JP2015183189A - 方向性電磁鋼板とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低鉄損で鉄損値のばらつきが小さく、被膜品質にも優れる方向性電磁鋼板を提供するとともに、その有利な製造方法を提案する。
【解決手段】C:0.002〜0.10%、Si:2.0〜8.0%、Mn:0.005〜1.0%を含有する鋼素材を熱間圧延し、冷間圧延し、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)し焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍し、絶縁被膜を被成して方向性電磁鋼板を製造する際、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程における100〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱するとともに、上記加熱途中の250〜600℃間の温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を2〜6回繰り返して行い、GDSで測定した鋼板表面のSi,Mg,OおよびFeの深さ方向濃度分布から求められる被膜成分密度の深さ方向の傾きを適正範囲に制御することで、低鉄損で鉄損値のばらつきが小さく、被膜品質にも優れる方向性電磁鋼板を得る。
【選択図】図3

Description

本発明は、方向性電磁鋼板とその製造方法に関し、具体的には、低鉄損で鉄損値のばらつきが小さく、しかも、被膜品質にも優れる方向性電磁鋼板の製造方法と、その製造方法に関するものである。
電磁鋼板は、変圧器やモータの鉄心等の素材として広く用いられている軟磁性材料であり、中でも方向性電磁鋼板は、結晶方位がGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に高度に集積して磁気特性に優れているため、主として大型の変圧器の鉄心等に使用されている。変圧器における無負荷損(エネルギーロス)を低減するためには、素材鋼板が低鉄損であることが重要である。方向性電磁鋼板において、鉄損を低減する方法としては、Si含有量の増加や、板厚の低減、結晶方位の配向性向上、鋼板への張力付与、鋼板表面の平滑化、二次再結晶組織の細粒化などが有効であることが知られている。
上記の方法のうち、二次再結晶粒を細粒化する技術として、脱炭焼鈍時に急速加熱したり、脱炭焼鈍直前に急速加熱する熱処理を施したりすることで、一次再結晶集合組織を改善する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、最終板厚まで圧延した冷延板を脱炭焼鈍する際、PHO/PHが0.2以下の非酸化性雰囲気中で、100℃/s以上で700℃以上の温度に急速加熱することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。また、特許文献2には、雰囲気中の酸素濃度を500ppm以下とし、加熱速度100℃/s以上で800〜950℃の温度に急速加熱し、続いて急速加熱した温度より低い775〜840℃の温度に保定し、さらに、815〜875℃の温度に保定することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。また、特許文献3には、600℃以上の温度域を95℃/s以上の昇温速度で800℃以上に加熱した後、この温度域の雰囲気を適正に制御することによって、被膜特性と磁気特性に優れる電磁鋼板を得る技術が開示されている。さらに、特許文献4には、熱延板中のAlNとしてのN量を25ppm以下に制限し、かつ、脱炭焼鈍時に加熱速度80℃/s以上で700℃以上まで加熱することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。
急速加熱することで一次再結晶集合組織を改善するこれらの技術は、急速加熱する温度範囲を室温から700℃以上とし、昇温速度も一定の範囲に規定するものである。この技術思想は、再結晶温度近傍までを短時間で昇温することで、通常の加熱速度であれば優先的に形成されるγファイバー({111}//ND方位)の発達を抑制し、二次再結晶の核となる{110}<001>組織の発生を促進することで、一次再結晶集合組織を改善しようとするものである。そして、この技術の適用により、二次再結晶後の結晶粒(Goss方位粒)が細粒化し、鉄損特性が改善されるとされている。
一方、最終板厚に冷間圧延した鋼板を脱炭焼鈍する前に急速加熱することで、脱炭性が低下することや内部酸化層の構造がデンドライト状となることが問題となっている。この問題を解決する技術として、例えば、特許文献5には、雰囲気の酸化性を適正な範囲にし、鋼板表面に緻密な酸化層が形成されるのを抑制することで脱炭性を改善する技術が、また、特許文献6には、脱炭焼鈍後の鋼板表面を高周波グロー放電発光分光分析法により測定し、鋼板中の少なくとも1つの元素の量の深さ方法の変化から、鋼板の表面を評価し、脱炭焼鈍条件投影を制御する手法が提案されている。
特開平07−062436号公報 特開平10−298653号公報 特開2003−027194号公報 特開平10−130729号公報 特開平10−152724号公報 特開2004−191237公報
ところで、発明者らの知見によれば、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の昇温速度を高くすると、昇温時の鋼板内部の温度ムラに起因すると思われる鉄損特性のばらつきが大きくなる。製品出荷時の鉄損評価は、一般に、鋼板の全幅の鉄損を平均した値を用いて行われているが、ばらつきが大きいと、鋼板全幅平均の鉄損値が、最良の場所と比較して大きく劣ることとなり、結果として所期した急速加熱の効果が得られなくなる。
また、方向性電磁鋼板の表面には、鋼板側にセラミックス質の下地被膜と表面側にガラス質の絶縁被膜の2層の被膜が形成されているのが一般的である。ガラス質と地鉄とは密着性が低いため、フォルステライト等の下地被膜を間に介することで被膜密着性を向上させている。しかし、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の昇温速度を高くすると、鋼板表面に形成されたフォルステライト層の膜厚過剰に起因すると思われる点状欠陥の発生率が高くなるという問題もある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の昇温パターンを適正化することで、低鉄損で鉄損値のばらつきが小さく、しかも、被膜品質にも優れる方向性電磁鋼板を提供するとともに、その有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の昇温過程において急速加熱する際、回復が起こる温度領域で所定時間の保定処理を所定回数繰り返して施すことにより、鋼板内部の温度が均一化され、急速加熱の効果、すなわち、<111>//ND方位が優先的に回復を起こして一次再結晶後の<111>//ND方位が減少し、Goss核が増加する結果、二次再結晶後の再結晶が細粒化されるという効果を、鋼板の全幅にわたって均等に得られるので、低鉄損でかつ鉄損値のばらつきが小さい方向性電磁鋼板を安定して得ることができるようになること、さらに、上記保定処理を施すことにより、脱炭焼鈍初期の酸化過程において、シリカSiOの核が緻密に生成され、薄くて均一な内部酸化層が形成され、その後の脱炭焼鈍時に均一な内部酸化層に成長させることができるので、仕上焼鈍後のフォルステライト被膜の膜厚のバラツキが極めて小さく、被膜欠陥も少ない方向性電磁鋼板を得ることができるようになることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち本発明は、鋼板表面にセラミックス質の下地被膜とガラス質の絶縁被膜とを有する方向性電磁鋼板において、上記鋼板表面をグロー放電発光分光分析法で分析し、得られたSi,Mg,OおよびFeの各元素の深さ方向(z方向)の発光強度をそれぞれISi、IMg、IおよびIFeとし、上記発光強度から下記(1)式;
Figure 2015183189
を用いて求められるaを被膜成分密度と定義したとき、上記被膜成分密度aが0.80〜0.97の領域における、下記(2)式;
Figure 2015183189
で定義される上記被膜成分密度aの深さ方向の傾きの平均値bが8μm−1以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
本発明の方向性電磁鋼板は、上記被膜成分密度aの深さ方向の傾きの平均値bが12〜200の範囲にあることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板は、C:0.005mass%以下、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有する成分組成からなることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板は、鋼板表面に、圧延方向と交差する方向に溝を形成する、あるいは、連続的または断続的に電子ビームまたはレーザーを照射する磁区細分化処理が施されてなることを特徴とする。
また、本発明は、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%、Mn:0.005〜1.0mass%を含有する成分組成からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、内部酸化層を形成する一次再結晶焼鈍を施し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布・乾燥してコイルに巻き取った後、仕上焼鈍を施し、その後、鋼板表面に絶縁被膜を被成する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程における100〜700℃の区間を昇温速度50℃/s以上で急速加熱するとともに、上記加熱途中の250〜600℃間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を2〜6回繰り返して行うことを特徴とする上記いずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
本発明によれば、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)を急速加熱する際、回復が起こる温度領域で所定時間の保定処理を所定回数繰り返して施すことで、低鉄損でかつ鉄損値のばらつきが小さい方向性電磁鋼板を安定して製造することが可能となる。また、上記の保定処理を、内部酸化層の核が発生する温度領域で施すことで、均一で被膜外観に優れる方向性電磁鋼板を安定して製造することが可能となる。
一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)における本発明の昇温パターンを説明する図である。 被膜成分密度aの0.80〜0.97間における傾き(da/dz)に及ぼす保定処理の影響を示すグラフである。 一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の加熱途中における保定処理回数と鉄損W17/50との関係を示すグラフである。 一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の加熱途中における保定温度と鉄損W17/50との関係を示すグラフである。 一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の加熱途中における保定時間と鉄損W17/50との関係を示すグラフである。
まず、本発明を開発する契機となった実験について説明する。
<実験1>
C:0.065mass%、Si:3.4mass%、Mn:0.08mass%を含有する鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1410℃に再加熱し、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とし、1050℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、一次冷間圧延して中間板厚の1.8mmとし、1120℃×80秒の中間焼鈍を施した後、200℃の温間圧延により最終板厚0.27mmの冷延板とした。
次いで、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で840℃×80秒の脱炭焼鈍を兼ねて行う一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍の加熱は、100〜700℃間を昇温速度100℃/sで昇温し、この際、表1に示したように、加熱途中の450〜700℃間のいずれかの温度で2秒間保持する保定処理を0回(保定処理無し)〜7回繰り返して行い、その後、700℃から840℃までを100℃/sで昇温する条件で行った。ここで、上記昇温速度100℃/sは、図1に示したように、100℃から700℃まで到達する時間から、保定時間t2およびt4を除いた(t1+t3+t5)の時間における平均昇温速度((700−100)/(t1+t3+t5))である(以降、保定回数にかかわらず、上記と同様、保定時間を除いた加熱時間における平均昇温速度とする。)。
次いで、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、コイルに巻き取り、二次再結晶焼鈍と、水素雰囲気下で1200℃×7時間の純化焼鈍とからなる仕上焼鈍を施した。その後、張力付与被膜を被成する平坦化焼鈍を施して製品コイルとした。その際、鋼板の表面をコイル全長にわたって目視観察し、点状の被膜欠陥が発生した長さを測定し、点状欠陥の発生率を求めた。ここで、上記点状欠陥の発生率は、(欠陥発生長さ/コイル長さ)×100(%)で定義した(以降、同様とする。)。
Figure 2015183189
また、上記のようにして得た各製品コイルから、鋼板の板幅方向に幅100mm×長さ500mmの試験片を各条件10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定し、10枚の鉄損値の平均値を求めた。この鉄損測定方法によれば、鉄損のばらつきが板幅方向にある場合には平均値が悪化するので、ばらつきを含めて鉄損を評価できると考えられるからである。
また、上記の各製品コイルから採取した試験片の表面を、グロー放電発光分光分析法(GDS:Glow Discharge Spectroscopy)で分析し、深さ方向(z方向とする。以降同じ)のSi,Mg,OおよびFeの発光強度(ISi、IMg、IOおよびFe)分布を測定し、下記(1)式;
Figure 2015183189
で定義される被膜成分密度aが0.80〜0.97の間における、下記(2)式;
Figure 2015183189
で定義される上記aの深さ方向の傾き(da/dz)の平均値b(以降、単に「被膜成分密度aの傾きb」とも称する)を求めた。
なお、参考として、図2に、上記実験において保定処理回数が0回(保定処理なし)のときと、2回のときのGDS測定結果を比較して示す。保定処理を施さない場合には、被膜成分密度は徐々に低下している(図2(a))のに対して、保定処理を2回施した場合には、被膜成分密度aは急激に低下している(図2(b))。すなわち、保定処理を施すことによって、被膜成分密度aの0.80〜0.97間における傾き(da/dz)が大きく変化していることがわかる。
上記点状欠陥の発生率、鉄損W17/50および被膜成分密度aの傾きbの測定結果を表1に併記するとともに、保定処理回数と鉄損W17/50との関係を図3に示した。
これらの結果から、加熱途中で保定処理を2〜6回の範囲で繰り返して施すことで、鉄損が低下し、点状欠陥の発生率も低減していることがわかった。
また、鉄損が低減し、点状欠陥の発生率も低減している製品コイルでは、被膜成分密度aの傾きbが8μm−1以上であることがわかった。
<実験2>
実験1で得られた最終板厚0.27mmの冷延板に、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で、840℃×80秒の脱炭焼鈍を兼ねて行う一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍の加熱は、100〜700℃間を昇温速度100℃/sで昇温し、この際、表2に示したように、加熱途中の200〜700℃間のいずれかの温度で2秒間保持する保定処理を2回繰り返して行い、その後、700℃から840℃までを100℃/sで昇温する条件で行った。
次いで、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、コイルに巻き取り、二次再結晶焼鈍と、水素雰囲気下で1200℃×7時間の純化焼鈍とからなる仕上焼鈍を施した。その後、張力付与被膜を被成する平坦化焼鈍を施して製品コイルとした。その際、鋼板の表面をコイル全長にわたって目視観察し、点状の被膜欠陥発生長さを測定し、点状欠陥の発生率を求めた。
Figure 2015183189
斯くして得た製品コイルから試験片を採取し、実験1と同様にして、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定するとともに、試験片表面をGDSで分析して被膜成分密度aの傾きbを求めた。上記点状欠陥の発生率、鉄損W17/50および被膜成分密度aの傾きbの測定結果を表2に併記するとともに、加熱途中の2回の保定温度と鉄損17/50との関係を図4に示した。なお、図4の保定温度は、高い方の保定温度が450℃以下の場合には低い方の保定温度を、一方、高い方の保定温度が450℃超えの場合には高い方の保定温度を用いた。
これらの結果から、保定温度を250〜600℃の間とすることで、鉄損が低減するとともに、被膜成分密度aの傾きbが8μm−1以上であり、被膜不良の発生率が低減していることがわかった。
<実験3>
実験1で得られた最終板厚0.27mmの冷延板に、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で、840℃×80秒の脱炭焼鈍を兼ねて行う一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍の加熱は、100〜700℃間を昇温速度100℃/sで昇温し、この際、表3に示したように、加熱途中の450℃と500℃において、それぞれ0.5〜20秒間保持する保定処理を2回繰り返して行い、その後、700℃から840℃までを100℃/sで昇温する条件で行った。
次いで、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、コイルに巻き取り、二次再結晶焼鈍と、水素雰囲気下で1200℃×7時間の純化焼鈍とからなる仕上焼鈍を施した。その後、張力付与被膜を被成する平坦化焼鈍を施して製品コイルとした。その際、鋼板の表面をコイル全長にわたって目視観察し、点状の被膜欠陥発生長さを測定し、点状欠陥の発生率を求めた。
Figure 2015183189
斯くして得た製品コイルから試験片を採取し、実験1と同様にして、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定するとともに、試験片表面をGDSで分析して被膜成分密度aの傾きbを求めた。上記点状欠陥の発生率、鉄損W17/50および被膜成分密度aの傾きbの測定結果を表3に併記するとともに、加熱途中の2回の保定時間と鉄損17/50との関係を図5に示した。なお、図5の保定時間は、2回の保定時間が異なる場合には、長い方の時間を用いた。
これらの結果から、1回当たりの保定処理時間を0.5〜10秒の範囲とすることで、鉄損が低減し、被膜成分密度aの傾きbが8μm−1以上であり、被膜不良の発生率が低減していることがわかった。
上記実験1〜3の結果のように、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の加熱過程の適正温度で適正時間の保定処理を適正回数繰り返して行うことで鉄損が低減する理由については、まだ十分に明らかとなっていないが、発明者らは、以下のように考えている。
急速加熱は、前述したように、再結晶集合組織における<111>//ND方位の発達を抑制する効果がある。一般に、冷間圧延後の冷延板の<111>//ND方位には、他の方位より多くの歪が導入されているため、蓄積された歪エネルギーが高い状態にある。そのため、通常の20℃/s程度の昇温速度の加熱では、蓄積された歪エネルギーが高い<111>//ND方位から優先的に再結晶を起こす。再結晶においては、<111>//ND方位からは<111>//ND方位粒が出現するため、再結晶後の組織は<111>//ND方位が主方位となる。しかし、急速加熱を行うと、再結晶によって放出されるエネルギーよりも多くの熱エネルギーが付与されるため、比較的蓄積された歪エネルギーの低い方位でも再結晶を起こすようになり、相対的に再結晶後の<111>//ND方位が減少し、磁気特性が向上する。これが、従来技術において急速加熱を行う理由である。
しかし、ここで、上記急速加熱途中の回復が起こる温度で、所定時間保持する保定処理を施した場合には、歪エネルギーが高い<111>//ND方位が優先的に回復を起こす。そのため、<111>//ND方位が再結晶を起こす駆動力が選択的に低下し、その結果、それ以外の方位が再結晶を起こすようになるため、相対的に再結晶後の<111>//ND方位がさらに減少する。
また、上記保定処理を2回以上繰り返して行う理由は、1回の保定処理を行うときより効率的に<111>//ND方位を減少させることができるため、鉄損特性をより向上させることができる。一方、保定処理回数が7回を超えると、また、所定時間を超える保定処理を行うと、圧延組織の広い範囲で回復が起こってしまうため、再結晶を起こすことなく、回復組織がそのまま残存した組織となってしまう。その結果、二次再結晶に大きな悪影響を与え、却って鉄損特性の低下につながることになる。
なお、上記考えによれば、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の加熱途中の回復が起こる温度で短時間の保定処理を行うことで磁気特性が向上する効果が得られるのは、従来のラジアントチューブ等を用いた昇温速度(10〜20℃/s)よりも速い加熱速度、具体的には昇温速度が50℃/s以上の場合に限られると考えられる。そこで、本発明においては、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の加熱過程の100〜700℃の区間における昇温速度を50℃/s以上と規定する。
また、上記実験1〜3の結果のように、一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)の加熱過程の適正温度で適正時間の保定処理を適正回数繰り返して行うことで被膜不良の発生率が低減する理由についても、まだ十分に明らかとなっていないが、次のように考えている。
方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍過程においては、上記一次再結晶集合組織の形成と同時に、ファイアライト(FeSiO)とSiOを含む内部酸化層が形成される。その初期段階である加熱過程では、内部酸化層の成長の基点となる核が発生し、成長してSiOを主成分とする初期酸化膜を形成し、その後、さらに内部酸化層に成長していく。
ここで、上記加熱過程を急速加熱することは、内部酸化層の核が発生するための時間を短くするため、その後の被膜成長過程において均一な被膜形成が困難となる。しかし、上記急速加熱の途中で保定処理を繰り返して行うことで、内部酸化層の核の発生が十分になされるようになるので、均一な内部酸化層が形成される。その結果、内部酸化層の構造を継承する製品板の被膜(フォルステライト被膜)も均一で欠陥の無いものとなる。
なお、上記の焼鈍方法により得られる製品板は、鋼板表面をGDSで分析して得られる深さ方向のSi,Mg,OおよびFeの発光強度(ISi、IMg、IOおよびFe)から、下記(1)式;
Figure 2015183189
で定義される被膜成分密度aを求めたときに、上記被膜成分密度aが0.80〜0.97の間における、下記(2)式;
Figure 2015183189
で定義される上記被膜成分密度aの深さ方向の傾きの平均値bは8μm−1以上の値となる。そして、上記被膜成分密度aの傾きbが8μm−1以上の被膜は、被膜欠陥のない被膜品質に優れたものとなる。
その理由について、発明者らは、以下のように考えている。
まず、被膜成分密度aは、(1)式から理解されるように、被膜中の被膜成分Si,Mg,Oの濃度(逆に見れば、被膜中のFe濃度)と考えることができる。また、被膜成分密度aが0.80〜0.97の領域(Feが0.03〜0.20の領域)の上記aの傾き(da/dz)とは、Feを含まない層からFeを含む層に移行した初期の領域、すなわち、鋼板表面のガラス質の絶縁被膜からセラミックス質の下地被膜(フォルステライト被膜)に移行した初期の領域における被膜成分密度aの傾きと考えることができる。なお、上記傾きを表わすのに平均値を用いる理由は、この間における被膜成分密度の傾きのばらつきが大きいからである。
そして、被膜成分密度aの傾きbは、下地被膜の領域に入り込んだ地鉄成分を反映するため、下地被膜と地鉄との界面の均一性(平坦度)と強い相関があり、上記領域における被膜成分密度aの傾きbが大きいほど被膜欠陥が発生し難くなることを意味する。よって、本発明では、上記実験1〜3の結果に基き、被膜成分密度aの傾きbを8μm−1以上と規定する。しかし、上記被膜成分密度aの傾きbが300μm−1を超えて大きくなると、フォルステライト被膜から地鉄への変化が短距離で起こる、即ち、フォルステライト被膜と地鉄との界面が平坦化し、機械的な引っ掛かりのない状態となることから、被膜密着性が著しく低下するようになる。よって、被膜成分密度aの傾きbの上限は300μm−1程度とするのが望ましい。好ましくは12〜200μm−1の範囲、さらに好ましくは15〜100μm−1の範囲である。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板は、鋼板表面にセラミックス質の下地被膜とガラス質の絶縁被膜とを有するものであることが必要であり、その製造方法は、所定の成分組成からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布・乾燥してコイルに巻き取った後、仕上焼鈍を施し、その後、鋼板表面に絶縁被膜を被成する一連の工程からなるものである。
ここで、上記鋼素材の成分組成および一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)以降以外の製造条件については、従来公知の製造条件を採用することができ、特に制限はない。そこで、以下に、鋼素材の成分組成と一次再結晶焼鈍(脱炭焼鈍)以降の条件について説明する。
まず、本発明の方向性電磁鋼板の素材となる鋼素材(スラブ)は、以下の成分組成を有するものであることが好ましい。
C:0.002〜0.10mass%
Cは、0.002mass%に満たないと、粒界強化能が失われ、スラブに割れが生じるなど、製造に支障を来たすようになる。一方、0.10mass%を超えると、後工程の脱炭焼鈍で、磁気時効が起こらない0.005mass%以下に低減することが困難となる。よって、Cの含有量は0.002〜0.10mass%の範囲とする。好ましくは0.010〜0.080mass%の範囲である。
Si:2.0〜8.0mass%
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を低減すのに必要な元素である。上記効果は、2.0mass%未満では十分ではなく、一方、8.0mass%を超えると、加工性が低下し、圧延して製造すること困難となる。よって、Siは2.0〜8.0mass%の範囲とする。好ましくは2.5〜4.5mass%の範囲である。
Mn:0.005〜1.0mass%
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。上記効果は、0.005mass%未満では十分ではなく、一方、1.0mass%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜1.0mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.20mass%の範囲である。
上記C,SiおよびMn以外の成分については、二次再結晶を生じさせるために、インヒビターを利用する場合と、しない場合とに分けられる。
まず、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用する場合には、例えば、AlN系インヒビターを利用するときには、AlおよびNを、それぞれAl:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%の範囲で含有させるのが好ましい。また、MnS・MnSe系インヒビターを利用するときには、前述した量のMnと、S:0.002〜0.030mass%およびSe:0.003〜0.030mass%のうちの1種または2種を含有させることが好ましい。それぞれ添加量が、上記下限値より少ないと、インヒビターの抑制効果が十分に得られず、一方、上限値を超えると、インヒビター成分がスラブ加熱時に未固溶となって残存し、二次再結晶不良を起こし、磁気特性の低下をもたらす。なお、AlN系とMnS・MnSe系のインヒビターは併用して用いてもよい。
一方、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用しない場合には、上述したインヒビター形成成分であるAl,N,SおよびSeの含有量を極力低減し、Al:0.01mass%未満、N:0.0050mass%未満、S:0.0050mass%未満およびSe:0.0030mass%未満に低減した鋼素材を用いるのが好ましい。
なお、本発明に用いる鋼素材(スラブ)の上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、磁気特性の改善を目的として、Ni:0.001〜0.015mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.10mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.0010〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を適宜含有していてもよい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法における一次再結晶焼鈍条件について説明する。
本発明における一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍は、加熱過程における昇温速度を50℃/s以上とする必要がある。上記急速加熱により、一次再結晶集合組織中のGoss方位の割合を増加させ、二次再結晶後のGoss粒の数を増加させて、平均粒径を小さくすることができるので、鉄損特性を向上させることができる。ただし、加熱速度が速くなりすぎると、ゴス方位{110}<001>に蚕食される{lll}組織の量が減少し、二次再結晶不良を生じやすくなるため、昇温速度の上限は700℃/s程度とすることが好ましい。好ましい昇温速度は50〜700℃/sの範囲である。
また、一次再結晶焼鈍で急速加熱を行う温度範囲は100〜700℃までの間とする。鋼板が焼鈍炉に到達する際の温度は、外気温や前工程における処理温度、鋼板の搬送時間等によってばらつくため、100℃からとすれば制御が容易となる。一方、急速加熱を終了する温度を、一次再結晶が開始する700℃超えとしても、急速加熱の効果が飽和し、急速加熱に要するエネルギーも増加するだけなので好ましくないからである。
また、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程では、急速加熱の途中の250〜600℃間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を2〜6回繰り返して行うことが必要である。保定温度が250℃未満、あるいは、保定時間が0.5秒未満では、保定処理の効果が小さく、一方、保定温度が600℃超え、あるいは、保定時間が10秒超えでは、圧延組織の広範囲にわたって回復が進行し、焼鈍後の組織が、再結晶していない回復組織となってしまうからである。なお、好ましい保定温度は300〜550℃の範囲、また、好ましい保定時間は0.5〜5.0秒の範囲である。
また、保定処理の回数を、2〜6回とする理由は、1回だけでは<111>//ND方位を減少させる効果に乏しく、鉄損特性改善効果が小さいからであり、一方、7回を超えると、圧延組織の広範囲にわたって回復が進行し、焼鈍後の組織が、再結晶していない回復組織となってしまうからである。また、保定処理の回数を2〜6回とすることによって、内部酸化層の核が微細に析出し、内部酸化層が均一に形成される結果、被膜特性が向上するからである。好ましい保定処理回数は、2〜5回の範囲である。
なお、上記一次再結晶焼鈍における脱炭焼鈍は、必ずしも一次再結晶焼鈍と兼ねて行う必要はなく、別途に行ってもよいが、脱炭焼鈍を一次再結晶焼鈍より先に行う場合には、脱炭焼鈍で急速加熱を行う必要がある。また、脱炭焼鈍を行う場合は、鋼板中のCが0.0050mass%未満となるよう実施するのが好ましい。従って、鋼素材(スラブ)のCが0.0050mass%未満の場合には必ずしも行う必要がない。
次に、一次再結晶焼鈍後かつ仕上焼鈍の前に鋼板表面に塗布する焼鈍分離剤は、フォルステライト等のセラミック質の被膜を形成するためには、MgOを主成分とする、あるいは、MgOを含有する焼鈍分離剤を用いることが好ましい。
鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した鋼板は、その後、コイルに巻き取った後、仕上焼鈍を施し、Goss方位に高度に集積した二次再結晶組織を発達させるとともに、フォルステライト被膜(下地被膜)を形成させる。なお、上記仕上焼鈍では、二次再結晶を発現させるためには800℃以上の温度に、また、二次再結晶を完了させるためには1100℃の温度まで加熱することが好ましい。さらに、フォルステライト被膜を形成し、純化処理を施すためには、引き続き1200℃程度の温度まで加熱するのが好ましい。
上記仕上焼鈍後の鋼板は、その後、鋼板表面に付着した未反応の焼鈍分離剤を除去した後、形状矯正のための平坦化焼鈍を施すことが、鉄損の低減には有効である。この際、上記平坦化焼鈍と同時に、あるいは、その前もしくはその後、鋼板表面に絶縁被膜を被成する必要がある。上記絶縁被膜は、鋼板に張力を付与し、鉄損を低減する効果が大きいガラス質の張力付与被膜を適用するのが好ましい。具体的には、珪リン酸塩系のガラス被膜等を用いることが好ましい。なお、上記張力付与被膜の形成には、バインダーを介して張力被膜を塗布する方法や、物理蒸着法や化学蒸着法で無機物の被膜を鋼板表層に形成する方法を採用すると、より被膜密着性に優れかつ鉄損低減効果が大きい絶縁被膜を形成することができるので好ましい。
また、本発明の方向性電磁鋼板の鉄損をより低減するためには、磁区細分化処理を施すことが好ましい。処理方法としては、一般的に実施されている、最終製品板に溝を形成したり、電子ビーム照射やレーザー照射、プラズマ照射により線状または点状に熱歪や衝撃歪を導入する方法、最終板厚に冷間圧延した後の中間工程において、鋼板表面にエッチング加工を施して溝を形成したりする方法等を用いることができる。
表4に記載の成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるNo.1〜17の鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1380℃に再加熱し、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とし、1030℃×10秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚0.27mmの冷延板とした。
次いで、50vol%H−50vol%Nの湿潤雰囲気下で840℃×60秒の脱炭焼鈍を兼ねて行う一次再結晶焼鈍を施した。なお、上記一次再結晶焼鈍の加熱は、100〜700℃間を昇温速度75℃/sで昇温し、この際、加熱途中の450℃と500℃において、それぞれ2秒間保持する保定処理を行い、その後、700℃から840℃までを75℃/sで昇温する条件で行った。
次いで、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、コイルに巻き取り、二次再結晶焼鈍と、水素雰囲気下で1220℃×7時間の純化焼鈍からなる仕上焼鈍を施した。上記仕上焼鈍の雰囲気は、純化を行う1220℃保定時はHガス、昇温時(二次再結晶焼鈍を含む)および降温時はArガスとした。その後、張力付与被膜を被成する平坦化焼鈍を施して製品コイルとした。その際、鋼板の表面をコイル全長にわたって目視観察し、点状の被膜欠陥発生長さを測定し、点状欠陥の発生率を求めた。
Figure 2015183189
斯くして得た製品コイルから鋼板の板幅方向に幅100mm×長さ500mmの試験片を各条件10枚ずつ採取し、JIS C2556に記載の方法で鉄損W17/50を測定し、10枚の測定値の平均値を求めた。
さらに、鉄損を測定した上記試験片の表面に、圧延方向に対して垂直方向かつ板幅方向に平行方向に直線状の溝を付与する、あるいは、電子ビームを照射して熱歪を付与する磁区細分化処理を施した後、再度、鉄損W17/50を測定し、その平均値を求めた。
また、上記の各製品コイルから採取した試験片の表面を、グロー放電発光分光分析法(GDS)で深さ方向のSi,Mg,OおよびFeの濃度分布を分析し、得られたSi,Mg,OおよびFeの発光強度(ISi、IMg、IOおよびFe)から、下記(1)式;
Figure 2015183189
で定義される被膜成分密度aを求め、上記aが0.80〜0.97の間における、下記(2)式;
Figure 2015183189
で定義される被膜成分密度aの深さ方向の傾きの平均値bを求めた。
上記点状欠陥の発生率、鉄損W17/50および被膜成分密度aの傾きbの測定結果を表4に併記した。これから、本発明に適合する成分組成を有する鋼素材を用いて、本発明に適合する条件で保定処理を施して製造した方向性電磁鋼板は、鉄損特性に優れかつ被膜品質にも優れていることがわかる。また、本発明の方向性電磁鋼板は、磁区細分化処理を施すことによって、より鉄損特性が改善されることも確認された。

Claims (5)

  1. 鋼板表面にセラミックス質の下地被膜とガラス質の絶縁被膜とを有する方向性電磁鋼板において、
    上記鋼板表面をグロー放電発光分光分析法で分析し、得られたSi,Mg,OおよびFeの各元素の深さ方向(z方向)の発光強度をそれぞれISi、IMg、IおよびIFeとし、上記発光強度から下記(1)式を用いて求められるaを被膜成分密度と定義したとき、
    上記被膜成分密度aが0.80〜0.97の領域における、下記(2)式で定義される上記被膜成分密度aの深さ方向の傾きの平均値bが8μm−1以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板。

    Figure 2015183189
    Figure 2015183189
  2. 上記被膜成分密度aの深さ方向の傾きの平均値bが12〜200の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
  3. C:0.005mass%以下、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有する成分組成からなることを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板。
  4. 鋼板表面に、圧延方向と交差する方向に溝を形成する、あるいは、連続的または断続的に電子ビームまたはレーザーを照射する磁区細分化処理が施されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板。
  5. C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%、Mn:0.005〜1.0mass%を含有する成分組成からなる鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、内部酸化層を形成する一次再結晶焼鈍を施し、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布・乾燥してコイルに巻き取った後、仕上焼鈍を施し、その後、鋼板表面に絶縁被膜を被成する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記一次再結晶焼鈍の加熱過程における100〜700℃の区間を昇温速度50℃/s以上で急速加熱するとともに、
    上記加熱途中の250〜600℃間のいずれかの温度で0.5〜10秒間保持する保定処理を2〜6回繰り返して行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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