本発明は、旋回剪断方式によって液体中に微細気泡を発生させるための微細気泡発生器において、旋回流を形成する旋回流形成部およびこれに対応する流速増速部の組合せを並列的に複数設けることにより、複数の旋回流形成部と同数の気液二相旋回流による相乗的な剪断作用を得ることで、微細気泡の効率的な微細化および微細気泡の発生量の向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る微細気泡発生器1は、微細気泡発生装置10の構成要素であり、液体中に微細気泡を発生させるためのものである。微細気泡発生装置10は、連続相としての液体と、分散相としての気体とを混合するとともに、気体を超微細かつ均一な気泡として、気液混合相としての混合流体を生成する装置である。本実施形態では、液体は水F1であり、気体は空気F2である。したがって、混合流体は、超微細な気泡混じりの水(微細気泡含有水)F3である。
図1に示すように、微細気泡発生装置10は、微細気泡発生器1と、微細気泡発生器1に供給する水F1を収容する液体収容部2と、微細気泡発生器1により生成された微細気泡含有水F3を収容する混合流体収容部3と、微細気泡発生器1を含む水F1の経路において水F1の流れを形成するためのポンプ4とを備える。
微細気泡発生器1の一端側(上流側)には、第1連通路としての第1連通配管5の一端側(下流側)が連通接続されている。また、微細気泡発生器1の他端側(下流側)には、第2連通路としての第2連通配管6の一端側(上流側)が連通接続されている。つまり、微細気泡発生器1は、第1連通配管5側を上流側、第2連通配管6側を下流側とする配管構成において、第1連通配管5と第2連通配管6との間に介装された状態で設けられている。
微細気泡発生器1に対しては、液体収容部2に収容されている水F1が、ポンプ4によって圧送される。ポンプ4の吸込口4aには、液体収容部2に収容された水F1を吸い込むための第3連通路としての第3連通配管7の一端側(下流側)が連通接続されている。第3連通配管7の他端側(上流側)は、液体収容部2内の水F1内に開口している。つまり、ポンプ4の吸込口4aには、第3連通配管7を介して液体収容部2が連通連結されている。
ポンプ4の吐出口4bには、微細気泡発生器1の上流側に一端側が接続された第1連通配管5の他端側(上流側)が連通接続されている。つまり、微細気泡発生器1の上流側には、第1連通配管5を介してポンプ4の吐出口4bが連通連結されている。微細気泡発生器1の下流側に一端が接続された第2連通配管6は、その他端側が微細気泡含有水F3を収容する混合流体収容部3の内部に連通するように配されている。つまり、微細気泡発生器1の下流側には、第2連通配管6を介して混合流体収容部3が連通連結されている。
以上のような構成において、ポンプ4を作動させることにより、液体収容部2内の水F1が、第3連通配管7を通してポンプ4の吸込口4aから吸い込まれるとともに、ポンプ4の吐出口4bから微細気泡発生器1に対して吐出される。そして、微細気泡発生器1内には、ポンプ4によって加圧された水F1が導入される一方、所定の気体導入経路から供給される空気F2が導入され、微細気泡発生器1内において水F1と空気F2とが混合されて、微細気泡含有水F3が生成される。微細気泡発生器1により生成された微細気泡含有水F3は、第2連通配管6を通して混合流体収容部3に吐出されて収容される。
(微細気泡発生器の構成)
本実施形態に係る微細気泡発生器1について、図2から図10を用いて説明する。微細気泡発生器1は、微細気泡発生器1の基体部分である本体部11と、本体部11に設けられる旋回流形成部12と、同じく本体部11に設けられる流速増速部13と、同じく本体部11に設けられる気体導入部14とを備える。
本体部11は、上流側端である一端に水F1の流入口15を有し、下流側端である他端に微細気泡を含有する液体、つまり混合流体である微細気泡含有水F3の流出口16を有する。すなわち、微細気泡発生器1においては、ポンプ4等によって供給される水F1が流入口15から本体部11内に流入して流出口16から本体部11外に流出するまでの過程において、水F1についての旋回流形成部12による旋回流の形成および流速増速部13の絞り作用による流速の増速を経て、気体導入部14によって導入される空気F2が水F1に混合することで微細気泡含有水F3が生成され、その微細気泡含有水F3が流出口16から流出する。
図2に示すように、本体部11は、全体として円筒状(円柱状)の外形をなすように構成されている。具体的には、本体部11は、上流側(流入口15側)から下流側(流出口16側)にかけて順に配置される構成部材として、入口フランジ21、スクリューホルダ22、絞りホルダ23、および出口フランジ24を有する。これらの本体部11の構成部材は、同一あるいは略同一の(共通の)外径寸法を有する円板状ないし円筒状の外形をなす部材であり、同心配置されるとともに中心軸方向(筒軸方向)に重ねられた態様で一体的な円筒形状をなす。
したがって、本体部11においては、入口フランジ21、スクリューホルダ22、絞りホルダ23、および出口フランジ24の各部材の外周面によって連続的な円柱面である外周面が形成される(図3から図5参照)。そして、本体部11においては、一体的な円筒状の外形における中心軸方向に沿う方向が、水F1あるいは微細気泡含有水F3の大局的な流れの方向となる。
入口フランジ21は、円板状の部材であり、本体部11において流入口15を形成する部分である。入口フランジ21は、流入口15を形成する孔部21aを有する。孔部21aは、入口フランジ21の円板状の外形における中央部において所定の内周面21bによって形成された貫通孔を形成する部分である。
本実施形態では、流入口15を構成する孔部21aの内周面21bは、入口フランジ21の中心軸方向、つまり本体部11の中心軸方向(図3における左右方向、以下単に「中心軸方向」ともいう。)について下流側(同図における右側)から上流側(同図における左側)にかけて徐々に縮径するテーパ形状(截頭円錐形状)に形成されている。ただし、孔部21aの形状、特に孔径による形状は、本体部11の上流側に接続される第1連通配管5の管径等に応じて適宜調整されるものであり、直線的な形状(上流側から下流側にかけて同径の形状)であったり、本実施形態とは逆方向に上流側から下流側にかけて縮径するテーパ形状であったりしてもよい。
また、入口フランジ21においては、孔部21aの周囲に、本体部11に第1連通配管5を接続するためのネジ孔21cが複数設けられている。本実施形態では、4箇所のネジ孔21cが中心軸方向の軸回りの周方向に略等間隔(等角度間隔)で設けられている。図1に示すように、第1連通配管5は、配管フランジ8を介して本体部11に接続される。すなわち、第1連通配管5の本体部11に対する接続側の端部には、配管フランジ8が取り付けられ、配管フランジ8が本体部11に固定されることにより、第1連通配管5が本体部11に接続される。ネジ孔21cには、配管フランジ8の鍔部8aを貫通するフランジ取付ネジ8bがねじ込まれる。
スクリューホルダ22は、円板状ないし円筒状の部材であり、円板状の入口フランジ21に対して、同心配置されるとともに、上流側の端面22xを、入口フランジ21の下流側の板面21yに密着させた状態で設けられる。スクリューホルダ22は、本体部11において旋回流形成部12が設けられる部分である。本実施形態では、旋回流形成部12は、並列的に、つまり中心軸方向について共通の位置(同じ位置)に4箇所設けられている。4箇所の旋回流形成部12は、中心軸方向視で所定の位置関係となるように配置されている。旋回流形成部12の位置関係については後述する。
旋回流形成部12は、流入口15から流入した水F1による旋回流を形成する部分である。すなわち、旋回流形成部12は、中心軸方向に沿う所定の軸線を中心に捩じれた流路を形成する部分であり、流入口15を介して上流側から流れ込む水F1について、中心軸方向に沿う方向を軸線方向とする螺旋状の流れを形成する。4箇所の旋回流形成部12により形成される旋回流の旋回方向は、統一された(共通の)方向である。本実施形態では、本体部11の上流側から下流側に向かう中心軸方向視で右回り(時計方向)である(図10、矢印S1参照)。特に、本実施形態では、4箇所の旋回流形成部12は、形状・構造・寸法等を互いに同じ(共通)とする。
旋回流形成部12は、スクリューホルダ22においては、上流側の端面22xおよび下流側の端面22yに開口する螺旋状の旋回流路を形成する。旋回流形成部12に対して上流側から流入した水F1は、旋回流形成部12の旋回流路によって捩じれ作用を受けて旋回流を形成しながら下流側へと流れ出る。
4箇所の旋回流形成部12は、中心軸方向視で、入口フランジ21において下流側の板面21yに開口する孔部21a(流入口15)の開口範囲内に設けられている。すなわち、4箇所の旋回流形成部12の上流側の開口は、流入口15内に臨み、流入口15により形成される水F1の流路が、4箇所の旋回流形成部12による互いに平行な4つの螺旋流路に分岐する。
互いに密着した状態となる入口フランジ21とスクリューホルダ22との間には、流入口15と旋回流形成部12との連通部分を囲むように位置するOリング25が介装される(図3参照)。本実施形態では、Oリング25は、スクリューホルダ22の上流側の端面22xにおいて旋回流形成部12が設けられる範囲の外側に設けられた円環状の嵌合溝22pに嵌め込まれることで位置決めされる。
旋回流形成部12は、本体部11とは別体の静翼体であるスクリュー体40により構成されている。つまり、本実施形態では、本体部11を構成するスクリューホルダ22とは別体の部材であるスクリュー体40により、旋回流形成部12が構成されている。このため、スクリューホルダ22には、スクリュー体40を嵌め込むためのスクリュー用孔部22aが設けられている。このスクリュー用孔部22aにスクリュー体40が嵌め込まれることにより、本体部11において旋回流形成部12が構成される。
スクリュー体40について、図6を用いて説明する。なお、図6(a)はスクリュー体40の上流側から見た図(背面図)であり、同図(b)はスクリュー体40の下流側から見た図(正面図)であり、同図(c)はスクリュー体40の側面図であり、同図(d)は下流側からの斜視図であり、同図(e)は上流側からの斜視図である。
図6の各図に示すように、スクリュー体40は、全体として略円筒状に沿う外形を有し、その中心軸部分を構成するとともにスクリュー体40の軸線方向に伸延する直線状の部分である芯部41と、芯部41の周面部からスクリュー体40の径方向の外側に向けて突設された複数の羽根部42とを有する。なお、スクリュー体40の軸線方向は、旋回流形成部12によって形成される旋回流の中心線方向となり、本体部11の中心軸方向と一致する。
本実施形態のスクリュー体40は、芯部41の軸線回りに等間隔(等角度間隔)に設けられた4つの羽根部42を有する。したがって、スクリュー体40は、その横断面形状として、中央部の芯部41と、芯部41の周囲から径方向の外側に向けて、つまり放射状に突出する4箇所の羽根部42とによって略十字形状をなす。
スクリュー体40において互いに隣り合う羽根部42間には、各羽根部42の一側の側面を形成するとともに連続的な凹曲面43aをなす溝部43が形成されている。つまり、互いに隣り合う羽根部42は、互いに対向させる側面を羽根部42の基端側で連続させて凹曲面43aを形成する。すなわち、羽根部42の板厚方向の両側の面(側面)は、凹曲面43aの一部であり、各羽根部42は、板厚方向の両側から凹曲面状にえぐられたような形状を有する。したがって、羽根部42は、凹曲面43aの曲面形状により、基端側(芯部41側)からスクリュー体40の径方向の外側にかけて、板厚を一端徐々に薄くしてからまた徐々に厚くするような形状を有する。詳細には、羽根部42は、スクリュー体40の径方向の中途部が最小肉厚で外側(先端側)が最大肉厚となるような形状を有する。また、羽根部42の外周側(先端側)の端面42aは、スクリュー体40が全体として沿う略円筒状の外形における外周面(円柱面)に沿う曲面となる。一方、溝部43を形成する凹曲面43aは、スクリュー体40の横断面視において略円弧状をなすような形状を有する。
そして、スクリュー体40を構成する4つの羽根部42は、スクリュー体40の上流側の端面40xから下流側の端面40yにかけて、一定の角度θの捩じれ角をもって捩じられた形状を有する。つまり、羽根部42は、上流側から下流側にかけてスクリュー体40の中心軸の位置を中心として角度θ捩じれて伸延するように形成されている。言い換えると、スクリュー体40は、上流側の端面40xから下流側の端面40yにかけて、上記のとおり略十字形状の横断面形状がその形状を維持しながら中心軸の位置を中心として角度θ回転するような形状を有する。このように旋回状に捩じれた羽根部42間に形成される溝部43が、旋回流形成部12において水F1が流れる旋回形成流路12aを形成する部分となる。なお、捩じれ角の角度θは、例えば45〜90°である。
スクリュー体40は、樹脂等を材料とする一体の部材であり、樹脂成形や切削加工によって形成される。本実施形態では、4つの羽根部42および溝部43が螺旋状にほぼ平行に形成される。なお、スクリュー体40の樹脂成形や切削加工においては、水F1との間の摩擦抵抗が極力少なくなるように、できるだけ表面を滑らかにすることが好ましい。
また、スクリュー体40においては、各羽根部42の上流側の端部に、スクリュー体40のスクリューホルダ22に対する位置決め用の突部44が形成されている。突部44は、スクリュー体40が全体として沿う略円筒状の外形における拡径部分(鍔状の部分)が溝部43によって分断され各羽根部42に対応する部分に残されたような態様を有する。
このようなスクリュー体40の突部44に対応して、スクリューホルダ22においては、スクリュー用孔部22aの上流側の端部に段差部22cが形成されている。段差部22cは、スクリュー用孔部22aの孔径の拡径部分によって形成され、スクリュー用孔部22aの内周面22dにおいて段差面を形成する部分である。スクリュー体40は、スクリューホルダ22に対してスクリュー用孔部22aの上流側の開口から、突部44側を後側(上流側)とする向きで差し込まれる。これにより、突部44が段差部22cに接触して係止される態様で、スクリュー体40が中心軸方向についてスクリューホルダ22に対して下流側への相対的な移動が規制される。
スクリュー体40は、その突部44およびスクリューホルダ22側の段差部22cによる中心軸方向の相対的な移動の規制を含み、スクリューホルダ22に対して中心軸方向および中心軸回りの周方向に位置決めされた状態で設けられる。つまり、スクリュー体40は、スクリューホルダ22に対して固定された状態で設けられ、本体部11における固定翼となる。
スクリュー体40をスクリューホルダ22に対して固定ないし位置決めするための方法・構造としては、本体部11内における水圧等に応じて次のような手法が適宜採用される。例えば、ネジ等の締結具を用いてスクリュー体40をスクリューホルダ22に固定する手法がある。この場合、スクリューホルダ22においてその外周面およびスクリュー用孔部22aに開口するネジ孔(雌ネジ)が形成され、スクリュー用孔部22a内に嵌め込まれたスクリュー体40に対して、羽根部42の端面42aに当接するようにスクリューホルダ22の外周側から締結具がねじ込まれる。つまりこの場合、締結具による押圧作用によってスクリュー体40がスクリュー用孔部22a内で固定されることになる。また、スクリュー体40は、スクリュー用孔部22aに対して圧入されることにより、スクリューホルダ22に固定されてもよい。また、スクリュー体40は、スクリュー用孔部22aに対する所定の嵌合形状部分同士による嵌合によってスクリューホルダ22に固定されてもよい。圧入や嵌合による手法の場合、ネジ等の締結具が不要となる。
以上のような構造により、スクリュー体40がスクリューホルダ22のスクリュー用孔部22aに嵌め込まれた状態において、上述したように円柱面に沿う羽根部42の端面42aがスクリュー用孔部22aの内周面22dに密着するとともに、隣り合う羽根部42間の溝部43の外周側の開放部分がスクリュー用孔部22aの内周面22dによって塞がれることで、旋回形成流路12aが形成される。したがって、流入口15から旋回流形成部12に流入した水F1は、旋回形成流路12aに沿って上流側から下流側に流れることで、確実に旋回流を形成する。
以上のように、本実施形態の本体部11においては、スクリューホルダ22にスクリュー体40が挿嵌されることで、本体部11において旋回形成流路12aを形成する旋回流形成部12が構成される。なお、本実施形態では、旋回流形成部12は、本体部11とは別体のスクリュー体40により構成されているが、本体部11を構成する部材の一部として一体的に成形された部分であってもよい。
絞りホルダ23は、円板状ないし円筒状の部材であり、スクリューホルダ22に対して、同心配置されるとともに、上流側の端面23xを、スクリューホルダ22の下流側の端面22yに密着させた状態で設けられる。絞りホルダ23は、本体部11において流速増速部13が設けられる部分である。流速増速部13は、4箇所の旋回流形成部12のそれぞれに対して下流側に連続するように設けられ、旋回流形成部12の中心軸線と同軸的に伸延する流路を形成する部分である。したがって、本実施形態では、流速増速部13は、旋回流形成部12の配置にならって並列的に4箇所に設けられている。
流速増速部13は、流路面積を絞ることにより、旋回流形成部12により形成された旋回流の流速を増速させる部分である。すなわち、流速増速部13は、旋回流形成部12から連続する流路の面積を減少させる部分であり、上流側の旋回流形成部12から流入する水F1の旋回流について、その流路面積を徐々に減少(縮径)させる絞り部分を形成する。本実施形態では、4箇所の流速増速部13は、形状・構造・寸法等を互いに同じ(共通)とする。
流速増速部13は、絞りホルダ23においては、上流側の端面23xおよび下流側の端面23yに開口する増速流路13aを形成する。流速増速部13における上流側の端面23x側の開口面積は、旋回流形成部12におけるスクリュー用孔部22aの下流側の開口面積と略同じであり、旋回流形成部12とその下流側に位置する流速増速部13は、スクリューホルダ22と絞りホルダ23との合わせ面部において互いの開口を対向させて連続する流路を形成する。
流速増速部13は、その上流側の部分を構成する絞り部13bと、下流側の部分を構成する直線部13cとを有する。絞り部13bは、流速増速部13の上流側の開口端から下流側にかけて中心軸方向に沿う所定の軸線を中心に徐々に縮径するテーパ形状(截頭円錐形状)に沿うテーパ状内周面13dによる縮径流路を形成する部分である。直線部13cは、絞り部13bの下流側端に連続して絞り部13bと同軸的に下流側に向けて直線状に伸びる円筒状内周面13eによる直線流路を形成する部分である。
流速増速部13は、4箇所の各旋回流形成部12に対応して同軸的に連続する流路を形成する部分であることから、4箇所の流速増速部13の配置は、本体部11において、中心軸方向視で、4箇所の旋回流形成部12と重なる配置となる。したがって、上述のとおり流入口15から4箇所の旋回流形成部12に分岐した水F1の流れは、各旋回流形成部12に対応して設けられた4箇所の流速増速部13による互いに平行な4つの増速流路13aによって分岐状態を維持する。
互いに密着した状態となるスクリューホルダ22と絞りホルダ23の間には、4箇所の旋回流形成部12と流速増速部13との連通部分を囲むように位置するOリング26が介装される(図3参照)。本実施形態では、Oリング26は、スクリューホルダ22の下流側の端面22yにおいて旋回流形成部12が設けられる範囲の外側に設けられた円環状の嵌合溝22qに嵌め込まれることで位置決めされる。
また、絞りホルダ23の上流側の端面23xには、Oリング26の内側の部分であって4箇所の流速増速部13が設けられる範囲を含む部分に、絞りホルダ23の円板状ないし円筒状の外形に対して同心の円形状にわずかに突出する位置決め用の嵌合突部23gが設けられている。これに対応するように、スクリューホルダ22の下流側の端面22yには、円形状にわずかに窪む位置決め用の嵌合凹部22gが設けられている。嵌合凹部22gと嵌合突部23gとが互いに嵌合することで、スクリューホルダ22と絞りホルダ23とが中心軸方向に対して垂直な方向について互いに位置決めされ、旋回流形成部12と流速増速部13との流路の連続状態が確保される。
流速増速部13は、本体部11とは別体の絞り部材である絞り体50により構成されている。つまり、本実施形態では、本体部11を構成する絞りホルダ23とは別体の部材である絞り体50により、流速増速部13が構成されている。このため、絞りホルダ23には、絞り体50を嵌め込むための絞り用孔部23aが設けられている。この絞り用孔部23aに絞り体50が嵌め込まれることにより、本体部11において流速増速部13が構成される。
絞り体50について、図7を用いて説明する。なお、図7(a)は絞り体50の斜視図であり、同図(b)は絞り体50の縦断面図である。図7に示すように、本実施形態に係る絞り体50は、全体として略円筒状の外形を有する筒状部材であり、その内部空間によって流速増速部13における増速流路13aを形成する。絞り体50は、上流側となる筒軸方向の一側の部分であって流速増速部13の絞り部13bを構成するテーパ部51と、下流側となる筒軸方向の他側の部分であって流速増速部13の直線部13cを構成する円筒状の伸延部52とを有する。すなわち、テーパ部51の内周面51aにより、流速増速部13のテーパ状内周面13dが形成され、伸延部52の内周面52aにより、流速増速部13の円筒状内周面13eが形成される。
このように絞り体50によって構成される流速増速部13においては、増速流路13aによる流路面積の絞りの程度、つまり絞り体50のテーパ部51のテーパ角度や、絞り体50の軸線方向に沿って伸延する増速流路13aの流路長さ等によって、水F1の流速の増速の程度が調整される。
絞り体50は、樹脂等を材料とする一体の部材であり、樹脂成形や切削加工等によって形成される。なお、絞り体50の樹脂成形や切削加工においては、水F1や空気F2との間の摩擦抵抗が極力少なくなるように、できるだけ表面を滑らかにすることが好ましい。
絞り体50の略円筒状の外形について、テーパ部51および伸延部52の各部の内部空間として形成される増速流路13aの形状にならって、伸延部52は、テーパ部51に対して相対的に外径が小さい縮径部分である。絞り体50の外周面部においては、テーパ部51と伸延部52との略境界部分に、中心軸方向の下流側(図7(b)において右側)を向く段差面53が形成されている。円筒状の伸延部52は、段差面53から垂直方向に突出する態様で設けられている。
このような外形形状を有する絞り体50に対応して、絞りホルダ23の絞り用孔部23aは、絞り体50が嵌り込むような孔形状を有する。すなわち、絞り用孔部23aは、絞り体50の伸延部52が差し込まれる縮径部23bと、伸延部52に対して相対的な拡径部分であるテーパ部51が嵌り込む拡径部23cとを有する。
絞り体50は、絞りホルダ23に対して絞り用孔部23aの上流側の開口から、テーパ部51側を後側(上流側)とする向きで差し込まれる。このように絞り用孔部23aに差し込まれる絞り体50と絞りホルダ23との間には、Oリング27が介装される(図3参照)。詳細には、Oリング27は、絞り用孔部23aにおける縮径部23bと拡径部23cとの間の段差面23dと、この段差面23dに対向する絞り体50の段差面53との間に挟まれる。Oリング27は、絞り体50の段差面53において伸延部52が突出する部分を囲むように形成された円環状の嵌合溝53aに嵌め込まれることで位置決めされる。絞り体50は、段差面53を絞りホルダ23の段差面23dに接触させて係止される態様で、中心軸方向について絞りホルダ23に対して下流側への相対的な移動が規制される。
絞り体50は、その段差面53および絞りホルダ23側の段差面23d(図4、図8参照)による中心軸方向の相対的な移動の規制を含み、絞りホルダ23に対して中心軸方向および中心軸回りの周方向に位置決めされた状態で設けられる。つまり、絞り体50は、絞りホルダ23に対して固定された状態で設けられる。絞り体50を絞りホルダ23の絞り用孔部23aに対して固定ないし位置決めするための方法・構造としては、スクリュー体40のスクリューホルダ22に対する固定ないし位置決めの場合と同様に、本体部11内における水圧等に応じて、ネジ等の締結具を用いた手法や、圧入あるいは嵌合による手法等が適宜採用される。
図8に示すように、絞り体50が絞りホルダ23の絞り用孔部23aに差し込まれた状態においては、伸延部52の外周面52bと、絞り用孔部23aの縮径部23bの内周面23fとの間に、隙間(符号W1参照)が存在する。すなわち、伸延部52の外径寸法は、絞り用孔部23aの縮径部23bの内径寸法に対してわずかに小さく、縮径部23bに対して伸延部52が同心に位置することで、伸延部52の周囲に、伸延部52の外径の半径と縮径部23bの内径の半径との差分を厚さ方向の寸法(符号W1参照)とする円筒状の空間が形成される。この円筒状の空間の上流側は、上述したように絞り体50と絞りホルダ23との間に介装されるOリング27によって密閉される。
以上のような構造により、絞り体50が絞りホルダ23の絞り用孔部23aに嵌め込まれた状態において、テーパ部51の内周面51aおよび伸延部52の内周面52aによって、増速流路13aが形成される。すなわち、旋回流形成部12から流速増速部13に流入した水F1による旋回流の速度は、絞り体50により構成される増速流路13aによって増速される。流速増速部13は、絞り部13bの上流側の開口から直線部13cへの流路径の縮径により、流路断面積を例えば1/4〜1/5程度に絞る。
以上のように、本実施形態の本体部11においては、絞りホルダ23に絞り体50が挿嵌されることで、本体部11において増速流路13aを形成する流速増速部13が構成される。なお、本実施形態では、流速増速部13は、本体部11とは別体の絞り体50により構成されているが、本体部11を構成する部材の一部として一体的に成形された部分であってもよい。
上述したように絞り体50によって構成される流速増速部13が設けられる絞りホルダ23は、本体部11において気体導入部14が設けられる部分でもある。
気体導入部14は、流入口15から流入する水F1の流路に連通する空気F2の導入路を形成する部分である。すなわち、気体導入部14は、本体部11の外部から本体部11の内部における水F1の流路に連通する空気通路を形成する部分であり、流速増速部13を経た水F1に対して空気F2を混合させる。気体導入部14は、流速増速部13にて増速された水流による圧力降下によって大気圧に対して真空圧となった本体部11内に、ベンチュリ効果によって外部から空気F2を吸引させる。
気体導入部14は、本体部11において4箇所に存在する流速増速部13のそれぞれに対して設けられる。気体導入部14は、円板状ないし円筒状の絞りホルダ23において、その径方向に沿う径方向通路23hと、径方向通路23hに連通して中心軸方向に沿って伸延する軸方向通路23iとを有する。
径方向通路23hは、絞りホルダ23の径方向に沿って直線状に穿設された孔部であり、絞りホルダ23において、中心軸方向について、絞り体50の伸延部52が差し込まれる絞り用孔部23aの縮径部23bの中間部の位置に設けられる。したがって、径方向通路23hの上流側は、絞りホルダ23の外周面23rに開口し、径方向通路23hの下流側は、絞り用孔部23aの縮径部23bを形成する内周面23fに臨んで開口する。4箇所の流速増速部13に対して設けられた径方向通路23hは、中心軸方向視で4方向に十字状(放射状)に配された態様となる。
軸方向通路23iは、上述したように絞り用孔部23a内において絞り体50の伸延部52の周囲に形成される円筒状の空間である。すなわち、軸方向通路23iは、伸延部52の外周面52bと、絞り用孔部23aの縮径部23bの内周面23fとの間のわずかな隙間(符号W1参照)として形成され、絞り体50と同心円的に伸延する円筒状の通路である。軸方向通路23iに対しては、径方向通路23hは、絞り用孔部23aの縮径部23bの内周面23fに下流側端を開口させることで連通する。
気体導入部14は、絞り体50の伸延部52の先端(開口端)の下流側にて流速増速部13と合流する。本実施形態では、絞り体50の伸延部52の先端は、絞りホルダ23の絞り用孔部23aの下流側の開口端、つまり下流側の端面23yよりもわずかに手前側(上流側)に位置し、伸延部52の外周面52bと縮径部23bの内周面23fとによって形成される軸方向通路23iは、縮径部23b内において、伸延部52の開口端の位置で途切れる。このため、軸方向通路23iによって下流側の部分をなす気体導入部14は、縮径部23b内において伸延部52が途切れた絞り用孔部23aの下流側の端部にて流速増速部13と合流することになる。
このような気体導入部14によれば、流速増速部13において絞り体50の伸延部52の先端開口から流れ出る水F1に対して、径方向通路23hおよび軸方向通路23iを経た空気F2が、流路の横断面視で径方向の外側の全周から一様に合流する。このような水F1と空気F2との合流作用により、微細気泡含有水F3が生成される。なお、本実施形態では、絞り体50の伸延部52の先端が、絞り用孔部23aの下流側の開口端(下流側の端面23y)よりも手前側に位置するが、伸延部52の先端は、中心軸方向について絞り用孔部23aの下流側の開口端と同じ位置に位置したり、絞り用孔部23aから突出したりしてもよい。これらの場合、絞り用孔部23aよりも下流側の位置となる流出口16内の位置にて、流速増速部13を経た水F1と気体導入部14を経た空気F2とが合流することになる。また、気体導入部14を構成する軸方向通路23iの上流側については、上記のとおり絞り体50と絞りホルダ23との間に介装されるOリング27によって密閉されることから、径方向通路23hから軸方向通路23iに導入された空気F2は、効率的に下流側へと流れる。
以上のような構造の気体導入部14によれば、所定の空気供給経路により供給される空気F2が、気体導入部14を構成する径方向通路23hの外側の開口部を吸入口として導入される。このため、径方向通路23hには、空気導入用配管17が接続される(図8参照)。本実施形態では、径方向通路23hの上流側(外周面23r側)の端部に、空気導入用配管17を固定するための雌ネジ部23jが形成されている。空気導入用配管17には、継手等を介して所定の空気供給用の配管が接続される。気体導入部14による空気F2の導入量は、例えば、流速増速部13を流れる水の流量の数パーセントに設定される。
気体導入部14による空気F2の導入に関しては、本実施形態では、流速増速部13にて増速された水流による圧力降下にともなって空気F2を自吸する構成を採用しているが、押込みによる空気の導入を行う構成を適宜採用してもよい。この場合、例えば、気体導入部14に接続される空気供給用の経路においてポンプ等が配置され、空気導入用配管17に対して空気が圧送されることになる。かかる構成を採用することにより、例えば気体導入部14における空気F2の導入経路の長さが長くなることに起因する圧力損失による空気F2の自吸作用の低下を補うことができ、十分な量の空気F2を確実に供給することが可能となる。また、気体導入部14に接続される空気供給用の経路において、空気の流量を調節するための弁を設けることにより、空気F2の吸入量を可変とすることができる。
出口フランジ24は、円板状の部材であり、絞りホルダ23に対して、同心配置されるとともに、上流側の板面24xを、絞りホルダ23の下流側の端面23yに密着させた状態で設けられる。出口フランジ24は、本体部11において流出口16を形成する部分である。出口フランジ24は、流出口16を形成する孔部24aを有する。孔部24aは、出口フランジ24の円板状の外形における中央部において所定の内周面24bによって形成された貫通孔を形成する部分である。
本実施形態では、流出口16を構成する孔部24aの内周面24bは、中心軸方向について上流側から下流側にかけて徐々に縮径するテーパ形状(截頭円錐形状)に形成されている。このように、本体部11の流出口16には、出口フランジ24の孔部24aによって流路面積を絞る絞り部が形成されている。ただし、孔部24aの形状、特に孔径による形状は、本体部11の下流側に接続される第2連通配管6の管径等に応じて適宜調整されるものであり、直線的な形状(上流側から下流側にかけて同径の形状)であったり、本実施形態とは逆方向に下流側から上流側にかけて縮径するテーパ形状であったりしてもよい。
また、出口フランジ24においては、孔部24aの周囲に、本体部11に第2連通配管6を接続するためのネジ孔24cが複数設けられている。本実施形態では、4箇所のネジ孔24cが中心軸方向の軸回りの周方向に略等間隔(等角度間隔)で設けられている。図1に示すように、第2連通配管6は、配管フランジ9を介して本体部11に接続される。すなわち、第2連通配管6の本体部11に対する接続側の端部には、配管フランジ9が取り付けられ、配管フランジ9が本体部11に固定されることにより、第2連通配管6が本体部11に接続される。ネジ孔24cには、配管フランジ9の鍔部9aを貫通するフランジ取付ネジ9bがねじ込まれる。
また、流出口16を構成する孔部24aは、中心軸方向視で、上流側の開口の範囲内に、絞りホルダ23において下流側の端面23yに臨む4箇所の絞り用孔部23aの下流側の開口を含むように設けられる。すなわち、4箇所の流速増速部13の下流側の開口は、全て流出口16内に臨み、4つの増速流路13aが流出口16において合流する。したがって、4箇所の流速増速部13のそれぞれの下流側の部分において水F1と空気F2との合流作用によって生成された微細気泡含有水F3は、流出口16に流れ込んで合流することになる。
互いに密着した状態となる絞りホルダ23と出口フランジ24との間には、流速増速部13と流出口16との連通部分を囲むように位置するOリング28が介装される(図3参照)。本実施形態では、Oリング28は、絞りホルダ23の下流側の端面23yにおいて流速増速部13が設けられる範囲の外側に設けられた円環状の嵌合溝23pに嵌め込まれることで位置決めされる。
以上のように、本実施形態の微細気泡発生器1は、本体部11を構成する部材として、流入口15を構成する入口フランジ21と、スクリュー体40によって旋回流形成部12を構成するスクリューホルダ22と、絞り体50によって流速増速部13を構成するとともに気体導入部14が設けられる絞りホルダ23と、流出口16を構成する出口フランジ24とを備える。これらの構成部材は、本体部11として一体的な構造体をなすように、所定の方法・構造によって互いに固定される。
本実施形態では、スクリューホルダ22と絞りホルダ23とは、本体部11の中心軸上に位置する固定ネジ(図示略)により互いに固定される。この固定ネジは、絞りホルダ23の中心を軸心方向に貫通する貫通孔23kに対して絞りホルダ23の下流側の端面23y側から差し込まれるとともに、スクリューホルダ22の中心位置において下流側の端面22yに開口するように形成されたネジ孔22kにねじ込まれることで、スクリューホルダ22と絞りホルダ23とを互いに固定する。また、入口フランジ21とスクリューホルダ22、および絞りホルダ23と出口フランジ24とは、それぞれ図示せぬ所定の係止用の形状部分によって互いに固定される。このような構造により、本体部11を構成する4つの部材が互いに固定される。
なお、本体部11の構成部材を固定するための方法・構造としては、本体部11の外形の寸法等に応じて適宜の手法が用いられる。例えば、本体部11の構成部材に対して中心軸方向に沿って貫通ないし螺挿されるネジ等の締結具を用いて本体部11の構成部材をまとめて固定する手法がある。この場合、例えば、本体部11の4つの構成部材のうち上流側または下流側の3つの構成部材を貫通するとともに残りの1の構成部材に螺挿される固定ネジが複数用いられ、本体部11の構成部材がまとめて互いに固定される。ただし、これらの固定ネジは、本体部11内における水F1および空気F2の流路や本体部11に配管を接続するための固定部分に干渉しないように配設される。また、他の手法としては、本体部11の中心軸方向の両側に固定される配管フランジ8,9の鍔部8a,9aを本体部11に対する拡径部分として本体部11の外周側に鍔状に突出させ、この両側の鍔部の突出部分間において中心軸方向に沿うボルトを架設した態様で設け、このボルトの締結によって両側の配管フランジ間に本体部11を挟み込むことで互いに位置決めされた状態の本体部11の構成部材を互いに固定する手法が挙げられる。かかる手法によれば、例えば、本体部11の両側の配管フランジ間に架設された状態となる複数のボルトは、本体部11の外周側において本体部11の周方向に所定の間隔を隔てて配設されることになる。
以上のような構成を備える本実施形態の微細気泡発生器1によれば、次のような作用が得られる。すなわち、微細気泡発生器1においては、まず、ポンプ4により圧送されて第1連通配管5から流入口15に流れ込んだ水F1は、旋回流形成部12により旋回流を形成する。ここで、旋回流形成部12は、スクリューホルダ22に組み込まれるスクリュー体40とスクリュー用孔部22aの周壁とによって形成される螺旋流路である旋回形成流路12aに水F1を通過させることで、旋回流を形成する。
旋回流形成部12により形成された水F1の旋回流は、流速増速部13により増速される。ここで、流速増速部13は、絞り体50によって形成する増速流路13aにより、旋回流形成部12から連続する流路の断面積を1/4程度に絞り、水F1の液流の流速を増大させる。流速増速部13においては、上述のとおり増速流路13aによる流路面積の絞りの程度や増速流路13aの流路長さ等によって流速の増速の程度が調整されることから、例えば、旋回流形成部12から緩い速度で流速増速部13に流入する水F1の旋回流についても、増速流路13aによる流速の調整により、所望の流速の液流を形成することができる。
流速増速部13によって増速された旋回流により、流速増速部13および流速増速部13の下流側近傍における圧力が降下する。この流速増速部13による旋回流の増速にともなう圧力降下により、気体導入部14では、ベンチュリ効果によって、空気導入用配管17から径方向通路23hおよび軸方向通路23iを通じて本体部11の外部から空気F2が吸入される(図8、破線矢印V1参照)。気体導入部14により吸入された空気F2は、絞り体50の伸延部52の外周側に形成された円筒状の空間としての軸方向通路23iに沿って流れ、増速流路13aの下流側の部分、つまり絞り体50の先端側の部分で、伸延部52の先端開口から流出する水F1に対して全周的に一様に合流する。
気体導入部14により導入された空気F2は、流速増速部13により増速された水F1の旋回流による剪断作用を受けて、超微細気泡として水F1に含有されることになる。つまり、微細気泡含有水F3が生成される。流速増速部13により増速旋回流となっている水F1の外周は、気体導入部14により導入された空気F2により円筒状に囲繞される。水F1の外周を円筒状に囲繞する空気F2には、その内方から、水F1の増速旋回流において比較的旋回力の強い外周部分からの高い剪断力が広範囲に作用する。すなわち、水F1の増速旋回流において旋回力が比較的弱い中心部分ではなくそれよりも旋回力が強い外周部分によって、水F1の増速旋回流をその外周側から囲繞している円筒状の空気F2の内周側に対して強い剪断力が全面的に作用する。これにより、微細気泡発生器1においては、気体導入部14により導入された空気F2が、旋回流形成部12および流速増速部13を経た旋回状態の水F1に対して効率よく均一的に超微細化される。結果として、超微細化かつ均一化された大量の気泡混じりの微細気泡含有水F3が生成され、流出口16から第2連通配管6へと微細気泡含有水F3が流出される。
すなわち、本実施形態の微細気泡発生器1においては、空気流の流動方向と増速水流の流動方向が同一方向で同心円上にて隣接・平行しているため、空気流の内周面と増速水流の外周面とが全周面的に面接触して、その接触面積が剪断面積として大きく確保される。具体的には、空気流は増速流路13aを筒状に囲繞する軸方向通路23iに沿って流動して、水流の外周を一定幅だけ助走することになり、その結果、空気流の流れが安定化(整流化)する。そして、その後に、安定化(整流化)された空気流の内周面と増速された水流の外周面とが全面的に面接触するために、空気流の内周面が水流の外周面から大きな剪断力を受けることになる。したがって、本実施形態の微細気泡発生器1によれば、空気流動の安定化が堅実になされて、その後に空気・水流が相互に面接触した際に生起される高剪断力により空気が堅実に超微細な気泡に微細化される。その結果、超微細かつ均一な気泡の大量生成が効率良くなされる。
以上のような本実施形態の微細気泡発生器1により得られる作用についてのシミュレーション画像を、図9に示す。図9に示す画像は、微細気泡発生器1の中心軸の位置を通る縦断面を切断面とする断面位置の画像であり、図10におけるA−A矢視断面での縦断面を表す。また、図9に示す画像において、矢印は水F1あるいは空気F2の流れを示し、矢印の色(濃淡)は圧力を示す。
図9に示すシミュレーション画像から、微細気泡発生器1における次のような流体の流れが確認できる。すなわち、流入口15から流入した水F1は、4箇所の旋回流形成部12に分岐して流れ込むとともに各旋回流形成部12において旋回形成流路12aにより旋回流とされる。旋回流形成部12により形成された旋回流は、その旋回状態を保ったまま流速増速部13において増速されている。そして、流速増速部13により得られた旋回状の液流は、気体導入部14によって空気F2を引き込み、その勢いを保ちながら微細気泡含有水F3として流出口16に流出され、徐々に旋回状態を緩和させながら第2連通配管6内を流れ進む。
また、図9に示すシミュレーション画像から、微細気泡発生器1における次のような圧力の変化(分布)が確認できる。すなわち、流入口15から流入して旋回流形成部12に流れ込む水F1については、大気圧よりも高圧となっており、その水圧が流速増速部13における絞りの作用によって急激に大気圧よりも低圧(負圧)となっている。一方、気体導入部14から導入される空気F2については、本体部11内への導入の当初は大気圧と同程度の圧力で、流速増速部13から流出する水F1と合流するまでの過程で徐々に圧力を低下させる。そして、水F1と空気F2が合流した後、流出口16から第2連通配管6にかけて、負圧状態から徐々に大気圧へと戻る。
以上のようにして水F1と空気F2とを混合して微細気泡含有水F3を生成する本実施形態の微細気泡発生器1においては、旋回流形成部12およびこの旋回流形成部12に対応する流速増速部13の組合せが、中心軸方向視で複数箇所となるように並列的に設けられている。すなわち、本実施形態の微細気泡発生器1においては、旋回流形成部12およびこれに対応する流速増速部13の組合せが、本体部11の中心軸回りに4箇所に並列的に設けられている。
以下の説明では、旋回流形成部12およびこの旋回流形成部12に対応する流速増速部13の組合せを旋回増速部20とする。つまり、旋回増速部20は、互いに同軸心配置された旋回流形成部12および流速増速部13の組合せであり、微細気泡発生器1において、4つの(4組の)旋回増速部20は、流入口15と流出口16との間において4つの並列的な分岐流路を構成する部分となる。言い換えると、4つの旋回増速部20は、上流側については共通の流入口15に臨んで開口するとともに、下流側については共通の流出口16に臨んで開口する並列的な流路を構成する。
微細気泡発生器1が備える4つの旋回増速部20の配置について、図10を用いて詳細に説明する。図10は、微細気泡発生器1の上流側からの中心軸方向視における水F1および空気F2の2相流の流れを模式的に示す図である。なお、図10においては、スクリュー体40や絞り体50の図示を省略しており、旋回増速部20をその開口範囲に相当する円で示している。
図10に示すように、微細気泡発生器1が備える4つの旋回増速部20は、中心軸方向視で、旋回増速部20の中心軸の位置である旋回中心点C1が所定の円周C2上にてこの円周C2の周方向に等間隔に(90°間隔で)位置するように配設されている。
言い換えると、4つの旋回増速部20は、中心軸方向視において、各旋回増速部20の旋回中心点C1を所定の正方形の4つの頂点に対応する位置に位置させるように設けられている。したがって、図10に示すように、中心軸方向視においては、4つの旋回増速部20の各旋回中心点C1に対して等距離となる中心点O1が仮想され、この中心点O1を中心とする円周C2上において、旋回中心点C1の位置が等間隔(等角度間隔)となるように、4つの旋回増速部20が設けられている。本実施形態では、4つの旋回増速部20の各旋回中心点C1が位置する円周C2の中心点O1は、本体部11の中心軸の位置に一致する。
また、本実施形態では、円周C2上において互いに隣り合う旋回増速部20間の旋回中心点C1同士を結ぶ直線に沿う方向の間隔D1の大きさは、例えば、旋回増速部20を示す円の半径と同程度の大きさである。また、円周C2の中心点O1を介して互いに対向する旋回増速部20間の間隔D2の大きさは、例えば、旋回増速部20を示す円の直径と同程度の大きさである。
このような4つの旋回増速部20の配置によれば、上述したような微細気泡発生器1における水F1と空気F2との混合による微細気泡含有水F3の生成の過程における作用を踏まえ、次のような作用が得られる。ポンプ4により圧送され流入口15に流入した水F1は、上述したように円周C2上において等角度間隔に配置された4箇所の旋回増速部20に分岐して流入することで、各旋回増速部20の旋回流形成部12によって旋回流を形成する(実線矢印S1参照)。つまり、旋回増速部20(旋回流形成部12)と同数の旋回流が並列的に形成される。したがって、本実施形態の微細気泡発生器1においては、旋回中心(旋回中心点C1)を所定の円周C2上で等角度間隔に配置させるとともに、旋回流の旋回方向を所定の方向(図10に示す例では右回り)とする4つの旋回流が形成される。
4箇所の旋回増速部20の旋回流形成部12において形成された旋回流は、各旋回増速部20の流速増速部13によって流速が加速させられ、その加速により発生した負圧によって各流速増速部13に連通する気体導入部14から空気F2が自吸される。ここで、空気F2は、増速された水F1の旋回流の外周側を筒状に囲繞する流路(軸方向通路23i)により、水F1に対して全外周から一様に自吸される。流速増速部13による流速の増速作用にともなって自吸された空気F2は、各流速増速部13の出口の下流側で生じる旋回流(気液二相旋回流、破線矢印S2参照)によって剪断・破砕され、空気F2の流れとして微細な気泡流を生成する。
また、流速増速部13から流出した水F1の流れ、つまり流速増速部13の下流側で生じる気液二相旋回流(矢印S2)は、円周C2上において互いに隣り合う旋回増速部20の流速増速部13同士の間において、相反速度を持つ隣接旋回流間に、速度差(速度勾配)によって強い剪断層を形成する。すなわち、旋回方向を同じくする2つの旋回流が中心軸線方向を同じとして隣接することで、2つの旋回流の間に、両旋回流の干渉部分として、中心軸方向視で相反する向き、つまり互いにぶつかり合う向きの流れが形成され、この相反する向きの流れにおける流速の速度差(速度勾配)によって強い剪断作用を持つ流れの層が形成される。このように互いに隣接する旋回流間に生じる強い剪断層内で、気体導入部14から自吸された空気F2が、効率的に破砕されて微細化される。
さらに、4つの気液二相旋回流(矢印S2)は、流出口16を介して第2連通配管6側に流れ進むに従って、合流・合成されて一つの大きな循環流としての旋回流(破線矢印S3参照)を形成する。この合成作用によって形成される一つの大きな旋回流(矢印S3)、つまり4つの旋回増速部20が合流した後の流路における全周的な旋回流により、流出口16の周壁である内周面24bの近傍、および第2連通配管6の内周面を形成する管壁の近傍における境界層内に剪断流が形成される。かかる周壁あるいは管壁の近傍の剪断流により、空気F2の破砕・微細化が一層促進される。
以上のように、所定の配置で並列的に設けられた複数の(本実施形態では4つの)旋回増速部20によれば、各旋回増速部20の下流側における同数の(4つの)気液二相旋回流(矢印S2)による剪断作用と、互いに隣接する気液二相旋回流(矢印S2)間における相反する向きの流れによる剪断作用とが得られる。これらの剪断作用によれば、互いに隣接する旋回流の間の部分に、剪断流の強い箇所が生成される。具体的には、本実施形態の場合、図10において着色部分で示すように、剪断流が強い領域として、互いに隣接する気液二相旋回流(矢印S2)の間の部分、および4つの気液二相旋回流(矢印S2)に囲まれる中心部分を含む十字状の領域T1が形成される。これらの剪断作用の相乗効果により、効率的な空気F2の破砕・微細化、つまり微細気泡の生成が行われる。
さらに、本実施形態の微細気泡発生器1によれば、複数の旋回増速部20が円周C2上において等角度間隔に配置されていることから、上記のような剪断作用に加え、複数の気液二相旋回流(矢印S2)が合流した後における一つの大きな旋回流(矢印S3)による剪断作用が得られる。これにより、いわば3段階の剪断作用の相乗効果によって、極めて効率的な空気F2の破砕・微細化が実現される。
以上のような本実施形態の微細気泡発生器1によれば、簡単な構造によって、微細気泡の微細化を促進させることができるとともに、微細気泡の発生量を向上させることができる。すなわち、本実施形態の微細気泡発生器1によれば、微細気泡を発生させる方式として加圧溶解方式と比べて装置構成が簡単な旋回剪断方式を採用しながら、上述したような剪断作用の相乗効果によって、空気の破砕・微細化を促進することができ、ナノレベルの超微細気泡を多量に生成することができる。
なお、本実施形態の微細気泡発生器1は、並列的に設けられた4つの旋回増速部20を備える構成であるが、これに限定されず、流速増速部13の下流側で合流する複数の(2つ以上の)旋回増速部20が並列的に設けられればよい。少なくとも2つの旋回増速部20が互いに隣り合う構成によれば、上述したように各旋回増速部20の下流側における気液二相旋回流による剪断作用と、互いに隣接する気液二相旋回流間における相反する向きの流れによる剪断作用とが得られ、これらの相乗的な作用によって、効率的な空気の破砕・微細化を行うことが可能となる。
すなわち、微細気泡発生器1が備える複数の旋回増速部20としては、気液二相旋回流間における剪断作用が得られる程度の間隔で互いに近接した位置に設けられ、各旋回増速部20により生じた旋回流が下流側で単一の流路に合流する構成をともなうものであればよい。このように並列的に設けられる旋回増速部20の数は、例えば本体部11の外形寸法や本体部11が介装される配管の管径等によって適宜設定される。
また、本実施形態の微細気泡発生器1が備える4つの旋回増速部20は、旋回中心点C1の位置が所定の円周C2上において等間隔となるように配置されているが、複数の旋回増速部20の配置を規定する形状としては、円周形状に限らず、例えば、楕円形状や、各頂点が所定の円周上に位置しない多角形形状等であってもよい。ただし、本実施形態のように、複数の旋回増速部20がその旋回中心点C1の位置を円周C2上において等間隔に位置させるように配置される構成によれば、上述したように複数の気液二相旋回流が合流した後における一つの大きな旋回流による剪断作用が得られることから、剪断作用の相乗効果によって空気の微細化および微細気泡の発生量の向上について極めて優れた効果が得られる。
また、本実施形態の微細気泡発生器1のように、微細気泡発生器1が備える全ての旋回増速部20が旋回中心点C1を円周C2上に位置させるように配置された構成に限らず、微細気泡発生器1が備える一部の複数の旋回増速部20が円周C2にならって配置される構成であってもよい。つまり、微細気泡発生器1が備える複数の旋回増速部20の少なくとも一部の複数の旋回増速部20が、中心軸方向視で、旋回中心点C1の位置が所定の円周上にてこの円周C2の周方向に等間隔に位置するように配設されていればよい。
また、本実施形態の微細気泡発生器1においては、旋回流形成部12が、本体部11を構成するスクリューホルダ22とは別体のスクリュー体40により構成されている。かかる構成によれば、旋回流形成部12において旋回形成流路12aを形成する部分を容易にかつ精度良く形成することが可能となる。具体的には、本実施形態の旋回流形成部12を構成するスクリュー体40の場合、例えば円筒状の部材を所定の切削加工によって切削することで、旋回形成流路12aを形成する複数の羽根部42および溝部43を容易にかつ高精度に形成することができる。ただし、旋回流形成部12は、本体部11を構成する部材の一部として一体的に成形された部分であってもよい。かかる構成によれば、部品点数を削減することができ、装置構成を簡略化することができるという効果が得られる。
また、本実施形態の微細気泡発生器1においては、流速増速部13が、本体部11を構成する絞りホルダ23とは別体の絞り体50により構成されている。かかる構成によれば、流速増速部13において増速流路13aを形成する部分を容易にかつ精度良く形成することが可能となる。具体的には、本実施形態の流速増速部13を構成する絞り体50の場合、例えば円筒状の部材を所定の切削加工によって切削することで、増速流路13aを形成する絞り部13bおよび直線部13cを容易にかつ高精度に形成することができる。ただし、流速増速部13は、本体部11を構成する部材の一部として一体的に成形された部分であってもよい。かかる構成によれば、部品点数を削減することができ、装置構成を簡略化することができるという効果が得られる。
また、本実施形態の微細気泡発生器1においては、流出口16が、出口フランジ24の孔部24aにより、流路面積を絞る絞り部として下流側にかけて窄むテーパ状に形成されている。かかる構成によれば、4つの旋回増速部20により生起された4つの気液二相旋回流が、その下流側において合流した後、流出口16の絞り作用によって圧力の低下をともなって流速を速くする。これにより、流出口16および流出口16の下流側の第2連通配管6において微細気泡含有水F3の流路壁面に対する速度勾配が大きくなり、強い剪断作用を得ることができる。結果として、旋回増速部20の下流側において剪断作用を向上させることができ、効果的に微細気泡の微細化および発生量の向上を図ることができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図11から図15を用いて説明する。なお、本発明の第1実施形態と共通する内容については同一の符号を用いる等して適宜説明を省略する。
本実施形態に係る微細気泡発生器61は、第1実施形態の微細気泡発生器1が備える4つの旋回増速部20に加え、本体部11の中心軸に対応する中央の位置に1つの旋回増速部20(20A)を備え、合計で5箇所に並列的に設けられた旋回増速部20を備える(図15参照)。つまり、本実施形態の微細気泡発生器1においては、5つの旋回増速部20のうち一つの旋回増速部20Aは、旋回中心点C1の位置が円周C2の中心である中心点O1に一致するように設けられている。
したがって、本実施形態の微細気泡発生器61においては、上述のような5つの旋回増速部20の配置に対応して、旋回流形成部12におけるスクリュー体40および流速増速部13における絞り体50が配設される。すなわち、5つの旋回増速部20の配置に対応して、スクリューホルダ22においては、スクリュー体40が挿嵌されるスクリュー用孔部22aが5箇所に設けられ、絞りホルダ23においては、絞り体50が挿嵌される絞り用孔部23aが5箇所に設けられている。
そして、本実施形態の微細気泡発生器61は、中央に位置する旋回増速部20Aに対しても本体部11の外部からの空気F2の導入経路を確保するため、各旋回増速部20に対する空気F2の導入経路を設けるための構成が、第1実施形態の微細気泡発生器1と異なる。以下、具体的に説明する。なお、図11から図14においては、本体部11を構成する部材間および絞り体50と絞りホルダ23との間に介装されるOリングの図示を省略しているが、これらのOリングは第2実施形態の微細気泡発生器61においても第1実施形態の場合と同様にして設けられる。
図11から図15に示すように、本実施形態に係る微細気泡発生器61は、本体部11を構成する部材として、絞りホルダ23と出口フランジ24との間に介装される空気室フランジ70を備える。空気室フランジ70は、本体部11を構成する他の部材と同一あるいは略同一の(共通の)外径寸法を有する円板状ないし円筒状の外形をなす部材であり、他の部材に対して同心配置されるとともに中心軸方向(筒軸方向)に重ねられた態様で、他の部材の外周面とともに連続的な円柱面である本体部11の外周面を形成し、一体的な円筒形状をなす。
空気室フランジ70は、本実施形態では円板状の部材であり、上流側の板面70xを、絞りホルダ23の下流側の端面23yに密着させるとともに、下流側の板面70yを、出口フランジ24の上流側の板面24xに密着させた状態で設けられる。なお、図示は省略するが空気室フランジ70と絞りホルダ23との間、および空気室フランジ70と出口フランジ24との間には、本体部11における他の部材間の場合と同様に、本体部11内の流路の外周を囲むようにOリングが介装される。
空気室フランジ70には、上流側の板面70xにおいて5つの旋回増速部20の下流側の開口を含む範囲で円形状に形成された浅い円筒状の凹部71と、5つの旋回増速部20の配置に対応して同心位置に設けられ空気室フランジ70をその厚さ方向に貫通する絞り挿入用孔部72とが設けられている。すなわち、空気室フランジ70は、全体として凹部71によって上流側を開口側とするごく浅い有底円筒形状(シャーレ形状)をなし、その底部分を貫通するように、5つの絞り挿入用孔部72が設けられている。したがって、各絞り挿入用孔部72の上流側は、凹部71内に臨んで開口し、絞り挿入用孔部72の下流側は、空気室フランジ70の下流側の板面70yに開口する。
空気室フランジ70と絞りホルダ23とが互いに密着することで、凹部71により、絞りホルダ23と空気室フランジ70との間に円板状の空間である空気室75が形成される(図12参照)。すなわち、空気室75は、絞りホルダ23の下流側の端面23yと、凹部71の内周面71aと、絞り挿入用孔部72の上流側が開口する凹部71の底面71bとにより囲まれた空間となる。したがって、絞りホルダ23における5箇所の絞り用孔部23aの下流側の開口は、空気室フランジ70の凹部71内、つまり空気室75内に臨む。すなわち、絞りホルダ23の絞り用孔部23aは、凹部71により絞りホルダ23と空気室フランジ70との間に形成された空気室75を介して、空気室フランジ70の絞り挿入用孔部72と連通した状態となる。
そして、本実施形態では、絞りホルダ23の絞り用孔部23aに対して上流側の開口から挿嵌される絞り体50の先端側の部分、つまり伸延部52の部分が、空気室75を介して絞り挿入用孔部72に挿入された状態となる。すなわち、本実施形態では、絞り体50は、その伸延部52を、絞りホルダ23と空気室フランジ70との間に架け渡した態様で設けられている。ここで、絞り体50の伸延部52の先端は、第1実施形態における伸延部52と絞り用孔部23aとの関係と同様に、絞り挿入用孔部72の下流側の開口端、つまり空気室フランジ70の下流側の板面70yよりもわずかに手前側(上流側)に位置する。
また、本実施形態の微細気泡発生器61では、円板状の外形を有する空気室フランジ70において、その径方向に沿う径方向通路73が設けられている。径方向通路73は、空気室フランジ70の径方向に沿って直線状に穿設された孔部であり、空気室フランジ70において、中心軸方向について、凹部71の内周面71aに開口する位置に設けられている。したがって、径方向通路73の上流側は、空気室フランジ70の外周面70rに開口し、径方向通路73の下流側は、凹部71を形成する内周面71aに開口する。
径方向通路73は、空気室フランジ70において1箇所に設けられている。一方、本実施形態では、第1実施形態において絞りホルダ23の各絞り用孔部23aに連通するように設けられている径方向通路23hが省略されている。径方向通路73には、第1実施形態の場合における径方向通路23hと同様にして、空気導入用配管17が接続される(図8参照)。
以上のような構成を備える本実施形態の微細気泡発生器61においては、空気室フランジ70の凹部71による空気室75を介して同軸状に連なる絞り用孔部23aと絞り挿入用孔部72に差し込まれる絞り体50によって、流速増速部13が構成される。
そして、微細気泡発生器61においては、絞りホルダ23の絞り用孔部23a内における伸延部52の周囲の円筒状の空間と、絞りホルダ23と空気室フランジ70との間で凹部71によって形成される空気室75と、空気室フランジ70の絞り挿入用孔部72内における伸延部52の周囲の円筒状の空間と、径方向通路73の内部空間とが連続した空間となる。かかる空間が、本体部11の外部から本体部11の内部における水F1の流路に連通する空気通路となる。
したがって、本実施形態では、空気室フランジ70の絞り挿入用孔部72内において絞り体50の伸延部52の周囲に形成される円筒状の空間が、径方向通路73と連通する軸方向通路74となる。すなわち、軸方向通路74は、伸延部52の外周面52bと、絞り挿入用孔部72の内周面72aとの間のわずかな隙間(符号W2参照)として形成され、絞り体50と同心円的に伸延する円筒状の通路である。軸方向通路74は、径方向通路73の下流側および軸方向通路74の上流側が開口する空気室75を介して径方向通路73と連通する。
気体導入部14は、絞り体50の伸延部52の先端(開口端)の下流側にて流速増速部13と合流する。本実施形態では、上述したように絞り体50の伸延部52の先端が、絞り挿入用孔部72の下流側の開口端、つまり空気室フランジ70の下流側の板面70yよりもわずかに手前側(上流側)に位置し、伸延部52の外周面52bと絞り挿入用孔部72の内周面72aとによって形成される軸方向通路74は、絞り挿入用孔部72内において、伸延部52の開口端の位置で途切れる。このため、軸方向通路74によって下流側の部分をなす気体導入部14は、絞り挿入用孔部72内において伸延部52が途切れた絞り挿入用孔部72の下流側の端部にて流速増速部13と合流することになる。
このような気体導入部14によれば、流速増速部13において絞り体50の伸延部52の先端開口から流れ出る水F1に対して、径方向通路73、空気室75、および軸方向通路74を経た空気F2が、流路の横断面視で径方向の外側の全周から一様に合流する(図12、破線矢印V2参照)。このような水F1と空気F2との合流作用により、微細気泡含有水F3が生成される。なお、本実施形態では、絞り体50の伸延部52の先端が、絞り挿入用孔部72の下流側の開口端(下流側の板面70y)よりも手前側に位置するが、伸延部52の先端は、中心軸方向について絞り挿入用孔部72の下流側の開口端と同じ位置に位置したり、絞り挿入用孔部72から突出したりしてもよい。これらの場合、絞り挿入用孔部72よりも下流側の位置、本実施形態では流出口16内の位置にて、流速増速部13を経た水F1と気体導入部14を経た空気F2とが合流することになる。
また、空気室フランジ70の下流側については、5箇所の絞り挿入用孔部72の下流側の開口は、流出口16、つまり出口フランジ24の孔部24a内に臨む。言い換えると、流出口16を構成する孔部24aは、中心軸方向視で、上流側の開口の範囲内に、空気室フランジ70において下流側の板面70yに臨む5箇所の絞り挿入用孔部72の下流側の開口を含むように設けられる。すなわち、5箇所の流速増速部13の下流側の開口は、全て流出口16内に臨み、5つの増速流路13aが流出口16において合流する。したがって、5箇所の流速増速部13のそれぞれの下流側の部分において水F1と空気F2との合流作用によって生成された微細気泡含有水F3は、流出口16に流れ込んで合流することになる。
また、本実施形態の微細気泡発生器61において本体部11を構成する入口フランジ21、スクリューホルダ22、絞りホルダ23、空気室フランジ70、および出口フランジ24は、本体部11として一体的な構造体をなすように、所定の方法・構造によって互いに固定される。本体部11の構成部材を固定するための方法・構造としては、上述したように、例えば、本体部11の構成部材に対して中心軸方向に沿って貫通ないし螺挿されるネジ等の締結具を用いた手法や、本体部11の中心軸方向の両側に固定される配管フランジ8,9の鍔部8a,9aを用いた手法等が、本体部11の外形の寸法等に応じて適宜採用される。
以上のような構成を備える本実施形態の微細気泡発生器61によれば、第1実施形態の微細気泡発生器1と同様の作用効果が得られることに加え、次のような作用効果が得られる。すなわち、図15に示すように、本実施形態の微細気泡発生器61においては、4つの旋回増速部20に加えて、その4つの旋回増速部20の配置を規定する円周C2の中心点O1に対応する位置となる本体部11の中心部に旋回増速部20Aが設けられている。かかる構成によれば、第1実施形態の場合と比べて、気液二相旋回流(矢印S2)の数が1つ増加する分、気液二相旋回流による剪断作用が向上すると考えられる。また、中心部に位置する旋回増速部20Aは、他の4つの旋回増速部20のそれぞれに対して隣接するため、互いに隣接する気液二相旋回流間における相反する向きの流れによる剪断作用が向上すると考えられる。また、中心に位置する旋回増速部20Aの旋回流によって、複数の気液二相旋回流が合流した後における一つの大きな旋回流(矢印S3)の生成も助長され、高い剪断作用が得られると考えられる。したがって、本実施形態の微細気泡発生器61によれば、より効果的に、剪断作用の相乗効果によって空気の微細化および微細気泡の発生量の向上を図ることができると考えられる。
また、本実施形態の微細気泡発生器61のように、絞りホルダ23と出口フランジ24との間に空気室フランジ70を介装して空気室75を設ける構成によれば、複数の旋回増速部20の配置にかかわらず、旋回増速部20に対する空気F2の通路、つまり気体導入部14を形成することが可能となる。すなわち、空気室フランジ70によって空気室75を設ける構成によれば、旋回増速部20の配置の自由度を向上させることができ、気体導入部14を設ける点で旋回増速部20の任意の配置に対応することが可能となる。
空気室フランジ70によって空気室75を設ける構成によって実現できる複数の旋回増速部20の配置例としては、図16に示すような配置が挙げられる。すなわち、この例においては、図16に示すように、本体部11の中心軸の位置に一致する中心点O1を中心とする円周C2上において旋回中心点C1を等角度間隔に位置させる6つの旋回増速部20と、旋回中心点C1を円周C2の中心点O1に一致させる1つの旋回増速部20Aとの合計7つの旋回増速部20が配置されている。この他にも、例えば本体部11の外形寸法や本体部11が介装される配管の管径等によって、旋回増速部20の数および配置を適宜採用することができる。
ただし、第1実施形態のように、所定の円周上に沿って等間隔に配置される旋回増速部20のみを有する構成によれば、気体導入部14を構成するに際して空気室フランジ70が不要となるため、本体部11を構成する部材の数を減らすことができるというメリットが得られる。つまり、少ない部品点数で効率的な微細気泡の生成が可能となる。
以上説明した本発明の実施の形態では、微細気泡発生装置10において、微細気泡発生器1の上流側にポンプ4が設けられ、微細気泡発生器1に対して水F1を圧送する構成が採用されている。この点、微細気泡発生器1(61)に対する水F1の供給については、微細気泡発生器1(61)の下流側(吐出側)にポンプを設け、そのポンプによる吸引作用によって微細気泡発生器1(61)に水F1を供給する構成であってもよい。
また、旋回流形成部12における旋回形成流路12aの形状、本実施形態の場合スクリュー体40の羽根部42等の形状については、本実施形態に限定されるものではない。つまり、旋回流形成部12において旋回形成流路12aを形成するための静翼体としては、流入してくる水F1について旋回流を形成することができる形状のものであればよい。
また、本発明の実施の形態では、連続相としての液体が水F1であり、分散相としての気体が空気F2であるが、連続相の液体は水以外の液体であってよく、分散相の気体は空気以外の気体であってもよい。また、分散相としては、気体以外の流体、例えば液体であってもよい。すなわち、本発明に係る微細気泡発生器は、連続相としての液体と分散相としての液体とを混合して液・液混相をなすとともに、分散された液体を超微細化かつ均一化させて生成する超微細液滴発生器としても適用することができる。
[実施例]
以下では、本発明の実施例について説明する。
(第1実施例)
まず、本発明の第1実施例について説明する。この実施例は、微細気泡の発生量についての尺度として、(I)溶存酸素量(DO:Dissolved Oxygen)の上昇の程度、および(II)算出される酸素溶解効率に着目したものである。微細気泡による溶存酸素量の上昇は、気泡(バブル)の溶液との接触面積の拡大や、気泡の溶液中での滞在時間に支配される。このため、同一条件下においては、微細気泡による溶存酸素量の上昇は、気泡の微細化率に対して比例関係を示す。
この実施例では、本発明の実施例構造として、第1実施形態に係る微細気泡発生器1の構成を適用した多流旋回ノズルを用いた。具体的には、(1)本実施例は、管径が50A(2インチ)の配管に対して、管径サイズ(流路径)が25A(1インチ)の旋回増速部20(旋回流形成部12および流速増速部13)を4つ組み込んだものである。
また、(1)本実施例に対する比較のための(2)第1比較例は、管径が50Aの配管に対して、配管サイズが25Aの単流旋回ノズルを4つ並列に(別配管として)設けたものである。ここで、単流旋回ノズルとは、旋回増速部20を単独で備える構成である。また、(3)第2比較例は、管径が50Aの配管に対して、配管サイズが50Aの単流旋回ノズルである。つまり、(3)第2比較例は、(2)第1比較例の一つの単流旋回ノズルを直径で約2倍程度にスケールアップしたものである。なお、この実施例では、水流量300L/min、空気流量5L/minとし、2t(トン)の貯水槽にて実験を行った。
図17に、(I)溶存酸素量(DO)の上昇の程度についての実験結果を示す。図17に示すグラフにおいて、横軸は時間(min)であり、縦軸は溶存酸素量(DO)(%)である。図17に示す実験結果からわかるように、(1)本実施例、(2)第1比較例、および(3)第2比較例のいずれの場合も、時間の経過にともなってDOの上昇の程度が徐々に緩やかになるように連続的な曲線沿って上昇しているが、(1)本実施例のDOの上昇の程度が、他の2つの比較例に比べて明らかに大きい。なお、(2)第1比較例および(3)第2比較例は、DOの上昇の開始から途中までは上昇の程度を略同じとし、途中から(2)第1比較例の方が(3)第2比較例よりもDOの上昇の程度がわずかに大きくなっている。
図18に、(II)算出される酸素溶解効率(Ea(%))の計算結果を示す。図18に示す計算結果は、図17に示した(I)溶存酸素量(DO)の上昇の程度に基づいて、次式(1)により算出したものである。
式(1)において、KLa:物質移動容量係数(1/h)、Cs:20℃における飽和DO濃度(mg/L)、V:水容量(L)、Ma:20℃における酸素の質量流量(g/min)である。なお、KLaは、空気中の酸素の気体から液体に対する移動(溶解)速度を表し、曝気時間とDO濃度の変化から実験的に求められる。
図18に示す計算結果からわかるように、(1)本実施例の酸素溶解効率の値は、66.1%であり、(2)第1比較例の34.5%、および(3)第2比較例の36.4%に比べて明らかに大きい(2倍近くである)。
以上のような第1実施例の結果から、次のようなことがいえる。すなわち、(1)本実施例、(2)第1比較例、および(3)第2比較例について、(I)溶存酸素量(DO)の上昇の程度に関しては、(1)>>(2)≒(3)の関係が成り立つ。また、(II)算出される酸素溶解効率に関しては、(1)>>(2)≒(3)の関係が成り立つ。そして、この(II)算出される酸素溶解効率については、効果は2倍に近いという結果が得られた。以上のように、この実施例により、本発明に係る微細気泡発生器1の高い微細化挙動を確認することができた。つまり、微細気泡の発生量について、本発明に係る微細気泡発生器1の構成を採用することで、高い増量の効果が得られることを確認することができた。
また、第1実施例の結果より、酸素溶解効率の値に関し、50Aの配管に対し、25Aの単流旋回ノズルを並列に4本並べた構成の場合は34.5%であり、50Aの配管に合わせて50Aの単流旋回ノズルを1本用いた構成の場合は36.4%であるのに対し、25Aの旋回増速部20を4つ組み込んだ多流旋回ノズルを用いた構成の場合は66.1%という高い数値が得られている。すなわち、この結果から、酸素溶解効率の値について、並列的に設けられた複数の旋回増速部20を備えた本発明に係る微細気泡発生器1の構成によれば、所定の径の単流旋回ノズルを単純に旋回増速部20と同数だけ並列に接続することや、単流旋回ノズルを単純にスケールアップすることによっては得られない旋回流の剪断作用についての相乗効果が得られることが確認できる。
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例について説明する。この実施例は、微細気泡のサイズ(粒子径)の測定を行ったものである。この実施例は、(1)本実施例と(2)第1比較例について、単位流量当たりの微細気泡の発生量を測定したものである。この実施例では、ナノバブル数/mlとして、粒子径が1μm以下の微細気泡を測定した。
図19に、(1)本実施例と(2)第1比較例についての粒子径の分布(数)の測定結果を示す。図19に示すグラフにおいて、横軸は粒子径(Particle Size)(nm)であり、縦軸は単位流量当たりの微細気泡の発生量、つまり微細気泡の濃度(Concentration)(particles/ml)である。なお、この実施例の微細気泡の作製・測定条件等は次のとおりである。貯水量:1t(トン)(溶存酸素100%)、水流量:250L/min(4分で1循環)、運転時間:40分(10循環回数)、空気流量:1L/min(ボイド率0.004)。また、粒子数の測定には、ナノサイト社のナノ粒子解析装置NanoSight NS500を用いた。
図19に示す測定結果から、グラフG2で示す(2)第1比較例の場合、粒子径が500nm以下の範囲で比較的分散的な分布が表れていることがわかる。これに対し、グラフG1で示す(1)本実施例の場合、大部分の粒子が300nm以下の粒子径であり、特に、その大半が250nm近傍の粒子径のものであり、100nm近傍にも比較的低いピークが表れている。
また、この実施例では、発生したナノバブル数/ml(1μm以下総数)の測定結果として、(1)本実施例の場合に1.1.E+07(1.1×107)、(2)第1比較例の場合に4.3.E+06(4.3×106)という値が得られた。かかる測定結果は、(1)本実施例の場合、(2)第1比較例の場合と比べて発生したナノバブル数/mlが2.62倍多いことを示す。このことから、本発明に係る微細気泡発生器1のように多流旋回方式を採用することで、気泡の微細化が促進されることが確認できた。
以上の本発明の第1実施例および第2実施例から、本発明の構成を適用した多流旋回ノズルを用いることにより、単流旋回ノズル等との比較において、微細気泡の微細化を促進させることができるとともに、微細気泡の発生量を向上させることができるという効果が得られることが実証された。