JP2015152861A - 積層用樹脂組成物及びその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、従来の積層構造の光学フィルターは、特許文献1〜5等に開示されている。
本発明は更に、上記積層体を含む光選択透過フィルターでもある。
本発明はそして、上記積層体を含む撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の積層用樹脂組成物(単に樹脂組成物とも称す)は、分子内に1以上のオキシラン環を有する化合物、溶媒、カチオン硬化触媒、及び、窒素含有化合物を含むが、これら各成分は、それぞれ1種又は2種以上用いてもよい。また、必要に応じて更に他の成分を1種又は2種以上含んでもよい。
上記分子内に1以上のオキシラン環を有する化合物(単にオキシラン化合物とも称す)は、オキシラン環というカチオン硬化性基を有し、熱又は光によって硬化(重合)する化合物(カチオン硬化性化合物)である。上記樹脂組成物がオキシラン化合物を含むことにより、硬化物の収縮量を充分に低減することができるうえ、硬化までの時間が短時間となって生産性が高まり、得られる硬化膜(樹脂層)も、耐熱性(耐熱分解性及び耐熱着色性)や耐薬品性に優れたものとなる。
また、3員環のエーテルであるオキシラン環を含む基を「エポキシ基」と称す。「エポキシ基」には、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等が含まれるものとする。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
上記樹脂組成物はまた、溶媒を含む。これによって、流動性の高い樹脂組成物とすることができ、コーティング用の樹脂組成物として特に好適なものとなる。
上記樹脂組成物はまた、カチオン硬化触媒を含む。
カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。具体的には、例えば、熱潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性カチオン硬化触媒等が挙げられる。
(R1 aR2 bR3 cR4 dZ)+m(AXn)−m (1)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、有機基を表す。a、b、c及びdは、0又は正数であり、a、b、c及びdの合計はZの価数に等しい。カチオン(R1 aR2 bR3 cR4 dZ)+mはオニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。mは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表される化合物が好適である。
更に一般式AXn(OH)−で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4 −)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3 −)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3 −)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
なお、用いる硬化触媒に基づく硬化物の着色の有無・程度は、通常、400nmにおける透過率の変化からも確認することができる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無・程度を評価することができる。
またaは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、特に好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)が算定される。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が充分ではなくなる場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
またルイス塩基が、本発明の窒素含有化合物(特にアンモニアや立体障害の小さい低沸点アミン)である場合、中でも特にアンモニアである場合には、比n(b)/n(a)は、1より大きいことが好ましい。より好ましくは1.001以上、更に好ましくは1.01以上、特に好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.5以上である。
上記樹脂組成物はまた、120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物(単に「窒素含有化合物」とも称す)を含む。これにより、保存(貯蔵)時や移送時には該窒素含有化合物の存在により樹脂組成物が保存安定性に優れる一方で、硬化時には該窒素含有化合物の一部又は全部が揮散することに起因して、成膜性に優れ、高外観を呈する硬化物を容易に得ることが可能になる。
上記樹脂組成物は、上述した必須成分の他に、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、色素、上記オキシラン化合物以外の硬化性化合物(他の硬化性化合物とも称す)、上記カチオン硬化触媒以外の硬化剤(他の硬化剤とも称す)、光増感剤、硬化促進剤、可撓性成分、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IRカット剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等を含有してもよい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
上記樹脂組成物が色素を含む場合、該色素は、樹脂組成物中に分散又は溶解されてなることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物中に色素が溶解して含有されてなる形態である。すなわち色素は、樹脂組成物を構成する硬化性化合物(樹脂成分とも称す)や、溶媒等に溶解するものであることが好適である。
なお、アルコキシカルボニル基(−COOR)を構成するRは、炭素数1〜4のアルキル基であることが好適であり、アルキル基(−R)を構成するRは、炭素数1〜4のアルキル基であることが好適である。アルコキシカルボニル基として好ましくは、メトキシカルボニル基又はメトキシエトキシカルボニル基であり、アルキル基として好ましくは、メチル基又はジメチル基である。
なお、1個のORi基が2個以上の置換基を有する場合、当該置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、ORi基における置換基の位置は特に限定されるものではない。
ここで、ORi基が結合する炭素は、フタロシアニン骨格の4個の芳香環におけるα位炭素(Cα:フタロシアニン環の1,4,8,11,15,18,22,25位の炭素を表す。)でもよいし、β位炭素(Cβ:フタロシアニン環の2,3,9,10,16,17,23,24位の炭素を表す。)でもよいが、少なくともα位炭素であることが好適である。中でも、α位炭素(Cα)のうち平均2個以上の炭素にORi基が結合した形態が好ましく、より好ましくは、各芳香環に1個以上のα位炭素(Cα)にORi基が結合した形態である。また、β位炭素(Cβ)のうち平均4個以上の炭素に水素原子又はフッ素原子が結合した形態であることも好適である。より好ましくは、β位炭素(Cβ)のうち平均6個以上の炭素に水素原子又はフッ素原子が結合した形態であり、更に好ましくは、β位炭素(Cβ)の全ての炭素に水素原子又はフッ素原子が結合した形態である。
上記反応はまた、大気雰囲気中で行ってもよいが、金属化合物の種類により、不活性ガス又は、酸素含有ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、又は、酸素/窒素混合ガス等の流通下)で行われることが好ましい。
上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、濾過、洗浄、及び/又は、乾燥を行ってもよい。
「色素を測定樹脂に分散又は溶解含有させた膜」とは、測定対象たる色素と測定樹脂とからなる膜であって、吸収極大波長での吸光度が評価できる条件(吸収極大波長における吸光度が分光光度計の測定限界を超えずに、吸光度を測定できる条件)を満足するよう、色素の含有割合及び膜の厚みが選択された膜であればよい。
評価用の膜は、色素と測定樹脂とを含み(必要に応じて溶媒を含んでもよい)、透明な基材(ガラス、透明樹脂フィルム)に成膜(塗布、必要に応じて乾燥)することにより得ることができる。このようにして得られた膜付き基材の吸光度を測定することにより、当該色素の吸光度を求めることができる。
吸光度は、例えば、分光光度計(島津製作所社製、UV−3100)を用いて測定することができる。
なお、色素の総量100質量%に占める、上記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素の含有量は、10〜100質量%であることが好適である。より好ましくは15〜100質量%である。
上記350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、TINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 326(BASF社製)等の紫外線吸収化合物の1種又は2種以上を使用することができる。
なお、本発明でいう色素には、350〜400nm未満の波長域に吸収能を有する化合物に代表される、400nm未満の波長域に吸収能を有する化合物は含まないものとする。
上記他の硬化性化合物とは、硬化性の官能基を有する有機化合物であり、本発明で必須とするオキシラン化合物以外の化合物であればよい。硬化性の官能基とは、熱又は光によって硬化反応する官能基(樹脂組成物を硬化反応させる基)をいい、例えば、オキシラン基(オキシラン環)やエポキシ基の他、オキセタン基(オキセタン環)、エチレンスルフィド基、ジオキソラン基、トリオキソラン基、ビニルエーテル基、スチリル基等のカチオン硬化性基;アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基;等が好適である。したがって、上記他の硬化性化合物としては、上述したオキシラン化合物以外のカチオン硬化性基を有する化合物(カチオン硬化性化合物)、及び/又は、ラジカル硬化性基を有する化合物(ラジカル硬化性化合物)であることが好ましい。
上記他の硬化剤としては、例えば、熱潜在性ラジカル硬化触媒や光潜在性ラジカル硬化触媒等のラジカル硬化触媒;酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤;等が挙げられる。
上記樹脂組成物はまた、必要に応じて光増感剤を1種又は2種以上更に含んでいてもよい。特に、上述した活性エネルギー線照射による硬化を行う場合には、上記光重合開始剤に加え、更に、光増感剤を併用することが好ましい。
上記樹脂組成物はまた、必要に応じて硬化促進剤を1種又は2種以上更に含んでいてもよい。特に、上述した酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤を用いる場合には、硬化促進剤を併用することが好適である。
上記樹脂組成物はまた、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むことが好適である。これによって、一体感のある、すなわち靱性の高い樹脂組成物とすることが可能となる。また、可撓性成分を含むことによって樹脂層の硬度がより向上される。
なお、可撓性成分としては、上記硬化性化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記硬化性化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
このように上記可撓性成分としては、カチオン硬化性化合物を好適に用いることができるが、該化合物としては、エポキシ基を含む化合物であることが好ましく、より好ましくは、オキシブチレン基(−〔−(CH2)4−O−〕m−(mは、同上。))を有する化合物である。
上記樹脂組成物が無機充填剤を含有することで、線膨張率を低減させることが可能であり、半田リフロー工程、無機酸化物の蒸着工程等において、熱による膨張を抑制することが可能である。無機充填剤としては、透明性を損なわないという観点で、ナノ粒子を配合するものが好ましく、粒径40nm以下のシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムを含むものが好ましい。例えば日産化学工業社製MEK−ST等が好適に用いられる。
上記カップリング剤として好ましくはシランカップリング剤である。上記樹脂組成物がシランカップリング剤を含有することで、接着性を向上させることが可能であり、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能である。このように上記樹脂組成物がシランカップリング剤を含有することも好適である。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
なお、上記樹脂組成物に含まれる異物は、樹脂組成物を調製する際にろ過を行うことにより除去することができる。
上記樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、含有成分を通常の方法で混合することにより得ることができる。含有成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性樹脂の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、硬化剤(触媒)の添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
上記樹脂組成物は、粘度が10000mPa・s以下であることが好ましい。これによって、加工特性により優れるものとなる。より好ましくは100mPa・s以下、更に好ましくは10mPa・s以下である。また、0.01mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mPa・s以上である。
上記樹脂組成物の硬化方法としては特に限定されず、例えば、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。硬化は1段階で行ってもよく、また、1次硬化(予備硬化)、2次硬化(本硬化)のように2段階で行ってもよいが、本発明の樹脂組成物は、硬化性が高いものであるため、1段階でも充分に優れた外観を呈する硬化物を効率よく与えることができる。したがって、例えば、光硬化と熱硬化との2段階硬化を行う場合に比べ、光硬化工程を省くことで工程短縮が可能なため、硬化物の生産性や作業性にも優れている。
本発明の積層体は、基材上に樹脂層を有する。樹脂層は、基材の片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。また、基材及び樹脂層は、それぞれ単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
ここで、「400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ有する」とは、400〜680nmの波長域に、吸光度が増加から減少に転じる頂点(吸収極大)が1つしか認められないことを意味し、この吸収極大を頂点とするピークは、シャープなものであってもよいし、ブロードなものであってもよい。後者の場合、シャープな吸収ピークが2以上重なることによって全体としてブロードな吸収ピークが形成され、吸光度が増加から減少に転じる頂点(吸収極大)が1つのみとなった形態であってもよい。
なお、樹脂層も、上述した積層体の吸収特性及び透過特性と同様の特性を有することが好適である。中でも特に、上記樹脂層は、吸光度が、600〜680nmの波長域において長波長側ほど高い形態であることが好ましい。
上記積層体において、基材としては特に限定されないが、例えば、有機材料、無機材料、有機無機複合材料、金属材料等の1種又は2種以上を材料とすることが好ましい。有機材料又は有機無機複合材料としては、例えば、これらの材料からなる樹脂フィルム等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス、水晶、金属酸化物等が挙げられる。
また基材の材料は、耐リフロー性を有する材料であることが好適である。
上記透明無機材料はまた、ガラスや水晶等を形成する材料中に遷移金属イオンを含有させて得られるものであってもよい。遷移金属イオンとしては、光吸収能を有するものとして通常使用されるものを1種又は2種以上用いればよく、例えば、Ag+、Fe+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が挙げられる。
なお、上記基材がガラス又は水晶基板である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記基材(好ましくは透明無機材料層)上に積層用樹脂組成物からなる塗膜を形成する方法としては、溶液塗布法が好適である。具体的には、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等の通常使用される方法が挙げられる。これらの中では、スピンコート法が、基板上のコート層の偏差を小さくする観点で好ましい。スピンコート法により塗膜を形成する場合、室温(25℃)付近で、基材(好ましくは透明無機材料層)を500〜4000rpmで10〜60秒間程度回転させながら、溶媒を乾燥させることが好ましい。またインクジェット法で行うことも、スピンコートでは得にくい丸型以外のサンプルを得つつ、偏差を小さくするという観点では好ましい。また、スピンコート後やインクジェット後、必要に応じて光硬化及び/又は熱硬化を行うことが好ましい。
本発明の積層体は、撮像素子用途に特に好適である。本発明の積層体に用いられる積層用樹脂組成物もまた、撮像素子用途に特に好適である。中でも、上記積層体を、光選択透過フィルターの構成材料として使用することが好ましい。この場合、上記樹脂組成物により形成される樹脂層は、光選択透過フィルターのうち(近)赤外線吸収層(単に吸収層ともいう)として使用されることがより好適である。このような上記積層体を含む光選択透過フィルターや、上記積層体を含む撮像素子もまた、本発明に含まれる。なお、撮像素子は、上記積層体を含む光選択透過フィルターを備えることが特に好適である。
以下に、光選択透過フィルター及び撮像素子について説明する。
本発明の光選択透過フィルターは、上記積層体を1又は2以上含むが、必要に応じて、更に他の層を1又は2以上有するものであってもよい。光選択透過フィルターにおいては、上記積層体のうち樹脂組成物から形成される樹脂層を吸収層として、使用することが好適である。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができる。好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料である。
上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、吸収層の吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
本発明の撮像素子は、上記積層体を1又は2以上含むが、必要に応じて、更に他の部材を1又は2以上有するものであってもよい。通常、撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)及びレンズを有するが、更に、光学フィルターや、部材を固定させるための接着剤等が挙げられる。
なお、上記反射膜は、レンズの一方の面若しくは両面、及び/又は、基材の一方の面若しくは両面に、形成されることが好適である。
国際公開第1997/031924号公報に記載された合成法にしたがって、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%のアイソパーE溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・水錯体(TPB含有粉末B)を18.7g得た。この錯体は水分量9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して19F−NMR分析及びGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。
19F−NMRの測定結果を以下に示す。
19F−NMR(CDCl3)ppm(標準物質:CFCl3 0ppm)
δ=−135.6(6F,m)
δ=−156.5(3F,dd)
δ=−163.5(6F,d)
調製例1で得たTPB含有粉末B:2g(TPB純分:1.816g(3.547mmol)、水:0.184g(10.211mmol))に対し、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した。その後、アデカスタブLA−57(ヒンダードアミン、ADEKA社製)を0.778g(0.984mmol、N基のモル数は3.934mol)添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒Aとした。
調製例1で得たTPB含有粉末B:2g(TPB純分:1.816g(3.547mmol)、水:0.184g(10.211mmol))に対し、γ−ブチロラクトンを1.6g添加し、室温で10分間混合した。その後、2mol/Lアンモニア・エタノール溶液を2.1g添加し、室温で60分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒Bとした。
(1)工程1
1000mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル54g(0.27mol)、フッ化カリウム34.5g(0.59mol)、及び、アセトン126gを仕込み、更に滴下ロートに3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸メトキシエチルエステル127g(0.55mol)及びアセトン216gを仕込んだ。反応容器を氷冷下、攪拌しながら、滴下ロートより3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸メトキシエチルエステル溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(1)を108.7g(収率64.8%)を得た。
この工程1の反応を、以下に簡略して示す。
200mlの四つ口フラスコに、工程1で得られた中間体(1)を20.0g(0.032mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.57g(0.0081mol)、及び、ベンゾニトリル30.0gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、メチルセロソルブ52.7gを反応液に加えた後、メタノールと水の混合溶液に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノールと水の混合溶液で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて90℃で24時間乾燥後、目的物であるフタロシアニン(1)を17.78g(収率87.1%)得た。
この工程2の反応を、以下に簡略して示す。
(1)工程1
1000mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル75g(0.37mol)、フッ化カリウム52.3g(0.90mol)、及び、アセトニトリル167gを仕込み、更に滴下ロートに2,6−ジクロロフェノール123.4g(0.76mol)及びアセトニトリル133gを仕込んだ。攪拌しながら、滴下ロートより2,6−ジクロロフェノール溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、一晩攪拌し反応させた。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトニトリルを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(2)を148.1g(収率80.2%)を得た。
この工程1の反応を、以下に簡略して示す。
500mlの四つ口セパラブルフラスコに、中間体(2)を140g(0.29mol)、炭酸カリウム107.8g(0.78mol)、p−ヒドロキシ安息香酸メチル92.1g(0.61mol)及びアセトン280gを仕込んだ。反応液を60℃で一晩攪拌し反応させた後、反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールと水の混合液を加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(3)を202.3g(収率93.1%)を得た。
この工程2の反応を、以下に簡略して示す。
200mlの四つ口フラスコに工程2で得られた中間体(3)を22.5g(0.030mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.37g(0.0074mol)、ベンゾニトリル52.5gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、メチルセロソルブ30.3gを反応液に加えた後、メタノールと水の混合溶液に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノールと水の混合溶液で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて90℃で24時間乾燥後、目的物であるフタロシアニン(2)を17.83g(収率86.1%)得た。
この工程3の反応を、以下に簡略して示す。
(1)工程1
1000mlの三つ口反応容器に3−ニトロフタロニトリル100g(0.58mol)、炭酸カリウム159.7g(1.16mol)、2,6−ジクロロフェノール104.6g(0.64mol)及びアセトニトリル400gを仕込んだ。60℃で一晩攪拌し反応させた後に、反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトニトリルを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(4)を100.9g(収率60.2%)を得た。
この工程1の反応を、以下に簡略して示す。
300mlの四つ口フラスコに、工程1で得られた中間体(4)を60.0g(0.21mol)、塩化銅(I)5.65g(0.057mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル140.0gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、メチルセロソルブ100.0gを反応液に加えた後、メタノールと水の混合溶液に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノールと水の混合溶液で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて90℃で24時間乾燥後、目的物であるフタロシアニン(3)を51.48g(収率80.4%)得た。
この工程2の反応を、以下に簡略して示す。
実施例1
セロキサイドCEL−2021P(液状脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量131、ダイセル化学工業社製)15部、EHPE−3150(脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製)85部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)240部、テトラヒドロフラン(THF)40部、及び、合成例1で得たフタロシアニン(1)を8部、80℃にて均一混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてカチオン硬化触媒Bを5.6部均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、硬化性樹脂組成物(1)を得た。
得られた樹脂組成物について、後述の方法により保存安定性を評価した。
また得られた樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、成膜性、各透過率や耐熱性(リフロー耐熱性)を評価した。結果を図1及び表2に示す。
色素の種類及び量を表1のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物(2)及び比較用樹脂組成物(1)〜(4)を得た。
得られた樹脂組成物について、後述の方法により保存安定性を評価した。
また得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に成膜及び硬化を行い、成膜性、各透過率や耐熱性(リフロー耐熱性)を評価した。結果を表2に示す。
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃の条件下で粘度測定を行った。40℃にて1週間放置前後の粘度を測定し、以下の基準で評価した。
○:初期粘度からの変化量が30%未満であった。
×:初期粘度からの変化量が30%以上であったか、又は、ゲル化した。
イソプロパノール溶媒で洗浄したガラス基板(SCHOTT社製、ガラス、D263、8inch丸型)上に各樹脂組成物を垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、3秒かけて所定の回転数にし、所定時間を維持し、3秒かけて回転数を0rpmに戻して成膜した(すなわちコーティングした)。具体的な成膜条件を表2に示す(2500rpm)。なお、この成膜(コーティング)後の透過率スペクトルを得た。
上記<成膜方法>で得た膜を、硬化させた。具体的には、イナートガスオーブン(光洋サーモシステム社製、INL−45N1−S)を用いて、N2雰囲気下(酸素濃度30ppm以下)にて、30℃より1時間で250℃に到達するプログラムにて昇温し、250℃で1時間保持した後、30℃まで降温した。なお、この硬化後の透過率スペクトルを得た。
上記<硬化方法>で得たコーティング層の反対面に、酸化チタン20層/シリカ20層の交互蒸着層(赤外反射層)を形成し、コーティング層上に酸化チタン3層/シリカ3層の交互蒸着層(反射防止層)を形成した。
最終硬化後の硬化物(すなわち、上記<硬化方法>で得た硬化物)を、20倍の実体顕微鏡で確認し、以下の基準にて評価した。
×:長さ又は直径2mm以上の欠点が発生した。
△:長さ又は直径1mm以上2mm未満の欠点が発生した。
○:長さ又は直径0.03mm以上1mm未満の欠点が発生した。
◎:0.03mm未満の欠点しか発生しなかった。
分光光度計(島津製作所社製、UV−3100)を用いて、各段階での透過率スペクトルを測定した。スペクトルを図1に示す。また、各段階での、可視光の短波長領域である波長430nm、可視光の中心領域である550nm、及び、色素の吸収波長である650nmにおける透過率を表2に示す。
最終硬化後の硬化物(すなわち、上記<硬化方法>で得た硬化物)を、乾燥機(ヤマト科学社製、DH611)を用いて、大気中、260℃で20分間乾燥させた後、波長430nm、550nm及び650nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。クラック及び剥がれの評価は、5枚の評価用サンプルについて、以下の基準にて評価した。
○:クラック及び剥がれが、全く発生しなかった。
×:1枚でもクラック又は剥がれが発生した。
CEL−2021P:液状脂環式エポキシ樹脂「セロキサイドCEL−2021P」、エポキシ当量131、重量平均分子量120、ダイセル化学工業社製
EHPE−3150:脂環式エポキシ樹脂、重量平均分子量2900、ダイセル化学工業社製
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1,2−プロパンジオールモノメチルエーテルアセタート)
THF:テトラヒドロフラン
フタロシアニン(1):合成例1で得たフタロシアニン系色素
フタロシアニン(2):合成例2で得たフタロシアニン系色素
フタロシアニン(3):合成例3で得たフタロシアニン系色素
アンチモン系触媒SI−60L:商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学工業社製
硬化触媒A:調製例2で得たカチオン硬化触媒A
硬化触媒B:調製例3で得たカチオン硬化触媒B
実施例1及び2で得た樹脂組成物は、カチオン硬化触媒として硬化触媒Bを使用することにより、本発明の窒素含有化合物としてアンモニアを含むものである。このような樹脂組成物は、保存安定性に優れるとともに、成膜性にも極めて優れ、しかもその硬化物が高い透明性及び耐熱性を有することが分かった。これに対し、比較例1〜4で得た樹脂組成物は、本発明の窒素含有化合物を含まないものであるが、成膜性が実施例1及び2に比べて劣り、中でも比較例1〜2で得た樹脂組成物は、保存安定性が不充分であることが分かった。
Claims (7)
- 基材上に層を形成する材料として用いられる樹脂組成物であって、
該樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有する化合物、溶媒、カチオン硬化触媒、及び、窒素含有化合物を含み、
該窒素含有化合物は、120℃以下の沸点を有することを特徴とする積層用樹脂組成物。 - 前記溶媒の含有量は、前記樹脂組成物の総量100質量%に対し、30質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層用樹脂組成物。
- 前記窒素含有化合物は、アンモニアであることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層用樹脂組成物。
- 基材上に、請求項1〜3のいずれかに記載の積層用樹脂組成物からなる樹脂層を形成して得られることを特徴とする積層体。
- 前記基材は、ガラス又は水晶基板であることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
- 請求項4又は5に記載の積層体を含むことを特徴とする光選択透過フィルター。
- 請求項4又は5に記載の積層体を含むことを特徴とする撮像素子。
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