JP2023103003A - フェノールの製造方法及びフェノール組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】フェノール製造方法の油水分離工程における油水分離を良好に行うことができるフェノールの製造方法を提供する。【解決手段】クメンハイドロパーオキシドの酸分解反応液をアルカリで中和する中和工程、中和された反応液を油相液と水相液に分離する油水分離工程、前記油相液に水洗水を混合して洗浄した後、油相液と水相液とに分離する洗浄工程、を有するフェノールの製造方法において、前記洗浄工程における油相液と水洗水の混合液が、該混合液の総質量に対して、水を14.5質量%以上含有する、フェノールの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、フェノールの製造方法及びフェノール組成物に関する。
フェノールは、工業的には、一般的にクメン法により製造される。クメン法によるフェノールの製造は、クメンを酸化してクメンハイドロパーオキサイド(以下CHPという。)を含む反応液を生成させる酸化工程、CHPを酸分解することによりフェノールとアセトンとを生成させる酸分解工程、分解生成液を中和し洗浄により塩を除去する中和洗浄工程、及び洗浄液中のフェノール以外の成分を分離してフェノールを回収する回収工程を有する。
クメン法によるフェノール製造方法における酸分解工程では、硫酸などの酸を加えてCHPを効率的に分解する。この酸分解生成物中に酸が残留すると、後の回収工程において加熱による重質物を生成する触媒となる。そのため、回収工程前の中和洗浄工程にて炭酸ナトリウム等のアルカリを加えた洗浄水を酸分解生成物に接触させ、酸を洗浄水中に抽出除去する。また、中和洗浄工程では同時にCHPを製造する酸化工程で不純物として生成する有機酸類も抽出除去される。
この酸分解生成物と接触させた洗浄水中には、抽出された酸、塩類が含まれ、これが回収工程に持ち込まれると蒸留塔内でナトリウム塩として析出し、塔を閉塞させる(特許文献1)。塔閉塞は蒸留塔の運転を不安定にし、最終的にはプラントを停止して洗浄する必要があり、プラント連続運転の障害となる。このため、抽出した後の洗浄水を酸分解生成物から分離させる必要がある。
酸分解生成物と洗浄水の分離は、油水分離法を用いて行われる。油水分離法として、具体的には、静置分離、フィルターによる凝集分離、遠心分離等の方法が挙げられる。
上述した油水分離処理において、油水分離性が不十分であると、塩類を含む水相液の一部が油相液中に混入し、除去すべき塩類が、洗浄工程以降に設けられたフェノール回収工程に持ち込まれる。この場合、持ち込まれた塩類が蒸留塔内でナトリウム塩等として析出し、蒸留塔を閉塞させる。
油水分離速度には、液組成の違い、界面活性物質の有無、混合攪拌速度等による違いから生じる油水密度差、界面張力、分散液滴径等の物理性質が影響するが、フェノール製造工程の各種工程で生成、混入する種々の不純物類や金属類が油水分離にどのような影響を与えるかについては、十分には解明されていない。
特開平7-24211号公報
本発明は、フェノールの製造において、油水分離工程における油水分離性をより良好に行うことが可能な、フェノールの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、フェノールを製造する際の、油水分離後の油相液に水洗水を混合して洗浄する洗浄工程において、油相液と水洗水の混合液中に分散する水粒子の粒子径が小さい場合に油水分離性が悪化することに着目し、前記混合液中に、従前では分離すべきものと考えられていた水を、所定の濃度の範囲内となるように、敢えて存在させることで、油水分離性を良好にすることができ、洗浄工程において長期間、より安定に油水分離処理できるようになることを見出した。
すなわち、本発明の第1の要旨は、クメンハイドロパーオキシドの酸分解反応液をアルカリで中和する中和工程、中和された反応液を油相液と水相液に分離する油水分離工程、前記油相液に水洗水を混合して洗浄した後、油相液と水相液とに分離する洗浄工程、を有するフェノールの製造方法において、前記洗浄工程における油相液と水洗水の混合液が、該混合液の総質量に対して、水を14.5質量%以上含有する、フェノールの製造方法、に関する。
本発明の第2の要旨は、クメン法フェノールの製造プロセスにおける蒸留用のフェノール組成物であって、フェノールを30質量%以上50質量%以下、水を11.5質量%以下、アルカリ金属を3.0質量ppm以下含有する、フェノール組成物、に関する。
本発明によれば、フェノールの製造において、油水分離工程における油水分離を良好に行うことが可能な、フェノールの製造方法を提供できる。この結果、中和洗浄水中に含まれる塩、有機酸類等が、油水分離装置更には蒸留塔等の後段の精製装置に持ち込まれて配管等が閉塞することを抑制することができ、油水分離装置及び後段の回収装置等を長期間、連続して安定に運転できるようになる。
本発明によれば、また、クメン法フェノールの製造プロセスにおける蒸留用のフェノール組成物であって、塩、有機酸類等が十分に低減され、蒸留塔を長期間安定して連続運転可能なフェノール組成物が提供される。
油水分離装置の概略構成図である。 実施例1~4及び比較例1~4における、洗浄工程の油水分離前の混合液の水分濃度と、油水分離後の油相液の水分濃度との関係を示すグラフである。 実施例1~4及び比較例1~4における、洗浄工程の油水分離前の混合液の水分濃度と、油水分離後の油相液と油水分離前の混合液の水分濃度の差との関係を示すグラフである。 実験例1~3における、洗浄工程の油水分離後の油相液の水分濃度と、ナトリウム濃度との関係を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、特に断らない限り、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~
」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、
A以上B以下であることを意味する。
本明細書において、「質量ppm」とは、単位を質量として算出した「ppm」であり、1質量ppm=1×10-4質量%を意味する。
[フェノールの製造方法]
本発明はクメン法に基づくフェノールの製造方法に関する。
本発明のフェノールの製造方法は、後述する中和工程、後述する油水分離工程、後述する洗浄工程を有するフェノールの製造方法である。
本発明のフェノールの製造方法は、前記中和工程、前記油水分離工程、前記洗浄工程を、この順番で任意の回数だけ繰り返して行うことができる。
さらに、本発明のフェノールの製造方法は、前記洗浄工程の後に、後述する回収工程を有することができる。
さらに、本発明のフェノールの製造方法は、前記中和工程の前に、後述するクメンの酸化工程、及び、後述するCHPの酸分解工程を含むことができる。
さらに、本発明のフェノールの製造方法は、前記酸化工程と前記酸分解工程の間に、後述するCHPの濃縮工程を含むことができる。
フェノールの製造方法の一般的な一実施態様としては、例えば特開2017-178826号公報に記載の条件など、公知の方法が使用できる。
上述した各工程について、以下に順に説明する。
[クメンの酸化工程]
本発明のフェノールの製造方法は、後述する中和工程の前に、クメンを酸化してCHPを製造する工程を含むことができる。
クメンの酸化に用いられるクメンは、通常、ベンゼンとプロピレンとを反応させ蒸留により99.5重量%以上に精製されたものを使用することが好ましい。これに、後述のCHP濃縮工程から回収されたクメンや、フェノール合成後のフェノール、アセトン等の混合物から蒸留塔で分離されたα-メチルスチレンを水素化してクメンにしたものなどを混合してもかまわない。
クメンの酸化反応は、40℃~130℃で、常圧下又は加圧下、酸素と不活性ガスとを含む混合ガスを吹き込むことにより行われる。この混合ガスとしては空気、及び酸素濃度を増加又は減少させた空気等が挙げられ、このうち酸素濃度を増加させた空気が好ましい。酸化反応器は、反応を1段階で行わせるものでも、2段階以上の多段階で行わせるものでもよい。後者の場合には、通常、各段階毎に酸素と不活性ガスとを含む混合ガスを追加供給する。なお、α-メチルスチレンを目的物の一つとする場合には、この酸化反応時に、ジメチルベンジルアルコールが所望量発生するようにそのプラントに適した条件を選べばよい。
上述のクメンの酸化反応により、CHPを10~40重量%含むクメン溶液が得られる。
[CHPの濃縮工程]
本発明のフェノールの製造方法は、上述したクメンの酸化工程の後、且つ、後述する中和工程の前に、或いは後述する中和工程の前に行う後述のCHPの酸分解工程の前に、該酸化工程で得られたCHPを含むクメン溶液を濃縮する、CHPの濃縮工程を含むことができる。
上述したクメンの酸化工程で得られたクメン溶液を濃縮し、CHP濃度を好ましくは65重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは80重量%以上90重量%以下とする。CHPは、温度が高い状態や、触媒の存在下では激しく開裂反応を起こすため、安全の面から90重量%以下であることが好ましい。
クメン溶液の濃縮方法は特に限定されないが、減圧により濃縮することが好ましい。減圧濃縮することにより、酸化反応時に吹き込んだ空気などを脱ガスすることもできる。濃縮したCHP溶液は、アセトンにより希釈され、次の酸分解工程に供される。
[CHPの酸分解工程]
本発明のフェノールの製造方法は、上述したクメンの酸化工程又はCHPの濃縮工程の後、且つ、後述する中和工程の前に、該酸化工程又は濃縮工程で得られたCHPを含むクメン溶液を、酸触媒の存在下で分解し、フェノールとアセトンを含有する溶液を製造する、CHPの酸分解工程を含むことができる。
具体的には濃縮工程で得られたCHPを含むクメン溶液中を、酸触媒存在下で、CHPの開裂反応を起し、フェノール、アセトン、そして前述のジメチルベンジルアルコールに起因するα-メチルスチレン及びその他の副生物を含む混合物を得る。
前記酸触媒としては、硫酸が挙げられる。
CHPの酸分解反応は、通常反応温度60℃~90℃の条件下で行われる。CHPの酸分解反応は発熱反応であり、除熱を行う。
CHPはほぼ全量開裂してフェノールとアセトンになるが、それに副生物として、フェノールのダイマーや、クミルフェノール等の重質油分(HE(ヘビーエンド))及び有機酸等が含まれた混合物よりなる酸分解生成物が得られる。
すなわち、CHPを酸触媒により分解して得られた、酸分解反応液は、フェノールとアセトンを含有する溶液であり、前記溶液は、α-メチルスチレンとその他の副生物、並びに、HE等や有機酸等を含む酸分解生成物を含む。
[中和工程]
本発明のフェノールの製造方法は、CHPの酸分解反応液をアルカリで中和する中和工程を含む。
本発明における中和工程の一実施態様として、上述のCHPの酸分解工程で、CHPを酸触媒下で分解して得られた酸分解反応液を、アルカリで中和し、洗浄する(以下、単に「アルカリで中和する」という。)ことを含む工程を挙げることができる。アルカリで中和するときに用いる中和洗浄水としては、アルカリ水溶液が挙げられる。
前記中和工程では、フェノールとアセトンを含有する溶液と、アルカリ水溶液等の中和洗浄水とを複数回接触させる。これにより、CHPの酸分解時に使用した硫酸等の酸触媒を中和して中和塩を得た後、前記中和塩と、クメンの酸化工程及びCHPの酸分解工程で副生した有機酸等とを、中和洗浄水中に移行させ、抽出する。フェノールとアセトンを含有する溶液と中和洗浄水との接触は、向流で行い、また多段階で行うのが好ましい。また、中和工程におけるこれらの処理は、ラインミキサー等の公知の混合装置を用いて行うことができる。
アルカリ水溶液による中和に用いる中和剤としては、アンモニアの水溶液や、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する塩基性化合物の水溶液や陰イオン交換樹脂などを用いることができる。これらのうち、ナトリウムフェノラート、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のナトリウム含有塩基性化合物の水溶液が好適に用いられる。この水溶液中のナトリウム含有塩基性化合物は、中和後の水相pHが6程度になる量加えるのが好ましい。
[油水分離工程]
本発明のフェノールの製造方法は、前記中和工程で中和された反応液を油相液と水相液に分離する油水分離工程を含む。
前記中和工程で得られた、中和洗浄後の酸分解生成物と中和洗浄水との混合物は、油水分離装置により水相と油相液(有機相)とに分離され、水相を除去することにより油相液が得られる。なお、アルカリ金属含有塩基性化合物により中和した場合には、フェノールの一部がアルカリ金属との塩(ナトリウムフェネート等)となり、水相側に移行してフェノール収率が低下する。そのため、水相に硫酸ナトリウム等の塩類を加えて、油相液中のフェノールが水相側に移行しないようにするのが好ましい。
また、油水分離工程におけるこれらの処理は、静置分離槽のような公知の油水分離装置を用いて行うことができる。
[洗浄工程]
本発明における洗浄工程は、前記油水分離工程で得られた油相液に、水洗水(以下、「洗浄水」とも言う。)を混合して洗浄し、次いで、油相液と水相液に分離(以下、「洗浄工程における油水分離」という。)することを含む。より具体的には、前記油水分離工程で得られた、塩類を含む油相液に、所定の条件で水洗水を混合して洗浄することで、油相液と、油相から抽出された塩類を含む水相液とに効率よく油水分離することができ、且つ、油相中に含まれる塩類を効率よく低減又は除去することができる。
上記のCHPの酸分解工程は前述のように硫酸を用いて行うことが好ましく、用いた硫酸は、中和工程により芒硝(硫酸ナトリウムの10水和物)に変換される。油水分離工程で分離された油相液には、この芒硝などの中和塩が含まれるため、これを除去するためにさらに油相液の洗浄を行う。
本発明においては、前記油相液と水洗水の混合液は、該混合液の総質量に対して、水が14.5質量%以上含有されるように水洗水を用いる。即ち、本発明においては、従前では分離すべきものと考えられていた水を、前記混合液に、敢えて所定の濃度以上に含有させることにより、上述したように油水分離性を向上させることができる。
油相液の洗浄工程において、水の含有量が多いほど、油相液中に分散した水洗水の液滴が凝集して、粒子径が大きくなる傾向があり、その結果、油相液洗浄後の油水分離性が良好となる観点から、前記混合液に含まれる水の含有量の下限は、該混合液の総質量に対して、14.5質量%以上であり、15.0質量%以上が好ましく、より好ましくは15.5質量%以上、さらに好ましくは16.0質量%以上である。一方、前記混合液中において、水の含有量の上限は、特に限定されないが、洗浄後の排水量を削減する観点から、該混合液の総質量に対して、30.0質量%以下が好ましく、25.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下がさらに好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、前記油相液と水洗水の混合液において、水の含有量は、該混合液の総質量に対して、14.5質量%以上30.0質量%以下であり、好ましくは15.0質量%以上25.0質量%以下、より好ましくは15.5質量%以上20.0質量%以下である。
油相液の洗浄は、中和に用いた装置と同様にラインミキサー等の混合装置と静置分離槽のような油水分離装置を用いて行っても良いし、コアレッサー等の抽出分離装置を用いて行っても良い。油相液洗浄後の水相を前述の中和洗浄工程での洗浄水に利用してもよい。これにより、水相側に移行したフェノールの回収を行うことができる。
上述した抽出分離装置の中でも、生産性や経済性に優れることから、コアレッサーが好ましい。
本発明のフェノールの製造方法においては、前記混合液が通過するようにフィルターが備えられたコアレッサーを用いることにより、前記混合液を、より効率的に油相液と水相液に分離することができる。
コアレッサーとしては、具体的には、特開平7-24211号公報に開示されているように、親水性不純物を含む水分を凝集させて、油液から分離する機能を有する凝集器が挙げられる。
コアレッサーは主として、金属、合成樹脂等により形成された有孔の円筒形の保持筒外周面に、略均一な密度および厚みを持ったカーボンファイバー、グラスファイバー等で構成される濾材(フィルター)を有しており、さらにこの濾材の外周面に金属製のパンチプレート等により形成された有孔の円筒形の外筒を有するエレメントを1本以上、ケーシング内に収めた凝集器として形成される。
図1を用いて、洗浄工程の油水分離に使用できる、油水分離装置(コアレッサー)の一実施態様について説明する。
中和工程出口油相ライン1にて送液される油相液に、前記ライン1の途中に設けられた洗浄水供給ライン2から洗浄水が注入され、注入口の下流に設けられたスタティックミキサー3等の公知の混合手段により、前記油相液と洗浄水が混合される。
前記油相液と洗浄水の混合液は、コアレッサー4の下部から供給され、前記コアレッサー4の内部に配置された、複数のエレメント5を通過する。前記エレメント5は、前記混合液を油相と水相に分離する機能を有しており、前記混合液が通過するように、フィルター(濾材)と、該フィルターを支持するための内筒及び外筒を備えている。コアレッサー4及びエレメント5の、より具体的な態様については、上述したとおりである。
前記混合液が、エレメント5の内筒、濾材、及び外筒をこの順に通過する際に、混合液中の水相の成分は凝集され、エレメント5の外筒表面からコアレッサー4の下部側に沈降して、捕集され、コアレッサー4の下部に設けられた油水分離後水相液抜出ライン7より抜き出される。
一方、水相成分が除去された油相液は、コアレッサー4の上部に設けられた油水分離後油相液抜出ライン6より抜き出される。
油相液の洗浄に用いる洗浄水は、特に限定されないが、イオン交換水、蒸留水を用いることができる。油相液の洗浄工程は、油相液中の塩類を除く目的のために行うものであり、油相液の洗浄工程に用いる洗浄水は、中和工程で用いる洗浄水に比べ、硫酸ナトリウム等の塩類の含有量を少なくする必要がある。
さらに、本発明のフェノールの製造方法においては、前記混合液において、油相液中に分散した水洗水の液滴の平均粒子直径が、前記フィルターの有効濾過径よりも大きい条件とすることが好ましい。前記液滴の平均粒子直径を、前記フィルターの有効濾過径よりも大きい条件とすることで、油相液洗浄後の油水分離性をより良好にできる。
水の液滴の平均粒子直径を、前記フィルターの有効濾過径よりも大きい径とするには、前記混合液中の水の含有割合や、任意に、鉄等の金属原子や界面活性剤の含有割合を調整することにより制御できる。
さらに、本発明のフェノールの製造方法においては、前記混合液において、油相液中に分散した水洗水の液滴の平均粒子直径の下限は、油相液洗浄後の油水分離性をさらに良好にできることから、5μm以上とすることが好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。
一方、前記液滴の平均粒子直径の上限は、特に限定されるものではないが、通常は1mm以下であり、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
水の液滴の平均粒子直径は、前記混合液中の水の含有割合や、ラインミキサーの条件、任意に、鉄等の金属原子や界面活性剤の含有割合を調整することにより制御できる。
なお、油相液中に分散した水洗水の液滴の平均粒子直径は、ホールスライドガラスに採取した液をマイクロスコープにより拡大写真撮影し、各液滴直径を測定後に、液滴直径合計値を測定液滴数で除することで測定することができる。
前記混合液において、油相液中に分散した水洗水の液滴の平均粒子直径が上記好適な範囲内である場合、前記フィルターの有効濾過径は1~50μm、特に5~15μm程度であることが好ましい。
さらに、本発明のフェノールの製造方法において、前記洗浄工程で分離され、回収された油相液は、該油相液の総質量に対して、フェノールを30質量%以上50質量%以下含有し、且つ、水の含有割合が11.5質量%以下、アルカリ金属の含有割合が2.0質量ppm以下であることが好ましい。
ここで、「アルカリ金属」とは、後述の通り、周期表第1族に属するアルカリ金属をさし、具体的にはナトリウム、カリウムが挙げられ、好ましくはナトリウムである。
前記洗浄工程で分離された油相液中のフェノールの含有割合が30質量%以上であれば、後述する回収工程において、洗浄後の油相液を蒸留してフェノールを回収する際のエネルギー消費量を低減できる。前記洗浄工程で分離された油相液中のフェノールの含有割合は、35質量%以上が好ましい。一方、前記フェノールの含有割合が50質量%以下であれば、前記油水分離工程又は前記洗浄工程におけるエネルギー消費量を低減できる。前記洗浄工程で分離された油相液中のフェノールの含有割合は、45質量%以下が好ましい。
洗浄工程で分離された油相液中のフェノールの含有割合は、油水分離工程、洗浄工程又は酸分解工程における公知の製造条件を、適宜調整することにより制御できる。
洗浄工程で分離された油相液中のフェノールの含有割合は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
前記洗浄工程で分離された油相液中のアルカリ金属の含有割合が3.0質量ppm以下であれば、後述する回収工程において、洗浄後の油相液を蒸留してフェノールを回収する際に、アルカリ金属が蒸留塔内でアルカリ金属塩として析出し、塔を閉塞させることを防ぐことができる。前記アルカリ金属の含有割合は、2.5質量ppm以下がより好ましく、2.0質量ppm以下がさらに好ましい。一方、前記アルカリ金属の含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、アルカリ金属を実質的に含まないことが好ましい。
洗浄工程で分離された油相液中のアルカリ金属の含有割合は、油水分離工程又は洗浄工程における公知の製造条件や、後述する前記油相液中の水分の含有割合を、適宜調整することにより制御できる。
洗浄工程で分離された油相液中のアルカリ金属の含有割合は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
前記洗浄工程で分離された油相液中の水の含有割合が11.5質量%以下であれば、上述した油相液中のアルカリ金属の含有割合を3.0質量ppm以下にできるため、後述する回収工程において、洗浄後の油相液を蒸留してフェノールを回収する際に、アルカリ金属が蒸留塔内でアルカリ金属塩として析出し、塔を閉塞させることを防ぐことができる。前記水の含有割合は、11.2質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下がさらに好ましい。一方、前記水の含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、水を実質的に含まないことが好ましい。
洗浄工程で分離された油相液中の水の含有割合は、油水分離工程又は洗浄工程における公知の製造条件を、適宜調整することにより制御できる。
洗浄工程で分離された油相液中の水の含有割合は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
以上より、本発明のフェノールの製造方法で得られた、フェノールを30質量%以上50質量%以下、好ましくは35質量%以上45質量%以下、水を11.5質量%以下、好ましくは11.2質量%以下、より好ましくは11.0質量%以下、アルカリ金属を3.0質量ppm以下、好ましくは2.5質量ppm以下、より好ましくは2.0質量%以下含有し、最も好ましくはアルカリ金属を含まない、フェノール組成物は、クメン法を用いたフェノールの製造プロセスにおいて、蒸留用の組成物として好適に使用できる。
本発明のフェノールの製造方法において、油相液の洗浄工程の入口における、中和工程の出口から送出された油相液と、該油相液の洗浄に用いる洗浄水との混合液に含まれる、周期表第1族に属するアルカリ金属(以下、単に「第1族に属するアルカリ金属」と称す。)を除いた金属元素の含有量の下限は、特に限定されないが、油相液の洗浄工程において油相液洗浄後の油水分離性が良好となる観点から、該混合液の総質量に対して、0.1質量ppm以上が好ましく、より好ましくは0.2質量ppm以上、さらに好ましくは0.5質量ppm以上である。一方、前記混合液中において、第1族に属するアルカリ金属を除いた金属元素の含有量の上限は、特に限定されないが、油相液洗浄工程以降において金属塩の析出による閉塞を防ぐ観点から、該混合液の総質量に対して、25質量ppm以下が好ましく、3質量ppm以下がより好ましく、2質量ppm以下がさらに好ましい。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、前記混合液中において、第1族に属するアルカリ金属を除いた金属元素の含有量は、該混合液の総質量に対して、0.1質量ppm以上25質量ppm以下であり、好ましくは0.2質量ppm以上3質量ppm以下、より好ましくは0.5質量ppm以上2質量ppm以下である。
金属元素の含有量から、第1族に属するアルカリ金属の含有量を除く理由としては、例えばナトリウムのような第1族に属するアルカリ金属が存在した場合に、油水分離性が悪化することから、第1族に属するアルカリ金属を除いた、金属元素の含有量が、油水分離性を向上するために重要であるためである。
第1族に属するアルカリ金属を除いた金属元素の含有量を制御する方法としては、第1族に属するアルカリ金属を除いた金属元素を含有する水洗水を予め用意しておき、前記洗浄工程において、前記油相液に、該水洗水を、前記油相液と水洗水の混合液における該金属元素の含有量が0.1質量ppm以上25質量ppm以下の範囲内となるように、混合する方法が挙げられる。
或いは又、第1族に属するアルカリ金属を除いた金属元素の含有量を制御する方法としては、工程間に設けられる中間タンク等への犠牲金属材の設置による溶出金属添加など、公知の方法が挙げられる。
第1族に属するアルカリ金属としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられる。中でも、ナトリウム、カリウムが好ましい。
第1族に属するアルカリ金属を除いた金属元素としては、特に限定されないが、周期表において第4及び第5周期に属する典型金属が挙げられる。取り扱いが容易である観点から、鉄、銅及び亜鉛を挙げることができる。中でも、鉄が好ましい。
油相液の洗浄工程においてナトリウム等の第1族に属するアルカリ金属および有機酸が共存すると、油相液洗浄後の油水分離性が悪化することから、本発明では、油相液の洗浄工程の入口における、中和工程の出口から送出された油相液と、該油相液の洗浄に用いる洗浄水との混合液中のナトリウム等の第1族に属するアルカリ金属および有機酸の少なくとも一方の濃度を所定値以下とすることが好ましい。
前記混合液中のナトリウム等の第1族に属するアルカリ金属の濃度は、特に限定されないが、該混合液の総質量に対して、250質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましい。
ナトリウム等の第1族に属するアルカリ金属の濃度の低減方法としては、中和洗浄工程における洗浄水への酸(好ましくは硫酸)添加によるpHの低下、油水分離設備の多段化による洗浄効率の増加などが挙げられる。
前記混合液中の有機酸の濃度は、特に限定されないが、該混合液の総質量に対して、520質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましい。なお、ここでいう有機酸としては、クメン酸化反応において副生する、ギ酸、酢酸、シュウ酸等の酸が挙げられる。
前記混合液中の硫酸濃度は、特に限定されないが、洗浄水中に含まれる硫酸ナトリウム濃度を少なくする観点から、該混合液の総質量に対して、50質量ppm以下が好ましく、20質量ppm以下がより好ましい。
有機酸濃度の低減方法としては、中和工程における洗浄水へのアルカリ類添加によるpHの上昇、洗浄油水分離設備の多段化による洗浄効率の増加などが挙げられる。添加するアルカリ類としては、前述した中和工程でのアルカリ洗浄水に使用したものと同様のアルカリ類を用いることができる。
[回収工程]
本発明のフェノールの製造方法は、上述した洗浄工程の後、洗浄後の油相液を蒸留してフェノールを回収する回収工程を有することができる。
回収工程において、油相液側のフェノールとアセトンとα-メチルスチレンとヘビーエンド(HE)とを含む混合物は、蒸留によりそれぞれの成分に分離される。
蒸留に関しては、例えば特開2015-178476号公報、特開2015-182986号公報に記載の条件など、公知の方法が使用できる。
蒸留の回数や、何回目の蒸留でどの成分を取り出すかに関しては、任意に設定すればよいが、通常は最初の蒸留で、軽質分、特にアセトンをターゲットに水や未反応のクメンなどを留去させ、2回目の蒸留でフェノールやα-メチルスチレンを留去させ、残ったものをヘビーエンド(HE)とし、留去分に3回目の蒸留を行ってフェノールとα-メチルスチレンを分離しても良いし、あるいは最初の蒸留で、アセトンとα-メチルスチレンをターゲットに水や未反応のクメンなどを留去させ、2回目の蒸留でフェノールとHEを分離する。そしてもちろんそれとは別に最初の蒸留で得られたアセトンとα-メチルスチレンを分離してもよい。いずれにしても目的物の数以上の蒸留が必要になり、更に純度を向上させるために、蒸留の回数を増やすことも行われる。また必要に応じ適当な溶媒を添加しながら蒸留を行う抽出蒸留を行っても良い。
蒸留後、所望の純度に達したフェノールを製品とする。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例においては、フェノール製造方法の洗浄工程において条件を変更し、本発明方法の効果を推認した。
原料としてフェノール製造工程の酸分解液を中和、油水分離した液(以下、「中和工程出口液」という。)を使用し、図1に示す洗浄、油水分離装置を用いて中和工程出口液の洗浄操作を行った。
なお、前記中和工程出口液の組成を分析したところ、以下のとおりであった。
(油水分離前の油相液の組成)
フェノール 40質量%
アセトン 32質量%
キュメン 10質量%
αメチルスチレン 5質量%
水 11質量%
ナトリウム 10質量ppm
硫酸 1質量ppm
ギ酸 150質量ppm
酢酸 100質量ppm
その他 成分 2質量%
なお、フェノール、アセトン、キュメン、αメチルスチレンの含有割合はガスクロマトグラフィ(装置名:Agilent 7890A、Agilent社製)により測定した。
以下の実験例でも同様に行った。
<測定条件>
カラム:TC-FFAP 長さ60m、直径0.25mmφ、膜厚0.25μm(Agilent社製)
キャリアガス:ヘリウム 40cm/sec
検出器:水素炎イオン化型
また、水分濃度は、水分計(製品名:CA-200型、日東精工アナリテック社製)を備えたカールフィッシャー試薬容量滴定法にて求めた。カールフィッシャー水分測定試薬として、アクアミクロン(登録商標)滴定剤SS-Z 3mg(三菱ケミカル社製)及びアクアミクロン(登録商標)脱水溶剤KTX(ケトン用,ノンピリジン・クロロホルム)(三菱ケミカル社製)を用いた。
以下の実験例でも同様に行った。
また、ナトリウムの含有割合は、試料油相液へ同容量の0.06mol/L硝酸水溶液を混合攪拌し、油水分離させることを2回繰り返すことで硝酸水溶液中へナトリウムを抽出し、この硝酸水溶液を、イオンクロマトグラフィ測定装置(装置名:Basic 883 IC plus、Metrohm社製)を用いて、下記に記載した条件で測定した。 以下の実験例でも同様に行った。
<測定条件>
カラム:Metrosep C6-150/4.0(Metrohm社製)
溶離液:1.7mmol/L硝酸、1.7mmol/Lジピコリン酸混合水溶液
検出方法:電気電導度
また、硫酸の含有割合は、試料油相液へ同容量の0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を混合攪拌し、油水分離させることを2回繰り返すことで水酸化ナトリウム水溶液中へ硫酸を抽出し、この水酸化ナトリウム水溶液を、イオンクロマトグラフィ測定装置(装置名:Basic 883 IC plus、Metrohm社製)を用いて、下記に記載した条件で測定した。
以下の実験例でも同様に行った。
<測定条件>
カラム:TSKgel super IC-AZ(東ソー社製)
溶離液:1.9mmol/L炭酸水素ナトリウム、3.2mmol/L炭酸ナトリウム混合水溶液
検出方法:電気電導度、サプレッサ法
また、ギ酸、酢酸の含有割合は、試料油相液へ同容量の0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を混合攪拌し、油水分離させることを2回繰り返すことで水酸化ナトリウム水溶液中へギ酸、酢酸を抽出し、この水酸化ナトリウム水溶液を、イオンクロマトグラフィ測定装置(装置名:IC-2010、東ソー社製)を用いて、ポストカラムpH緩衝化法イオン排除型で、下記に記載した条件で測定した。
以下の実験例でも同様に行った。
<測定条件>
カラム:Shim-pack SCR-102H(島津製作所製)2本
溶離液:5mmol/L p-トルエンスルホン酸水溶液
緩衝液:5mmol/L p-トルエンスルホン酸、20mmol/L Bis-Tris、0.1mmol/L 4H(EDTA・free acid)混合水溶液
検出方法:電気電導度
[油水分離条件]
実施例及び比較例には、図1に示す油水分離装置を用いた。この油水分離装置は、内容積44.77m、内径3.8mのコアレッサー4、スタティックミキサー3、図示されていない送液ポンプから構成されている。コアレッサー4は、有効濾過径15μmのカーボンファイバー製フィルターを備えたエレメント5を有する。図1には図示されていないが、本実施例のコアレッサー4はエレメント5を235本有する。
[実施例1]
図1に示す油水分離装置を用いて、以下の手順に従って油水分離を行い、油水分離前後の工程液の水分濃度を測定した。
先ず、中和工程出口油相ライン1にて送られてくる前記組成の中和工程出口液に、前記ライン1の途中に設けられた洗浄水供給ライン2から洗浄水を注入し、スタティックミキサー3により、前記油相液と洗浄水の混合液を得た。得られた混合液を、コアレッサー4に供給し、エレメント5に通液して油水分離させ、油水分離後の油相液を油水分離後水相液抜出ライン7より得た。コアレッサー4内に沈降した油水分離後の水相液は油水界面がコアレッサー下面から上端までの高さの40%を超えない範囲で、油水分離後水相液抜出ライン7より適宜抜き出しを行った。
コアレッサー4の入口付近で採取した混合液の水分濃度(以下、「油相分離前の水分濃度」という。)と、油水分離後油相液抜出ライン6中の油相液の水分濃度(以下、「油相分離後油相液の水分濃度」という。)を測定した。
本実施例1では、油相分離前の水分濃度が15.0質量%となるように、油水分離前の油相液の送液量と、洗浄水供給ライン2から注入する洗浄水の送液量を制御した。
また、コアレッサー4に前記混合液を供給する際は、コアレッサー4の入口付近の混合液の流量(単位:m/hr)を測定し、該流量をエレメント5の表面積で除した、混合液のエレメント通過線速が、表1記載のとおりとなるように制御した。
[実施例2~4、比較例1~4]
油相分離前の水分濃度が表1記載のとおりとなるように、油水分離前の油相液の送液量と、洗浄水供給ライン2から注入する洗浄水の送液量を制御した以外は、実施例1と同様の条件で油水分離実験を行った。評価結果を表1に示す。
実施例3および比較例2において、前述の方法で測定した前記油水分離前の混合液に分散している水滴の平均粒子直径は、試料採取1分後において、それぞれ34.2μm、20.8μmであり、比較例2に対して水分濃度が高い実施例3は平均粒子直径が大きかった。
また、実施例1~4及び比較例1~4より得られた、洗浄工程の油水分離前の混合液の水分濃度と油水分離後の油相液の水分濃度の関係を、図2に示す。
また、実施例1~4及び比較例1~4より得られた、洗浄工程の油水分離前の混合液の水分濃度と、油水分離後の油相液と油水分離前の混合液の水分濃度の差の関係を、図3に示す。
Figure 2023103003000002
[実験例1]
洗浄工程における油相液と水洗水の混合液中の水分濃度を、表2記載の値とした以外は、実施例1と同様の条件で、油水分離を行い、洗浄工程で分離された油相液中の水及びナトリウムの含有割合を測定した。測定結果を表2に示した。なお、前記油相液中のフェノールの含有割合を測定したところ、38.5~40.3質量%であった。また、前記油相液中の水及びナトリウムの含有割合の関係を図4に示した。
[実験例2]
実験例1の油相液と水洗水の混合液のラインを分岐させ、内容積0.013m、内径0.20m、エレメントを1本持ったコアレッサーを用いて、エレメント通過線速が表2記載のとおりとなるように制御した以外は、実施例1と同様に油水分離を行った。分離された油相液中の水及びナトリウムの含有割合を測定した。測定結果を表2に示した。また、前記油相液中の水及びナトリウムの含有割合の関係を図4に示した。
[実験例3]
実験例2の油相液と水洗水の混合液のラインを分岐させ、実験例2からエレメントをカーボンファイバーとグラスファイバー混合の有効ろ過径5μmのものに変更した以外は、同様の条件で油水分離を行った。分離された油相液中の水及びナトリウムの含有割合を測定した。測定結果を表2に示した。また、前記油相液中の水及びナトリウムの含有割合の関係を図4に示した。
Figure 2023103003000003
[考察]
実施例1~4では、油水分離後の油相水分濃度が低かった。
一方、比較例1~4では、混合液中の水分濃度が低いため、油水分離後の油相水分濃度が高かった。
図2及び図3から、混合液中の水分濃度が高いほど、油水分離後の油相中に含まれる水分濃度が低い傾向にあることがわかる。
実験例1~3から、洗浄工程における混合液中の水分濃度を制御することで、洗浄工程で分離された油相液における、水及びナトリウムの含有割合を制御できることがわかる。
さらに、図4から、洗浄工程で分離された油相液において、水及びナトリウムの含有割合には相関関係があり、水の含有割合を11.5質量%以下に制御することで、ナトリウムの含有割合を3.0質量ppm以下に制御できることがわかる。
このような組成を有するフェノール組成物は、クメン法を用いたフェノールの製造プロセスにおいて、蒸留塔内でナトリウム塩が析出し、塔を閉塞させることを防ぐことができるので、蒸留用の組成物として好適に使用できる。
以上の結果から、請求項1に規定される、中和工程、油水分離工程、及び油相液の洗浄工程を有するフェノールの製造において、前記洗浄工程入口における油相液と水洗水の混合液中の水分濃度が14.5質量%以上であると、油水分離性を良好にできることが期待される。
なお、フェノールは、例えば、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂の原料として多量に消費されるため、例えば10万トン/年以上の工業的規模で多量に製造される。従って、フェノールの製造において、油水分離性を少しでも高め、例えば、蒸留塔に持ち込まれる油相中の水分濃度を1%でも低減することは、蒸留塔において加熱に要するエネルギーを削減したり、油相中遊離水に溶解していた塩類の析出を抑制したりして、製造コストを削減できる観点から工業的に重要である。
1 中和工程出口油相ライン
2 洗浄水供給ライン
3 スタティックミキサー
4 コアレッサー
5 エレメント
6 油水分離後油相液抜出ライン
7 油水分離後水相液抜出ライン

Claims (11)

  1. クメンハイドロパーオキシドの酸分解反応液をアルカリで中和する中和工程、
    中和された反応液を油相液と水相液に分離する油水分離工程、
    前記油相液に水洗水を混合して洗浄した後、油相液と水相液とに分離する洗浄工程、
    を有するフェノールの製造方法において、
    前記洗浄工程における油相液と水洗水の混合液が、該混合液の総質量に対して、水を14.5質量%以上含有する、フェノールの製造方法。
  2. 前記洗浄工程において、前記混合液が通過するフィルターを備えたコアレッサーを用いて、前記混合液を油相液と水相液とに分離することを含む、請求項1に記載のフェノールの製造方法。
  3. 前記混合液において、前記油相液中に分散した水洗水の液滴の平均粒子直径が、前記フィルターの有効濾過径よりも大きい、請求項1又は2に記載のフェノールの製造方法。
  4. 前記液滴の平均粒子直径が5μm以上である、請求項3に記載のフェノールの製造方法。
  5. 前記コアレッサーが、前記混合液の流路に有効濾過径1μm以上30μm以下のフィルターを有する、請求項2~4のいずれか一項に記載のフェノールの製造方法。
  6. 前記混合液が、該混合液の総質量に対して、水を30質量%以下含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフェノールの製造方法。
  7. 前記中和工程の前に、クメンを酸化してクメンハイドロパーオキシドを製造する酸化工程を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のフェノールの製造方法。
  8. 前記洗浄工程の後に、洗浄後の油相液を蒸留してフェノールを回収する回収工程を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のフェノールの製造方法。
  9. 前記洗浄工程で分離された油相液が、該油相液の総質量に対して、水を11.5質量%以下、アルカリ金属を3.0質量ppm以下含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のフェノールの製造方法。
  10. クメン法フェノールの製造プロセスにおける蒸留用のフェノール組成物であって、フェノールを30質量%以上50質量%以下、水を11.5質量%以下、アルカリ金属を3.0質量ppm以下含有する、フェノール組成物。
  11. 前記アルカリ金属が、ナトリウムである、請求項10に記載のフェノール組成物。
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