JP2015175023A - 高周波焼入れ歯車及び歯車の高周波焼入れ方法 - Google Patents

高周波焼入れ歯車及び歯車の高周波焼入れ方法 Download PDF

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Abstract

【課題】内部硬さ、靭性、面疲労強度に優れる高周波焼入れ歯車、及び歯車の高周波焼入れ方法を提供する。【解決手段】V:0.05〜0.35%の他、所定の成分組成よりなる鋼からなり、マルテンサイト組織の焼入領域の深さが0.3〜3.0mmであり、表面から50μm深さの位置における硬さがHV620〜850であり、前記焼入領域の深さの位置より内部の領域の硬さ分布において、最も前記焼入領域側の極小値がHV300〜550、前記表面から50μm深さの位置における旧オーステナイト粒に関し、平均径が5μm以下でかつJIS G 0551で規定する混粒が存在しないことを特徴とする高周波焼入れ歯車、及び、高周波焼入れによる2回の熱処理を行う方法であって、第1熱処理と、予備加熱及び本加熱よりなる第2熱処理とからなり、各熱処理が所定の温度パターンを有する、歯車の高周波焼入れ方法。【選択図】図1

Description

本発明は高周波焼入れ歯車、及び歯車の高周波焼入れ方法に関する。
自動車、建機、農機、発電用風車、その他の産業機械等に使用されている動力伝達用の歯車は、熱間鍛造、冷間鍛造、切削などを組み合わせて所定の形状に加工した後、表面硬化熱処理が行われる。
この表面硬化熱処理は、曲げ疲労強度、転動疲労強度、ピッチング強度などの各種疲労強度や、耐摩耗性などの歯車としての重要な特性を向上させるために行われる。
近年、環境問題から歯車に対する小型化、軽量化への要求が強く、歯車の前記各種疲労強度の一層の向上が望まれている。
表面硬化熱処理として浸炭、浸炭窒化や高周波焼入れなどが代表的であり、歯車には浸炭が最も多く適用されている。一方、近年、高周波焼入れは、熱処理時間が短く生産性の向上に有利であることや、COの排出が少なく環境に優しいなどの利点があるため、低コスト化や環境対応の観点から、浸炭に代わる表面硬化熱処理として特に注目を集めている。しかしながら、高周波焼入れにより浸炭を代替する高疲労強度の歯車を製造するには、以下に記すいくつかの課題がある。
一つは内部硬さの増加である。高周波焼入れは歯車の表層付近のみを急速加熱・冷却する表面硬化熱処理であるため、歯車の表層部の硬さを高めることができるものの、歯車の内部は焼入れされないため、内部硬さを向上させることは非常に困難である。そこで、高周波焼入れによって、浸炭等の熱処理を施したときと同程度の内部強度を得るには、素材である鋼材の炭素等の合金元素を高めたり、高周波焼入れ前に熱処理を行うことでマルテンサイトやベイナイトなどの硬質な組織とする方法などがある。しかしこれらはいずれも鋼素材そのものの硬さが増加するために部品の加工性(冷間鍛造性や切削性)が著しく低下し、工業生産に適さない。
二つ目は靭性の向上である。高周波焼入れによって歯車に必要な表面硬さを得るためには、鋼材の炭素量を例えば0.45%以上に高める必要があるため、靭性が低下してしまう。
三つ目はピッチング強度、転動疲労強度といった面疲労強度の向上である。歯車の使用中に接触面の表面温度は300℃程度まで上昇するため、表層部の300℃での硬さ(又は300℃焼戻し後の硬さ(300℃焼戻し硬さ))が面疲労強度と強く相関していることが報告されている。浸炭された歯車の表層部は炭素量が多くなるため表面硬さが高く、それに従い300℃焼戻し硬さも高い。一方、高周波焼入れされる歯車は、靭性や加工性を確保するためや、焼割れ、置き割れなどの問題から、鋼素材への炭素の添加量には限界があり、表面硬さ及び300℃焼戻し硬さが浸炭の場合よりも低くなる。
これらの課題を解決する手段として、これまでに種々の方法が提案されている。
例えば特許文献1では2回目の焼入れ深さが1回目よりも浅い2回の高周波加熱焼入れを行うことにより、表面硬さだけでなく、内部硬さも向上できる技術が記載されている。しかしながらこの技術は硬さ分布と残留応力分布を最適化するものであり、鋼材については一般の機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼に限られることから、靭性や面疲労強度を大きく向上させることはできないものと考えられる。
特許文献2ではSi、V、Nb等を添加し、焼戻し軟化抵抗を向上させた鋼素材を使用して、且つ少なくとも2回の高周波焼入れを行うことで、面疲労強度と内部硬さを向上させる技術が記載されている。しかしながら、この特許文献2には靭性向上に関する記載が無い。また、特許文献2には、V、Nbなどの添加により結晶粒が微細化できるとの記載はあるものの、結晶粒を微細化するためのVやNbの制御方法や最適存在形態に関する記載は無く、さらに実際にどの程度の微細結晶粒が得られるかに関する記載もない。
特許文献3では二段に高周波焼入れを行い、表面のオーステナイト結晶粒度をNo.10以上で且つ、炭化物を微細に分散させることで高い面疲労強度とする技術が記載されている。しかしながら、この特許文献3には高周波焼入れ条件の一例が示されているのみで、炭化物を微細分散させるための高周波加熱時の詳細な温度履歴が記載されていない。高周波焼入れ時の温度履歴は歯車の部品形状によって大きく変わるため、特許文献3の開示内容では、あらゆる形状の歯車に対して必ずしも効果が発揮できるとは限らない。
さらに、特許文献3の高周波焼入れ方法では、特許文献1に記載されているように、高周波焼入れ部品の内部に大きな引張残留応力が生じるものと考えられ、破壊に対する信頼性に劣る。そのため、高信頼性が求められる歯車へ特許文献3の高周波焼入れ方法を適用することは困難と考えられる。
上記のように従来では、2回の高周波焼入れを行うことにより内部硬さをある範囲において確保する技術は提案されているものの、それに加えてあらゆる形状の歯車に対して安定的に靭性、面疲労強度を高めることができる技術は提案されていないのが実情である。
特開2007−119825号公報 特開2011−219846号公報 特開平7−118791号公報
本発明は上記の実情を鑑み、内部硬さ、靭性、面疲労強度に優れる高周波焼入れ歯車、及びその高周波焼入れ方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究した結果、以下の新たな知見を見出した。図1及び図2を用いて、当該知見について詳述する。なお、図1は、本発明に係る高周波加熱における鋼材表面の熱サイクルを説明するための模式図である。図2は、本発明に係る高周波加熱における第1熱処理、第2熱処理の予備加熱、及び第2熱処理の本加熱の各熱処理の終了段階で得られる深さ方向におけるビッカース硬さ分布の一例を示すグラフである。
(a)Cは鋼の強度と、高周波焼入れ後の表面硬さを確保するために添加する元素である。また、Vは鋼中でN、Cと結合してV炭窒化物を形成し、このV炭窒化物がオーステナイト結晶粒界をピンニングすることで粒成長を抑制することによって組織を微細化する働きがある。
つまりVとCを所定量含有する鋼材に対して、例えば図1に示す熱サイクルで2回の高周波焼入れ(第1熱処理及び第2熱処理)を行うことで、図2の第2熱処理の本加熱の硬さ分布に示すように、高周波焼入れ部品の表層部(マルテンサイト組織の焼入領域の深さ)の硬さをHV620以上且つ内部硬さをHV300以上とすることができる。さらにV炭窒化物のピンニング効果により、表層部の組織を、旧オーステナイト結晶粒が均一かつ微細なマルテンサイト組織とすることができる。その結果、靭性と面疲労強度を大きく向上させることができる。
靭性と面疲労強度は旧オーステナイト結晶粒が小さいほど向上し、その効果を得るためには、旧オーステナイト結晶粒の平均粒径を5μm以下にすることが有効である。
(b)均一で微細な旧オーステナイト結晶粒を得るために最も重要な点は、図1の第2熱処理の予備加熱において、所定の時間t秒でAc以下の所定の表面温度T℃まで加熱することにより、セメンタイトとV炭窒化物を十分に析出させることである。第2熱処理の予備加熱で析出したセメンタイトは、第2熱処理の本加熱時にオーステナイト化するときにオーステナイト核生成サイトとなる。また、第2熱処理の予備加熱で、微細に析出したV炭窒化物は、第2熱処理の本加熱時にピンニング効果を発揮してオーステナイト結晶粒の成長を抑制する。これらの効果が重なって、均一かつ微細な旧オーステナイト結晶粒が得られる。
(c)図1の第2熱処理の本加熱において、鋼材表面温度をAc以上の所定の温度T℃まで加熱することが、さらに均一で微細な旧オーステナイト結晶粒を得るために有効である。なお、本加熱の温度Tが所定の温度よりも高い場合は、第2熱処理の予備加熱で微細に析出したV炭窒化物が、本加熱時に溶体化してしまい、上記(b)に記載したピンニング効果が小さくなる傾向にある。
(d)図1の第1熱処理の加熱において、鋼材表面をAc以上の所定の温度T℃まで加熱することが、さらに均一で微細な旧オーステナイト結晶粒を得るために有効である。上記(b)に記載の第2熱処理の予備加熱においてV炭窒化物を微細析出させる効果を高めるためには、第2熱処理の予備加熱を行う前に固溶Vが多く存在することが好ましい。そのためには、第1熱処理で、高周波焼入れ前の素材に元々存在する比較的粗大なV炭窒化物を溶体化させることが有効である。具体的には、第1熱処理をT℃で行うことにより、素材に元々存在するV炭窒化物の一部を確実に溶体化させることができる。
本発明は、上記知見に基づき、さらに詳細に検討した結果得られたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)化学成分が、質量%で、
C :0.45%〜0.75%、
Si:0.80超〜2.0%、
Mn:0.30〜2.0%、
Cr:0.01〜0.5%、
V :0.05〜0.35%、
S :0.001〜0.05%、
Al:0.001〜0.2%
を含有し
P :0.050%未満
N :0.020%未満
に制限し、
残部がFe及び不可避不純物よりなる鋼からなり、マルテンサイト組織の生成領域である焼入領域が、最表面から0.3〜3.0mm深さの領域にあり、前記最表面から50μm深さの位置における表層硬さがHV620〜850の範囲内であり、前記焼入領域の深さの位置より内部の領域の硬さ分布において、最も前記焼入領域側の極小値がHV300〜550の範囲内であり、前記表面から50μm深さの位置における旧オーステナイト粒に関し、平均径が5μm以下でかつJIS G 0551で規定する混粒が存在しないことを特徴とする高周波焼入れ歯車。
(2)前記最表面から200μm深さまでの領域に生成されたV炭窒化物が、下記式[1]を満たすことを特徴とする上記(1)に記載の高周波焼入れ歯車。
0<r/(f2/3)≦5615 ・・・ [1]
ここで、r:前記最表面から200μm深さ部までの領域に生成されたV炭窒化物の平均粒径(nm)、f:前記最表面から200μm深さ部までの領域に生成されたV炭窒化物の面積率である。
(3)前記化学成分が、さらに、質量%で、Ti:0.2%未満(0%を含まない)、Nb:0.1%未満(0%を含まない)、Mo:0.15%未満(0%を含まない)、B:0.0005〜0.0050%未満、Ca:0.005%未満(0%を含まない)、Ni:1.0%未満(0%を含まない)、Cu:0.5%未満(0%を含まない)のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高周波焼入れ歯車。
(4)化学成分が、質量%で、
C:0.45%〜0.75%、
Si:0.80超〜2.0%、
Mn:0.30〜2.0%、
Cr:0.01〜0.5%、
V:0.05〜0.35%、
S:0.001〜0.05%、
Al:0.001〜0.2%
を含有し
P:0.050%未満
N:0.020%未満
に制限し、
残部がFe及び不可避不純物よりなる鋼材に形状加工を施し歯車とした後、最表面から0.3〜3.0mm深さまでの領域においてマルテンサイト組織の生成領域である焼入領域を得るにあたり、前記歯車に対し、高周波焼入れによる2回の熱処理を行う方法であって、表面温度がAc変態点以上1200℃未満の温度となるように、かつ前記焼入領域とすべき深さの2.5倍以上7.0倍以下の深さ位置における温度がAc変態点以上の温度になるように高周波誘導加熱により加熱した後、常温まで急冷して焼入れする第1熱処理工程と、下記[2]式、及び下記[3]式を満足し、かつ表面温度Tが550〜750℃になるまで、通電時間tを1〜64秒として高周波誘導加熱により加熱した後に、加熱電力を停止した状態で1.0秒以上放冷する予備加熱を行い、次いで、再度高周波誘導加熱により、前記最表面から前記焼入領域とすべき深さまでの領域をAc変態点以上の温度にする本加熱を行った後、常温まで急冷して焼入れする第2熱処理工程と、を順に具備することを特徴とする歯車の高周波焼入れ方法。
45≦(1.203×T+56.45×Logt−662.1)×[V]0.5≦202・・・[2]
16900≦19.31×T+906.2×Logt+4594≦20713・・・[3]
ここで、Tは前記予備加熱における表面温度(℃)、tは前記予備加熱における通電時間(秒)、[V]は鋼材中のVの含有量(質量%)である。
(5)前記本加熱における表面温度をT℃とするとき、Tが下記[4]式を満たすことを特徴とする上記(4)に記載の歯車の高周波焼入れ方法。
Ac<T<−273−10−9500/(Log[V][C]−6.72)・・・ [4]
ここで、[V]、[C]は、それぞれ鋼材中のV、Cの含有量(質量%)であり、AcはAc変態点である。
(6)前記第1熱処理工程の加熱における表面温度をT℃とするとき、Tが下記[5]式を満たすことを特徴とする上記(4)または(5)に記載の歯車の高周波焼入れ方法。
−273+10−9500/(Log[V][C]−6.72)<T<1200・・・[5]
ここで、[V]、[C]は、それぞれ鋼材中のV、Cの含有量(質量%)である。
(7)前記化学成分が、さらに、質量%で、Ti:0.2%未満(0%を含まない)、Nb:0.1%未満(0%を含まない)、Mo:0.15%未満(0%を含まない)、B:0.0005〜0.0050%未満、Ca:0.005%未満(0%含まない)、Ni:1.0%未満(0%を含まない)、Cu:0.5%未満(0%を含まない)のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(4)〜(6)のいずれか一項に記載の歯車の高周波焼入れ方法。
本発明によれば、内部硬さが高く、且つ靭性、面疲労強度に優れる高周波焼入れ歯車、及び歯車の高周波焼入れ方法を提供することができる。これにより浸炭を代替する高疲労強度の歯車を製造することができ、歯車の小型化、軽量化や、その製造時における生産性の向上や、COの排出低減に貢献することができる。
本発明の高周波加熱における鋼材表面の熱サイクルを説明するための模式図を示す。 本発明の高周波加熱における第1熱処理、第2熱処理の予備加熱、及び第2熱処理の本加熱の各熱処理の終了段階で得られる深さ方向におけるビッカース硬さ分布の一例を示すグラフである。 Vを0.3%含有する鋼材(0.3%V鋼)、Vを0.1%含有する鋼材(0.1%V鋼)、及びVを含有しない鋼材(0%V鋼)の3鋼種に対して行った、第1熱処理工程と第2熱処理工程の予備加熱における表面の熱サイクルを説明するための模式図を示す。 Vを0.3%含有する鋼材(0.3%V鋼)、Vを0.1%含有する鋼材(0.1%V鋼)、及びVを含有しない鋼材(0%V鋼)の予備加熱温度Tと、予備加熱後の表層硬さの関係を示すグラフである。 0.3%V鋼及び0.1%V鋼の0%V鋼に対する予備加熱後の表層硬さの増加量、及び0.3%V鋼の0%V鋼に対する炉焼入れ−炉焼戻し後の表層硬さの増加量を示すグラフである。これらの値は間接的に微細V炭窒化物の析出量を表す。 (a)は本発明の範囲で予備加熱を行った高周波加熱における表面の熱サイクルを説明するための模式図を示す。(b)は予備加熱が無く本発明の範囲外である高周波加熱における表面の熱サイクルを説明するための模式図を示す。 (a)は図6(a)の熱サイクルで熱処理した後の表層の旧オーステナイト結晶粒を示す顕微鏡写真である。(b)は図6(b)の熱サイクルで熱処理した後の表層の旧オーステナイト結晶粒を示す顕微鏡写真である。 本発明における「焼入れ領域の深さ」の測定箇所を説明するための、歯車の概略断面図を示す。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
[高周波焼入れ歯車]
本発明の一態様に係る高周波焼入れ歯車は、以下説明する所定の成分組成(化学成分)よりなる鋼からなり、マルテンサイト組織の生成領域である焼入領域が、最表面から0.3〜3.0mm深さの領域にあり、前記最表面から50μm深さの位置における表層硬さがHV620〜850の範囲内であり、前記焼入領域の深さの位置より内部の領域の硬さ分布において、最も前記焼入領域側の極小値がHV300〜550の範囲内であり、前記表面から50μm深さの位置における旧オーステナイト粒に関し、平均径が5μm以下でかつJIS G 0551で規定する混粒が存在しないことを特徴とする。
これらの限定の理由を以下に説明する。なお、本発明の高周波焼入れ歯車の例としては、自動車、建機・農機、発電用風車、その他の産業機械等に使用されているものが挙げられる。
[鋼の成分組成]
まず本実施形態に係る高周波焼入れ歯車の素材である鋼の成分組成を限定する理由について説明する。以下、「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.45%〜0.75%
Cは、鋼の強度と、高周波焼入れ後の表面硬さを確保するために重要な元素である。Cの添加量が0.45%未満であると、上記の効果が得られず、一方、Cの添加量が0.75%よりも多いと、鋼の靭性が劣化し、さらに素材硬さの上昇を通じて部品(歯車)の切削や鍛造等の加工を行うときの加工性も顕著に劣化する。このため、C量は、0.45%〜0.75%とする。上記の添加効果を安定的に得るためには、C量は、0.50%〜0.70%が好ましく、0.55%〜0.65%がさらに好ましい。
Si:0.80超〜2.0%
Siは焼戻し時に析出するε炭化物から比較的粗大なセメンタイトへの遷移を抑制し、低温焼戻しマルテンサイト鋼の焼戻し軟化抵抗を顕著に増加する。これによって鋼の面疲労強度が向上する。この効果を得るために、Siを0.80%を超えて添加する必要がある。一方、Siを2.0%を超えて添加すると、焼戻し軟化抵抗の増加の効果が飽和するばかりでなく、素材硬さの上昇を通じて部品の切削・鍛造等の加工を行うときの加工性が顕著に劣化する。また、Siはフェライトを安定化するため、2.0%を超えて添加すると高周波焼入れ加熱時にフェライトが残留し、均一なオーステナイトが得られなくなり場合がある。その結果として、焼入れ後に均一なマルテンサイト組織が得られなくなる場合がある。従って、Si量を0.80超〜2.0%の範囲にする必要がある。Si量の好適な範囲は1.1超〜1.50%である。
Mn:0.30〜2.0%
Mnは鋼の焼入性を高める効果があるので高周波焼入れ時にマルテンサイト組織を得るために有効である。この効果を得るために、Mnを0.30%以上添加する必要がある。一方、Mnを2.0%を超えて添加すると素材硬さの上昇を通じて部品の切削・鍛造等の加工を行うときの加工性が顕著に劣化する。従って、Mn量を0.30〜2.0%の範囲にする必要があり、好ましくは0.4〜1.0%である。
Cr:0.01〜0.5%
Crは、焼入れ性を向上すると共に、焼戻し軟化抵抗を付与する。Cr含有量が0.01%未満だと、これらの効果が得られない。一方、Cr含有量が0.5%を超えると、Cr炭化物が生成して鋼が脆化する。また、Crがセメンタイト中に濃化して安定化することによって、高周波焼入れ時の炭化物のオーステナイトへの溶け込みを阻害し、焼入領域の硬さムラの原因となる。よって、Cr量を0.01〜0.5%とする必要があり、好ましくは0.1〜0.3%である。
V:0.05〜0.35%
Vは後述のように本発明で最も重要な元素である。Vは鋼中でN、Cと結合してV炭窒化物を形成し、V炭窒化物がオーステナイト結晶粒界をピンニングすることで粒成長を抑制することによって組織を微細化する働きがある。さらにV炭窒化物による析出強化により内部硬さを増加する効果がある。この効果を得るために、Vを0.05%以上添加する必要がある。一方、Vを0.35%以上添加すると添加コストが過大となるとともに、素材硬さの上昇を通じて部品の切削・鍛造等の加工を行うときの加工性が顕著に劣化する。従って、Vの添加量を0.05〜0.35%とする。V量の下限は0.16%以上が好ましく、0.27%以上がさらに好ましい。V量の上限は0.30%以下が好ましい。
S:0.001〜0.05%
SはMnと結合してMnSを形成し、添加量を増加するほど被削性を向上させる効果を持つ。この効果を得るために、Sを0.001%以上添加する必要がある。一方、0.05%を超えて添加するとMnSが疲労亀裂の伝播経路となることによって高周波焼入れ歯車の疲労強度や靭性が低下する。従って、S量を0.001〜0.05%の範囲にする必要がある。S量の好適な範囲は0.010〜0.030%である。
Al:0.001〜0.2%
Alは鋼の脱酸に有効な元素である。しかし、Alを0.2%を超えて添加するとその効果は飽和し、むしろ成分コストの増大を招く。したがって、Alの添加量は0.2%以下とする。なお、上記のAlの効果はその量が0.001%未満であると発現しない。Al量の好適な範囲は0.01〜0.15%である。
P:0.050%未満
Pは、不可避的不純物であり、オーステナイト粒界に偏析して、旧オーステナイト粒界を脆化させることによって粒界割れの原因となるので、できるだけ低減することが望ましい。このため、P量を0.050%未満の範囲に制限する必要がある。本発明の課題に関して特にP量の下限は無いが、P量を0.001%以下に制限するには過剰なコストがかかる。したがって、P量の好適な範囲は0.001〜0.02%である。
N:0.020%未満
Nは、鋼中でAlやVなどと結合して炭窒化物を形成し、オーステナイト結晶粒界をピンニングすることによって粒成長を抑制し、組織の粗大化を防止する働きがある。この効果を確実に得るには、0.001%以上の含有が好ましい。一方、過剰に添加すると1000℃以上の高温域における延性が低下し、連続鋳造、圧延時の歩留まり低下の原因になる。このため、N量を0.020%未満に制限する必要がある。N量の好適な範囲は0.003〜0.010%であり、さらに好ましくは0.004〜0.006%である。
以上の成分組成に加え、以下に示す元素のうちから選んだ1種又は2種以上を含有させると、さらなる疲労強度、靭性の向上に効果的である。
Ti:0.2%未満(0%を含まない)
Tiは必要に応じて添加可能な任意成分である。Tiは鋼中でN、Cと結合して炭窒化物を形成し、炭窒化物がオーステナイト結晶粒界をピンニングすることで粒成長を抑制することによって組織の粗大化を防止する働きがある。この効果を得るために、Tiを0.2%未満添加してもよい。一方、Tiを0.2%以上添加すると素材硬さの上昇を通じて部品の切削・鍛造等の加工を行うときの加工性が顕著に劣化する。さらに、炭窒化物の生成量が過大となり、高周波焼入れ時に焼入領域の硬さムラの原因となる。Ti量の好適な範囲は0.005〜0.05%であり、さらに好ましくは0.01〜0.03%である。
Nb:0.1%未満(0%を含まない)
Nbは必要に応じて添加可能な任意成分である。Nbは鋼中でN、Cと結合して炭窒化物を形成し、炭窒化物がオーステナイト結晶粒界をピンニングすることで粒成長を抑制することによって組織の粗大化を防止する働きがある。この効果を得るために、Nbを0.1%未満添加してもよい。一方、Nbを0.1%以上添加すると素材硬さの上昇を通じて部品の切削・鍛造等の加工を行うときの加工性が顕著に劣化する。さらに、炭窒化物の生成量が過大となり、高周波焼入れ時に焼入領域の硬さムラの原因となる。またNbは過剰に添加すると1000℃以上の高温域における延性が低下し、連続鋳造、圧延時の歩留まり低下の原因になる。Nb量の好適な範囲は0.005〜0.03%である。
B:0.0005〜0.0050%未満
Bは必要に応じて添加可能な任意成分である。Bはオーステナイト中に固溶している状態において、微量で鋼の焼入性を大きく高める効果があるため、高周波焼入れ時にマルテンサイト組織を得るために有効な元素である。この効果を得るために、本発明では、0.0005%以上のBを添加してもよい。一方、0.0050%以上添加しても効果が飽和する。従ってBを添加する場合、B量を0.0005〜0.0050%未満の範囲にする。B量の好適な範囲は0.0010〜0.0030%であり、さらに好ましくは0.0015〜0.0025%である。なお、Bを添加する場合には、固溶Bを安定的に確保するため、Nを固定するTiやAlを同時に適量添加することが好ましい。
Mo:0.15%未満(0%を含まない)
Moは必要に応じて添加可能な任意成分である。Moは鋼の焼入性を高める効果があるので、高周波焼入れ時にマルテンサイト組織を得るために有効な元素である。この効果を得るために、Moを0.15%未満添加してもよい。一方、0.15%以上添加すると添加コストが過大となるとともに、素材硬さの上昇を通じて部品の切削・鍛造等の加工を行うときの加工性が顕著に劣化するため、工業生産上望ましくない。従ってMoを添加する場合、Mo量を0.15%未満の範囲にする。Mo量の好適な範囲は0.01〜0.1%である。また、特に切削・鍛造時の加工性を少しでも劣化させずに、できるだけ焼入れ性を高めたいという場合は、Moを微量に添加することが好ましい。すなわち、添加量を0.05%未満の範囲にすれば、素材硬さの上昇による加工性の低下は実質上無視できるほど小さなものとなり、なおかつ明確な焼入れ性向上効果も得られる。この理由は、Moは少量の添加でも比較的大きな焼入れ性向上効果を示す元素であるからである。特にBを複合添加すれば、微量の添加でも焼入れ性向上効果に対して大きな複合添加効果が得られる。
Ca:0.005%未満(0%を含まない)
Caは必要に応じて添加可能な任意成分である。Caは、MnSの形態制御により疲労強度や靭性を向上する効果がある。さらに切削時の切削工具表面における保護被膜形成を通じて鋼の被削性を向上する働きがある。この効果を得るために、0.005%未満添加してもよい。一方、0.005%以上添加すると、粗大な酸化物や硫化物を形成して部品の疲労強度に悪影響を与える場合がある。従って、Caを添加する場合、添加量は0.005%未満の範囲にする。Ca量の好適な範囲は0.0005〜0.0020%である。
Ni:1.0%未満(0%を含まない)
Niは必要に応じて添加可能な任意成分である。Niは鋼の焼入性を高める効果があるので高周波焼入れ時にマルテンサイト組織を得るために有効な元素である。この効果を得るために、Niを1.0%未満添加してもよい。一方、Niを1.0%以上添加すると添加コストが課題となり、工業生産上望ましくない。従って、Niを添加する場合は添加量を1.0%未満の範囲にする。Niの好適な範囲は0.02〜0.8%であり、さらに好ましくは0.1〜0.4%である。
Cu:0.5%未満(0%を含まない)
Cuは必要に応じて添加可能な任意成分である。Cuは鋼の焼入性を高める効果があるので、高周波焼入れ時にマルテンサイト組織を得るために有効である。この効果を得るために、Cuを0.5%未満添加してもよい。一方、Cuを0.5%以上添加すると1000℃以上の高温域における延性が低下し、連続鋳造、圧延時の歩留まり低下の原因になる。従って、Cuを添加する場合は添加量を0.5%未満の範囲にする。Cuの好適な範囲は0.02〜0.4%であり、さらに好ましくは0.1〜0.3%である。なお、高温域の延性を改善するために、Cuを添加する場合にはCu添加量の1/2以上の量のNiを同時に添加することが望ましい。
本発明では上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、Mg、Zr、Rem、Te、Bi、Pb、Sn、Zn等を添加することができる。なお、Remは希土類金属元素を示し、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される1種以上である。
本実施形態に係る高周波焼入れ歯車用の素材の鋼の成分組成は以上の通りであり、残部はFe及び不可避的不純物である。なお、原料、資材、製造設備等の状況によっては、不可避的不純物(例えばAs、Co等)が鋼中に混入するが、本発明の優れた特性を阻害しない範囲であれば許容される。
次に、本実施形態に係る高周波焼入れ歯車の金属組織、硬さ等について説明する。
一般的に歯車には、疲労特性や耐摩耗性を与えるために、鋼素材を歯車形状に加工した後、表面硬化処理が施される。
本実施形態に係る高周波焼入れ歯車では、高周波焼入れ処理がこの表面硬化処理に相当する。この表面硬化処理によって、表面硬化処理として浸炭を採用して得られた部品(浸炭部品)に匹敵する疲労特性や耐摩耗性を確保するためには、表層の硬さ(表層硬さ)を浸炭部品の程度に高める必要がある。なお、本実施形態では、表層の硬さの代表値として最表面から50μmの深さの位置における硬さを採用した。この位置の硬さがHV620以上であれば、下記に示す旧オーステナイト結晶粒の微細化効果と相まって、浸炭部品に匹敵する疲労特性や耐摩耗性を得ることができる。本発明に係る上記鋼組成及び下記製造方法で得られる歯車の高周波焼入れ部(焼入領域)の硬さの上限値はHV850であり、好ましい上限はHV800である。
なお、ここでいう「表層硬さ」とは、後述する第2熱処理後、もしくは低温焼戻し処理後の硬さを指す。
また、高周波焼入れによって得られるマルテンサイト組織の生成領域(焼入領域)は、歯車最表面から0.3〜3.0mm深さの領域にある。つまり、高周波焼入れによって生成するマルテンサイトによる硬化領域は、その深さを最表層から0.3mm〜3.0mmとすることができる。なお、焼入領域の深さは後述する第2熱処理の本加熱の条件によって制御できる。
本実施形態においては、焼入領域の深さが浅いほど内部から破壊が起こる可能性が高まるため、0.3mm以上とする必要がある。また、焼入領域の深さが深くなりすぎると表面の圧縮残留応力が低下する傾向があるため、3mm以下とし、2mm以下が好ましい。
なお、ここでいう「焼入領域の深さ」は、歯車の歯元で硬さを測定する、つまりマルテンサイトによる硬化領域を測定することにより、代表的に表わすものとする。図8に、本発明における「焼入れ領域の深さ」の測定箇所を説明するための、歯車の概略断面図を示す。図8に示すように、ここでいう「歯元」とは、いわゆる設計上の危険断面となり、き裂発生部(疲労破損部)となりうる部分のことであり、歯車部品においては、図8に矢印で示した部分に相当する。本発明において硬さ測定は、当該矢印で示した部分において、接線に対して垂直方向に測定することとする。なお、本発明においては、硬さ測定のほか、表層硬さ、極小値(内部硬さ)などのその他の測定に関しても同様とする。
また、焼入領域の深さの位置より内部の領域の硬さ分布において、最も焼入領域側の極小値(内部硬さ)はHV300〜550の範囲内とする。「極小値(内部硬さ)」は、後述する第1熱処理と第2熱処理、及び上記鋼材成分により調整することができる。
本実施形態でいう「内部硬さ」とは、第1熱処理で焼入れされており、第2熱処理の本加熱で焼入れされていない領域の硬さのことを言う。具体的には、図2に示すように、本発明のように第1熱処理よりも浅い焼入れ深さの第2熱処理を行うと、第2熱処理の焼入領域の深さの位置より内部の最寄りに、内部硬さの極小値が生じるため、この極小値を内部硬さとする。より具体的には、図2に示すように、焼入領域の深さの位置から1〜3mm程度内部の位置までの間の極小硬さを指す。内部硬さが低いと、内部起点の疲労強度や、静的曲げ強度、及び歯車の低サイクル曲げ疲労強度を低下させるため、内部硬さはHV300以上とする必要がある。一方、内部硬さが高すぎると靭性が低下する。よって内部硬さはHV300〜550、好ましくはHV300〜500、さらに好ましくはHV300〜450である。
また、最表面から50μm深さの位置における旧オーステナイト粒に関し、平均径を5μm以下とする。
靭性と面疲労強度は旧オーステナイト結晶粒が小さいほど向上し、平均で5μm以下になると、浸炭部品に匹敵する疲労特性や靭性を得ることができる。表層の平均旧オーステナイト粒径は好ましくは4μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。本実施形態においては、表層の結晶粒径の代表値として、表面硬さと同様に最表面から50μmの深さ付近の結晶粒径を選んだ。なお、結晶粒径はJIS G 0551に記載の切断法や、結晶粒度標準図と比較して粒度番号を求め、粒度番号から平均結晶粒径に換算する方法などにより求めることができる。
このように微細な結晶粒の組織を得るためには、高周波焼入れ歯車の最表面から200μmの深さまでの領域に、V炭窒化物が下記(1)式を満たすように存在することが好ましい。
0<r/(f2/3)≦5615 ・・・ (1)
ここで、r:歯車最表面から200μmの深さまでの領域に生成されたV炭窒化物の平均粒径(nm)、f:歯車最表面から200μmの深さまでの領域に生成されたV炭窒化物の面積分率とする。
より好ましくはr/(f2/3)≦4492、さらに好ましくはr/(f2/3)≦2807である。
微細なV炭窒化物が存在すると、表層の平均旧オーステナイト粒を均一で微細にすることができる。なお、上記(1)式を満たすV炭窒化物の存在領域を、最表面から200μmの深さまでの位置とする理由は、旧オーステナイト粒の測定位置と同じ50μm深さ部とした場合は対象領域が狭すぎて、場合によっては抽出レプリカ法でサンプルを作製することが困難になる可能性があるためである。表面から50μm深さ部と200μm深さ部とでV炭窒化物の析出状態の違いは小さいため、このことは問題にならない。
またさらに微細かつ均一な旧オーステナイト粒の中に、混粒を含む場合(図7(b)参照)は靭性や疲労強度を低下させるため、混粒を含まない必要がある。ここでいう「混粒」とは、JIS G 0551で規定され、1視野内において最大頻度を持つ粒度番号の粒から3以上異なった粒度番号の粒が存在する場合、これらの粒の面積が20%以上であることを意味する。
[歯車の高周波焼入れ方法]
次に、本発明に係る上記歯車を得るための高周波焼入れ方法について説明する。
本発明では成分組成を上記の範囲に限定することに加えて、高周波焼入れ条件を限定することにより、高周波焼入れ歯車の表層硬さと内部硬さを高めると同時に、焼入領域の組織が均一で微細なオーステナイト結晶粒を持つマルテンサイト組織とすることができる。以下、本実施形態に係る高周波焼入れ方法(高周波焼入れの条件)について説明する。
本実施形態に係る高周波焼入れ方法は、上記鋼材成分を有する鋼を高周波焼入れ用素材とし、歯車形状に成形した後、定められた深さのマルテンサイト組織の焼入領域を得るにあたり、表面温度がAc変態点以上の温度となるように、かつ焼入領域とすべき深さの2.5倍以上7.0倍以下の深さ位置における温度がAc変態点以上の温度となるように高周波誘導加熱により加熱した後、焼入れする第1熱処理工程と、表面をAc変態点を超えない温度まで高周波誘導加熱により加熱した後に加熱電力を停止した状態で1.0秒以上放冷する予備加熱を行い、続けて予備加熱より大きな電力で再び高周波誘導加熱により加熱して焼入領域とすべき深さまでAc変態点以上の所定温度にする本加熱を行った後、焼入れする第2熱処理工程と、を順に備える鋼の高周波焼入れである。そして、各工程における高周波焼入れの加熱条件を所定の範囲に設定することにより、高周波焼入れ歯車の表層硬さと内部硬さを高めると同時に、析出物制御をすることで、高周波焼入れ歯車の焼入領域に均一で微細な旧オーステナイト結晶粒が得られ、その結果、優れた靭性と面疲労強度を有する高周波焼入れ歯車が得られることが特徴である。
なお、本実施形態では、上記の高周波焼入れ方法によって歯車を製造し、必要に応じて更に低温焼戻し処理(例えば130〜200℃で30〜120分程度の加熱処理)を施してもよい。
[第1熱処理工程]
図2に、第1熱処理工程、第2熱処理工程での予備加熱及び本加熱の各熱処理の終了段階で得られる硬さ分布の一例を示す。
第1熱処理工程は、歯車の内部硬さを高くするために、歯車の焼入領域とすべき深さよりも深く焼入れることが目的である。
さらに詳細は後述するが、第2熱処理工程の予備加熱時にV炭窒化物を微細析出させる効果を得るために、第1熱処理工程で高周波焼入れ前の素材に元々存在する比較的粗大なV炭窒化物を少なくとも一部を溶体化させることが有効である。
ここで焼入領域の深さについて説明する。
図2のグラフを見ると第1熱処理工程の硬さ分布は、表面から約4mmまでは表面と同じHV700〜800程度に硬化されており、これより深くなるに従って硬さが徐々に低下している。この表面と同じ硬さになっている領域はAc変態点以上に高周波加熱されて、領域全部がオーステナイト変態した組織から焼入れされてマルテンサイト組織になっている部分である。
一方この領域に隣接し、深さ方向に向かって硬さが順次低下して素材硬度に至る範囲はAc変態点以上でAc変態点未満の範囲に高周波加熱され、オーステナイトとフェライトとが混合した組織から焼入れされた結果、マルテンサイトとフェライトの混合組織になっている部分である。この範囲においては加熱温度が低くなるに従ってオーステナイトの比率が減少するので、それに応じて焼入れ後のマルテンサイトの比率も低下し、硬さも順次低下する。
また図2のグラフにおいて第2熱処理工程の本加熱を行った後の硬さ分布では、表面から約0.6mmの深さまでの領域はHV700〜800の硬さに達しているが、これは本加熱の焼入れにおいてAc変態点以上に高周波加熱されて領域全部がオーステナイト変態した組織から焼入れされてマルテンサイト組織になっている部分である。一方、この領域に隣接して深さ方向に向かって硬さが低下する部分が、本加熱においてAc変態点以上でAc変態点未満の範囲に高周波加熱された部分である。本発明における「焼入領域の深さ」というのは、図2の第2熱処理工程の本加熱の硬さ分布でいうと約0.6mmに相当し、第2熱処理工程の本加熱によってマルテンサイト組織になった領域の深さのことをいう。
本発明では、歯車最表面から0.3〜3.0mm深さまでの領域においてマルテンサイトサイト組織の生成領域である焼入領域を得るべく、各熱処理工程の加熱温度等の条件を規定し制御する。
第1熱処理工程では、表面温度がAc変態点以上1200℃未満の温度となるように、かつ焼入領域とすべき深さ以上の深さ位置においてもAc変態点以上の温度となるように高周波誘導加熱により加熱した後、例えば水噴射などにより常温まで急冷して焼入れする。この処理により、歯車表面から内部にかけてマルテンサイト組織とすることができ、内部硬さを高めることができる。
第1熱処理工程は、焼入領域とすべき深さの2.5倍以上7.0倍以下の深さ位置においてAc変態点以上の温度になるように行う。Ac変態点以上の温度とする深さ位置が焼入領域とすべき深さの7.0倍よりも大きいと第1熱処理工程の後に行われる第2熱処理工程の予備加熱において、焼戻しを行うことが困難になり、内部の靭性を低下させる恐れがある。一方、Ac変態点以上の温度とする深さ位置が焼入領域とすべき深さの2.5倍よりも小さいと、そもそも内部硬さを高めた効果が小さくなる。
なお、Ac変態点、Ac変態点は鋼材の成分組成によって変化し、例えば、「幸田成康監訳、レスリー鉄鋼材料学、丸善株式会社、1985、P273」に示されるように、以下の通り表わされる。
Ac(℃)=723−10.7×[Mn]−16.9×[Ni]+29.1×[Si]+16.9×[Cr]+290×[As]+6.38×[W]
Ac(℃)=910−203×[C]0.5−15.2×[Ni]+44.7×[Si]+104×[V]+31.5×[Mo]+13.1×[W]
ここで、[Mn]、[Ni]、[Si]、[Cr]、[As]、[W]、[C]、[V]、[Mo]はそれぞれ鋼材中のMn、Ni,Si、Cr、As、W、C、V、Moの含有量(質量%)を示す。
第1熱処理工程の加熱時の表面温度はAc変態点以上1200℃未満とし、上限は1100℃未満が好ましい。下限は950℃以上が好ましく、1000℃より高いことがさらに好ましい。950℃未満であるとオーステナイト化が不十分となり、焼ムラを含んだ組織となる可能性がある。焼ムラを含んだ組織とは素材に元々存在したセメンタイトが焼入れ後も未溶解であったり、鋼素材で元々フェライトであった部分への炭素の拡散が不十分となり、低炭素マルテンサイトになったりする組織のことをいう。一方、第1熱処理工程において表面温度が1200℃以上になると結晶粒が粗大化してしまう場合がある。このように、第1熱処理工程で得られたマルテンサイト組織が粗大になりすぎると、第2熱処理工程の本加熱時のオーステナイト核生成サイトが減少し、微細なオーステナイト粒が得られなくなる可能性があるため好ましくない。
また、第1熱処理工程の加熱時間は焼ムラを抑制すると同時に所望の焼入れ深さを得るために5秒またはそれ以上が好ましいが、60秒を超えると変形が大きくなるので好ましくない。
さらに、後述の第2熱処理工程の予備加熱で微細なV炭窒化物を析出させるために、第1熱処理工程では高周波焼入れ前の素材に元々存在する比較的粗大なV炭窒化物の少なくとも一部を溶体化させることが望ましい。そのため、第1熱処理工程の加熱時の表面温度を(A+10)℃以上とすることが好ましく、さらに好ましくは(A+50)℃以上である。温度Aは後述するようにV炭化物の平衡での溶体化温度を示し、A=−273−9500/(Log[V][C]−6.72)で表わされる。第1熱処理工程において歯車表面をこの温度Aよりも高く加熱すると、V炭窒化物を少なくとも一部を確実に溶体化させることができる。つまり、第1熱処理工程の加熱時の表面温度をT℃とするとき、Tが下記(5)式を満たすことが好ましい。
−273+10−9500/(Log[V][C]−6.72)<T<1200・・・(5)
ここで、[V]、[C]は、それぞれ鋼材中のV、Cの含有量(質量%)である。
さらに、上記鋼材成分を有する鋼を歯車形状に成形する際の加工性を向上させたい場合は、歯車素材として、例えば熱間鍛造後に焼ならし、焼きなまし、恒温焼ならし、鍛造焼ならし、球状化焼きなまし、及びこれらの処理の組み合わせの熱処理を施し、フェライトや球状化炭化物を含む組織にして軟質化されたものを使用しても良い。
通常はフェライトや球状化炭化物を含む組織を素材に使用すると、高周波焼入れ後の組織に焼ムラが含まれる場合があるが、本発明においては、第1熱処理工程は比較的高温、長時間で実施するため、焼ムラのない均質なマルテンサイト組織を得ることができる。特に焼ムラを低減する必要がある場合は、第1熱処理工程の加熱時の表面温度を1050℃超、加熱時間を10秒超とするのが良い。なお、焼ならし、焼きなまし、恒温焼ならし、鍛造焼ならし、球状化焼きなまし、及びこれらの処理の組み合わせの熱処理を施しても、本発明で重要な微細なV炭窒化物を析出に対して影響はほとんどないため、全く問題は無い。
第1熱処理工程の高周波熱処理に使用される周波数は特に限定されるものではないが、硬化層深さを深くする観点から、3kHz〜30kHzが好ましい。各種の機械特性評価試験片などの比較的小さなものであれば、200kHzでも問題ない。このような高周波加熱後に常温まで急冷して焼入れをする。
[第2熱処理工程における予備加熱]
第2熱処理工程における予備加熱は本発明で最も重要な工程である。この予備加熱工程には2つの意味がある。
1つは図2に示すように第1熱処理工程で焼入れた部分を焼戻して軟化させ、靭性を付与する効果を得ることである。2つ目はさらに重要で、表層付近においてV炭窒化物とセメンタイトを析出させることである。つまり、V炭窒化物とセメンタイトを析出させることにより、第2熱処理工程の本加熱時の表層のオーステナイト結晶粒を微細化させることである。
鋼中に析出物を多量で微細に分散させるとピンニング効果により結晶粒を微細化できることが知られている。そこで本発明者らは第2熱処理工程の予備加熱で表層付近にV炭窒化物を多量且つ微細に析出させる方法を以下の実験により詳細に検討した。
まず0.5%C−0.9%Si鋼をベースにして、Vを0.3%含有する鋼材(0.3%V鋼)、Vを0.1%含有する鋼材(0.1%V鋼)、及びVを含有しない鋼材(0%V鋼)の3鋼種を溶製し、45φに圧延した後、1200℃に加熱して放冷する熱処理を行い、機械加工により16φの丸棒試験片を作製した。そして得られた各丸棒試験片に対し、図3に示す熱処理パターンにて、周波数200kHzで第1熱処理工程と第2熱処理工程の予備加熱を行った。予備加熱は図3に示すように、温度を変化させて行った。その後、丸棒試験片の高周波加熱した部分の中央の断面を樹脂埋めし、鏡面研磨後、表層から50μm位置のビッカース硬さ測定を行い、表層硬さを求めた。
図4は予備加熱温度(表面温度)Tと表層硬さの関係を示す。予備加熱温度Tの増加とともに硬さが低下していくが、Tが600℃と700℃の場合において、0.1%V鋼と0.3%V鋼は0%Vに対して硬さが増加している。これはVが微細に析出することで析出強化を示すためであり、焼戻し二次硬化あるいは単に二次硬化といわれる現象と同じものである。
図5は0.3%V鋼、及び0.1%V鋼の表層硬さから0%V鋼の表層硬さを差し引いたものである。この値は間接的に微細V炭窒化物の析出量を表す。図5から、予備加熱温度Tが高く、V量が多いほど表層硬さの増加代が大きく、微細V炭窒化物の析出量が多くなることを知見した。
また上記実験の比較として、0.3%V鋼を用いて同様に作製した丸棒試験片に対し、高周波加熱でなく炉を用いて焼入れ、焼戻しを行い、同様の測定を行った結果を図5中に示す。炉加熱の具体的条件は1050℃で5分加熱後に水焼入れし、引き続いて図3中に示す各温度Tで90分焼戻しを行った後、放冷した。
0.3%V鋼(比較)に対し炉で焼入れ焼戻しを行った場合、図5に示すとおり、硬さのピーク値は600℃付近であり、それ以上温度が高くなると硬さは低下する。これは温度が高くなるとV炭窒化物が粗大化するために析出強化が小さくなるためであり、一般に過時効といわれる現象である。一方、本発明の第1熱処理工程と第2熱処理工程の予備加熱を行った場合、言い換えると、高周波加熱で焼入れ焼戻しを行った場合、600℃を超えても硬さ増加量が大きくなる。これはおそらく高周波加熱は急速加熱処理であるため、温度が600℃を超えてもV炭窒化物が粗大にならないためと考えられる。これは本発明で得られた新しい知見である。つまり、これまでの知見ではV炭窒化物を多量且つ微細に析出させるには600℃付近の加熱が有効と思われたが、本発明の方法においては、さらに予備加熱温度Tを高めることが有効であることがわかった。
上記は予備加熱温度Tの影響を説明したが、V炭窒化物の析出量は当然ながら温度だけでなく、加熱時間の影響を受ける。そこで、最適な予備加熱温度T、加熱時間を設定するにあたり、温度と時間を等価に扱うことができる焼戻しパラメータを導入した。連続加熱時の焼戻しパラメータは、「土山聡宏、焼戻しパラメータの物理的意味の解釈と連続加熱・冷却熱処理過程への応用、熱処理、42巻、3号、P163」の論文に記載の方法により求めることができる。これに基づき、本発明者らは、図1に示すように予備加熱温度をT、加熱時間(通電時間)をtとし、予備加熱条件の範囲であるTを550〜750℃、tを1〜64秒として、上記論文に記載の方法で焼戻しパラメータを算出した。簡易に使用するため、重回帰分析を行うことで、各T、tに対する焼戻しパラメータPを以下の式で表した。
P=19.31×T+906.2×Logt+4594
以上の実験結果、検討結果より、表層付近への微細V炭窒化物の析出量は素材中のV量とPによって決まることがわかる。
そこでV量を変化させた鋼材を用いて、Pを上記のT、tの範囲で変化させた条件で上記同様の実験を行うことで、図5の縦軸の値に相当する硬さの増加量ΔHVを求め、ΔHVを表わす以下の実験式(a)を得た。
ΔHV=(0.06230×P−948.3)×[V]0.5 ・・・(a)
さらに、この式(a)に「P=19.31×T+906.2×Logt+4594」を代入すると以下の式(b)が得られる。
ΔHV=(1.203×T+56.45×Logt−662.1)×[V]0.5 ・・・(b)
なお、[V]は高周波焼入れ用素材中のVの含有量(質量%)を示す。
第2熱処理工程の本加熱ならびに焼入れ後の旧オーステナイト結晶粒の微細化に有効に作用するためには、ΔHVが45以上必要であり、好ましくは65以上、さらに好ましくは85以上、さらに好ましくは135以上である。さらに、このときにPの範囲は16900以上であることが好ましく、さらに好ましくは17900以上、さらに好ましくは18700以上である。
以上をまとめると、本発明の第2熱処理工程の予備加熱の条件は以下のように規定される。
45≦(1.203×T+56.45×Logt−662.1)×[V]0.5≦202 ・・・(2)
なおこの式(2)の上限値は、[V]に本発明のV量の上限である0.35%を、Tを上限の750℃、tを上限の64秒として計算すると202となるため、202とした。
なお、本発明でいうV炭窒化物とはV(C,N)で表され、成分の構成比がNよりもCのほうが大きいものをいう。一般にVの炭化物と窒化物では、炭化物のほうが微細であることが知られており、ピンニングに有利である。また、鋼中にTiやNbを含む場合は、V炭窒化物は(V,Ti)(C,N)、(V,Nb)(C,N)、(V,Ti,Nb)(C,N)となる場合があるが、成分の構成比がTi、NbよりもVのほうが多いものは、本発明に記載するV炭窒化物に入るものとする。V炭窒化物の成分組成は、例えば透過電子顕微鏡により観察し、EDS分析を行うことにより調べることができる。
セメンタイトの析出も基本的にはV炭窒化物の析出と同じ傾向であり、Pが14000以上であればセメンタイトが十分に析出する。セメンタイトが析出する結果、セメンタイトが第2熱処理工程の本加熱のオーステナイト化時に核生成サイトを増やす働きをし、結晶粒を微細化することができる。Pが14000よりも小さくなると、核生成サイトが少なくなるため、結晶粒を微細化する効果が小さくなり、混粒が生じる。よってPの範囲はセメンタイトとV炭窒化物を析出させるために16900以上と規定する。
16900≦19.31×T+906.2×Logt+4594≦20713
・・・(3)
この式(3)の上限値は、Tを上限の750℃、tを上限の64秒として計算すると20713となるため、20713とした。
第2熱処理工程の予備加熱の影響を調べるために、0.3%V鋼に対して図6(a)、図6(b)に示す条件で熱処理を行った後に、旧オーステナイト結晶粒を観察した。図6(a)が本発明の範囲で予備加熱を行ったものであり、図6(b)は予備加熱が無く本発明の範囲外である。図7(a)、図7(b)に図6(a)及び図6(b)それぞれの条件で熱処理した後の旧オーステナイト結晶粒を示す。
本発明の範囲である図7(a)では均一微細な結晶粒が得られ、その平均粒径は2.5μmであった。一方、本発明の範囲外である図7(b)では粗大な粒が見られる著しい混粒組織であり、JIS G 0551で規定される混粒に該当するものであった。この結果から、第2熱処理工程の予備加熱の有効性が確認できる。
図6(b)において、第1熱処理工程の加熱温度や第2熱処理工程の加熱温度を変化させた場合でも、本発明に係る第2熱処理工程の予備加熱が無い場合は混粒を含む組織となる。例えば図6(b)の第1熱処理工程の温度を950℃にして実験を行ったが、図7(b)とほぼ同様な粗大な粒を含んだ組織となった。つまり、単純な2回焼入れでは均一な粒とはならず、混粒の無い均一な粒を得るためには、本発明に係る第2熱処理工程の予備加熱が重要である。
本発明に係る第2熱処理工程の予備加熱は、上記のV炭窒化物とセメンタイトを析出させることの他に、図2に示すように第1熱処理工程で焼入れた部分を焼戻しする役割がある。図2の第2熱処理工程の予備加熱の硬さ分布において、表面側ほど硬さが低下しているのは、予備加熱は高周波焼戻しであるため、表層の方が温度が高くなるからである。
第2熱処理工程は、表面温度がAc変態点を超えないように高周波誘導加熱し、第1熱処理工程で焼入れされた部分を焼戻して軟化させる予備加熱に続けて、焼入領域とすべき深さまでAc変態点以上の温度に高周波誘導加熱により加熱する本加熱の後、水噴射などにより常温まで急冷して焼入れする。
このように第2熱処理工程では、焼戻しのための「予備加熱」と焼入れのための「本加熱」を1回の熱サイクルで行うが、焼戻しのための予備加熱は焼戻しすべき部分がAc変態点を超えないようにする必要がある。つまり予備加熱温度T<Acである。そしてこの焼戻しすべき部分は歯車の内部まで位置するので、高周波加熱による表面の熱が十分に内部に移行し、先に焼入れされた部分を焼戻しするような条件で行う必要があるが、上記のTとtであれば問題なく行うことができる。
予備加熱では図1や図6(a)に記載のように、所定の予備加熱温度Tに達した後に加熱電力を止めた状態で一定時間放冷し、熱伝導で内部が昇温するようにする。内部まで昇温させるためには加熱電力を止め放冷させる時間を1.0秒以上にする必要がある。なお、加熱電力を止める時間(放冷時間)の上限は規定しないが、加熱電力停止中に低下した表面温度が所定の予備加熱温度Tから400℃以上低くならないことが好ましく、300℃以上低くならないことがさらに好ましい。
また、予備加熱は比較的小さな電力で高周波誘導加熱して昇温に時間をかけることにより、歯車内部で熱伝導が行われる時間が長くなって表面と内部との温度差を小さくできる。したがって、予備加熱の通電時間は2.0秒以上であることが好ましい。また、予備加熱の時間を細かく調整したい場合は、短時間の加熱と短時間の放冷を繰り返して、予備加熱を行っても構わない。
第2熱処理工程の予備加熱に使用される周波数は特に限定されるものではなく、例えば、3kHz〜200kHzで行ってもよい。
[第2熱処理工程における本加熱]
第2熱処理工程の本加熱は、図2に示すように、焼入領域とすべき深さまで焼入れて、表面を硬化することが目的である。図1の例に示すように、本加熱の昇温時間は0.1〜5秒と非常に短くなっているが、予備加熱より大きな電力で高周波誘導加熱することにより、短時間で焼入領域とすべき深さまでAc変態点以上の温度にできる。
本加熱の加熱時間は所望の焼入領域とすべき深さを得るために調整され、加熱時に均質なオーステナイトを得るために0.1秒以上が好ましく、0.3秒以上がさらに好ましい。また、変形を小さくする観点から10秒以下が好ましく、5秒以下がさらに好ましく、1秒以下がより好ましい。
本加熱の加熱温度を制限することにより、微細な結晶粒を得やすくすることができる。上記のとおり、第2熱処理工程の本加熱の時間は短時間ではあるものの、本加熱の加熱温度がV炭窒化物の溶体化温度よりも高い場合は、V炭窒化物の溶体化が進み、ピンニング効果は小さくなる傾向になる。
V炭化物の平衡状態での溶体化温度は「成田貴一、鉄鋼中のIV−a属元素(Ti,Zr),V−a属元素(V,Nb,Ta)および希土類元素に関する物理化学的研究、R&D/神戸製鋼技報、第24巻(1974)、No.1、P88」により次式(c)のように示されている。なお、ここでV炭化物の溶体化温度とするのは、本発明のV炭窒化物は上述の通り、VとCが主成分のものを指すためである。
Log[V][C]=−9500/T+6.72 ・・・(c)
ここで、式(c)中の[V]、[C]はそれぞれ鋼材中のV、Cの含有量(質量%)、TはV炭化物の溶体化温度(K)となり、T+273=A(℃)とする。つまり第2熱処理工程の本加熱温度が、Aよりも低く、さらには余裕を見てA−10よりも低くすれば、V炭化物が本加熱中に溶体化する量は少なくなる。
第2熱処理工程の本加熱の表面温度をT(℃)とすると、上記の式(c)を変形して以下の式が得られ、微細な結晶粒を得るには、この式の範囲にTを制限することが好ましい。
<A−10
A=−273−9500/(Log[V][C]−6.72)
なお、第2熱処理工程の本加熱の表面温度の下限はAc変態点となる。前述のように、Ac変態点は鋼材の成分組成によって決まるものである。つまり、Tの好ましい範囲は以下の通りである。
Ac<T<−273−10−9500/(Log[V][C]−6.72)・・・(4)
V炭窒化物によるピンニングにより微細な旧オーステナイト粒を得るには、V炭窒化物の大きさが小さく、体積分率が多いことが重要である。本発明でいうV炭窒化物は大きさが例えば約50nm以下と小さく、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡では通常は観察が困難なものである。第2熱処理工程後の高周波焼入れ歯車の焼入領域に存在するV炭窒化物の分布状態は例えば次のようにして測定できる。
高周波焼入れ歯車の焼入領域から抽出レプリカ法により観察サンプルを作製し、表層から200μm以内の深さ位置において、約55μmの視野をランダムに7箇所以上選択し、その選択した領域を透過電子顕微鏡にて200000倍相当のつなぎ写真により観察する。観察したV炭窒化物の写真を画像解析することにより、平均円相当径と面積分率を求めることができる。面積分率と体積分率はほぼ等しいことが例えば「金属便覧改訂6版、日本金属学会編、p264」に記載されており、面積分率を体積分率として扱っても問題ない。
図7(a)の高周波焼入れ歯車の焼入領域に存在するV炭窒化物は、平均粒径が13.3nmであり、面積分率は3.26×10−4であった。つまり、平均粒径が2.5μmの旧オーステナイト結晶粒を得るためにおおよそ必要なV炭窒化物の粒径と面積分率は、平均粒径が13.3nm以下であり、面積分率は3.26×10−4以上存在すれば良いことがわかる。
旧オーステナイト粒の平均粒径に及ぼすV炭窒化物の分散状態の影響を考察する。
例えば、「ミクロ組織の熱力学、社団法人日本金属学会編集、2005、p143」に記載されているように、析出物のピンニングにより決まる粒径は、析出物の体積分率の2/3に反比例し、析出物の粒径に比例するといわれている。前述のように、靭性と面疲労強度を向上させるには、旧オーステナイト結晶粒径が平均で5μm以下になる必要がある。そこで、図7(a)の実験結果を用いて、平均5μmの旧オーステナイト結晶粒を得るために必要なV炭窒化物分布を試算すると以下の通りとなる。
r/f2/3≦5615 ・・・(1)
ここで、V炭窒化物の平均粒径をr(nm)、面積分率fとする。
つまり、第2熱処理工程後の高周波焼入れ歯車の焼入領域には、V炭窒化物がr/f2/3≦5615を満たすように存在することが好ましく、より好ましくはr/f2/3≦4492、さらに好ましくはr/f2/3≦2807である。この式(1)の下限値は特に定まるものではないが、V炭窒化物の平均粒径が小さくなり、面積分率が大きくなるほど0に近づくため、r/f2/3>0とする。
前述のように、各工程における高周波誘導加熱の周波数は特に限定しないが、当該周波数を第1熱処理工程、第2熱処理工程の予備加熱、第2熱処理工程の本加熱で相互に変化させることにより、加熱深さ(あるいは焼入れ深さ)の調整をより自在に行うことができる。すなわち歯車内部での渦電流の浸透深さδ(m)は、周波数F(Hz)、材料の比透磁率をμ、比抵抗率をρ(Ω・m)としたとき、下式(d)で表わされることが知られている。
δ=0.503・10(ρ/Fμ1/2・・・(d)
歯車内部での渦電流は表面で最も大きく、内部に行くに従って指数関数的に減少するが、上記の電流の浸透深さδは一様な電流密度とみなしたときの計算上の電流が流れる範囲を示しており、加熱深さを判断する目安となる。この式(d)にみるように、浸透深さδは歯車の形状とは無関係であって、例えば炭素鋼の800℃における浸透深さδは、周波数をFが10kHzのとき5.3mm、200kHzのとき1.2mmとなる。したがって第2熱処理工程の予備加熱の周波数を本加熱の周波数より低くして内部まで加熱されるようにするといったことができ、これと先に説明した予備加熱時間や加熱停止時間(通電時間)とを組み合わせることにより広範囲の調整ができる。なお、第2熱処理工程の後にさらに高周波焼入れを繰り返し行うことも問題なく可能である。
なお、本発明の上記態様に係る高周波焼入れを施した高周波焼入れ歯車に対して、必要に応じて低温焼戻し処理(例えば130〜200℃で30〜120分程度の加熱処理)を施してもよい。また、当該低温焼戻し処理後に、更にショットピーニング処理を行っても良い。
ショットピーニング処理によって導入される歯車表層の圧縮残留応力の増加は疲労亀裂の発生、進展を抑制するため、本発明の高周波焼入れ歯車の曲げ疲労、及び面疲労強度を更に向上させることができる。ショットピーニング処理は、直径が0.7mm以下のショット粒を用い、アークハイトが0.4mm以上の条件で行うことが望ましい。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す成分組成を有する鋼を溶製し、45φの棒鋼に圧延した。表1で各元素の空欄は無添加を意味する。表1中の下線部分は数値が本発明の範囲外であることを示す。
次に、得られた棒鋼に対し、1200℃に加熱して20分保持した後に放冷する熱処理(熱間鍛造の熱履歴を模擬)を行い、これを高周波焼入れ用素材とした。
その後、棒鋼から機械加工により、大径部(試験部)26φのローラーピッチング試験片を作製した。
また、12mm×14mm角、長さ59mmで、中央に10mmRの半円の切欠付きのシャルピー試験片を作製した。
さらに14φ、長さ60mmの丸棒試験片を作製した。
上記のローラーピッチング試験片、シャルピー試験片、丸棒試験片に対して、表2に記載の条件で高周波焼入れを行った。
予備加熱の放冷は10秒間行った。また、第1熱処理工程と第2熱処理工程の本加熱後は水冷した。焼入領域の深さは第2熱処理工程の本加熱の加熱時間を変えることで調整した。第2熱処理工程の本加熱、焼入れ後は160℃×90分の条件で焼戻し処理を行った。
その後、試験精度を向上するため、ローラーピッチング試験片はつかみ部に仕上げ加工を施し、シャルピー試験片は切欠のある面以外を仕上げ加工し、10mm×10mm角、長さ55mmに仕上げた。
ローラーピッチング試験は、大ローラー:SCM420浸炭品・クラウニング300R,回転数:1500rpm、潤滑油:トランスミッション油、油温:80℃、すべり率:−40%で最大1000万回の条件で行い、S−N線図を作成してローラーピッチング疲労限を求めた。
ローラーピッチング疲労限が2400MPa(SCM420浸炭品相当)に達しないものは面疲労強度が劣ると判断した。
シャルピー試験はJISに基づいて室温で繰り返し5回実施し、平均値をシャルピー衝撃値とした。シャルピー衝撃値が40J/cm(SNCM815浸炭品相当)に達しないものは靭性に劣ると判断した。
各製造No.につき、上記高周波焼入れ・焼戻し処理を行った各試験水準の丸棒試験片の中央部を切断し、断面において表層から50μmの部位のビッカース硬さ測定を行うことで、表層硬さを求めた。
さらに焼入領域の深さの位置から1.5mm内側までの位置のビッカース硬さ測定を行い、その極小値を内部硬さとした。
また、断面を研磨後、オーステナイト粒界腐食液で腐食し、最表面から50μmの深さ付近を光学顕微鏡で1000倍の写真を撮影し、切断法により平均旧オーステナイト粒径を算出した。
旧オーステナイト結晶粒の混粒の有無は、JIS G 0551に従って測定した。具体的には、400倍で5視野観察し、最大頻度を持つ粒度番号の粒から3以上異なった粒度番号の粒が存在する場合、これらの粒の面積が20%以上である場合を混粒「有」と判定し、その他の場合を混粒「無」と判定した。
さらに表面から200μm以内の断面から抽出レプリカ法により観察サンプルを作製し、透過電子顕微鏡にてV炭窒化物を観察し、画像解析によりV炭窒化物の円相当径(平均析出物粒径r)と面積分率fを測定した。
これらの評価結果は表2及び表3に示す。表2及び表3中の下線部分は数値が本発明の範囲外であることを示す。
製造No.1〜23の本発明例は内部硬さ、シャルピー衝撃値、ローラーピッチング疲労限のいずれも目標を達成した。
一方、製造No.24は高周波焼入れ用素材の鋼成分のVが添加されていないため、旧オーステナイト粒径の微細化効果が得られず、その結果、シャルピー衝撃値とローラーピッチング疲労限が目標未達であり、さらに内部硬さも目標未達であった。
製造No.25はV量が不足し、式(2)を満たしていないため、旧オーステナイト粒径の微細化効果が少なくなり、その結果、シャルピー衝撃値とローラーピッチング疲労限が目標未達であった。
製造No.26は高周波焼入れ用素材の鋼成分のC量が不足したため、表層硬さが低くなり、その結果ローラーピッチング疲労限が目標未達であった。
製造No.27は高周波焼入れ用素材の鋼成分のC量が過剰であったため、靭性が低下し、シャルピー衝撃値が目標未達であった。
製造No.28はSi量が不足したため、焼戻し軟化抵抗が低くなり、その結果ローラーピッチング疲労限が目標未達であった。
製造No.29は式(2)と(3)を満たしていないため、旧オーステナイト粒径の微細化効果が少なくなり、その結果、シャルピー衝撃値とローラーピッチング疲労限が目標未達であった。
製造No.30は式(2)と(3)を満たしていないため、旧オーステナイト粒径の微細化効果が少なくなり、さらに混粒も存在したため、シャルピー衝撃値とローラーピッチング疲労限が目標未達であった。なお、製造No.30において、式(2)は負の値となるため、表2中には「0.0」と表示した。
製造No.31は焼入領域の深さが浅すぎたために、ローラーピッチング疲労限が低下した。
前述したように、本発明によれば、内部硬さが高く、且つ靭性、面疲労強度に優れる高周波焼入れ歯車、及びその高周波焼入れ方法を提供することができる。よって、本発明は機械製造産業において利用可能性が高いものである。

Claims (7)

  1. 化学成分が、質量%で、
    C :0.45%〜0.75%、
    Si:0.80超〜2.0%、
    Mn:0.30〜2.0%、
    Cr:0.01〜0.5%、
    V :0.05〜0.35%、
    S :0.001〜0.05%、
    Al:0.001〜0.2%
    を含有し、
    P :0.050%未満、
    N :0.020%未満
    に制限し、
    残部がFe及び不可避不純物よりなる鋼からなり、
    マルテンサイト組織の生成領域である焼入領域が、最表面から0.3〜3.0mm深さの領域にあり、
    前記最表面から50μm深さの位置における表層硬さがHV620〜850の範囲内であり、
    前記焼入領域の深さの位置より内部の領域の硬さ分布において、最も前記焼入領域側の極小値がHV300〜550の範囲内であり、
    前記表面から50μm深さの位置における旧オーステナイト粒に関し、平均径が5μm以下でかつJIS G 0551で規定する混粒が存在しないことを特徴とする高周波焼入れ歯車。
  2. 前記最表面から200μm深さまでの領域に生成されたV炭窒化物が、下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入れ歯車。
    0<r/(f2/3)≦5615 ・・・ (1)
    ここで、r:前記最表面から200μm深さ部までの領域に生成されたV炭窒化物の平均粒径(nm)、f:前記最表面から200μm深さ部までの領域に生成されたV炭窒化物の面積率である。
  3. 前記化学成分が、さらに、質量%で、
    Ti:0.2%未満(0%を含まない)、
    Nb:0.1%未満(0%を含まない)、
    Mo:0.15%未満(0%を含まない)、
    B:0.0005〜0.0050%未満、
    Ca:0.005%未満(0%を含まない)、
    Ni:1.0%未満(0%を含まない)、
    Cu:0.5%未満(0%を含まない)のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高周波焼入れ歯車。
  4. 化学成分が、質量%で、
    C :0.45%〜0.75%、
    Si:0.80超〜2.0%、
    Mn:0.30〜2.0%、
    Cr:0.01〜0.5%、
    V :0.05〜0.35%、
    S :0.001〜0.05%、
    Al:0.001〜0.2%
    を含有し、
    P :0.050%未満、
    N :0.020%未満
    に制限し、
    残部がFe及び不可避不純物よりなる鋼材に形状加工を施し歯車とした後、最表面から0.3〜3.0mm深さまでの領域においてマルテンサイト組織の生成領域である焼入領域を得るにあたり、前記歯車に対し、高周波焼入れによる2回の熱処理を行う方法であって、
    表面温度がAc変態点以上1200℃未満の温度となるように、かつ前記焼入領域とすべき深さの2.5倍以上7.0倍以下の深さ位置における温度がAc変態点以上の温度になるように高周波誘導加熱により加熱した後、常温まで急冷して焼入れする第1熱処理工程と、
    下記(2)式、及び下記(3)式を満足し、かつ表面温度Tが550〜750℃になるまで、通電時間tを1〜64秒として高周波誘導加熱により加熱した後に、加熱電力を停止した状態で1.0秒以上放冷する予備加熱を行い、次いで、再度、高周波誘導加熱により、前記最表面から前記焼入領域とすべき深さまでの領域をAc変態点以上の温度にする本加熱を行った後、常温まで急冷して焼入れする第2熱処理工程と、を順に具備する
    ことを特徴とする歯車の高周波焼入れ方法。
    45≦(1.203×T+56.45×Logt−662.1)×[V]0.5≦202・・・(2)
    16900≦19.31×T+906.2×Logt+4594≦20713・・・(3)
    ここで、Tは前記予備加熱における表面温度(℃)、tは前記予備加熱における通電時間(秒)、[V]は鋼材中のVの含有量(質量%)である。
  5. 前記本加熱における表面温度をT℃とするとき、Tが下記(4)式を満たすことを特徴とする請求項4に記載の歯車の高周波焼入れ方法。
    Ac<T<−273−10−9500/(Log[V][C]−6.72)・・・ (4)
    ここで、[V]、[C]は、それぞれ鋼材中のV、Cの含有量(質量%)であり、AcはAc変態点である。
  6. 前記第1熱処理工程の加熱における表面温度をT℃とするとき、Tが下記(5)式を満たすことを特徴とする請求項4または5に記載の歯車の高周波焼入れ方法。
    −273+10−9500/(Log[V][C]−6.72)<T<1200・・・(5)
    ここで、[V]、[C]は、それぞれ鋼材中のV、Cの含有量(質量%)である。
  7. 前記化学成分が、さらに、質量%で、
    Ti:0.2%未満(0%を含まない)、
    Nb:0.1%未満(0%を含まない)、
    Mo:0.15%未満(0%を含まない)、
    B:0.0005〜0.0050%未満、
    Ca:0.005%未満(0%含まない)、
    Ni:1.0%未満(0%を含まない)、
    Cu:0.5%未満(0%を含まない)のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の歯車の高周波焼入れ方法。
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