JP2015160983A - 低熱膨張合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】低い熱膨張係数と、高いヤング率及び引張強度を有する低熱膨張合金を提供する。【解決手段】本実施形態の低熱膨張合金は、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.05〜2.0%、Al:0.01〜0.14%、Ni:37.5〜43.5%、Ti:0.5〜3.6%、及び、Nb:1.6〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有し、800MPa以上の引張強度を有する。合金中の固溶Ti量は1.0%以下であり、固溶Nb量は1.0%以下である。3.0≰1.94Ti+Nb≰7.0 (1)【選択図】なし

Description

本発明は、合金に関し、さらに詳しくは、低熱膨張合金に関する。
低熱膨張合金として、インバー合金が知られている。インバー合金は、自発体積磁歪(インバー効果)により、室温〜300℃の範囲において、低い熱膨張係数を有する。そのため、熱の影響を受けても寸法が変化しにくい。そのため、工作機械や精密測定機器等、高い寸法精度が求められる装置の部材に、インバー合金を利用することができる。
しかしながら、インバー合金は熱膨張係数が小さい反面、低ヤング率、低強度である。そのため、剛性や強度が求められる部材にインバー合金を使用しにくい。
特開平11−310845号公報(特許文献1)は、ヤング率の高い低膨張鋳鉄を提案する。特許文献1は、質量%で、C:0.6〜2.0%、Ni:25〜40%、Co:0.1〜12.0%、Ni+Co:34〜40%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下及びTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo又はWの中から選ばれる1種又は数種類の金属元素を単独又は複合して0.5〜6.0%含有し、残部がFe及び不純物からなり、固溶炭素分が0.4%以下である。この文献で開示された鋳鉄では、周期表4〜6族元素(Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo又はW)が固溶体を形成することにより、ヤング率を高める。これらの元素は炭化物を形成しやすい。そのため、900〜1200℃で鋳鉄を熱処理することにより、金属組織中に残存する炭化物の析出物の面積率を3%以下にする。これにより、周期表4〜6族の元素が固溶し、ヤング率が高まる、と特許文献1には記載されている。
特開平11−310845号公報
上述のとおり、特許文献1に開示された低膨張鋳鉄では、固溶強化によりヤング率を高める。しかしながら、熱膨張係数が高くなる場合がある。さらに、特許文献1では強度に関する記載はない。
本発明の目的は、低い熱膨張係数と、高いヤング率及び引張強度を有する低熱膨張合金を提供することである。
本実施形態による低熱膨張合金は、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.05〜2.0%、Al:0.01〜0.14%、Ni:37.5〜43.5%、Ti:0.5〜3.6%、及び、Nb:1.6〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有し、800MPa以上の引張強度を有する。低熱膨張合金中の固溶Ni量は34.0〜40.0%であり、固溶Ti量は1.0%以下であり、固溶Nb量は1.0%以下である。
3.0≦1.94Ti+Nb≦7.0 (1)
式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量が代入される。
本実施形態による低熱膨張合金は、低い熱膨張係数と、高いヤング率及び引張強度とを有する。
本発明者らは、低熱膨張合金の熱膨張係数とヤング率、引張強度について調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは、次の知見を得た。
周期表4〜6族の元素が固溶状態で存在した場合、ヤング率は高くなるものの、固溶量1%を越えると熱膨張係数が急激に増大する。そこで、合金中の固溶Ti量及び固溶Nb量を質量%で1%以下に抑制する。この場合、熱膨張係数の増大が抑制されつつ、1%以下の固溶Ti及び固溶Nbにより、ヤング率が高まる。
さらに、金属間化合物であるNi3(Nb,Ti)を母相中に析出させる。Ni3(Nb,Ti)が微細に析出することにより、ヤング率が高まり、かつ、引張強度も高まる。
さらに、金属間化合物が析出した場合の母相Ni量(固溶Ni量)がインバー合金の組成のFe−36%Niに近い値になれば、合金の熱膨張係数が低くなる。具体的には、合金中の固溶Niが34.0〜40.0%になれば、熱膨張係数は低い。
Ti及びNb含有量が低すぎれば、Ti及びNb固溶量が少なすぎ、Ni3(Nb,Ti)も析出しにくい。一方、Ti及びNb含有量が高すぎれば、Ni3(Nb,Ti)が過剰に析出する。この場合、母相中のNi固溶量が低下する。さらに、金属間化合物が熱膨張することにより、合金の熱膨張係数が高くなる。
Ti及びNb含有量が、式(1)を満たせば、母相のNi固溶量を適切な量に維持しつつ、1.0%以下のTi及びNbが固溶し、かつ、適切な量のNi3(Nb,Ti)が析出する。そのため、低い熱膨張係数、高いヤング率及び引張強度が得られる。
3.0≦1.94Ti+Nb≦7.0 (1)
以上の知見に基づいて完成した本実施形態の低熱膨張合金は、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.05〜2.0%、Al:0.01〜0.14%、Ni:37.5〜43.5%、Ti:0.5〜3.6%、及び、Nb:1.6〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有し、800MPa以上の引張強度を有する。合金中の固溶Ni量は34.0〜40.0%であり、固溶Ti量は1.0%以下であり、固溶Nb量は1.0%以下である。
3.0≦1.94Ti+Nb≦7.0 (1)
上記低熱膨張合金はさらに、Cr、Mo、W、V、Ta及びZrからなる群から選択される1種又は2種以上を合計で1%以下含有してもよい。
本実施形態の低熱膨張合金は、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.05〜2.0%、Al:0.01〜0.14%、Ni:37.5〜43.5%、Ti:0.5〜3.6%、及び、Nb:1.6〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有し、熱間加工後に溶体化処理され、さらに、520〜650℃で10〜100時間時効処理されて製造される。
3.0≦1.94Ti+Nb≦7.0 (1)
式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
この場合、母相のNi固溶量を適切な量に維持しつつ、1.0%以下の固溶Ti及び固溶Nbが生成され、かつ、適切な量のNi3(Nb,Ti)が析出する。そのため、低い熱膨張係数、高いヤング率及び引張強度が得られる。
以下、本実施形態の低熱膨張合金について詳しく説明する。
[化学組成]
本実施形態の低熱膨張合金は、次の化学組成を有する。
C:0.01〜0.2%
炭素(C)は、Nb及びTiと結合して炭化物を形成し、合金の強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が有効に得られない。一方、C含有量が高すぎれば、高温においても安定なNbC及びTiC過剰に存在することにより、熱間加工性を低下させる。したがって、C含有量は0.01〜0.2%である。C含有量の好ましい下限は0.01%よりも高く、さらに好ましくは0.015%である。C含有量の好ましい上限は0.2%未満であり、さらに好ましくは0.1%である。
Si:0.05〜1.0%
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、この効果が有効に得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、合金のキューリ温度が低下し、自発体積磁歪が減少する。その結果、合金の熱膨張係数が高まる。したがって、Si含有量は0.05〜1.0%である。Si含有量の好ましい下限は0.05%よりも高く、さらに好ましくは0.08%である。Si含有量の好ましい上限は1.0%未満であり、さらに好ましくは0.5%であり、さらに好ましくは0.2%である。
Mn:0.05〜2.0%
マンガン(Mn)は鋼を脱酸する。Mn含有量が低すぎれば、この効果が有効に得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、合金のキューリ温度が低下し、自発体積磁歪が減少する。その結果、合金の熱膨張係数が高まる。したがって、Mn含有量は0.05〜2.0%である。Mn含有量の好ましい下限は0.05%よりも高く、さらに好ましくは0.08%である。Mn含有量の好ましい上限は2.0%未満であり、さらに好ましくは1.0%であり、さらに好ましくは0.2%である。
Al:0.01〜0.14%
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Al含有量が低すぎれば、この効果が有効に得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、合金のキューリ温度が低下し、自発体積磁歪が減少する。その結果、合金の熱膨張係数が高まる。したがって、Al含有量は0.01〜0.14%である。Al含有量の好ましい下限は0.01%よりも高く、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Al含有量の好ましい上限は2.0%未満であり、さらに好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Ni:37.5〜43.5%
ニッケル(Ni)は、合金の自発体積磁歪を高め、その結果、熱膨張係数を下げる。Niはさらに、Ti及びNbと結合して金属間化合物を形成し、合金の強度を高める。Ni含有量が低すぎれば、この効果は有効に得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、合金の熱膨張係数がかえって増大する。したがって、Ni含有量は37.5〜43.5%である。Ni含有量の好ましい下限は37.5%よりも高く、さらに好ましくは39%である。Ni含有量の好ましい上限は43.5%未満であり、さらに好ましくは42.5%であり、さらに好ましくは40.5%である。
Ti:0.5〜3.6%
チタン(Ti)は、母相に固溶して合金のヤング率を高める。Tiはさらに、Nb及びNiとNi3(Nb,Ti)を形成し、合金のヤング率及び引張強度を高める。Ti含有量が低すぎれば、上記効果が有効に得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、母相にTiが過剰に固溶する。この場合、合金の熱膨張係数が高くなる。Ti含有量が高すぎればさらに、Ni3(Nb,Ti)が過剰に析出して、合金の熱膨張係数が高くなる。したがって、Ti含有量は0.5〜3.6%である。Ti含有量の好ましい下限は0.5%よりも高い。Ti含有量の好ましい上限は3.6%未満であり、さらに好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1.0%である。
Nb:1.6〜7.0%
ニオブ(Nb)は、Tiと同様に母相に固溶して合金のヤング率を高める。Nbはさらに、Nb及びTiとNi3(Nb,Ti)を形成し、合金のヤング率及び引張強度を高める。Nb含有量が低すぎれば、上記効果が有効に得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、母相にNbが過剰に固溶する。この場合、合金の熱膨張係数が高くなる。Nb含有量が高すぎればさらに、Ni3(Nb,Ti)が過剰に析出して、合金の熱膨張係数が高くなる。したがって、Nb含有量は1.6〜7.0%である。Nb含有量の好ましい下限は1.6%よりも高く、さらに好ましくは3.0%であり、さらに好ましくは5.0%である。Nb含有量の好ましい上限は7.0%未満であり、さらに好ましくは6.0%である。
本実施形態の低熱膨張合金の残部はFe及び不純物である。ここで、不純物とは、合金を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の低熱膨張合金に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。不純物はたとえば、燐(P)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)等である。
[式(1)について]
本実施形態の低熱膨張合金の化学組成はさらに、次の式(1)を満たす。
3.0≦1.94Ti+Nb≦7.0 (1)
式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
F1=1.94Ti+Nbと定義する。F1が低すぎれば、固溶Ti量及び固溶Nb量が低すぎる。さらに、Ni3(Nb,Ti)の析出量が少ない。そのため、合金のヤング率及び強度が低くなる。
一方、F1が高すぎれば、金属間化合物の析出量が多くなる。この場合、金属間化合物が熱膨張することにより、合金の熱膨張係数が高くなる。F1が高すぎればさらに、固溶Ni量が低くなるため、合金の熱膨張係数が高くなる。
F1が3.0〜7.0であれば、固溶Ti量及び固溶Nb量が1.0質量%以下となる。さらに、Ni3(Nb,Ti)の析出量が適切になる。そのため、低熱膨張合金は、高いヤング率及び引張強度を有し、かつ、低い熱膨張係数を有する。F1の好ましい下限は5.0である。
本実施形態の低熱膨張合金はさらに、Cr、Mo、W、V、Ta及びZrからなる群から選択される1種又は2種以上を合計で1%以下含有してもよい。
クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、タンタル(Ta)及びジルコニウム(Zr)は、いずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、これらの元素は、合金に固溶して鋼のヤング率を高める。しかしながら、これらの元素の含有量が高すぎれば、これらの元素の固溶量が高くなりすぎる。この場合、ヤング率の向上は飽和し、合金の熱膨張係数が高くなる。したがって、これらの元素の含有量の合計は、1%以下である。これらの元素の含有量の合計の好ましい下限は0.1%であり、さらに好ましくは0.2%である。これらの元素の含有量の合計の好ましい上限は1.0%未満であり、さらに好ましくは0.8%である。
[合金中の固溶Ti量及び固溶Nb量]
本実施形態の低熱膨張合金中の固溶Ti量は、質量%で1.0%以下である。合金中の固溶Nb量は、質量%で1.0%以下である。この場合、熱膨張係数の増大が抑制されつつ、1%以下の固溶Ti及び固溶Nbにより、ヤング率が高まる。しかしながら、固溶Ti量及び固溶Nb量が高すぎれば、ヤング率の向上効果は飽和し、合金の熱膨張係数が急激に増加する。したがって、固溶Ti量及び固溶Nb量はそれぞれ、1.0%以下である。固溶Ti量の好ましい下限は0.4%である。固溶Nb量の好ましい下限は0.3%である。
[合金中の固溶Ni量]
金属間化合物が析出した場合の合金中の固溶Ni量がインバー合金の組成のFe−36%Niに近い値になれば、合金の熱膨張係数が低くなる。合金中の固溶Ni量が低すぎる場合、及び、合金中の固溶Ni量が高すぎる場合、合金の熱膨張係数が高くなる。したがって、本実施形態の固溶Ni量は、34.0〜40.0%である。
[引張強度]
本実施形態による低熱膨張合金の引張強度は800MPa以上である。Ni3(Nb,Ti)が母相中に微細析出する場合、引張強度は800MPa以上になる。一方、Ni3(Nb,Ti)が粗大になれば、引張強度は低下して、800MPa未満となる。後述の時効処理を適切な条件で実施することにより、降伏強度は800MPa以上になる。
[製造方法]
上述の合金の製造方法の一例は次のとおりである。上記化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造する。製造されたインゴットに対して、熱間加工を実施して合金材を製造する。熱間加工はたとえば、熱間鍛造である。
熱間加工後の合金材に対して、溶体化処理を実施する。溶体化処理における好ましい熱処理温度は1000〜1250℃であり、好ましい熱処理時間は0.5〜10時間である。溶体化処理により、合金中の析出物(金属間化合物及び炭化物等)を溶解する。熱処理時間経過後、合金を急冷(たとえば水冷)する。
溶体化処理での熱処理温度が1000℃未満であれば、金属間化合物(Ni3(Nb,Ti))等の析出物が固溶しにくい。熱処理温度が1250℃よりも高ければ、合金が部分溶融する。したがって、熱処理温度は好ましくは1000〜1250℃である。溶体化処理での熱処理時間が0.5時間未満であれば、Ni3(Nb,Ti)等の析出物が固溶しにくい。熱処理時間が10時間を超えれば、生産性が低下する。したがって、溶体化処理での熱処理時間は0.5〜10時間である。
溶体化処理を実施した後、合金に対して時効処理を実施する。時効処理での熱処理温度は520〜650℃であり、熱処理時間は10〜100時間である。時効処理により、合金中に適切な量のNi3(Nb,Ti)が析出する。その結果、合金中の固溶Ti量及び固溶Nb量はそれぞれ、1.0%以下になる。さらに、母相中のNi含有量は、自発体積磁歪を最も発揮する36%程度になる。
時効処理の熱処理温度が520℃未満であれば、Ni3(Nb,Ti)の析出量が少なすぎる。この場合、合金の強度が低下し、熱膨張係数が増大する。一方、熱処理温度が650℃よりも高ければNi3(Nb,Ti)が粗大化する。合金の強度が800MPa未満に低下する。
時効処理の処理時間が10時間未満であれば、Ni3(Nb,Ti)の析出量が少なすぎる。この場合、合金の強度が低下し、熱膨張係数が増大する。さらに、固溶Ti及び固溶Nb量が多すぎるため、熱膨張係数が増大する。一方、処理時間が100時間よりも長ければ、Ni3(Nb,Ti)が粗大化する。そのため、合金の強度が800MPa未満に低下する。
時効処理後の合金中のNi3(Nb,Ti)の好ましい体積分率は10〜15%である。
以上の工程により、本実施形態の低熱膨張合金が製造される。
表1に示す化学組成の供試材を準備した。
Figure 2015160983
表1中の「F1」欄には、各試験番号の化学組成におけるF1値(=1.94Ti+Nb)が記載されている。
各供試材を真空中で誘導溶解し、30kg、直径120mmのインゴットを製造した。製造されたインゴットを1250〜800℃で熱間鍛造し、厚さ20mmの板材を製造した。各板材に対して、溶体化処理を実施した。いずれの試験番号においても、溶体化処理での熱処理温度は1100℃であり、熱処理時間は1.0hrであった。
溶体化処理された各試験番号の板材に対して、時効処理を実施した。試験番号1〜3及び8〜10の時効処理における熱処理温度は600℃であり、処理時間は100hrであった。試験番号4〜7及び11の時効処理における熱処理温度は635℃であり、処理時間は10hrであった。以上の製造工程により、板材を製造した。
[固溶Ti量、固溶Nb量の測定試験]
三次元アトムプローブ法により、各試験番号の板材中の固溶Ni、固溶Ti量及び固溶Nb量を求めた。具体的には、各試験番号の板材から0.2mm×0.2mm×10mmの柱状試料を採取した。柱状試料に対して電解研磨を実施し、柱状試料を針状とした。
針状部分に対して三次元アトムプローブ測定を実施して、固溶Ni、固溶Ti量及び固溶Nb量をそれぞれ求めた。具体的には、Ni3(Nb,Ti)以外の部分での、Ni,Nb、Tiの原子数濃度から、固溶量を算出した。
[熱膨張係数測定試験]
上記板材から直径3mm、長さ15mmの試験片を作製した。試験片を用いて、熱膨張係数を求めた。具体的には、水平示差検出方式の測定装置を用いて、30〜100℃の平均熱膨張係数を求めた。
[ヤング率測定試験]
上記板材から長さ60mm、幅10mm、厚さ1.5mmの試験片を作製した。試験片を用いてヤング率を求めた。具体的には、横共振法の測定装置を用いて、ヤング率を求めた。
[引張試験]
上記板材から6丸引張試験片を作製した。作製された引張試験片に歪ゲージを貼り付けた。その後、引張試験片を用いて、常温、大気中にて引張試験を実施し、応力−歪曲線を得た。得られた応力−歪曲線を用いて、引張強度TS(MPa)を求めた。
[試験結果]
試験結果を表2に示す。
Figure 2015160983
表2を参照して、試験番号1〜試験番号7の化学組成は適切であり、F1値は適切であった。さらに、時効処理条件も適切であった。そのため、固溶Ni、固溶Ti量及び固溶Nb量は適切であった。その結果、これらの試験番号の引張強度は800MPa以上であり、ヤング率は150GPa以上であった。さらに、30〜100℃での熱膨張係数は4.0×10-6/℃以下であった。
一方、試験番号8のNi含有量は高すぎた。そのため、固溶Ni量が40.0%を超え、熱膨張係数が4.0×10-6/℃を超え、高かった。
試験番号9のNi含有量は低すぎた。そのため、固溶Ni量が34.0%未満となり、熱膨張係数が4.0×10-6/℃を超え、高かった。
試験番号10の化学組成は適切であったものの、F1値が3.0未満であり、式(1)を満たさなかった。そのため、引張強度が800MPa未満となり、ヤング率が150GPa未満であった。
試験番号11の化学組成は適切であったものの、F1値が7.0を超え、式(1)を満たさなかった。そのため、熱膨張係数が4.0×10-6/℃を超え、高かった。
試験番号12は、従来のインバー合金の化学組成に相当し、Ni含有量が低く、Ti及びNbを含有しなかった。そのため、引張強度が800MPa未満であり、ヤング率も150GPa未満であった。
試験番号1の化学組成を有する供試材を真空中で誘導溶解し、30kg、直径120mmのインゴットを複数製造した。製造されたインゴットを1250〜800℃で熱間鍛造し、厚さ20mmの板材を製造した。各板材に対して、溶体化処理を実施した。いずれの試験番号においても、溶体化処理での熱処理温度は1100℃であり、熱処理時間は1.0hrであった。
溶体化処理後の板材に対して、表3に示す条件(熱処理温度及び処理時間)にて、時効処理を実施した。以上の製造工程により、板材を製造した。
Figure 2015160983
製造された板材を用いて、実施例1と同様に、固溶Ni量、固溶Ti量、固溶Nb量、引張強度(MPa)、ヤング率(GPa)及び熱膨張係数(/℃)を求めた。
[試験結果]
試験結果を表3に示す。試験番号21及び22の化学組成は適切であり、F1値も式(1)を満たした。さらに、時効処理での熱処理温度及び処理時間も適切であった。そのため、固溶Ti量及び固溶Nb量はいずれも1.0%以下であった。その結果、引張強度は800MPa以上であり、ヤング率は150GPa以上であった。さらに、30〜100℃での熱膨張係数は4.0×10-6/℃以下であった。
一方、試験番号23では、時効処理の処理時間が短すぎた。そのため、固溶Nb量が1.0%を超えた。その結果、熱膨張係数が4.0×10-6/℃よりも高かった。さらに、引張強度も800MPa未満であった。
試験番号24では、時効処理の熱処理温度が低すぎた。そのため、固溶Ti量及び固溶Nb量が1.0%を超えた。その結果、熱膨張係数が4.0×10-6/℃よりも高かった。さらに、引張強度も800MPa未満であった。
試験番号25では、時効処理での熱処理温度が高すぎた。そのため、強度が800MPa未満であった。試験番号26では、時効処理での処理時間が長すぎた。そのため、強度が800MPa未満と低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (3)

  1. 低熱膨張合金であって、
    質量%で、
    C:0.01〜0.2%、
    Si:0.05〜1.0%、
    Mn:0.05〜2.0%、
    Al:0.01〜0.14%、
    Ni:37.5〜43.5%、
    Ti:0.5〜3.6%、及び、
    Nb:1.6〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有し、
    800MPa以上の引張強度を有し、
    前記低熱膨張合金中の固溶Ni量は34.0〜40.0%であり、固溶Ti量は1.0%以下であり、固溶Nb量は1.0%以下である、低熱膨張合金。
    3.0≦1.94Ti+Nb≦7.0 (1)
    式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載の低熱膨張合金であってさらに、
    Cr、Mo、W、V、Ta及びZrからなる群から選択される1種又は2種以上を合計で1%以下含有する、低熱膨張合金。
  3. 質量%で、
    C:0.01〜0.2%、
    Si:0.05〜1.0%、
    Mn:0.05〜2.0%、
    Al:0.01〜0.14%、
    Ni:37.5〜43.5%、
    Ti:0.5〜3.6%、及び、
    Nb:1.6〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有し、
    熱間加工後に溶体化処理され、さらに、520〜650℃で10〜100時間時効処理されて製造される、低熱膨張合金。
    3.0≦1.94Ti+Nb≦7.0 (1)
    式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
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