以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に示されるように、本実施形態に係る運転支援装置1は、自車両に備えられ、自車両のドライバの運転を支援する装置である。自車両は、例えば、乗用車であってもよく、貨物車等であってもよい。運転支援装置1は、自車両の周囲に位置する周辺物体を検出し、周辺物体の回避に関する自車両の運転支援制御を行う。周辺物体とは、例えば、自車両の周囲に位置する歩行者、自転車、他車両、建造物その他の障害物である。
また、周辺物体の回避に関する運転支援制御とは、周辺物体との接触を回避するためにドライバの運転を支援する制御である。運転支援制御の例として、警報による報知、発光による報知、振動による報知、音声による報知等が挙げられる。なお、運転支援制御には、自車両の自動的な制動又は自動的な操舵により周辺物体を自動的に回避する回避制御を含んでもよい。
また、運転支援装置1は、過去の周辺物体に対するドライバによる反応操作の運転履歴を記録している。反応操作とは、周辺物体の存在を認識したドライバによる周辺物体と自車両の接触を回避するための操作である。反応操作としては、例えば、周辺物体との距離を確保するためのアクセルペダルOFF操作(アクセルペダルが踏まれた状態から踏まれていない状態にするための操作)、周辺物体との距離を確保するためのエンジンブレーキON操作(エンジンブレーキが有効となっている状態にするための操作)、周辺物体との距離を確保するためのブレーキペダルON操作(ブレーキペダルが踏まれていない状態から踏まれた状態にするための操作)、周辺物体との接触を防止することを目的とした車線変更等のための操舵操作、その操舵を一部(又は全部)戻すための操舵操作が挙げられる。
運転支援装置1は、過去の周辺物体に対するドライバによる反応操作の運転履歴として、自車両の周辺物体に対するドライバの反応操作毎に、進行方向指標値(以下、前後方向接近感指標と称する)及び車幅方向指標値(以下、横方向接近感指標と称する)の組合せを記録する。
前後方向接近感指標とは、周辺物体と自車両との進行方向の距離と、周辺物体と自車両との進行方向の相対接近速度とに基づく指標値である。前後方向接近感指標は、例えば、周辺物体及び自車両における進行方向の相対接近速度を進行方向の距離で除して得られる除算値である。横方向接近感指標とは、周辺物体と自車両との車幅方向の距離と、周辺物体と自車両との車幅方向の相対接近速度とに基づく値である。横方向接近感指標は、例えば周辺物体及び自車両における車幅方向の相対接近速度を車幅方向の距離で除して得られる除算値である。ここで、相対接近速度とは、周辺物体が自車両に相対的に接近してくる場合の周辺物体と自車両との相対速度である。
運転支援装置1は、過去の周辺物体に対するドライバによる反応操作の運転履歴に基づいて、ドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であるか車幅方向反応傾向であるかを判定する。ドライバの運転反応傾向とは、例えば、自車両の進行方向に位置する周辺物体を回避するための反応操作時における周辺物体との相対的な走行状況に関するドライバの運転傾向である。車幅方向反応傾向と進行方向反応傾向とは、例えば、統計的に求められた平均的なドライバの運転反応傾向を基準として分けることができる。また、進行方向反応傾向とは、例えば、基準となる運転反応傾向と比べて、自車両の周辺物体に対する車幅方向の接近度合いが小さくても早めに当該周辺物体に対する反応操作を行うことが多い傾向である。車幅方向反応傾向とは、例えば、基準となる運転反応傾向と比べて、自車両の周辺物体に対する車幅方向の接近度合いが大きくならないと当該周辺物体に対する反応操作を行わないことが多い傾向である。
具体的に、運転支援装置1は、過去の周辺物体に対するドライバによる反応操作の運転履歴のうち、反応操作毎の前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の履歴に基づいて、ドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であるか車幅方向反応傾向であるかを判定する。進行方向反応傾向及び車幅方向反応傾向の判定の基準としては、例えば、統計的に求められた平均的なドライバの運転反応傾向を採用することができる。ドライバの運転反応傾向の判定について詳しくは後述する。なお、進行方向反応傾向及び車幅方向反応傾向のより具体的な説明についても後述する。
運転支援装置1は、判定したドライバの運転反応傾向と、周辺物体の検出結果に基づいて、周辺物体の回避に関する自車両の運転支援制御を行う。運転支援装置1は、例えば、ドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であると判定した場合、検出した周辺物体と自車両との相対接近速度に関する車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合い(支援の強さ)を高くする。車幅成分指標値とは、例えば、検出した周辺物体と自車両との相対接近速度における当該自車両の車幅方向成分に関する指標値である。
また、運転支援装置1は、ドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であると判定した場合、上記の車幅成分指標値が予め定められた規定値より小さい場合に、当該車幅方向成分が当該規定値より大きい場合と比べて、運転支援制御の支援度合いを高くしてもよい。このような規定値は、複数設けることができる。規定値の具体的な説明については後述する。
また、運転支援装置1は、例えば、ドライバの運転反応傾向が車幅方向反応傾向である場合、上記の車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いを低くしてもよい。
以下、運転支援装置1が搭載される自車両は特定の一名のドライバによって利用されることを前提として説明を行う。なお、自車両を複数のドライバが利用する場合、各ドライバを個別に認証して各ドライバの運転反応傾向に基づいて運転支援制御を行う態様としてもよい。すなわち、運転支援装置1は、ドライバの個別認証を行う個別認証装置を有していてもよい。個別認証装置としては、周知のものを採用することができる。この場合、運転支援装置1は、ドライバごとに個別に運転履歴を記録する。また、運転支援装置1は、ドライバごとに個別に運転反応傾向を判定する。
以下、運転支援装置1の構成について説明する。図1に示されるように、運転支援装置1は、装置を統括的に制御する運転支援ECU[Electronic Control Unit]30を備えている。運転支援ECU30は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットである。運転支援ECU30では、ROMに記憶されているアプリケーションプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、ACC[Adaptive Cruise Control]やブレーキアシスト等の運転支援制御に係る演算処理が行われる。運転支援ECU30は、走行状態検出部10、周辺物体検出部12、運転操作検出部14と接続されている。また、運転支援ECU30は、報知部40と接続されている。
走行状態検出部10は、自車両の走行状態に関する情報を検出する。一実施形態においては、走行状態検出部10は、車速センサ16及び加速度センサ18を備えている。車速センサ16は、自車両の速度を検出するセンサである。加速度センサ18は、自車両の加速度及び減速度を検出するセンサである。走行状態検出部10は、各種センサを用いて検出した自車両の速度及び加速度及び減速度を含む自車両走行情報を運転支援ECU30に出力する。
周辺物体検出部12は、自車両の周辺に位置する周辺物体を検出する周辺物体検出部としての機能を有する。一実施形態においては、周辺物体検出部12は、レーダ20又は車外カメラ22を備えている。レーダ20は、周辺物体との距離等を測定する装置である。レーダ20は、例えば電磁波を水平面内でスキャンしながら送信し、周辺物体に反射して戻ってくる反射波を受信する。そして、レーダ20は、例えば、受信信号の周波数変化から周辺物体の有無、自車両から見た周辺物体の方位、自車両から周辺物体までの距離、自車両に対する周辺物体の相対速度、自車両に対する周辺物体の相対加速度等の情報を取得する。車外カメラ22は、例えば多眼カメラであり、自車両の前後方向や左右方向を所定の頻度で撮像する。これにより、車外カメラ22は、例えば、周辺物体の有無、自車両から見た周辺物体の方位、自車両から周辺物体までの相対距離、自車両に対する周辺物体の相対速度、自車両に対する周辺物体の相対加速度等の情報を取得する。周辺物体検出部12は、各種センサを用いて検出した周辺物体の方位、自車両と周辺物体の相対速度、相対加速度、及び相対距離を含む周辺物体情報の検出結果を運転支援ECU30に出力する。
運転操作検出部14は、自車両のドライバによる運転操作を検出する。一実施形態においては、運転操作検出部14は、ブレーキペダルセンサ24、アクセルペダルセンサ26、及び操舵センサ28を備えている。ブレーキペダルセンサ24は、ブレーキペダルの踏み込みタイミング及び踏み込み量を検出するセンサである。アクセルペダルセンサ26は、アクセルペダルの踏み込みタイミング及び踏み込み量を検出するセンサである。操舵センサ28は、操舵の開始タイミング及びその操舵の操舵量を検出するセンサである。運転操作検出部14は、自車両のドライバによる運転操作の内容を含む運転操作情報を運転支援ECU30に出力する。
運転支援ECU30は、指標値取得部32、履歴取得部34、運転反応傾向判定部35、及び運転支援決定部36を備えている。
指標値取得部32は、走行状態検出部10から出力された自車両走行情報、周辺物体検出部12から出力された周辺物体情報、及び運転操作検出部14から出力された運転操作情報に基づいて、自車両と周辺物体との相対接近速度の車幅方向成分に関する車幅成分指標値を取得する。車幅成分指標値とは、自車両の周辺に位置する周辺物体に対する相対接近速度における当該自車両の車幅方向成分に関する値である。車幅成分指標値を取得するタイミングは、例えば、周辺物体検出部12が当該周辺物体を検出したタイミングとすることができる。また、車幅成分指標値を取得するタイミングは、周辺物体検出部12が検出した周辺物体との距離が所定距離以下になったタイミング等であってもよい。
また、指標値取得部32は、取得した車幅成分指標値が、予め定められた規定値より小さいか否かを判定し、この判定結果を運転支援決定部36に出力してもよい。この規定値は、指標値取得部32において予め記憶された数量であってもよく、ドライバによる設定及び変更が可能な数量であってもよく、ドライバの運転特性に基づいてドライバ毎に異なる数量が設定可能なものであってもよい。
履歴取得部34は、過去の周辺物体に対するドライバによる反応操作の運転履歴を記憶している。履歴取得部34は、走行状態検出部10から出力された自車両走行情報、周辺物体検出部12から出力された周辺物体情報、運転操作検出部14から出力された運転操作情報、及び指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値に基づいて、上記運転履歴を取得(記憶)する。履歴取得部34は、過去の周辺物体に対するドライバの反応操作の運転履歴として、過去の反応操作時における前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の履歴を運転履歴として取得(記憶)する。ドライバの反応操作毎に前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の組合せが取得される。
図2を参照して履歴取得部34が取得する前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の取得方法についてより具体的に説明する。説明の便宜上、図2において自車両V0の進行方向(前後方向)をX軸方向とし、X軸方向に直交する自車両V0の車幅方向(横方向)をY軸方向とする。図2は、周辺物体としての歩行者Pに対するドライバの反応操作時において、自車両V0が速度Vで道路をX軸方向に走行しており、歩行者Pが速度Vpで道路外を自車両V0方面に移動している状況を示している。以下では、速度VpのX方向成分は−Vlであるとし、速度VpのY方向成分はVdであるとする。この場合、自車両V0と歩行者Pとの相対接近速度におけるX方向成分は速度V+Vlとなり、自車両V0と歩行者Pとの相対接近速度におけるY方向成分は速度Vdとなる。また、自車両V0と歩行者Pとの相対距離におけるX方向成分を距離Lとし、自車両V0と歩行者Pとの相対距離におけるY方向成分を距離Dとし、自車両V0の−X方向の加速度(すなわち、減速度)をAxとする。ここでは、履歴取得部34は、(V+Vl)/Lを前後方向接近感指標として算出し、Vd/Dを横方向接近感指標として算出する。
また、履歴取得部34が前後方向接近感指標と横方向接近感指標との組合せを取得するタイミングは、上記のアクセルペダルOFF操作、エンジンブレーキON操作、ブレーキペダルON操作、車線変更等のための操舵操作、その操舵を戻すための操舵操作のそれぞれのタイミングでもよい。更に、アクセルペダルOFF操作からブレーキペダルON操作までの間における任意のタイミングでもよく、車線変更等のための操舵操作からその操舵を戻すための操舵操作までの間における任意のタイミングでもよい。また、前後方向接近感指標と横方向接近感指標との組合せを取得するタイミングの選び方は、上記以外の特定の操作やタイミングであってもよく、上記以外の複数の選択パターンであってもよい。
なお、ブレーキペダルON操作を開始してから所定時間(例えば、自車両と周辺物体との位置関係が大きく変化するのに十分な時間)が経過した後は、当該周辺物体に関する前後方向接近感指標と横方向接近感指標との組合せを取得するタイミングとしないことが望ましい。
運転反応傾向判定部35は、履歴取得部34によって取得された前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の組合せを含む運転履歴に基づいて、ドライバの運転反応傾向が車幅方向反応傾向であるか又は進行方向反応傾向であるかを判定する。以下、運転反応傾向の判定についてグラフを用いて説明する。
図3は、前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の組合せの分布の一例を示すグラフである。図3の縦軸は前後方向接近感指標を示し、横軸は横方向接近感指標を示している。図3に、周辺物体ごとの前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の組合せに対応する点をプロットする。
まず、運転反応傾向判定部35は、複数の組合せのそれぞれに関して、前後方向接近感指標(V+Vl)/Lを横方向接近感指標Vd/Dで除して得られる除算値(すなわち、前後方向接近感指標(V+Vl)/Lの横方向接近感指標Vd/Dに対する比率)を算出する。次に、運転反応傾向判定部35は、この除算値が所定の閾値αより大きくなる組合せの数Nbを算出し、更に、除算値がその所定の閾値αより小さくなる組合せの数Nsを算出する。所定の閾値αは、運転反応傾向判定部35において予め記憶された数値であってもよく、設計者による設定及び変更が可能な数値であってもよく、ドライバの運転特性に基づいてドライバ毎に異なる値が設定可能な数値であってもよく、例えば定数としての1であってもよい。そして、運転反応傾向判定部35は、組合せの数Nsよりも組合せの数Nbが多いか否かを判定する。
図3において示される組み合わせの一例では、縦軸が前後方向接近感指標(V+Vl)/Lの大きさを示し、横軸が横方向接近感指標Vd/Dの大きさを示しているグラフにおいて、前後方向接近感指標(V+Vl)/Lの大きさがβyであって横方向接近感指標Vd/Dの大きさがβxである組合せに対応する点Bが示されている。運転反応傾向判定部35は、その組合せに対応する点Bに関して、前後方向接近感指標(V+Vl)/Lであるβyを横方向接近感指標Vd/Dであるβxで除して得られる除算値β(=βy/βx)を算出する。除算値βは、図3におけるグラフの原点と上述の組合せに対応する点Bとを結ぶ直線の傾きである。次に、運転反応傾向判定部35は、図3において示される例では、除算値が所定の閾値αより大きくなる組合せの数Nbとして8を算出し、更に、除算値がその所定の閾値αより小さくなる組合せの数Nsとして6を算出する。そして、運転反応傾向判定部35は、図3において示される例では、組合せの数Nsである6よりも組合せの数Nbである8が多いと判定する。そして、運転反応傾向判定部35は、そのドライバが、自車両の進行方向における周辺物体に対する運転反応傾向に関してドライバが進行方向反応傾向を有すると判定する。すなわち、所定の閾値αは、図3においてドライバの運転反応傾向が車幅方向反応傾向であるか又は進行方向反応傾向であるかを判定するための直線の傾きである。
運転支援決定部36は、運転反応傾向判定部35の判定結果と、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値とに基づいて、自車両による周辺物体の回避に関する運転支援制御を行う。運転支援決定部36は、例えば、周辺物体との接触を回避するための報知をドライバに行う運転支援制御を行う。
また、運転支援決定部36は、ドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であると判定された場合に、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いを高める。
ここで、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いを高めるとは、より具体的には、以下の第一の具体例及び第二の具体例の何れかを含むものである。第一の具体例において、運転支援決定部36は、ドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であると判定された場合であって、且つ、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が予め定められた規定値より小さい場合に、当該車幅成分指標値が当該規定値より大きい場合と比べて、運転支援制御の支援度合いを高める。或いは、第二の具体例において、運転支援制御の支援度合の高さは、当該車幅成分指標値と当該支援度合いとの関係が定められたマップを用意し当該マップに適用することで設定することもできる。当該マップにおいては、当該車幅成分指標値が大きくなるに反比例して、当該支援度合いの高さが連続して大きくなるように、当該車幅成分指標値と当該支援度合いとの関係が定められている。これらの何れかよって、運転支援決定部36は、ドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であると判定された場合に、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いを高める。これらにより、運転支援決定部36においては、ドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であると判定された場合に、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さい値x1である場合の運転支援制御の支援度合いy1と、車幅成分指標値が当該x1よりも大きい値x2である場合の運転支援制御の支援度合いy2と、を比較した際、y1がy2よりも高くなるように当該車幅成分指標値と当該支援度合いとの関係が設定されることとなる。
具体的には、運転支援決定部36は、運転反応傾向判定部35によってドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であると判定された場合に、指標値取得部32から車幅成分指標値と規定値との比較結果を受信する。そして、運転支援決定部36は、車幅成分指標値が規定値より小さいという大小比較結果となる自車両の走行状態時に、当該車幅成分指標値が当該規定値より大きい場合と比べて報知の度合いを上げて(運転支援制御の支援度合いを高めて)警報を発生することを決定する。報知の度合いとは、後述するように、発生させた警報のドライバによる気づき易さのことである。なお、運転支援決定部36は、上述したように、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さいほど(すなわち、周辺物体と自車両との車幅方向の距離が長いほど、及び周辺物体と自車両との車幅方向の相対接近速度が小さいほど)、報知の度合いを上げて(運転支援制御の支援度合いを高めて)警報を発生することを決定することが可能である。
ここで、図4を用いて、運転支援制御の支援度合いを高めることの具体例として、警報発生時の報知の度合いを高く設定することに関する説明を行う。図4は、縦軸が報知の度合いの高さを示す場合において、報知の度合いが中間の高さよりも高い度合いとして設定されていることを示している。報知の度合いが中間の高さよりも高い場合、例えば、警報を発生して報知するタイミングを通常時より早めに設定すること、ドライバが通常時より遥かに気づきやすい色(例:赤色、橙色、黄色)の光を発光させること、ドライバが通常時より認識しやすい通常時より高い周波数の振動を発生させること、ドライバが通常時より気づきやすいように通常時より大きい音量で注意喚起のための音声を再生すること等が行われる。一方、報知の度合いが中間の高さより低い場合、例えば、報知の度合いが中間の高さのときより遅めのタイミングで警報を発生すること、報知の度合いが中間の高さのときよりドライバが気づき難い色(例:上述の色以外の色)の光を発光させること報知の度合いが中間の高さのときよりドライバが認識し難い低い周波数の振動を発生させること、報知の度合いが中間の高さのときよりドライバが気づき難い小さい音量で注意喚起のための音声を再生すること等が行われる。
次に、警報内容の一例のイメージについて図5を用いて説明する。図5は、縦軸が報知の度合いの高さを示し、横軸が横方向接近感の強さを示すグラフである。横方向接近感とは、自車両に接近中の周辺物体に対する自車両の車幅方向における接近度合いの感覚的な大きさのことである。横方向接近感の大きさは、例えば、自車両と周辺物体との相対速度における自車両の車幅方向成分Vdを、自車両と周辺物体との相対距離における自車両の車幅方向成分Dにより除した横方向接近感指標Vd/Dによって示すことができる。運転支援決定部36は、運転反応傾向判定部35によってドライバの運転反応傾向が進行方向反応傾向であると判定された場合に、指標値取得部32によって取得された現時点での周辺物体に関する横方向接近感指標が規定値(ここでは運転履歴から得られる最大値及び最小値の中間値)より小さい自車両の走行状態時に、当該車幅成分指標値が当該規定値より大きい場合と比べて、中間の高さよりも高い報知の度合い(縦軸における値)で、警報を発生することを決定する(図5における左上のマスに示される状態)。なお、運転支援決定部36は、指標値取得部32によって取得された現時点での周辺物体に関する横方向接近感指標が小さいほど、報知の度合い(縦軸における値)を高めることを決定してもよい。
これにより、運転支援決定部36は、進行方向反応傾向を有するドライバに対して、早めの反応操作を行うよう強く促す報知が可能になる。なお、図5に示される一例では、指標値取得部32によって取得された現時点での周辺物体に関する横方向接近感指標が中間値より大きい走行状態時においても報知することが決定されているが(図5における右上のマスに示される状態)、そのような走行状態時においては報知が行われなくてもよい。
上述の運転支援決定部36は、上述の運転支援制御を実施することを決定すると、運転支援制御を実施させる制御信号を報知部40に出力する。
報知部40は、運転支援ECU30からの出力に応じた運転支援を実行する。報知部40は、例えばディスプレイや振動発生装置や音声再生用スピーカである。報知部40は、運転支援ECU30から出力された制御信号に基づいて警報表示の出力、振動の発生、音声の再生を行って、ドライバに報知する。
なお、運転反応傾向判定部35は、図6において示される別の例では、除算値が所定の閾値αより大きくなる組合せの数Nbとして3を算出し、更に、除算値がその所定の閾値αより小さくなる組合せの数Nsとして12を算出する。そして、運転反応傾向判定部35は、図6において示される例では、組合せの数Nbである3よりも組合せの数Nsである12が多いと判定する。そして、運転反応傾向判定部35は、そのドライバが、自車両の進行方向における周辺物体に対する運転反応傾向に関してドライバが車幅方向反応傾向を有すると判定する。
そして、運転支援決定部36は、運転反応傾向判定部35によってドライバの運転反応傾向が車幅方向反応傾向であると判定された場合に、指標値取得部32から車幅成分指標値と規定値との比較結果を受信する。そして、運転支援決定部36は、車幅成分指標値が規定値より小さいという大小比較結果となる自車両の走行状態時に、当該車幅成分指標値が当該規定値より大きい場合と比べて報知の度合いを下げて(運転支援制御の支援度合いを低くして)警報を発生することを決定する。
ここで、警報内容の一例のイメージについて図7を用いて説明する。図7は、縦軸が報知の度合いの高さを示し、横軸が横方向接近感の強さを示すグラフである。運転支援決定部36は、運転反応傾向判定部35によってドライバの運転反応傾向が車幅方向反応傾向であると判定された場合に、指標値取得部32によって取得された現時点での周辺物体に関する横方向接近感指標が規定値(ここでは運転履歴から得られる最大値及び最小値の中間値)より小さい自車両の走行状態時に、当該車幅成分指標値が当該規定値より大きい場合と比べて、中間の高さよりも低い報知の度合い(縦軸における値)で、警報を発生することを決定する(又は、図7における左下のマスに示されるように警報を発生させない)。
これにより、運転支援決定部36は、車幅方向反応傾向を有するドライバに対して、早めの反応操作を行うよう弱く促す報知(又は、報知しないこと)が可能になる。なお、図7に示される一例では、指標値取得部32によって取得された現時点での周辺物体に関する横方向接近感指標が中間値より大きい走行状態時においても報知することが決定されているが(図7における右上のマスに示される状態)、そのような走行状態時においては報知が行われなくてもよい。
次に、上述した運転支援ECU30の処理の流れ(運転支援方法及び警報方法)について図面を参照して説明する。
図8に示されるように、運転支援ECU30では、指標記憶処理(ステップS01)、報知内容調整処理(ステップS03)、警報発生判定処理(ステップS05)の順で処理を行う。なお、図8に示される各処理は、例えば運転支援装置1により自車両の周辺に物体が存在することが検出されたことを契機として開始され、所定の間隔で繰り返し実行される。
指標記憶処理では、図9に示されるように、まず走行状態検出部10による自車両走行情報の取得、周辺物体検出部12による周辺物体情報の取得、及び運転操作検出部14による運転操作情報の取得が行われ、指標値取得部32が、走行状態検出部10から出力された自車両走行情報、周辺物体検出部12から出力された周辺物体情報、及び運転操作検出部14から出力された運転操作情報に基づいて、現時点で自車両はターゲットシーンにあるか否かを判定する(ステップS11、周辺物体検出ステップ)。ターゲットシーンとは、自車両の周辺に、目標物標としての周辺物体が検出された状況のことである。
ステップS11において、現時点で自車両はターゲットシーンにないと判定された場合、運転支援ECU30における一連の処理は終了する。一方、現時点で自車両はターゲットシーンにあると判定された場合、指標値取得部32が、走行状態検出部10から出力された自車両走行情報、周辺物体検出部12から出力された周辺物体情報、及び運転操作検出部14から出力された運転操作情報に基づいて、車幅成分指標値を取得する。そして、履歴取得部34が、履歴取得部34において記憶されている前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の組合せの数(すなわち、組合せの記憶回数)はN以下であるか否かを判定する(ステップS13、指標値取得ステップ)。Nは、前後方向接近感指標及び横方向接近感指標を記憶する際に予め規定された回数であって、設計パラメータである。前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の追加記憶処理を無制限に行う場合は、その記憶回数Nを無限大に設定すればよい。
ステップS13において、履歴取得部34において記憶されている前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の組合せの記憶回数はNより大きいと判定された場合、運転支援ECU30における一連の処理は終了する。一方、履歴取得部34において記憶されている前後方向接近感指標及び横方向接近感指標の組合せの記憶回数はN以下であると判定された場合、後述のステップS15に移行する。
ステップS15では、指標値取得部32が、走行状態検出部10から出力された自車両走行情報、周辺物体検出部12から出力された周辺物体情報、及び運転操作検出部14から出力された運転操作情報に基づいて、周辺物体と自車両とが通常時と同様の接近状態にあるか否かを判定する(周辺物体検出ステップ)。周辺物体と自車両とが通常時と同様の接近状態であると判定されるのは、自車両の周辺物体に対するドライバの反応操作があった場合である。ここで、周辺物体と自車両とが通常時と同様の接近状態でないと判定された場合、運転支援ECU30における一連の処理は終了する。一方、周辺物体と自車両とが通常時と同様の接近状態であると判定された場合、後述のステップS17に移行する。
ステップS17では、履歴取得部34が、走行状態検出部10から出力された自車両走行情報、周辺物体検出部12から出力された周辺物体情報、運転操作検出部14から出力された運転操作情報、及び指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値に基づいて、前後方向接近感指標と横方向接近感指標との組合せを算出する。そして、履歴取得部34が、算出された前後方向接近感指標と横方向接近感指標との組合せを、図3や図6のように示されるグラフにおける一点として記憶する(履歴取得ステップ)。そして、指標記憶処理における一連の処理は終了する。
報知内容調整処理では、図10に示されるように、まず運転反応傾向判定部35が、複数の組合せのそれぞれに関して、前後方向接近感指標(V+Vl)/Lを横方向接近感指標Vd/Dで除して得られる除算値(すなわち、前後方向接近感指標(V+Vl)/Lの横方向接近感指標Vd/Dに対する比率)を算出する。次に、運転反応傾向判定部35は、除算値が所定の閾値αより大きくなる組合せの数Nbを算出し、更に、除算値がその所定の閾値αより小さくなる組合せの数Nsを算出する。
そして、運転反応傾向判定部35は、組合せの数Nsよりも組合せの数Nbが多いか否かを判定する(ステップS21、運転反応傾向判定ステップ)。そのステップS21における判定は、言い換えれば、所定の閾値αと横方向接近感指標Vd/Dとの積算値よりも前後方向接近感指標(V+Vl)/Lが大きい関係にある組合せの数Nbが、所定の閾値αと横方向接近感指標Vd/Dとの積算値よりも前後方向接近感指標(V+Vl)/Lが小さい関係にある組合せの数Nsよりも多いか否かの判定と実質的に同じである。
ステップS21において、組合せの数Nbが組合せの数Nsよりも多いと判定された場合、後述のステップS23に移行する。一方、組合せの数Nbが組合せの数Nsよりも少ないと判定された場合、後述のステップS25に移行する。
ステップS23では、運転反応傾向判定部35が、ドライバは進行方向反応傾向を有すると判定し(運転反応傾向判定ステップ)、運転支援決定部36が、運転反応傾向判定部35の判定結果と、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値とに基づいて、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さい(自車両の幅方向からの周辺物体の接近感が弱い)ほど、周辺物体に対する報知の度合いを高く設定する(運転支援決定ステップ)。運転支援決定部36は、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が予め定められた規定値より小さい場合に、当該車幅成分指標値が当該規定値より大きい場合と比べて、報知の度合いを高めてもよい。そして、報知内容調整処理における一連の処理は終了する。
ステップS25では、運転反応傾向判定部35が、ドライバは車幅方向反応傾向を有すると判定し(運転反応傾向判定ステップ)、運転支援決定部36が、運転反応傾向判定部35の判定結果と、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値とに基づいて、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さい(自車両の幅方向からの周辺物体の接近感が弱い)ほど、周辺物体に対する報知の度合いを低く設定する(運転支援決定ステップ)。そして、報知内容調整処理における一連の処理は終了する。
警報発生判定処理では、図11に示されるように、まず走行状態検出部10による自車両走行情報の取得、周辺物体検出部12による周辺物体情報の取得、及び運転操作検出部14による運転操作情報の取得が行われ、指標値取得部32が、走行状態検出部10から出力された自車両走行情報、周辺物体検出部12から出力された周辺物体情報、及び運転操作検出部14から出力された運転操作情報に基づいて、現時点で自車両はターゲットシーンにあるか否かを判定する(ステップS31)。
ステップS31において、現時点で自車両はターゲットシーンにないと判定された場合、運転支援ECU30における一連の処理は終了する。一方、現時点で自車両はターゲットシーンにあると判定された場合、後述のステップS33に移行する。
ステップS33では、運転支援決定部36が、走行状態検出部10から出力された自車両走行情報、周辺物体検出部12から出力された周辺物体情報、及び運転操作検出部14から出力された運転操作情報に基づいて、周辺物体と自車両とが通常時と同様の接近状態にあるか否かを判定する。周辺物体と自車両とが通常時と同様の接近状態であると判定されるのは、自車両の周辺物体に対するドライバの反応操作があった場合である。
そのステップS33において、周辺物体と自車両とが通常時と同様の接近状態にあると判定された場合、後述のステップS35に移行する。一方、そのステップS33において、周辺物体と自車両とが通常時と同様の接近状態にないと判定された場合、後述のステップS37に移行する。
ステップS35では、履歴取得部34が、横方向接近感指標及び前後方向接近感指標の組合せを追加記憶してデータベースを更新する。そして、運転支援ECU30における一連の処理は終了する。
ステップS37では、運転支援決定部36が、上述のステップS23又はステップS25において設定された報知の度合いに応じた報知内容である警報を発生する(運転支援決定ステップ)。なお、ステップS25において設定された報知の度合いによっては、警報は発生されないことがある。そして、運転支援ECU30における一連の処理は終了する。
次に、本発明の一態様に係る運転支援装置1の作用効果について説明する。運転支援装置1によれば、過去の周辺物体に対するドライバによる反応操作の運転履歴に基づいてドライバが進行方向反応傾向を有すると判定された場合に、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いが高められる。なお、車幅成分指標値が小さいほど、進行方向反応傾向を有するドライバに対する運転支援制御の必要性が高まることから、ドライバが進行方向反応傾向を有すると判定された場合に、車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いが高められると、ドライバの運転反応傾向を考慮しない場合と比べて、ドライバ毎に応じた適切な運転支援が可能になる。この結果、ドライバに違和感を与えることなくドライバ毎に応じて適切に運転支援を行うことができる。
例えば、自車両の進行方向前方に歩行者が存在しておりその歩行者が横断歩道を低速度で横断しようとしているか否かの判定が微妙且つ困難である場合においては、自車両の車幅方向における歩行者との相対速度に関する指標値が小さい走行状態時に相当する。そのとき、ドライバが進行方向反応傾向を有すると判定された場合に、歩行者と自車両とがそのような相対関係となる走行状態であることを認識させるための注意喚起が比較的強めに行われる。このことから、自車両の車幅方向において接触する可能性の小さい歩行者の存在に関してドライバを敏感にさせて、その歩行者が横断するか否かに関する判断ミスを防ぐ可能性を高めることができる。また、運転支援装置1によれば、指標値取得部32によって取得された歩行者についての車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いを高めることができる。
また、運転支援装置1によれば、過去の周辺物体に対するドライバによる反応操作の運転履歴に基づいてドライバが車幅方向反応傾向を有すると判定された場合に、指標値取得部32によって取得された車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いが低くなる(警報を弱めて発生させるか警報を発生させない)。なお、車幅成分指標値が小さいほど、車幅方向反応傾向を有するドライバに対する運転支援制御の必要性が低くなることから、ドライバが車幅方向反応傾向を有すると判定された場合に、車幅成分指標値が小さいほど、運転支援制御の支援度合いが低くなると、ドライバの運転反応傾向を考慮しない場合と比べて、ドライバ毎に応じた適切な運転支援が可能になる。この結果、煩わしさ及び違和感を与えることなくドライバ毎に応じて適切に運転支援を行うことができる。
例えば、自車両の進行方向前方に歩行者が存在しておりその歩行者が横断歩道を低速度で横断しようとしているか否かの判定が微妙且つ困難である場合においては、自車両の車幅方向における周辺物体との相対速度に関する指標値が小さい走行状態時に相当する。そのとき、ドライバが車幅方向反応傾向を有すると判定された場合に、歩行者と自車両とがそのような相対関係となる走行状態であることを認識させるための注意喚起が比較的弱めに行われる(又は注意喚起が行われない)。このことから、報知が行われることに対する煩わしさ及び違和感を、ドライバに感じさせないようにすることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、前後方向接近感指標は、一例として、自車両の進行方向における相対速度を、自車両と周辺物体とのその進行方向における距離で除して得られる除算値であるとして説明したが、前後方向接近感指標は、自車両の進行方向における相対加速度を、自車両と周辺物体とのその進行方向における距離で除して得られる除算値であってもよい。その場合、横方向接近感指標は、自車両の車幅方向における相対加速度を、自車両と周辺物体とのその車幅方向における距離で除して得られる除算値とすればよい。