そこで、大きな外力が作用した場合にも棒状部材からの脱落を有効に抑制することができる長尺体支持具の実現が望まれる。
本発明に係る長尺体支持具は、
吊り下げ状態で設置される棒状部材に対して係止され、長尺体を横架姿勢で支持する長尺体支持具であって、
湾曲形成された受け部にて前記長尺体を支持する支持部と、
前記棒状部材の軸芯方向の互いに異なる位置で前記棒状部材に係止される第一係止部及び第二係止部と、
前記支持部に対して揺動可能に連結され、前記支持部に貫通形成された開口部に揺動端部が挿脱されることによって前記長尺体の配設空間を開閉自在な蓋部と、
前記支持部における前記開口部の側方周辺領域の少なくとも一部を覆うように配置される補強部と、
を備える。
この構成によれば、支持部に対して揺動可能に連結された蓋部の揺動端部を支持部に貫通形成された開口部に挿脱することで、蓋部を自在に開閉して長尺体の出し入れを適切に行うことができる。そして、支持部の受け部で長尺体を支持しつつ第一係止部及び第二係止部を棒状部材に係止させることで、長尺体を横架姿勢で適切に吊り支持することができる。
ここで、上記のように支持部に開口部が貫通形成されている場合、当該支持部における開口部の側方周辺領域は他の部位に比べて強度的に劣る。そこで、上記の構成では、長尺体支持具に、支持部における開口部の側方周辺領域の少なくとも一部を覆う補強部をさらに備えさせている。このため、例えば地震等によって大きな外力が作用した場合であっても、相対的に強度の低い開口部の側方周辺領域において、支持部が損傷を受ける可能性を低減できる。従って、大きな外力が作用した場合にも、棒状部材からの長尺体支持具の脱落を有効に抑制することができる。
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
1つの態様として、前記第二係止部と、前記支持部における前記開口部の形成領域よりも前記軸芯方向で前記第二係止部側に位置する固定領域にて前記支持部に固定される第一被固定部と、を有する屈曲板状の支持補助体を備え、前記補強部が、前記第一被固定部よりも前記軸芯方向で前記第一係止部側に向かって延びるように前記支持補助体と一体的に形成されていると好適である。
この構成によれば、長尺体支持具に第二係止部を備えさせるための支持補助体の簡単な構造の改変によって補強部を構成することができる。よって、簡易かつ低コストに、棒状部材からの長尺体支持具の脱落を有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記支持補助体に対して重複状態で当該支持補助体を介して前記支持部に固定される第二被固定部と、当該第二被固定部との境界部を基点とする弾性変形によって前記第二被固定部に対して相対変位可能で前記蓋部の前記揺動端部に係止される係止板部と、を有する弾性板状部材をさらに備え、前記係止板部が、前記開口部と前記側方周辺領域の一部とに亘って重複するように配置されているとともに、前記補強部が、前記側方周辺領域のうち、前記係止板部と重複する領域を避けて配置されていると好適である。
この構成によれば、弾性変形によって第二被固定部に対して相対変位する係止板部が蓋部の揺動端部に係止されることで、蓋部を閉止姿勢で係合保持することができる。よって、外力の作用等によって不用意に支持具本体から長尺体が離脱するのを抑制することができる。この場合において、補強部が、支持部における開口部の側方周辺領域において、弾性板状部材の係止板部と重複しないように配置されるので、第二被固定部に対して相対変位する係止板部の動作範囲が、追加的に設けられる補強部の存在によって制約されない。よって、大きな外力が作用した場合にも、支持具本体からの長尺体の離脱を抑制しつつ、棒状部材からの長尺体支持具の脱落を有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記第二係止部と、前記支持部における前記開口部の形成領域よりも前記軸芯方向で前記第二係止部側に位置する固定領域にて前記支持部に固定される第一被固定部と、を有する屈曲板状の支持補助体と、前記支持補助体に対して重複状態で当該支持補助体を介して前記支持部に固定される第二被固定部と、前記第二被固定部との境界部を基点とする弾性変形によって前記第二被固定部に対して相対変位可能で前記蓋部の前記揺動端部に係止される係止板部、及び、前記第二被固定部から起立形成されて前記棒状部材を圧接付勢する付勢板部のうちの少なくとも一方と、を有する弾性板状部材と、を備え、前記補強部が、前記第二被固定部よりも前記軸芯方向で前記第一係止部側に向かって延びるように前記弾性板状部材と一体的に形成されていると好適である。
この構成によれば、弾性板状部材が係止板部を有する場合には、弾性変形によって第二被固定部に対して相対変位する係止板部が蓋部の揺動端部に係止されることで、蓋部を閉止姿勢で係合保持することができる。よって、外力の作用等によって不用意に支持具本体から長尺体が離脱するのを抑制することができる。また、弾性板状部材が付勢板部を有する場合には、付勢板部が棒状部材を圧接付勢することで、長尺体支持具を棒状部材に対してガタツキのない状態で簡便に取り付けることができる。そして、係止板部及び付勢板部のうちの少なくとも一方を長尺体支持具に備えさせるための弾性板状部材の簡単な構造の改変によって補強部を構成することができる。よって、簡易かつ低コストに、棒状部材からの長尺体支持具の脱落を有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記補強部が、前記支持部を構成する板状部材における表面と側面との両方を覆うように、断面L字状に屈曲形成されていると好適である。
この構成によれば、断面L字状に屈曲形成することで、補強部自体の強度を高めることができる。よって、より大きな外力に対しても、棒状部材からの長尺体支持具の脱落を有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記補強部が、前記側方周辺領域の少なくとも一部を覆う状態で前記支持部に対して定位された屈曲板状の補強部材によって構成されていると好適である。
この構成によれば、従来からある長尺体支持具に対して後付けされる屈曲板状の補強部材によって補強部を構成することができる。よって、比較的単純な部材の追加により、簡易かつ低コストに、棒状部材からの長尺体支持具の脱落を有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記補強部材は、前記第一係止部に取り付けられる第一取付部と、前記第二係止部に取り付けられる第二取付部と、前記第一取付部と前記第二取付部とを接続する接続部とを有し、前記接続部が、前記支持部を構成する板状部材に対して交差する状態で、前記側方周辺領域の一部に当接して配置される交差被覆部を含むと好適である。
この構成によれば、交差被覆部を側方周辺領域の一部に交差状態で当接させることで、支持部の側方周辺領域における変形に対する抵抗力を高めることができる。よって、支持部が損傷を受ける可能性を有効に低減でき、棒状部材からの長尺体支持具の脱落を有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記第一取付部が、前記第一係止部に係止された前記棒状部材の当該第一係止部からの脱離を抑止する第一脱離抑止部を含むと好適である。
この構成によれば、支持部に対して補強部材を定位させるための第一取付部の一部を利用して、第一係止部に係止された棒状部材が当該第一係止部から脱離するのを抑制することができる。よって、支持部が損傷を受けにくくなることと合わせて、棒状部材からの長尺体支持具の脱落をさらに有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記第二取付部が、前記第二係止部に係止された前記棒状部材の当該第二係止部からの脱離を抑止する第二脱離抑止部を含むと好適である。
この構成によれば、支持部に対して補強部材を定位させるための第二取付部の一部を利用して、第二係止部に係止された棒状部材が当該第二係止部から脱離するのを抑制することができる。よって、支持部が損傷を受けにくくなることと合わせて、棒状部材からの長尺体支持具の脱落をさらに有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記棒状部材を前記第一係止部及び前記第二係止部側に圧接付勢する付勢板部を備え、前記補強部材は、前記付勢板部が前記棒状部材を付勢する方向とは反対の反付勢方向側から前記付勢板部を当接支持する当接支持部を有すると好適である。
この構成によれば、第一係止部及び第二係止部が棒状部材に係止された状態で、付勢板部によって棒状部材を両係止部に圧接付勢するので、長尺体支持具を棒状部材に対してガタツキのない状態で簡便に取り付けることができる。また、その付勢板部を、補強部材の当接支持部で反付勢方向側から当接支持することで、大きな外力が作用した場合にも、棒状部材に対して長尺体支持具がガタツキなく取り付けられた状態を適切に維持できる。よって、棒状部材からの長尺体支持具の脱落をさらに有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記第一係止部及び前記第二係止部に対して前記棒状部材を圧接付勢する付勢手段と、前記棒状部材から、前記第一係止部及び前記第二係止部のうちの少なくとも一方である特定係止部が前記付勢手段の圧接付勢力に抗して離脱移動することを阻止する離脱阻止手段と、をさらに備えると好適である。
この構成によれば、第一係止部及び第二係止部が棒状部材に係止された状態で、付勢手段によって棒状部材を両係止部に圧接付勢するので、長尺体支持具を棒状部材に対してガタツキのない状態で簡便に取り付けることができる。また、大きな外力が作用した場合にも、離脱阻止手段により、付勢手段の圧接付勢力に抗して特定係止部が棒状部材から離脱移動するのを抑制することができる。従って、棒状部材からの長尺体支持具の脱落をさらに有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記離脱阻止手段が、前記棒状部材からの前記特定係止部の離脱移動を阻止する離脱阻止状態と、前記棒状部材からの前記特定係止部の脱着操作を許容する阻止解除状態と、に切替自在に構成されていると好適である。
この構成によれば、離脱阻止手段を阻止解除状態とすることにより、特定係止部を付勢手段の圧接付勢力に抗して押し込み操作する必要はあるものの、棒状部材に対して特定係止部を簡便に係止操作することができる。よって、棒状部材に対して長尺体支持具を簡便に取り付けることができる。一方、棒状部材に長尺体支持具が取り付けられた後は、離脱阻止手段を離脱阻止状態とすることにより、上述したように特定係止部が棒状部材から離脱移動することを抑制することができ、棒状部材からの長尺体支持具の脱落を有効に抑制することができる。
1つの態様として、前記蓋部を閉止姿勢で係合保持する蓋ロック手段をさらに備え、前記離脱阻止手段が、前記蓋ロック手段の係合動作に連係して前記離脱阻止状態となり、かつ、前記蓋ロック手段の係合解除動作に連係して前記阻止解除状態となるように構成されていると好適である。
この構成によれば、蓋ロック手段の係合動作及び係合解除動作に連係して、離脱阻止手段の離脱阻止状態と阻止解除状態とが切り替えられる。よって、蓋部の閉止操作を利用して、離脱阻止手段を適切なタイミングで離脱阻止状態に切り替えることができる。また、蓋部の開き操作を利用して、離脱阻止手段を適切なタイミングで阻止解除状態に切り替えることができる。
1つの態様として、前記蓋ロック手段が、前記蓋部における前記揺動端部に形成された係合片と、前記支持部における前記棒状部材に臨む側の面に設けられ、前記開口部に挿入状態で係合された前記係合片に係止される前記係止板部と、を有して構成され、前記係止板部を、前記係合片の前記開口部への挿入に伴って前記棒状部材側に突出変位する構成とし、前記係合片と前記係止板部とにより前記離脱阻止手段が構成されていると好適である。
この構成によれば、離脱阻止手段を構造面及びコスト面で有利に構成することができる。つまり、蓋ロック手段を構成する係止板部が支持部における棒状部材に臨む側の面に設けられていることを利用して、この係止板部を係合片の開口部への挿入に伴って棒状部材側に突出変位させるという簡単な改変により、離脱阻止手段を低コストに構成することができる。
以上が、本願において権利付与を求める範囲である。
〔第1の実施形態〕
本発明に係る長尺体支持具の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る長尺体支持具1は、吊り下げ状態で設置される棒状部材6に対して係止され、長尺体7を横架姿勢で支持するための器具である。本実施形態に係る長尺体支持具1は、以下の点によって特徴付けられる。すなわち、長尺体支持具1は、長尺体7を支持する支持部21と、棒状部材6に係止される第一係止部24及び第二係止部33と、支持部21に貫通形成された開口部22に揺動端部26bが挿脱されることによって長尺体配設空間Pを開閉自在な蓋部26とを備える。そして、長尺体支持具1は、支持部21における開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆うように配置される補強板部38をさらに備える。これにより、大きな外力が作用した場合にも、棒状部材6からの長尺体支持具1の脱落を有効に抑制することができる。以下、本実施形態に係る長尺体支持具1について、詳細に説明する。
なお、以下の説明では、棒状部材6の延在方向を「上下方向」又は「軸芯方向」と言い、この軸芯方向から見た状態を「平面視」と言う。また、図4のように支持部21に形成された開口部22に対して正対する側から見た状態を「正面視」と言い、図2のように長尺体7の延在方向から見た状態を「側面視」と言う。また、正面視における手前側(図2における左側)を「正面側」と言い、奥側(図2における右側)を「背面側」と言う。また、「幅方向」と言う場合には、正面視での幅方向であるものとする。
図1及び図2に、本実施形態に係る長尺体支持具1を用いた長尺体7の支持構造を示す。これらの図に示すように、長尺体支持具1は、吊り下げ状態で設置される棒状部材6に対して係止され、長尺体7を横架姿勢で支持する。棒状部材6は、その上端部が躯体に固定されることで吊り下げ状態で設置されている。このような棒状部材6としては、例えばその外周面にネジ部62(図2を参照)を有する吊りボルト61を用いることができる。長尺体支持具1による支持対象となる長尺体7は、例えば冷媒経路を形成する金属製の配管部材71と、その周囲を被覆する断熱材72(ウレタンフォームやグラスウール等で構成可能)とを有するものである。
なお、図示は省略しているが、長尺体7の延在方向に沿う複数箇所に、所定間隔を隔てて複数の吊りボルト61が設置されている。長尺体7は、それぞれの吊りボルト61に取り付けられた長尺体支持具1により、延在方向の全体に亘って吊り支持されている。
図1〜図3に示すように、長尺体支持具1は、支持具本体2と支持補助体3と弾性板状部材4とを主要な構成要素として備えている。これらは、それぞれに貫通形成された連結孔23,32,42に挿通されるリベット等の固着手段を用いて、一体化されている。
支持具本体2は、金属製の板状部材で構成されている。支持具本体2は、支持部21と第一係止部24と蓋部26とを有する。支持部21は、長尺体7を支持するための中核として機能する。支持部21は、長尺体7の正面側を上下方向に沿って平板状に延びる第一平板部21Aと、長尺体7の下方において断面円弧状に湾曲する湾曲板部21Bと、長尺体7の背面側を上下方向に沿って平板状に延びる第二平板部21Cとを含む。第一平板部21Aの上端側には、蓋部26の揺動端部26bが挿脱される開口部22が貫通形成されている。この開口部22の周辺領域であって、かつ、当該開口部22の側方(幅方向の両側)に規定される領域を、本実施形態では「側方周辺領域LP」と称する(図3を参照)。なお、第一平板部21Aにおける開口部22よりもさらに下方側の領域は、支持補助体3が固定される領域となっており、当該領域を本実施形態では「固定領域F」と称する(図3を参照)。
また、支持部21は、第二平板部21Cの上端部にループ状に屈曲形成された連結片21Dを含む。この連結片21Dには、蓋部26の揺動支点孔部26aがヒンジ連結されている。第一平板部21A、湾曲板部21B、第二平板部21C、及び連結片21Dは、一体的に形成されている。これらは、側面視で全体として略J字状を呈するように構成されており、その内部に、長尺体7が配設される空間である長尺体配設空間Pが形成されている。長尺体配設空間Pに配設される長尺体7は、湾曲板部21Bによって支持される。本実施形態では、湾曲板部21Bが本発明における「受け部」に相当する。
支持部21の一端側(第一平板部21Aの上端部)に、第一係止部24が設けられている。第一係止部24は、第一平板部21Aの上端部から、長尺体配設空間Pとは反対側となる正面側に向かって略垂直に屈曲形成されている。第一係止部24には、幅方向の一方側(右側;図1を参照)に向かって開口する略L字状のフック凹部24aが形成されている。第一係止部24は、平面視で略J字状に形成されている。第一係止部24の内側面には、吊りボルト61のネジ部62の螺旋形状に沿う傾斜姿勢で、係止爪部25が形成されている。第一係止部24は、係止爪部25がネジ部62に接当する状態で、吊りボルト61に係止される。
支持部21の他端側(連結片21D)には、当該支持部21に対して揺動可能な状態で蓋部26が連結されている。蓋部26の一方端には揺動支点孔部26aが貫通形成されており、この揺動支点孔部26aに連結片21Dを挿通させてヒンジ連結することで、蓋部26が揺動自在となっている。蓋部26の他方端は揺動端部26bであり、この揺動端部26bが支持部21に貫通形成された開口部22に挿脱されることにより、蓋部26によって長尺体配設空間Pが開閉自在となっている(図6及び図7を参照)。
図6及び図7を参照して蓋部26の揺動端部26bの構成について詳述すると、当該蓋部26の先端部には、長尺体配設空間Pの側に向かって略垂直に屈曲形成された係合片27が設けられている。係合片27の外側面(蓋部26が閉止姿勢にある状態で正面側を向く面)には、係止突起28が突出形成されている。閉止姿勢の蓋部26は第一平板部21Aに形成された開口部22に挿通され、係合片27は第一平板部21Aの正面側の面に当接する。
支持補助体3は、金属製の板状部材を屈曲形成して構成されている。支持補助体3は、比較的厚みのある板状部材を用いて構成されており、部品全体としての剛性が相対的に高い。図1〜図3に示すように、支持補助体3は、第一被固定部31と第二係止部33と移動規制部35とを有する。本実施形態では、これらに加え、支持補助体3は、補強板部38をさらに有する。第一被固定部31、第二係止部33、移動規制部35、及び補強板部38は、一体的に形成されている。本実施形態では、補強板部38が本発明における「補強部」に相当する。第一被固定部31は、支持部21(第一平板部21A)における開口部22の形成領域よりもさらに下方側に規定される固定領域Fにて、当該支持部21に固定される。第一被固定部31は、第一平板部21Aの正面側の表面(強度アップのための凹部の部分を除く)に面接触する状態で支持部21に固定される。
第一被固定部31の下端部に、第二係止部33が設けられている。第二係止部33は、第一被固定部31の下端部から、支持部21とは反対側となる正面側に向かって略垂直に屈曲形成されている。第二係止部33には、幅方向で第一係止部24のフック凹部24aの開口側とは異なる側(左側;図1を参照)に向かって開口する略直線状のフック凹部33aが形成されている。第二係止部33は、平面視で略J字状に形成されている。第二係止部33の内側面には、吊りボルト61のネジ部62の螺旋形状に沿う傾斜姿勢で、係止爪部34が形成されている。第二係止部33は、係止爪部34がネジ部62に接当する状態で、吊りボルト61に係止される。第二係止部33は、第一係止部24とは軸芯方向(上下方向)の異なる位置で、第一係止部24とは異なる方向から吊りボルト61に係止される。
第一被固定部31の上端部に、移動規制部35が設けられている。移動規制部35は、第一被固定部31の上端部から、正面側に向かって略垂直に屈曲形成されている。移動規制部35は、第二係止部33のフック凹部33aの開口側から吊りボルト61に当接可能な状態で、吊りボルト61よりも正面側に位置するように配置されている。移動規制部35の背面側の端縁35aと、第二係止部33のフック凹部33aの内側面との協働により、吊りボルト61に対する支持具本体2の相対移動を所定範囲内に規制可能となっている。なお、第一被固定部31における移動規制部35の下側には、正面側に向かって突出する突出片部36が、切り起こして形成されている。
補強板部38は、第一被固定部31から、当該第一被固定部31よりも軸芯方向(上下方向)で第一係止部24側(上側)に向かって延びるように形成されている。補強板部38は、第一被固定部31と一体的に形成されている。補強板部38は、支持部21(第一平板部21A)における開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆うように配置されている。本実施形態では、第一被固定部31の幅方向の両端部に、それぞれ補強板部38が設けられており、これらは、それぞれ対応する側方周辺領域LPの幅方向外側の一部の領域を覆うように配置されている。
本実施形態のように支持部21(第一平板部21A)に開口部22が貫通形成されている場合、当該支持部21における開口部22の側方周辺領域LPは、他の部位に比べて強度的に劣る。しかし、上述のとおり、支持部21における側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆う補強板部38が備えられているので、相対的に強度の低い側方周辺領域LPを補強することができる。よって、例えば地震等によって大きな外力が作用した場合であっても、側方周辺領域LPにおいて支持部21が損傷を受ける可能性を低減できる。従って、棒状部材6(吊りボルト61)からの長尺体支持具1の脱落を有効に抑制することができる。しかも、長尺体支持具1に必須の第二係止部33を提供するための支持補助体3の簡単な構造の改変によって補強板部38を構成することができるので、構造面及びコスト面でも有利である。
図4に示すように、本実施形態では、幅方向両側の一対の補強板部38は、それぞれ、後述する弾性板状部材4の係止板部45の幅方向両端部の位置からそれよりも幅方向外側の領域を覆うように配置されている。このように、補強板部38は、側方周辺領域LPのうち、平面視で係止板部45と重複する領域を避けて、係止板部45とは重複しないように配置されている。これにより、係止板部45が有する機能(詳しくは後述する)を阻害することなく、吊りボルト61からの長尺体支持具1の脱落を有効に抑制することができる。
本実施形態では、支持部21と第一係止部24との接続部の側(図4の左側)の補強板部38に比べて、第一係止部24のフック凹部24aの開口側(図4の右側)の補強板部38は、軸芯方向(上下方向)の長さが短く設定されている。前者が支持部21の上端部近傍(支持部21と第一係止部24との接続部近傍)まで延びているのに対して、後者は、開口部22の中央部付近(係止板部45の上端部付近)までにとどまっている。これは、第一係止部24のフック凹部24aに吊りボルト61を係入させる際に、補強板部38との干渉を回避し、その係入操作が円滑に行われることを意図した設計である(図1を参照)。
本実施形態では、図1及び図3に示すように、補強板部38は、支持部21を構成する板状部材における正面側の面と側面との両方を覆うように断面L字状に屈曲形成されている。このようにすれば、補強板部38自体の強度を高めることができる。よって、相対的に剛性が高い支持補助体3に補強板部38が設けられることとも合わせて、より大きな外力に対しても吊りボルト61からの長尺体支持具1の脱落を有効に抑制することができる。補強板部38は、第一被固定部31から当該第一被固定部31と同一平面状に延出する延出板部38Aと、延出板部38Aから背面側(吊りボルト61とは反対側)に向かって略垂直に屈曲形成された屈曲側板部38Bとを含む。延出板部38Aは、その背面側の面が支持部21(第一平板部21A)における側方周辺領域LPの正面側の面に接する状態で、側方周辺領域LPを覆っている。屈曲側板部38Bは、支持部21(第一平板部21A)における側方周辺領域LPの側面に対して所定隙間を隔てて対向する状態で、側方周辺領域LPを覆っている。
なお、本実施形態では、屈曲側板部38Bは、延出板部38Aだけでなく、第一被固定部31をも含む支持補助体3の上下方向の全域に亘って設けられている。このように、補強板部38の一部を構成する屈曲側板部38Bを、側方周辺領域LP以外の部分(固定領域F)の側面を覆うように構成することも可能である。このようにすれば、相対的に強度の低い側方周辺領域LPの補強にとどまることなく、長尺体支持具1の全体としての強度を簡易かつ有効に高めることができる。
弾性板状部材4は、金属製の板状部材を屈曲形成して構成されている。弾性板状部材4は、支持補助体3に比べて薄い板状部材を用いて構成されており、部品全体としての弾性が相対的に高い。図1〜図3に示すように、弾性板状部材4は、第二被固定部41と付勢板部43と係止板部45とを有する。第二被固定部41、付勢板部43、及び係止板部45は、一体的に形成されている。第二被固定部41は、支持補助体3(第一被固定部31)に対して正面視で重複する状態で当該支持補助体3を介して支持部21(第一平板部21A)に固定される。第二被固定部41は、第一被固定部31よりも幅方向の長さが短く設定されており、第一被固定部31における幅方向で移動規制部35及び突出片部36の形成領域とは反対側の領域に配置される(図4を参照)。
付勢板部43は、第二被固定部41の上下方向の中間位置において、当該第二被固定部41から起立形成されている。付勢板部43は、その板面が上下方向に沿い、かつ、幅方向に揺動自在な状態となるように設けられている。付勢板部43は、第二被固定部41との境界部を基点とする弾性変形により、第二被固定部41に対して相対変位可能となっている。付勢板部43は、係止爪43Aと操作部43Bとを含む。係止爪43Aは、吊りボルト61のネジ部62(図2を参照)の螺旋形状に沿う傾斜姿勢で、付勢板部43における上下の縁部を一部切り起こして形成されている。操作部43Bは、付勢板部43における揺動遊端部に設けられている。
付勢板部43は、吊りボルト61を押し付けることによって第二被固定部41に対して相対変位するので、この状態で、吊りボルト61に長尺体支持具1を取り付けることができる。その後、付勢板部43は、第二被固定部41との境界部を基点とする弾性復元力によって吊りボルト61を圧接付勢する。これにより、付勢板部43に設けられた係止爪43Aがネジ部62に嵌合するとともに、第一係止部24に設けられた係止爪部25や第二係止部33に設けられた係止爪部34も、ネジ部62に嵌合する(図5を参照)。言い換えれば、付勢板部43は、第一係止部24及び第二係止部33に対して吊りボルト61を圧接付勢する。これにより、長尺体支持具1を吊りボルト61に対してガタツキのない状態で簡便に取り付けることができる。なお、操作部43Bを吊りボルト61に対する圧接付勢力の作用方向とは反対側へ押圧操作することにより、圧接付勢状態を解除することができ、吊りボルト61に対する長尺体支持具1の軸芯方向(上下方向)の取付位置を容易に変更することができる。本実施形態では、付勢板部43が「付勢手段S」を構成している。
係止板部45は、第二被固定部41から、略V字状に屈曲形成された揺動支点部44を介して、第二被固定部41よりも軸芯方向(上下方向)で付勢板部43とは反対側(上側)に向かって延びるように形成されている。係止板部45は、全体として第二被固定部41に対して僅かに正面側に向かって傾斜する状態で配置されている。係止板部45は、第二被固定部41との境界部となる揺動支点部44を基点とする弾性変形により、第二被固定部41に対して相対変位可能となっている。図3と図4とを合わせて参照して理解できるように、係止板部45は、正面視で、支持部21(第一平板部21A)に貫通形成された開口部22とその側方周辺領域LPの一部とに亘って重複するように配置されている。また、係止板部45は、幅方向両側に分かれて配置された一対の補強板部38どうしの間に画定される領域に、正面視で補強板部38とは重複することなく配置されている。
図3に示すように、係止板部45は、本体部45Aと係止片45Bと屈曲辺部45Cとを含む。本体部45Aは、係止板部45を構成する主要部であり、平板状に形成されている。係止片45Bは、本体部45Aから背面側(支持部21側)に向かって切り出して形成されている。屈曲辺部45Cは、本体部45Aから、その上端の辺部に沿って、吊りボルト61に近接する側(支持部21とは反対側)に向かって屈曲形成されている。図6及び図7に示すように、係止片45Bは、先端ほど下方に位置する傾斜姿勢となっている。係止片45Bは、蓋部26が開いている状態では、係止片45Bの先端が、支持部21の正面側の面における開口部22の下端縁よりも若干下方に偏倚した部位に当接する待機状態となる。
蓋部26を閉じるのに伴い、蓋部26の揺動端部26bに設けられた係合片27が、開口部22に挿通された状態で第一平板部21Aの正面側の面に当接する。その際、係合片27の外側面に突出形成された係止突起28の傾斜面28bは、係止片45Bの先端に対して順次当接して、係止板部45を吊りボルト61に近接させるように吊りボルト61側に突出変位させる。蓋部26が完全に閉じられると、係止板部45は、揺動支点部44を基点とする弾性復元力により、係止片45Bの先端を係合片27の外側面と係止突起28の上面28aとで形成される入隅部に係止させる。このようにして、係止板部45は、蓋部26の揺動端部26bに形成された係合片27に係止され、蓋部26は閉止姿勢で係合保持される。本実施形態では、係止板部45と蓋部26の揺動端部26bに設けられた係合片27とにより、「蓋ロック手段L」が構成されている。
蓋部26の閉止状態で、係止板部45は、第一係止部24(特定係止部の一例)のフック凹部24aに係止保持されている吊りボルト61に近接するように、当該フック凹部24aの入口側に突出変位する。この状態では、平面視で係止板部45の上端部(屈曲辺部45Cの上端部)が第一係止部24のフック凹部24aの開口に大きく突出し、吊りボルト61から第一係止部24が付勢板部43(付勢手段S)の圧接付勢力に抗して離脱移動するのを阻止することができる。本実施形態では、蓋ロック手段Lを構成する係止板部45と係合片27とにより、「離脱阻止手段B」が兼用構成されている。
なお、蓋部26が開いている状態でも、平面視で係止板部45の上端部は第一係止部24のフック凹部24aの開口にある程度突出する。しかし、係止板部45と支持部21との間に係合片27が存在しないため、係止板部45を背面側に弾性変形させることができ、吊りボルト61に対する第一係止部24の係脱操作を行うことが可能となっている。つまり、離脱阻止手段Bは、吊りボルト61からの第一係止部24の離脱移動を阻止する離脱阻止状態と、吊りボルト61からの第一係止部24の係脱操作を許容する阻止解除状態と、に切替自在に構成されている。
このとき、本実施形態では、上述した説明から明らかなように、離脱阻止手段Bは、蓋ロック手段Lの係合動作(蓋部26の閉止操作)に連係して離脱阻止状態となり、かつ、蓋ロック手段Lの係合解除動作(蓋部26の開き操作)に連係して阻止解除状態となる。よって、蓋部26の閉止操作と開き操作とを利用して、離脱阻止手段Bの離脱阻止状態と阻止解除状態とを、単操作によって適切なタイミングで容易に切り替えることができる。
本実施形態では、係止板部45は、屈曲角部45Dをさらに含む。屈曲角部45Dは、本体部45Aにおける上側の一方の角部(屈曲辺部45Cにおける幅方向の一方側の端部)に、本体部45A及び屈曲辺部45Cの双方に対して交差する方向に屈曲形成されている。屈曲角部45Dは、係止板部45と係合片27とが係合したロック状態を解除するための操作を受け付けるロック解除操作部として機能する。
長尺体7は、上述した長尺体支持具1を用いて、以下のようにして吊りボルト61に吊り支持される。すなわち、まず、蓋部26を開いた状態(又は半閉じ状態)で、第一係止部24のフック凹部24aの開口と第二係止部33のフック凹部33aの開口とを吊りボルト61に向けて、吊りボルト61に対して支持具本体2を傾斜姿勢で当て付ける。次に、両係止部24,33のフック凹部24a,33aが吊りボルト61に係入する方向に支持具本体2を回動操作する。その際、付勢板部43(付勢手段S)の圧接付勢力に抗しながら、両係止部24,33のフック凹部24a,33a内の所定係止位置に吊りボルト61が到達するまで、支持具本体2を回動操作する。これにより、吊りボルト61に長尺体支持具1がガタツキのない状態で取り付けられる。これを、長尺体7の延在方向に沿って設置される複数の吊りボルト61についてそれぞれ行う。
次に、それぞれの吊りボルト61に取り付けられた長尺体支持具1の支持部21(長尺体配設空間P)に亘って、長尺体7を配設する。最後に、蓋部26の揺動端部26bに設けられた係合片27を開口部22に挿入して、蓋部26の閉止操作を行う。その結果、係止板部45(係止片45B)と係合片27(係止突起28)とが係合し、蓋部26が閉止姿勢に保持されるロック状態となるとともに、吊りボルト61からの第一係止部24の離脱移動が阻止される離脱阻止状態となる。
このように、本実施形態に係る長尺体支持具1において、兼用構成される蓋ロック手段L及び離脱阻止手段Bを構成する係止板部45は、複数の機能を担う重要な部品となっている。ところで、上述したように、本実施形態に係る長尺体支持具1は、耐振強度を高めるため、支持部21における開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆うように配置された補強板部38を追加的に有する。より高強度な構造とするためには、そのような補強板部38を側方周辺領域LPの全体を覆うように配置することが好ましい場合もある。しかし、本実施形態では、係止板部45が担う蓋ロック手段L及び離脱阻止手段Bとしての機能を阻害しないように、補強板部38は、側方周辺領域LPのうち、平面視で係止板部45と重複する領域を避けて配置されている。補強板部38のサイズが相対的に小さくなる分は、断面L字状に屈曲形成することで補強板部38自体の強度を高めることで補っている。これにより、耐振強度を高めながら、吊りボルト61からの第一係止部24の離脱移動をも有効に阻止することができる。結果的に、これらの効果が相俟って、大きな外力が作用した場合にも、棒状部材6からの長尺体支持具1の脱落を有効に抑制することができる。
〔第2の実施形態〕
本発明に係る長尺体支持具の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆って当該領域を補強するための構造が第1の実施形態とは異なっている。以下、本実施形態に係る長尺体支持具1について、主に第1の実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図8に示すように、本実施形態に係る長尺体支持具1には、補強板部38は備えられておらず、それに代えて、開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆う独立した部材としての補強部材5が備えられている。補強部材5は、長尺体支持具1の他の構成部品(支持具本体2、支持補助体3、及び弾性板状部材4)に対して着脱可能な屈曲板状部材として構成されている。補強部材5は、長尺体支持具1の他の構成部品に対して装着された状態で、側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆う状態で支持部21に対して定位されている。なお、「定位」とは、位置及び姿勢を定めることを意味する。
図9〜図11に示すように、補強部材5は、概略的には、金属製の帯板状部材をその延在方向の複数箇所で屈曲させて形成されており、そのうちの2箇所の屈曲部によって区切られた第一取付部51と第二取付部54と接続部57とを有する。当該2箇所の屈曲部は、いずれも略直角に屈曲する直角屈曲部となっている。第一取付部51の延在方向と、第二取付部54(主に第二取付板部54A)の延在方向とは、概ね一致している。また、接続部57の延在方向と、第一取付部51及び第二取付部54の延在方向とは、略直交している。第一取付部51及び第二取付部54は、接続部57に対して同じ側に配置されている。補強部材5は、全体として、正面視で縦長の略C字状に形成されている。
第一取付部51は、支持具本体2の第一係止部24に取り付けられる(図8を参照)。第一取付部51は、第一係止部24の上面を覆う状態で当該第一係止部24に取り付けられる。第一取付部51は、正面視で第一係止部24と吊りボルト61(棒状部材6の一例)とに亘る長さを有する第一取付板部51Aで構成されている。第一取付部51は、第一取付板部51Aから下方に屈曲されて第一係止部24の内縁に引っ掛けられるフック部52を有する(図12を参照)。第一取付部51は、第一取付板部51Aとフック部52とで第一係止部24を上下に挟み込んだ状態で(隙間があっても良い)、第一係止部24に取り付けられる。
第一取付板部51Aにおけるフック部52よりも先端側(接続部57とは反対側)の部分は、第一係止部24のフック凹部24aを少なくとも部分的に埋めるように配置される。当該部分は、第一係止部24に係止された吊りボルト61の当該第一係止部24からの脱離を抑止する第一脱離抑止部53として機能する。図8及び図13に示すように、第一脱離抑止部53は、略J字状の第一係止部24と協働して吊りボルト61を前後方向に挟み込むことで、吊りボルト61の第一係止部24からの脱離を抑止する。
第二取付部54は、支持補助体3の第二係止部33に取り付けられる(図8を参照)。第二取付部54は、第二係止部33の下面を覆う状態で当該第二係止部33に取り付けられる。図9及び図10に示すように、第二取付部54は、正面視で支持部21の幅方向長さと同程度の長さを有する第二取付板部54Aと、この第二取付板部54Aの先端側(接続部57とは反対側)の端部から上方に向かって立ち上がる起立片部54Bとを有する。また、第二取付部54は、起立片部54Bの上端部から幅方向外側に折り返された折返し片部54Cを有する。折返し片部54Cは、起立片部54Bの上端部からやや幅方向内側に変位した後に幅方向外側に向かうに従って僅かに下方に傾斜する状態に折り返されている。第二取付部54は、接続部57との間に第二係止部33を幅方向に挟み込んだ状態で(隙間があっても良い)、第二係止部33に取り付けられる(図12を参照)。
第二取付板部54Aにおける正面視で吊りボルト61よりも基端側(接続部57側)の部分は、それよりも先端側の部分や起立片部54B等に比べて前後方向(第二取付板部54Aの延在方向に直交する方向)の長さが長く設定されている。当該部分は、第二係止部33のフック凹部33aを少なくとも部分的に埋めるように配置され、第二係止部33に係止された吊りボルト61の当該第二係止部33からの脱離を抑止する第二脱離抑止部55として機能する。図8及び図14に示すように、第二脱離抑止部55は、略J字状の第二係止部33と協働して吊りボルト61を幅方向に挟み込むことで、吊りボルト61の第二係止部33からの脱離を抑止する。
図10に示すように、第二取付部54は、起立片部54Bと折返し片部54Cとの境界屈曲部から、折返し片部54Cとは反対側となる第二係止部33側に向かって突出する突片56を有する。また、突片56は、下方に向かって突出するように形成されている。突片56は、起立片部54Bの一部を切り起こして形成されている。
接続部57は、上下方向に延びるように配置され、第一取付部51と第二取付部54とを接続している。接続部57は、幅方向において、支持補助体3及び弾性板状部材4よりも、弾性板状部材4の付勢板部43が吊りボルト61を付勢する方向とは反対向きの“反付勢方向”側に配置される。図9及び図10に示すように、接続部57は、オフセット屈曲部57bにて幅方向の段差を有するように形成された接続板部57Aで構成されている。接続板部57Aは、オフセット屈曲部57bよりも第二取付部54側となる下端側が、第一取付部51側となる上端側に対して略平行かつ幅方向内側に位置する状態となるように2段階に屈曲形成されている。なお、本実施形態では、オフセット屈曲部57bの上下方向の位置は、支持部21における開口部22の上端縁付近となっている(図12を参照)。
図12に示すように、接続板部57Aにおけるオフセット屈曲部57bよりも第二取付部54側の部分は、正面視で支持部21と重複するように配置されている。当該部分は、支持部21を構成する板状部材に対して交差(本例では直交)する状態で支持部21における開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆うように配置される交差被覆部58となっている。交差被覆部58は、支持部21を構成する板状部材に対して交差する状態で、側方周辺領域LPの一部に当接して配置されている。本実施形態では、実体的には、交差被覆部58が本発明における「補強部」に相当する。
接続部57は、交差被覆部58における下側部分から、第一取付部51及び第二取付部54と同じ側に屈曲されて延在する当接支持部59をさらに有する。当接支持部59の上下方向の位置は、付勢板部43に対応する位置となっている(図12を参照)。当接支持部59は、付勢板部43の裏面(反付勢方向側の面)に当接して、裏面側(反付勢方向側)から付勢板部43を支持する。
長尺体支持具1の他の構成部品(支持具本体2、支持補助体3、及び弾性板状部材4)に対して補強部材5を装着するには、図12に示すように、まず、第一係止部24に対して上方から第一取付部51を取り付ける。その際、第一係止部24の内縁にフック部52を引っ掛けるようにして第一取付部51を取り付ける。その後、第二係止部33に対して下方から第二取付部54を取り付ける。その際、第二取付部54における起立片部54Bと折返し片部54Cとの境界屈曲部を第二係止部33の下面に当接させながら摺動させる。第二取付部54を押し込むにつれて、屈曲板状部材からなる補強部材5に変形(主に接続部57の反り)が生じ、やがて上記境界屈曲部が第二係止部33の外側の端縁を超えると、弾性復元力によって補強部材5の変形が解消され、第二係止部33に第二取付部54が取り付けられる。なお、第二取付部54における起立片部54Bと折返し片部54Cとの境界屈曲部に突片56が設けられているので、人手等による意図的な脱着操作が行われない限り、補強部材5の装着状態が適切に維持される。言い換えれば、地震等によって大きな外力が作用したとても、それだけでは補強部材5は外れない。
この状態で、接続部57の交差被覆部58が、支持部21を構成する板状部材に対して交差する状態で、側方周辺領域LPの少なくとも一部を当接して覆うように配置される。このため、支持部21の側方周辺領域LPにおける変形に対する抵抗力を高めることができ、支持部21が損傷を受ける可能性を有効に低減できる。また、接続部57の当接支持部59が、反付勢方向側から付勢板部43を当接支持するように配置される。このため、大きな外力が作用した場合にも、吊りボルト61に対して長尺体支持具1がガタツキなく取り付けられた状態を適切に維持できる。長尺体支持具1と吊りボルト61とのガタツキをなくすことで、第一係止部24及び第二係止部33に係止された吊りボルト61が、第一係止部24又は第二係止部33から脱離するのを抑制することができる。
さらに、第一取付部51の第一脱離抑止部53が略J字状の第一係止部24との間に吊りボルト61を前後方向に挟み込むように配置されるとともに、第二取付部54の第二脱離抑止部55が略J字状の第二係止部33との間に吊りボルト61を幅方向に挟み込むように配置される。このため、支持部21に対して補強部材5を定位させるための第一取付部51及び第二取付部54のそれぞれの一部を利用して、第一係止部24及び第二係止部33に係止された吊りボルト61が脱離するのを有効に抑制することができる。このように、支持部21の損傷の抑制と、第一係止部24及び第二係止部33からの吊りボルト61の脱離の抑制との相乗効果により、吊りボルト61からの長尺体支持具1の脱落を有効に抑制することができる。しかも、比較的単純な構造を有する補強部材5の追加により、簡易かつ低コストに、上述した効果を得ることができる。
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る長尺体支持具の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記第1の実施形態では、補強板部38が、支持部21を構成する板状部材の正面側の面と側面とを覆う断面L字状に屈曲形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、補強板部38が、支持部21を構成する板状部材の正面側又は背面側の面だけを覆う平板状であっても良い。或いは、補強板部38が、支持部21を構成する板状部材の正面側の面と側面とに加え、さらに背面側の面をも覆うように、断面U字状に屈曲形成されても良い。また、上記第1の実施形態では、屈曲側板部38Bが支持部21を構成する板状部材の側面に対して所定隙間を隔てて対向する例を示したが、当接して配置されても良い。
(2)上記第1の実施形態では、補強板部38が側方周辺領域LPのうち平面視で係止板部45と重複する領域を避けて配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。係止板部45が有する蓋ロック手段L及び離脱阻止手段Bとしての機能をある程度確保できる範囲内で、補強板部38が平面視で係止板部45と重複するように配置されても良い。この場合、例えば補強板部38の厚みを相対的に薄くする等すれば良い。この場合であっても、少なくとも従来仕様に比べて耐振強度を高めることができ、棒状部材6からの長尺体支持具1の脱落を有効に抑制することができる。
(3)上記の各実施形態では、蓋ロック手段Lと離脱阻止手段Bとが兼用構成された例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。蓋ロック手段Lと離脱阻止手段Bとが、別部品を用いて個別に構成されても良い。
(4)上記の各実施形態では、長尺体支持具1に付勢手段S、蓋ロック手段L、及び離脱阻止手段Bの全てが備えられている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。これらは、あくまでガタツキや離脱移動の抑制を目的とするものであるので、付勢手段S、蓋ロック手段L、及び離脱阻止手段Bの1つ以上が長尺体支持具1に備えられていなくても良い。
(5)上記第1の実施形態では、「補強部」として、開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆う補強板部38が支持補助体3に備えられている構成を例として説明した。また、上記第2の実施形態では、開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆う独立した部材としての補強部材5が、「補強部」として長尺体支持具1に備えられている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば図15に示すように、側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆う補強板部48が、弾性板状部材4に備えられていても良い。図15の例では、第二被固定部41よりも第一係止部24側(上側)に向かって延びるように形成された補強板部48が、連結板部47を介して、第二被固定部41に接続されている。この場合においても、補強板部48は、平面視で係止板部45と重複する領域を避けるように、係止板部45の側方(幅方向の外側)に配置されていることが好ましい。なお、特に明記しない点に関しては、上記の各実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
或いは、独立した部材としての補強部材5を備える場合において、その補強部材5の具体的構造や機能は適宜設定されて良い。例えば補強部材5は、交差被覆部58を有するとともに、第一脱離抑止部53、第二脱離抑止部55、及び当接支持部59のうちのいずれか1つ又は2つのみを有するように構成されても良い。一例として、交差被覆部58に加えて、第一脱離抑止部53及び当接支持部59のみを有する補強部材5の例を図16に示す。また、補強部材5は、支持部21に直接固定されていても良く、この場合、支持部21を構成する板状部材の背面側の面と側面とを覆う断面L字状に屈曲形成されていても良いし、当該板状部材の正面側又は背面側の面だけを覆う平板状であっても良い。もちろん、当該板状部材の正面側の面と側面と背面側の面とを覆う断面U字状に屈曲形成されていても良い。或いは、「補強部」が、例えば支持部21に形成されたリブ部等によって構成されても良い。
(6)上記の各実施形態では、支持部21と第一係止部24と蓋部26とが支持具本体2に備えられ、第二係止部33が支持補助体3に備えられる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。支持具本体2及び支持補助体3に対する支持部21、第一係止部24、第二係止部33、及び蓋部26の帰属は、任意に設定されて良い。また、例えば、支持部21と蓋部26とを有する支持具本体2とは別部材に第一係止部24が備えられる等しても良い。
(7)上記の各実施形態では、棒状部材6として、外周面にネジ部62を有する吊りボルト61を用いた例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、軸芯方向に沿って多数の係止突起が周方向の一部に形成してある棒状部材を用いても良い。
(8)上記の各実施形態では、長尺体7として、断熱材72で被覆された配管部材71を用いた例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、露出した配管部材71を用いても良いし、或いは、ケーブル等を用いても良い。
(9)上記の各実施形態では、長尺体支持具1が、支持部21における開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆うように配置される補強部(補強板部38や交差被覆部58)を備えることを前提に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。本発明者らの検討によれば、長尺体支持具1が補強部を備えることなく、付勢板部43を補強する構造を備えるだけでも、ある程度の長尺体支持具1の脱落抑止効果が得られることが明らかとなった。そのような付勢板部43の補強構造を備える長尺体支持具1も、本明細書によって開示される。この場合における長尺体支持具1は、
吊り下げ状態で設置される棒状部材6に対して係止され、長尺体7を横架姿勢で支持する長尺体支持具1であって、
湾曲形成された湾曲板部21B(受け部の一例)にて長尺体7を支持する支持部21と、
棒状部材6の軸芯方向の互いに異なる位置で棒状部材6に係止される第一係止部24及び第二係止部33と、
第一係止部24及び第二係止部33に対して棒状部材6を圧接付勢する付勢板部43と、
付勢板部43が棒状部材6を付勢する方向とは反対の反付勢方向側から付勢板部43を当接支持する当接支持部59と、を備える。
なお、当接支持部59を有する補強部材5は、必ずしも第一係止部24と第二係止部33とに亘って取り付けられなくても良く、例えば棒状部材6(吊りボルト61)にも係止する状態で移動規制部35(図8も参照)と第二係止部33とに亘って取り付けられる等しても良い。この場合の補強部材5の一例を図17に示す。図示の例では、補強部材5の支持板部59A(スリット状の付勢板部挿通孔59bの周縁部)によって当接支持部が構成されている。また、当接支持部は、必ずしも上記第2の実施形態のように補強部材5に設けられなくても良く、図示は省略するが例えば支持補助体3に設けられても良い。
(10)上記第2の実施形態では、長尺体支持具1が、補強部を構成する屈曲板状の補強部材5を含んで構成されるものとして説明した。しかし、別の観点からは、長尺体支持具1から独立した別部材としての補強部材5が、長尺体支持具1に装着されていると考えることもできる。そして、本発明は、そのような補強部材5単体に関しても、権利の対象とすることができる。この場合における補強部材5(屈曲板状部材の一例)は、
湾曲形成された湾曲板部21B(受け部の一例)にて長尺体7を支持する支持部21と、吊り下げ状態で設置される棒状部材6の軸芯方向の互いに異なる位置で棒状部材6に係止される第一係止部24及び第二係止部33と、支持部21に対して揺動可能に連結され、支持部21に貫通形成された開口部22に揺動端部26bが挿脱されることによって長尺体配設空間Pを開閉自在な蓋部26と、を備え、第一係止部24及び第二係止部33によって棒状部材6に対して係止されるとともに湾曲板部21Bで長尺体7を横架姿勢で支持する長尺体支持具1に対して着脱可能な補強部材5であって、
長尺体支持具1に装着された状態で、支持部21を構成する板状部材に対して交差する状態で支持部21における開口部22の側方周辺領域LPの少なくとも一部を覆うように配置される交差被覆部58を有する。
(11)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。