以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
<1.実施の形態>
{レーザレーダ装置11の構成例}
図1は、本発明を適用したレーザレーダ装置の一実施の形態であるレーザレーダ装置11の構成例を示している。
レーザレーダ装置11は、例えば、車両に設けられ、その車両の前方の監視を行う。なお、以下、レーザレーダ装置11により物体の検出が可能な領域を監視領域と称する。また、以下、レーザレーダ装置11が設けられている車両を他の車両と区別する必要がある場合、自車両と称する。さらに、以下、自車両の左右方向(車幅方向)と平行な方向を水平方向と称する。
レーザレーダ装置11は、制御部21、測定光投光部22、検査光発光部23、受光部24、測定部25、及び、演算部26を含むように構成される。
制御部21は、車両制御装置12からの指令や情報等に基づいて、レーザレーダ装置11の各部の制御を行う。
測定光投光部22は、物体の検出に用いるパルス状のレーザ光(レーザパルス)である測定光を監視領域に投光する。
検査光発光部23は、受光部24及び測定部25の検査等に用いる検査光を発光し、受光部24に照射する。
受光部24は、測定光の反射光又は検査光を受光し、水平方向のそれぞれ異なる方向からの反射光又は検査光の強度(明るさ)を検出する。そして、受光部24は、各方向の反射光又は検査光の強度に応じた電気信号である複数の受光信号を出力する。
測定部25は、受光部24から供給されるアナログの受光信号に基づいて、受光部24における反射光に対する受光値の測定を行い、測定した受光値を示すデジタルの受光信号を演算部26に供給する。
演算部26は、測定部25から供給される受光値の測定結果に基づいて、監視領域内の物体の検出を行い、検出結果を制御部21及び車両制御装置12に供給する。また、演算部26は、制御部21を介して、検査光発光部23、受光部24及び測定部25を制御して、受光部24及び測定部25の検査を行う。
車両制御装置12は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等により構成され、監視領域内の物体の検出結果に基づいて、自動ブレーキ制御や運転者への警報等を行う。
{測定光投光部22の構成例}
図2は、レーザレーダ装置11の測定光投光部22の構成例を示している。測定光投光部22は、駆動回路101、発光素子102、及び、投光光学系103を含むように構成される。
駆動回路101は、制御部21の制御の下に、発光素子102の発光強度や発光タイミング等の制御を行う。
発光素子102は、例えば、レーザダイオード(LD)からなり、駆動回路101の制御の下に、測定光(レーザパルス)の発光を行う。発光素子102から発光された測定光は、レンズ等により構成される投光光学系103を介して監視領域に投光される。
{検査光発光部23及び受光部24の構成例}
図3は、レーザレーダ装置11の検査光発光部23及び受光部24の構成例を示している。検査光発光部23は、駆動回路151及び発光素子152を含むように構成される。受光部24は、受光光学系201及び受光素子202−1乃至202−16を含むように構成される。
なお、以下、受光素子202−1乃至202−16を個々に区別する必要がない場合、単に受光素子202と称する。
駆動回路151は、制御部21の制御の下に、発光素子152の発光強度や発光タイミング等の制御を行う。
発光素子152は、例えば、LED(Light Emitting Diode)からなり、駆動回路151の制御の下に、パルス状のLED光からなる検査光の発光を行う。発光素子152から発光された検査光は、レンズ等の光学系を介さずに、各受光素子202の受光面に直接照射される。
受光光学系201は、レンズ等により構成され、光軸が車両の前後方向を向くように設置される。そして、受光光学系201は、監視領域内の物体等により反射された測定光の反射光が入射し、入射した反射光を各受光素子202の受光面に入射させる。
各受光素子202は、例えば、ほぼ同じ性能を有するフォトダイオード(PD)からなる。また、各受光素子202は、受光光学系201に入射した反射光が集光する位置において、受光光学系201の光軸に対して垂直、かつ、自車両の車幅方向に平行(すなわち、水平方向)に一列に並ぶように設けられている。そして、受光光学系201に入射した反射光は、受光光学系201への水平方向の入射角度に応じて、各受光素子202に振り分けられて入射する。従って、各受光素子202は、監視領域からの反射光のうち、水平方向においてそれぞれ異なる方向からの反射光を受光する。これにより、監視領域は水平方向の複数の方向における複数の領域(以下、検出領域と称する)に分割され、各受光素子202は、それぞれ対応する検出領域からの反射光を個別に受光する。そして、受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電流値の受光信号に光電変換し、得られた受光信号を測定部25に供給する。
ここで、図4及び図5を参照して、各受光素子202の検出領域の具体例について説明する。図4は、レーザレーダ装置11が設けられた自車両Cを上から見た場合の各検出領域の位置を模式的に示している。図5は、受光部24を上から見た場合の各受光素子202と各検出領域との関係を模式的に示している。なお、図5では、図を分かりやすくするために、各検出領域からの反射光のうち受光光学系201のレンズの中央を通る光線のみを模式的に示している。
各受光素子202は、自車両Cの進行方向に向かって右から受光素子202−1、202−2、202−3・・・の順に一列に並べられている。これに対して、レーザレーダ装置11の監視領域は、自車両Cの前方に放射状に広がる検出領域A1乃至A16により構成され、各検出領域は、自車両Cの進行方向に向かって左から検出領域A1、A2、A3・・・の順に並んでいる。そして、受光素子202−1は、監視領域内の左端であって、自車両Cの左前方の斜線で示される検出領域A1からの反射光を受光する。また、受光素子202−16は、監視領域内の右端であって、自車両Cの右前方の斜線で示される検出領域A16からの反射光を受光する。さらに、受光素子202−8及び202−9は、監視領域の中央の網掛けで示される検出領域A8及びA9からの反射光を受光する。
また、各受光素子202は、発光素子152からの検査光をその受光量に応じた電流値の受光信号に光電変換し、得られた受光信号を測定部25に供給する。
{測定部25の構成例}
図6は、レーザレーダ装置11の測定部25の構成例を示している。測定部25は、選択部251、電流電圧変換部252、増幅部253、及び、サンプリング部254を含むように構成される。選択部251は、マルチプレクサ(MUX)261−1乃至261−4を含むように構成される。電流電圧変換部252は、トランス・インピーダンス・アンプ(TIA)262−1乃至262−4を含むように構成される。増幅部253は、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)263−1乃至263−4を含むように構成される。サンプリング部254は、A/Dコンバータ(ADC)264−1乃至264−4を含むように構成される。
受光素子202−1乃至202−4は、MUX261−1に接続され、受光素子202−5乃至202−8は、MUX261−2に接続され、受光素子202−9乃至202−12は、MUX261−3に接続され、受光素子202−13乃至202−16は、MUX261−4に接続されている。また、MUX261−1、TIA262−1、PGA263−1及びADC264−1が直列に接続され、MUX261−2、TIA262−2、PGA263−2及びADC264−2が直列に接続され、MUX261−3、TIA262−3、PGA263−3及びADC264−3が直列に接続され、MUX261−4、TIA262−4、PGA263−4及びADC264−4が直列に接続されている。
なお、以下、MUX261−1乃至261−4、TIA262−1乃至262−4、PGA263−1乃至263−4、及び、ADC264−1乃至264−4をそれぞれ個々に区別する必要がない場合、それぞれ単にMUX261、TIA262、PGA263、及び、ADC264と称する。
各MUX261は、制御部21の制御の下に、それぞれ接続されている受光素子202から供給される受光信号のうち1つ以上を選択して、後段のTIA262に供給する。なお、各MUX261は、複数の受光信号を選択した場合、選択した受光信号を加算して、後段のTIA262に供給する。
各TIA262は、制御部21の制御の下に、MUX261から供給される受光信号の電流−電圧変換を行う。すなわち、各TIA262は、入力された電流としての受光信号を電圧としての受光信号に変換するとともに、制御部21により設定されたゲインで変換後の受光信号の電圧を増幅する。そして、各TIA262は、増幅後の受光信号を後段のPGA263に供給する。
各PGA263は、制御部21の制御の下に、TIA262から供給される受光信号の電圧を、制御部21により設定されたゲインで増幅し、後段のADC264に供給する。
このように、TIA262及びPGA263により2段の増幅部が構成され、受光信号が設定されたゲインで順に増幅される。
各ADC264は、受光信号のA/D変換を行う。すなわち、各ADC264は、制御部21の制御の下に、PGA263から供給されるアナログの受光信号のサンプリングを行うことにより受光値の測定を行う。そして、各ADC264は、受光値のサンプリング結果(測定結果)を示すデジタルの受光信号を演算部26に供給する。
なお、以下、直列に接続されているMUX261、TIA262、PGA263、及び、ADC264の組をラインとも称する。
{MUX261の構成例}
図7は、MUX261の機能の構成例を模式的に示している。
MUX261は、デコーダ271、入力端子IN1乃至IN4、スイッチ部C1乃至C4、及び、出力端子OUT1を備えている。スイッチ部C1乃至C4の一端は、それぞれ入力端子IN1乃至IN4に接続されており、スイッチ部C1乃至C4の他の一端は、出力端子OUT1に接続されている。
なお、以下、入力端子IN1乃至IN4及びスイッチ部C1乃至C4を個々に区別する必要がない場合、単に入力端子IN及びスイッチ部Cと称する。
デコーダ271は、制御部21から供給される選択信号をデコードし、デコードした選択信号の内容に従って、各スイッチ部Cのオン/オフを個別に切り替える。そして、オンになっているスイッチ部Cに接続されている入力端子INに入力される受光信号が選択され、出力端子OUT1から出力される。なお、オンになっているスイッチ部Cが複数ある場合、選択された複数の受光信号が加算されて出力端子OUT1から出力される。
なお、スイッチ部Cは、例えば、機械的なスイッチ、或いは、半導体スイッチのような電子的なスイッチのいずれで構成することも可能である。
{演算部26の構成例}
図8は、演算部26の機能の構成例を示している。
演算部26は、積算部301、検出部302、検査部303、及び、通知部304を含むように構成される。また、検出部302は、ピーク検出部311及び物体検出部312を含むように構成される。
積算部301は、同じ受光素子202の受光値の積算をサンプリング時刻毎に行い、その積算値(以下、積算受光値と称する)をピーク検出部311に供給する。また、積算部301は、各ADC264から供給される受光信号に基づく受光値の測定結果を検査部303に供給する。
ピーク検出部311は、各受光素子202の積算受光値(反射光の強度)に基づいて、測定光の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークを検出し、検出結果を物体検出部312に供給する。
物体検出部312は、積算受光値(反射光の強度)の水平方向及び時間方向(距離方向)の分布及びピークの検出結果に基づいて、監視領域内の物体の検出を行い、検出結果を制御部21及び通知部304に供給する。
検査部303は、制御部21を介して、レーザレーダ装置11の各部を制御し、受光素子202、MUX261、TIA262、及び、PGA263の検査を行う。そして、検査部303は、検査光に対する受光値の測定結果に基づいて、受光素子202、MUX261、TIA262、及び、PGA263の異常の有無を検出する。検査部303は、検査結果を制御部21及び通知部304に供給する。
通知部304は、監視領域内の物体の検出結果、及び、検査部303による検査結果を車両制御装置12に供給する。
{監視処理}
次に、図9のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置11により実行される監視処理について説明する。なお、この処理は、例えば、レーザレーダ装置11が設けられている車両のイグニッションスイッチ又はパワースイッチがオンされたとき開始され、オフされたとき終了する。
ステップS1において、検査部303は、故障フラグの値を0に設定する。
ステップS2において、検査部303は、測定前故障診断を行う。測定前故障診断の詳細な説明は省略するが、例えば、受光素子202等の故障診断が行われる。
ステップS3において、検査部303は、変数mの値を1に設定する。
ステップS4において、レーザレーダ装置11は、物体検出処理を実行する。ここで、図10のフローチャートを参照して、物体検出処理の詳細について説明する。
ステップS51において、各MUX261は、受光素子202の選択を行う。具体的には、各MUX261は、制御部21の制御の下に、各MUX261に入力される受光信号のうち後段のTIA262に供給する受光信号を選択する。そして、以下の処理において、選択された受光信号の出力元の受光素子202の受光値の測定が行われる。換言すれば、選択された受光素子202の検出領域からの反射光の強度の測定が行われる。
ステップS52において、測定光投光部22は、測定光を投光する。具体的には、駆動回路101は、制御部21の制御の下に、発光素子102からパルス状の測定光を出射させる。発光素子102から出射された測定光は、投光光学系103を介して監視領域全体に投光される。
ステップS53において、受光部24は、反射光に応じた受光信号を生成する。具体的には、各受光素子202は、受光光学系201を介して、ステップS52の処理で投光した測定光に対する反射光のうち、それぞれ対応する方向の検出領域からの反射光を受光する。そして、各受光素子202は、受光した反射光をその受光量に応じた電気信号である受光信号に光電変換し、得られた受光信号を後段のMUX261に供給する。
ステップS54において、測定部25は、受光信号のサンプリングを行う。具体的には、各TIA262は、制御部21の制御の下に、各MUX261から供給された受光信号の電流−電圧変換を行うとともに、制御部21により設定されたゲインにより受光信号の電圧を増幅する。各TIA262は、増幅後の受光信号を後段のPGA263に供給する。
各PGA263は、制御部21の制御の下に、各TIA262から供給される受光信号の電圧を、制御部21により設定されたゲインで増幅し、後段のADC264に供給する。
各ADC264は、制御部21の制御の下に、各PGA263から供給される受光信号のサンプリングを行い、受光信号をA/D変換する。各ADC264は、A/D変換後の受光信号を積算部301に供給する。
なお、受光信号のサンプリング処理の詳細については、図11を参照して後述する。
ステップS55において、積算部301は、前回までの受光値と今回の受光値の積算を行う。これにより、図12を参照して後述するように、同じ受光素子202からの受光信号の同じサンプリング時刻における受光値の積算が行われる。また、積算部301は、各ADC264から出力される受光信号について、受光値の積算処理をそれぞれ並行して実行する。これにより、4つの受光素子202の受光値の積算が、個別に並行して行われる。
ステップS56において、制御部21は、受光値の測定を所定の回数(例えば、100回)行ったか否かを判定する。まだ受光値の測定を所定の回数行っていないと判定された場合、処理はステップS52に戻る。
その後、ステップS56において受光値の測定を所定の回数行ったと判定されるまで、ステップS52乃至S56の処理が繰り返し実行される。これにより、後述する所定の長さの測定期間内に、測定光を投光し、選択した受光素子202の受光値を測定する処理が所定の回数繰り返される。また、測定した受光値の積算が行われる。
一方、ステップS56において、受光値の測定を所定の回数行ったと判定された場合、処理はステップS57に進む。
ステップS57において、制御部21は、測定期間を所定の回数(例えば、4回)繰り返したか否かを判定する。まだ測定期間を所定の回数繰り返していないと判定された場合、処理はステップS51に戻る。
その後、ステップS57において、測定期間を所定の回数繰り返したと判定されるまで、ステップS51乃至S57の処理が繰り返し実行される。すなわち、後述する所定の長さの検出期間内に、測定期間が所定の回数繰り返される。また、測定期間毎に、受光値の測定を行う対象となる受光素子202の選択が行われ、反射光の強度の測定対象となる検出領域が切り替えられる。
一方、ステップS57において、測定期間を所定の回数繰り返したと判定された場合、処理はステップS58に進む。
ここで、図11乃至図13を参照して、ステップS51乃至S57の処理の具体例について説明する。
図11は、受光信号のサンプリング処理の具体例を示すタイミングチャートであり、図内の各段の図の横軸は時間を示している。
図11のいちばん上の段は、測定光の発光タイミングを示している。検出期間TD1、TD2、・・・は、物体の検出処理を行う期間の最小単位であり、1回の検出期間において物体の検出処理が1回行われる。
また、各検出期間は、4サイクルの測定期間TM1乃至TM4及び休止期間TBを含んでいる。測定期間は、受光値の測定を行う受光素子202の切り替えを行う最小単位である。すなわち、各測定期間の前に受光素子202の選択が可能である一方、測定期間内は受光素子202の変更をすることができない。従って、1回の測定期間において、同じ受光素子202の受光値の測定が行われる。これにより、測定期間単位で反射光の強度を測定する対象となる検出領域を切り替えることができる。
図11の2段目は、検出期間TD1の測定期間TM2を拡大した図である。この図に示されるように、1サイクルの測定期間内に、測定光が所定の間隔で所定の回数(例えば100回)だけ投光される。
図11の3段目は、ADC264のサンプリングタイミングを規定するトリガ信号の波形を示しており、4段目は、ADC264における受光信号のサンプリングタイミングを示している。なお、4段目の縦軸は受光信号の値(電圧)を示し、受光信号上の複数の黒丸は、それぞれサンプリングポイントを示している。従って、隣接する黒丸と黒丸の間の時間が、サンプリング間隔となる。
制御部21は、測定光の投光から所定の時間経過後に、トリガ信号を各ADC264に供給する。各ADC264は、トリガ信号が入力されてから所定の時間が経過した後、所定のサンプリング周波数(例えば、数十から数百MHz)で所定の回数(例えば32回)だけ受光信号のサンプリングを行う。すなわち、測定光が投光される度に、MUX261により選択された受光信号のサンプリングが、所定のサンプリング間隔で所定の回数行われる。
例えば、ADC264のサンプリング周波数を100MHzとすると、10ナノ秒のサンプリング間隔でサンプリングが行われる。従って、距離に換算して約1.5mの間隔で受光値のサンプリングが行われる。すなわち、各検出領域内の自車両からの距離方向において約1.5m間隔の各地点からの反射光の強度が測定される。
そして、各ADC264は、トリガ信号を基準とする(トリガ信号が入力された時刻を0とする)各サンプリング時刻におけるサンプリング値(受光値)を示すデジタルの受光信号を積算部301に供給する。
このように、測定光が投光される度に、MUX261により選択された各受光素子202の受光信号のサンプリングが並行して行われる。すなわち、MUX261−1、MUX261−2、MUX261−3及びMUX261−4において選択された各受光素子202の受光信号は、それぞれADC264−1、ADC264−2、ADC264−3及びADC264−4によって並行してサンプリングが行われる。これにより、選択された各受光素子202の検出領域内の反射光の強度が所定の距離単位で測定される。
一方、休止期間TBは、測定期間TM4と次の検出期間の測定期間TM1との合間に設定され、測定光の投光及び受光値の測定が休止する。そして、測定期間TM1乃至TM4における受光値の測定結果に基づく物体の検出処理や、後述する故障診断処理1、2が、休止期間TB中に実行される。
次に、図12を参照して、受光値の積算処理の具体例について説明する。図12は、1サイクルの測定期間中に測定光を100回投光した場合に、ある受光素子202から出力される100回分の受光信号に対する積算処理の例を示している。なお、図12の横軸はトリガ信号が入力されたタイミングを基準(時刻0)とする時刻(サンプリング時刻)を示し、縦軸は受光値(サンプリング値)を示している。
この図に示されるように、1回目から100回目までの各測定光に対して、それぞれサンプリング時刻t1乃至tyにおいて受光信号のサンプリングが行われ、同じサンプリング時刻における受光値が積算される。例えば、1回目から100回目までの各測定光に対するサンプリング時刻t1における受光値が積算される。このようにして、検出期間内にサンプリングされた、同じ受光素子202からの受光信号の同じサンプリング時刻における受光値の積算が行われる。そして、この積算値が以降の処理に用いられる。
ここで、MUX261において複数の受光素子202からの受光信号を加算する場合、例えば、受光素子202−1及び202−2からの受光信号を加算した受光信号の受光値は、受光素子202−1又は受光素子202−2の一方のみからの受光信号の受光値とは別に積算される。換言すれば、受光素子202−1及び202−2からの受光信号を加算した受光信号の受光値と、受光素子202−1又は受光素子202−2の一方のみからの受光信号の受光値とは、それぞれ別の種類の受光信号をサンプリングした受光値として区別され、分けて積算される。
この積算処理を行うことにより、1回の測定光に対する受光信号のS/N比が低い場合でも、信号成分が増幅され、ランダムなノイズは平均化されて減少する。その結果、受光信号から信号成分とノイズ成分を分離しやすくなり、実質的に受光感度を上げることができる。これにより、例えば、遠方の物体や反射率の低い物体の検出精度が向上する。なお、積算回数が多くなるほど、受光感度が上がることになる。
なお、以下、1サイクルの測定期間内に実行される所定の回数(例えば、100回)の測定処理及び積算処理のセットを測定積算ユニットと称する。
図13は、各測定期間において各MUX261により選択される受光素子202の組み合わせの例を示している。なお、この図において、MUX261−1乃至261−4をMUX1乃至4と短縮して表している。また、図内の四角のマスの中の番号は、MUX261−1乃至261−4により選択された受光素子202の番号を示している。すなわち、受光素子202−1乃至202−16が、それぞれ1乃至16の番号で示されている。
例えば、測定期間TM1において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−1、202−5、202−9、202−13がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM2において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−2、202−6、202−10、202−14がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM3において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−3、202−7、202−11、202−15がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。測定期間TM4において、MUX261−1乃至261−4により受光素子202−4、202−8、202−12、202−16がそれぞれ選択され、選択された各受光素子202の受光値の測定が行われる。
従って、この例では、1回の検出期間内に全ての受光素子202の受光値の測定が行われる。換言すれば、1回の検出期間内に監視領域内の全検出領域からの反射光の強度が測定される。
図10に戻り、ステップS58において、ピーク検出部311は、ピーク検出を行う。具体的には、積算部301は、1回の検出期間内の各受光素子202の積算受光値をピーク検出部311に供給する。ピーク検出部311は、各受光素子202のサンプリング時刻毎の積算受光値の分布に基づいて、検出期間内の反射光の強度の水平方向及び時間方向(距離方向)のピークを検出する。
具体的には、ピーク検出部311は、受光素子202毎に積算受光値がピークとなるサンプリング時刻を検出する。すなわち、ピーク検出部311は、各受光素子202の積算受光値の時間方向のピークを検出する。これにより、自車両からの距離方向において反射光の強度がピークとなる地点が、検出領域毎に検出される。換言すれば、各検出領域において、反射光の強度がピークとなる地点の自車両からの距離が検出される。
また、ピーク検出部311は、サンプリング時刻毎に積算受光値がピークとなる受光素子202(検出領域)を検出する。すなわち、ピーク検出部311は、各サンプリング時刻における積算受光値の水平方向のピークを検出する。これにより、自車両からの距離方向において、所定の間隔ごと(例えば、約1.5mごと)に反射光の強度がピークとなる水平方向の位置(検出領域)が検出される。
そして、ピーク検出部311は、検出結果を物体検出部312に供給する。
なお、ピーク検出部311のピーク検出方法には、任意の方法を採用することができる。
ステップS59において、物体検出部312は、物体の検出を行う。具体的には、物体検出部312は、検出期間内の受光値(反射光の強度)の水平方向及び時間方向の分布及びピークの検出結果に基づいて、監視領域内の他の車両、歩行者、障害物等の物体の有無、並びに、物体の種類、方向、距離等の検出を行う。物体検出部312は、検出結果を制御部21及び通知部304に供給する。
なお、物体検出部312の物体検出方法には、任意の方法を採用することができる。
ステップS60において、通知部304は、必要に応じて物体の検出結果を外部に通知する。例えば、通知部304は、物体の有無に関わらず、物体の検出結果を定期的に車両制御装置12に供給する。或いは、例えば、通知部304は、車両が前方の物体に衝突する危険性がある場合に限り、物体の検出結果を車両制御装置12に供給する。
その後、物体検出処理は終了する。
図9に戻り、ステップS5において、レーザレーダ装置11は、故障診断処理1を実行する。ここで、図14を参照して、故障診断処理1の詳細について説明する。
なお、上述したように、故障診断処理1、及び、後述する故障診断処理2は、図11の休止期間TBの間に行われる。また、故障診断処理1及び故障診断処理2は、例えば、図10のステップS58乃至S60の処理と並行して実行することが可能である。
ステップS101において、各MUX261は、受光素子202の選択を行う。具体的には、検査部303は、故障診断処理1の実行を制御部21に指令する。そして、図10のステップS51と同様の処理により、各MUX261から後段のTIA262に供給される受光信号が1つずつ選択される。このとき、選択する受光信号は任意であり、どの受光信号を選択してもよい。ただし、故障診断処理1の実行中は、選択した受光信号が固定され、変更されることはない。
ステップS102において、制御部21は、TIA262、PGA263のゲインを設定する。なお、以下、TIA262のゲインを0dB、18dBの2種類の値から設定でき、PGA263のゲインを6dB、24dB、42dBの3種類の値から設定できる場合の例について説明する。この場合、TIA262とPGA263のゲインの組み合わせは、合計で6種類となる。
そして、制御部21は、例えば、各TIA262のゲインを18dBに設定し、各PGA263のゲインを24dBに設定する。これにより、TIA262とPGA263の各組のゲインの合計は42dBとなる。
ステップS103において、レーザレーダ装置11は、検査光測定処理を実行する。ここで、図15のフローチャートを参照して、検査光測定処理の詳細について説明する。
ステップS151において、各ADC264は、制御部21の制御の下に、サンプリングを開始する。また、各ADC264は、サンプリング値(受光値)を示すデジタルの受光信号の積算部301への供給を開始する。
ステップS152において、検査光発光部23は、検査光を発光する。具体的には、駆動回路151は、制御部21の制御の下に、発光素子152からパルス状の検査光を発光させる。発光素子152から発光された検査光は、受光光学系201を介さずに、各受光素子202の受光面に直接照射される。
ステップS153において、各ADC264は、制御部21の制御の下に、サンプリングを終了する。また、各ADC264は、積算部301への受光信号の供給を停止する。
ステップS154において、検査部303は、測定結果を取得する。すなわち、検査部303は、サンプリング開始から終了までの各ADC264による各ラインの受光値の測定結果(サンプリング結果)を積算部301から取得する。なお、検査光に対する受光値の測定は1回しか行われないため、積算部301において受光値の積算は行われない。
その後、検査光測定処理は終了する。
図14に戻り、ステップS104において、検査部303は、閾値1<受光値<閾値2であるか否かを判定する。
図16は、受光値の測定結果の例を模式的に示している。この例に示されるように、パルス状の検査光が発光された後、受光値がパルス状に変化し、大きなピークが現れる。そして、検査部303は、各ラインの受光値のピークを検出し、検出した各ピークを閾値1及び閾値2と比較する。そして、各ラインの受光値のピークのうち少なくとも1つが閾値1以下、又は、閾値2以上であると判定された場合、処理はステップS105に進む。
なお、閾値1は、例えば、TIA262とPGA263のゲインの合計を、24dB(後述するステップS106の処理で設定されるゲインの合計値)より大きく、42dB(ステップS102及びステップS110の処理で設定されるゲインの合計値)より小さい所定の値(例えば、33dB)に設定した場合の検査光に対する受光値の標準的な値に設定される。閾値2は、例えば、TIA262とPGA263のゲインの合計を、42dBより大きい所定の値(例えば、51dB)に設定した場合の検査光に対する受光値の標準的な値に設定される。
ステップS105において、検査部303は、故障フラグの値を1に設定する。すなわち、検査部303は、受光値の異常が発生しているラインに接続されているTIA262及びPGA263の少なくとも一方に、ゲインの異常が発生していると判定する。ここで、ゲインの異常には、例えば、ゲインが切り替わらない、ゲインの誤差が大きい等の異常が想定される。
その後、処理はステップS106に進む。
一方、ステップS104において、各ラインの受光値のピークが全て閾値1より大きく、かつ、閾値2未満であると判定された場合、ステップS105の処理はスキップされ、処理はステップS106に進む。
ステップS106において、制御部21は、TIA262、PGA263のゲインを変更する。例えば、制御部21は、各TIA262のゲインを18dBに設定し、各PGA263のゲインを6dBに設定する。これにより、TIA262とPGA263の各組のゲインの合計は24dBとなる。
ステップS107において、ステップS103の処理と同様に、検査光測定処理が実行される。
ステップS108において、検査部303は、ステップS106と同様の処理により、受光値≦閾値1であるか否かを判定する。そして、各ラインの受光値のピークのうち少なくとも1つが閾値1より大きいと判定された場合、処理はステップS109に進む。
ステップS109において、ステップS105と同様の処理により、故障フラグの値が1に設定される。
一方、ステップS108において、各ラインの受光値のピークが全て閾値1以下であると判定された場合、ステップS109の処理はスキップされ、処理はステップS110に進む。
ステップS110において、制御部21は、TIA262、PGA263のゲインを変更する。例えば、制御部21は、各TIA262のゲインを0dBに設定し、各PGA263のゲインを42dBに設定する。これにより、TIA262とPGA263の各組のゲインの合計は42dBとなる。
ステップS111において、ステップS103の処理と同様に、検査光測定処理が実行される。
ステップS112において、ステップS104と同様の処理により、閾値1<受光値<閾値2であるか否かが判定される。そして、各ラインの受光値のピークのうち少なくとも1つが閾値1以下、又は、閾値2以上であると判定された場合、処理はステップS113に進む。
ステップS113において、ステップS105と同様の処理により、故障フラグの値が1に設定される。その後、処理はステップS114に進む。
一方、ステップS112において、各ラインの受光値のピークが全て閾値1より大きく、かつ、閾値2未満であると判定された場合、ステップS113の処理はスキップされ、処理はステップS114に進む。
ステップS114において、制御部21は、TIA262、PGA263のゲインを元に戻す。すなわち、制御部21は、各TIA262、PGA263のゲインを故障診断処理1の実行前の値に戻す。
その後、故障診断処理1は終了する。
この故障診断処理1により、各TIA262及びPGA263のゲインの検査を迅速に行い、確実に異常を検出することができる。すなわち、TIA262のゲインが2種類、PGA263のゲインが3種類あり、合計で6種類のゲインの組み合わせがあるが、この処理では、3種類のゲインの組み合わせのみで、各TIA262及びPGA263の全てのゲインの検査を行うことができる。
例えば、各TIA262及びPGA263は、ゲインを変更した後に動作が安定するまでの間に所定の時間(例えば、100μs)を要する。そこで、検査するゲインの組み合わせの種類を減らすことにより、故障診断処理1の所要時間を短縮することができる。これにより、故障診断処理1及び故障診断処理2を確実に休止期間内に実行することが可能になる。
なお、故障診断を行うゲインの組み合わせの種類及び順序は、例えば、以下の条件に基づいて設定される。
まず、TIA262とPGA263の設定可能なゲインを全て含むように、ゲインの組み合わせの種類が設定される。すなわち、TIA262とPGA263の設定可能な各ゲインが、必ず1以上の組み合わせに含まれるように、ゲインの組み合わせの種類が設定される。
また、ゲインの組み合わせの種類の数は、TIA262とPGA263のうちゲインの可変数が大きいPGA263の可変数と等しい値(すなわち、3種類)に設定される。すなわち、TIA262とPGA263の設定可能なゲインを全て含むという条件下で、ゲインの組み合わせの種類の数が最小になるように、ゲインの組み合わせの種類が設定される。
さらに、ゲインの組み合わせを変更する度にゲインの合計値が変化するように、ゲインの組み合わせを変更する順序を設定することが望ましい。これにより、TIA262とPGA263のゲインが変更されない異常を、迅速かつ確実に検出することが可能になる。
また、ゲインの組み合わせを変更する度にゲインの合計値を変化させるという条件下で、ゲインの合計値の種類が最小になるように、ゲインの組み合わせの種類を設定することが望ましい。例えば、3種類のゲインの組み合わせを故障診断に用いる場合、ゲインの合計値の種類が、3種類より少ない2種類になるようにゲインの組み合わせの種類を設定することが望ましい。このようにゲインの合計値の種類を減らすことにより、故障診断処理1に用いる閾値の数を減らし、故障診断のエラーが発生する可能性を低下させることができる。
さらに、各ゲインの組み合わせにおけるゲインの合計値の最小値と最大値の差の上限が所定の範囲内に収まるように、ゲインの組み合わせの種類を設定することが望ましい。こ上限値は、例えば、ADC264のダイナミックレンジに基づいて設定される。
具体的には、例えば、ADC264のビット数を9ビットとし、下位3ビットがノイズレベルであるとすると、ADC264のダイナミックレンジは、36dB(=20log(29/23))となる。また、受光値の測定結果に±3dBのバラつきを許容した場合、ADC264の実質的なダイナミックレンジは、30dB(=36dB−6dB)となる。この場合、各ゲインの組み合わせにおけるゲインの合計値の最小値と最大値の差が30dB以下になるように、ゲインの組み合わせの種類を設定することが望ましい。
また、ゲインの組み合わせを変更する前と後のゲインの合計値の差が、受光値の測定結果のバラつきの最大値より大きくなるように、ゲインの組み合わせを変更する順序を設定することが望ましい。例えば、上述した例では、ゲインの組み合わせを変更する前と後のゲインの合計値の差が6dBより大きくなるように、ゲインの組み合わせを変更する順序を設定することが望ましい。
そして、検査部303は、以上のようにして設定された複数のゲインの組み合わせの中から、上記の条件を満たす順序に従って1つずつゲインの組み合わせを選択して、制御部21を介して、各TIA262及びPGA263のゲインを設定する。そして、検査部303は、ゲインを設定する毎に、制御部21を介して、検査光を各受光素子202に照射したときの各TIA262及びPGA263により増幅された受光信号のピーク値に基づいて、各TIA262及びPGA263の故障診断を行う。
図9に戻り、ステップS6において、レーザレーダ装置11は、故障診断処理2を実行する。ここで、図17を参照して、故障診断処理2の詳細について説明する。
ステップS201において、検査部303は、変数nの値を2.5−m×1.5に設定する。なお、1回目の故障診断処理2では、変数mの値が1に設定されているので、変数nの値は1に設定される。
ステップS202において、各MUX261は、スイッチ部Cnをオンし、他のスイッチ部をオフする。具体的には、検査部303は、故障診断処理2の実行を制御部21に指令する。制御部21は、各MUX261のスイッチ部Cnをオンし、他のスイッチ部をオフする。
例えば、1回目の故障診断処理2では、変数nの値が1に設定されているので、図18に示されるように、MUX261−1のスイッチ部C1がオンされ、スイッチ部C2乃至C4がオフされる。また、他のMUX261も同様に、スイッチ部C1がオンされ、スイッチ部C2乃至C4がオフされる。
ステップS203において、図15を参照して上述した検査光測定処理が実行される。
例えば、1回目の故障診断処理2では、図18に示されるように、MUX261−1のスイッチ部C1に接続されている受光素子202−1の受光値が測定される。同様に、他のMUX261のスイッチ部C1に接続されている受光素子202の受光値が測定される。そして、特に異常が発生していない場合、図19に模式的に示されるように、受光値の測定結果において、検査光に対応したパルス状のピークが現れる。
なお、図18、及び、後で参照する図20乃至図22では、MUX261−1のデコーダ271の図示を省略している。
ステップS204において、検査部303は、検査光が検出されたか否かを判定する。具体的には、検査部303は、各ADC264により測定された各ラインの受光値のピークを検出し、少なくとも1つラインのピーク値が所定の閾値未満である場合、そのラインにおいて検査光が検出されなかったと判定し、処理はステップS205に進む。
ステップS205において、検査部303は、故障フラグの値を1に設定する。すなわち、検査部303は、検査光が検出されなかったラインにおいて、ステップS202の処理でオンに設定したMUX261のスイッチ部C、当該スイッチ部Cに接続されている受光素子202、及び、当該受光素子202からMUX261に至るまでの回路のうち少なくとも一か所に、断線等の異常が発生している可能性が高いと判定する。
その後、処理はステップS206に進む。
一方、ステップS204において、検査部303は、各ラインの受光値のピークが全て所定の閾値以上である場合、全てのラインにおいて検査光が検出されたと判定し、ステップS205の処理はスキップされ、処理はステップS206に進む。
ステップS206において、検査部303は、変数nの値にmを加算する。なお、1回目の故障診断処理2では、変数mの値が1に設定されているので、変数nの値が1つインクリメントされる。
ステップS207において、制御部21は、各MUX261のスイッチ部Cnをオンする。
例えば、1回目の故障診断処理2の1回目のステップS207の処理においては、変数nの値が2に設定されているので、図20に示されるように、MUX261−1のスイッチ部C1に加えて、スイッチ部C2がオンされる。また、他のMUX261も同様に、スイッチ部C1に加えて、スイッチ部C2がオンされる。
ステップS208において、図15を参照して上述した検査光測定処理が実行される。
例えば、1回目の故障診断処理2の1回目のステップS207の処理においては、MUX261−1のスイッチ部C1及びC2に接続されている受光素子202−1及び202−2の受光値の加算値が測定される。同様に、他のMUX261のスイッチ部C1及びC2に接続されている受光素子202の受光値の加算値が測定される。そして、特に異常が発生していない場合、図20の右端に示されるように、各ラインの受光値のピークは、図18に示される受光値のピークの約2倍となる。
ステップS209において、検査部303は、受光値の変化量が所定の範囲内であるか否かを判定する。具体的には、検査部303は、各ラインの受光値のピークを検出し、前回測定した受光値のピークに対する変化量を算出する。そして、検査部303が、少なくとも1つラインの受光値のピークの変化量が所定の範囲に入っていないと判定した場合、処理はステップS210に進む。
ステップS210において、検査部303は、故障フラグの値を1に設定する。すなわち、検査部303は、受光値のピークの変化量が所定の範囲に入らなかったラインにおいて、ステップS207の処理で新たにオンに設定したMUX261のスイッチ部C、当該スイッチ部Cに接続されている受光素子202、及び、当該受光素子202からMUX261の出力端子に至るまでの回路のうち少なくとも一か所に、断線等の異常が発生している可能性が高いと判定する。
ステップS211において、検査部303は、変数nの値が1又は4であるか否かを判定する。変数nの値が1又は4でないと判定された場合、処理はステップS206に戻り、その後、ステップS211において、変数nの値が1又は4であると判定されるまで、ステップS206乃至S211の処理が繰り返される。
例えば、1回目の故障診断処理2の2回目のステップS207の処理においては、変数nの値が3に設定され、図21に示されるように、MUX261−1のスイッチ部C1乃至C3がオンされる。そして、スイッチ部C1乃至C3に接続されている受光素子202−1乃至202−3の受光値の加算値が測定される。同様に、他のMUX261のスイッチ部C1乃至C3に接続されている受光素子202の受光値の加算値が測定される。そして、特に異常が発生していない場合、図21の右端に示されるように、各ラインの受光値のピークは、図18に示される受光値のピークの約3倍、図20に示される受光値のピークの約1.5倍となる。そして、少なくとも1つラインの受光値のピークの変化量が所定の範囲に入っていないと判定された場合、故障フラグの値が1に設定される。
次に、3回目のステップS207の処理においては、変数nの値が4に設定され、図22に示されるように、MUX261−1のスイッチ部C1乃至C4がオンされる。そして、スイッチ部C1乃至C4に接続されている受光素子202−1乃至202−4の受光値の加算値が測定される。同様に、他のMUX261のスイッチ部C1乃至C4に接続されている受光素子202の受光値の加算値が測定される。そして、特に異常が発生していない場合、図22の右端に示されるように、各ラインの受光値のピークは、図18に示される受光値のピークの約4倍、図20に示される受光値のピークの約2倍、図21に示される受光値のピークの約4/3倍となる。そして、少なくとも1つラインの受光値のピークの変化量が所定の範囲に入っていないと判定された場合、故障フラグの値が1に設定される。
一方、ステップS211において、変数nの値が1又は4であると判定された場合、処理はステップS212に進む。
ステップS212において、検査部303は、変数mの値を−mに設定する。これにより、1回目の故障診断処理2のステップS212では、変数mの値が−1に設定され、2回目の故障診断処理2のステップS212では、変数mの値が1に設定されるといったように、変数mの値が交互に1か−1に設定される。
そして、変数mが1に設定されている場合、上述したように、各MUX261のスイッチ部をスイッチ部C1、スイッチ部C2、スイッチ部C3、スイッチ部C4の順にオンしていきながら、各スイッチ部をオンする毎に、検査光に対する受光値の変化量の判定が行われる。一方、変数mが−1に設定されている場合、各MUX261のスイッチ部をスイッチ部C4、スイッチ部C3、スイッチ部C2、スイッチ部C1の順にオンしていきながら、各スイッチ部をオンする毎に、検査光に対する受光値の変化量の判定が行われる。
例えば、常にスイッチ部C1、スイッチ部C2、スイッチ部C3、スイッチ部C4の順にオンするようにした場合、スイッチ部C1がオフしなくなっていても、その異常を検出できない可能性がある。しかし、このように、交互にスイッチ部をオンする順序を切り替えることにより、スイッチ部C1がオフしなくなった場合に、その異常を確実に検出することが可能になる。
その後、故障診断処理2は終了する。
この故障診断処理2により、各MUX261のスイッチ部Cの状態を順に切り替え、各ラインの検査光に対する受光値を測定するだけで、各受光素子202及び各MUX261の異常を、迅速かつ確実に検出することが可能になる。また、各受光素子202及び各MUX261の故障診断を個別に行う場合と比較して、回路構成及び処理の簡易化及び効率化を実現することができる。
また、受光値のピークの絶対値ではなく、受光値のピークの相対的な変化量に基づいて異常判定を行うため、各部品の性能のバラつきや変動等に関わらず、各受光素子202及び各MUX261の異常を確実に検出することができる。例えば、MUX261を介してTIA262に接続される受光素子202の数が増加すると、一時的にTIA262の周波数特性が劣化するが、受光値のピークの変化量に基づいて故障判定を行うことにより、その周波数特性の劣化にも関わらず、受光素子202及びMUX261の異常を確実に検出することができる。
なお、故障診断処理1と故障診断処理2の順序は入れ替えることも可能である。
図9に戻り、ステップS7において、検査部303は、故障フラグが1であるか否かを判定する。故障フラグが1でないと判定された場合、すなわち、故障診断処理1及び2で異常が検出されなかった場合、処理はステップS4に戻る。
その後、ステップS7において、故障フラグが1であると判定されるまで、ステップS4乃至S7の処理が繰り返し実行される。すなわち、物体検出処理を行いながら、各検出期間の休止期間中に故障診断処理1及び2を実行する処理が繰り返される。
一方、ステップS7において、故障フラグが1であると判定された場合、すなわち、故障診断処理1又は2の少なくとも一方で異常が検出された場合、監視処理は終了する。なお、このとき、検査部303が異常を検出したことを外部に通知するようにしてもよい。
以上のように、物体の検出処理と並行して、レーザレーダ装置11の受光側の回路、すなわち、受光素子202、MUX261、TIA262及びPGA263、並びに、それらを接続する回路の検査(故障診断)を行うことができる。
<2.変形例>
以下、上述した本発明の実施の形態の変形例について説明する。
{装置構成に関する変形例}
レーザレーダ装置11の構成は、図1に示される例に限定されるものではなく、必要に応じて変更することが可能である。
例えば、制御部21と演算部26を統合したり、機能の分担を変更したりすることが可能である。
また、例えば、受光素子202、MUX261、TIA262、PGA263、ADC264の数を、必要に応じて増減することが可能である。
さらに、例えば、1つのMUX261に接続される受光素子202の数を変更することも可能である。また、例えば、各MUX261に接続される受光素子202の数は、必ずしも全て同じである必要はない。さらに、例えば、各MUX261に接続される受光素子202の組合せは上述した例に限定されず、任意に変更することが可能である。
{故障診断に関する変形例}
故障診断処理1と故障診断処理2は、必ずしも検出期間毎に毎回行う必要はなく、例えば、所定の回数の検出期間に1回の割合で実行するようにしてもよい。また、必ずしも故障診断処理1と故障診断処理2を続けて行う必要はなく、例えば、故障診断処理1と故障診断処理2を行う頻度やタイミングを変えて、両者のうち一方しか行わない検出期間を設けるようにしてもよい。
また、以上の説明では、受光信号の増幅を行う増幅部がTIA262とPGA263の2段である場合の例を示したが、上述した故障診断処理1は、増幅部が3段以上の場合にも適用することができる。
なお、増幅部の段数に関わらず、故障診断処理1を行う際のゲインの組み合わせの種類及び順序は、上述した条件に従って設定される。すなわち、各増幅部の設定可能なゲインを全て含むように、ゲインの組み合わせの種類が設定される。また、ゲインの組み合わせの種類の数は、ゲインの可変数が最大の増幅部の可変数と等しい値に設定される。
さらに、ゲインの組み合わせを変更する度にゲインの合計値が変化するように、ゲインの組み合わせを変更する順序を設定することが望ましい。また、ゲインの組み合わせを変更する度にゲインの合計値を変化させるという条件下で、ゲインの合計値の種類が最小になるように、ゲインの組み合わせの種類を設定することが望ましい。さらに、各ゲインの組み合わせのゲインの合計値の最小値と最大値の差の上限が、増幅された受光信号をA/D変換するADCの実質的なダイナミックレンジ以下になるように、ゲインの組み合わせの種類を設定することが望ましい。また、ゲインの組み合わせを変更する前と後のゲインの合計値の差が、受光値の測定結果のバラつきの最大値より大きくなるように、ゲインの組み合わせを変更する順序を設定することが望ましい。
{本発明の適用例}
故障診断処理1は、受光素子からの受光信号を複数段の増幅部により増幅するレーザレーダ装置であれば、MUXの有無や、受光素子と増幅部の並列数とは無関係に適用することが可能である。例えば、MUX261を用いずに、受光素子202の1素子毎に、TIA262、PGA263、ADC264が1つずつ設けられているレーザレーダ装置においても、故障診断処理1を適用することが可能である。
また、故障診断処理2は、2以上の受光信号が入力され、各受光信号を個別に選択することが可能であり、複数の受光信号を加算して出力可能なMUXを1つ以上備えるレーザレーダ装置であれば、適用することが可能である。
さらに、本発明は、車両用以外の他の用途に用いるレーザレーダ装置にも適用することが可能である。
[コンピュータの構成例]
なお、上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
図23は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)601,ROM(Read Only Memory)602,RAM(Random Access Memory)603は、バス604により相互に接続されている。
バス604には、さらに、入出力インタフェース605が接続されている。入出力インタフェース605には、入力部606、出力部607、記憶部608、通信部609、及びドライブ610が接続されている。
入力部606は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部607は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部608は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部609は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ610は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア611を駆動する。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU601が、例えば、記憶部608に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース605及びバス604を介して、RAM603にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU601)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア611に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア611をドライブ610に装着することにより、入出力インタフェース605を介して、記憶部608にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部609で受信し、記憶部608にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM602や記憶部608に、あらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。