以下では、本発明の実施の形態に係る照明装置及び受信端末について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
(実施の形態1)
[ナビゲーションシステムの概要]
まず、本実施の形態に係るナビゲーションシステムの概要について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係るナビゲーションシステム1の構成を示す図である。
本実施の形態に係るナビゲーションシステム1は、図1に示すように、照明装置10と、受信端末20とを備える。ナビゲーションシステム1は、無線通信及び可視光通信の両方を用いて、ユーザ30のナビゲーションを行うシステムである。
ナビゲーションとは、ユーザ30を所定の位置(目的地)に案内することであり、例えば、ユーザ30のおよその現在地、及び、目的地のおよその位置などを知らせることを含んでいる。つまり、ナビゲーションとは、実際に目的地までの経路などを知らせてユーザ30を導くことだけでなく、単に位置情報をユーザ30に知らせることも含んでいる。
照明装置10は、無線通信及び可視光通信により、固有のID(識別子)を繰り返し送信する。受信端末20は、無線通信及び可視光通信の少なくとも一方により、照明装置10からIDを受信し、受信したIDに基づいて位置情報を取得する。位置情報は、例えば、緯度、経度、及び、階数(フロア番号)などを示す情報である。具体的には、位置情報は、照明装置10が設置されている場所を示す情報である。
例えば、図1に示す例では、照明装置10は、エレベータ40の上方に設けられている。このとき、仮にエレベータ40のドア周辺にフロア番号が表示されていたとしても、ユーザ30が視覚障碍者である場合、又は、ユーザ30がエレベータ40から離れている場合、フロア番号を知ることはできない。
これに対して、受信端末20は、照明装置10との通信により位置情報を取得し、ユーザ30に通知する。これにより、ユーザ30は、現在居るフロアが何階であるかなどを知ることができる。
このようなナビゲーションシステム1は、例えば、地下街、オフィスビル、大規模店舗(ショッピングセンター)、病院、ホテル、駅構内、空港、学校の校舎及び敷地、大型船舶、テーマパークなどの屋内に利用される。あるいは、ナビゲーションシステム1は、屋外で利用されてもよい。
[照明装置]
次に、本実施の形態に係る照明装置10について、図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る照明装置10の構成を示す図である。
本実施の形態に係る照明装置10は、固有の第1IDを重畳した照明光(可視光)を発する。また、照明装置10は、固有の第2IDを無線により繰り返し送信する。つまり、照明装置10は、可視光通信及び無線通信の両方を行う照明装置である。なお、本実施の形態では、第1ID及び第2IDは、照明装置10に固有で、かつ、同一のIDである。
図2に示すように、照明装置10は、照明モジュール100と、無線モジュール110と、信号発生器120とを備える。例えば、照明装置10を構成する筐体内に、照明モジュール100と、無線モジュール110と、信号発生器120とが収納されている。
照明モジュール100は、照明光を発することで、当該照明光に重畳された固有の第1IDを繰り返し送信する。照明光は、例えば、波長が380nm〜780nm程度の可視光帯域の光である。なお、照明モジュール100は、赤外光を照明光として発してもよい。つまり、照明モジュール100は、可視光帯域又は赤外光帯域の光を照明光として発してもよい。
具体的には、照明モジュール100は、図2に示すように、電流源101と、容量素子102と、発光部103と、負荷104と、スイッチトランジスタ105とを備える。
電流源101は、発光部103に定電流を供給する。電流源101は、例えば、系統電源などから交流電力を受け、直流電力に変換することで、発光部103に定電流を供給する。なお、発光部103に流れる電流は、実際には完全に一定ではなく、スイッチトランジスタ105の動作による変動を含む。
容量素子102は、例えば、平滑コンデンサであり、発光部103に流れる電流の変動を抑制し、ノイズを除去する。
発光部103は、直列に接続された複数のLED(Light Emitting Diode)により構成され、照明光を発生する。複数のLEDは、白色LEDであるが、部分的に他の色のLEDを含んでもよい。また、発光部103は、スイッチトランジスタ105のスイッチング速度に対する応答性が良ければよく、例えば、複数のLEDの代わりに有機EL(Electro Luminescence)発光体、又は、無機EL発光体などを含んでもよい。
負荷104は、発光部103と直列に接続され、抵抗成分を有する負荷回路である。
スイッチトランジスタ105は、負荷104に並列に接続され、例えば、電流容量が大きく、オン抵抗が小さい電力制御用のパワーMOSトランジスタである。スイッチトランジスタ105がオフのとき、電流源101からの電流は、発光部103と負荷104とを流れる。一方で、スイッチトランジスタ105がオンのとき、電流源101からの電流は、発光部103とスイッチトランジスタ105とを流れる。
すなわち、スイッチトランジスタ105のオン及びオフにより、発光部103を流れる電流が異なり、照明光の明暗が異なる。このように、スイッチトランジスタ105は、照明光の明暗を制御する。光通信では、デジタルデータが明暗として伝送される。つまり、デジタルデータ(第1ID)が照明光に重畳される(図14参照)。
無線モジュール110は、固有の第2IDを繰り返し送信する近距離無線通信を行う無線通信モジュールである。例えば、無線モジュール110は、可視光帯域及び赤外光帯域とは異なる帯域(非可視光帯域)の電磁波を用いて、第2IDを送信する。具体的には、無線モジュール110は、第2IDを用いて非可視光帯域の電磁波(搬送波)を変調することで、第2IDを搬送波に乗せて送信する。例えば、無線モジュール110は、Bluetooth(登録商標)規格の無線モジュールである。
無線モジュール110は、受信端末20にプッシュ通信を行う。つまり、受信端末20は、無線モジュール110から第2IDを受信した場合に、所定のプログラムを実行する。例えば、受信端末20は、無線通信を介して第2IDを取得した場合に、ユーザの移動をガイドするプログラムを実行する。
あるいは、無線モジュール110は、無線IDを繰り返し送信するだけでなく、受信端末20と無線リンクを確立したときに、受信端末20に特定のアプリケーションプログラムの移動を指示する通知を送信してもよい。これは、いわゆるプッシュ通知である。例えば、特定のアプリケーションは、ユーザ30の移動をガイドするナビゲーション用のプログラムである。
信号発生器120は、固有のIDを照明光に重畳するようにスイッチトランジスタ105へのゲート信号を発生する。例えば、信号発生器120は、電子情報技術産業協会規格(JEITA)のCP−1223「可視光ビーコンシステム」に規定された通信フレームに準拠してゲート信号を発生する。
具体的には、信号発生器120は、IDを示すフレームを一定の周期で繰り返し送信する。各フレームは、当該フレームの先頭を示すプリアンブルと、当該フレームのタイプを示すタイプ情報と、任意の情報(ここでは、ID)を示すペイロードと、当該フレームの誤り検出符号とを含む固定長のデータであり、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号である。
また、信号発生器120は、光強度変調として、本実施の形態では、N(2以上の整数)値のパルス位置変調(PPM:Pulse Position Modulation)が用いられる。例えば、4PPMでは、一定時間長の1シンボルで2ビットが表現される(図14参照)。
また、信号発生器120は、無線通信の搬送波を変調するための制御信号を、固有のIDに基づいて生成する。例えば、信号発生器120は、IDを用いて無線モジュール110が利用する変調方式に応じた制御信号を生成して出力する。なお、無線モジュール110が、4PPMを利用する場合は、照明モジュール100に送信するゲート信号と同じ信号を無線モジュール110に出力してもよい。
本実施の形態では、信号発生器120は、第1ID及び第2IDとして同一のIDを発生する。つまり、照明モジュール100と無線モジュール110とは、信号発生器120を共用する。これにより、照明装置10は、1つのみの信号発生器120を備えるだけでよく、構成を簡略化することができる。
例えば、信号発生器120は、照明装置10に固有のID(すなわち、第1ID及び第2ID)を記憶するためのメモリを備える。当該メモリは、例えば、不揮発性の半導体メモリである。当該メモリは、1つの同一のIDを記憶すればよいので、メモリ資源を有効に利用することができる。
[受信端末]
次に、本実施の形態に係る受信端末20について、図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る受信端末20の構成を示す図である。
受信端末20は、例えば、スマートフォン、タブレット端末などの携帯情報端末である。図3に示すように、受信端末20は、光受信部200と、無線部210と、制御部220と、加速度センサ230と、照度センサ240と、外部出力部250と、タッチパネル260とを備える。
光受信部200は、照明モジュール100が送信する第1IDを受信する。つまり、光受信部200は、可視光通信により、照明装置10に固有のIDを受信する。図3に示すように、光受信部200は、受光部201と、復調部202とを備える。
受光部201は、照明装置10からの照明光を受信し、受信した照明光を光電変換することで、電気信号を生成して出力する。受光部201は、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトコンダクタなどである。
復調部202は、受光部201によって生成された電気信号を復調することで、IDを取得する。例えば、復調部202は、N値パルス位置変調されたIDを含む電気信号を元のIDに復調する。
無線部210は、無線モジュール110が送信する第2IDを受信する。つまり、無線部210は、無線通信により、照明装置10に固有のIDを受信する。図3に示すように、無線部210は、無線部210a〜210cを備える。
無線部210aは、照明装置10から送信される第2IDを受信する。具体的には、無線部210aは、無線モジュール110から送信される電波を受信し、受信した電波を復調することでIDを取得する。例えば、無線部210aは、Bluetooth(登録商標)規格の無線モジュールである。
無線部210bは、例えば、Wifiなどの無線LANに接続する通信モジュールである。例えば、受信端末20の周囲に無線LANのアクセスポイントが存在する場合、無線部210bは、アクセスポイントに接続可能である。これにより、制御部220は、無線LAN及びアクセスポイントを介してインターネット上のサーバ装置の各種データベースにアクセスし、照明装置10の位置を示す位置情報、及び、地図情報などを取得することができる。
無線部210cは、携帯電話機の基地局と無線接続する通信モジュールである。これにより、制御部220は、無線部210c及び基地局を介して、上記のサーバ装置の各種データベースにアクセスすることができる。
制御部220は、受信端末20の全体の動作を制御する。例えば、制御部220は、無線部210が第2IDを受信したとき、所定のプログラムの実行を開始する。制御部220は、図3に示すように、制御部220は、プロセッサ221と、メモリ222とを備える。
プロセッサ221は、メモリ222に格納されたプログラムを実行することにより、受信端末20の全体の動作を制御する。例えば、プロセッサ221は、ナビゲーションプログラムを実行することにより、照明装置10から受信したIDに基づいて、ユーザの移動をガイドする。具体的には、プロセッサ221は、IDに基づいて照明装置10の位置を示す位置情報を取得し、外部出力部250を介して位置情報をユーザ30に提供する。
メモリ222は、例えば、ナビゲーションプログラム、又は、受信端末20を情報端末として動作させるOS(Operating System)プログラムなどのプログラムを格納する。例えば、メモリ222は、キャッシュメモリ、メインメモリ及び補助記憶装置を含んでいる。
メモリ222は、複数の照明装置のIDと位置情報とを対応付けたデータベース、及び、当該位置情報を含む地図を表す地図情報を有するデータベースなどを記憶していてもよい。また、メモリ222は、光受信部200及び無線部210aが取得したIDを一時的に記憶してもよい。
加速度センサ230は、受信端末20の加速度及び速度の少なくとも1つを検出するセンサの一例である。例えば、加速度センサ230は、3軸加速度センサ及び角速度センサ(ジャイロセンサ)である。
照度センサ240は、照度(受信端末20の周囲の明るさ)を検出するセンサの一例である。例えば、照度センサ240は、フォトトランジスタを含む検出回路である。
外部出力部250は、音声出力部251と、表示部252とを備える。
音声出力部251は、スピーカ及びイヤホンジャックを有し、ナビゲーションプログラムの実行中には、受信端末20のおよその現在位置、具体的には、照明装置10の位置を示す音声などを出力する。
表示部252は、表示パネルを有し、ナビゲーションプログラムの実行中には、地図を表示する。地図には、照明装置10の位置、通路、部屋、建物などを示すマークが付加される。
タッチパネル260は、表示パネルに設けられた静電容量センサなどであり、ユーザ操作を受け付ける。
[動作]
続いて、本実施の形態に係る照明装置10及び受信端末20の動作について説明する。まず、本実施の形態に係る照明装置10の動作について説明する。
照明装置10は、常時(照明光を発している限りにおいて)、IDを繰り返し送信している。具体的には、照明モジュール100が第1IDを繰り返し送信し、無線モジュール110が第2IDを繰り返し送信する。なお、照明モジュール100と無線モジュール110とが信号発生器120を共用しているので、例えば、それぞれから送信されるIDのタイミング、及び、繰り返し周期は、同一である。
次に、本実施の形態に係る受信端末20の動作について、図4を用いて説明する。
まず、受信端末20が照明装置10の無線エリアに入ったとき、無線部210は、無線モジュール110から送信されるプッシュ通知を受信する(S100)。具体的には、無線部210は、第2IDを受信した直後に、照明装置10と無線リンクを確立し、照明装置10から特定のアプリケーションプログラムの起動を指示するプッシュ通知を受信してもよい。なお、一般には、無線モジュール110による通信エリアが、照明モジュール100による通信エリア(照射エリア)より広い。
このとき、制御部220は、特定のアプリケーションプログラムが起動済みであるか否かを判定する(S110)。特定のアプリケーションプログラムが起動されていない場合(S110でNo)、制御部220は、特定のアプリケーションプログラムを起動する(S120)。
特定のアプリケーションプログラムが起動済みである場合(S110でYes)、あるいは、アプリケーションプログラムを起動後、制御部220は、起動されたプログラムに従って、取得したIDに対応する位置情報を取得する(S130)。そして、外部出力部250は、制御部220が取得した位置情報を出力する(S140)。
例えば、特定のアプリケーションプログラムが、ユーザ30に地図を表示するナビゲーションプログラムである場合、図5に示すように、制御部220は、IDに基づいて取得された位置情報に応じた地図を表示部252に表示させる。このとき、「3F、エレベータの近くに居ます。」などの位置情報を示すテキストメッセージを、地図に重畳させて表示する。
なお、制御部220は、地図を表示せずに、テキストメッセージのみを表示させてもよい。さらに、このとき、音声によって位置情報を知らせてもよい。
また、第2IDがプッシュ通知であってもよい。すなわち、制御部220は、無線部210が第2IDを受信したときに、別の通知を受け取ることなく、特定のアプリケーションプログラムの起動の判定及び開始を行ってもよい。
[効果など]
上述したように、本実施の形態に係る照明装置10は、可視光通信だけでなく、無線通信を行うことができるので、無線通信により受信端末20に情報を任意のタイミングで受信させることができる。
照明装置10は、可視光通信の場合、受信端末20が遮光されているときには受信端末20にIDを受信させることができない。例えば、受信端末20がカバン又はポケットの中に入れられている場合には、照明光を受信できない。照明光は、無線通信に用いられる電磁波よりも物体の透過力が低いためである。
本実施の形態では、照明装置10は、無線通信を利用して受信端末20に第2IDを受信させることができる。これにより、例えば、受信端末20が第2IDを受信した時に、受信端末20のバイブレーション機能又はスピーカなどを利用して、ユーザ30に知らせることができる。
例えば、制御部220は、無線部210が第2IDを受信した時に、ナビゲーションプログラムを起動する。言い換えると、制御部220は、照明装置10からの無線通信を利用したプッシュ通知によってプログラムを起動する。そして、制御部220は、第2IDに対応する位置情報を取得し、外部出力部250を介して、取得した位置情報をユーザ30に提示する。例えば、制御部220は、表示部252に地図を表示させ、地図上に位置情報を表示させる。
さらに、光受信部200が第1IDを受信した場合は、制御部220は、第1IDに基づいて位置情報を取得し、取得した位置情報をユーザに提示する。すなわち、制御部220は、可視光通信によって受信された第1IDと、無線通信によって受信された第2IDとの両方を利用できる場合、第1IDを優先して利用する。これは、後述するように、可視光通信の場合の方が、通信エリアが狭く、また、無線の混信による誤認識の可能性が低いためである。
以下では、無線通信と可視光通信との両方を行うことのより格別な効果について、図6〜図8を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係る照明装置10の無線通信と可視光通信とを用いてユーザ30に位置情報を提示する例を説明するための図である。本実施の形態に係るナビゲーションシステム1では、例えば、図6に示すように、照明装置10は、エレベータ40の前に設置されている。
このとき、無線通信と可視光通信とでは、通信可能なエリアが異なっている。例えば、無線通信は、図6に示す全範囲で通信可能である。したがって、受信端末20a〜20dは、無線通信により、照明装置10からID(第2ID)を取得することができる。これにより、受信端末20a〜20dは、近くにエレベータ40(照明装置10)があることを知ることができる。
一方で、可視光通信は、図6に示す照明エリア50内でのみ通信可能である。したがって、照明エリア50内に存在する受信端末20aのみ、可視光通信により、照明装置10からID(第1ID)を取得することができる。しかしながら、受信端末20b〜20dは、照明エリア50外であるので、可視光通信によっては、照明装置10からID(第1ID)を取得することはできない。
なお、照明エリア50は、実質的に可視光通信が可能な範囲を意味する。すなわち、照明エリア50は、受信端末20が照明装置10から第1IDを取得することができる範囲である。つまり、照明エリア50は、照明装置10からの光が届く範囲と完全に一致しない場合もある。
以上のことから、通信可能なエリアが狭い可視光通信だけでは、例えば、エレベータ40の位置が見えない受信端末20cを操作するユーザにとっては、エレベータ40に到達するのが困難になる。そこで、照明装置10が無線通信を行うことで、受信端末20cにIDを送信することができ、受信端末20cを操作するユーザに照明装置10の位置を知らせることができる。
一方で、照明装置10が無線通信のみを行う場合、他の無線通信との混信が問題となる。図7は、本実施の形態に係る無線通信の混信を説明するための図である。
図7に示す例では、照明装置10a〜10eが、各フロアのエレベータ40の前に設置されている。なお、照明装置10a〜10eは、図1に示す照明装置10と同一の照明装置である。ただし、照明装置10a〜10eのそれぞれが有するIDは、各照明装置に固有のIDであり、互いに異なるIDである。
照明装置10aが送信するID(電波)は、図7に示すようにフロアを越えて伝播する。したがって、例えば、受信端末20eは、照明装置10aだけでなく、照明装置10dからのIDを受信する。このとき、受信端末20eは、受信したIDの電波強度を判別することで、いずれのIDを送信した照明装置が近いかを判別する。しかしながら、受信端末20eが存在する位置によっては、電波強度の判定に誤りが生じる場合がある。
例えば、受信端末20fは、照明装置10bより照明装置10aに近い。このため、受信端末20fは、電波強度が強い照明装置10aのIDに基づいて、照明装置10aと同じフロアに居ると誤って判定する恐れがある。
また、受信端末20gは、照明装置10d及び照明装置10eのそれぞれから略同じ距離に位置する。このため、受信端末20gは、いずれのIDを利用すればよいのかが電波強度に基づいて判別できずに、位置情報を取得することができなくなる恐れがある。
なお、無線の混信を抑制するために、各照明装置が発するIDの電波強度を弱くすることが考えられる。しかしながら、この場合、図6に示したように、照明エリア50よりも遠くに位置する受信端末がIDを取得できるという利点を失ってしまう。
これらの問題に対して、図8に示すように、照明装置10a〜10eが可視光通信を行うことで、受信端末20e〜20fのそれぞれは、現在位置を正しく判別することができる。図8は、本実施の形態に係る可視光通信によるフロアの判別が可能であることを説明するための図である。
図8に示すように、照明装置10a〜10dは、照明エリア50a〜50dの対応するエリアに照射光を発する。照明エリア50a〜50dは、照明装置10a〜10dによる照射光を用いた可視光通信の通信範囲である。照射光は、可視光であるので、床及び天井を透過しない。このため、照明エリア50a〜50dはそれぞれ、図8に示すように、照明装置10a〜10dの対応する照明装置が存在するフロアのみに限定される。
具体的には、受信端末20eは、照明エリア50a内に存在するので、可視光通信により照明装置10aのみからのIDを取得する。受信端末20f及び20gについても同様である。したがって、受信端末20e〜20gは、同一のフロアに存在する照明装置からのIDに基づいて位置情報を取得するので、適切に位置情報を取得することができる。
[まとめ]
以上のように、本実施の形態に係る照明装置10は、照明光を発することで、照明光に重畳された固有の第1IDを繰り返し送信する照明モジュール100と、固有の第2IDを繰り返し送信する無線モジュール110とを備える。
これにより、照明装置10は可視光通信だけでなく、無線通信を行うことができるので、無線通信により受信端末20に情報を任意のタイミングで受信させることができる。照明装置10は、可視光通信の場合、受信端末20が遮光されているときには受信端末20にIDを受信させることができないが、受信端末20にIDを受信させることができる。
また、例えば、照明モジュール100は、可視光帯域又は赤外光帯域の照明光を発し、無線モジュール110は、可視光帯域及び赤外光帯域とは異なる帯域の電磁波を用いて第2IDを送信する。
これにより、照明装置10は、可視光又は赤外光を利用するので、無線の混信が発生する場合でも、受信端末20に可視光又は赤外光により適切にIDを受信させることができる。
また、例えば、第1ID及び第2IDは、同一のIDである。
これにより、同一の照明装置からのIDは、可視光通信及び無線通信のいずれの場合も同一であるので、例えば、位置情報の取得などの処理を効率良く行うことができる。
また、例えば、照明装置10は、さらに、同一のIDを発生する信号発生器120を備える。
これにより、照明モジュール100と無線モジュール110とが信号発生器120を共用することができ、低コスト化及び高効率化を実現することができる。
また、本実施の形態に係る受信端末20は、照明装置10から送信される第1ID及び第2IDを受信する受信端末20であって、第2IDを受信する無線部210と、無線部210が第2IDを受信したとき、所定のプログラムの実行を開始する制御部220とを備える。
これにより、無線通信により第2IDを受信した場合にプログラムを起動するので、プッシュ通信によりユーザに知らせることができる。例えば、受信端末20は、無線通信のエリアに入ったときに第2IDを受信することで、バイブレーション機能などにより、ユーザ30にエレベータ40が近くに存在することを知らせることができる。さらに、受信端末20は、照明エリア50に入ったときに可視光通信により第1IDを受け取ることで、現在のフロアが何階であるかを判別することができる。
なお、受信端末20が受け取った第2IDが、受信端末20が存在するフロアと異なるフロアに設置された照明装置からの第2IDである場合がある。この場合であっても、エレベータ40は通常、フロアが異なっても同じ位置に設けられているので、エレベータ40が近くに存在すると判定することができる。
(実施の形態2)
[ナビゲーションシステムの概要]
まず、本実施の形態に係るナビゲーションシステムの概要について、図9を用いて説明する。図9は、本実施の形態に係るナビゲーションシステム2の構成を示す図である。
本実施の形態に係るナビゲーションシステム2は、図9に示すように、照明装置11と、受信端末20とを備える。ナビゲーションシステム2は、無線通信及び可視光通信の両方を用いて、特に緊急時にユーザ30のナビゲーションを行うシステムである。
照明装置11は、無線通信及び可視光通信により、固有のIDを繰り返し送信する。照明装置11は、例えば、避難誘導灯である。例えば、図9に示すように、照明装置11は、非常口60の上方に設けられている。照明装置11は、常時、点灯している。すなわち、照明装置11は、常時、照明光を発しており、第1IDを繰り返し送信している。
[照明装置]
次に、本実施の形態に係る照明装置11について、図10を用いて説明する。図10は、本実施の形態に係る照明装置11の構成を示す図である。
本実施の形態に係る照明装置11は、図2に示す実施の形態1に係る照明装置10と比較して、新たに停電検知部130と、スイッチ131とを備える点が異なっている。以下では、異なる点を中心に説明し、同じ点は説明を省略する場合がある。
停電検知部130は、停電を検知する。例えば、停電検知部130は、系統電源の電力をモニタリングすることで、停電が発生したか否かを検知する。停電を検知する方法は、いかなるものでもよい。
停電検知部130は、停電を検知したときにスイッチ131をオン状態にする。また、停電検知部130は、停電の復旧を検知した場合、例えば、系統電源からの電力の供給を検知したときにスイッチ131をオフ状態にする。
なお、スイッチ131のオン状態からオフ状態への切り替えは、停電検知部130が行わなくてもよい。例えば、照明装置11がタイマを有し、所定期間経過後にスイッチ131をオフ状態に戻してもよい。あるいは、照明装置11の管理者などが、手作業でスイッチ131をオフ状態に戻してもよい。
スイッチ131は、信号発生器120と無線モジュール110とを接続する伝送路上に設けられる。スイッチ131がオン状態である場合に、信号発生器120が生成したIDが無線モジュール110に伝送され、無線モジュール110は、IDを送信する。スイッチ131がオフ状態である場合は、信号発生器120が生成したIDは無線モジュール110に伝送されないので、無線モジュール110は、IDを送信することができない。
なお、図示しないが、照明装置11は、非常用の蓄電池を備え、停電時であっても少なくとも一定期間は、照明モジュール100による照明光の出射、及び、無線モジュール110によるIDの送信が可能になるように、蓄電池から電力が供給される。なお、照明装置11には、非常時に、電気的に接続された別の蓄電池から電力が供給されてもよい。
また、緊急時の例として、停電発生時について説明したが、これに限らない。例えば、照明装置11は、停電検知部130の代わりに、又は、停電検知部130に加えて、地震検知器又は火災検知器などを備えてもよい。この場合、スイッチ131は、停電検知部130、地震検知器及び火災検知器の少なくとも1つで、停電、地震又は火災が検知されたときに、無線モジュール110に第2IDを送信させる。
[緊急時の動作]
次に、本実施の形態に係る照明装置11の動作について、図11を用いて説明する。図11は、本実施の形態に係る照明装置11の動作を示すフローチャートである。
図11に示すように、停電検知部130が停電を検知した場合(S200でYes)、照明装置11は、無線通信と可視光通信との両方を用いて、固有のIDを繰り返し送信する(S210)。具体的には、停電検知部130は、停電を検知した場合にスイッチ131をオン状態にすることにより、無線モジュール110から第2IDを繰り返し送信させる。また、照明モジュール100は、常時、照明光を発しているので、第1IDを繰り返し送信している。
停電検知部130が停電を検知しない場合(S200でNo)、照明装置11は、可視光通信のみを用いて、固有のIDを繰り返し送信する(S220)。
受信端末20の動作は、実施の形態1で説明した図4のフローチャートに示す通りである。例えば、特定のアプリケーションプログラムは、図5に示すように位置情報と地図とを表示させるプログラムである。あるいは、停電及び火災などを知らせるテキストメッセージ、バイブレーション又はアラーム音などを出力するプログラムでもよい。また、受信端末20は、受信した電波の強度を検出し、照明装置11までのおよその距離を算出して出力してもよい。
[効果など]
上述したように、本実施の形態に係る照明装置11は、常時、可視光通信によりIDを繰り返し送信し、緊急時には、さらに無線通信によりIDを繰り返し送信する。これにより、緊急時には、半強制的に受信端末20にプログラムを起動させることができ、ユーザのナビゲーションを行いやすくすることができる。一方で、緊急時ではない時(通常時)に、受信端末20がユーザにとって不必要かもしれないプログラムが自動的に起動することを抑制し、ユーザの煩わしさを低減することができる。
例えば、受信端末20をカバンの中などに入れた状態で、ユーザ30が照明装置11のそばを通過する場合を想定する。なお、このとき、受信端末20の光受信部200及び無線部210は、電力が供給され、IDを受信可能な状態にある。
この場合、受信端末20は、照明光を受信しない限り、可視光通信により第1IDを取得することはない。例えば、ユーザ30が受信端末20をカバンの中から取り出し、照明光に受光部201を曝さない限りは、受信端末20は、第1IDを取得しない。
これに対して、無線通信の場合、無線の電波はカバンなどを透過するので、受信端末20は、無線通信により第2IDを受信する。つまり、ユーザ30が照明装置11のそばを通過する度に、受信端末20は、第2IDを受信し、ナビゲーションプログラムを起動する。したがって、ユーザ30にとっての利便性が低下する。
以上のことから、本実施の形態に係る照明装置11は、緊急時にのみ無線通信を行うことで、通常時に第2IDを送信することを抑制し、受信端末20に第2IDを受信させなくすることができる。したがって、必要ではないときに、受信端末20が第2IDを受信することで、プログラムが起動されることを抑制することができる。これにより、ユーザ30の利便性を高めることができる。
[まとめ]
以上のように、本実施の形態に係る照明装置11は、避難誘導灯であり、無線モジュール110は、緊急時にのみ第2IDを繰り返し送信する。
これにより、例えば、緊急時にはプッシュ通知により受信端末20にプログラムを起動させることができるので、ユーザのナビゲーションを行いやすくすることができる。また、緊急時ではないときに、例えば、受信端末20が第2IDを受信することでプログラムが起動されることを抑制することができる。これにより、ユーザ30の利便性を高めることができる。
また、例えば、照明装置11は、さらに、停電を検知する停電検知部130を備え、無線モジュール110は、停電検知部130が停電を検知した時に第2IDを繰り返し送信する。
これにより、例えば、停電時にプッシュ通知により受信端末20にプログラムを起動させることができるので、ユーザをスムーズに非常口などに案内しやすくすることができる。例えば、受信端末20は、無線通信のエリアに入ったときに第2IDを受信することで、バイブレーション機能などにより、ユーザ30に非常口60が近くに存在することを知らせることができる。さらに、受信端末20は、照明エリア50に入ったときに可視光通信により第1IDを受け取ることで、現在のフロアが何階であるかを判別することができる。
なお、受信端末20が受け取った第2IDが、受信端末20が存在するフロアと異なるフロアに設置された照明装置からの第2IDである場合がある。この場合であっても、非常口60(非常階段)は通常、フロアが異なっても同じ位置に設けられているので、非常口60が近くに存在すると判定することができる。
(実施の形態3)
続いて、本実施の形態に係る照明装置12について、図12を用いて説明する。図12は、本実施の形態に係る照明装置12の構成を示す図である。
本実施の形態に係る照明装置12は、図2に示す照明装置10と比較して、照明モジュール100の代わりに、照明モジュール100aを備える点が異なっている。具体的には、照明モジュール100aは、負荷104の代わりに、発光部104aを備える。以下では、異なる点を中心に説明する。
発光部104aは、直列に接続された1以上のLEDにより構成され、照明光を発生する。1以上のLEDは、例えば、白色LEDであるが、他の色のLEDでもよい。また、発光部104aは、スイッチトランジスタ105のスイッチング速度に対する応答性が良ければよく、例えば、1以上のLEDの代わりに、有機EL発光体又は無機EL発光体などでもよい。発光部104aは、スイッチトランジスタ105のオン及びオフにより点灯及び消灯する。この点灯及び消灯により、第1IDが発光部104aからの照明光に重畳される。
発光部103と発光部104aとは、例えば、互いに異なる方向を照射する。
図13は、本実施の形態に係る照明装置12における発光部103及び104aの配置を示す図である。図13に示すように、照明装置12の外郭は、例えば、直方体状の筐体である。
発光部103は、照明装置12の主光源として、筐体の前面及び背面から照射するように配置される。これに対して、発光部104aは、筐体の側面から照射するように配置される。
なお、発光部104aは、可視光通信が可能な照明装置と、可視光通信が不可能な照明装置とを識別するための識別子として利用することもできる。例えば、白色とは異なる色(例えば、青色)の点光源が照明装置の側面に設けられている場合を、可視光通信が可能な照明装置であると予め規定しておけばよい。これにより、照明装置12が可視光通信を行う照明装置であることを、ユーザ30に認識させることができる。
ここで、照明光へのIDの重畳、つまり、変調について説明する。
図13は、本実施の形態に係る光通信のデータを説明する図である。図13に示す例では、照明光を4値パルス位置変調(4PPM)する場合の、2ビットのデータ、4PPM値及び光信号波形を示している。
2ビットのデータは、変調の単位である1シンボルとして扱われるデータである。4PPM値は、4PPMによる4つの位置に対応する値である。光信号波形は、それぞれ発光部103及び104aからの照明光を示している。具体的には、「点灯」及び「消灯」で示される波形が発光部104aからの照明光を示し、「明」及び「暗」で示される波形が発光部103からの照明光を示している。
発光部104aの光信号波形の変動は、実際には、発光部103の光信号波形の変動よりもずっと大きい。すなわち、発光部104aの変調度は、発光部103の変調度より大きい。このため、発光部104aからのIDを、より遠くまで送信することができる。
以上のように、本実施の形態に係る照明装置12によれば、可視光によるIDの送信範囲をより広くすることができる。すなわち、発光部104aからのIDをより遠くまで送信することができる。
(その他)
以上、本発明に係る照明装置及び受信端末について、上記の各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記の各実施の形態では、照明モジュール100が送信する第1IDと無線モジュール110が送信する第2IDとが同一のIDである例について示したが、第1IDと第2IDとは、互いに異なるIDであってもよい。例えば、図14に示す照明装置のように、2つの異なるID信号発生器を備えてもよい。なお、図14は、実施の形態の変形例に係る照明装置13の構成を示す図である。
図14に示すように、照明装置13は、照明モジュール100と、無線モジュール110と、第1IDを発生する第1信号発生器121と、第2IDを発生する第2信号発生器122とを備える。このとき、第1ID及び第2IDはともに、照明装置13に固有のIDであるが、互いに異なるIDである。
これにより、例えば、第1IDを送信する繰り返し周期と第2IDを送信する繰り返し周期とを異ならせることができる。照明エリア(可視光通信による通信エリア)は、無線通信のエリアより狭いので、第1IDを送信する繰り返し周期を、第2IDを送信する繰り返し周期より短くしてもよい。
また、実施の形態2では、照明装置11が停電を検知する停電検知部130を備える例について示したが、これに限らない。例えば、照明装置11は、ネットワークで接続されたサーバ装置などから、停電などの緊急であることを示す通知を受け取ってもよい。当該通知を受け取った場合に、照明装置11は、スイッチ131をオン状態にすることで、無線モジュール110から第2IDを送信してもよい。
また、例えば、上記の各実施の形態では、看板型の直方体状の照明装置について説明したが、これに限らない。各実施の形態に係る照明装置は、直管形ランプ、環状ランプ、電球型ランプなどの照明装置でもよい。
また、例えば、上記の各実施の形態では、無線モジュール110がBluetooth(登録商標)規格でIDを繰り返し送信する例について説明したが、数mから数10mの近距離無線通信であれば、他の通信方式でもよい。例えば、搬送波として音波を利用してもよい。具体的には、超音波にIDを重畳して繰り返し送信してもよい。つまり、無線モジュール110は、可視光帯域及び赤外光帯域を除く帯域の電磁波、又は、音波を搬送波として利用することができる。例えば、無線モジュール110は、第2IDを用いて、非可視光帯域の電磁波又は超音波を変調して送信してもよい。
また、例えば、上記の各実施の形態では、照明モジュール100、無線モジュール110及び信号発生器120が同一の筐体内に収納される例について説明したが、これに限らない。例えば、照明モジュール100及び無線モジュール110などは、一部が筐体の外側に設けられていてもよい。具体的には、複数のLEDの一部、又は、アンテナなどが筐体の外側に露出していてもよい。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。