JP2015159856A - 血液バッグシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】効率的に血液製剤を製造することができる血液バッグシステムを提供する。
【解決手段】血液バッグシステム10は、血液又は血液成分を収容可能な親バッグ50と、赤血球保存液Mを収容する薬液室63を有する多室バッグ54と、親バッグ50と薬液室63との間の流路を形成する移送ライン55と、移送ライン55の途中から分岐したエア抜き通路66aを有し、親バッグ50からのエアを排出するエア抜き機構65とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】血液バッグシステム10は、血液又は血液成分を収容可能な親バッグ50と、赤血球保存液Mを収容する薬液室63を有する多室バッグ54と、親バッグ50と薬液室63との間の流路を形成する移送ライン55と、移送ライン55の途中から分岐したエア抜き通路66aを有し、親バッグ50からのエアを排出するエア抜き機構65とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、血液又は血液成分を収容可能な複数のバッグを備えた血液バッグシステムに関する。
近年、輸血においては、献血等により得られた血液(全血)の成分を分離して患者が必要とする成分だけを提供する成分輸血が行われている。成分輸血によれば、患者にとって循環器系への負担や副作用を軽減することができるとともに、献血された血液の有効利用が図られる。
献血により得られた血液(全血)又は全血から調製された血液成分は、遠心分離することにより、血液バッグ内で複数の層に分離される。例えば、全血から白血球と血小板を除去した残余の成分(乏白血球乏血小板血液)を血漿と赤血球(濃厚赤血球)とに分けて異なるバッグに採取する場合、まず、遠心分離によって、上清成分である血漿層と沈降成分である赤血球(濃厚赤血球)層とに分ける(遠心工程)。その後、血液バッグに連結されたチューブを介して血漿バッグに血漿を移送し、血液バッグ内に濃厚赤血球を残す(分離移送工程)。次に、薬液バッグ内に収容された赤血球保存液を、チューブを介して血液バッグ内に移送することにより、濃厚赤血球に赤血球保存液を添加する(添加工程)。
乏白血球乏血小板血液を遠心分離するとともに、遠心分離によって得られた血漿と濃厚赤血球とを別々のバッグに採取する処理(上述した遠心工程と分離移送工程)は、例えば、下記特許文献1、2に開示されているような遠心分離移送装置によって自動で行うことができる。遠心分離移送装置を用いる場合、上述した添加工程は、遠心分離移送装置から血液バッグシステムを取り出し、手作業により行う。具体的には、薬液バッグを上方にして、血液バッグを下方にすることにより、赤血球保存液を落差で血液バッグへ移送する。
上述した添加工程では、赤血球保存液を落差で血液バッグへ移送する際、赤血球保存液だけでなく薬液バッグ内に存在していたエアも血液バッグ内に流入してしまう。血液バッグ内に所定量以上のエアが存在すると赤血球に悪影響を与えるため、エア量が所定未満となるよう品質基準で定められている場合がある。このため、添加工程の後に手作業でエア抜き作業を実施する必要があり、作業負担が大きい。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、血液製剤の製造工程において、添加液の添加後の手作業によるエア抜き作業を不要とすることにより、効率的に血液製剤を製造することができる血液バッグシステムを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、血液又は血液成分を収容可能な第1バッグと、添加液を収容する薬液室を有する第2バッグと、前記第1バッグと前記薬液室との間の流路を形成する移送ラインと、前記移送ラインの途中から分岐したエア抜き通路を有し、前記第1バッグからのエアを排出するエア抜き機構と、を備える、ことを特徴とする。
上記のように構成された血液バッグシステムによれば、第1バッグ内からエアを排出するエア抜き工程において、第1バッグ内のエアを、移送ラインの一部及びエア抜き通路を介して排出することができる。このため、第2バッグの薬液室に第1バッグからのエアを流入させることなく、第1バッグのエア抜きを行うことができる。従って、第1バッグと第2バッグの高低差を利用して、第1バッグに収容された血液成分に添加液を添加した後において、第1バッグ内にはエア抜き作業が必要な程度の量のエアは存在しない。よって、添加液の添加後のエア抜き作業をなくすことができる。
上記の血液バッグシステムにおいて、前記エア抜き機構は、前記エア抜き通路上に設けられ、前記エアの排出方向の流れのみを許容する逆止弁を有してもよい。この構成により、エア抜き通路を介して排出されたエアが移送ライン及び第1バッグ内に戻ることを有効に防止することができる。
上記の血液バッグシステムにおいて、前記エア抜き機構は、前記エア抜き通路を経由したエアが流入するエア回収室を有してもよい。この構成により、エア抜き通路が外気に連通しないため、第1バッグ内、移送ライン及びエア抜き通路の清浄性を維持できる。
上記の血液バッグシステムにおいて、前記第2バッグは、前記薬液室と前記エア回収室とを有する単一のバッグであってもよい。この構成により、部品点数を増やすことなく、エア回収室を設けることができる。
上記の血液バッグシステムにおいて、前記エア回収室は、前記第2バッグから独立したエア回収バッグに設けられてもよい。
上記の血液バッグシステムにおいて、前記第1バッグからの前記エアは前記エア抜き通路を経由して外気に排出されてもよい。
上記の血液バッグシステムにおいて、前記血液成分は、濃厚赤血球であり、前記添加液は、赤血球保存液であってもよい。この構成によれば、赤血球製剤の製造時の作業手順を簡便化することができる。よって、所定の品質基準に適合する赤血球製剤を効率的に製造することができる。
本発明の血液バッグシステムによれば、血液製剤の製造工程において、添加液の添加後の手作業によるエア抜き作業を不要とすることにより、効率的に血液製剤を製造することができる。
以下、本発明に係る血液バッグシステムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る血液バッグシステム10の全体概略図である。この血液バッグシステム10は、複数の成分を含有する血液を比重の異なる複数の成分(例えば、軽比重成分及び重比重成分の2つの成分)に遠心分離し、各成分を異なるバッグに分けて収容、保存するためのものである。本実施形態に係る血液バッグシステム10は、全血から白血球及び血小板を除去した残余の血液成分を血漿及び濃厚赤血球の2つの成分に遠心分離し、血漿及び濃厚赤血球を異なるバッグに分けて収容、保存するように構成されている。
血液バッグシステム10は、ドナーから血液(全血)を採取する血液採取部12と、全血から所定の血液成分を除去する前処理部14と、所定成分が除去された残余の血液成分を遠心分離して複数の血液成分に分けるとともに各成分を異なるバッグに収容(貯留)する分離処理部16とを有する。
まず、血液採取部12について説明する。血液採取部12は、採血バッグ18と、採血チューブ20、22と、採血針24と、分岐コネクタ26と、初流血バッグ28とを有する。
採血バッグ18は、ドナーから採取した血液(全血)を収容(貯留)するためのバッグである。採血バッグ18内には、予め抗凝固剤が入れられていることが好ましい。この抗凝固剤は、通常液体であり、例えば、ACD−A液、CPD液、CPDA−1液、ヘパリンナトリウム液等が挙げられる。これらの抗凝固剤の量は、予定採血量に応じた適正な量とされる。
採血バッグ18は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁のシール部において融着(熱融着、高周波融着)又は接着し、袋状に構成されたものである。なお、初流血バッグ28も同様に袋状に構成されたものである。
また、採血バッグ18には、基端側の採血チューブ20の一端が接続される。採血チューブ20の途中部位には、採血チューブ20の流路を閉塞及び開放するクランプ30が設けられる。採血チューブ20の他端には、封止部材32の一端が接続される。封止部材32は、初期状態では流路が閉塞しているが、破断操作を行うことで流路が開通するように構成されたものである。
封止部材32の他端には、分岐コネクタ26の第1ポート26aが接続される。分岐コネクタ26の第2ポート26bには、先端側の採血チューブ22の一端が接続され、採血チューブ22の他端には、採血針24が接続される。採血針24には、使用前まではキャップ24aが装着され、使用後はニードルガード24bが装着される。ニードルガード24bは、採血チューブ22に長手方向に沿って移動可能に配設されている。
分岐コネクタ26の第3ポート26cには、分岐チューブ34の一端が接続される。分岐チューブ34の途中部位には、分岐チューブ34の流路を閉塞及び開放するクランプ36が設けられる。分岐チューブ34の他端には、初流血バッグ28が接続される。初流血バッグ28にはサンプリングポート38が接続される。なお、分岐コネクタ26の向きや配置は、図1の構成に限られず、適宜変更可能である。
前処理部14は、所定細胞を除去するフィルタ40と、一端が採血バッグ18に接続され他端がフィルタ40の入口に接続された入口側チューブ42と、一端がフィルタ40の出口に接続され他端が分離処理部16に接続された出口側チューブ44とを有する。採血バッグ18から親バッグ50へと血液を移送する際、血液はフィルタ40によって濾過され、所定細胞が除去される。
本実施形態では、フィルタ40は、白血球除去フィルタとして構成されている。このような白血球除去フィルタとしては、軟質樹脂シートから形成された袋状のハウジング内に、一方の面から他方の面に連通する多数の微細な孔を有した通液性のある多孔質体や不織布を収容した構造のものを用いることができる。又は硬質容器(例えばポリカーボネイト)内に多孔質体もしくは不織布をろ過材として包装した構造も用いることができる。本実施形態では、フィルタ40は、血小板も補足できるように構成されている。
入口側チューブ42は、ドナーから採取した血液を採血バッグ18からフィルタ40に移送するためのチューブであり、採血バッグ18の上部に接続されている。本実施形態では、入口側チューブ42の、採血バッグ18側の端部に封止部材46が設けられている。この封止部材46は、上述した封止部材32と同様の構成及び機能を有している。
出口側チューブ44は、フィルタ40で所定細胞(本実施形態では、白血球及び血小板)が除去された残余の血液(乏白血球乏血小板血液)を分離処理部16に移送するためのチューブである。この出口側チューブ44の途中部位には、出口側チューブ44の流路を閉塞及び開放するクランプ48が設けられている。このクランプ48は、上述したクランプ30と同様のものを用いることができる。
次に、分離処理部16について説明する。分離処理部16は、フィルタ40で所定細胞が除去された残余の血液を収容(貯留)する親バッグ50(第1バッグ)と、親バッグ50内の血液を遠心分離して得られた上清成分を収容及び保存する子バッグ52と、2つの収容室54a、54bを有する多室バッグ54(第2バッグ)と、親バッグ50、子バッグ52及び多室バッグ54に接続された移送ライン55とを有する。
親バッグ50、子バッグ52及び多室バッグ54は、採血バッグ18と同様に、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁のシール部において融着(熱融着、高周波融着)又は接着し、袋状に構成されたものである。なお、多室バッグ54では、周縁のシール部だけでなく、2つの収容室54a、54bを隔てる隔壁部54cを形成するように、左右の側縁の間に縦方向に延在する中間シール部において融着又は接着されている。
親バッグ50は、フィルタ40で所定細胞が除去された残余の血液を収容(貯留)するためのバッグと、当該血液を遠心分離して得られた沈降成分(濃厚赤血球)を保存するためのバッグとを兼ねている。
移送ライン55は、親バッグ50と子バッグ52とを接続し、且つ親バッグ50と多室バッグ54とを接続する手段である。図示例の移送ライン55は、親バッグ50に接続された第1チューブ56と、子バッグ52に接続された第2チューブ58と、多室バッグ54に接続された第3チューブ60と、第1〜第3チューブ56、58、60に接続された分岐コネクタ62とを有する。
第1チューブ56の一端部(親バッグ50側の端部)には、破断可能な封止部材51が設けられており、破断操作が行われるまで、親バッグ50内の血液が他のバッグに移行することを防止する。この封止部材51は、上述した封止部材32と同様の構成及び機能を有している。
第1チューブ56の他端部は、分岐コネクタ62の第1ポート62aと接続している。分岐コネクタ62の第2ポート62bには、第2チューブ58の一端が接続されている。分岐コネクタ62の第3ポート62cには、第3チューブ60の一端が接続されている。
多室バッグ54に設けられる一方の収容室54aは、赤血球保存液Mを収容する薬液室63として構成される。赤血球保存液Mとしては、MAP液、SAGM液、OPTISOL等が使用される。第3チューブ60の多室バッグ54側の端部には、破断可能な封止部材61が設けられている。この封止部材61は、上述した封止部材32と同様の構成及び機能を有している。封止部材61の流路が閉塞した状態(未破断状態)では薬液室63内の赤血球保存液Mが他のバッグに移行することを防止している。破断操作をして封止部材61内の流路を開通させると、薬液室63と第3チューブ60内の流路とが連通する。
血液バッグシステム10における各チューブは、透明で柔軟な樹脂製のチューブである。クランプ30、36、48は従来から用いられている標準品でよい。またクランプ30、36、48は、使用箇所や使用用途によって色分けしておくとよい。血液バッグシステム10の滅菌時及び使用前の保管時には、クランプ30、36、48は開放状態となっており、各バッグの内部は連通して均一な滅菌状態となっている。
血液バッグシステム10はさらに、後述する濾過工程時に親バッグ50内に流入するエアを親バッグ50から排出するためのエア抜き機構65を備える。本実施形態において、エア抜き機構65は、移送ライン55の途中から分岐したエア抜き通路66aを形成するエア抜きライン66と、エア抜き通路66a上に設けられた逆止弁67(一方向弁)と、エア抜き通路66aを経由したエアが流入するエア回収室64とを有する。
エア抜きライン66は、血液バッグシステム10における他のチューブと同様に、透明で柔軟な樹脂製のチューブにより構成され得る。第3チューブ60の途中(分岐コネクタ62と多室バッグ54との間)には、分岐コネクタ68が設けられている。エア抜きライン66の一端は、分岐コネクタ68に設けられた分岐ポート68aに接続される。このように、エア抜きライン66は、分岐コネクタ68と薬液室63との間の流路から分岐している。
逆止弁67は、エアの排出方向(分岐コネクタ68側からエア回収室64側に向かう方向)の流れのみを許容する。すなわち、逆止弁67は、分岐コネクタ68側からエア回収室64側に向かう方向には流れを許容するが、エア回収室64側から分岐コネクタ68側に向かう流れは阻止する機能を有する。このような逆止弁67としては、例えば、ダックビル弁やボール弁等を用いることができる。
エア回収室64は、多室バッグ54に設けられる他方の収容室54bとして構成される。エア抜きライン66の他端は、エア抜き通路66aとエア回収室64とが連通するように多室バッグ54に接続される。上述したように、多室バッグ54には隔壁部54cが設けられており、薬液室63とエア回収室64とは互いに独立している。すなわち、多室バッグ54は、互いに独立した薬液室63とエア回収室64とが設けられた単一のバッグである。
エア回収室64の容量は、濾過工程時に親バッグ50内に流入するエア量以上の容量に設定されるとよい。なお、他のバッグと同様に、血液バッグシステム10の製造時にエア回収室64も滅菌されている。
なお、図1に示す多室バッグ54では、薬液室63とエア回収室64とが左右方向に分かれて配置されているが、薬液室63とエア回収室64との位置関係はこれに限られない。例えば、薬液室63とエア回収室64とは、多室バッグ54の上下方向に分かれて配置されてもよく、あるいは、多室バッグ54の厚さ方向に分かれて配置されてもよい。
本実施形態に係る血液バッグシステム10は、例えば、図2に示す遠心分離移送装置70に装着して使用され得る。この遠心分離移送装置70は、親バッグ50内に収容した血液又は血液成分を遠心分離して、血漿及び濃厚赤血球の2層に分け、血漿を子バッグ52に移送し、濃厚赤血球を親バッグ50に残すために用いられる。
遠心分離移送装置70は箱形状であって、装置本体71と、開閉可能な上面の蓋72と、内部の遠心ドラム74と、該遠心ドラム74内で等角度(60°)間隔に6つ設けられたユニット挿入孔76と、各ユニット挿入孔76に対して挿入及び離脱が可能な6つのインサートユニット78と、中心部に設けられ、各インサートユニット78に対して回転径方向に進退可能な6つの押子80(図3等参照)とを有する。遠心分離移送装置70は、正面に設けられた操作部82の操作に基づいて動作し、図示しないマイクロコンピュータで制御される。
基本的に遠心分離移送装置70には6つのインサートユニット78を装着するが、バランスが取れていれば5つ以下(好ましくは、等間隔角度に3つ又は2つ)でもよい。
全血をフィルタ40で濾過して残余の血液成分を親バッグ50に移送して収容した後、血液バッグシステム10を遠心分離移送装置70に装着する前に、出口側チューブ44は、チューブシーラー等によって溶着し、漏れの無いように封止した上で切断される。このため、インサートユニット78に装着されるのは、血液バッグシステム10のうち、分離処理部16と、出口側チューブ44の一部のみである。
図1に示す血液バッグシステム10を使用してドナーから血液を採取し、採取した血液から白血球及び血小板を除去し、残余の成分を血漿及び濃厚赤血球の2層に分離し、さらに、分離した成分ごとにバッグに分けて貯留する処理は、例えば、以下の手順によって行うことができる。
まず、採血針24をドナーの皮膚に穿刺して、ドナーから血液を採取する採血工程を行う。採血工程では、採血バッグ18への血液の採取に先行して、ドナーからの血液の初流(採血初流)を所定量だけ初流血バッグ28に収容する。この場合、封止部材32を閉塞状態(初期状態)としたまま、クランプ36を開放状態とする。こうすることで、採血チューブ20側、すなわち採血バッグ18側への採血初流の流入が阻止される一方、採血チューブ22、分岐コネクタ26及び分岐チューブ34を経由して採血初流を初流血バッグ28に導入することができる。
次に、サンプリングポート38に図示しない採血管を装着することにより、当該採血管に採血初流を採取する。採取した採血初流は、検査用血液として使用される。なお、用途によっては、分岐コネクタ26からサンプリングポート38までの部分は省略されてもよい。
採血初流を採取し終えたら、クランプ36により分岐チューブ34を閉塞し、封止部材32に対して破断操作を行って、採血チューブ20の流路を開通させる。このとき、クランプ30を開放状態としておくと、ドナーからの血液は、採血チューブ22と採血チューブ20とを順に経由して採血バッグ18に流入する。
所定量の血液を採血バッグ18に採取及び貯留したら、採血バッグ18内の血液が流出しないように、クランプ30により採血チューブ20を閉塞する。そして、チューブシーラー等によって採血チューブ20を溶着及び封止した後に採血チューブ20を封止した部分で切断する。
次に、全血から所定細胞を除去する濾過工程を行う。濾過工程では、採血バッグ18を相対的に上方位置とし、親バッグ50を相対的に下方位置とし、その中間位置にフィルタ40を配置してから、入口側チューブ42の一端部に設けられた封止部材46に対して破断操作を行って、入口側チューブ42の流路を開通させる。これにより、採血バッグ18内の全血は、入口側チューブ42を介してフィルタ40に流入し、フィルタ40を通る過程で白血球及び血小板を除去され、出口側チューブ44を介して親バッグ50に流入し採取される。このとき、親バッグ50には、白血球及び血小板を除去された後の血液だけでなく、フィルタ40内に存在していたエアも流入する。
その後、チューブシーラー等によって、出口側チューブ44をクランプ48より下流側の位置で溶着及び封止したうえで、出口側チューブ44を封止した部分で切断する。
次に、親バッグ50に採取した血液成分を、血漿及び濃厚赤血球に分離し、それぞれ所定のバッグに貯留するために、血液バッグシステム10の分離処理部16を遠心分離移送装置70に装着する。この装着に際して、封止部材51に対して上述した破断操作を行って、封止部材51の流路を開通させる。封止部材51の破断操作は、親バッグ50を遠心分離移送装置70に装着する前でもよいし、装着した後でもよい。
そして、血液バッグシステム10(具体的には、分離処理部16)をインサートユニット78に装着し、インサートユニット78をユニット挿入孔76に挿入し、図3の模式図の状態とする。図3において、双方向矢印で示すA方向は、遠心分離移送装置70の遠心ドラム74の半径方向であり、特に、A1方向は半径内方向であり、A2方向は半径外方向である。
親バッグ50は、インサートユニット78に装着された状態で、縦向きに(上下方向に延在するように)保持され、バッグ本体部の厚さ方向がA方向となる向きで遠心分離移送装置70に収容される。従って、遠心分離移送装置70の遠心ドラム74の回転時、親バッグ50には、A2方向に遠心力がかかる。
図3に示すように、遠心分離移送装置70は、第1チューブ56内を通過する液の種別を検知するセンサ90を備える。センサ90は、例えば、投光部及び受光部からなり、間を通過する液の光透過度合いに基づいてその液の種別を判定することができる。
遠心分離移送装置70は、さらに、開閉動作可能であり開閉によって第2チューブ58の流路の開放及び閉塞を切り換えるクランプ92と、開閉動作可能であり開閉によって第3チューブ60の流路の開放及び閉塞を切り換えるクランプ94とを備える。遠心分離移送装置70の場合、クランプ94は、第3チューブ60のうち2つの分岐コネクタ62、68間の流路の開放及び閉塞を切り換えるように配置される。
なお、クランプ92、94は予め第2チューブ58及び第3チューブ60にそれぞれ装着され、遠心分離移送装置70には、クランプ92、94を開閉動作させる動作機構が設けられていてもよい。
次に、遠心分離移送装置70の蓋72を閉じた後、操作部82を操作することによって遠心工程及び分離移送工程を自動的に行う。図3に示すように、両クランプ92、94は遠心工程開始前に予め閉じられ、これにより第2及び第3チューブ58、60の各流路は閉塞される。封止部材61は、遠心工程及び分離移送工程が終了するまで未破断状態であり、これにより、第3チューブ60内の流路と薬液室63とは非連通状態となっている。また、図3において、親バッグ50内の上部には、エアが存在している。このエアは、フィルタ40内に存在していたエアがフィルタ40による血液の濾過時に親バッグ50内に流入したエアである。
遠心分離移送装置70の自動動作では、まず遠心ドラム74を回転させることにより、親バッグ50に貯留された血液成分を血漿と濃厚赤血球とに分ける遠心工程を行う。図4に示すように、遠心工程では、親バッグ50に貯留された血液成分が遠心力を受けることにより、重比重成分の濃厚赤血球が半径外方向(A2方向)に移り、軽比重成分の血漿が半径内方向(A1方向)に移り、2つの層に分離する。
遠心分離移送装置70は、遠心工程の後にエア抜き工程を実施する。エア抜き工程では、遠心ドラム74の回転を維持したまま、クランプ94を開くことにより第3チューブ60の流路を開放状態にする。
次に、図5に示すように、押子80を半径外方向(A2方向)に変位させて親バッグ50を押圧する。親バッグ50は押子80と壁に挟まれて容積が減少するため、親バッグ50内からエアが吐出され、第1チューブ56、分岐コネクタ62、第3チューブ60、分岐コネクタ68及びエア抜きライン66を介して、エアが多室バッグ54のエア回収室64に流入する。
エア抜きライン66には逆止弁67が設けられるため、逆止弁67を通過してエア回収室64に一旦流入したエアは、親バッグ50側に逆流することはない。エア抜き工程において、封止部材61の流路は閉塞しているため、親バッグ50からのエアが薬液室63に流入することはない。
遠心分離移送装置70は、エア抜き工程の後に血漿の分離移送工程を実施する。具体的には、エアが親バッグ50から流出し終えたら、第1チューブ56は内径側に指向していることから、最も内径側に位置する血漿が親バッグ50から流出し始める。このとき、第1チューブ56に血漿が流れたことをセンサ90により検出したら、遠心ドラム74の回転を維持したまま、クランプ94を閉じることにより第3チューブ60を閉塞状態にするとともに、クランプ92を開くことにより第2チューブ58を開放状態にする。そうすると、親バッグ50から流出した血漿は、第1チューブ56、分岐コネクタ62及び第2チューブ58を介して子バッグ52に流入する。
血漿が親バッグ50から流出し終えたら、図6のように、濃厚赤血球が親バッグ50から流出し始める。このとき、第1チューブ56に赤血球が流れたことをセンサ90により検出したら、押子80を停止するとともに、クランプ92を閉じることにより第2チューブ58の流路を閉塞する。これにより、子バッグ52に赤血球が流入することが阻止される。
以上の分離移送工程が終了したら、分離処理部16をインサートユニット78から取り出して、チューブシーラー等により第2チューブ58を溶着及び封止した後に切断することによって、血漿が収容された子バッグ52を切り離す。なお、チューブシーラー等による第2チューブ58の溶着、封止、そして切断は、クランプ92にチューブシール機能、切断機能を付加する等、遠心分離移送装置70内において、機械的な作動により行ってもよい。
次に、赤血球保存液Mを濃厚赤血球に添加する添加工程を手作業で実施する。具体的には、図7の模式図に示すように、赤血球保存液Mが収容された多室バッグ54を逆さにして(口部54dを下方に向けて)相対的に上方位置に配置し、濃厚赤血球が収容された親バッグ50を相対的に下方位置に配置する。そうすると、多室バッグ54内の赤血球保存液Mは、多室バッグ54と親バッグ50の落差によって自重で下方へと移動を始め、第3チューブ60、分岐コネクタ62及び第1チューブ56を経由して、親バッグ50内に流入する。やがて、親バッグ50内への赤血球保存液Mの流入が停止する。
逆止弁67は、分岐コネクタ68からエア回収室64側に向かう方向(順方向)の流れを許容するが、構造上、開弁するためには順方向に所定以上の圧力が必要である。一方、添加工程中、赤血球保存液Mは重力によって流下するだけであるため、逆止弁67を開く程度の圧力が逆止弁67にかかることはない。このため、添加工程中、赤血球保存液Mが逆止弁67を越えてエア回収室64側に流入することはない。
なお、添加工程の開始前の時点で、第3チューブ60内には少量のエアが存在しており、当該エアは添加工程の初期(赤血球保存液Mの親バッグ50内への流入前)に親バッグ50内に流入する。しかし、第3チューブ60内のエア量はかなり少量(第3チューブ60の長さ及び内径にもよるが、例えば、1〜3cc程度)であるため、添加工程時に親バッグ50内に流入するエア量も少量である。また、上述したように、濾過工程時にフィルタ40からのエアが親バッグ50内に流入するが、遠心分離移送装置70において実施されるエア抜き工程によって、親バッグ50からはエアがすでに排出され、エア回収室64に回収されている。従って、添加工程の終了時において、エア抜き作業が必要な程度の量のエアは親バッグ50内に存在しない。
赤血球保存液Mの流下が停止したことを確認したら、第1チューブ56を溶着及び封止した後に切断することによって親バッグ50を切り離す。
以上の処理を行うことにより、全血から白血球及び血小板を除去し、残余の血液成分を血漿及び濃厚赤血球の2つの成分に分離し、血漿及び濃厚赤血球を異なるバッグ(親バッグ50と子バッグ52)に分けて収容、保存することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る血液バッグシステム10によれば、親バッグ50内からエアを排出するエア抜き工程において、親バッグ50内のエアを、移送ライン55の一部及びエア抜き通路66aを介して排出することができる。このため、多室バッグ54の薬液室63に親バッグ50からのエアを流入させることなく、親バッグ50のエア抜きを行うことができる。従って、親バッグ50と多室バッグ54の高低差を利用して、親バッグ50に収容された血液成分(濃厚赤血球)に赤血球保存液Mを添加した後において、親バッグ50内にはエア抜き作業が必要な程度の量のエアは存在しない。よって、添加工程後のエア抜き作業をなくすことができる。
本実施形態の場合、エア抜き通路66a上には、エアの排出方向の流れのみを許容する逆止弁67が設けられるため、エア抜き通路66aを介して排出されたエアが移送ライン55及び親バッグ50内に戻ることを有効に防止することができる。
また、本実施形態の場合、エア抜き機構65は、エア抜き通路66aを経由したエアが流入するエア回収室64を有するため、エア抜き通路66aが外気に連通しない。よって、親バッグ50内、移送ライン55及びエア抜き通路66aの清浄性を維持できる。
特に、本実施形態の場合、多室バッグ54は、薬液室63とエア回収室64とを有する単一のバッグであるため、部品点数を増やすことなく、エア回収室64を設けることができる。
図8に示す第1変形例に係る血液バッグシステム10aのように、薬液室63とエア回収室64とが互いに独立したバッグに設けられてもよい。具体的には、血液バッグシステム10aでは、上述した血液バッグシステム10における多室バッグ54に代えて、薬液室63を備えた薬液バッグ100(第2バッグ)と、エア回収室64を備えたエア回収バッグ102が設けられる。第3チューブ60の途中には分岐コネクタ104が設けられ、当該分岐コネクタ104の分岐ポート104aにエア抜きライン66の一端が接続される。
エア抜きライン66の他端にエア回収バッグ102が接続される。エア抜きライン66上には逆止弁67が設けられる。逆止弁67は、分岐コネクタ104側からエア回収室64側に向かう方向の流れのみを許容する。
エア回収バッグ102は、他のバッグと同様に、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁のシール部において融着(熱融着、高周波融着)又は接着し、袋状に構成されたものである。
図8に示すように、血液バッグシステム10aにおけるエア抜き機構65aは、親バッグ50内と薬液室63との間の流路から分岐したエア抜きライン66と、エア抜きライン66上に設けられた逆止弁67と、エア抜きライン66に接続されたエア回収バッグ102とを有する。
血液バッグシステム10aの場合、上述したエア抜き工程では、親バッグ50内からエアが吐出され、第1チューブ56、分岐コネクタ62、第3チューブ60、分岐コネクタ104及びエア抜きライン66を介して、薬液バッグ100とは独立して設けられたエア回収バッグ102のエア回収室64にエアが流入する。エア抜き工程及び分離移送工程の後に手作業で行う添加工程では、上述したように、赤血球保存液Mは重力によって流下するだけであるため、逆止弁67を開く程度の圧力が逆止弁67にかかることはない。このため、添加工程中、赤血球保存液Mが逆止弁67を越えてエア回収室64側に流入することはない。
なお、図8において仮想線で示すように、エア抜きライン66上に、液体の通過を許容し且つ液体の通過を阻止する通気部材106が設けられてもよい。このような通気部材106は、例えば、疎水性の多孔質体からなる。疎水性の多孔質体としては、天然、合成、半合成、再生の有機又は無機繊維からなる多孔質体(不織布等)、スポンジフォーム等の有機、無機多孔質体、孔成分の溶出、焼結、延伸、穿孔等により孔形成された多孔質体、有機又は無機の微粒子や細片を充填した多孔質体等が挙げられる。ポリテトラフルオロエチレンやポリプロピレン等の疎水性樹脂からなる孔径0.22μm、0.45μmのフィルターを用いることができる。通気部材106が設けられる場合、赤血球保存液Mがエア回収室64側に流入することを確実に防止することができる。
上記のように構成されたエア抜き機構65aを備えた血液バッグシステム10aによっても、エア抜き工程において、薬液室63に親バッグ50からのエアを流入させることなく、親バッグ50のエア抜きを行うことができる。従って、添加工程後において、親バッグ50内にはエア抜き作業が必要な程度の量のエアは存在しない。よって、添加工程後のエア抜き作業をなくすことができる。
図9に示す第2変形例に係る血液バッグシステム10bのエア抜き機構65bのように、親バッグ50からのエアはエア抜き通路66aを経由して外気に排出されてもよい。エア抜き機構65bは、図8に示したエア抜き機構65aからエア回収バッグ102をなくした構成に相当する。
エア抜き機構65bを備えた血液バッグシステム10bによっても、エア抜き工程において、薬液室63に親バッグ50からのエアを流入させることなく、エアを外気に排出することで、親バッグ50のエア抜きを行うことができる。よって、添加工程後のエア抜き作業をなくすことができる。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
10、10a、10b…血液バッグシステム
50…親バッグ 52…子バッグ
54…多室バッグ 55…移送ライン
63…薬液室 64…エア回収室
65、65a、65b…エア抜き機構
66…エア抜きライン 66a…エア抜き通路
67…逆止弁 100…薬液バッグ
102…エア回収バッグ M…赤血球保存液
50…親バッグ 52…子バッグ
54…多室バッグ 55…移送ライン
63…薬液室 64…エア回収室
65、65a、65b…エア抜き機構
66…エア抜きライン 66a…エア抜き通路
67…逆止弁 100…薬液バッグ
102…エア回収バッグ M…赤血球保存液
Claims (7)
- 血液又は血液成分を収容可能な第1バッグと、
添加液を収容する薬液室を有する第2バッグと、
前記第1バッグと前記薬液室との間の流路を形成する移送ラインと、
前記移送ラインの途中から分岐したエア抜き通路を有し、前記第1バッグからのエアを排出するエア抜き機構と、を備える、
ことを特徴とする血液バッグシステム。 - 請求項1記載の血液バッグシステムにおいて、
前記エア抜き機構は、前記エア抜き通路上に設けられ、前記エアの排出方向の流れのみを許容する逆止弁を有する、
ことを特徴とする血液バッグシステム。 - 請求項2記載の血液バッグシステムにおいて、
前記エア抜き機構は、前記エア抜き通路を経由したエアが流入するエア回収室を有する、
ことを特徴とする血液バッグシステム。 - 請求項3記載の血液バッグシステムにおいて、
前記第2バッグは、前記薬液室と前記エア回収室とを有する単一のバッグである、
ことを特徴とする血液バッグシステム。 - 請求項3記載の血液バッグシステムにおいて、
前記エア回収室は、前記第2バッグから独立したエア回収バッグに設けられる、
ことを特徴とする血液バッグシステム。 - 請求項1又は2記載の血液バッグシステムにおいて、
前記第1バッグからの前記エアは前記エア抜き通路を経由して外気に排出される、
ことを特徴とする血液バッグシステム。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の血液バッグシステムにおいて、
前記血液成分は、濃厚赤血球であり、
前記添加液は、赤血球保存液である、
ことを特徴とする血液バッグシステム。
Priority Applications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2022034205A (ja) * | 2020-08-18 | 2022-03-03 | テルモ株式会社 | 血液バッグシステム、及びクランプ |
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-
2014
- 2014-02-26 JP JP2014035128A patent/JP2015159856A/ja active Pending
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