JP2015171723A - 鋳型の製造方法、鋳型形成用スラリー、および、鋳型 - Google Patents
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Abstract
Description
この発明の第一態様によれば、鋳型の製造方法は、水に分散されることでスラリー化する水酸化物を、前記水に分散させて水性スラリーを生成するスラリー生成工程と、ワックス型の表面に前記水酸化物よりも粒子径の小さい前記水性スラリーを付着させてスラリー層を形成するスラリー層形成工程と、前記スラリー層の表面に耐火材の粒子を付着させてスタッコ層を形成するスタッコ層形成工程と、前記スラリー層、および、前記スタッコ層を乾燥させる乾燥工程と、を含む。
このように構成することで、耐火物よりも粒子径の小さい酸化物からなる緻密な酸化物層を形成することができる。そのため、鋳型の強度を高めることができる。さらに、緻密な酸化物層を形成できるため、鋳型から鋳物を取り出す際には、酸化物に対して均一に水分を供給することができる。そのため、水和反応により、酸化物を相対的に強度の低い水酸化物に均一に戻すことができる。酸化物層が部分的に水和されることを抑制できるため、酸化物層を局所的ではなく全体的に水和膨張させることができる。また、酸化物層が緻密に形成されていることで、水和膨張の際に逃げ場がなくなり、鋳型を円滑且つ確実に自己崩壊させることができる。
このように構成することで、緻密な酸化物層と、酸化物層よりも粗いスタッコ層とを交互に積層させた鋳型を製造することができる。これにより、緻密な酸化物層の間にスタッコ層により粗い層が形成されるとともに、スタッコ層が吸水性を有するため、鋳型の厚さ方向でより均一に水分を供給することができる。その結果、厚さ方向でも鋳型を均一に水和膨張させて、鋳型をより確実に自己崩壊させることができる。
このように構成することで、水性スラリーを乾燥させると、酸化物である少なくとも酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および、酸化ランタンの何れか一つからなる緻密な層を形成することができる。
この鋳型形成用スラリーによって、緻密な酸化物層を容易に形成することができる。
このように構成することで、酸化物層に対して均一に水を供給することができる。また、酸化物層に対して均一に水を供給することで、酸化物層を均一に水和膨張させることができる。さらに、水酸化物を水に分散させた水性スラリーを乾燥させて酸化物層が形成されているので、酸化物層を緻密に形成することができる。そのため、酸化物層に水分を供給することで、十分に水和膨張させることができる。その結果、鋳型を円滑に自己崩壊させて、欠陥を生じさせることなく鋳物を容易に取り出すことができる。
このように構成することで、酸化物層に水を供給することで、水和反応により、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および、水酸化ランタンに戻して、酸化物よりも強度を低下させるとともに十分に水和膨張させることができる。
この実施形態の鋳型形成用スラリー(以下、単にスラリーと称する)は、分散媒としての水と、水に分散される水酸化物と、を備えている。水酸化物は、分散媒である水に分散されることでスラリー化して水性スラリーとなる水酸化物である。水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および、水酸化ランタンを例示できる。
分散剤は、分散媒としての水に対して、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ランタンを均一に分散させるために添加する。例えば、分散剤として、ポリカルボン酸を用いることができる。ここで、スラリーには、水酸化物の粒子径(例えば、10μmから50μm)よりも大きい粒子径を有する耐火材の粒子は混合されていない。また、スラリー中に含まれる水酸化物の割合は、30重量%以上が好ましく、50重量%以上が更に好ましい。
図1に示すように、この実施形態における鋳型1は、ワックス型2の表面2aに酸化物層3、および、スタッコ層4が交互に積層されて形成されている。
酸化物層3は、上述したスラリーを乾燥させたものからなる。
スタッコ層4は、酸化物層3の表面3aに付着した耐火材の粒子5により形成される。耐火材の粒子5としては、ムライト、アルミナ等のスタッコと称される粗粒(粒子径が0.2から1.0mm)を例示できる。耐火材の粒子径は、上述したスラリーの水酸化物の粒子径よりも遥かに大きい。
次に、この実施形態における鋳型の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図2は、この発明の実施形態における鋳型の製造方法のフローチャートである。
この実施形態の鋳型製造方法は、予めワックス型2を射出成型等により形成する。具体的には、まず、中子材が埋め込まれた金型にろうを流し込む。次いで、金型を外し、中子材の外側がろうで覆われたろう成形部品を金型から取り出す。その後、ろう成形部品にろう成形の湯口とセキを取り付けて、ワックス型2とする。
次いで、スラリー層形成工程として、ワックス型2をスラリーに浸漬させた後、引きあげてワックス型2の表面2aにスラリー層を形成する(ステップS02)。
その後、乾燥工程として、スラリー層とスタッコ層4とが積層されたワックス型2を乾燥室に入れて、例えば2時間程度乾燥させる。上記スラリー層形成工程、スタッコ層形成工程、および、乾燥工程からなる一連の工程を一回行うことで、0.5〜2mm程度の層がワックス型2の表面2aに形成される。
これらスラリー層形成工程、スタッコ層形成工程、および、乾燥工程からなる一連の工程は、所定回数(例えば、数回から十数回)繰り返される(ステップS05)。
中子除去工程は、湯口とセキを切断して、仕上げ作業を行った後、得られた合金を高温アルカリ溶液の中に入れる。高温アルカリ溶液は、例えば、約180℃の温度に熱した約40〜50wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)の溶液を用いることができる。この溶液に上記合金を約12〜24時間に亘って浸し、加圧・減圧を繰り返す。これにより、合金内の中子材と、中子材の表面上のコーティングとが溶出されて、合金からなる中空構造のタービン翼を得ることができる。タービン翼は、サンドブラストやグラインダーにより仕上げを行い、寸法検査、ザイグロ検査、X線検査等を行う。
[実施例1]
まず、水酸化物として水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、分散剤としてポリカルボン酸、分散媒として水を用いてスラリー化した。さらに、濡れ改善剤としてビクターウェット12、消泡剤としてANTIFOAM1410をそれぞれ添加して鋳型形成用の水性スラリーとした。
その後、150℃のオートクレーブによりワックス型を除去し、980℃で焼成して鋳型を得た。この時点で、スラリー層を形成していた水酸化カルシウムは水を失い、酸化カルシウム(CaO)の酸化物層となった。
冷却後、鋳型に水を吹きつけると、酸化カルシウムが水酸化カルシウムに戻り、鋳型が水和膨張により自己崩壊した。
また、別の方法として、冷却後、鋳型に水を吹き付けずに、相対湿度60%以上の部屋に放置した。すると、時間はかかるものの、水を吹き付けた場合と同様に鋳型が自己崩壊した。
これにより、鋳型にハンマー打撃などの衝撃を加えることなく鋳物を容易に取り出すことができた。
水酸化物として水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、分散剤としてポリカルボン酸、分散媒として水を用いてスラリー化した。さらに、濡れ改善剤としてビクターウェット12、消泡剤としてANTIFOAM1410を添加して鋳型形成用の水性スラリーとした。
その後、150℃のオートクレーブによりワックス型を除去し、980℃で焼成して鋳型を得た。この時点で、スラリー層を形成していた水酸化マグネシウムは水を失い、酸化マグネシウム(MgO)の酸化物層となった。
冷却後、鋳型に水を吹きつけると、酸化マグネシウムが水酸化マグネシウムに戻り、鋳型が水和膨張により自己崩壊した。
また、別の方法として、冷却後、鋳型に水を吹き付けずに、相対湿度60%以上の部屋に放置した。すると、時間はかかるものの、水を吹き付けた場合と同様に鋳型が自己崩壊した。
これにより、鋳型にハンマー打撃などの衝撃を加えることなく鋳物を容易に取り出すことができた。
水酸化物として水酸化ランタン(La(OH)2)、分散剤としてポリカルボン酸、分散媒として水を用いてスラリー化した。さらに、濡れ改善剤としてビクターウェット12、消泡剤としてANTIFOAM1410を添加して鋳型形成用の水性スラリーとした。
その後、150℃のオートクレーブによりワックス型を除去し、980℃で焼成して鋳型を得た。この時点で、スラリー層を形成していた水酸化ランタンは水を失い、酸化ランタン(LaO)の酸化物層となった。
冷却後、鋳型に水を吹きつけると、酸化ランタンが水酸化ランタンに戻り、鋳型が水和膨張により自己崩壊した。
また、別の方法として、冷却後、鋳型に水を吹き付けずに、相対湿度70%以上の部屋に放置した。すると、時間はかかるものの、水を吹き付けた場合と同様に鋳型が自己崩壊した。
これにより、鋳型にハンマー打撃などの衝撃を加えることなく鋳物を容易に取り出すことができた。
シリカゾルにジルコンフラワーを分散させてスラリー化した。さらに、濡れ改善剤としてビクターウェット12、消泡剤としてANTIFOAM1410を添加して鋳型形成用の水性スラリーとした。
その後、150℃のオートクレーブによりワックス型を除去し、900〜1200℃で焼成して鋳型を得た。
冷却後、鋳型にハンマー打撃などの衝撃を繰り返し加えて鋳型を破壊して鋳物を取り出した。鋳型から取り出した鋳物を検査したところ欠陥が見つかった。
水酸化カルシウム(Ca(OH)2)とスタッコとを、分散剤としてポリカルボン酸、分散媒として水を用いて分散させてスラリー化した。さらに、濡れ改善剤としてビクターウェット12、消泡剤としてANTIFOAM1410を添加して鋳型形成用の水性スラリーとした。
その後、150℃のオートクレーブによりワックス型を除去し、980℃で焼成して鋳型を得た。この時点で、水酸化カルシウムは水を失い、酸化カルシウム(CaO)の酸化物層となった。
冷却後、鋳型に水を吹きつけると、酸化カルシウムが水酸化カルシウムに戻り、鋳型が水和膨張した。しかし、その膨張が十分ではなく、自己崩壊にまでは至らなかった。そのため、鋳型にハンマー打撃、カッターで切断するなど物理的な破壊力を用いて、鋳物を取り出した。
また、酸化物層に水を供給することで、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および、水酸化ランタンに戻すことができる。そのため、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および、水酸化ランタンを水性スラリーの原料として再利用できる。
2 ワックス型
2a 表面
3 酸化物層
3a 表面
4 スタッコ層
5 耐火物の粒子
Claims (6)
- 水に分散されることでスラリー化する水酸化物を、前記水に分散させて水性スラリーを生成するスラリー生成工程と、
ワックス型の表面に前記水性スラリーを付着させてスラリー層を形成するスラリー層形成工程と、
前記スラリー層の表面に前記水酸化物よりも粒子径の小さい耐火材の粒子を付着させてスタッコ層を形成するスタッコ層形成工程と、
前記スラリー層、および、前記スタッコ層を乾燥させる乾燥工程と、を含む鋳型の製造方法。 - 前記スラリー層形成工程と、前記スタッコ層形成工程と、前記乾燥工程との一連の工程を複数回繰り返す請求項1に記載の鋳型の製造方法。
- 前記水酸化物は、
少なくとも水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および、水酸化ランタンの何れか一つである請求項1または2に記載の鋳型の製造方法。 - 請求項1から3の何れか一項に記載の鋳型の製造方法で用いられる鋳型形成用スラリー。
- 水に分散されることでスラリー化する水酸化物の水性スラリーを乾燥させてなる酸化物層と、
前記水酸化物の粒子径よりも大きい耐火材の粒子を前記水性スラリーに積層して形成されるスタッコ層と、
備える鋳型。 - 前記水酸化物は、
少なくとも水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、および、水酸化ランタンの何れか一つである請求項5に記載の鋳型。
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