JP2015178475A - 高純度フェノール - Google Patents

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さやか 島貫
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【課題】高純度で色相に優れたフェノールを提供する。【解決手段】窒素化合物の含有量が窒素原子量として0.1ppm未満であり、蟻酸と酢酸の合計含有量が1ppm以上5ppm未満であり、ヒドロキノン、カテコールおよびベンゾキノンが何れも0.4ppm未満であることを特徴とするフェノール。このようなフェノールは、少なくともクメンを酸化してクメンハイドロパーオキサイドを含む反応液を生成させる酸化工程、前記クメンハイドロパーオキサイドを酸分解することによりフェノールとアセトンとを生成させる酸分解工程及び前記フェノールとアセトンが生成された液からフェノール以外の成分を除去する精製工程を有するフェノールの製造方法であって、前記精製工程において、蒸留により蟻酸と酢酸の合計含有量を5ppm未満にすることを特徴とする、フェノールの製造方法により得ることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、高純度で色相に優れたフェノールに関するものである。
フェノールは、工業的には、一般的にクメン法により製造される。クメン法によるフェノールの製造は、クメンを酸化してクメンハイドロパーオキサイドを含む反応液を生成させる酸化工程、前記クメンハイドロパーオキサイドを酸分解することによりフェノールとアセトンとを生成させる酸分解工程及び前記フェノールとアセトンが生成された液からフェノール以外の成分を除去する精製工程を有する。
フェノールは、ビスフェノールAの原料として使用されており、更にビスフェノールAはポリカーボネート樹脂の原料として使用されている。ポリカーボネート樹脂は、その優れた透明性を活かして各種光学用途に用いられているため、いかに着色が少ないポリカーボネート樹脂を得るかは非常に重要である。そして、遡ってポリカーボネート樹脂の原料となるフェノールについても着色が少ないことが望まれている。
クメン法フェノールについては、メシチルオキサイド、ヒドロキシアセトン、2−メチルベンゾフラン、シクロヘキサノール及びシクロヘキサノン等の着色原因物質を除くことにより、着色が軽減されることが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、クメン法によるフェノールの製造方法において、フェノール着色のメカニズムは未だ解明されておらず、どのような不純物をどの位の量にすれば、高純度で色相に優れたフェノールを得られるかについての検討は不十分であった。
特開2005‐2075号公報
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、高純度で色相に優れたフェノールを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが、クメン法によりフェノールを製造するに際し、精製工程の条件等と得られるフェノールに含まれる不純物およびフェノールの色相との関係について鋭意検討を行った。この結果、特定の不純物が特定量含まれるフェノールが色相に優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されたものである。即ち、本発明の第1の要旨は、窒素化合物の含有量が窒素原子量として0.1ppm未満であり、蟻酸と酢酸の合計含有量が1ppm以上5ppm未満であり、ヒドロキノン、カテコールおよびベンゾキノンが何れも0.4ppm未満であることを特徴とするフェノールに存する。
本発明によれば、高純度で色相に優れたフェノールを提供することが可能となる。また、色相評価結果に応じてフェノールの製造条件を調製することにより、高純度で色相に優れたフェノールを安定的に提供することが可能となる。
本発明の高純度フェノールを製造するための好ましいプロセスを示す図である。
本発明のフェノールは、クメン法により製造される。クメン法によるフェノールの製造は、クメンを酸化してクメンハイドロパーオキサイドを含む反応液を生成させる酸化工程、前記クメンハイドロパーオキサイドを酸分解することによりフェノールとアセトンとを生成させる酸分解工程及び前記フェノールとアセトンが生成された液からフェノール以外の成分を除去する精製工程(以下、「本発明に係る精製工程」と言う場合がある。)を有する。ここで、原料となるクメンは、通常ベンゼンとプロピレンとを反応させることにより得られたものを用いる。また、酸化工程で得られる液は、通常、酸分解工程に供する前に、脱ガスしてから減圧下で濃縮しておく。
本発明に係る精製工程では、蒸留により精製を行う。そして、この蒸留を以下のようにして行うことにより、本発明に係る精製工程に供する粗フェノールに含まれる蟻酸と酢酸の合計含有量を5ppm未満に減らすことができる。本発明に係る精製工程では、溶媒を供給しながら抽出蒸留を行うことが好ましい。また、前記精製工程では、蒸留によりフェノールより沸点が低い軽沸分およびフェノールより沸点が高い高沸分を除去することが好ましい。ここで、軽沸分および高沸分の除去は、1回の蒸留で同時に行っても、2回以上の蒸留により行っても良い。また、水抽出蒸留により軽沸分および高沸分の除去を行っても良い。
蒸留は、少なくとも3回行うことが好ましく、その1回目の蒸留(以下、「本発明に係る1回目の蒸留」と言う場合がある。)で軽沸分を留去し、その2回目の蒸留(以下、「本発明に係る2回目の蒸留」と言う場合がある。)で高沸分を除去し、その3回目の蒸留(以下、「本発明に係る3回目の蒸留」と言う場合がある。)で溶媒を供給しながら抽出蒸留を行うことにより軽沸分を留去すると共に、この抽出蒸留に供する留分の1.5重量%以上を側流として留去することが好ましい。また、精製工程では、少なくとも4回蒸留を行うことが更に好ましく、その1回目の蒸留で軽沸分を留去し、その2回目の蒸留で高沸分を除去し、その3回目の蒸留で溶媒を供給しながら抽出蒸留を行うことにより軽沸分を留去し、その4回目の蒸留(以下、「本発明に係る4回目の蒸留」と言う場合がある。)で軽沸分を留去すると共に高沸分を除去し、この4回目の蒸留における軽沸分の除去において、蒸留に供する留分の1.6重量%以上を留去することが特に好ましい。但し、本発明に係る精製工程では、本発明に係る1〜4回目の蒸留以外の蒸留を、本発明に係る1回目の蒸留の前、本発明に係る4回目の蒸留の後、本発明に係る1〜4回目の各蒸留の間などに行っても良い。
ここで、本発明に係る1回目の蒸留では、通常、アセトン、水、クメンおよびα−メチルスチレンなどの軽沸分が塔頂から留去されると共に、フェノール(主成分)、アセトフェノン、クミルフェノールなおよびα−メチルスチレンダイマーどの高沸分が塔底より回収される。蒸留条件は、塔頂から留去される留分および塔底より回収される留分が、各々上記のとおりとなるよう、蒸留塔内における温度分布、操作圧力、理論段数、蒸留塔への原料供給位置(供給段)、原料供給速度、塔頂や塔底からの各留去位置(抜出段)と留去量など(以下、「各蒸留条件」と言う場合がある。)を適宜調整すれば良い。具体的には、例えば、塔頂温度は100℃以上であることが好ましいが、一方で150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることが更に好ましい。塔底温度は180℃以上であることが好ましいが、一方で220℃以下であることが好ましく、205℃以下であることが更に好ましい。操作圧力は常圧でも良いし微加圧でも良い。理論段数は通常40〜80段が好ましい。
本発明に係る1回目の蒸留は、より高純度なフェノールを得やすい点から、2回以上に分けて行っても良い。本発明に係る1回目の蒸留を2回に分けて行う場合は、例えば、前段の蒸留でアセトンや水などの軽沸分を塔頂から留去すると共に、フェノール(主成分)、クメン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー、アセトフェノンおよびクミルフェノールなどの重質物を塔底より回収し、後段の蒸留でクメンおよびα−メチルスチレンなどを塔頂から留去すると共に、フェノール(主成分)およびα−メチルスチレンダイマーなどの高沸分を塔底より回収しても良い。
次に、本発明に係る2回目の蒸留では、通常、アセトフェノン、α−メチルスチレンダイマー、クミルフェノール、およびクメンの酸化工程やクメンハイドロパーオキサイドの酸分解工程で副生するヒドロキノン、カテコール、ベンゾキノンなどの高沸分が塔底より除去されることにより、濃縮されたフェノールが塔頂より回収される。各蒸留条件は、塔頂から留去される留分および塔底より回収される留分が、各々上記のとおりとなるよう適宜調製すれば良い。具体的には、例えば、塔頂温度は100℃以上であることが好ましいが、一方で170℃以下であることが好ましい。塔底温度は180℃以上であることが好ましいが、一方で220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることが更に好ましい。操作圧力は40〜90kPa程度の加圧が好ましい。理論段数は通常15〜35段が好ましい。塔底からの抜き出し量は、蒸留塔への供給量に対して5重量%以上であることが好ましいが、また、一方で10重量%以下であることが好ましい。
本発明に係る3回目の蒸留は、溶媒を供給しながら抽出蒸留を行う。この本発明に係る3回目の蒸留によって、溶媒と共に、溶媒との親和性が高い軽沸分を塔頂より留去させると共に、より濃縮されたフェノールが塔底から回収される。抽出蒸留に用いる溶媒は、例えば、水、ポリアルキレングリコールまたはそのエーテルなどが挙げられる。これらの内、水が好ましい。各蒸留条件は、塔頂から留去される留分および塔底より回収される留分が、各々上記のとおりとなるよう適宜調製すれば良い。具体的には、例えば、水抽出蒸留を行う場合は、塔頂温度は100℃以上であることが好ましいが、一方で150℃以下であることが好ましい。塔底温度は210℃以上であることが好ましいが、一方で230℃以下であることが好ましい。操作圧力は100〜350kPa程度の加圧が好ましい。理論段数は通常40〜60段が好ましい。溶媒の供給量は、蒸留に供する液の量に対し、1.5〜10重量%であることが好ましい。
本発明に係る3回目の蒸留では、塔頂からの軽沸分留去と共に、側流からの留分も抜き出すことが蟻酸や酢酸などの有機酸含有量を低減できることから好ましい。側流からの抜出量は、この蒸留に供給する液の1.5重量%以上であることが更に好ましい。また、側流からの抜出量は、この蒸留に供給する液の5.0重量%以下であることが好ましい。この本発明に係る3回目の蒸留は、塔底から純度99重量%以上のフェノールを回収する条件で行うことが好ましい。
本発明に係る3回目の蒸留の後、更に本発明に係る4回目の蒸留を行う場合は、塔頂より軽沸分を留去すると共に塔底より高沸分を除去することにより、側流から高純度フェノールを得ることができる。塔頂より留去する軽沸分の抜出量は、この蒸留に供給する液の1.6重量%以上であることが更に好ましい。また、塔頂からの抜出量は、この蒸留に供給する液の3.0重量%以下であることが好ましい。そこで、各蒸留条件は、塔頂から留去される留分および塔底より除去される留分が、各々上記のとおりとなるよう適宜調製すれば良い。具体的には、例えば、塔底温度は150℃以上であることが好ましいが、一方で190℃以下であることが好ましい。操作圧力は20〜90kPa程度の減圧が好ましい。理論段数は通常10〜30段が好ましい。
なお、本発明に係る1回目の蒸留において塔頂より留去された軽沸分に含まれるアセトンは、精製して取得することが好ましい。塔頂軽沸分の精製は、例えば、水酸化ナトリウム等の塩基存在下で蒸留することにより、アセトアルデヒド等の軽沸アルデヒドをアルドール縮合させることにより重質化して塔底から除き、メタノールやアルデヒド等の不純物を含むアセトンを塔頂から留去すると共に、高純度なアセトンを側流から得ることができる。ここで、塔頂留分は、酸分解工程に循環させても良い。また、塔底から除いた成分には、水、α−メチルスチレン、クメン、微量フェノールなどが含まれるため、重質分を除去した後に水添処理を行うことによりα−メチルスチレンをクメンに変え、フェノール製造原料として再利用してもよい。水添触媒としては、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金などの貴金属を、各種クレイ、酸化マグネシウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等に担持させた公知の触媒などを使用することができる。この塔底から除いた成分を蒸留することにより、塔頂からクメンを回収し、塔底からα−メチルスチレンを回収してもよい。α−メチルスチレンを回収するときは、2塔以上の蒸留塔を使用しても良く、また、蒸留により回収されたα−メチルスチレンを更に精製することにより、更に高純度なα−メチルスチレン及びブチルベンゼン等の軽沸分を回収してもよい。
「本発明に係る精製工程」においては、クメンハイドロパーオキサイドからフェノールとアセトンとを生成させる酸分解工程により得られる液を、アルカリ水溶液を用いて中和してから水洗した後に蒸留することが好ましい。そして、この蒸留を上記のように行うことが特に好ましい。
アルカリ水溶液による中和に用いる中和剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する塩基性化合物の水溶液や陰イオン交換樹脂などを用いることができる。これらのうち、ナトリウムフェノラート、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のナトリウムを含有する塩基性化合物の水溶液が好適に用いられる。中和は、ラインミキサー等の混合装置と静置分離槽のような油水分離装置を使いて行うことができる。クメンハイドロパーオキサイドの酸分解は硫酸を用いて行うことが好ましく、酸分解で用いた硫酸は、中和により芒硝(硫酸ナトリウムの10水和物)に変換される。そして、油水分離装置を使いて、水相と有機相とに分離され、水相を除去することにより有機相が得られる。
有機相には、芒硝などの中和塩が含まれるため、これを除去するために水洗を行う。水洗は、中和に用いた装置と同様にラインミキサー等の混合装置と静置分離槽のような油水分離装置を用いて行っても良いし、コアレッサー等の抽出分離装置を用いて行っても良い。
精製工程において用いる水は、窒素含有量が少なく、色相に優れたフェノールを得やすいことから、窒素化合物の含有量が少ない水が好ましい。本発明に係る精製工程においては、上述のとおり、水抽出蒸留、酸分解工程により得られる液の中和、水洗などで水を用いることがある。窒素化合物の含有量は、具体的には、窒素原子量として1ppm未満であることが好ましく、0.3ppm未満であることが更に好ましく、0.2ppm未満であることが特に好ましく、実質的に含有しないものが最も好ましい。なお、フェノール製造プラントにおいては、通常、微量の窒素が含まれている水をリサイクルして利用している。そこで、このような高純度な水は、陽イオン交換樹脂で処理された水を用いることが好ましい。
そして、上記製造方法により、高純度で色相に優れたフェノールを得ることができることについては、後述する実施例で裏付けられたとおりである。また、上記製造方法により、高純度で色相に優れたフェノールを得ることができる理由については、以下のように推定される。本発明に係る精製工程に供する粗フェノールに含まれる副生成物と窒素化合物とが反応することにより生成した化合物とヒドロキノン、カテコールおよびベンゾキノンとが有機酸存在下で安定的な錯体を形成していると考えられる。すなわち、蟻酸、酢酸、
ヒドロキノン、カテコール、ベンゾキノンおよび水に含まれる窒素化合物が着色原因物質となっているため、窒素化合物の含有量を窒素原子量として0.1ppm未満に、蟻酸と酢酸の合計含有量を1ppm以上5ppm未満に、ヒドロキノン、カテコールおよびベンゾキノンが何れも0.4ppm未満にすることにより、色相に優れたフェノールを得ることができたと考えらえる。
なお、蟻酸及び酢酸は、イオンクロマトグラフィーにより定量することができる。具体的には、例えば、東ソー(株)製イオンクロマトグラフ「IC−2010」を用いて、以下の条件で測定する。
カラム:東ソー(株)製「TSKgel SuperIC−AZ」
溶離液:NaHCO1.9ミリモル/リットル+NaCO3.2ミリモル/リットル
検出:電気伝導度
流速:0.8ミリリットル/分
水又はフェノールに含まれる窒素化合物の定量は、全窒素分析装置により測定することができる。具体的には、例えば、三菱化学(株)製全窒素分析装置「TN−100」を用いて、以下の条件で測定する。
検出方式:酸化分解、化学発光法(波長590〜2500nm)
キャリアガス:酸素600ミリリットル/分
反応ガス:オゾン200ミリリットル/分
加熱炉温度:上部800℃、下部900℃
ヒドロキノン、カテコールおよびベンゾキノンの定量は、高速液体クロマトグラフにより測定することができる。具体的には、例えば、以下の条件で測定する。
カラム:財団法人化学物質評価研究機構製「 L−column ODS」
移動相A: アセトニトリル
移動相B:0.1体積%ギ酸
検出: フォトダイオードアレイPDA996
流速:1.0 ミリリットル/分
また、本発明者は、フェノールの色相について、フェノールの色相の経時変化や保存状態の違いによる色相の変化について検討を行い、この結果、短時間でフェノールの着色し易さを簡便に評価できる方法を開発した。そこで、このフェノールの色相評価方法(以下、「本発明に係る色相評価方法」と言う場合がある。)により評価した色相に応じて、フェノールの製造条件を調製することにより、色相に優れたフェノールを安定的に製造することが可能となる。すなわち、上記フェノールの製造方法においては、本発明に係る色相評価方法により、フェノールの色相変化を加速させ、短時間で着色しやすいフェノールであるか否かを評価できるため、その評価結果に応じて、上述の蒸留条件や精製に用いる水の純度等のフェノールの製造条件を調整することにより、着色が生じ難いフェノールを安定かつ効率的に製造することが可能となる。
本発明に係る色相評価方法は、フェノールを凝固させた後に融解させてから色相評価することを特徴とする。
本発明者は、先ず、フェノールの色相について経時変化することが無いか検討を行い、製造直後には殆ど着色がみられなくとも、融解状態で長時間、例えば24時間保存後に着色することがあることを見出した。そして、更に、長時間保存せずとも着色のし易さを評価できないかと考え、フェノールの保存状態について検討を行い、フェノールを凝固させた後に融解させることにより、フェノールが速く着色することを見出した。
ここで、フェノールの着色が加速される理由としては、着色原因物質とフェノールとの融点の違いにより、凝固するときや融解するときに着色原因物質が濃縮され、凝集することにより着色が促進されてしまうことなどが考えられる。
フェノールの常圧における融点は40.5℃であるが、フェノールの凝固及び融解は、フェノールをフェノールの融点未満又は融点以上に保持することにより行うことができる。フェノールを凝固させる時の温度は、速く凝固させやすい点では低温が好ましいが、色相変化を加速させやすい点では高温が好ましいと考えられる。そして、冷却作業が不要となる点では、室温がフェノールの融点未満である場合は、室温で凝固させることが好ましい。また、氷を用いて簡便に冷却できる点では0℃も好ましい。そこで、具体的には、35℃以下で凝固させることが好ましく、20℃以下で凝固させることが更に好ましく、氷を用いて約0℃で凝固させることが最も好ましい。フェノールを融解させる時の温度は、速く融解させやすい点では高温が好ましいが、色相変化を加速させやすく、簡便に加熱を行いやすい点では低温が好ましいと考えられる。そこで、具体的には、50℃以上で融解させることが好ましく、55℃以上で融解させることが更に好ましく、また、一方、100℃以下で融解させることが好ましく、80℃以下で融解させることが更に好ましい。
フェノールの凝固及び融解に要する時間(凝固速度及び融解時間)は、速い方が作業効率上好ましいが、遅い方が色相変化を加速させやすいと考えられる。また、室温で冷却することにより凝固させる場合は、室温で凝固するまでの間保持することが好ましく、氷を用いて冷却することにより凝固させる場合は、氷による冷却により凝固するまでの間保持することが好ましい。また、フェノールの凝固及び融解を行う回数は、回数が少ない方が作業は簡便であるが、多い方が色相変化を加速させやすいと考えられる。そこで、2回以上であることが好ましいが、また一方で、4回以下であること好ましく、3回が特に好ましい。
色相は、ハ−ゼン色数で表される着色度によって評価することができる。ハ−ゼン色数は、JIS K−4101又はASTM D−1686に定められた方法などにより行えばよい。具体的には、測定対象であるフェノール液と基準となる溶液(標準液)とを比色管に入れ、拡散昼光のもとで光を透過させ、試料に最も近似した標準液を目視にて決定し、その標準液の番号をハ−ゼン色数とする。標準液は、塩化白金酸及び塩化コバルトの混合溶液を所定の濃度に調製した液であり、濃度が低いほど番号が小さくなる。
色相は、紫外可視吸収スペクトルの測定によっても評価することができる。具体的には、日立製UV−vis分光光度計「U−3010」を用いて、測定モード:Abs、スリット幅:2.0nm、走査速度:60nm/分、開始波長:700nm、終了波長:200nm、データ取込間隔:2.0nmで測定した波長480mmにおける強度について、本発明のフェノールの製造方法においてフェノールの製造条件を調整することにより、0.01abs未満であるフェノールを得ることができる。
なお、色相を評価するフェノールは、大気下で採取すれば良い。また、色相試験も大気下で行えば良い。
クメン法により製造したフェノールについて、本発明に係る色相評価方法により、フェノールの色相変化を加速させ、短時間で着色しやすいフェノールであるか否かを評価できることは後述する実施例において裏付けられたとおりであるが、フェノール中の着色原因物質は、フェノールの製造に用いた原料やフェノールの製法に依存すると考えられることから、本発明に係る色相評価方法は、特にクメン法により製造したフェノールに好適であることがわかる。
以下、本発明の内容を実施例により説明する。但し、本発明は以下の実施例により限定
されるものではない。
[実施例1]
クメンを酸化することにより、クメンハイドロパーオキサイドを含む反応液を得た。この反応液を脱ガスしてから減圧下で濃縮した。濃縮した液に硫酸を添加して、クメンハイドロパーオキサイドをフェノールとアセトンとに分解した。この液を図1に示す工程に従って精製することにより高純度なフェノールを得た。
酸分解Aさせた液をラインミキサーに移し、水酸化ナトリウム水溶液bを加えて中和Cさせた後、油水分離装置を使いて水相を除去Dすることにより有機相を得た。有機相に含まれる芒硝を水洗Eすることにより除去した。水洗を施した液を以下手順で蒸留を繰り返すことにより、蟻酸が2ppm、酢酸が1ppm未満、窒素化合物が0.1ppm未満である高純度なフェノールを得た。
水洗を施した液を蒸留1することにより、アセトン、水、クメン、α−メチルスチレンなどの軽沸分1tを留去し、フェノール(主成分)、アセトフェノン、α−メチルスチレンダイマー、クミルフェノールなどの高沸分1bを回収した。
続いて、高沸分1bを蒸留2することにより、塔底からアセトフェノン、α−メチルスチレンダイマー、クミルフェノール、ヒドロキノン、カテコールおよびベンゾキノンなどの高沸分2bを除去すると共に、塔頂から濃縮されたフェノール2tを回収した。蒸留2は、塔頂温度160℃、塔底温度209℃、塔頂圧力約53kPa、塔底圧力74kPaで行った。液組成から計算した理論段数は67段であり、原料供給段は23段目であった。また、塔底からの高沸分2bの抜き出し量は、蒸留2への供給量に対して5重量%であった。
続いて、上記フェノール2tを水抽出蒸留3することにより、塔頂から水と共にケトン類などの軽沸分3tを留去し、側流から蟻酸及び酢酸3sを抜き出すと共に、塔底からより濃縮されたフェノール3bを回収した。側流からの抜出量は、水抽出蒸留3に供給する濃縮されたフェノール2tの3.6重量%であった。蒸留3は、塔頂温度123℃、塔底温度219℃、塔頂圧力118kPa、塔底圧力157kPaで行った。液組成から計算した理論段数は48段であり、原料供給段は6段目、側流抜出段は39段目であった。また、水の供給量は、水抽出蒸留3に供する濃縮されたフェノール2tの量に対し、1.5重量%であった。ここで、塔底から回収されたフェノール3bの純度は99重量%であった。
続いて、上記フェノール3bを蒸留4することにより、塔頂から軽沸分4tを留去し、塔底から高沸分4bを除去することにより、側流から高純度フェノール4sを得た。蒸留4は、塔頂温度152℃、塔底温度167℃、塔頂圧力42kPa、塔底圧力約64kPaで行った。液組成から計算した理論段数は17段であり、原料供給段は14段目、側流抜出段は4段目であった。また、塔頂より留去した軽沸分4tの抜出量は、蒸留4に供給するフェノール3bの1.6重量%であった。
なお、水抽出蒸留、酸分解工程により得られる液の中和および水洗では、何れも窒素化合物の含有量が窒素原子量として1ppm未満の陽イオン交換水を用いた。
高純度フェノール4sを三菱化学(株)製全窒素分析装置「TN−100」を用いて以下の条件で測定した。この結果、高純度フェノール4sに含まれる窒素化合物の量は、窒素原子量として、0.1ppm未満であった。
検出方式:酸化分解、化学発光法(波長590〜2500nm)
キャリアガス:酸素600ミリリットル/分
反応ガス:オゾン200ミリリットル/分
加熱炉温度:上部800℃、下部900℃
また、高純度フェノール4sを、東ソー(株)製イオンクロマトグラフ「IC−2010」を用いて以下の条件で測定した。この結果、高純度フェノール4sに含まれる蟻酸の量は2ppm、酢酸の量は1ppm未満であった。
カラム:東ソー(株)製「TSKgel SuperIC−AZ」
溶離液:NaHCO1.9ミリモル/リットル+NaCO3.2ミリモル/リットル
検出:電気伝導度
流速:0.8ミリリットル/分
また、高純度フェノール4sを、高速液体クロマトグラフを用いて以下の条件で測定した。この結果、高純度フェノール4sに含まれるヒドロキノン、カテコールおよびベンゾキノンの量は何れも0.4ppm未満であった。
カラム:財団法人化学物質評価研究機構製「 L−column ODS」
移動相A: アセトニトリル
移動相B:0.1体積%ギ酸
検出: フォトダイオードアレイPDA996
流速:1.0 ミリリットル/分
高純度フェノール4sを耐熱性のガラス容器に200cm入れ、このガラス容器を氷水に45分間漬けることによりフェノールを凝固させた後、60℃の恒温槽に45分間保持することにより溶融させた。この凝固と融解の操作を合計3回繰り返した。分光光度計を用いてハーゼン色数を測定した結果、5未満であった。
また、株式会社日立ハイテクノロジーズ製UV−vis分光光度計「U−3010」を用いて、測定モード:Abs、スリット幅:2.0nm、走査速度:60nm/分、開始波長:700nm、終了波長:200nm、データ取込間隔:2.0nmで測定した波長480mmにおける強度は、0.001abs未満であった。
[比較例1]
実施例1において、水抽出蒸留3および蒸留4を以下の条件に変更し、水抽出蒸留、酸分解工程により得られる液の中和および水洗で窒素化合物の含有量が窒素原子量として1ppm以上の水を用いた以外は、同様に実験を行い、フェノールを得た。
水抽出蒸留3では、側流からの抜出量を、水抽出蒸留3に供給する濃縮されたフェノール2tの1.4重量%とした。また、蒸留4では、液組成から計算した理論段数が25段、原料供給段が22段目、側流抜出段が4段目となる条件で行った。
高純度フェノール4sを実施例1と同様に分析した。この結果、高純度フェノール4sに含まれる蟻酸の量は7ppm、酢酸の量は5ppm未満であり、ヒドロキノンの量は1ppm、カテコールの量は4.3ppm、ベンゾキノンの量は0.5ppmであった。また、実施例1と同様にして測定した窒素化合物の量は窒素原子量として0.3ppmであり、本発明に係る色相評価方法によるハーゼン色数は25であり、波長480mmにおける吸光度は0.020abs未満であった。
以上の結果より、本発明のフェノールが高純度で色相に優れていることが裏付けられた。
[参考例1]
クメン法により製造直後のフェノール液(室温により凝固する前)のハーゼン色数を、目視で評価したところ、5未満であった。
[参考例2]
参考例1でハーゼン色数を評価したフェノール液を、24時間60℃で保存した後に、そのハーゼン色数を目視で評価したところ、20であった。
[参考例3]
参考例1でハーゼン色数を評価したフェノール液(室温により凝固する前)200cmを耐熱性のガラス容器に入れた。このガラス容器を氷水に45分間漬けることによりフェノールを凝固させた後、60℃の恒温槽に45分間保持することにより溶融させた。ハーゼン色数を目視で評価したところ20であった。
[参考例4]
参考例1でハーゼン色数を評価したフェノール液とは別にクメン法により製造された、製造直後のフェノール液(室温により凝固する前)200cmを耐熱性のガラス容器に入れた。このガラス容器を氷水に45分間漬けることによりフェノールを凝固させた後、60℃の恒温槽に45分間保持することにより溶融させた。この凝固と融解の操作を合計3回繰り返した。ハーゼン色数を目視により評価した結果、15であった。
[参考例5]
参考例1及び4でハーゼン色数を評価したフェノール液とは別にクメン法により製造された、製造直後のフェノール液(室温により凝固する前)のハーゼン色数を目視で評価したところ、5未満であった。
[参考例6]
参考例5でハーゼン色数を評価したフェノール液を、24時間60℃で保存した後に、そのハーゼン色数を目視で評価したところ、5未満であった。
[参考例7]
参考例5でハーゼン色数を評価したフェノール液(室温により凝固する前)200cmを耐熱性のガラス容器に入れた。このガラス容器を氷水に45分間漬けることによりフェノールを凝固させた後、60℃の恒温槽に45分間保持することにより溶融させた。ハーゼン色数を目視で評価したところ5未満であった。
以上の結果より、本発明の色相評価方法により、フェノールの着色し易さを簡便に短時間で評価できることが裏付けされた。従って、本発明に係る色相の評価方法により製造されたフェノールの色相を評価することにより、フェノールの製造条件を良好な色相のフェノールが製造されたときの条件に調整することにより、色相に優れたフェノールを安定的に製造することができることも明らかになった。
[参考例8]
市販のフェノールに含まれる窒素化合物の含有量を実施例1と同様にして測定した。結果は、以下のとおりであった。微量の窒素を含んでいたことから、精製工程において窒素化合物を含有する水を使用していたと推定された。
和光純薬工業株式会社製フェノール;窒素原子量として0.8ppm
関東化学株式会社製フェノール;窒素原子量として0.8ppm
東京化成工業株式会社製フェノール;窒素原子量として0.8ppm
三井化学株式会社製フェノール;窒素原子量として0.9ppm

Claims (1)

  1. 窒素化合物の含有量が窒素原子量として0.1ppm未満であり、蟻酸と酢酸の合計含有量が1ppm以上5ppm未満であり、ヒドロキノン、カテコールおよびベンゾキノンが何れも0.4ppm未満であることを特徴とするフェノール。
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