JP2015172022A - 新規化合物及びこの化合物からなるリチウム二次電池の電解液用添加剤並びにこの添加剤を含有してなるリチウム二次電池の電解液 - Google Patents

新規化合物及びこの化合物からなるリチウム二次電池の電解液用添加剤並びにこの添加剤を含有してなるリチウム二次電池の電解液 Download PDF

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Abstract

【課題】電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性を向上させ、且つ過電圧防止及び電圧降下防止効果を有する化合物及びこの化合物からなるリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤並びにこの添加剤を含有してなるリチウム二次電池の電解液を提供する。【解決手段】以下の一般式(1)〜(3)で表される化合物群から選ばれる化合物とする。(R1X)2Z(X)(R2X) (1)(R1X)Z(X)(XR2)2(2)(R1X)3ZYZ(X)(XR2)2(3)(式中、R1及びR2はフッ素原子、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のアリル、置換または非置換のアルキルまたは置換または非置換のアミンであり、Zは5価の原子、Yは3価の原子、Xは2価の原子または部分的に結合に関与しない。)【選択図】なし

Description

本発明は、新規化合物及びこの化合物からなるリチウム二次電池の電解液用添加剤並びにこの添加剤を含有してなるリチウム二次電池の電解液に関する。
近年、携帯電話やパーソナルコンピューターといった電子製品の電源装置として、繰り返し充放電が可能な二次電池の需要が増加している。その中でも、高電圧化、小型化、軽量化が可能であるという点から、リチウム二次電池の開発が盛んである。従来よりリチウム二次電池の電池特性を向上させる目的で、電解液に種々の添加剤を混合することが試みられている(例えば、特許文献1及び2)。非水電解液の添加剤としては、ビニレンカーボネート(以下、VCと略記する。)、フルオロエチレンカーボネート(以下、FECと略記する。)やフルオロベンゼン(以下、FBと略記する。)等が用いられている。
しかしながら、従来の添加剤では、電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性の点で十分とはいえず、さらなる性能の向上が求められている。
特開2003−151621号公報 特開2003−031259号公報
本発明は、上述したような問題点を解決すべくなされたものであって、電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性を向上させ、且つ過電圧防止及び電圧降下防止効果を有する化合物及びこの化合物からなるリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤並びにこの添加剤を含有してなるリチウム二次電池の電解液を提供するものである。
請求項1に係る発明は、以下の一般式(1)〜(3)で表される化合物群から選ばれる化合物に関する。
(RX)Z(X)(RX) (1)
(RX)Z(X)(XR (2)
(RX)ZYZ(X)(XR (3)
(式中、R及びRはフッ素原子、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のアリル、置換または非置換のアルキルまたは置換または非置換のアミンであり、Zは5価の原子、Yは3価の原子、Xは2価の原子または部分的に結合に関与しない。)
請求項2に係る発明は、一般式(1)で表される化合物であって、R=Ph(フェニル基)、R=CHCF、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=Pである、下記式(4)で示される請求項1記載の化合物に関する。
請求項3に係る発明は、一般式(2)で表される化合物であって、R=Ph(フェニル基)、R=CHCF、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=Pである、下記式(5)で示される請求項1記載の化合物に関する。
請求項4に係る発明は、一般式(3)で表される化合物であって、R=Ph(フェニル基)またはF、R=CHCFまたはF、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=P、Y=Nである、下記式(6)で示される請求項1記載の化合物に関する。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4いずれかに記載の化合物を含有してなることを特徴とするリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤に関する。
請求項6に係る発明は、請求項5記載のリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤を含有してなるリチウムイオン二次電池の電解液に関する。
請求項1に係る発明によれば、上記一般式(1)〜(3)で表される化合物群から選ばれる化合物は、リチウムイオン二次電池の電解液用添加剤として好適に使用することができ、電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性を向上させ、且つ過電圧防止及び電圧降下防止効果を奏することができる。
請求項2に係る発明によれば、上記式(4)で示される化合物であることにより、リチウムイオン二次電池の電解液用添加剤として好適に使用することができ、電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性を向上させ、且つ過電圧防止及び電圧降下防止効果を奏することができる。
請求項3に係る発明によれば、上記式(5)で示される化合物であることにより、リチウムイオン二次電池の電解液用添加剤として好適に使用することができ、電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性を向上させ、且つ過電圧防止及び電圧降下防止効果を奏することができる。
請求項4に係る発明によれば、上記式(6)で示される化合物であることにより、リチウムイオン二次電池の電解液用添加剤として好適に使用することができ、電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性を向上させ、且つ過電圧防止及び電圧降下防止効果を奏することができる。
請求項5に係る発明によれば、請求項1乃至4いずれかに記載の化合物を含有してなることを特徴とするリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤であることにより、リチウムイオン二次電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性を向上させ、且つ過電圧防止及び電圧降下防止効果を奏することができる。
請求項6に係る発明によれば、請求項5記載のリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤を含有してなるリチウムイオン二次電池の電解液であることにより、リチウムイオン二次電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性を向上させ、且つ過電圧防止及び電圧降下防止効果を奏することができる。
化合物(A)を含有する電解液を用いたリチウム二次電池のサイクル特性及びその比較を示すグラフである。 化合物(B)を含有する電解液を用いたリチウム二次電池のサイクル特性を示すグラフであり、(a)及び(b)はそれぞれサイクル数と充放電容量との関係、(c)及び(d)はそれぞれサイクル数と充放電電圧との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係る新規化合物及びこの化合物からなるリチウム二次電池の電解液用添加剤並びにこの添加剤を含有してなるリチウム二次電池の電解液について説明する。
本発明に係る化合物は、以下の一般式(1)〜(3)で表される化合物群から選ばれる化合物である。
(RX)Z(X)(RX) (1)
(RX)Z(X)(XR (2)
(RX)ZYZ(X)(XR (3)
(式中、R及びRはフッ素原子、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のアリル、置換または非置換のアルキルまたは置換または非置換のアミンであり、Zは5価の原子、Yは3価の原子、Xは2価の原子または部分的に結合に関与しない。)
<化合物(A)の構造>
上記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(A)という)の具体例としては、R=Ph(フェニル基)、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=Pである化合物、例えば化合物(PhX)P(X)(RX)が挙げられ、この式中、Rは、CHCFCF,CH(CF,CHCFCFH等のフロオロアルコール、CHCHCH,CHCHCH等のアルコール類、フェノール類あるいはNH,NHCH,NHPh等のアミン類である。R=CHCFの場合の化合物(PhX)P(X)(XCHCF)は、下記式(4)で表される。
なかでも式(4)中、X=Oの場合の化合物(PhO)P(O)(OCHCF)(下記式(7)で表される化合物)が好適に用いられる。
<化合物(A)の物理的、化学的特性>
上記式(4)で表される化合物(A)は、常温で液体であり、水不溶で有機溶媒可溶である。
<化合物(A)の合成方法>
化合物(A)は、以下の方法で製造することができる。
(1)有機溶媒中に出発物質を添加し、溶媒の沸点付近まで加熱する。
(2)反応終了後、溶媒を留去し残部にクロロホルムと蒸留水を加え処理する。
(3)水層を希塩酸或いは硫酸で中和し、新しいクロロホルムで2〜3回抽出し1回目のクロロホルムと合わせ無水MgSOで脱水する。その後クロロホルムを留去する。
(4)次に、ろ液の溶媒を留去し残部をクロロホルムと蒸留水で処理し、クロロホルムを脱水乾燥する。乾燥後クロロホルムを回収する。
上記工程(1)において、上記式(7)で表される(PhO)P(O)(OCHCF)を製造する場合、出発物質としては(PhO)PClとHOCHCFが用いられる。その他の化合物(A)を製造する場合もこれに対応する出発物質が用いられる。
上記出発物質以外に、NaCO、KCOまたはEtNを有機溶媒中に添加する。
上記工程(3)において、必要があれば残部を真空蒸留或いはカラムクロマトで精製する。また、EtNを使用した時は反応終了後反応液をガラスフィルターでろ過する。
<化合物(A)の特定>
上記方法で得られた化合物(A)の分子量、元素分析値、及びH−及びP−NMRスペクトルから構造を特定した。
(結果)
及びCHに帰属されるシグナルが7.4ppm及び4.4ppmに観測された。また、P‐NMRでは、−10ppm付近にP‐OCに帰属されるシグナルが観測された。
分子量、元素分析値は以下の通りであった。
計算値:分子量322;P,9.63%;C,52.17%;H,3.73%.
実験値:分子量325;P,9.61%;C,52.2%;H,3.92%.
上記結果から、化合物(A)の構造は、上記式(7)で表される(PhO)P(O)(OCHCF)と特定された。
<化合物(B)の構造>
上記一般式(2)で表される化合物(以下、化合物(B)という)の具体例としては、R=Ph(フェニル基)、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=Pである化合物、例えば化合物PhXP(X)(XRが挙げられ、この式中、Rは、CHCFCF,CH(CF,CHCFCFH等のフロオロアルコール、CHCHCH,CHCHCH等のアルコール類、フェノール類あるいはNH,NHCH,NHPh等のアミン類である。R=CHCFの場合の化合物PhXP(X)(XCHCFは、下記式(5)で表される。
なかでも式(5)中、X=Oの場合の化合物PhOP(O)(OCHCF(下記式(8)で表される化合物)が好適に用いられる。
<化合物(B)の物理的、化学的特性>
上記式(5)で表される化合物(B)は、常温で液体であり、水不溶で有機溶媒可溶である。
<化合物(B)の合成方法>
化合物(B)は、以下の方法で製造することができる。
(1)有機溶媒中に出発物質を添加し、溶媒の沸点付近まで加熱する。
(2)反応終了後、溶媒を留去し残部にクロロホルムと蒸留水を加え処理する。
(3)水層を希塩酸或いは硫酸で中和し、新しいクロロホルムで2〜3回抽出し1回目のクロロホルムと合わせ無水MgSOで脱水する。その後クロロホルムを留去する。
(4)次に、ろ液の溶媒を留去し残部をクロロホルムと蒸留水で処理し、クロロホルムを脱水乾燥する。乾燥後クロロホルムを回収する。
上記工程(1)において、上記式(8)で表されるPhOP(O)(OCHCFを製造する場合、出発物質としてはPhOP(O)ClとHOCHCFが用いられる。その他の化合物(B)を製造する場合もこれに対応する出発物質が用いられる。
上記出発物質以外に、NaCO、KCOまたはEtNを有機溶媒中に添加する。
上記工程(3)において、必要があれば残部を真空蒸留或いはカラムクロマトで精製する。また、EtNを使用した時は反応終了後反応液をガラスフィルターでろ過する。
<化合物(B)の特定>
上記方法で得られた化合物(B)の分子量、元素分析値、及びH−及びP−NMRスペクトルから構造を特定した。
(結果)
及びCHに帰属されるシグナルが7.3ppm及び4.4ppmに観測された。また、P‐NMRでは、−9.8ppm付近にP‐OCに帰属されるシグナルが観測された。
分子量、元素分析値は以下の通りであった。
計算値:分子量348;P,8.90%;C,34.29%;H,2.59%.
実験値:分子量350;P,9.10%;C,34.80%;H,2.40%.
上記結果から、化合物(B)の構造は、上記式(8)で表されるPhOP(O)(OCHCFと特定された。
<化合物(C)の構造>
上記一般式(3)で表される化合物(以下、化合物(C)という)の具体例としては、R=Ph(フェニル基)またはF、R=CHCFまたはF、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=P、Y=Nである化合物、例えば(RX)P=NP(X)(XR(下記式(6)で表される化合物)が挙げられ、この式中、Rは、F,CHCFCF,CH(CF,CHCFCFH等のフロオロアルコール、CHCHCH,CHCHCH等のアルコール類、フェノール類あるいはNH,NHCH,NHPh等のアミン類である。
なかでも式(6)中、R=F、R=F、Xの一部がOであり一部が結合に関与しない場合の化合物FP=NP(O)F(下記式(9)で表される化合物)が好適に用いられる。
<化合物(C)の合成方法>
化合物(C)は、以下の方法で製造することができる。
(1)出発物質をニトロベンゼン或いはアセトニトリルに溶解し、NaF或いはKFとをそれぞれの沸点付近の温度で撹拌しながら反応後ガラスフィルターでろ過する。
上記工程(1)において、上記式(6)で表されるFP=NP(O)Fを製造する場合、出発物質としてはClPN=P(O)Clが用いられ、この出発物質は例えばPClと(NHSOとの反応により得ることができる。その他の化合物(C)を製造する場合もこれに対応する出発物質が用いられる。
<化合物(C)の特定>
上記方法で得られた化合物(C)の分子量、元素分析値、及びH−及びP−NMRスペクトルから構造を特定した。
(結果)
PF及びP(O)Fに帰属されるピークが−2ppm及び−12ppm付近に観測された。
分子量、元素分析値は以下の通りであった。
計算値:分子量184;P,33.16%;N,7.49%.
実験値:分子量198;P,34.20%;N,7.68%.
上記結果から、化合物(C)の構造は、上記式(6)で表されるPFP=NP(O)Fと特定された。
<リチウムイオン二次電池の電解液用添加剤、リチウムイオン二次電池の電解液>
本発明に係るリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤(以下、添加剤という)は、上記一般式(1)〜(3)で表される化合物群から選ばれる化合物(化合物(A)、(B)及び(C))を含有してなる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の電解液は、上記リチウムイオン二次電池の電解液用添加剤を含有してなる。
本発明に係る電解液は、上記添加剤の他に、非水溶媒、電解質を含有する。
非水溶媒としては、通常の電解液に用いられているものが使用でき、例えば、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ラクトン化合物、ニトリル化合物、アミド化合物等及びこれらの混合物を用いることができる。
非水溶媒の含有量は、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から、電解液の全重量に対し20〜99重量%とすることが好ましい。
電解質としては、通常の電解液に用いられているものが使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩が挙げられる。
電解液中の電解質の濃度は、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から、0.01〜3mol/Lとすることが好ましい。
本発明の電解液用添加剤の添加量は、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から、電解液の全重量に対し0.1〜30重量%とすることが好ましい。
本発明の電解液には、必要に応じてその他の添加剤を添加することができる。本発明に係る添加剤と、VC、FEC又はFBとを併用することにより、電池の耐久性、高温特性及びサイクル特性をさらに向上させることが可能となる。
本発明の電解液の調製方法については特に限定はなく、非水溶媒に電解質、本発明の電解液用添加剤及びその他の添加剤を溶解させて調製することができる。
以下、本発明の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。しかし、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、得られる化合物の組成・構造の同定等は、次の手法により行った。
(I)H−NMR(核磁気共鳴分光法):Buruker AC400(機器名)を用いて、テトラメチルシラン(TMS)を含む重水素化溶媒中で測定した。
(II)31P−NMR(核磁気共鳴分光法):Buruker AC400(機器名)を用いて、テトラメチルシラン(TMS)を含む重水素化溶媒中で測定した。
(III)元素分析:PerkinElmer2400(機器名)を用いて、炭素、水素、窒素及びリン元素の定量分析を行った。
<実施例1>:(化合物A)(RX)Z(X)(RX)
(PhO)ClとHOCHCFと、NaCO或いはKCOまたはEtNをTHFまたはジオキサン溶媒に入れ、それぞれの溶媒の沸点付近の温度に加温し24時間撹拌する。反応終了後、溶媒を留去し残部にクロロホルムと蒸留水を加え処理する。水層は希塩酸或いは硫酸で中和し、新しいクロロホルムで2〜3回抽出し1回目のクロロホルムと合わせ無水MgSOで脱水する。その後クロロホルムを留去する。次にろ液の溶媒を留去し残部をクロロホルムと蒸留水で処理し、クロロホルムを脱水乾燥する。乾燥後クロロホルムを回収する。分離精製された化合物をH‐及びP‐NMRで調べた結果、C及びCHに帰属されるシグナルが7.4ppm及び4.4ppmに観測された。また、P‐NMRでは、−10ppm付近にP‐OCに帰属されるシグナルが観測された。分子量及び元素分析値及びH‐或いはP‐NMRの結果から、化合物(A)は(PhO)P(O)(OCHCF)の組成の化合物であることを確認した。
<実施例2>:(化合物B)(RX)Z(X)(XR
PhOP(O)ClとHOCHCFを化合物(A)と同じ方法で反応させ化合物(B)を分離精製した。また、H‐及びP‐NMR及び分子量と元素分析等の結果から、化合物(B)はPhOP(O)(OCHCFであることを確認した。
<実施例3>:(化合物C)(RX)ZYZ(X)(XR
化合物(C)の出発物質ClPN=P(O)Clはjaeger等の方法を参考にし、PClと(NHSOとの反応で合成した。この化合物をニトロベンゼン或いはアセトニトリルに溶解し、NaF或いはKFを添加し、それぞれの沸点付近の温度で撹拌しながら5−8時間反応後ガラスフィルターでろ過し、残部をXRDで調べた結果、26,41及び50°また32,45及び58°付近にKCl及びNaClに帰属される回折線が観測された。KCl及びNaClの生成が確認されたので、ClのFによる置換が進行している。ろ液の溶媒を留去した。残部をP‐NMRで調べた結果、PF及びP(O)Fに帰属されるピークが−2ppm及び−12ppm付近に観測された。分子量、元素分析値及びP‐NMRから、化合物(C)はFP=NP(O)Fであることを確認した。
<化合物(A)の評価>
正極LiCoO(日本化学工業製)、負極SCMG(昭和電工製)、また電解液としてEC/EMC/DMC=3/2/5混合溶媒に1M LiPFを溶解したものを使用した。この電解液に化合物(A)をそれぞれ0.5%、1.0%、2.0%添加した電解液、及びVC0.5%を添加した電解液、及びVC0.5%と化合物(A)0.5%とを添加した電解液、添加剤無しの電解液を用いたリチウム二次電池のサイクル特性を調べた。結果を図1に示す。
図1に示す如く、化合物(A)を電解液に添加することによって、サイクル特性が向上することがわかる。化合物(A)とVCとを併用することにより、サイクル特性がさらに向上することがわかる。
<化合物(B)の評価>
正極LiCoO(日本化学工業製)、負極MAG(日立化成工業製)、また電解液としてEC/DMC/EMC=3/2/5混合溶媒に1M LiPFを溶解したものを使用した。この電解液に化合物(B)を2%添加した電解液、化合物(B)とVCとを添加した電解液、及び添加剤無しの電解液を用いたリチウム二次電池のサイクル特性を調べた。結果を図2に示す。
図2に示す如く、化合物(B)を電解液に添加することによって、サイクル特性が向上することがわかる。化合物(B)とVCとを併用することにより、サイクル特性がさらに向上することがわかる。
化合物(B)とVCとを併用した際のサイクル特性を下記表1に示す。
化合物(B)とVCとを併用すると、サイクル数が増加するに従い電気性能は無添加よりも良好であり、電池の耐久性が改善されていることがわかる。
<化合物(C)の評価>
正極LiCoO(日本化学工業製)、負極MAG(日立化成工業製)、また電解液としてEC/EMC=1/2混合溶媒に5% LiPFを溶解したものを使用した。この電解液に化合物(C)を5%添加した電解液、及び添加剤無しの電解液を用いたリチウム二次電池のサイクル特性を調べた。その結果をそれぞれ下記表2及び3に示す。
表2及び3から、化合物(C)を添加した電解液の容量維持率は、無添加と比較して向上していることがわかる。
本発明は、リチウム二次電池の電解液の添加剤として好適に利用されるものである。

Claims (6)

  1. 以下の一般式(1)〜(3)で表される化合物群から選ばれる化合物。
    (RX)Z(X)(RX) (1)
    (RX)Z(X)(XR (2)
    (RX)ZYZ(X)(XR (3)
    (式中、R及びRはフッ素原子、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のアリル、置換または非置換のアルキルまたは置換または非置換のアミンであり、Zは5価の原子、Yは3価の原子、Xは2価の原子または部分的に結合に関与しない。)
  2. 一般式(1)で表される化合物であって、R=Ph(フェニル基)、R=CHCF、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=Pである、下記式(4)で示される請求項1記載の化合物。
  3. 一般式(2)で表される化合物であって、R=Ph(フェニル基)、R=CHCF、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=Pである、下記式(5)で示される請求項1記載の化合物。
  4. 一般式(3)で表される化合物であって、R=Ph(フェニル基)またはF、R=CHCFまたはF、X=OまたはSあるいは部分的に結合に関与せず、Z=P、Y=Nである、下記式(6)で示される請求項1記載の化合物。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載の化合物を含有してなることを特徴とするリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤。
  6. 請求項5記載のリチウムイオン二次電池の電解液用添加剤を含有してなるリチウムイオン二次電池の電解液。
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