらに得られたコハク酸を含む溶液をSUS316製500ml誘導攪拌オートクレーブに仕込み、5%Pd/C(和光カタログ326−81672、触媒量:コハク酸に対して0.06重量%)存在下、水素圧が0.8MPa、反応温度が80℃、反応時間が3時間の条件下で水素処理を実施した。その結果、粗コハク酸中にコハク酸に対して1.8重量%量含有されていたフマル酸はすべてコハク酸へ誘導された。反応終了後、触媒を濾別した。ここでコハク酸を含む溶液のコハク酸濃度は32重量%であった。また、32重量%コハク酸水溶液の飽和温度は70℃であった。
処理されたコハク酸水溶液を濃縮してコハク酸濃度を24重量%とし、水晶析を実施した。水晶析の条件は、スリーワンモーターを用いて300rpmでの攪拌下、90分間で70℃から10℃まで冷却し、10℃で、1時間保持する条件で実施した。析出したコハク酸を濾過により回収し、冷水で結晶を洗浄して白色の無臭のコハク酸(含水率6.4重量%)を得た。
<乾燥処理>
上記で取得したコハク酸を、流動層乾燥機(不二パウダル株式会社製「流動乾燥機2F」)を用いて大気圧より高い840Torrの加圧条件下に、85℃の温風(空気,露点−40℃)を風速10m/s吹き込み、乾燥中のコハク酸の品温(放射温度計で計測されたコハク酸の流動層の最上部の温度)が80℃となる条件で0.25時間乾燥した。乾燥後のコハク酸の温度は23℃で、含水率は0.3重量%であった。
上記で取得したコハク酸を、流動層乾燥機(不二パウダル株式会社製「流動乾燥機2F」)を用いて大気圧より高い840Torrの加圧条件下に、85℃の温風(空気,露点−40℃)を風速10m/s吹き込み、乾燥中のコハク酸の品温(放射温度計で計測されたコハク酸の流動層の最上部の温度)が80℃となる条件で0.25時間乾燥した。乾燥後のコハク酸の温度は23℃で、含水率は0.3重量%であった。
このコハク酸を用いて、以下の方法でポリエステルを製造し、その評価を行った。
<ポリエステルの製造およびポリマーの評価>
(重縮合用触媒の調製)
撹拌装置付き500cm3のガラス製ナス型フラスコに酢酸マグネシウム・4水和物を62.0g入れ、更に250gの無水エタノール(純度99重量%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合重量比は45:55)を35.8g加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを75.0g添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、1000cm3のナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体が残った。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、5Torrの減圧下で更に濃縮を行った。粘稠な液体は表面から粉体状へと徐々に変化し、2時間後には完全に粉体化した。その後、窒素を用いて常圧に戻し、室温まで冷却し、淡黄色粉体108gを得た。得られた触媒の金属元素分析値は、チタン原子含有量が10.3重量%、マグネシウム原子含有量が6.8重量%、リン原子含有量が7.8重量%であり、モル比としては、T/P=0.77,M/P=1.0であった。更に、粉体状の触媒を1,4−ブタンジオールに溶解させ、チタン原子として34,000ppmとなるように調製した。
(重縮合用触媒の調製)
撹拌装置付き500cm3のガラス製ナス型フラスコに酢酸マグネシウム・4水和物を62.0g入れ、更に250gの無水エタノール(純度99重量%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合重量比は45:55)を35.8g加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを75.0g添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、1000cm3のナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体が残った。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、5Torrの減圧下で更に濃縮を行った。粘稠な液体は表面から粉体状へと徐々に変化し、2時間後には完全に粉体化した。その後、窒素を用いて常圧に戻し、室温まで冷却し、淡黄色粉体108gを得た。得られた触媒の金属元素分析値は、チタン原子含有量が10.3重量%、マグネシウム原子含有量が6.8重量%、リン原子含有量が7.8重量%であり、モル比としては、T/P=0.77,M/P=1.0であった。更に、粉体状の触媒を1,4−ブタンジオールに溶解させ、チタン原子として34,000ppmとなるように調製した。
(ポリエステルの製造)
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸100重量部、三菱化学社製工業グレードの1,4−ブタンジオール99.2重量部、リンゴ酸0.38重量部(コハク酸に対して総リンゴ酸量0.33モル%)を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を攪拌しながら1時間かけて230℃まで昇温し、この温度で1時間反応させた。その後、上記の触媒溶液を添加した。添加量は得られるポリエステルあたりチタン原子として50ppmとなる量とした。反応温度を250℃まで徐々に昇温し、同時に2時間かけて0.06×103Paになるように減圧し、更に同減圧度で2.5時間反応を行い、重合を終了し、ポリエステルを得た。
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸100重量部、三菱化学社製工業グレードの1,4−ブタンジオール99.2重量部、リンゴ酸0.38重量部(コハク酸に対して総リンゴ酸量0.33モル%)を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を攪拌しながら1時間かけて230℃まで昇温し、この温度で1時間反応させた。その後、上記の触媒溶液を添加した。添加量は得られるポリエステルあたりチタン原子として50ppmとなる量とした。反応温度を250℃まで徐々に昇温し、同時に2時間かけて0.06×103Paになるように減圧し、更に同減圧度で2.5時間反応を行い、重合を終了し、ポリエステルを得た。
(ポリマーの評価)
・黄色度(YI)
得られたポリエステルのYIをJIS K7105の方法に基づいて日本電色工業株式会社製 Color meter ZE−6000を用いて、セルにポリマーのチップを入れて、反射法により4回測定し、その平均値をYIとした。
・黄色度(YI)
得られたポリエステルのYIをJIS K7105の方法に基づいて日本電色工業株式会社製 Color meter ZE−6000を用いて、セルにポリマーのチップを入れて、反射法により4回測定し、その平均値をYIとした。
・還元粘度(IV)
得られたポリエステルを濃度0.5g/dLとなるようにフェノール/テトラクロロエタン(1/1(重量比)混合液)に溶解し、溶液が30℃の恒温槽中で粘度管を落下する時間t(sec)を測定した。また溶媒のみの落下する時間t0(sec)を測定し30℃での還元粘度ηsp/C(=(t−t0)/t0・C)を算出した(Cは溶液の濃度)。
得られたポリエステルを濃度0.5g/dLとなるようにフェノール/テトラクロロエタン(1/1(重量比)混合液)に溶解し、溶液が30℃の恒温槽中で粘度管を落下する時間t(sec)を測定した。また溶媒のみの落下する時間t0(sec)を測定し30℃での還元粘度ηsp/C(=(t−t0)/t0・C)を算出した(Cは溶液の濃度)。
・末端カルボキシル基量(AV)
得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し、0.1N NaOHにて滴定した値であり、ポリエステル1×106g当たりの、カルボキシル基当量である。
得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し、0.1N NaOHにて滴定した値であり、ポリエステル1×106g当たりの、カルボキシル基当量である。
<ポリエステルの評価結果>
得られたポリエステルのYIは0.2、還元粘度(ηsp/c)は1.77、末端カルボキシル基量は28.30当量/トンであった。
得られたポリエステルのYIは0.2、還元粘度(ηsp/c)は1.77、末端カルボキシル基量は28.30当量/トンであった。
[比較例1]
実施例1において、流動層乾燥機による乾燥の代りに、以下の乾燥処理を行ったこと以外は同様にして得られたコハク酸を用いて同様にポリエステルの製造及び評価を行った。
実施例1において、流動層乾燥機による乾燥の代りに、以下の乾燥処理を行ったこと以外は同様にして得られたコハク酸を用いて同様にポリエステルの製造及び評価を行った。
即ち、取得したコハク酸をSUS製バットに敷き均一にした後、減圧乾燥機(タバイ社製:Labostar Vacuum Oven LHV−112)に設置し減圧下で乾燥した。乾燥温度は80℃、圧力は60〜110Torrで実施した。その結果、得られたポリエステルのYIは3.0、還元粘度(ηsp/c)は1.77、末端カルボキシル基量は23.90当量/トンであった。
[比較例2]
一般に市販されているコハク酸(川崎化成工業社製、Lot.98M33)を用いて、実施例1と同様にポリエステルを製造し、得られたポリエステルを評価したところ、YIは11.4、還元粘度(ηsp/c)は1.73、末端カルボキシル基量は27.00当量/トンであった。
一般に市販されているコハク酸(川崎化成工業社製、Lot.98M33)を用いて、実施例1と同様にポリエステルを製造し、得られたポリエステルを評価したところ、YIは11.4、還元粘度(ηsp/c)は1.73、末端カルボキシル基量は27.00当量/トンであった。
[比較例3]
実施例1において、乾燥中のコハク酸の品温が40℃となる条件で乾燥を行ったこと以外は同様にして得られたコハク酸を用いて同様にポリエステルの製造及び評価を行った。
その結果、得られたポリエステルのYIは5.7、還元粘度(ηsp/c)は1.75、末端カルボキシル基量は28.48当量/トンであった。
実施例1において、乾燥中のコハク酸の品温が40℃となる条件で乾燥を行ったこと以外は同様にして得られたコハク酸を用いて同様にポリエステルの製造及び評価を行った。
その結果、得られたポリエステルのYIは5.7、還元粘度(ηsp/c)は1.75、末端カルボキシル基量は28.48当量/トンであった。
上記の実施例1及び比較例1〜3の結果を表2にまとめる。
表2より、本発明の方法で製造されたコハク酸を用いて、着色の非常に少ない、高品質のポリエステルを製造することができることが分かる。
1 スタティックミキサー
2 ミキサーセトラー型抽出装置
3 遠心沈降機
4 向流多段抽出塔
2 ミキサーセトラー型抽出装置
3 遠心沈降機
4 向流多段抽出塔
Claims (4)
- バイオマス資源から誘導された粗コハク酸組成物を、温風に直接接触させて乾燥する工程を有するコハク酸の製造方法であって、乾燥中のコハク酸の品温が60℃以上130℃となるように乾燥する、コハク酸の製造方法。
- 乾燥中のコハク酸の品温が60℃以上130℃以下となるように、0.1時間以上10時間以下乾燥する、請求項1に記載のコハク酸の製造方法。
- 粗コハク酸組成物が、バイオマス資源に微生物を作用させて誘導されたものである、請求項1または請求項2に記載のコハク酸の製造方法。
- 粗コハク酸組成物が、該組成物に対して1重量%以上20重量%以下の水を含有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコハク酸の製造方法。
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JP2012002258A JP2013141432A (ja) | 2012-01-10 | 2012-01-10 | コハク酸の製造方法 |
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Citations (2)
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---|---|---|---|---|
WO2011115136A1 (ja) * | 2010-03-16 | 2011-09-22 | 三菱化学株式会社 | コハク酸の製造方法 |
JP2011219409A (ja) * | 2010-04-08 | 2011-11-04 | Mitsubishi Chemicals Corp | 脂肪族ジカルボン酸の製造方法 |
-
2012
- 2012-01-10 JP JP2012002258A patent/JP2013141432A/ja active Pending
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