JP2015166364A - Psf1遺伝子発現抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】PSF1遺伝子発現抑制活性を有する、ウバユリの含水低級アルコール抽出物を含む、PSF1遺伝子発現抑制剤。がんの予防又は治療剤である、該PSF1遺伝子発現抑制剤。ウバユリの葉からの含水低級アルコール抽出物が好ましい。
【選択図】図2
Description
経路、βカテニン経路など様々な細胞内シグナルを抑制する、いわゆるマルチキナーゼ阻害剤がある。また、がん幹細胞の未分化性にnotch受容体の活性化が関与しているという
知見から、notch受容体活性を抑制して、がん幹細胞をがん細胞に分化させる方法も提案
されている(特許文献1)。更に、近年、Sonic hedgehog (shh) が胎児期の器官形成の
際に、細胞増殖、分化、生存に関わる細胞シグナル伝達物質であり、様々ながん細胞(例えば、慢性白血病、肺がん、乳がん、膵がん、肝がんモデル、髄様がん)におけるがん幹細胞の維持に寄与していることが示唆され、Shhを阻害する化合物を用いた前立腺がんに
対する治療有効性が提案されている(非特許文献4)。しかし、これらの手法によるがん幹細胞への作用は未だ確認されていない。
していることが報告されており(非特許文献5及び6)、がん組織においてもその発現が報告されている(非特許文献7〜9)。近年、PSF1遺伝子をクローニングし、そのプロモーターの下流にEGFP蛍光蛋白をコードする遺伝子を機能的に連結させた肺癌細胞株(Lewis
Lung Carcinoma; LLC)及び大腸がん細胞株(colon26)が作製された(非特許文献10)。そして、これらの細胞を用いた試験により、(1)PSF1の転写活性の高い高陽性細胞は、マウスに再移植すると、少数細胞でも造腫瘍能を有し、マトリックス成分を溶解して浸潤する能力が高く、強い転移活性を有すること、(2)マウス腫瘍組織のPSF1陽性がん幹細胞と、ヒト腫瘍組織のPSF1陽性がん細胞の局在が、腫瘍内血管の近傍に位置するという共通性があること、(3)ヒト細胞におけるPSF1遺伝子をRNAi法によってノックダウンすると、細胞周期が停止又は遅延すること、及び(4)PSF1転写活性が高い高陽性細胞は、低陽性細胞と比べ、胚性幹細胞に特有な遺伝子の発現が高いことが確認されている(非特許文献11)。更に、マウスへの抗がん剤の投与試験によって、PSF1高発現細胞が抗がん剤抵抗性を増強してくることが報告されている(非特許文献11)。
ん細胞の細胞分裂周期を停止又は遅延させ、休眠させることにより、その腫瘍増殖を抑制することを確認し、本発明を完成するに至った。
項1.
PSF1遺伝子発現抑制活性を有する、ウバユリ、タネツケバナ、及びPandanus polycephalusから成る群より選択される1種以上の植物の抽出物を含む、PSF1遺伝子発現抑制剤。
項2.
がんの予防又は治療剤である、項1に記載のPSF1遺伝子発現抑制剤。
項3.
がんが、脳腫瘍、乳がん、呼吸器がん、消化器がん、泌尿器系腫瘍、女性性器腫瘍、及び血液腫瘍から成る群より選択される1種以上である、項2に記載のPSF1遺伝子発現抑制剤。
項4.
該抽出物が、アルコール抽出物である、項1〜3のいずれかに記載のPSF1遺伝子発現抑制剤。
項5.
該抽出物が、タネツケバナの脂肪酸低級アルキルエステル溶媒抽出物又は塩化脂肪族低級炭化水素溶媒抽出物である、項1〜3のいずれかに記載のPSF1遺伝子発現抑制剤。
項6.
該抽出物が、ウバユリ又はPandanus polycephalusの葉の抽出物である、項1〜4のいず
れかに記載のPSF1遺伝子発現抑制剤。
項7.
PSF1遺伝子発現抑制活性を有する、ウバユリ、タネツケバナ、及びPandanus polycephalusから成る群より選択される1種以上の植物の抽出物が濃縮された食品。
項8.
PSF1遺伝子発現抑制活性を有する、ウバユリ、タネツケバナ、及びPandanus polycephalusから成る群より選択される1種以上の植物の抽出物のPSF1遺伝子発現抑制させるための
使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
項9.
PSF1遺伝子発現抑制活性を有する、ウバユリ、タネツケバナ、及びPandanus polycephalusから成る群より選択される1種以上の植物の抽出物を、PSF1遺伝子発現抑制が必要な対
象に投与することを含む、癌の治療方法。
(Cardiocrinum)に属する植物であり、大型の白花をつける多年草で、日本の西南部に分布するウバユリ(Cardiocrinum cordatum)、日本の東北部に分布するオオウバユリ(Cardiocrinum cordatum var.glehnii)、及びヒマラヤから中国に分布するヒマラヤウバユ
リ(Cardiocrinum giganteum)が含まれる。ウバユリは、ウバユリ属に属する植物であれば特に制限されないが、好ましくはウバユリ(Cardiocrinum cordatum)及び/又はオオ
ウバユリ(Cardiocrinum cordatum var.glehnii)である。
である。
液腫瘍(例えば、白血病)から成る群より選択される1種以上であり得る。一実施形態において、予防又は治療の対象として好ましいがんの種類は、肺がん、子宮頸がん、大腸がん、胃がん、及び神経膠腫である。
ウバユリの葉の乾燥物2グラムに80%エタノール20mlを加え、50℃で8時間時々振盪し、室温で一晩静置した。これを濾過し、濾液の一部7mlを50℃で窒素パージを用いて乾燥さ
せ、次いで一晩凍結乾燥させて、ウバユリの抽出物82mgを得た。同様の手順で、80%エタノール20mlを用い、タネツケバナの全草の乾燥物2グラムから得られた濾液の一部10mlを
乾固させ、抽出物231mgを得た。
Pandanus polycephalusの葉の乾燥物100gにメタノール約1リットルを加え、室温で、
時々振盪しながら4日間静置した。これを濾過し、濾液を40〜45℃にてロータリーエバポ
レートを用いて減圧濃縮した。得られた残渣を、真空ポンプを用いて一晩乾燥し、Pandanus polycephalusの抽出物9.83gを得た。
PSF1遺伝子プロモーター制御下にEGFPを発現する肺がん細胞株 LLC (Cancer Res 70, 1215-1224, 2010)を、大阪大学から入手した。この細胞株を10%胎仔牛由来血清(FCS)、100 units/mlのペニシリン、100 μg/mlのストレプトマイシンを添加したDMEM中で、5% CO2、37℃の条件下で培養した。このようにして培養したLLCを104細胞ずつ6well培養皿に播種し、2mlの上記培養液中で24時間培養した。上記製造例1及び2で得た各抽出物を
、最終濃度が100μg/mlとなるようにdimethyl sulfoxide (DMSO; ナカライ テスク社製)に溶解し、2μlをLLCを培養したウェルに添加した。ネガティブコントロールには、DMSOのみを2μl添加した。ポジティブコントロールには、製造例1と同様の方法でRhus taitensisの葉から得た抽出物を終濃度が100μg/mlとなるように添加した。その後、前
記培養条件で16時間培養し、細胞の形態を顕微鏡で観察した。結果を図1に示す。ネガティブコントロールの細胞像と同様に、ウバユリ、タネツケバナ、及びP. polycephalusの
抽出物を添加した細胞の形態は特に変化なく、細胞死が誘導されていないことが示された。一方、Rhus taitensisの抽出物を添加した細胞では、細胞死の誘導が確認された。
試験例1と同じ条件で培養したLLC細胞を5%FCSを含むリン酸緩衝液(PBS)で1回洗
浄した後、500μlの5%FCSを含むPBSに分散させた。そこに、propidium iodide(PI:BD Bioscience社製)を2μl加えて穏やかに混和し、室温、暗所で15分間反応させた。その後、細胞をフローサイトメーター(FACS Calibur:Becton Dickinson社製)に供し、GFP蛍光強度及びPI蛍光強度についてフローサイトメトリー法を用いて解析した(図
2)。ネガティブコントロールの細胞ではほとんどがGFP陽性PI陰性である。これは、細
胞が生存しており、PSF1の遺伝子が転写され続けていることを意味する。一方、ポジティブコントロールであるRhus taitensisの抽出物を添加した細胞では、PI強度が上昇し、細胞死が誘導されたことが確認された。これらと比較して、ウバユリ、タネツケバナ、Pandanus polycephalusの抽出物を添加した細胞では、PIの強度はさほど上昇せず、GFP強度は低下することが確認された。この結果から、ウバユリ、タネツケバナ、Pandanus polycephalusの抽出物によって、細胞死は誘導されないがPSF1遺伝子のプロモーター活性が抑制
されることが判明した。
定量リアルタイムPCR を用いて、LLC細胞,ヒトglioma細胞 (U87MG), breast cancer細胞 (MCF7), lung cancer細胞 (EBC1), gastric cancer細胞 (HGC-27), colon cancer細胞
(HT29), prostate cancer細胞 (PC3), cervical cancer細胞 (HELA),及びleukemia細胞 (MEG01)におけるPSF1遺伝子の発現に対する影響を検討した。試験例1と同様の条件で培
養し、各抽出物で処理したがん細胞から、kit (Qiagen社製)を用いて、トータルRNAを得
た。尚、HT29細胞については、各抽出物を最終濃度が10μg/ml となるように0.2μl添加した。次に、ExScript RT reagent Kit(タカラ社製)を用いて、回収した各全RNAからcDNAをそれぞれ合成し、得られたcDNAを用いて、PSF1の発現をリアルタイムPCR法によって
解析した。比較対照として解糖系酵素であるGAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)のmRNAの発現量も測定した。リアルタイムPCRは、Stratagene Mx300P (Stratagene社製)を用いて実施した。マウスPSF1をPCRで合成する際のプライマーとして、以下の配列を用いた。
5´- CTCCCAGCGACCTCATGTAA -3´(配列番号2)
マウスGAPDHをPCRで合成するためのプライマーとして以下の配列を用いた。
5´- AACTTTGGCATTGTGGAAGG -3´(配列番号3)
5´- GGATGCAGGGATGATGTTCT -3´(配列番号4)
ヒトPSF1をPCRで合成する際のプライマーとして、以下の配列を用いた。
5´- ACCTGTATGACCGCTTGCTTC -3´(配列番号5)
5´- TTCATCTCCTCCCAGTGAC-3´(配列番号6)
ヒトGAPDHをPCRで合成する際のプライマーとして、以下の配列を用いた。
5´- ACCCAGAAGACTGTGGATGG -3´(配列番号7)
5´- CCCTGTTGCTGTAGCCAAAT -3´(配列番号8)
胞におけるPSF1の発現を抑制することが確認された。特に、ヒトがん細胞を用いた解析結果から、これら抽出物は、脳腫瘍、乳がん、呼吸器がん、消化器がん、泌尿器系腫瘍、女性性器腫瘍、そして血液腫瘍などへの効果が確認され、あらゆる種類のがん種に対してPSF1発現抑制効果を有することが判明した。この結果は、ウバユリ、タネツケバナ、Pandanus polycephalusの各抽出物は、がん細胞/がん幹細胞においてPSF1の発現を抑制し、細
胞周期を停止させることでがんの休眠化を誘導することを意味する。これまでの解析によれば、PSF1の遺伝子はがんの種類に関係なく発現が亢進しているため、これらのエキスはあらゆるがんの治療に有効であると考えられる。また、がんの悪性化及び重篤化の予防にも有効であることが期待される。
KLN205細胞(マウス扁平上皮肺癌細胞)は独立行政法人理化学研究所から入手した。この細胞を、10%FBS (Hyclon社)、Non-Essential Amino Acids (Lonza社)、ペニシリン(100units/ml ;Invitrogen社)、及びストレプトマイシン (100μg/ml; Invitrogen社)を含
有するEagle MEM(日水製薬社)を用いて培養した。80%コンフレントまで培養後、Trypsin/EDTA (Invitrogen社)により回収し、PBSにて2.0x106細胞/mLに調製した。
水は水道水を自動給水装置で自由摂取させた。
デヒド(和光純薬株式会社)にて組織の固定をおこなった。肺がん発症の評価は、固定した肺を実体顕微鏡下で観察し、1肺表面に確認できる腫瘍塊を合計することで行った。
下記の表1に示す各種の抽出溶媒10mlを用い、上記製造例1と同様の手順で、ウバユリの葉1g(乾燥重量)から抽出物を調製した。但し、「還流」の記載があるものは、還流温度で1時間還流抽出を行った。各抽出物について、試験例1及び2と同様の試験を行い、細胞死誘導活性はなく、PSF1遺伝子発現抑制活性を有するものについて、活性ありと判断した。その結果を表1に示す。
下記表2に示す通り、ウバユリ又はオオウバユリの各部位の乾燥物1グラムに、80%エタノール10〜15mlを加え、70℃で6時間放置し、濾過後、製造例1の手順に従って、抽出
物を得た。各抽出物について、試験例1及び2と同様の試験を行い、細胞死誘導活性はなく、PSF1遺伝子発現抑制活性を有するものについて、活性ありと判断した。その結果を表2に示す。
下記の表3に示す各種の抽出溶媒10mlを用い、上記製造例1と同様の手順で、タネツケバナの葉1g(乾燥重量)から抽出物を調製した。但し、「還流」の記載があるものは、還流温度で1時間還流抽出を行った。各抽出物について、試験例1及び2と同様の試験を行い、細胞死誘導活性はなく、PSF1遺伝子発現抑制活性を有するものについて、活性ありと判断した。その結果を表に示す。
上記製造例1と同様の方法により、80%エタノール20mlを用いて、オオバタネツケバナ(Cardamine regeliana)の全草の乾燥物2グラムから得られた濾液の一部10mlを乾固させ、抽出物267mgを得た。この抽出物を用いて、上記試験例1及び2と同様の試験を行った
ところ、即時の細胞死誘導活性はなく、PSF1遺伝子の発現抑制活性が確認された。
Claims (6)
- PSF1遺伝子発現抑制活性を有する、ウバユリの含水低級アルコール抽出物を含む、PSF1遺伝子発現抑制剤。
- がんの予防又は治療剤である、請求項1に記載のPSF1遺伝子発現抑制剤。
- がんが、脳腫瘍、乳がん、呼吸器がん、消化器がん、泌尿器系腫瘍、女性性器腫瘍、及び血液腫瘍から成る群より選択される1種以上である、請求項2に記載のPSF1遺伝子発現抑制剤。
- ウバユリがウバユリの葉である、請求項1〜3のいずれかに記載のPSF1遺伝子発現抑制剤。
- PSF1遺伝子発現抑制活性を有する、ウバユリの含水低級アルコール抽出物が濃縮された食品。
- PSF1遺伝子発現抑制活性を有する、ウバユリの含水低級アルコール抽出物のPSF1遺伝子発現抑制させるための使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
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