【発明の詳細な説明】
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート錯体およびそれらから誘導された触
媒
技術分野
発明の背景
本発明は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの錯化合物ならびにオレ
フィン類の重合および共重合の触媒として有用なボラン錯体および有機金属錯体
を含む混合物およびこれらの触媒を使用して作成された重合物に関する。
背景技術
発明の背景
オレフィン類の重合、特にエチレンからポリエチレンへの重合に、可溶性チー
グラー・ナッタ触媒系を使用することは技術上周知である。一般に、伝統的なチ
ーグラー・ナッタ触媒系は、アルキル金属助触媒、特にアルキルアルミニウム助
触媒との反応によって、触媒種を形成するために活性化されたハロゲン化遷移金
属を含む。しかし、アルキルアルミニウム助触媒はかなり余分に使用される場合
が多い。米国特許第4,404,344号を参照されたい。結果として生じたポリマーか
らアルミニウム化合物を除去しなければならないため、これは不都合である。多
くの場合、上述の伝統的なチーグラー・ナッタ触媒には様々な異なる活性部位が
あり、その各々は独自の開始速度、生長速度、および停止速度を有する。この活
性部位が非均質な結果として、線状ポリエチレンは広い分子量分布を有する。た
とえば、Comprehensive Organometallic Chemistry; Wilkinson,G.,
Ed.; Pergamon Press: Oxford,1982; Vol.3,Chapter 22.5,p 475; Tra
nsition Metals and Organometallics as Catalysts for Olefin Polymeri
zation; Kaminsky,W.and Sinn,H.,Eds.; Springer-Verlag: New Y
ork,1988,and Transition Metal Catalyzed Polymerizations:Alkenes a
nd Dienes;Quirk,R.P.,Ed.; Harwood: New York 1983.を参照された
い。
近年、触媒は、アルミニウム含有化合物よりむしろホウ素に頼っていると報告
されている。ホウ素系触媒は、アルミニウム系触媒と違って、多くの場合、ホウ
素に関して化学量論的である。すなわち、ホウ素系触媒は遷移金属1モル当たり
ホウ素含有成分1モルを含む。さらに、上述のアルミニウム系触媒と違って、通
常は、ポリマーから少量のホウ素を除去する必要はない。
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(C6F5)3Bは、エーテル、アミ
ン類およびホスフィン類などのルイス塩基と1:1錯体を形成する。この化合物
は吸湿性であり、一水化物を形成すると思われるが、この水和物の化学量論であ
る組成物も、その特性も開示されていない。これらの供与体−受容体錯体の使用
方法は教示されていない。Massey et.al.,J.Organomet.Chem.1964,2,
245.を参照されたい。Pohlman et al.Z Nat.1965,20b,5.によって吸湿性
の(C6F5)3B-Et2Oが報告されている。
Hlatky et al.J.Am.Chem.Soc.1989,111,2728 は、(Me5Cp)2Zr
[(m-C6H4)BPh3]などの両性イオン触媒について記述している。EPO 第 0
277 004 号は、(Me5Cp)2ZrMe2を B9C2H13、[Bu3NH][(B9C2H11)2C
o]または[Bu3NH][B9C2H12]と反応させることによって調製された触媒につ
いて記述している。
同様に、EPO 第 0 418044 号は、(C6F5)4B-などの非配位相容性陰イオンを
含むモノシクロペンタジエニル錯体触媒について記述して
いる。最近では、[Cp2ZrMe][MeB(C6F5)3]によって例示される均質な触媒が、Cp2
ZrMe2と(C6F5)3Bの反応によって合成されている。X.Yang et al.J.
Am.Chem.Soc.1991,113,3623を参照されたい。
さらに、上述の触媒はトルエンにやや難溶である。この触媒は、1−ヘキセン
など、通常は液体のα−オレフィン中や、このようなオレフィン類と、ヘキサン
、トルエンまたはキシレンなどの非反応性溶剤との混合物中にはさらに溶解しな
い。一般に、これらの触媒は、トルエンやトルエン−ヘキサン混合物から油とし
て分離される。触媒作用が相変わらず進行しても、たとえば、触媒が部分的に溶
解するにすぎないと、モノマーと触媒との間の接触効率が低いなど幾つかの理由
から、相分離は望ましくない。触媒の溶解が不完全なとき、触媒される重合は一
般に、溶液中または固液界面のいずれかで異なる速度で起こり、したがってポリ
マー分子量の分布が広くなる傾向がある。さらに、触媒が部分的に溶解するにす
ぎないとき、一般に、溶液中の触媒:モノマーの比率を調節することは難しい。
さらに、可溶性触媒または分子分散触媒によって、一般に、基質は活性部位に
容易に接近できるようになることも判明している。その結果、触媒をより効率よ
く使用することが可能になる。ポリマーの分子量は、ポリマーが合成される反応
混合物中のモノマーの濃度に比例することも認められている。一般に、接着剤な
どの用途、ならびにガスケット、絶縁材、包装材料などの硬質物体の構造では、
高分子量が望ましい。
低級オレフィン、特にエチレンやプロピレンの触媒重合は比較的容易である。
一方、長鎖α-オレフィンの重合は緩徐な傾向があり、その生成物は高分子重合
体よりむしろオリゴマーの場合が多い。Skupinska Chem.Rev.1991,91,63
5を参照されたい。長鎖α-オレフィン類から、より高分子量のポリマーを作成す
る TiCl3/AlEt3
などの異成分触媒を使用すると、分子量の範囲が広くなる(高多分散性指数)。
非晶質アタクティックポリプロピレンは結晶性アイソタクティックポリプロピ
レン製造の副生成物として入手できた。この副生成物材料は比較的低分子量であ
り、有機溶剤で抽出することによって結晶ポリマーから容易に分離される。この
材料は低分子量であるため、凝集強さ、および高分子量ポリプロピレン関連の他
の望ましい機械的特性が欠如している。
最近の触媒技術の向上に伴って、今では比較的少ない非晶質アタクティックポ
リプロピレン副生成物が市販されるところまで、アイソタクティックポリプロピ
レンの収率が上昇した。結果として、一般にポリプロピレンとエチレンやブテン
などの他のオレフィン類との低分子量コポリマーを含む非晶質ポリプロピレンの
代用品が開発された。コモノマーを含むとポリプロピレン結晶性が崩壊し、非晶
質コポリマーが生成する。このようなポリマーは、たとえば、米国特許第 3,634
,546 号に教示されており、Huls AG や Eastman Chemicalsから市販されて
いる。
炭素原子が3個以上のα-オレフィン類の非晶質低分子量ホモポリマーまたは
非晶質低分子量コポリマーまたはその両者を大量に製造する方法が、米国特許第
4,317,897号に記載されている。この方法を水素ガスの存在下で実行するとき、
すなわちアルケンポリマー類の分子量が低下することが技術上周知である方法を
実行するとき、記載のヘプタン可溶性分画(すなわち、非晶質材料)が最大にな
る(たとえば、米国特許第 3,051,690 号を参照)。さらに、分子量が増大すると
溶解度が低減する傾向があることも技術上周知である(Polymer Handbook,2nd
Ed.,J.Brandrup and E.H.Immergut,Eds.,John Wiley & Sons
,New York; p.IV-263を参照)。したが
って、記載の方法は、分子量を犠牲にして非晶質特性を有する(コ)ポリマーを
提供する。
HerwigとKaminskyは(Polymer Bulletin,1983,9,464-469)、たとえば、
(シクロペンタジエニル)2Ti(CH3)2およびメチルアルミノキサンを含む触媒系
を使用して、アタクティックポリプロピレンを作成した。プロピレンホモポリマ
ーのMnは 88,000 であると報告されているが、それ以上の特性化は報告されて
いない。
カナダ特許出願第2,067,525号は、様々なフルオレニル含有ジルコニウム触媒
またはハフニウムメタロセン触媒を使用したプロピレンのホモ重合について記述
している。幾つかの例で、生じたポリマー混合物は多量のヘキサン可溶性分画ま
たはキシレン可溶性分画を含んでいた。
米国特許第3,954,697号および第3,923,758号は、ハロゲン化チタンおよびトリ
アルキルアルミニウム種を使用した、プロピレンの低分子量非晶質ホモポリマー
および低分子量非晶質コポリマーについて記述している。コポリマーは、感圧接
着剤として記述されており、ホットメルト塗布により裏材に塗布される。米国特
許第4,264,756 号には、これらの(コ)ポリマーに粘着付与剤を加えることが記
述されている。
中分子量乃至低分子量のポリプロピレンワックスは、Eastman Chemical Co
.からEPOLENETMN-15の商品名で市販されている。ポリマーのMnは5,000
で、Mwは12,000であり、環球式軟化点は163℃、ブルックフィールドサーモ
セル粘度(Brookfield Thermosel viscosity)は190℃で600cpであると
記載されている。Eastman Chemical Co.は、EASTOFLEXTM P1023
の商品名で市販されている非晶質プロピレンホモポリマーも作成しており、そ
の環球式軟化点は150℃、ブルックフィールドサーモセル粘度
は190℃で2300 cp であると記載されている。上述のポリマーは、低分子
量であるため、有用性が限定される。
アタクティックポリプロピレンは、Zhongde et al.,Macromolecules,1985
,18,2560−2566に記載の通り、(E)-2-メチル-1,3-ペンタジエンの陰イオンホ
モ重合によって作成されたポリ(1,3-ジメチル-1-ブチレン)の水素付加によっ
て作成されてきた。このポリマーは「ほぼ単分散」である、すなわち1.0にほ
ぼ等しい多分散性指数を有すると記載されており、明らかに、プロピレンモノマ
ーのホモ重合では生じない。
ビス(シクロペンタジエニル)−ジルコノセン助触媒、ビス(シクロペンタジ
エニル)−チタノセン助触媒およびメチラルミノキサン助触媒を用いてプロピレ
ンをホモ重合すると、金属種および他の反応条件、特に重合温度によって、「平
均分子量」が 76,000〜590,000 の範囲のアタクティックポリプロピレンが生成
すると報告されている。W.Kaminsky,Angew.Makromol.Chemie,145/146
(1986)149-60を参照されたい。米国特許第4,404,344号および第4,542,199号(Ka
minsky,et al.,Hoechst)も、これらの重合について記述しているが、回収さ
れたアタクティックポリプロピレンの分子量は、5,000の範囲であると報告
されている。
日本特許(公告)昭49[1974]−5753号は、VCl4-AlEt3触媒を
用いてプロピレンを重合すると、分子量が 330,000 の非晶質ポリプロピレンが
高収率で生じることについて記述している。このようにして得られた非晶質ポリ
プロピレンの分子量は 82,000〜1,192,000の範囲であると報告されている。
PCT国際公告第 WO 89/03847 号は、TiCl3を含む予め活性化された触媒
であるMgCl2支持TiCl4、およびアルミニウムアルキル助触媒を使用して高温
溶液共重合により作成した低分子量非晶質ヘキ
セン−プロピレンコポリマーホットメルト感圧接着剤について記述している。こ
のコポリマーは、1−ヘキセンを約40〜75重量%、好ましくは55〜65重
量%含む。
欧州特許出願第 232,201 号は、アルミニウムアルキルの存在下でMgCl2支持
TiCl4を用いてプロピレンをホモ重合すると、良好なホットメルトPSA特性
を備えた低分子量非晶質ポリマーを生じることについて記述している。エチレン
のみとの共重合について記述している。
技術上必要なもの、および本発明によって提供されるものは、高分子量、低多
分散性および有用な機械的特性を同時に有する非晶質アタクティックポリプロピ
レンおよびそのコポリマーである。
発明の開示
発明の概要
簡単に記述すると、本発明の1つの態様で、トリス(ペンタフルオロフェニル
)ボラン、(C6F5)3B、および水、アルコール類、メルカプタン類、シラノー
ル類、オキシム類など、少なくとも1種の錯化剤化合物を含む触媒前駆体が得ら
れる。これらの中性錯体は、アミン類との反応によって、それらの共役塩基の酸
性塩に変換することが可能である。中性の錯体または酸性塩を、周期表IVB属
有機金属化合物と反応させると、オレフィンモノマーの重合に有用な、触媒的に
活性な化合物(以後、触媒とも呼ぶ)を生じる。都合のよいことに、本発明の触
媒は、1×10-3モル濃度(M)以上までオレフィンに溶解する。この触媒およ
びモノマーは分子量がより大きい生成物を生じる傾向があるため、非希釈モノマ
ー中で機能することができる触媒は、不活性な希釈液中に溶解したモノマーと区
別されるので、望ましい。さらに、低レベルの触媒のみを使用するため、
一般に、触媒またはその成分を最終生成物ポリマーから除去する必要はない。
本発明の触媒を使用して、炭素原子を2〜30個、好ましくは5〜10個有す
るオレンフィン的に不飽和なモノマーからポリオレフィンを作成することも可能
である。結果として生じたポリマーの重量平均分子量は 100,000〜5,000,000、
好ましくは 500,000〜3,500,000 であり、分子量の多分散性(PD)は3.5、
好ましくは1.5〜3である。長鎖オレフィン類から作成されて、高分子量を有
し、且つ多分散性が低いポリマーについて、これまで記述されていなかった。加
えて、本発明の触媒は意外にも、重量平均分子量が約 100,000〜約 5,000,000、
好ましくは約 200,000〜1,000,000の非晶質ゴム状ポリプロピレンホモポリマー
および非晶質ゴム状ポリプロピレンコポリマーの作成に使用することができる。
このようなアタクティックポリプロピレンホモポリマーおよびアタクティックポ
リプロピレンコポリマーについて、これまで記述されていなかった。
本発明の触媒を使用して重合することが可能な、適当なオレフィン的に不飽和
なモノマーとしては、線状α-オレフィン類、分枝α-オレフィン類、環状オレフ
ィン類、フェニルなどの芳香族基を含むオレフィン類、ケイ素やホウ素を含むオ
レフィン類、およびジオレフィン類などがあるが、これに限定されるものではな
い。これらの諸モノマーの混合物、ならびにオレフィン類およびジオレフィン類
を含む混合物を共重合することができる。好ましい不飽和モノマーとしては、一
般式CnH2を有し、式中nは3〜10である線状α-オレフィンなどがある。
本発明の特徴は、YX-B(C6F5)3 -型の陰イオンをIVB属遷移金属(チタ
ン、ジルコニウム、およびハフニウム)の新規錯塩に組み込
んで、長鎖ポリ-α-オレフィン類を重合することができる極めて活性な触媒を作
成し、分子量が非常に大きく且つ多分散性指数が狭い生成物を産することである
。さらに、これらの塩類の作成について記述するが、これらの塩類はルイス塩基
を含んでもよく、ルイス塩基を本質的に含まなくてもよい。本発明の別の特徴は
、平らな炭素環式リガンドをこれらの新規錯塩類に組み込み、分子量の非常に大
きいオレフィンポリマー類を製造することである。それ故、下記のように、[(リ
ガンド)2ZrMe)[(C6F5)3BOC18H37]を触媒として使用し、1-ヘキセンをモ
ノマーとして使用すると、リガンドがシクロペンタジエニル<インデニル≪フル
オレニルの順序で変化するにつれてポリマーの分子量が増加する。したがって、
高分子ゴム状ポリオレフィンを所望する場合、フルオレニルリガンドが特に有用
である。
本願では、
「Cp」は、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニルなどの炭素環
式リガンドを意味し、
「Me」はメチル基を意味し、
「Et」はエチル基を意味し、
「Ph」はフェニル基を意味し、
「Bu」はブチル基を意味し、
「ヒドロカルビル」は、その通常の意味で使用されており、アルキル、アルケ
ニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリール、アリール
アルキルなど、水素原子と炭素原子を含む基を意味し、
「IVA属」および「IVB属」は、周期表CASバージョンの呼称である。
発明を実施するための最良の形態
好ましい実施態様の詳細な説明
化合物(C6F5)3B、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(トリス(ペ
ンタフルオロフェニル)ボロンとも呼ばれる)は、広く様々なアルコール類、メ
ルカプタン類、シラノール類、およびオキシム類とルイス塩基錯体を形成する。
これらのボラン錯体は、IVB属有機金属化合物と結合したとき、ポリマーの分
子量が大きく且つ多分散性が低い、すなわち、分子量分布が狭いように、オレフ
ィン類を重合するのに有用な触媒を生成する触媒前駆体である。
ホウ素結合ヘテロ原子上に少なくとも1個の酸性水素原子を担持する(C6F5)3
Bのルイス塩基錯体は、触媒の作成に有用である。これらの化合物は、一般式(
C6F5)3B・(YXH)qで表すことができ、式中、X、Yおよびqは下記の通りで
あり、中性の化合物を提供する必要がある場合、Xの原子価は水素原子で満たさ
れる。
以下の反応図式は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの中性ルイス塩
基錯体および相応する酸性塩を作成する方法を例示すものである。例示のため、
反応図式は、(C2H5)3Nを酸性塩類を生成するための反応物質として表す。理
論で縛るつもりはないが、反応図式はさらに、トリス(ペンタフルオロフェニル
)ボランの中性ルイス塩基および相応する酸性塩類がIVB属有機金属と反応し
て本発明の触媒的に活発な塩類を生成する方法も示す。
式中、Y、X、およびqは下記の通りである。
中性ボラン錯体は一般式
(C6F5)3B・(YXH)q
を有する。
qは1〜3であって、好ましくはqは1であり、
Yは水素原子、R1-、(R2)3-Si、または(R3)2C=N-であり、
R1は炭素原子を1〜500個、好ましくは1〜100個含むヒドロカルビル
基であり、二価酸素を含んでもよく、さらに、ハロゲン含有ヒドロカルビル基で
あってもよく、たとえば、R1基はCH3OC2H4-、t-ブチルシクロヘキシル、
イソプロピル、アリル、ベンジル、メチル、エチル、C18H37、オリゴマーポリ
-α-オレフィン類(モノマー単位を2〜100個含む)、またはnの平均値は3
.5であるCF3CF2(C2F4)nC2H4-である。
R2は互いに独立に炭素原子を1〜25個含む線状アルキル基、分枝アルキル
基、またはフェニル基であり、R2はさらにSiO基を含んでもよく、(R2)3は、
たとえば、(t-C4H9)(CH3)2- または((CH3)3SiO)3-であってもよい。
R3は互いに独立に炭素原子を1〜25個含むヒドロカルビル基であり、選択
されたR3基が両者ともに水素原子でなければR3は水素原子であってもよく、た
とえばXが酸素であるとき、(R3)2C=NOHは、オキシム基=C=NOHを含む
化合物(シスまたはトランスのいずれか)であり、アルデヒド類またはケトン類
とヒドロキシアミンとの縮合生成物である、オキシムを形成する。
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは、一般式R1OHを有するアルコ
ール類と錯体を形成する傾向がある。たとえば、(C6F5)3Bをメタノール液ま
たはメタノール蒸気で処理すると、ビス(溶媒和)(C6F5)3B・2MeOHが生じ
る。室温でポンピングしても、メタノール
はあまり除去されない。この化合物は、1当量の(C6F5)3Bで処理することに
よって、(C6F5)3B・MeOHに変換することができる。(C6F5)3Bを1当量の
メタノールと反応させることによって、1:1錯体(C6F5)3B・MeOHを作成
することができる。イソプロパノールはビス(溶媒和)も形成するが、室温、減
圧下で、1当量のアルコールが除去される。
クロロホルムやトルエンなど、適当な非反応性溶剤中で各々1当量のアルコー
ルと(C6F5)3Bを結合させ、続いて溶剤を蒸発させることによって低揮発性ア
ルコールのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン錯体を作成することができ
る。適当なアルコールは、線状(ステアリルアルコール)、環状(t-ブチルシクロ
ヘキサノール)、分枝(イソプロパノール)、不飽和(アリルアルコール)、芳香族(
ベンジルアルコール)、任意に活性な(メタノール)、酸素置換(MeOC2H4OH)
、オリゴマー(ポリ-1-ヘキセンアルコール)、nの平均値が3.5であるハロゲ
ン置換[CF3CF2(C2F4)nC2H4OH]を含め、様々な脂肪族基または芳香族
基を含むが、これに限定されない。
一般に、適当なアルコールのpKa値は−2から−4の間である。たとえば、2,
2,2-トリフルオロエタノールおよびフェノールはイソ型錯体を形成しない。安定
した錯体の形成は、ホウ素核磁気共鳴(11BNMR)分光法によって容易に確認さ
れる。本発明の(C6F5)3B錯体は、(外部 BF3.OEt2を基準に)−5から+
15 ppmまでの間で化学シフトを示すが、出発材料(C6F5)3Bは+60 ppmで
あった。
(YXH)q(qは1のとき)の他の特定の例としては、シラノール類((R2)3S
iOH)、メルカプタン類(R1SH)、およびオキシム類((R3)C=NOH)などが
ある。シラノールの例としては、(t-C4H9)Me2SiOHや(Me3SiO)3SiOH
などがあるが、これに限定されない。生成されたポリマーが悪臭を持たないよう
に、蒸気圧の低い
高級メルカプタンが好ましい。本発明に有用なメルカプタンの例は、オクタデシ
ルメルカプタンである。オキシムの例は、アセトンオキシムおよびシクロヘキサ
ノンオキシムである。
(C6F5)3B-(YXH)q型化合物のクラスの中で、Yは水素であり、Xは酸素
であり、且つqは1または3であるとき、水との錯体は特殊な例である。無水(
C6F5)3Bを水蒸気に曝すと、白色の安定した固体、(C6F5)3B・3H2Oを生じ
る。中間体水和物は、赤外分光分析法で検出されなかった。単結晶X線構造決定
で含有水分が証明された。他の既知のルイス塩基との(C6F5)3B錯体はすべて
1:1化学量論を有していたため、三水和物の形成は予想外であった。三水和物
の減圧昇華によって一水和物と(C6F5)3Bとの混合物を生じる。しかし、純粋
な一水和物(C6F5)3B・H2Oは、トルエンやクロロホルムなどの有機溶剤中で
、1当量の(C6F5)3B・3H2Oと2当量の(C6F5)3Bとを結合させ、続いて溶
剤を蒸発させることによって得ることが可能である。この共比例反応は、必要に
応じて一水和物を合成する便利な方法である。(C6F5)3B・3H2Oと違って、(
C6F5)3B・H2Oは不安定であり、溶液中または固体状態のいずれでも、(C6F5
)2BOHおよびC6F5Hに徐々に分解する。一水和物は、各々1モルの水と(C6
F5)3Bを結合させることによって作成することも可能である。
(C6F5)3B・R1OHや(C6F5)3B・R1SHなど、(C6F5)2Bのルイス塩基
錯体のヘテロ原子結合陽子は酸性であり、第一級アミン、第二級アミン、第三級
アミンなどの塩基で処理することによって除去することができる。たとえば、(
C2H5)3N を(C6F5)3B・3H2O または(C6F5)3B・2CH3OHと反応させる
と、それぞれ酸性塩[(C2H5)3NH]+[(C6F5)3BOH]-および[Et3NH]+[(
C6F5)3BOCH3]-を生じる。好ましい塩基は、トリエチルアミン、トリブチ
ルアミンおよびN,N-ジエチルアミンである。
前駆体ボラン錯体および一般式
(Cp)pM(R4)4-p (II)
を有し、
式中、Mはチタン、ジルコニウムまたはヘフニウムであり、
pは1または2であり、
Cpはシクロペンタジエニルリガンドであり、環の各炭素原子は、互いに独立に
、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビル置換メタロイド基から成る群から選択され
た基で置換され、メタロイドは元素周期表のIVA属から選択され、ヒドロカル
ビル基および置換ヒドロカルビル基は炭素原子を1〜20で個含み、直鎖アルキ
ル基、分枝アルキル基、環状炭化水素基、アルキル置換環状炭化水素基、芳香族
基、またはアルキル置換芳香族基を含んでもよく、シクロペンタジエニルリガン
ドの1対または2対の隣接する水素原子は1個または2個の-(CH)4基で置換さ
れて、それぞれインデニル基またはフルオレニル基を形成してもよく、さらに、
一般式(CH2)nを有し、nは3〜6であるメチレン環が1個または2個の化合物
は、シクロペンタジエニルリガンドの隣接する水素基と置換されてもよく、さら
にpが2のとき、シクロペンタジエニルリガンドを有機基または有機メタロイド
基と結合させることによってシクロペンタジエニルリガンドを二座リガンド1個
と結合させることが可能であり、
R4は、互いに独立に水素または炭素原子を1〜20個含むヒドロカルビル基
または置換ヒドロカルビル基であり、また直鎖アルキル基であっても分枝アルキ
ル基であってもよく、十分に大きければ、環状ヒドロカルビル基、アルキル置換
シクロヒドロカルビル基、脂肪族基、脂肪族置換アルキル基(たとえば、ベンジ
ル)、あるいはアルキル置換脂肪族基であってもよく、IVA属の三置換有機メ
タロ
イド基を含んでもよく、メタロイド上の各ヒドロカルビル基は炭素原子を 1〜20
個含む、ヒドロカルビルシクロペンタジエニル金属錯体を使用してオレフィン系
炭化水素の重合に有用な触媒を作成することが可能である。
Cpの適当な例としては、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル
、ビス(オクタヒドロフルオレニル)、1,2-ビス(1-インデニル)エタン、1,2-ビス
(1-テトラヒドロインデニル)エタン、イソプロピル(シクロペンタジエニル-1-
フルオレニル)、1,2-ビス(9-フルオレニル)エタン、および1,3-ビス(9-フルオレ
ニル)プロパンなどがあるが、これらに限定されるものではない。立体規則性ポ
リマーを所望する場合、キラルメタロセン類も適当且つ有用である。シクロペン
タジエニルリガンド、インデニルリガンドおよびフルオレニルリガンドの一般構
造を、それぞれ以下に示す。
理論に縛られるつもりはないが、有機金属錯体(Cp)pM(R4)4-pは、(C6F5)3
B・OR1、(C6F5)3B・OH-、(C6F5)3B・SR1-、(C6F5)3B・OSi(R2)3 -
または(C6F5)3B・ON=C(R3)2 -(塩の陽イオン部分に酸性陽子を少なくと
も1個含む)陰イオンの酸塩と反応して副生成物および(Cp)pM(R4)3-p +を含
む触媒的に活性な塩類を形成すると考えられる。たとえば、これは、以下の[Et
NH][(C6F5)3BOH]との反応によって例示することができる。
あるいは、金属錯体と、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランと水、アル
コール類、メルカプタン類、シラノール類またはオキシムの中性錯体との直接反
応では、酸性塩の必要性を回避することができる。たとえば、
いずれの経路で作成される材料も、オレフィン類の重合の触媒として使用する
ことができる。重要なことに、反応図式 II に従って作成された触媒は、トリエ
チルアミン(図式Iで得られる)などの無関係なルイス塩基副生成物を含まずに
得ることができる。
本発明に記載の材料は、エチレンやプロピレンなどのオレフィン類、特に、た
とえば、1-ヘキセンまたは 1-オクテンなどの高級オレフィンの重合に有用であ
る。重量平均分子量が大きいポリオレフィンは、未希釈オレフィンを触媒的に有
効な量の本発明の触媒で処理することによって作成することが可能である。任意
に、トルエンやヘキサンのどの不活性希釈剤でポリオレフィン類を希釈すること
が可能である。
本発明の触媒を使用して、炭素原子を2〜30個、好ましくは5
〜10個有するオレフィン的に不飽和なモノマーからポリオレフィンを作成する
ことが可能である。結果として生じたポリマーは、重量平均分子量が 100,000〜
5,000,000、好ましくは 500,000〜3,500,000であり、分子量の多分散性が<3.
5、好ましくは1.5〜3である。長鎖オレフィン、たとえば、分子量が大きく
且つ多分散性が低いCnH2n(n>5)から作成されたポリマーについて、これま
で記述されていなかった。
本発明に従って作成された非晶質アタクティックプロピレンホモポリマーおよ
び非晶質アタクティックプロピレンコポリマーの重量平均分子量は、ゲル透過ク
ロマトグラフィー(GPC)で測定したとき、約 100,000 から約 5,000,000 の
範囲、好ましくは約 200,000 から約 1,000,00 の範囲である。本願明細書で使
用する、本発明のポリプロピレン(コ)ポリマーの「アタクティック」または「
アタクティシティ」は、広角X線散乱(Wide Angle X-Ray Scattering(W
AXS))法を使用して結晶性を確認することができず、且つ示差走査熱量分析
法(Differential Scanning Calorimetry(DSC))を使用して結晶溶融ピー
クを確認することができないと定義され、これは、この材料の結晶性のレベルは
目下検出限界未満、たとえば1%未満であることを意味する。さらに、アタクテ
ィックポリプロピレンは、13C NMR(A.E.Tonelli,NMR Interpreta
tion of Polymer Structure,VCH,New York(1989))を使用して測定した
とき、一般に約6%±3%の(mmmm)ペンタドを示す。(mmmm)が約6%±3%
というNMRの結果は、プロピレンモノマーの方向の完全ランダム分布と一致す
る。
本発明の触媒を使用して重合することが可能なオレフィン的に不飽和なモノマ
ーとしては、線状-α-オレフィン、分枝α-オレフィン、環状オレフィン、フェ
ニルなどの芳香族基を含むオレフィン類、ケ
イ素やホウ素を含むオレフィン類、およびジオレフィン類などがある。これらの
モノマーの混合物、ならびにオレフィン類やジオレフィン類を含む混合物を共重
合することが可能である。
本発明の触媒のCpリガンドの環を置換すると、ポリマーの分子量および活性
が低減する。これを表1に示す。ポリマーの分子量低減は、ポリマー凝集強さの
喪失と関わりがあるため、多くの分野で一般に望ましくない。たとえば、Me3S
i基と関連した分子量の低減に関する記述は以前にはない。(Me3SiCp)2ZrMe2
およびメチルアルミノキサンから作成された触媒は、未置換Cp2ZrMe2よりも
分子量の大きいポリヘキセンを生成する傾向がある。
本発明の利点は、オレフィンモノマー中またはモノマーと溶剤の溶液中での触
媒塩の溶解度を高める可溶化基を、活性な触媒部位を含む陽イオンよりむしろ陰
イオンに差し支えなく導入することである。可溶化基は活性部位から空間的に離
れており、したがって、重合を妨害せず、それ故、高分子量ポリマーが生成する
。たとえば、アルコール錯体(C6F5)3B・C18H37OH経由で導入された可溶化
オクタデシル基が陰イオンに含まれる触媒[(インデニル)2ZrMe)][(C6F5)3B・
OC18H37]は、80:1(v/v)1-ヘキセン−トルエンに約10-3Mの程度ま
で溶解する。別の例では、平均重合度5.9であり、且つ末端CH2OH基を担
持するポリヘキセンアルコールが、40:1ヘキセン−ヘキサン中に10-3Mの
濃度の溶液を生じた。たとえば、(C6F5)3B・R1OH中のR1OHの構造を適切
に変更することによって、選択したモノマー中に触媒が十分に溶解するように、
可溶化基の構造を変化させることができる。下記の実施例で示すように、本発明
の陰イオンは、モノマー:触媒の比率が同じであっても、外面的に関連した触媒
よりも分子量が大きいポリオ
レフィン類を生成する触媒を提供する。
報告によれば(インデニル)2ZrMe2有機金属化合物は触媒の作成に有用である
が、触媒の有機金属部分のリガンドの構造と、このような触媒を用いて生成した
高級オレフィン(C5以上)のポリマーの分子量との間に相関関係はないようで
ある。結果として、どの有機金属化合物を使用すれば高分子ポリマーを作成する
ことができるか容易には判らない。たとえば、米国特許第4,040,344号(Kaminsk
y et al.)に記載の可溶性均質オレフィン重合触媒を使用して使用してポリ(ヘ
キセン)を作成すると、分子量が5,000未満のオリゴマーが生成する。
構造的には、平らなシクロペンタジエニルリガンドは、これらの錯塩類に組み
込まれると、高分子量のポリマーを生成する。上記表1からわかるように、[(リ
ガンド)2ZrMe)[(C6F5)3B・OC18H37]を触媒として使用し、1−ヘキセン
をモノマーとして使用すると、リガンドは、シクロペンタジエニル、インデニル
、フルオレニルの順序で変化するにつれて、重合体の重合度は99から200、
4800にそれぞれ上昇する。フルオレニルリガンドは、高分子量ゴム状ポリオ
レフィン類を所望するとき、特に有用である。
非晶質アタクティックポリプロピレンおよびそのコポリマー類は、感圧接着剤
、防振材料、エラストマー材料または弾性材料、熱可塑性材料の耐衝撃性改良剤
、あるいはアスファルトなどの改質剤としての有用性を見出している。他の用途
としては、たとえば、クリングフィルムなどの包装材料などがある。
本発明の目的はおよび利点は、以下の実施例によってさらに示されるが、これ
らの実施例に具陳された特定の材料およびそれらの量、ならびに他の条件および
詳細によって本発明が不当に制限されると考えてはならない。
産業上の利用可能性
実施例
赤外線(IR)分光分析法および核磁気共鳴(NMR)分光法のうち少なくと
も1法で、全ての化合物を特性化した。NMR分析には、1H、11B、13Cおよ
び19Fを含めた。Column Resolution,Inc.,San Jose,CA)のP101、P10
3、P104、P105およびP106カラムを備えたHewlett-Packard 1090-LUSI
システムを使用し、ポリスチレン標準を使用した濾過THF(テトラヒドルフラ
ン)溶液のゲル透過クロマトグラフィーによって、あるいは、当業者に周知のN
MRによって、重量平均分子量(Mw)が106未満のポリマーの数平均分子量(
Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。多分散性(PD)は、重量平均分
子量を数平均分子量で除した商、すなわちMw/Mn指す。
Cu Kα放射線およびトランスミッションモードで得られたラウエパターン(
Laue pattern)を使用して、広角X線散乱(WAXS)データを得た。走査速
度20℃/分でPerkin Elmer System Seven計器を使用し、窒素で試料を取
り囲んで、示差走査熱量分析法(DSC)を実行した。
当業者に周知のローアングルレーザー光線散乱技法によって、重量平均分子量
が106を超える材料を特性化した。すべての出発材料および溶媒は、別に記載
があるか明白な場合を除き、市販されているか文献で周知である。市販されてい
るすべての材料および溶剤は、他に記述がない限り、Aldrich Chemical Coか
ら入手することができる。
180°剥離試験および剪断吊下げ試験を使用して、実施例41〜49の接着
テープ特性を測定した。剥離試験では、テープ試料を
ガラス表面上を転がし、2 kgローラーを2回通過させた。その後で、角度18
0°、速度30 cm/分でテープをはがした。報告の値はオンス/インチ幅であ
る。剪断吊下げ試験は室温で実施し、2.54×2.54 cmのテープ切片を清
浄なガラス表面を転がした。1 kgの重りを試料から吊下げ、テープがガラス表
面から離れるまでの時間を報告した。より高温における剪断吊下げ試験も実施し
た。実施例42および43では、1.27×2.54 cmの試料および500 g
の吊下げ重りを使用して、70℃で剪断吊下げ試験を実行した。
調製例1
(C6F5)3Bの調製
Massey et al.J.Organomet.Chem.1964,2,245に記載の手順に従っ
て、-50℃未満の温度で、C6F5Liをヘキサン中のBCl3と反応せせることに
よって、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを調製した。
実施例1-(C6F5)3B・3H2Oの調製
装置を真空管路と接続できるように両端で閉鎖し、栓およびOリングを取付けた
逆U字管でできている反応器の一方の脚に(C6F5)3B0.87グラムを入れた。も
う一方の脚に過剰な水を入れた。低温水浴で水を凍結した後、装置を減圧した。
反応器を室温に暖めた後、ボランを水蒸気と反応させると、三水和物を形成した
。吸水完了後、過剰な水を汲み出すと、空気に安定な生成物が定量的収量で得ら
れた。
実施例2-(C6F5)3B・H2Oの調製
実施例1で調製した(C6F5)3B・3H2O 0.566g(1 mmol)とジクロ
ロメタン10 mL中の(C6F5)3B1.024グラム(2 mmol)との混合物を1
5分間攪拌し、続いて減圧下で乾燥するまで蒸発させた。生成物の定量的収量を
維持し、乾燥窒素条件下で保存した。
実施例3-[Et3NH][(C6F5)3BOH]の調製
トルエン20 mL中の、実施例1で調製した(C6F5)3B・3H2O3.6gの
溶液を、トルエン3 mL中のトリエチルアミン0.76gで処理した。反応混合
物をヘキサン50 mLで希釈すると粗生成物2.75gが沈殿した。カールフィ
ッシャー(Karl Fisher)解析を使用して、粗生成物は水和物であり、且つH2O
存在率は0.66であることが決定された。最小量の熱トルエン中の溶液で、
この粗生成物を再結晶し、続いて-50℃まで冷却した。濾過および減圧乾燥に
より、5モル%H2O に相当する、H2O 0.15重量%を含む材料が得られた
。
実施例4-(C6F5)3B・2MeOHの調製
メタノール1.5 mL 中(C6F5)3B0.34gの溶液を乾燥N2条件下で調
製し、乾燥するまで蒸発させると透き通った粘性残留物が得られ、これを動的減
圧(減圧ポンピング)下で一晩結晶化させた。
収量は0.33gであった。
実施例5-[Ph3PMe][(C6F5)3BOMe]の調製
メタノール1 mL 中(C6F5)3B 0.39g(0.76 mmol)の溶液を、僅
かに余分な(>5%)メタノール性ナトリウムメトキシドで
処理した。この溶液に、過剰なメチルトリフェニルホスホニウムブロミドを加え
た。この溶液を曇り点まで水で希釈し、冷蔵した。白色の結晶をフィルター上に
採集し、水で洗浄して減圧乾燥した。収量は0.58 g(93%)であった。
実施例6
実施例5と類似した反応を使用してトリエチルアンモニウムを調製したが、こ
の条件下で、陰イオンは(C6F5)3BOH-に部分的に加水分解した。
実施例7-(C6F5)3B・C18H37OHの調製
1-オクタデカノール0.135 g(0.5 mmol)とトルエン4 mL中(C6F5)3
B 0.256 g(0.5 mmol)の溶液を30分間攪拌した。この溶液を真空
管路で蒸発させた。残存生成物は粘性油であり、収量は約0.37 gであった
。(C6F5)3B 錯体は、乾燥窒素大気中で調製し、取り扱った。
実施例8-(C6F5)3B・C18H37SHの調製
1-オクタデシルメルカプタン0.143 g(0.5 mmol)とジクロロメタン
5 mL中の(C6F5)3B0.356 g(0.5 mmol)の溶液を高減圧下で蒸発
させた。残留産物は重量0.36gの油であった。
実施例9-(C6F5)3B・C4H9OC2H4OHの調製
4A分子篩上で乾燥させた2-ブトキシエタノール、0.059 g(0.5 mm
ol)とトルエン1 mL中の(C6F5)3B 0.256g(0.5 mmol)の溶液を
高減圧下で蒸発させた。残留産物は粘性油であ
り、収量は約0.24 gであった。
実施例10-(C6F5)3B・シクロ・C6H10=NOHの調製
シクロヘキサノンオキシム0.056 g(0.5 mmol)とジクロロメタン2.
5 mL 中の(C6F5)3B 0.256 gの溶液を高減圧下で蒸発させると、生成
物0.28 gが残った。
実施例11-(C6F5)3B・(Me3SiO)3SiOHの調製
トリス(トリメチルシロキシ)シラノール(PCR,Inc.,Gainesville,F
L)0.312 g(1 mmol)とトルエン1.5 mL中の(C6F5)3B0.512g(1 mmo
l)の溶液を30分間攪拌し、続いて高減圧下で蒸発させた。白色半固体の生成物
0.8 gが残った。
実施例12−フッ素化アルコール錯体
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(0.51g、1 mmol)と、nの平均値が
3.5であるCF3CF2(CF2CF2)nCH2CH2OH(米国特許第4,219,681号
、実施例1で調製した。このような説明は参照により本願明細書に組み込まれる
)0.44 g(1 mmol)とを、CF2ClCFCl2 2 mL 中、乾燥窒素下で結合さ
せた。溶液を約1時間攪拌した後、溶剤を蒸発させると、脂っぽい固体としてフ
ッ素化アルコール錯体が残った。
実施例13-(C6F5)3B・H2Oを使用した重合
(C5H5)2ZrMe2の調製
Samuel et al.J.Am.Chem.Soc.1973,9,6263に記載の通りにジエチ
ルエーテル中の(C5H5)2ZrCl2を2当量のメチルリチウムで処理することによ
って(C5H5)2ZrMe2を調製した。
実施例2に従って調製した(C6F5)3B・H2Oと(C5H5)2ZrMe2とを各0.
05 mmol 結合させることによって調製した触媒に、1-ヘキセン(0.67 g
)を窒素条件下で加えた。2〜3秒後、発熱反応が起こり、混合物は濃厚になっ
た。約50分後、懸濁した触媒を遠心分離によって除去した。未反応モノマーを
蒸発させた。生じたポリマーの数平均分子量(Mn)は400であることがNMR(1
H)分析で判明した。ポリマーの収率は95%であった。
実施例14-(Me5Cp)HfMe3を使用した重合
(Me5C5)HfMe3の調製
Schrock et al.J.Am.Chem.Soc.1988,110,7701.に記載の通り、(
Me5C5)HfCl3を3当量のメチルリチウムと反応させることによって(Me5C5)
HfMe3を調製した。
(C5H5)2ZrMe2の代わりに(Me5C5)HfMe3を使用して、実施例13と同
様の反応を実行した。Mnが2200のポリマーの収率は90%であった。
実施例15-[Et3NH][C6H5)3BOH]を使用した重合
トルエン1 mL中の(C5H5)2ZrMe2(実施例13(1)で調製した)0.1
3g(0.5 mmol)を、トルエン6 mL中に懸濁した[Et3NH][(C6F5)3B
OH](実施例3で調製した)0.31g(0.5 mmol)に、乾燥窒素条件下で攪
拌しながら滴下した。ガス放出が起こった。結果として生じた橙色の、分離した
有機油を傾瀉で除去し、トルエンで洗浄した後ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥する
と、触媒0.31 gが橙色の泡として得られた。
この触媒(0.01 g)を乾燥窒素下で1-ヘキセン0.67 gに加えた。3
日後、反応混合物をヘキサンで希釈し、濾過して未溶解触媒を除去した。ヘキサ
ンを蒸発させるとポリマー0.45 gが残った。
この生成物は、Mwは27,700、Mnは9100、PDは3.04であることが、ゲル透
過クロマトグラフィー(GPC)で判明した。
実施例16-(C6F5)3B・C18H37OHを使用して調製した可溶性触媒
トルエン0.3 mL中のC18H37OH 0.05 mmolの溶液を、乾燥窒素下で
(C6F5)3B0.05 mmolに加えた。次に、この溶液に実施例14で調製した(
C5H5)2HfMe20.05 mmolを加えた。結果として生じた触媒溶液の約半分を
、0℃に冷却しておいた酸素を含まない乾燥1-ヘキセン13.4 gに、モノマー
:触媒の比率6400:1で攪拌しながら加えた。反応混合液は本質的に透き通
っており、且つ透明であった、すなわち、懸濁した固体は全く認められなかった
。約16時間後、熱ヘプタン中に溶解することによって重合体を取り出した。水
アスピレーターを使用して95℃でヘプタンを除去した後、Mw148,000、Mn55,
500、PD 2.67のポリマー13.6 gが残った。
実施例17(a)および17(b)
実施例16に従って調製したホウ素錯体を使用して、実施例に類似した反応を
実行し、
(a)テトラヒドロフラン中でLi[Me3SiC5H4]とHfCl4とを反応させ、
続いてメチルリチウムでアルキル化することによって(Me3SiC5H4)2HfMe2
を調製した。モノマー:触媒比は6400:1であった。
NMR分析法で測定したとき、生じたポリマーのMnは5040であった。
(b)液体アンモニア中でNaC5H5を1-C8H17Brと反応させてn-C8H17C5
H5を供給することにより、(n-C8H17C5H4)2HfMe2を調製した。これをn-
C4H9Liと反応させた後、HfCl4と反応させることによって変換すると(n-C8
H17C5H4)2HfCl2が得られた。続いてメチルリチウムでア
ルキル化すると(n-C8H17C5H4)2HfMe2が生成した。モノマー:触媒比は3
200であった。NMR分析法で測定したとき、生じたポリマーのMnは193
2であった。
実施例18−オリゴマー(ポリヘキセン)アルコールを使用した重合
オクタデカノールの代わりにオリゴマー(ポリヘキセン)アルコール(平均重
合度5.9)を使用して、実施例16の場合と同様の反応を実行した。オリゴマ
ー(ポリヘキセン)アルコールは、1992年4月9日に提出され、参照により
本願明細書に組み込まれる同時係属米国特許出願第07/865,940出願の実施例1a
および実施例1bに記載の手順に従って調製した。ポリマーの収量は本質的に定
量的であった。ポリマーのMwは164,000、Mnは63,000、PD は2.6であるこ
とがGPC分析法で判明した。
実施例19−背景技術の触媒を使用した比較例
Yang et al.J.Am.Chem.Soc.1991,113,3623.に記載のZr類縁体に類似
した[(C5H5)2HfMe][MeB(C6F5)3]を使用して、ヘキセンを触媒的に重合
した。
乾燥窒素大気下、無水トルエン0.7 mL中でCp2HfMe2と(C6F5)3B(各
々0.025 mmol)を結合させた。反応が起こり、黄色の油が分離した。黄色の油を
振盪し、酸素を含まない0℃の乾燥1−ヘキセン13.4 gに加えることによっ
て分散させた。触媒固相の分離が確認された。約48時間後、生じたポリマーを
、熱シクロヘキサンに溶解することによって反応器から取り出した。水アスピレ
ーター減圧下で溶剤を除去した後、ポリマーの重量は13.6 gであった(若干
の残余溶剤が存在していた)。ポリマーのMwは48,000、Mnは13,500、PDは3
.55
であることがGPC分析で判明した。このポリマーは、実施例16で類似した条
件下で作成した材料よりも分子量は低く、多分散性は高かった。
実施例20-(C6F5)3B・C18H37SHを使用した重合
実施例8で調製した(C6F5)3Bの1−オクタデシルメルカプタン錯体0.0
5 mmolの溶液に、無水トルエン0.1 mL中の(Me3SiCp)2HfMe20.02
4g(0.05mmol)を、窒素条件下で攪拌しながら加えた。この混合物を、酸
素を含まない乾燥1−ヘキセン13.4 gに加えた。約48時間後、ポリマーを
ヘプタンに溶解し、粒状アルミナのパッドを通過させて濾過した。減圧下で溶剤
を蒸発させた後、1HNMRで測定したとき、Mnが4900のポリマー10.2 gが
残った。
実施例21-(C6F5)B・(MeSiO)3SiOHを使用した重合
(C6F5)3B・(Me3SiO)3SiOHと実施例14で調製した(インデニル)2H
fMe2を各0.025 mmol含むトルエン溶液を、0℃に冷却しておいた酸素を含
まない乾燥1−ヘキセン13.4 gに、攪拌しながら加えた。この温度で約16
時間後、反応器を空気に曝露し、少量のトルエンを加え、生じた産物をジャーに
廃棄した。95℃/6. 7 hPa(5 mmHg)で揮発性物質を除去後、ポリマー
11.3 gが残った。ポリマーのMwは340,000、Mnは145,000、PDは2.34
であった。
実施例22-(C6F5)3B・シクロ-C6H10=NOHを使用した重合
実施例10で作成した(C6F5)3B-シクロヘキサノンオキシム錯体と(インデ
ニル)2HfMe2各0.025 mmolから作成した触媒のトルエン0.85 ml中懸
濁液を、酸素を含まない、冷(0℃)乾燥1−ヘキセン13.4 gに、攪拌しな
がら加えた。約16時間後、有機相を除
去して、蒸発させるとNMR分析法で測定したときMnが31,000のポリーマー1
.2 gを生じた。
実施例23-(C6H5)B・BuOC2H4OHを使用した重合
無水トルエン0.3 mL中で、実施例9で調製したブトキシエタノール錯体と
(インデニル)2HfMe2.各0.025 mmolを結合させた。次に、1−ヘキセン0
.67 gを加えた。約16時間後、反応混合物を蒸発させると、NMRで測定し
たとき、Mnが18,000の重合体0.44 g(66%)が得られた。
実施例24−1−ヘキセンと4−メチル−1−ペンテンの共重合
この実施例は、異なる2種のオレフィンのコポリマーの作成を表す。触媒は、
(インデニル)2HfMe2と、酸素を含まない乾燥トルエン0.3 mL中の、実施例
7で調製した(C6F5)3B・C18H37OH各0.025 mmolから作成した。この
触媒を、酸素を含まない乾燥1−ヘキセン26.8 gと、0℃に冷却しておいた
4メチル-1-ペンテン2.6 gとの混合物に、混合しながら加えた。4日後、得
られた硬質の反応生成物をトルエン50 mLに溶解し、メタノール200 mLに
注ぐと沈殿が生じた。真空オーブン内で乾燥後、ポリマーの重量は23 gであっ
た。このポリマーは5モル%の4−メチル-1-ペンテンを含むことが、NMR分
析法で判明した。GPC分析法によれば、ポリマーのMwは207,000、Mnは62,00
0、PDは3.3であった。
実施例25−高分子量ポリヘキセンの調製
無水トルエン0.5 mL中の(フルオレニル)2ZrMe2(Samuel et al.J
.Organomet.Chem.1976,113,331に記載)0.025 mmolの溶液を、トル
エン0.5 mL中の、実施例7で作成した(C6F5)3B・C18H37OH 0.
025 mmolに、窒素下で加えた。生じた触媒を、0℃の酸素を含まない乾燥1
−ヘキセン13.4 gに加えた。10分後、混合物は余りにも濃厚で、マグネテ
ィックスターラーで攪拌することができなかった。約16時間後、反応器を空気
に曝露し、内容物を熱トルエンに溶解した。かなり過剰のメタノールに、この溶
液を攪拌しながら注いだ。真空オーブン内で乾燥後、沈殿したポリマーの重量は
9.2 gであった。Mwは2.15×106であることがローアングルレーザー光
線散乱で判明した。Mnは独立して判らなかったため、ポリマーの多分散性を得
ることはできなかった。しかし、非常に緊密な関係のある(シクロペンタジエニ
ル)2HfMe+のC18H37OB(C6F5)3-塩と(インデニル)2HfMe+のC18H37O
B(C6F5)3-塩を使用してポリヘキセンを作成した。ポリマーの多分散性は、そ
れぞれ2.7および2.6であった。これらは、表1に示す見出し8および見出
し10である。多分散性は、縮合ベンゼン環1個をシクロペンタジエニルリガン
ドに導入することによって本質的に影響を受けないため、金属に結合したリガン
ドが縮合ベンゼン環2個を有するこの実施例および実施例26に従って作成した
ポリヘキセンの多分散性は約3以下であると考えられる。
実施例26−高分子量ポリヘキセン
モノマー:触媒比が37,700:1になるように、より少ない触媒を使用して、実
施例25と同様の反応を実施した。反応器から生成物を取り出すことによって、
精密検査を遂行した。1−ヘキセン40.2 gからポリマー9.8 gが得られた
。Mwは3,390,000であることが、光散乱分析で判明した。
実施例27−1−オクタデセンの重合
トルエン0.5 mL中の、実施例24で作成した触媒溶液を、0℃の1−オク
タデセン13.4 gに攪拌しながら加えた。約16時間後、温イソプロパノール
を用いて粗生成物をスラリーにし、160℃/40 Pa(0.3 mmHg)で乾燥
させると、蝋質のポリマー(融点45℃)13.4 g(85%)が得られた。
ポリマーのMwは154,000、Mnは72,000、PDは2.14であることがGPC分
析法で判明した。
実施例28−1-ヘキセンと1,13-テトラデカダジエンとの共重合
この実施例は、オレフィンとジオレフィンとの共重合を示す。実施例24で作
成した触媒0.025 mmolを含む溶液を、1−ヘキセン26.8 g(319 m
m)と1,13-C14H26(ShellCo.,Houston,TX)0.17 g(0.88 mm
ol)との冷(0℃)混合物に、攪拌しながら加えた。この温度で約16時間後、
不溶性の強靭なゴム状ポリマーを反応器から取り出して小さな切片に切断し、減
圧下、80℃で乾燥させた。収量は25.4 g(94%)であった。
代わりに同じジエン0.85 gを使用したこと以外は類似した例を実行した。
減圧乾燥後、ポリマーの収量は25.4 g(92%)であった。
実施例29−エチレンの重合
窒素を充満した乾燥箱内で、トルエン0.5 ml中の(インデニル)2TiMe2 0
.05 mmolの溶液を、トルエン0.5 ml中のC6F5B・C18H37OH 0.05
mmolに加えた。フラスコに真空管路を取り付け、内容物を凍結し、窒素をポン
プで汲み出した。解凍後、圧力が80kPa(600 mmHg)に達するまで、エチ
レンを入れた。発熱重合中、圧力を約80 kPaに維持するため、反応器を攪拌
してさらに多くのチレンを加えた。エチレン消費が減少した後、そのとき固体で
あ
った反応混合物をメタノールでフラスコから洗い落し、風乾した。赤外分光分析
法で確認されたポリエチレンの収量は0.65 gであった。
実施例30−ポリ(シクロペンテン)の調製
この実施例は、シクロオレフィンの重合を示す。0℃に冷却しておいたシクロ
ペンテン14.7 gに、トルエン 0.4 mL中の、実施例24で作成した触媒
の溶液に加えた。反応器を0℃に維持して、時々振った。2日後、この混合物を
濾過した。固相1.4 gを、熱トルエン50 mLで消化して低分子量オリゴマー
を除去してから濾過すると、不溶性の白色固体0.8 gが得られた。これは、赤
外分光分析法およびX線粉体回折によってポリ(シクロペンテン)と同定された
。
実施例31−(フルオレニル)2ZrMe2を使用したプロピレンの重合
窒素下、トルエン0.5 mL中で(C6F5)3B0.05 mmolとExxal-20TM(E
xxon Coから入手可能なC20分枝アルコール)0.05 mmolの溶液を作成し、(
フルオレニル)2ZrMe2(実施例25を参照)0.05 mmolに加えた。この混合
物を、トルエン2 mLでガラス製圧力容器内に洗い入れ、この容器をガス操作シ
ステムに接続した。攪拌しながら、31 kPaでプロピレンを導入した。発熱反
応および活発なガス吸収が認められた。プロピレンを加えて圧力を31 kPaに
維持した。約1時間後にガス吸収は減速し、容器の接続を断って空気に曝露した
。トルエンを加えると透き通った均質な反応混合物の粘度が低下し、これを6 m
m×12 mmのアルミナパッドを通過させて、触媒を除去した。溶剤を蒸発させる
と、Mw120,000、Mn38,000のゴム状のポリマー0.6 gが残った。DSC分析
法でTgは−3℃であることが判明し、試料は
結晶融点を示さなかった。13C NMRおよびWAXSでアタクティシティが確
認された。
実施例32-(1-メチルフルオレニル)2ZrMe2を使用した重合
トルエン1 mL中d,1-(1-メチルフルオレニル)2ZrMe2(Samuel et al.,su
pra Example 25に従って作成)0.025 mmolの溶液を、窒素下で(C6F5)B・
C18H37OH(実施例7)0.025 mmolに加えた。さらにトルエン14 mL
を加え、その混合物を、ガス操作システムに接続したガラス製圧力容器に移し、
氷浴で6℃に冷却した。プロピレンを、攪拌しながら約21.8 kPaでこの容
器に導入した。温度を21℃に上げ、プロピレンを加えて圧力を維持した。温度
が7℃に下がったとき、反応器を開き、トルエン15 mLを加えた。固体のアイ
ソタクティックポリプロピレンを濾過によって回収した(1.77 g)。濾液を
ヘプタン50 mLで希釈すると、さらに0.24 gのアイソタクティックポリプ
ロピレンが沈殿し、合計収量は2.01 gであった。固体の13C NMR分析で
アイソタクティシティ(79%mmmm)が確認され、GPC分析法でMwは350
,000、Mnは140,000であり、DSCで、融点は132℃であった。
トルエン−ヘプタン複合濾液を蒸発させると、減圧乾燥後にゴム状のポリプロ
ピレン2.3 gを生じた。この材料のMwは350,000であり、Mnは110,000である
ことがGPC分析法で判明し、DSCはTg-5.5℃を示したが、結晶融点は示さ
なかった。13C NMRによればほぼアタクティック材料(12% mmmm)で
あった。
実施例33-(9-メチルフルオレニル)2ZrMe2を使用したプロピレンの重合
Samuel et al.(実施例25を参照)に従って作成した(9-メチルフルオレニル)2
ZrMe2を触媒のメタロセン部分として使用したこと以外は実施例32に記載の
通りにプロピレン重合を実施した。不溶性のアイソタクティックポリプロピレン
は得られず、可溶性アタクティックポリプロピレン0.5 gが単離されたが、さ
らなる特性化はしなかった。
実施例34−(2-フェニルフルオレニル)2ZrMe2を使用した重合
0.6 mLのトルエン中、Samuel et al.(実施例25参照)に記載の方法で作
成した(2-フェニルフルオレニル)2ZrMe20.05 mmolの溶液を、0.3 mL
のトルエン中(C6F5)3B・C18H37OH(実施例7)0.05 mmolに加えた。こ
の混合物をトルエン20 mLで希釈し、さらに(オクチル)3Al(Ethyl Corp.
)0.2 mLと混合した後、ガス操作システムに接続したガラス製圧力容器に移
し、攪拌して−15℃に冷却した。38.7 kPaでプロピレンを導入し、温度
を−3℃に上げ、プロピレンを加えて圧力を維持した。1時間後、反応容器を空
気に曝露し、透き通った均質な反応混合物をIrganox 1010TM酸化防止剤(Ciba
-Geigy)0.1 gで処理した。溶剤を除去すると、13C NMR分析法(6.0%mm
mm)およびDSC分析法(Tg=-5.5℃、結晶融点なし)からわかるように、非晶質
ポリマー4.2 gが残った。GPC 分析法で、Mwは910,000であり、Mnは390,
000であった。
実施例35-(フルオレニル)2ZrMe2を使用したポリプロピレンと1−ヘキセン
との共重合
ガス操作システムに取付けたガラス圧力容器に、1−ヘキセン50mL、およ
びトルエン中の1M トリイソブチルアルミニウム0.2 mLを導入した。反応
容器を簡単に排気し、プロピレンで圧力を3.5 pKaにし、(フルオレニル)2Zr
Me2およびトルエン1 mL中の(C6F5)3B・
C18H37OH(実施例7)各0.01 mmolで作成して弁により圧力容器に接続し
た貯蔵器に保存された、触媒溶液を、攪拌しながら圧力容器に導入した。16時
間後、この容器を空気に曝露し、内容物をトルエン50 mLで希釈した。メタノ
ール約150 mLで重合体を沈殿させ、Irganox 1010TM 0.05gを含むトル
エン中に採集し、メタノールで再度沈殿させ、収集して減圧下、80℃で12時
間乾燥させると、コポリマー6.3 gが得られた。この材料は1−ヘキセン9
4%とプロピレン6%を含むことが13C NMR分析法で判明した。この材料の
Mwは920,000であり、Mnは240,000であることがGPC分析法で判明した。Tg
は−35℃であり、5℃/分走査速度で結晶融点はないことがDSC分析法でわ
かった。WAXSで結晶性は検出されなかった。
実施例36−プロピレンの重合
窒素パージした、乾燥した8Lオートクレーブにプロピレン3 kgおよびトル
エン10 mL中トリ-n-オクチルアルミニウム3.6 gの溶液を入れた。[1,2-ビ
ス(9−フルオレニル)エタン]ジルコニウムジメチルとトルエン20 mL中の(C6
F5)3B・C18H37OH(実施例7)各0.06 mmolを結合させることによって作
成した触媒溶液を注入した。この反応混合液を3時間攪拌し、一晩放置した。ガ
ス抜き後、ゴム状のポリマー1.02 kgを反応器から取り出した。Mwは500,00
0、Mnは228,000、多分散性指数(PD)は2.59であることがGPC分析法
で判明した。示差走査熱量分析法およびX線回折で、試料中に結晶相は認められ
なかった。示差走査熱量分析法で測定すると、ガラス転移温度は270°Kであ
った。
実施例37および実施例38−1−オクテンとプロピレンの共重合
実施例37:窒素パージした、乾燥した3Lオートクレーブにプロピレン50
0 g、1−オクテン100 gおよびトリ-n-オクチルアルミニウム1.5 gを入
れた。[1,2-ビス(9-フルオレニル)エタン]ジルコニウム ジメチルとトルエン1
0 mL中の(C6F5)3B・C18H37OH(実施例7)各0.03 mmolを窒素下で結
合させることによって作成した触媒溶液を導入した。反応器を自原圧下で16時
間攪拌した後、ガス抜きをした。粗生成物を減圧下で24時間保ち、揮発性物質
を除去した。収量は300 gであった。ポリマーのMwは378,000、Mnは136,000
、PDは2.79であることがGPC分析法で判明した。NMR分光分析法で、オク
テンは9モル%(22重量%)、プロピレンは91モル%であった。示差走査熱
量分析法およびX線回折で、試料中に結晶相は認められなかった。DSCで測定
すると、ガラス転移温度は256°Kであった。
実施例38:プロピレンおよび1−オクテン各320gの混合物を30℃で重合
したこと以外は、実施例37と類似した重合を実行した。収量は21 gであった
。コポリマーのMwは728,000でMnは355,000であり、PDは2.05であること
がGPC分析法で判明した。NMR分光分析法によれば、この材料はオクテン2
3モル%、プロピレン77モル%を含んでいた。示差走査熱量分析法およびX線
回折で、試料中に結晶相は認められなかった。DSCで測定すると、ガラス転移
温度は246°Kであった。
実施例39−プロピレンとエチレンの共重合
窒素パージして、乾燥した、トリ-n-オクチルアルミニウム3 gが入っている
3Lオートクレーブに、プロピレン500 gとエチレン200 gの混合物を入れ
た。[1,2-ビス(9-フルオレニル)エタン]ジルコ
ニウム ジメチルとトルエン10 mL中の(C6F5)3B・C18H37OH(実施例7)
各0.015 mmolを結合させることによって作成した触媒溶液を反応器に加え
た。反応器を室温で20時間攪拌した後、ガス抜きをした。減圧乾燥後、反応器
から取り出したポリマーの重量は69 gであった。コポリマーのMwは204,000、
Mnは94,000、PDは2.08であることがGPC分析法で判明した。NMR分
光分析法で、プロピレンは35モル%、エチレンは65モル%であった。示差走
査熱量分析法およびX線回折で検査すると、結晶成分は全く存在しないことが判
った。DSCで測定すると、ガラス転移温度は223°Kであった。
実施例40−プロピレンの重合
代替触媒/助触媒系を使用したこと以外は、実施例36に類似した様式でプロ
ピレンの重合を行った。窒素パージした、乾燥した8Lオートクレーブにプロピ
レン3 kgを入れた。[1,2-ビス(9-フルオレニル)エタン]ジルコニウム ジクロリ
ド5.4 mgをメタルミノキサン([Al]=1.7M)10 mlに溶解することによっ
て作成した触媒溶液を反応器に注入した。反応混合液を3時間攪拌した後、一晩
放置した。ガス抜き後、ゴム状ポリマー0.9 kgを反応基から取り出した。こ
のポリマーのMwは494,000、Mnは210,000、多分散性指数(PD)は2.35で
あることがGPC分析法で判明した。示差走査熱量分析法およびX線回折で、試
料に結晶相は認められなかった。DSCで測定すると、ガラス転移温度は270
°Kであった。
実施例41〜49−感圧接着剤
実施例36〜40に記載のポリマーで、9種類の感圧接着剤を作成した。表2
に、これらの感圧接着剤の処方を示す。接着剤原材料は、基本ポリマー、粘着付
与樹脂、および任意に可塑化油を含んでいた
が、本発明の感圧接着剤の作成に1種以上の粘着付与樹脂および可塑化樹脂を使
用することもできる。これらの実施例に使用した粘着付与樹脂としては、Goody
ear Chemical Co.から入手可能な、Tgが315°Kの脂肪族炭化水素樹脂Wi
ngtack PlusTM、Exxon Chemical Co.から入手可能な、Tgが313°Kの
脂肪族炭化水素樹脂EscorezTM1310LC、Arizona Chemical Co..から入手可
能な、Tgが215°Kの-α-ピネン液体粘性付与樹脂Zonarez A-25TMなどが
ある。使用した可塑化油はShell Oil Co.から入手可能な、有効Tgが209
°Kのナフテン系油Shellflex 371TMであった。基本ポリマーと相溶性であれば
、他の粘着付与樹脂および可塑化油を使用することが可能である。表2に示す処
方に従って、トルエンとヘプタンの50/50配合物に原材料を溶解した。トル
エン/ヘプタン配合物は接着剤溶液の重量の65%を構成していた。次に、この
溶液を厚さ40μmの二軸延伸ポリプピレンフィルムに塗布し、65℃で10分
間乾燥させると、実施例45以外は、接着剤の厚さが25〜40μmのテープ試
料が得られた。実施例45の塗膜は70μmであった。
表2に示したTg値は、計算上の接着剤のガラス転移温度である。Foxの式お
よび個々の成分のTgを使用すると、これらの値に到達する。この定式方法論は
、ブロックコポリマー感圧接着剤技術、たとえば、Miller et alに対する米国
特許第5,019,071号や米国特許第5,330,057号に詳しく記述されている。本発明の
感圧接着剤に有用なエラストマー含有率の範囲は約20%から100%の範囲で
あるが、計算上のガラス転移温度値の有用な範囲は、PSAの用途に応じて、約
200°Kから約275Kの範囲である。一般に、Tgが高い接着剤は接着力の
強
いテープになり、Tgが低い接着剤は接着力の弱いテープになる。実施例41か
ら実施例49のテープ試料を、前述の剥離性能および剪断性能について試験した
。加えて、実施例42および実施例43の高温剪断抵抗も試験した。これらの実
施例の接着力データを表3に示す。
実施例41〜49の感圧接着剤(PAS)は、意外にも優れた接着特性を示す
。プロピレンの高分子量ホモポリマーおよび高分子量コポリマーが主ポリマー成
分として感圧接着剤に使用するのに適していることは、これまで知られていなか
った。実施例41および実施例42は、実施例36に記載の通りに作成されたア
タクティックポリプロピレンホモポリマーを主成分とするPSAの一般的特性を
示すものである。実施例43は、架橋材料2-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,6-ビ
ス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン0.25重量%を加えたこと以外は、
実施例42と同じ様式で作成した。感圧接着剤をテープ裏材に塗布した後、ポリ
プロピレン鎖を架橋するために、波長330 nmに集中させた350 mJの紫外
線に接着剤を曝露した。
表3の高温剪断データからわかるように、架橋剤を使用すると接着剤の剪断抵
抗は増大した。実施例45〜47は、プロピレンと他のモノマーとのコポリマー
から優れた感圧接着剤を作成する能力を示すものである。コモノマーの種類およ
び比率を選択する以外にも、変数Tgおよび前述のエラストマー率を操作するこ
とによって、接着特性を操作することができる。実施例47および実施例48は
、実施例40に記載の代替助触媒メタルミノキサンを使用してアタクティックポ
リプロピレンホモポリマーを作成したこと以外は実施例41および実施例42と
同じ様式で作成した。表3からわかるように、異なる助触媒を用いて作成した2
種の高分子量アタクティックポリプロピレンホモポリマーで作成したPSAの接
着特性は、本質的に同じであった。実施例49は、代替粘着付与樹脂系の使用を
示すものである。実施例49の接着特性も非常に優れていた。
実施例50−クリングフィルム
包装用フィルムとして使用することができるクリングフィルムを作成するため
に、実施例36のポリマー5 gをトルエンとヘプタンの50/50溶液10 gに
溶解した。生じた溶液を、厚さ40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに2
5μmの厚さで塗布した。フィルムおよび溶液を65℃の強制空気熱対流炉に1
0分間入れることによって、溶液を乾燥させた。生じた材料は、材料の異なる2
面の知覚摩擦係数に大きな差があった。二軸延伸ポリプロピレンフィルムから成
る面の摩擦係数は低かったが、比較すると高分子量アタクティックポ
リプロピレンから成る反対側は摩擦係数が高かった。さらに、この第2面には、
材料の反対側など、平滑面にぴったりつく傾向があった。このようなフィルムに
は、包装業界でクリングフィルムおよびパレット包装フィルムとしての用途があ
る。
本発明の範囲および精神から逸脱しない本発明の様々な修正および変更は、当
業者に明白になるであろう。また、本発明は本願明細書に記載の実施態様に不当
に限定されないことが理解されなければならない。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),UA(AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM
),AL,AM,AT,AU,AZ,BB,BG,BR
,BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,
ES,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,K
G,KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU
,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,
NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,S
I,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ
,VN
(72)発明者 ミラー,ジョン エー.
アメリカ合衆国,ミネソタ 55133−3427,
セントポール,ポスト オフィス ボック
ス 33427
(72)発明者 ラマンナ,ウィリアム エム.
アメリカ合衆国,ミネソタ 55133−3427,
セントポール,ポスト オフィス ボック
ス 33427