JP2015157966A - 黒色合金メッキ皮膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】
亜硫酸金塩およびパラジウム錯塩を含むメッキ液を用いて深味のある黒色調の金・パラジウム合金皮膜を得ること。
【解決手段】
亜硫酸金塩とジニトロジアンミンパラジウムを含むメッキ液を所定条件で電解還元し、陰極基体上に析出される金・パラジウムの合金と、その最表面に還元反応の律速段階で形成されるニトロシルパラジウムを含む黒色薄膜とからなる黒色調の金・パラジウム合金メッキ皮膜を得る。
【効果】
金・パラジウム合金メッキ皮膜に従来知られていなかった金の黄色を基調とした重厚な黒色調の光沢を与えることができる。
【選択図】 図なし

Description

本発明は黒色の金・パラジウム合金メッキ皮膜ならびにそれに用いるメッキ液およびメッキ方法に関する。
1970年頃からシアン化金に変わる金メッキ液として、亜硫酸金溶液が検討されはじめ、今日までに多くの特許および非特許文献が発表されている。
亜硫酸金を用いるメッキに関しては、特開昭49−7129{金メッキ用電解液}に、亜硫酸ナトリウムおよびアンモニウム塩によるメッキ浴が開示されている。特開昭58−133390{金メッキ電解液およびその製造}ではK6{Au2(SO3)2EDTA}なる金化合物を調製し、調製したメッキ液は25℃で2年間以上貯蔵しても変化が見られないことが記載されている。特開平11−61480{亜硫酸金メッキ浴及びそのメッキ浴の金塩補充液}には塩化金酸をアンモニア水で処理した沈殿を亜硫酸アンモニウムと芳香族ニトロ化合物との混合溶液に溶解した溶液をメッキ液とし、析出した金の硬度はビッカース硬度が71と低いが、ボンデング性の向上に適していることが記載されている。
亜流酸金はシアン化物を使用しないので毒性や環境に及ぼす影響の点で好ましいが、亜流酸イオンと金イオンとの安定度がシアンイオンと金イオンとの安定度よりも低いために、析出した金の硬度が低い欠点がある。しかし、亜硫酸金はシアン化金では不可能であったパラジウムとの合金メッキが可能となる利点がある。
亜硫酸金メッキ液の改質法としては金とパラジウムとの二元合金メッキおよび金、パラジウムおよび銅の三元合金メッキに関して多くの報告が見られる。例えば特許文献としては特開昭57−47891{金ーパラジウム合金めっき浴}および特開昭57−47892{金ーパラジウム含有メッキ液}がある。また非特許文献としては金属表面技術協会誌(1983)34巻No. 4にEDTA溶液からの金ーパラジウム合金電析および同誌34巻No7に中性EDTA溶液からの金ーパラジウムー銅合金電析が報告され、銅の添加量によって析出皮膜の結晶が微細化されて硬度は450に高まることが記載されている。さらに、特開2010―84178にはメッキ液としての安定性にすぐれかつ電流密度に対して所定の共析率を示すパラジウム合金めっき液およびめっき方法が提案されている。
特開昭59−47891 特開昭59−47892 特開2010−84178
金属表面技術協会誌(1983)34巻、No.4 金属表面技術協会誌(1983)34巻、No.7
金・パラジウム合金メッキは皮膜の硬度が高いため、前記工業用製品としての用途に加えて金の黄色を基調とする装飾製品メッキに適している。
貴金属装飾品としての用途においては硬度、耐食性などの一般的なメッキ製品の物性に加えてその皮膜の色調が製品に付加価値を与える基本的な一つの要因であり、金メッキの場合にも金の黄色を基調とし合金化元素による銀白色、ピンクゴールド、グリーンゴールドなど色調を多様に変化させたメッキ皮膜を有する製品が提供されて来た。
貴金属メッキ製品としては従来から彩度の高い光沢のある色が主流であったが、需要者層や用途によっては重厚で深味のある色調が好まれる傾向もある。たとえば装飾品や時計側の用途では製品全体の表面にルテニウムをメッキして黒色調としたものが最近市販され、その深味のある色調が注目されており、今後の需要の拡大が期待されているが、金・パラジウム合金を含めて金の合金メッキではその合金メッキ皮膜自体が黒色を帯びた色調のものは現在知られていない。
装飾品用途の金・パラジウム合金について従来知られていなかった深味のある黒色調のメッキ皮膜を与えることが可能になればその潜在的な需要をさらに拡大するものと期待される。
本発明はノンシアン系の亜硫酸金とパラジウムとの合金メッキにおいて、従来から知られていなかった黒色のメッキ皮膜ならびにそのために用いられるメッキ液およびメッキ方法を提供することを課題とする。
本発明者等は前記亜硫酸金塩とジニトロジアンミンパラジウムを含むメッキ液によってメッキ皮膜の最表面にニトロシルパラジウム(Pd(NO))に由来する黒色の薄膜を有する金・パラジウム合金メッキ皮膜が得られることを発見し、その生成のメカニズムを考察および究明することにより、従来知られていなかった黒色調の金・パラジウム合金メッキ皮膜ならびにその形成に用いられる金・パラジウム含有メッキ液およびメッキ方法を開発した。
本発明における金・パラジウム合金メッキではメッキ浴中のジニトロジアンミンパラジウム等のニトロ基を配位するパラジウム錯体が電解還元により金属パラジウムに段階的に還元される際、メッキ浴温度で安定な黒色のトランス体となり、陰極基体上に析出する金・パラジウムメッキ皮膜の最表面にニトロシルパラジウム薄膜が形成され(律速段階)メッキ皮膜に対して金に由来する彩度の高い黄色の基調に黒色の加わった重厚な外観を与える。
すなわち本発明の金・パラジウムメッキ皮膜においては、メッキ時に金・パラジウムの合金メッキ皮膜が基体上に析出し、その最表面側に黒色のニトロシルパラジウムを含む薄膜が形成されこれによってメッキ皮膜全体が光沢のある黒色を帯びた色調となる。
本発明は亜硫酸金塩、ジニトロジアンミンパラジウム、EDTA、リン酸水素二ナトリウム、グルタミン酸ソーダおよび亜硫酸ナトリウム含むメッキ液から電解還元により陰極基体上に形成された金・パラジウム合金皮膜とその最表面に形成されたニトロソパラジウムを含む黒色薄膜とからなる黒色の金・パラジウム合金メッキ皮膜を提供する。
また本発明は、メッキ液に金として3〜10g/Lの亜硫酸金、パラジウムとして0.02〜1.30g/Lのジニトロジアンミンパラジウム、1.0〜20.0g/LのNa−EDTA、20〜80g/Lのリン酸二水素ナトリウム、0.1〜2.0g/Lのグルタミン酸ナトリウム、および0.0〜50.0g/Lの亜硫酸ナトリウムを含み、pHを7.9〜11.0の範囲に調整した前記黒色の金・パラジウム合金メッキ皮膜に用いられるメッキ液を提供する。
さらに本発明は前記メッキ液を用いて浴温度45〜55℃および電流密度0.2〜1.0A/dmの範囲の条件でメッキを行う前記黒色の金・パラジウム合金のメッキ方法を提供する。
本発明によればニトロソパラジウムを含む黒色薄膜を最表面に有する黒色の金・パラジウム合金のメッキ皮膜を得ることができる。
は陰極基体上に析出した金・パラジウム合金メッキ皮膜の研磨前/研磨後の外観を示すモデル図であり、図中(A)は平面図、(B)は断面図である。 はX線光電子分光装置による皮膜の金およびパラジウムの結合エネルギーを示すグラフである。 は示差熱天秤によるジニトロジアンミンパラジウムの温度変化に対する重量減少を示すグラフである。
本発明における黒色の金・パラジウム合金メッキ皮膜を形成するためのメッキ液は合金成分としての亜硫酸金塩およびジニトロジアミンパラジウム、および添加剤としてのNa−EDTA(安定剤)、リン酸二水素ナトリウム(pH緩衝剤)、グルタミン酸ナトリウム(光沢剤)および亜硫酸塩(導電性塩)を含む。前記メッキ液を所定のメッキ条件下で電解還元により金・パラジウムを陰極基体上に析出させる際には最表面にニトロシルパラジウムPd(NO)を含む黒色薄膜が形成され、これが合金メッキ皮膜全体に対して金に由来する光沢のある黄色を基調とした深味のある黒色の合金メッキ皮膜の外観を与える。
メッキ液組成
(亜硫酸金)
本発明のメッキ皮膜の形成に用いるメッキ浴の主成分としての亜硫酸金塩はたとえば前記従来技術に開示されているように多数知られている。本発明においては、本願出願人(共栄メタル(株))が開発した亜硫酸金のナトリウムまたはカリウム塩にEDTA−4Hを添加して得た溶液を基準液として用いた。メッキ浴中の亜硫酸金の量は金として3〜10g/Lの範囲である。10g/Lを越えるとメッキ液の汲出しにおける金の量が多くなって経済的に好ましくない。
(パラジウム塩)
本発明のメッキ液に亜硫酸金塩と共に用いることのできるパラジウム塩としては後述するようにメッキの還元過程で黒色のニトロシルパラジウムを形成することのできるニトロ基を配位子として有するパラジウム錯塩が考えられるが、このような性状を有するパラジウム塩については一般的な合成化学の分野でもほとんど報告されておらず、それらのメッキ分野への適用は全く知られていない。本発明者はこのようなパラジウム錯塩としてジニトロジアンミンパラジウムが特に好ましいことを発見した。
ジニトロジアンミンパラジウ錯塩としてはシス体およびトランス体があり、シス体もメッキ浴温度では加熱によって安定なトランス体の錯塩に変換されニトロシルパラジウムへの還元段階で黒色となる。ニトロ基を配位するパラジウム化合物の色については合成化学の分野でもクロロニトロシルパラジウムについての報告例があるだけである。メッキの分野では金・パラジウムの合金メッキに用いるパラジウム錯塩についてそれが黒色のPd(NO)を生成することは全く知られていない。その他テトラニトロパラジウム塩も知られているが、安定度が高いため電解還元は困難と考えられる。
本願発明におけるメッキ浴においてはジニトロジアンミンパラジウムはパラジウムとして0.02〜1.30g/Lの範囲の量で用いられる。パラジウムが1.30g/Lの範囲をこえると、外観がパラジウムリッチな銀白色となる。
(添加剤)
本発明メッキ液においては種々の添加剤が用いられるが、本発明では安定剤として1.0〜20.0g/LのEDTAーNa塩、pH緩衝剤として20〜80g/Lのリン酸水素二ナトリウム、光沢剤として0.1〜2.0g/Lのバニリン又はグルタミン酸ナトリウム、好ましくはグルタミン酸ナトリウム、および導電性塩として0.0〜50.0g/Lの亜硫酸ナトリウムを含む組成を用いる。メッキ液の適正なpH範囲は7.9〜11.0、より好ましくは8.2〜9.6であり、酸性が高くなると亜硫酸金の解離が起こり、アルカリ性が高くなると析出した金が容易に剥離されやすくなる。
メッキ条件
前記金・パラジウム合金メッキのメッキ方法では、メッキ浴温度は45〜55℃の範囲とする。45℃以下では金の析出速度が遅く、55℃以上では金の粒子が大きくなり光沢が失われる。電流密度は浸漬時間、その他の条件にも依存するが0.2〜1.0A/dmの範囲である。
(金・パラジウム合金メッキ)
10g/Lの金を含む亜硫酸金メッキの前記基準液に0.5g/Lのパラジウムを含むジニトロジアンミンパラジウムの硝酸塩、10g/LのEDTA、40g/Lのリン酸水素二ナトリウム、10g/Lの亜硫酸ナトリウム、および1.0g/Lのグルタミン酸ナトリウムを加え、pHを8.8に調整したメッキ浴を用いて電流密度0.2A/dm、浴温度50℃として電解メッキを行った。陰極の基体上には金の光沢のある黄色を基調とする黒色皮膜が観察され、この間気泡の発生が確認された。試験片の浸漬時間を変えて析出した皮膜厚さを測定した。結果を表1に示す。
Figure 2015157966
浸漬時間が長くなるとメッキ皮膜の厚さは変わるが、析出面の光沢のある黒色の色調は変わらない。
析出皮膜中の金とパラジウムの定量分析は基板の銅を希硝酸で溶解除去し、希硝酸に不溶な残渣は王水(1+1)で溶解し、脱硝してから高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(Optima 8300:(株)パーキンエルマージャパン製)により定量した。その結果、皮膜の厚さにかかわらずパラジウムの含有量は約14%であり、金の含有量は約86%であった。
パラジウム濃度の依存性を検討するため、前記亜硫酸金メッキ液中のパラジウムの添加量を変え、試験片の浸漬時間を10分間として電流密度0.5A/dm で電解メッキし、析出皮膜中の金の量およびパラジウムの含有量を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2015157966
パラジウムの添加量にともない、析出皮膜中の金とパラジウムの析出量が変化する。パラジウムの添加量を0.04g程度では皮膜中の金の量は92〜94%で、パラジウム量は5〜7%である。パラジウムの添加量を0.4gに増加すると、皮膜中の金量は84〜85%、パラジウム量は14〜16%に変化する。さらにパラジウム添加量0.65gに増加すると、皮膜中の金の量は78%とに減少し、パラジウム量は21%に増加する。パラジウム添加量を0.95gに増加すると、皮膜中の金の量は69〜71%に、パラジウム量は29〜30%に変化する。更にパラジウムの添加量を1.30gに増加すると、皮膜中の金の量は59〜60%に、パラジウム量は40〜41%に変化する。
前記表2に示すパラジウムの添加量の範囲では析出皮膜はいずれの場合も黒色を示し、それらの間には目視的には黒色の色合いに変化は見られない。尚添加量を表外の0.02g/Lとした場合にも皮膜は黒色の色調を示したが1.30g/Lを越え約1.5g/Lの濃度ではパラジウム量に起因すると思われる銀白色に近い色調となった。
これら析出皮膜の硬さはヌープHKで123.5〜197を示した。金とパラジウムとの合金メッキにより、硬さは金メッキの皮膜の硬さの約2倍に増加した。
次に金濃度10g/Lとパラジウム濃度0.5g/Lに調整したメッキ浴を用いて、析出皮膜に及ぼす金量およびパラジウム量との比率、および色調の変化を考察した。電圧は1.0〜1.40ボルトの範囲でに変化させ、電圧以外の条件は同じにして操作した。結果を表3に示す。
Figure 2015157966
測定した電圧内で析出皮膜中の金およびパラジウム量は多少バラツキが認められるが、大きな変化は認められない。また析出皮膜の黒色の色合いに変化は見られない。
(比較例)
実施例における前記メッキ液中にパラジウム塩を存在させず亜硫酸金(Au 10g/L)のみを用い、同様な条件下で電解メッキを行った。金由来の黄色の皮膜色調が得られその厚さは浸漬時間、電流密度と共に増加する(硬度 ヌープHK69.5〜105.2)。
同様にしてメッキ液中に亜硫酸金塩を存在させずジニトロジアンミンパラジウムのみを用いてメッキを行ったところ、得られたメッキ皮膜は金由来の黄色の基調を欠いた少し白色を帯びた単調な黒色であった。
前記メッキ液中のジニトロジアンミンパラジウムに代えてテトラアンミンパラジウム(Pd 0.5g/L)を加えた他は実施例と同様にして金・パラジウム合金の電解メッキを行った。浸漬時間15〜25分の間に析出したメッキ皮膜の表面はピンク色であった。
(実施例における金・パラジウム合金メッキ皮膜の構成)
陰極試料上に析出した皮膜の表面状態を観察するため、パラジウム含有量14.0%の皮膜を付けたメッキ面の半分を研磨布で研磨し、残りの半分は研磨しない状態の皮膜を観察試料とした。試料の表面について顕微鏡写真(2000X)により析出した金属粒子の状況を観察した。試料の研磨領域および非研磨領域の顕微鏡写真による外観の状態の概要を図1(A)、(B)にモデル図として示す。図1(A)中研磨前の黒色の状態でのメッキ表面の領域1では、析出金属が粒状に均一に分布しているのが観察された。研磨後の領域2は黒色薄膜が除去され銀白色を示す。研磨面には研磨した線条痕(図示せず)が観察された。これにより析出した金・パラジウム合金のメッキ層は陰極基体上に形成された金属状態の金・パラジウム合金の膜厚がμmオーダの皮膜とその最表面に形成された膜厚がnmオーダの黒色薄膜からなることが示された(概略断面を図1(B)に示す)。
走査型エックス線光電子分光分析装置(PHI Quantera SXM:アルバック・ファイ(株)製)を用いて析出皮膜の最表面の分析を行った。研磨していない表面および研磨した表面のX線光電子分光装置による測定結果を図2のグラフに示す。X線の吸収端から得られる結合エネルギーから、金およびパラジウムが金属状態として存在することが確認された。
さらに研磨していない面についてと研磨した面はスパッタリング処理を行ったあと、走査型オージェ電子分光分析装置(PHI 700:アルバック・ファイ(株)製)を用いてそれぞれオージェ分光分析を行なった。得られた成分の定量値を表4に示す。
Figure 2015157966
スパッタリング前の試料には炭素、金・パラジウム、ナトリウム、酸素、窒素、硫黄の元素が確認された。金およびパラジウムは夫々金塩およびパラジウム塩に由来し、炭素は光沢剤から、ナトリウムは安定剤および導電性塩から、硫黄は亜硫酸塩から、窒素はジニトロジアンミンパラジウム塩からの皮膜への吸着と推定される。
スパッタリング処理後の研磨していない面からは金・パラジウム以外にナトリウム、酸素、窒素が検出され、研磨した面からは金とパラジウムのみが検出された。これは銀白色となるまで研磨したことにより黒色薄膜が除去されたためと推定される。さらに、研磨してない面のパラジウム、酸素、窒素の含有率からそれぞれの元素の当量を計算し、パラジウムとの当量比を下記のように求めた。
Pd:O:N = 0.130 : 0.156 : 0.114
= 1.0 : 1.2 : 0.88
前記当量比からパラジウム、酸素、窒素の当量比はほぼPd:O:N=1:1:1となり、最表面の皮膜の黒色成分はニトロソ基を有するニトロシルパラジウム(Pd(NO))に相当する化合物と推定される。
研磨していない面の金とパラジウムの当量比はAu/Pd=2.87と計算され、同様に研磨した面の金とパラジウムの当量比はAu/Pd=2.90と計算される。最表面の黒色薄膜とその内側の白色皮膜の金とパラジウムの当量比は同一と見なせる。
黒色薄膜の生成はニトロシルパラジウムによるものと考えられるので、ジニトロジアンミンパラジウムの示差熱天秤(Thermo plus EVOC II DG-8120:(株)リガク製)による重量変化を測定した(図3)。測定した重量変化量とパラジウム塩の熱的に解離する化学種を推定した理論値との比較を行い、黒色皮膜に含まれる化学種を確定した。
ジニトロジアンミンパラジウム錯体の重量はパラジウムに配位するNHとNOとの配位結合の強弱により、段階的に重量減少が起こると考えられる。図3のDTA曲線に見られるように241℃付近で急激に重量減少が生じ、その後241〜245℃付近でわずかに減少する屈折が観察される。この重量変化は下記の化学反応に対応するものと考えられる。
2Pd(NO)2(NH3)2 → 2Pd(NO2)2 + 4NH3 (1)
2Pd(NO2)2 → 2Pd(NO) + 2NO3 (2)
2Pd(NO) → Pd2(NO) + NO (3)
Pd2(NO) → 2Pd + NO (4)
温度241〜245℃での屈折を考えると、反応式(4)は反応式(5)および(6)からなるものとも考えられる。
Pd2(NO) → 2Pd(N) + 1/2O2 (5)
2Pd(N) → 2Pd + 1/2N2 (6)
反応式(1)、(2)、(3)により、4NH、2NOおよびNOが遂次熱解離すると、その重量減少率は47.78%と計算される。次に反応式(4)の熱分解によりNOが解離すると、その重量減少は6.45%と計算される。あるいは反応式(5)では3.44%、(6)では3.01%の減少と計算される。結果を表5に示す。
Figure 2015157966
この一連の反応から黒色薄膜はPd(NO)を含むものと推定され、さらに解離して電解時に陰極から発生する気泡は酸化窒素NOか、あるいは酸素および窒素と推定される。
合成化学の分野では黒色のパラジウム化合物について二価のジクロロジニトロシルパラジウム{PdCl2(NO)2}および一価のクロロニトロシルパラジウム{PdCl(NO)}n(nは重合度を表す)が報告されている。共にニトロソ基を有し、ニトロソ基のNOはプラスの電荷を有して、ゼロ価のパラジウムに配位結合しているとされている(尾崎、中原:貴金属元素の化学と応用p399)。また、二価のジニトロジアンミンパラジウムは温度230〜231℃に加温して、熱分解を行うと、黒色の溶融状態となることが指摘されている(尾崎、中原:貴金属元素の化学と応用p393)。
なお、亜流酸金ナトリウムは水溶液中でナトリウムイオンを解離し、1価の亜硫酸金イオンは電解還元されて亜硫酸イオンを遊離する。
前記のようにジニトロジアンミンパラジムの2価パラジウム塩は遂次電解還元されて金属パラジウムを生成する。パラジウム塩は還元されてNH、NOおよびNOを遊離し、Pd(NO)を生成する。このNOがプラスの電荷を有してパラジウムと結合し、最表面のメッキの析出皮膜を黒色とする。さらにPd(NO)の二量体Pd2(NO)からNOまたは酸素および窒素ガスが解離して陰極に金属パラジウムが析出する。この電解反応過程ではPd(NO)の還元が律速段階と考えられる。
ジニトロジアンミンパラジウム錯体からのパラジウムの還元反応はパラジウムとNOとの配位結合が強く、Pd(NO)の生成がパラジウム還元への律速段階となっている。配位結合が高いと析出電位はマイナス方向に移動するため、より高い電圧を必要とする。その結果、析出した粒子は細かく、密度の高い皮膜が得られ、皮膜の硬度が高まると考えられる。
合成化学ではニトロソ基を有するパラジウム化合物が黒色を示すことが知られているが、電気メッキの分野では黒色のPd(NO)を生じるパラジウム化合物についての報告はなされていない。メッキによって得られた黒色薄膜を研磨布で研磨すると、より光沢のあるメッキ面が現れる。これを室温に放置すると皮膜は硬さを増して研磨されにくくなる。すなわち時硬効果が生じているものと推定される。
本発明で使用したパラジウム塩はPd(NH3)2(NO2)2である。ニトロ基を配位子として含むパラジウム塩としては他にテトラニトロパラジウム(II)塩Na2{Pd(NO2)4}がある。しかしこの化合物はシアン化パラジウムと同等の安定度を有すると報告されており(尾崎、中原 貴金属元素の化学と応用 p396)、電解還元は困難と考えられる。その他には硫酸イオンを配位したジニトロモノスルフェートパラジウム(II)K2{Pd(NO2)2(SO4)}が合成されている。これら以外にNO2基を配位するパラジウム化合物は報告されていない。
本願発明の金・パラジウム合金メッキの皮膜はワイヤボンディング等の工業的用途に利用可能であると共に、特に装飾品用途においては金に由来する光沢のある黄色を基調とし従来知られていなかった黒色を帯びた重厚な色調を与え、装飾品の色調における選択の巾を拡げ潜在的な需要を喚起するものとして期待される。

Claims (3)

  1. 亜硫酸金塩、ジニトロジアンミンパラジウム、EDTA、リン酸水素二ナトリウム、グルタミン酸ソーダおよび亜硫酸ナトリウム含むメッキ液から電解還元により陰極基体上に形成された金・パラジウム合金メッキ皮膜と、その最表面にニトロソパラジウムを含む黒色薄膜とからなる黒色の金・パラジウム合金メッキ皮膜。
  2. 金として3〜10g/Lの亜硫酸金、パラジウムとして0.02〜1.30g/Lのジニトロジアンミンパラジウム、1.0〜20.0g/LのNa−EDTA、20〜80g/Lのリン酸二水素ナトリウム、0.1〜2.0g/Lのグルタミン酸ナトリウム、および0.0〜50.0g/Lの亜硫酸ナトリウムを含み、pH7.9〜11.0の範囲に調整された前記請求項1記載の黒色の金・パラジウム合金メッキに用いられるメッキ液。
  3. 前記請求項2記載のメッキ液を用い、浴温度45〜55℃および電流密度0.2〜1.0A/dmの範囲の条件で電解メッキを行う黒色の金・パラジウム合金のメッキ方法。

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