以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態(第1実施形態)について詳述する。
図1及び図2は、本発明に係る部品実装装置(本発明に係る部品認識装置(部品移載装置)が適用された部品実装装置)を概略的に示しており、図1は平面図で、図2は正面図で、それぞれ部品実装装置を示している。なお、図面には、方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示されている。
部品実装装置は、基台1と、この基台1上に配置されてプリント配線板(PWB;Printed Wirng Board)等の基板3をX方向に搬送する基板搬送機構2と、部品供給部4、5と、部品実装用のヘッドユニット6と、このヘッドユニット6を駆動するヘッドユニット駆動機構と、部品認識用の撮像ユニット7A、7B(第1撮像ユニット7A、第2撮像ユニット7Bと称す)とを備えている。
前記基板搬送機構2は、基台1上において基板3を搬送する一対のコンベア2a、2aを含む。これらコンベア2a、2aは、同図の右側(−X側)から基板3を受け入れて所定の実装作業位置(同図に示す位置)に搬送し、図略の固定装置により基板3を当該実装作業位置に位置決め固定する。そして、実装作業後、この基板3を同図の左側(+X側)に搬出する。
前記部品供給部4、5は、前記基板搬送機構2の両側(Y方向両側)に配置されている。これら部品供給部4、5のうち一方側の部品供給部4には、基板搬送機構2に沿ってX方向に並ぶ複数のテープフィーダ4aが配置されている。これらテープフィーダ4aは各々、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ部品を収納、保持したテープが巻回されたリールを備え、リールから間欠的にテープを繰り出しながら基板搬送機構2の近傍の所定の部品供給位置に部品を供給する。一方、他方側の部品供給部5には、X方向に所定の間隔を隔ててトレイ5a、5bがセットされている。各トレイ5a、5bには、後述するヘッドユニット6による取出しが可能となるように、DIP(Dual Inline Package)、QFP(Quad Flat Package)及びBGA(Ball Grid Array)等のパッケージ型の部品が整列して載置されている。
前記ヘッドユニット6は、部品供給部4、5から部品を取り出して基板3上に実装するものであり、基板搬送機構2および部品供給部4,5等の上方に配置されている。
前記ヘッドユニット6は、ヘッドユニット駆動機構により一定の領域内でX方向およびY方向に移動可能とされている。このヘッドユニット駆動機構は、基台1上に設けられる一対の高架フレームにそれぞれ固定されてY方向に互いに平行に延びる一対の固定レール8と、これら固定レール8に支持されてX方向に延びるユニット支持部材11と、このユニット支持部材11に螺合挿入されてY軸サーボモータ10により駆動されるボールねじ軸9とを含む。また、ユニット支持部材11に固定され、ヘッドユニット6をX方向に移動可能に支持する固定レール13と、ヘッドユニット6に螺合挿入されてX軸サーボモータ15を駆動源として駆動されるボールねじ軸14とを含む。つまり、ヘッドユニット駆動機構は、X軸サーボモータ15の駆動によりボールねじ軸14を介してヘッドユニット6をX方向に移動させると共に、Y軸サーボモータ10の駆動によりボールねじ軸9を介してユニット支持部材11をY方向に移動させ、その結果、ヘッドユニット6をX方向およびY方向に移動させる。
前記ヘッドユニット6は、先端にそれぞれ部品吸着用のノズル16aを備える複数本の軸状の実装用ヘッド16(本発明の移載用ヘッドに相当する)と、これら実装用ヘッド16をヘッドユニット6に対して昇降(Z方向の移動)およびノズル中心軸回りに回転(図2中のR方向に回転)させる、サーボモータ等のアクチュエータを駆動源とするヘッド駆動機構等とを備える。当例のヘッドユニット6は、X方向に一列に並ぶ、合計6本の実装用ヘッド16(以下、ヘッド16と略す)を備えている。
各ヘッド16のノズル16aは、それぞれ電動切替弁を介して負圧発生装置、正圧発生装置および大気の何れかに連通可能とされている。つまり、前記ノズル16aに負圧が供給されることで、ノズル16aにより部品が吸着、保持され、その後、正圧が供給されることで、ヘッド16による当該部品の吸着、保持が解除される。
前記第1、第2の撮像ユニット7A、7Bは、両トレイ5a、5bの間の位置にY方向に並んで配設されている。
第1撮像ユニット7A(本発明の第1撮像装置に相当する)は、各ヘッド16(ノズル16a)に吸着された部品をその真下から撮像するもの、すなわちヘッド16に吸着された前記部品の底面を撮像するものであり、カメラ20と当該カメラ20による撮像用照明を提供する照明部21とを含む(図4参照)。カメラ20は、ラインセンサカメラであり、前記撮像素子がY方向に並ぶように上記基台1上に固定されている。この構成により、撮像ユニット7Aは、ヘッドユニット6がその上方をX方向に移動する間に、各ヘッド16に吸着された部品を撮像する。
一方、第2撮像ユニット7Bは、リード付部品の各リードのコプラナリティ(平坦度)検査や後述する部品の斜め吸着状態の有無判定を行うために、各ヘッド16(ノズル16a)に吸着された部品をその斜め下方から撮像するものであり、カメラ22と当該カメラ22による撮像用照明を提供する照明部23とを含む(図4参照)。カメラ22は、ラインセンサカメラであり、図3に示すように、X方向に沿って部品をその斜め下方から撮像すべく所定の仰角θで斜め上向きの姿勢で、前記撮像素子がY方向に並ぶように配設されている。当例では、基板3の搬出側(+X側)から搬入側(−X側)に向かって仰角θ=40°で基台1上に配設されている。これにより、第2撮像ユニット7Bは、ヘッドユニット6がその上方をX方向に移動する間に、各ヘッド16に吸着された部品を斜め下方から撮像する。
この部品実装装置は、さらに、その動作を制御するための、図4に示すような制御装置30を備えている。制御装置30は、論理演算を実行するCPU、そのCPUを制御する種々のプログラムなどを記憶するROM、種々のデータを一時的に記憶するRAMおよびHDD等から構成されている。制御装置30は、その機能構成として、部品実装装置の全体の動作を統括的にコントロールする主制御部31と、各種処理プログラムや各種データを記憶する記憶部32と、基板搬送機構2、ヘッドユニット6及び各ヘッド16等の駆動を制御する駆動制御部33と、第1撮像ユニット7A(カメラ20及び照明部21)を制御するカメラ制御部34および照明制御部35と、第2撮像ユニット7B(カメラ22及び照明部23)を制御するカメラ制御部37および照明制御部38と、後記主制御部31による制御に基づき、カメラ20、22から出力される画像信号に所定の画像処理、例えば後述する射影変換等の処理を施す画像処理部36、39と、を備えており、これらが互いに信号のやり取りが可能となるように接続された構成を有する。
主制御部31は、記憶部32に記憶されている実装プログラムに従って駆動制御部33、カメラ制御部34、37および照明制御部35、38などを制御するとともに、ヘッド16に吸着された部品の画像認識やそのための各種演算処理等を行うものである。特に、部品認識の際には、各ヘッド16に吸着された部品を撮像すべくヘッドユニット6や各撮像ユニット7A、7Bを制御するとともに、取得された部品画像に基づき、後述する部品の斜め吸着状態の検知(判別)を含む部品の認識処理を実行することにより、ヘッド16による部品の吸着状態を認識する。すなわち、当例では、ヘッドユニット6、ヘッドユニット駆動機構、撮像ユニット7A、7Bおよび制御装置30が本発明の部品移載装置に相当し、撮像ユニット7A、7Bおよび制御装置30が本発明の部品認識装置に相当し、制御装置30が本発明の変換処理装置、判別装置、姿勢補正装置および姿勢変更装置として機能する。
次に、上記制御装置30(主制御部31)の制御に基づく、当該部品実装装置の一連の実装動作について説明する。
図5は、制御装置30による部品実装動作の制御の一例を示すフローチャートである。制御装置30は、まず、基板搬送機構2を制御し、基板3を上記実装作業位置に搬入して位置決め固定する(ステップS1)。そして、ヘッドユニット6を部品供給部4、5上に移動させ、各ヘッド16に順次部品を吸着させ(ステップS3、S5)、その後、基板3への部品の実装に先立ち、当該部品の撮像・認識処理を実行する(ステップS7)。この部品撮像・認識処理については後に詳述する。
部品撮像・認識処理が終了すると、制御装置30は、部品不良や吸着不良が有るか否かを判定し(ステップS9)、NOと判定した場合には、ヘッドユニット6を基板3上に移動させ、各ヘッド16に吸着された部品を、順次基板3上に搭載する(ステップS11)。
一方、ステップS9でYESと判定した場合には、制御装置30は、基台1上に設置された図外の部品廃棄部の上方にヘッドユニット6を移動させ、ヘッドユニット6に備えられた合計6本の各ヘッド16にそれぞれ吸着された部品のうち、部品不良や吸着不良に該当する部品を部品廃棄部に廃棄した後(ステップS17)、ステップS11に処理を移行し、残りの部品を順次搭載する。
各ヘッド16に吸着された部品を基板3に搭載すると、制御装置30は、要求される全部品を基板3に搭載したか否かを判定し(ステップS13)、NOと判定した場合には、処理をステップS3に移行し、ステップS3〜ステップS13の処理を繰り返すことにより6個ずつ部品を基板3に搭載する。そして、最終的にステップS13でYESと判定すると、制御装置30は、基板3の固定を解除し、基板搬送機構2を駆動して基板3を搬出する(ステップS15)。これにより、基板3に対する一連の部品実装作業が終了する。
次に、図6〜図8を用いて、上記ステップS7の部品撮像・認識処理の制御について説明する。
図6は、上記ステップS7の部品撮像・認識処理の制御(サブルーチン)を示すフローチャートの一部であり、各ヘッド16に吸着された部品の第1撮像ユニット7Aによる撮像処理や、画像データに基づく部品の認識処理により、例えば部品が未吸着であるか否かを判別する等の処理制御を示すフローチャートである。
各ヘッド16による部品の吸着が完了すると(図5のステップS5でYES)、制御装置30は、ヘッドカウンタをリセットし(ステップS21)、第1撮像ユニット7Aによる部品の撮像処理を実行する(ステップS23)。具体的には、各ヘッド16を制御することにより、部品を所定の撮像高さ位置に配置した上で、例えば図1中の一点矢印に示すように、ヘッドユニット6を第1撮像ユニット7Aの上方でX方向(同図の例では+X側から−X側)に一定速度で移動させる。これにより、各ヘッド16に吸着された部品を連続的に撮像する。こうして取得される部品画像を第1画像と称す。
ヘッドユニット6が撮像ユニット7Aの上方を通過することで、全ての部品の撮像が終了すると(ステップS25でYES)、制御装置30は、ヘッドカウンタの値をインクリメントした後(ステップS27)、当該カウンタ値に対応するヘッド16(ヘッド番号nのヘッド16)に吸着された部品(第n部品)の認識処理を実行し(ステップS29)、ステップS33に処理を移行する。ステップS29の処理には、部品認識が成功した否かの判定も含まれる。例えば制御装置30は、ステップS23で取得した第n部品の画像に基づき、当該部品画像の各画素のうち、予め設定された閾値よりも高い(明るい)輝度値を有する画素の領域を部品底面と特定し、この部品底面画像に基づいて部品の吸着状態を認識し、当該認識処理が成功したか否かを判定する。例えば、部品が未吸着であった場合(吸着ミスが発生した場合)には、上記画素領域の面積がゼロとなるため、このような場合には、上記画素領域の面積が規定範囲外であるとして、制御装置30は、ヘッド番号nのヘッド16は部品未吸着である旨のデータを記憶部32に記憶し、ステップS33に処理を移行する。
なお、ステップS33の処理では、制御装置30は、ヘッドカウンタの値がヘッド数(N)に等しいか、すなわち、全てのヘッド16の吸着部品について部品認識処理および認識成否判定処理が終了したか否かを判定し、ここでNOと判定した場合には、処理をステップS27に移行して、次の部品の認識処理に移る。
そして、最終的にステップS33でYESと判定すると、制御装置30は、第2撮像ユニット7Bによる部品の撮像処理を実行する(図7のステップS37)。具体的には、図1中の一点鎖線矢印に示すように、第1撮像ユニット7Aの上方を通過したヘッドユニット6をY方向(+Y側)にシフトさせた後、第2撮像ユニット7Bに向かってヘッドユニット6を逆方向(−X側から+X側に向かって)に移動させることにより、第2撮像ユニット7Bにより各ヘッド16に吸着された部品を連続的に撮像し(こうして取得される部品画像を第2画像と称す)、各画像データをヘッド16の上記ヘッド番号と関連づけて記憶部32に記憶する。
なお、各ヘッド16に吸着された時の部品のR方向の回転角度位置が本発明の第1角度位置に相当する(この時、部品は吸着姿勢にあると言う)。R方向の吸着ずれを含め、各ヘッド16に吸着される部品の吸着ずれにはばらつきがあり、よって各ヘッド16に吸着される部品の前記第1角度位置はばらついたものとなる。
次に、制御装置30は、ヘッドカウンタを一旦リセットし(ステップS41)、ヘッドカウンタの値をインクリメントした後(ステップS43)、当該カウンタ値に対応するヘッド16に吸着されている部品(第n部品)の認識処理を実行し(ステップS45)、認識が成功したか否かを判定する(ステップS47)。ここでNOと判定した場合には、制御装置30は、ステップS51に処理を移行する。
ステップS45、S47の処理は、ステップS29の処理と基本的には同じであり、部品底面を特定することにより行われる。なお、図3に示すように、ヘッド16に部品が正しく吸着されている場合、第2撮像ユニット7Bによる撮像画像には、部品底面Caに加え、カメラ22に対向する側の部品側面Cbが写り込むが、この場合には、部品底面Caの輝度値の方が高いため、部品底面を特定する際の輝度値との比較対象である閾値は、ヘッド16に部品が正しく吸着されている状態で撮像した部品の底面画像の平均輝度値に基づき、部品底面を特定し得る値に設定されている。
ステップS47でYESと判定した場合には、制御装置30は、ステップS23、S37の撮像処理で取得された部品底面画像、具体的には、第1撮像ユニット7Aにより部品を真下から撮像したときの部品底面画像(第1画像G1)と、第2撮像ユニット7Bにより部品を吸着姿勢で斜め下方から撮像した部品底面画像(第2画像G2)とに基づき、ヘッド16(ノズル16a)に対して部品が上下方向に傾く、いわゆる部品の斜め吸着の判定処理(第1斜め吸着判定処理と称す)を実行する(ステップS49)。後に詳述するが、この第1斜め吸着判定処理では、各ヘッド16の吸着部品について、上記吸着姿勢から部品をR方向に90°回転させて第2撮像ユニット7Bにより部品を再度撮像した上でさらにその画像データに基づき部品の斜め吸着判定処理(後記第2斜め吸着判定処理)を実施すべき部品であるか否かの判定が行われ、該当する部品を吸着しているヘッド16のヘッド番号mが記憶部32の図外の記憶エリアMに記憶される。
第1斜め吸着判定処理が終了すると、制御装置30は、ヘッドカウンタの値がヘッド数(N)に等しいか、すなわち、全てのヘッド16の吸着部品について第1斜め吸着判定処理を実行したか否かを判定する(ステップS51)。ここで、NOの場合には、制御装置30は、処理をステップS43に移行し、ステップS43〜S51の処理を繰り返し、全ての吸着部品について第1画像G1と第2画像G2とに基づく第1斜め吸着判定処理を実行する。
第1斜め吸着判定処理が終了すると(ステップS51でYES)、制御装置30は、ヘッドカウンタを一旦リセットし(ステップS53)、ヘッドカウンタの値をインクリメントした後(ステップS55)、記憶部32の記憶エリアMに記憶されたヘッド番号mの中にカウンタ値nと一致するものが存在するか否かを判定する(ステップS57)。
ここでNOと判定した場合には、制御装置30は、処理をステップS61に移行する。一方、YESと判定した場合には、制御装置30は、ヘッド番号m(=n)のヘッド16をR方向に90°回転させることにより、部品を上記吸着姿勢から90°回転させた90°姿勢(本発明の第2角度位置に相当する)に変更する処理(姿勢変更処理)を実行した後(ステップS59)、ヘッドカウンタの値がヘッド数(N)に等しいか否かを判定する(ステップS61)。ここで、NOと判定した場合には、制御装置30は、処理をステップS55に移行し、ステップS55〜S61の処理を繰り返し、これにより記憶エリアMに記憶されたヘッド番号mのヘッド16の吸着部品を上記吸着姿勢から90°姿勢に変更する。
最終的にステップS61でYESと判定すると、制御装置30は、第2撮像ユニット7Bによる部品の撮像処理を実行する(ステップS63)。具体的には、ステップS37の処理で第2撮像ユニット7Bの上方を通過したヘッドユニット6を、図1中の一点鎖線矢印に示すように順方向(+X側から−X側に向かって)に移動させることにより、第2撮像ユニット7Bにより各ヘッド16に吸着された部品を連続的に撮像するとともに、得られた画像データのうち、上記記憶エリアMに記憶されているヘッド番号mのヘッド16に対応する画像データ(0〜6個のデータ/こうして取得される部品画像を第3画像と称す)を全て、当該ヘッド番号mと関連づけて記憶部32に記憶する。
次に、制御装置30は、ヘッドカウンタを一旦リセットし(図8のステップS65)、ヘッドカウンタの値をインクリメントした後(ステップS67)、上記記憶エリアMに記憶されたヘッド番号mの中にカウンタ値nと一致するものが存在するか否かを判定する(ステップS69)。
ここでNOと判定した場合には、制御装置30は、処理をステップS73に移行する。一方、YESと判定した場合には、制御装置30は、第1撮像ユニット7Aにより部品を真下から撮像したときの部品底面画像(第1画像G1)と、第2撮像ユニット7Bにより部品を90°姿勢で斜め下方から撮像した部品底面画像(第3画像G3)とに基づき、部品の斜め吸着の判定処理(第2斜め吸着判定処理と称す)を実行する(ステップS71)。この第2斜め吸着判定処理については後に詳述する。
ステップS71の処理が終了すると、制御装置30は、ヘッドカウンタの値がヘッド数(N)に等しいか否かを判定する(ステップS73)。ここで、NOと判定した場合には、制御装置30は、処理をステップS67に移行し、ステップS67〜S73の処理を繰り返すことにより、90°姿勢の全ての部品について第2斜め吸着判定処理を実行し、最終的にステップS73でYESと判定すると、本フローチャートを終了し、処理を図5のステップS9に移行する。
図9は、上記ステップS49の第1斜め吸着判定処理の制御(サブルーチン)を示すフローチャートである。
制御装置30は、まず、吸着姿勢で部品を斜め下方から撮像することにより取得した上記第2画像G2(ステップS37で取得した画像)に幾何学的変換処理を施すことにより、第2画像G2を、真下から部品を見た場合の画像(第2画像G2′/本発明の第1部品底面画像に相当する)に変換する処理を実行する(ステップS81)。具体的には、制御装置30は、予め記憶部32に記憶されている変換係数(変換パラメータ)と下記式に基づき第2画像G2に射影変換処理を施す。
[数1]
u=(x・a+y・b+c)/(x・g+y・h+1)
v=(x・d+y・e+f)/(x・g+y・h+1)
ここで、x、yは変換前の座標、u、vは変換後の座標、a、b、c、d、e、f、g、hは変換係数である。変換係数は、第2撮像ユニット7Bのカメラ22の光軸の方向と、各ヘッド16のノズル16aの先端平面(部品がヘッド16に正しく吸着されている場合の部品の被吸着面)との幾何学的関係により定まるものである。
すなわち、ヘッド16に部品が正しく吸着されている場合(斜め吸着を伴わない場合)、上記吸着姿勢の部品を垂直下方(真下)から撮像した第1画像G1は、例えば図11(a)のように部品の底面Caの形状に対応した長方形となる一方、正しく吸着された部品を斜め下方から撮像した第2画像G2は、例えば図11(b)の左図のように奥行き方向(−X方向)に先細りの線対称な図形となる。正しく部品を吸着した状態でヘッド16をR方向に90°だけ回転させた姿勢(上記90°姿勢)で、部品を斜め下方から撮像した第3画像G3も、例えば図11(c)の左図のように奥行き方向(−X方向)に先細りの線対称な図形となる。
一方、ヘッド16に部品が斜めに吸着されている場合、部品を垂直下方から撮像した第1画像G1は、例えば図12(a)のように非対称な歪んだ四角形となる。これは、斜め吸着のため、第1画像G1における部品の底面Caの各辺の関係において、カメラ20に近い側の辺よりも遠い側の辺の方が短く写るためである。また、斜め吸着された部品を斜め下方から撮像した第2画像G2は、例えば図12(b)の左図のように奥行き方向(−X方向)に先細りでかつ非対称な歪んだ四角形となる。
ステップS81の処理では、この第2画像G2の各コーナ部の座標を特定し、当該座標を上記式(数1)に基づき射影変換することにより、第2画像G2を図12(b)の右図のように、真下から部品を撮像した場合の画像(第2画像G2′)に変換する。この第2画像G2′では先細りは解消されるが、非対称な歪んだ四角形は完全には解消されず、この第2画像G2′は斜め吸着された部品に基づく第1画像G1(図12(a))とは一致しない。この場合、正しい吸着状態に近づく程(斜めの程度が軽減される程)、第2画像G2は図11(b)の左図に近いものとなり、第2画像G2′は図11(b)右図の長方形に近いものとなる。
なお、正しく吸着された部品を斜め下方から撮像した第2画像G2を射影変換して得られる第2画像G2′は図11(b)の右図のようになり、同図は、正しく吸着された部品を垂直下方から撮像した第1画像G1と一致する。また、正しく吸着された部品を上記90°姿勢で斜め下方から撮像した第3画像G3を射影変換して得られる第3画像G3′は図11(c)の右図のようになり、同図は上記第1画像G1と一致する。
ステップS81の変換処理が終了すると、制御装置30は、変換後の第2画像G2′と、実際に部品を真下から撮像することにより取得した上記第1画像G1とを比較してその類似度合を評価する(ステップS83)。具体的には、パターンマッチングにより、両画像の画像間誤差、例えば対応する辺長、対応するコーナ部の位置、対応するコーナ部の角度等の誤差を求める。そして、当該画像間誤差が予め設定された閾値未満か否かを判定し(ステップS85)、ここでNOと判定した場合には、制御装置30は、当該第n部品は斜め吸着状態であると認定し、そのときのヘッドカウンタの値を斜め吸着が発生したヘッド16の番号(ヘッド番号q)として上記記憶部32の図外の記憶エリアQに記憶して(ステップS87)、本フローチャートを終了する。これにより、処理を図7のステップS51に移行する。
なお、ステップS85でYESと判定した場合には、制御装置30は、そのときのヘッドカウンタの値をR方向に90°回転させるヘッド16の番号、すなわち第2斜め吸着判定処理(ステップS71の処理)をさらに実施すべき部品が吸着されたヘッド16の番号(ヘッド番号m)として上記記憶部32の図外の記憶エリアMに記憶して(ステップS89)、本フローチャートを終了する。
図10は、上記ステップS71の第2斜め吸着判定処理の制御(サブルーチン)を示すフローチャートである。
制御装置30は、まず、上記記憶部32の記憶エリアMに記憶されたヘッド番号mの中にカウンタ値nと一致するものが存在するか否かを判定する(ステップS91)。
ここでYESと判定した場合には、制御装置30は、ヘッド番号と関連づけて記憶部32に記憶されている第3画像G3に対して、予め記憶部32に記憶されている変換係数(変換パラメータ)を用いて上記式(数1)に基づき射影変換処理を実行する(ステップS93)。これにより、第2画像G2対してステップS81の処理で実施したように、第3画像G3を真下から見た場合の画像(第3画像G3′)に変換する。
次に、制御装置30は、変換後の第3画像G3′と、実際に部品を真下から撮像することにより取得した上記第1画像G1とを比較し、ステップS83の処理と同様に、その類似度合を評価する(ステップS95)。そして、第3画像G3′と第1画像G1との画像間誤差が予め設定された閾値未満か否かを判定し(ステップS97)、ここでNOと判定した場合には、制御装置30は、当該第n部品は斜め吸着状態であると認定し、そのときのヘッドカウンタの値を斜め吸着が発生したヘッド16の番号(ヘッド番号q)として上記記憶部32の図外の記憶エリアQに記憶して(ステップS99)、本フローチャートを終了する。これにより、処理を図8のステップS73に移行する。
なお、斜め吸着が発生して部品がヘッド16に対して上下方向に傾いている場合であっても、第1画像G1と変換後の第2画像G2′との画像間誤差が小さい場合があり得るが、90°姿勢における部品の第3画像G3を射影変換して変換後の第3画像G3′と第1画像G1とを比較すれば画像間には大きな誤差が発生するので、画像間誤差が閾値未満か否かを判定することで、斜め吸着状態の有無を判別することが可能になる。
ステップS97でYESと判定した場合、すなわち第1画像G1と変換後の第3画像G3′の画像間誤差が閾値未満であると判定した場合には、制御装置30は、部品がヘッド16に傾くことなく吸着されているか、又は傾いているとしても許容される程度であると認定(許容吸着認定)し、そのときのヘッドカウンタの値を当該許容可能なヘッド16の番号(ヘッド番号p)として上記記憶部32の図外の記憶エリアPに記憶して(ステップS101)、本フローチャートを終了する。
なお、ステップS91でNOと判定した場合には、制御装置30は、本フローチャートを終了し、処理を図8のステップS73に移行する。例えば、ヘッドカウンタの値に対応する番号のヘッド16に吸着された部品が、第2画像G2に基づく第1斜め吸着判定処理(ステップS49の処理)で既に斜め吸着と認定され、これにより90°姿勢での部品の撮像が実施されていない場合には、ステップS91ではNOと判定される。
以上説明したように、この部品実装装置によれば、基台1上に設置された第1、第2撮像ユニット7A、7Bにより各ヘッド16に吸着された部品を下方(斜め下方を含む)からのみ撮像し、その画像に基づき部品の斜め吸着状態の有無を判別することができる。そのため、部品を側方から撮像することによって斜め吸着状態の有無を判別する従来装置(特許文献1に記載された部品実装装置)のように、撮像装置によってヘッド16の動作が制限されるという不利益を伴うことなく、部品の斜め吸着状態を検知することができる。
特に、この部品実装装置によれば、部品を斜め下方から撮像したときの部品底面画像(第2画像G2、第3画像G3)を、上記数1に示すような演算式に基づき部品を真下から撮像した場合の部品底面画像(第2画像G2′、第3画像G3′)に変換し、変換後の部品底面画像と、実際に部品を真下から撮像したときの部品底面画像(第1画像G1)とを比較してその類似度合に基づき部品の斜め吸着状態の有無を判別するので、部品を下方のみから撮像しながらも、比較的簡単な演算処理で部品の斜め吸着状態を正確に検知することができる。
しかも、この部品実装装置では、上記の通り、部品を斜め下方から撮像したときの部品底面画像として、吸着姿勢の画像(第2画像G2)を射影変換した第2画像G2′と第1画像G1との類似度合を評価し、画像間誤差が閾値以上となる場合に、部品が斜め吸着状態にあると判別するので、当該斜め吸着状態の判別を効率よく行うことができる。また、画像間誤差が閾値より小さい場合には、さらに90°姿勢での画像(第3画像G3)を取得した上でその射影変換後の第3画像G3′と第1画像G1との類似度合を評価し、画像間誤差が閾値以上となる場合に、部品が斜め吸着状態にあると判別するので、当該斜め吸着状態の判別をより正確に行うことができる。従って、部品の斜め吸着に起因する部品の実装不良等の不都合が発生することを効果的に抑制することができる。なお、上述した実施形態中では言及していないが、図9のステップS85及び図10のステップS97で用いられる閾値は、予め実験的に求めた実証値に基づき設定された値である。
次に、本発明に係る部品実装装置の第2の実施形態について図13、図14を参照しつつ説明する。なお、第2実施形態に係る部品実装装置は、以下に説明する点を除き、基本的には上述した第1実施形態の部品実装装置と同様の構成である。
まず、図13を用いて、第2実施形態の部品実装装置における部品認識の手法について説明する。図13は、第2撮像ユニット7B(カメラ22)と部品との関係を示す模式図であり、ヘッド16の吸着部品をZ方向下側から見たものである。
ヘッド16に吸着された部品を第1撮像ユニット7Aにより下方から撮像した場合には、部品画像は同図の実線に示す画像(部品画像Cとする)と同等となる。なお、同図は、直方体の部品がヘッド16に斜め吸着された状態を示しており、よって、同部品画像Cには、部品底面Caに加えて部品側面Cbが写り込んでいる。
ここで、部品底面Caの法線NLを水平面に投影した直線(投影法線NL′と称す)と、第2撮像ユニット7B(カメラ22)の光軸L2を水平面に投影した直線(投影光軸L2xと称す)とが成す角度を角度θとする。部品底面Caの前記法線NLは、部品側面Cbの辺P1−P2、辺P3−P4、辺P5−P6と平行となる。部品画像Cでは、法線NL、辺P1−P2、辺P3−P4、辺P5−P6はほぼ平行と言えるものであり、部品画像C上の法線NLの方向は、辺P1−P2、辺P3−P4、辺P5−P6の平均の方向と一致するものとして、角度θを部品画像Cから求めることができる。ヘッド16をR方向に角度θだけ回転させると、部品底面Caの投影法線NL′はX方向と平行になり、部品の傾きの方向を第2撮像装置7B(カメラ22)の光軸L2を含む鉛直面(Z−X面)と平行にすることができるので、部品は、上記法線NLがZ−X面内においてZ軸に対して斜めに傾いた状態になる。すなわち、ヘッド16をR方向に角度θだけ回転させた状態で、部品を第2撮像ユニット7Bにより斜め下方から撮像し、その部品画像C′から部品底面画像(第2画像G2)を取得し、その射影変換後の第2画像G2′と第1画像G1との類似度合を評価すれば、部品の斜め吸着の判定を行なうことができる。なお、図13中、ヘッド16をR方向に角度θだけ回転させた状態では、部品画像Cの辺P1−P2、辺P3−P4、辺P5−P6および法線NLは、部品画像C’において辺P1′−P2′、辺P3′−P4′、辺P5′−P6′、および法線NL′として表示される。
図14は、上記手法に基づく部品撮像・認識処理の制御を示すフローチャートである。この図に示す処理は、図5のステップS7の部品撮像・認識処理であり、上述した図7、図8の処理の代わりに実施される。
つまり、図6の処理(ステップS33)後、制御装置30は、ヘッドカウンタをリセットし(ステップS111)、ヘッドカウンタの値をインクリメントした後(ステップS113)、図6のステップS23で取得した第1画像G1から上記角度θを求め(ステップS115)、その角度θだけヘッド16を回転させる(ステップS117)。
次に、制御装置30は、ヘッドカウンタの値がヘッド数(N)に等しいか、すなわち、全てのヘッド16について上記法線NLがZ−X平面上に位置するように角度θだけ部品を回転させる動作が終了したか否かを判定する(ステップS119)。ここでNOと判定した場合には、制御装置30は、処理をステップS113に移行し、次の部品の回転動作に移る。そして、最終的にステップS119でYESと判定すると、制御装置30は、第2撮像ユニット7Bによる部品の撮像処理を実行する(ステップS121)。具体的には、図1中の一点鎖線矢印に示すように、第1撮像ユニット7Aの上方を通過したヘッドユニット6をY方向(+Y側)にシフトさせた後、第2撮像ユニット7Bに向かってヘッドユニット6を逆方向(−X側から+X側に向かって)に移動させることにより、第2撮像ユニット7Bにより各ヘッド16に吸着され部品(角度θだけR方向に回転させた部品)を連続的に撮像し、各画像データ(第2画像)をヘッド16のヘッド番号と関連づけて記憶部32に記憶する。
次に、制御装置30は、ヘッドカウンタを一旦リセットし(ステップS123)、ヘッドカウンタの値をインクリメントした後(ステップS125)、当該カウンタ値に対応するヘッド番号のヘッド16に吸着されている部品(第n部品)の認識処理を実行し(ステップS127)、認識が成功したか否かを判定する(ステップS129)。ここでNOと判定した場合には、制御装置30は、ステップS133に処理を移行する。
一方、ステップS129でYESと判定した場合には、制御装置30は、図6のステップS23および上記ステップS121の撮像処理で取得された部品底面画像、具体的には、第1撮像ユニット7Aにより部品を真下から撮像したときの部品底面画像(第1画像G1)と、角度θだけR方向に回転させた部品を第2撮像ユニット7Bにより斜め下方から撮像した部品底面画像(第2画像G2)とに基づき、ヘッド16に対して部品が斜め吸着である否かの第1斜め吸着判定処理を実行する(ステップS131)。
第1斜め吸着判定処理が終了すると、制御装置30は、ヘッドカウンタの値がヘッド数(N)に等しいか、すなわち、全てのヘッド16の吸着部品について斜め吸着状態か否かの第1斜め吸着判定処理を実行したか否かを判定する(ステップS133)。ここで、NOと判定した場合には、制御装置30は、処理をステップS125に移行し、ステップS125〜S133の処理を繰り返すことにより、全ての吸着部品について第1画像G1と第2画像G2に基づく第1斜め吸着判定処理を実行し、最終的にステップS133でYESと判定すると、本フローチャートを終了し、処理を図5のステップS9に移行する。なお、ステップS127、S129、S131の各処理は、図7のステップS45、S47、S49の処理と基本的には同じであり、ここでは詳細説明は省略する。
このような第2実施形態の部品実装装置によれば、上記幾何学的変換処理のベースとなる画像として好適な画像を取得することができ、上述した90°姿勢の部品画像(第3画像G3)を取得することなく、部品の斜め吸着状態の判定を正確に行うことが可能となる。
なお、第1実施形態および第2実施形態の部品実装装置では、図9のステップS83、S85、図10のステップS95、S97における類似度合の評価に関し、当例では、パターンマッチングにより、例えば対応する辺長、対応するコーナ部の位置、対応するコーナ部の角度等の誤差を求めているが、その他、各画像の輪郭を比較してその大きさの相違いや比較される特定部分の位置誤差を求めるようにしてもよい。
また、第1実施形態では、下方から撮像した部品底面画像として、吸着姿勢の部品底面画像(第2画像G2)と90°姿勢の部品底面画像(第3画像G3)とを取得しているが、換言すれば、両画像を取得する際の垂直軸回りにおける部品の角度差は90°であるが、この角度差は90°は限定されるものではない。部品底面画像の比較に適した画像が取得できるように、部品の形状に応じて適宜選定すればよい。
上述した第1実施形態および第2実施形態の部品実装装置は、本発明に係る部品認識装置(部品移載装置)が適用された部品実装装置の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば第1実施形態および第2実施形態では、部品実装装置について説明したが、本発明に係る部品認識装置(部品移載装置)は、移載用ヘッドにより部品供給部から部品を吸着して取り出し、その部品の吸着状態を撮像ユニットにより撮像、認識した上で試験部に搬送し、当該試験部において通電試験等の各種試験を実施する、いわゆる部品試験装置についても適用可能である。このような部品検査装置についても、本発明を適用すれば、移載用ヘッドに吸着された部品を下方のみから撮像して部品の斜め吸着状態の有無を判別することになるので、上記部品実装装置と同様に、移載用ヘッドの動作の自由度を阻害することなく、部品の斜め吸着状態の有無を正確に判別することが可能になる。