JP2015143317A - 熱可塑性エラストマー組成物および成形品 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】容易に成形することができ、柔軟性、高温における引張永久歪み特性に優れた成形品を得ることができる熱可塑性エラストマー組成物を提供すること。【解決手段】少なくともコアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)を配合してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、コアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対して、コアシェル型ゴム(A)を75〜90重量部、熱可塑性樹脂(B)を10〜25重量部配合してなり、かつ、電子顕微鏡で観察される相分離構造において、コアシェル型ゴム(A)が連続相となる相構造を形成することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、コアシェル型ゴムと熱可塑性樹脂を配合してなる熱可塑性エラストマー組成物およびそれを用いた成形品に関するものである。
従来、弾性を有する高分子材料としては、天然ゴムまたは合成ゴムなどのゴム類に架橋剤や補強剤などを配合して高温高圧下で架橋したものが汎用的に用いられている。しかしながらこの様なゴム類では、高温高圧下で長時間にわたって架橋および成形を行う工程が必要であり、加工性に劣るといった課題があった。また架橋したゴムは熱可塑性を示さないため、熱可塑性樹脂のようにリサイクル成形が一般的に不可能である。そのため、通常の熱可塑性樹脂と同じように射出成形、熱プレス成形、および押出成形などの汎用の溶融成形技術を利用して成形品を容易に製造することのできる熱可塑性エラストマーが近年種々開発されている。
熱可塑性エラストマーとして、例えば、ハードセグメントがポリエステルからなり、ソフトセグメントがポリエーテルからなるポリエステル系エラストマーや、ハードセグメントがポリアミドからなり、ソフトセグメントがポリエーテルからなるポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーの柔軟性を改良するためには、ポリマー中のソフトセグメントの含有量を多くする必要がある。ところが、ソフトセグメントの含有量を多くすると、高温の圧縮永久ひずみ特性が劣る課題がある。また、軟質化する他の方法として有機化合物からなる軟化剤を添加する方法が知られているが、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは結晶性樹脂であり、軟化剤の吸収量が低く、柔軟性はなお不十分であった。
特許文献1には、柔軟で、かつ引張永久伸びおよび耐圧縮性に優れた組成物として、熱可塑性コポリエステルエラストマーや熱可塑性コポリアミドエラストマーといった熱可塑性エラストマー30〜90重量%とコアシェル型のゴム70〜10重量%からなる熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。また、特許文献2には、圧縮永久歪が小さく、耐油性に優れた組成物として、架橋ゴム粒子含有重合体60〜99重量部、及び熱可塑性硬質樹脂1〜40重量部を含む熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。
特開平8−231770号公報 特開2011−148887号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された熱可塑性エラストマー組成物は、コアシェル型のゴムが島相となる相構造を形成し、柔軟性、引張永久歪み特性の向上効果は十分ではなかった。また、上記特許文献2において具体的に開示された例は、架橋ゴム粒子含有重合体と熱可塑性硬質樹脂の重量比が70/30の場合のみであり、この場合、十分な柔軟性、引張永久歪み特性を得ることができなかった。
本発明は、容易に成形することができ、柔軟性、高温における引張永久歪み特性に優れた成形品を得ることができる熱可塑性エラストマー組成物を提供することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
(1)少なくともコアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)を配合してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、コアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対して、コアシェル型ゴム(A)を75〜90重量部、熱可塑性樹脂(B)を10〜25重量部配合してなり、かつ、電子顕微鏡で観察される相分離構造において、コアシェル型ゴム(A)が連続相となる相構造を形成することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物、
(2)前記コアシェル型ゴム(A)のコア層が、アクリルゴムおよび/またはシリコーンゴムを含むゴム層であることを特徴とする(1)記載の熱可塑性エラストマー組成物、
(3)前記熱可塑樹脂(B)がポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリエーテルアミドエラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(2)のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物、
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形品、
(5)300℃以下で溶融可能である(4)に記載の成形品、
(6)射出成形品、フィルムまたはシートである(4)または(5)のいずれか1項に記載の成形品、
(7)自動車用部品または電気・電子部品である(4)〜(6)のいずれか1項に記載の成形品。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、汎用の溶融成形技術を利用して容易に成形することができ、柔軟性、高温における引張永久歪み特性に優れた成形品を得ることができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物はリサイクル性にも優れ、例えば、自動車外装部品用途、電気・電子部品用途等に展開することが可能となる。
実施例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物の透過型電子顕微鏡写真を示す。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、少なくともコアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)を配合してなる熱可塑性エラストマーであって、コアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対して、コアシェル型ゴム(A)を75〜90重量部、熱可塑性樹脂(B)を10〜25重量部配合してなり、かつ、電子顕微鏡で観察される相分離構造において、コアシェル型ゴム(A)が連続相となる相構造を形成することを特徴とする。
本発明で用いるコアシェル型ゴム(A)とは、コア層(最内層)とそれを覆う1以上の層(シェル層)から構成され、また、隣接し合った層が異種の材料から構成される構造を有するものである。前記コアシェル型ゴム(A)を構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよい。なお、コアシェル型ゴム(A)を構成する層が3層以上の場合、最内層を除く全ての層をシェル層とする。前記コアシェル型ゴム(A)は、内部に少なくとも1層のゴム層を有する。コア層(最内層)にゴム層を有することが好ましい。
コアシェル型ゴム(A)は柔軟性、引張永久歪み特性に優れ、後述する相構造を形成することにより、柔軟性、高温における引張永久歪み特性に優れた成形品を得ることができる。さらに、組み合わせる熱可塑性樹脂(B)と相溶性に優れるシェル層を形成させることが可能であり、この場合には、熱可塑性樹脂(B)の分散性を向上させ、成形品の柔軟性、高温における引張永久歪み特性にさらに優れた熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
コアシェル型ゴム(A)において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有するものであればよい。例えば、アクリルゴム、シリコーンゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、共役ジエンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。ここで、例えば、アクリルゴムとは、アクリル成分を重合して得られるゴムを指し、シリコーンゴムとは、シリコーン成分を重合して得られるゴムを指す。これらを2種以上含有してもよい。アクリル成分としては、例えば、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチルなどが挙げられる。シリコーン成分としては、例えば、ジメチルシロキサンやフェニルメチルシロキサンなどが挙げられる。スチレン成分としては、例えば、スチレンやα−メチルスチレンなどが挙げられる。ニトリル成分としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどが挙げられる。共役ジエン成分としては、例えば、ブタジエンやイソプレンなどが挙げられる。また、これらのゴムの成分を2種以上共重合して得られるゴムを含有してもよく、例えば、前述のアクリル成分およびシリコーン成分を共重合して得られるゴム、前述のアクリル成分およびスチレン成分を共重合して得られるゴム、前述のアクリル成分および共役ジエン成分を共重合して得られるゴム、前述のアクリル成分およびシリコーン成分およびスチレン成分を共重合して得られるゴムなどが挙げられる。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートなどの架橋性成分を共重合して架橋させたゴムも好ましい。
これらの中でも、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチルなどのアクリル成分を重合して得られるゴム(アクリルゴム)、ジメチルシロキサンやフェニルメチルシロキサンなどのシリコーン成分を重合して得られるゴム(シリコーンゴム)、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチルなどのアクリル成分およびジメチルシロキサンやフェニルメチルシロキサンなどのシリコーン成分を共重合して得られるゴム(アクリル/シリコーンゴム)が好ましい。これらのゴムを選択することにより、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐油性を向上させることができる。
コアシェル型ゴム(A)において、シェル層を形成する成分としては、例えば、グリシジル基含有ビニル系単位、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位および/またはその他のビニル系単位を有する重合体などが挙げられる。中でも、グリシジル基含有ビニル系単位、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位および/または不飽和ジカルボン酸無水物系単位を有する重合体が好ましい。
グリシジル基含有ビニル系単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどに由来する単位が挙げられる。これらの単位を2種以上有してもよい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位が好ましく使用される。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどに由来する単位が挙げられる。これら2種以上有してもよい。また、アルキル基の水素の少なくとも一部が置換されていてもよく、置換基としては、例えば、アミノ基やヒドロキシル基、ハロゲン基などが挙げられる。
不飽和ジカルボン酸無水物系単位としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸または無水アコニット酸などに由来する単位が挙げられる。これらの中でも、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸に由来する単位が好ましく使用される。これらの単位を2種以上有してもよい。
前記コアシェル型ゴム(A)の粒子径は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂(B)の分散性の観点から、一次粒子径が0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。一方、高温における引張永久歪み特性をより向上させる観点から、一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、0.6μm以下であることがさらに好ましい。
前記コアシェル型ゴム(A)において、コア層とシェル層の重量比は、特に限定されるものではないが、柔軟性をより向上させる観点から、コアシェル型ゴム(A)全体に対して、コア層が50重量%以上であることが好ましく、55重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。一方、熱可塑性樹脂(B)の分散性の観点から、コアシェル型ゴム(A)全体に対して、コア層が95重量%以下であることが好ましい。
コアシェル型ゴム(A)は、市販品を用いてもよいし、公知の方法により作製することもできる。
コアシェル型ゴム(A)の市販品としては、例えば、ロームアンドハース社製“パラロイド”(登録商標)、三菱レイヨン(株)製“メタブレン”(登録商標)、(株)カネカ製“カネエース”(登録商標)、アイカ工業(株)製“スタフィロイド”(登録商標)または(株)クラレ製“パラフェイス”(登録商標)などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂(B)とは、加熱溶融により成形可能な樹脂であれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマーやポリアミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、高温における引張永久歪み特性がより向上する観点から、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエーテルアミドエラストマーが好ましい。
上記ポリエステル樹脂とは、主鎖にエステル結合を有する高分子からなる熱可塑性樹脂のことであり、ジカルボン酸(あるいは、そのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの炭素数2〜20の脂肪族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量400〜6000の長鎖グリコールおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
ポリエステル樹脂の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらの中でも、ポリブチレンテレフタレート(ポリブチレンテレフタレート樹脂)が好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂を選択することにより、高温における引張永久歪み特性をより向上させることができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、o−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.36〜1.60の範囲にあるものが好ましく、0.52〜1.25の範囲にあるものがより好ましい。固有粘度の異なるポリブチレンテレフタレート樹脂を併用してもよく、この場合には、ポリブチレンテレフタレート樹脂全体としての固有粘度が0.36〜1.60の範囲にあることが好ましい。
上記ポリアミド樹脂とは、アミド結合を有する高分子のことである。ポリアミド樹脂は、一般的に、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料として得ることができる。その原料の代表例としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを用いることができる。かかるポリアミド樹脂を2種以上配合してもよい。
本発明において好ましく用いられるポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
ポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜7.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、熱可塑性エラストマー組成物の粘度が適度に高くなり、成形時の空気の巻き込みを抑制し、成形性をより向上させることができる。相対粘度は1.8以上がより好ましい。一方、相対粘度が7.0以下であれば、熱可塑性エラストマー組成物の粘度が適度に低くなり、成形性をより向上させることができる。なお、ポリアミド樹脂を2種以上配合する場合は、複数のポリアミド樹脂全体としての相対粘度が上記範囲にあることが好ましい。
上記アリーレンスルフィド樹脂としては、下記構造式で示される繰り返し単位を全構造単位中70モル%以上含む重合体または共重合体であるポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましい。耐熱性をより向上させる観点から、下記構造式で示される構造単位を90モル%以上含むことが好ましい。
ポリフェニレンスルフィド樹脂は、その構造の30モル%以下を、下記構造式で示される構造単位などで構成することが可能である。
かかるポリアリーレンスルフィド樹脂は、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法や、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法など、任意の方法によって製造することができる。
上記のようにして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂に、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施してもよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する方法としては、例えば、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、通常150〜280℃の範囲が選択され、好ましくは200〜270℃であり、処理時間としては、通常0.5〜100時間の範囲が選択され、好ましくは2〜50時間である。処理温度と処理時間を調整することによって、得られるポリマーの粘度を所望の範囲に調整することができる。加熱処理装置としては、通常の熱風乾燥機、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置などが挙げられる。効率よく、より均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合、加熱処理温度は通常150〜280℃、好ましくは200〜270℃であり、加熱時間は通常0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間である。加熱処理装置としては、通常の熱風乾燥機、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置などが挙げられる。効率よく、より均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましい。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめる方法などが挙げられる。必要により、適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を熱水で洗浄する場合、熱水洗浄によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水洗浄は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンスルフィド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンスルフィド樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、ポリアリーレンスルフィド樹脂200g以下の浴比が選択される。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を酸処理する方法としては、例えば、酸または酸の水溶液にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめる方法などが挙げられる。必要により、適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
本発明で用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、機械特性をより向上させる観点から、310℃、せん断速度1,000/秒における溶融粘度が0.5Pa・s以上であることが好ましく、2Pa・s以上であることがより好ましい。一方、流動性を向上させる観点から、310℃、せん断速度1,000/秒における溶融粘度が5,000Pa・s以下であることが好ましく、80Pa・s以下であることがより好ましい。
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとは、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメントと、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとを主たる構成成分とするポリエステル系熱可塑性エラストマーである。ここで、主たる構成成分とは、ポリエステル系エラストマーを構成する全構成成分中、50モル%以上を占める成分を言う。炭素数2〜12の脂肪族および/または脂環族ジオールと、芳香族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルと、ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応またはエステル交換反応により得られるオリゴマーを重縮合させて得られるポリエステルポリエーテル共重合体が好ましい。
本発明で用いる炭素数2〜12の脂肪族および/または脂環族ジオールとしては、ポリエステルの原料、特にポリエステルエラストマーの原料として公知のものを用いることができる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。好ましくは、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、特に好ましくは1,4−ブタンジオールである。これらを2種以上使用してもよい。
芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステルエラストマーの原料として公知のものが使用できる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、特に好ましくは、テレフタル酸である。これらの2種以上を併用してもよい。また、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、例えば、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート、2,6−ジメチルナフタレート等のジメチルエステルが挙げられる。好ましくは、ジメチルテレフタレート、2,6−ジメチルナフタレートであり、特に好ましくは、ジメチルテレフタレートである。これらは2種以上を併用することができる。
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、重量平均分子量が400〜6,000のものが好ましく使用される。重量平均分子量が400以上であれば、得られるポリエステルポリエーテル共重合体のブロック性が向上する。500以上がより好ましく、600以上がさらに好ましい。一方、重量平均分子量が6,000以下であれば、系内における相分離を抑制し、ポリマーの物性をより向上させることができる。ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−プロピレンエーテル)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等が挙げられる。特に好ましくはポリテトラメチレンエーテルグリコールである。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料中のポリアルキレンエーテルグリコールの含有量は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。一方、重縮合による生産性の観点から、ポリエステル系熱可塑性エラストマー中のポリアルキレンエーテルグリコールの含有量は、95重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい。
また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として、ポリアルキレンエーテルグリコールとともに、脂肪族または脂環式ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを縮合して得られるポリエステルオリゴマー、脂肪族ラクトンまたは脂肪族モノオールカルボン酸から合成されるポリエステルオリゴマーを用いてもよい。また、上記以外に3官能のジオール、その他のジオールや他のジカルボン酸およびそのエステルを共重合成分として使用してもよく、さらに、アジピン酸等の脂肪族または脂環族のジカルボン酸、または、そのアルキルエステル等も共重合成分として使用してもよい。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを縮合したポリエステルオリゴマーの例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸またはコハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸のうちの一種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール等のジオールのうちの一種以上とを縮合して得られるポリエステルオリゴマーが挙げられる。脂肪族ラクトンまたは脂肪族モノオールカルボン酸から合成されるポリエステルオリゴマーの例としては、ε−カプロラクトン、ω−オキシカプロン酸等から合成されるポリカプロラクトン系ポリエステルオリゴマーが挙げられる。
本発明におけるエステル化、エステル交換、重縮合反応は、常法に従って行うことができる。これらの反応における触媒としては、スズ、チタン、亜鉛、マンガンなどのアルコラート、塩化物、酸化物など公知の触媒のうち1種または2種以上を使用することができ、有機チタン系触媒、特に、テトラブチルチタネートが望ましい。また、助剤として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、または、それらの金属塩などを加えてもよい。特に、次亜リン酸アルカリ金属塩を添加することは、末端カルボキシル基の含有率が減少し耐加水分解性が向上することから好ましい。
次亜リン酸アルカリ金属塩としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウムなどが挙げられ、特に次亜リン酸ナトリウムが望ましい。この次亜リン酸アルカリ金属塩の添加量は、生成するポリエステル系熱可塑性エラストマーに対し、1〜1,000ppmが好ましい。1ppm以上添加することにより、触媒効果が十分に得られる。3ppm以上がより好ましく、5ppm以上がさらに好ましい。一方、1,000ppm以下であれば、重縮合反応を迅速に進めることができる。200ppm以下がより好ましく、80ppm以下がさらに好ましい。
次亜リン酸アルカリ金属塩などの触媒は、溶液状、スラリー状、固体状のどの状態で溶融ポリマーに添加してもよい。触媒の添加時期は、少なくとも重縮合反応終了前、すなわちエステル化反応前またはエステル交換反応前から重縮合反応終了の前までの間で、どの時期に添加してもよい。特に、減圧重縮合開始直前に、スラリー状で添加することが重合性の低下が少なく好ましい。
また、エステル化、エステル交換、重縮合の各反応工程において、ほかの添加剤が存在していてもよい。例えばヒンダードフェノール系酸化安定剤、ヒンダードアミン系酸化安定剤、リン系酸化安定剤、硫黄系酸化安定剤、トリアゾール系耐光安定剤などのほか、公知の他の添加剤が使用される。特に、本発明では、ヒンダードフェノール系酸化安定剤をポリエステル系熱可塑性エラストマーに対し、0.01〜1重量%添加することが好ましい。エステル化反応およびエステル交換反応は、通常120〜250℃、好ましくは150〜230℃の温度条件で行われ、溶融重縮合反応は、通常1333Pa以下の減圧条件下、200〜280℃の温度条件で2〜6時間行われる。
通常、溶融重合して得られたポリエステル系熱可塑性エラストマーは、融点以上の温度で保持され、順次反応缶から吐出され、ペレット化が行われる。なお、ここで得られるペレットは、必要に応じて、さらに固相重合してもよい。このようなポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、市販のポリマーである「“ペルプレン”(登録商標)P」および「“ペルプレン”S」(東洋紡績(株)製商品名)、「“ハイトレル”(登録商標)」(東レ・デュポン(株)製商品名)、「ローモッド」(日本ジーイープラスチック(株)製商品名)、「“ニチゴーポリエスター”(登録商標)」(日本合成化学工業(株)製商品名)、「“ヌーベラン”(登録商標)」(帝人化成(株)製商品名)等がある。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーのショアーD硬度は、特に制限されるものではないが、熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形品の高温における引張永久歪み特性をより向上させる観点から、55D以上が好ましく、60D以上がより好ましく、65D以上がさらに好ましい。ここで、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのショアーD硬度は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる厚み3mmの角板を作製し、JIS K6253−1997に規定する「デュロメータ硬さ試験(タイプD)」により測定することができる。
上記ポリエーテルアミドエラストマーとは、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックを有するエラストマーを指す。主鎖中にエステル結合を含まないことが好ましく、成形品の加水分解を抑制することができる。ポリエーテルアミドエラストマーは、ポリエーテルジアミン化合物、ジカルボン酸化合物およびポリアミド形成性モノマーを重合することにより得ることができる。
ポリエーテルジアミン化合物としては、下記一般式(1)で表されるトリブロックエーテルジアミン化合物が好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
上記一般式(1)中、xは1〜20の範囲、yは4〜50の範囲、zは1〜20の範囲を表す。xは1〜12の範囲がより好ましく、yは8〜30の範囲がより好ましく、zは1〜12の範囲がより好ましい。
ジカルボン酸化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
上記一般式(2)中、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0または1を表す。Rの炭素原子数は1〜12が好ましく、4〜10がより好ましい。
上記一般式(2)で表されるジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数2〜500の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)やこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることができる。
ポリアミド形成性モノマーとしては、例えば、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、ジアミンとジカルボン酸との反応物またはそれらの塩などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、下記一般式(3)で表されるアミノカルボン酸化合物または(4)で表されるラクタム化合物が好ましい。
上記一般式(3)中、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表す。Rの炭素原子数は2〜20が好ましく、5〜11がより好ましい。上記一般式(4)中、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表す。Rの炭素原子数は3〜20が好ましく、5〜11がより好ましい。
上記一般式(3)で表されるアミノカルボン酸化合物としては、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などの炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸などを挙げることができる。
上記一般式(4)で表されるラクタム化合物としては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタム、2−ピロリドンなどの炭素数5〜20の脂肪族ラクタムなどを挙げることができる。
ジアミンとジカルボン酸との反応物またはそれらの塩において、ジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、これらの誘導体などを挙げることができる。ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、これらの誘導体などを挙げることができる。特に、脂肪族ジアミンおよび/またはその誘導体と、脂肪族ジカルボン酸および/またはその誘導体とを組み合わせることにより、低比重で、引張り伸びが大きく、耐衝撃性に優れ、溶融成形性が良好なポリエーテルアミドエラストマーを得ることができる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンを挙げることができる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ジアミンとジカルボン酸との反応物またはそれらの塩において、ジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は、0.9〜1.1の範囲が好ましく、容易に高分子量化することができる。ジアミンとジカルボン酸とのモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は0.93以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましく、0.97以上がさらに好ましい。一方、1.07以下がより好ましく、1.05以下がさらに好ましく、1.03以下がさらに好ましい。
ポリエーテルアミドエラストマーを構成する全成分に対する、ポリエーテルジアミン化合物の割合は、2〜87重量%が好ましい。ポリエーテルアミドエラストマーを構成する全成分に対するポリエーテルジアミン化合物の割合が2重量%以上であれば、エラストマーとしての特性が十分に発現され、成形品の靭性を向上させることができる。7重量%以上がより好ましい。一方、ポリエーテルアミドエラストマーを構成する全成分に対するポリエーテルジアミン化合物の割合が87重量%以下であれば、ポリアミドに特徴的な優れた力学的強度が発現され、成形品の強度を向上させることができる。78重量%以下がより好ましい。
また、ポリエーテルアミドエラストマーを構成する全成分に対する、ポリアミド形成性モノマーの割合は、10〜95重量%が好ましい。ポリエーテルアミドエラストマーを構成する全成分に対するポリアミド形成性モノマーの割合が10重量%以上であれば、ポリアミド構造の高い結晶性により、成形品の強度、弾性率などの機械特性を向上させることができる。15重量%以上がより好ましい。一方、ポリエーテルアミドエラストマーを構成する全成分に対するポリアミド形成性モノマーの割合が95重量%以下であれば、成形品のゴム弾性や柔軟性などのエラストマーとしての機能、性能をより向上させることができる。
ポリエーテルアミドエラストマーは、前述のポリエーテルジアミン化合物、ジカルボン酸化合物およびポリアミド形成性モノマーに加え、必要に応じてその他の成分を重合してもよい。
ポリエーテルアミドエラストマーの硬度(ショアーD)は、15〜70の範囲が好ましい。なお、本発明において、硬度(ショアーD)は、JIS K6253−1997に準拠して測定することができる。
ポリエーテルアミドエラストマーの相対粘度(ηr)は、1.2〜2.0の範囲にあることが好ましい。なお、本発明において、相対粘度は、0.5質量/容量%メタクレゾール溶液を用いて、25℃で測定した値をいう。
ポリエーテルアミドエラストマーの製造方法としては、例えば、前記トリブロックポリエーテルジアミン化合物、ジカルボン酸化合物、ポリアミド形成性モノマーおよび必要に応じてその他の成分を、加圧および/または常圧下で溶融重合し、必要に応じさらに減圧下で溶融重合する方法を挙げることができる。トリブロックポリエーテルジアミン化合物、ジカルボン酸化合物およびポリアミド形成性モノマーを同時に重合してもよいし、ポリアミド形成性モノマーとジカルボン酸化合物を先に重合させ、ついで、トリブロックポリエーテルジアミン化合物を重合してもよい。
ポリエーテルアミドエラストマーの製造において、原料を仕込む方法は、特に制限はないが、トリブロックポリエーテルジアミン化合物とジカルボン酸化合物は、トリブロックポリエーテルジアミン化合物のアミノ基とジカルボン酸のカルボキシ基がほぼ等モルになるように仕込むことが好ましい。
重合温度は、150〜300℃が好ましい。重合温度が150℃以上であれば、重合反応を効率よく進行させることができる。160℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。一方、重合温度が300℃以下であれば、熱分解が抑えられ、良好な物性のポリエーテルアミドエラストマーを得ることができる。280℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。
ポリエーテルアミドエラストマーは、ポリアミド形成性モノマーとしてアミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合または常圧溶融重合とそれに続く減圧溶融重合により製造することができる。一方、ポリアミド形成性モノマーとしてラクタム化合物、またはジアミンとジカルボン酸との反応物またはそれらの塩を用いる場合には、適量の水を共存させ、0.1〜5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合および/または減圧溶融重合により製造することができる。
重合時間は、通常0.5〜30時間である。重合時間が0.5時間以上であれば、重合度を高め、前述の相対粘度を有するポリエーテルアミドエラストマーを容易に得ることができる。一方、重合時間が30時間以下であれば、熱分解による着色などが抑えられ、所望の物性を有するポリエーテルアミドエラストマーを得ることができる。
ポリエーテルアミドエラストマーの製造は、回分式でも、連続式でも実施することができる。また、重合装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置などを挙げることができる。これらを2種以上組みあわせてもよい。
ポリエーテルアミドエラストマーを製造する際に、必要に応じて、ラウリルアミン、ステアリルアミンなどのモノアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどのジアミン、酢酸、安息香酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのジカルボン酸などを添加してもよく、分子量を所望の範囲に調節したり、成形加工時の溶融粘度をより安定化することができる。これらを2種以上添加してもよい。これらの添加量は、得られるポリエーテルアミドエラストマーの特性を阻害しない範囲とすることが好ましい。
ポリエーテルアミドエラストマーを製造する際に、必要に応じて、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物を触媒として添加することができる。これらを2種以上添加してもよい。亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物は、触媒として作用することに加え、耐熱剤としても作用する。これら触媒の添加量は、通常、仕込み原料に対して50〜3000ppmである。
本発明におけるポリエーテルアミドエラストマー(B)の例としては、市販品として、“UBESTA”(登録商標)XPA 9035X1、同9035F1、同9040X1、同9040F1、同9048X1、同9048F1、同9055X1、同9055F1、同9063X1、同9063F1、同9068X1、同9068F1、同9040X2、同9048X2、同9040F2、同9048F2、同9068TF1、同9063TF1、同9055TF1、同9048TF1(いずれも宇部興産(株)製)などを挙げることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、コアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対して、コアシェル型ゴム(A)を75〜90重量部、熱可塑性樹脂(B)を10〜25重量部配合してなる。コアシェル型ゴム(A)の配合量が90重量部を超え、熱可塑性樹脂(B)の配合量が10重量部未満であると、高温における引張永久歪み特性が低下する。コアシェル型ゴム(A)の配合量が85重量部以下、熱可塑性樹脂(B)の配合量が15重量部以上であることが好ましい。一方、コアシェル型ゴム(A)の配合量が75重量部未満であり、熱可塑性樹脂(B)の配合量が25重量部を超えると、後述する電子顕微鏡で観察される相分離構造において、コアシェル型ゴム(A)が連続相を形成することができず、引張永久歪み特性、柔軟性が低下する。コアシェル型ゴム(A)の配合量が80重量部以上、熱可塑性樹脂(B)の配合量が20重量部以下であることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、電子顕微鏡で観察される相分離構造において、コアシェル型ゴム(A)が連続相となる相構造を形成する必要がある。コアシェル型ゴム(A)が連続相となる相構造を形成することで、特異的に高温における引張永久歪み特性や柔軟性が向上し、優れた特性が得られる。コアシェル型ゴム(A)が連続相となる相構造であれば、熱可塑性樹脂(B)は分散相であっても連続相であってもよい。なお、コアシェル型ゴム(A)が連続相となる相構造は、コアシェル型ゴム(A)の配合量を75重量部以上とすることで得ることができる。
熱可塑性エラストマー組成物の相構造は、透過型電子顕微鏡を用いて観察することができる。一般的な成形条件であれば、成形により熱可塑性エラストマー組成物の相構造は変化しないため、本発明においては、例えば、ペレット、フィルム、シート、射出成形品などから、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出したサンプルについて、熱可塑性樹脂(B)の種類に応じて、オスミウム酸、ルテニウム酸、リンタングステン酸で染色し、透過型電子顕微鏡を用いて10000倍に拡大して、切断面を観察することにより、相構造を観察することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、目的を損なわない範囲で必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、粘着付与樹脂、架橋剤、架橋助剤、改質剤、難燃剤、離型剤、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、金属フレーク等の添加剤や補強剤を配合することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、コアシェル型ゴム(A)、熱可塑性樹脂(B)および必要に応じてその他添加剤などを一括混練する方法、いずれかを溶融した後に残る成分を混練する方法などが挙げられる。混練装置としては、バンバリーミキサー、ロール、押出機等の公知の混練装置を採用することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、任意の成形方法により、任意の形状の成形品を成形することが可能である。成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、中空成形、カレンダ成形、圧縮成形、真空成形、発泡成形等の溶融成形方法が挙げられ、特に射出成形が好ましい。成形品の形状としては、例えば、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルムまたはシート状、パイプ状、中空状、箱状、リング状等が挙げられる。フィルム状またはシート状が好ましい。
本発明の成形品は、リサイクルできることが好ましいことから、300℃以下で溶融可能であることが好ましい。300℃以下で溶融可能な熱可塑性樹脂(B)を使用することで、300℃以下で溶融可能な熱可塑性エラストマー組成物および成形品を得ることができる。
本発明の成形品は、自動車用部品、電気・電子部品、精密機器、一般消費財用途の各種成形品等として有用である。これらの中でも、射出成形品、フィルムおよびシート用途として好適に用いられる。フィルムおよびシート用途としては、包装用フィルムおよびシート、自動車部材用フィルムおよびシート、工業用フィルムおよびシート、農業・土木用フィルムおよびシート、医療用フィルムおよびシート、電気・電子機器部材用フィルムおよびシート、生活雑貨用フィルムおよびシート等に好適に使用される。特に、柔軟かつ高温における引張永久歪み特性に優れることから、自動車用部品、電気・電子部品に好適に使用される。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
(1)相構造
各実施例および比較例により得られたペレットからウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出したサンプルについて、分散相のコントラストを明確にするため、オスミウム酸、ルテニウム酸、リンタングステン酸で染色し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡を用いて10000倍に拡大して、切断面の相構造を観察した。一例として、図1に実施例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物の透過型電子顕微鏡写真を示す。図1において、白色部はコアシェル型ゴムを主成分とする相であり、黒色部はポリエステル樹脂を主成分とする相である。図1においては、コアシェル型ゴム(A)が連続相(海相)を形成している。各実施例および比較例において、コアシェル型ゴム(A)が連続相(海相)を形成しているか、分散相(島相)を形成しているかを観察した。
(2)ショアーA硬度
各実施例および比較例により得られたペレットから、住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)を用いて、80mm×80mm×厚さ3mmの角板(フィルムゲート)を成形した。このとき、射出成形機の温度は、ホッパ下から先端に向かって、230℃−235℃−240℃−240℃に設定し、金型温度は30℃、保圧10秒、冷却時間20秒の成形サイクル条件とした。得られた角板を用いて、JISK6253−1997で規定する「デュロメータ硬さ試験(タイプA)」により、ショアーA硬度を測定した。
(3)高温における引張永久歪み
各実施例および比較例により得られたペレットから、住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)を用いて、JIS2号ダンベル片を成形した。このとき、射出成形機の温度は、ホッパ下から先端に向かって、230℃−235℃−240℃−240℃に設定し、金型温度は30℃、保圧10秒、冷却時間20秒の成形サイクル条件とした。得られた試験片を25%伸張(伸張後の標線間距離は25mm、元の標線間距離20mm)し、そのまま、150℃×24時間熱処理を行った。熱処理後、伸張を解除し、23℃恒温室で30分間静置した後の標線間距離(mm)を測定し、下記の数式(I)に従い、引張永久歪み(%)を算出した。
上記式中、TSは引張永久歪み(%)、tは元の標線間距離(mm)、tは伸張した長さ(mm)、tは伸張を解除し、30分間静置後の標線間距離(mm)である。
各実施例および比較例に用いた原料は次のとおりである。
コアシェル型ゴム1:コアシェル型ゴム「“パラロイド”(登録商標)EXL2315」(ロームアンドハース社製)、コア層:アクリル系ゴム
コアシェル型ゴム2:コアシェル型ゴム「“パラロイド”(登録商標)KM−357P」(ロームアンドハース社製)、コア層:アクリル系ゴム
コアシェル型ゴム3:温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水140重量部、パルミチン酸カリウム0.05重量部を仕込み、窒素気流中で撹拌しながら40℃に昇温した。次にブチルアクリレート(以下BAとも言う)8.39重量部、アリルメタクリレート(以下、AMAとも言う)0.11重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.02重量部の混合物を仕込み、その10分後にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.006重量部と硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部を蒸留水5重量部に溶解した混合液、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部を仕込んだ。60分間撹拌後、そこにパルミチン酸カリウム0.08重量部仕込んだ。10分間撹拌後、そこにBA80.44重量部、AMA1.06重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.2重量部からなる単量体の混合物を360分間かけて滴下した。また、前記の単量体混合物の添加とともに、1.0重量部のパルミチン酸カリウムを5重量%濃度の水溶液にしたものを360分間にわたり連続的に追加した。単量体混合物添加終了後、60分間撹拌を続け、架橋ゴム粒子のラテックスを得た。そこに、シェル成分として、メチルメタクリレート(以下、MMAとも言う)9.5重量部、BA0.5重量部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合物を45℃で60分間にわたって連続的に添加した。添加終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を添加し、さらに60分間撹拌を続けて重合を完結させた。単量体成分の重合転化率は99.3%であった。以上により、体積平均一次粒子径が270nm、変動係数0.13でガラス転移温度(以下、Tgとも言う)が−54℃の架橋ゴム粒子90重量%からなるコア層、Tgが92℃のシェル重合体10重量%からなるシェル層からなるコアシェル型ゴム100重量%であり、また、架橋ゴム用単量体中の多官能性単量体が1.3重量%であるコアシェル型ゴムのラテックスを得た。なお、このコアシェル型ゴムの体積平均粒子径は、動的光散乱法(ドップラー散乱光解析)を測定原理とするMICROTRACUPA150(日機装株式会社製)により測定し、同時に測定される粒度分布より計算される体積平均粒子径の標準偏差を、この体積平均粒子径で除したものを変動係数とした。コアシェル型ゴムのラテックスを温度30℃に冷却し、加圧ノズルの一種である旋回流式円錐ノズルでノズル径0.6mmを用い、噴霧圧力3.7kg/cmにて、塔底部液面からの高さ5m、直径60cmの円筒状の装置中に、体積平均液滴径が約200μmの液滴となるように噴霧した。それと同時に、35重量%濃度の塩化カルシウム水溶液を、塩化カルシウム固形分がコアシェル型ゴムの固形分100重量部に対し5〜15重量部となるように二流体ノズルにて空気と混合しながら、液滴径0.1〜10μmで噴霧した。塔内を落下したラテックス液滴は、塔底部にて30℃の1.0重量%濃度の塩化カルシウム水溶液を入れた受槽に投入され、これを回収した。得られた凝固ラテックス粒子水溶液に、5重量%濃度のパルミチン酸カリウム水溶液をパルミチン酸カリウム固形分がコアシェル型ゴム固形分100重量部に対し1.5重量部となるよう添加し、熱処理した後脱水、乾燥することにより得たコアシェル型ゴムの粉末を用いた。
コアシェル型ゴム4:内容積13リットルのオートクレーブを用い、ブタジエン65重量部とアクリロニトリル35重量部とをイオン交換水200重量部中にて、乳化剤、キレート剤、硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムおよびt−ドデシルメルカプタンを用いて、下記の条件で乳化重合を行った。重合温度40℃で6時間、さらに50℃で8時間反応を行い、固形分濃度が33.7%のコアラテックスを得た。重合転化率は98.9%に達した。コアラテックスの一部を取り出して、硫酸マグネシウム水溶液で塩析凝固し、約60℃で真空乾燥してコア成分ゴムを得た。得られたコア成分ゴム0.5gを細断してメチルエチルケトンを100mlを加え、25℃で一昼夜放置した。不溶分を200メッシュ金網で瀘過後、約60℃で真空乾燥してゲル成分の重量を秤量した。ゲル量は95重量%を示した。内容積2リットルのガラス製重合反応器内で、コアラテックス127.2重量部の存在下にブチルアクリレート97重量部とグリシジルメタアクリレート3重量部とをイオン交換水200重量部中にて、下記の条件で乳化重合を行った。予め、重合反応器にイオン交換水160重量部、キレート剤およびコアラテックス130重量部を仕込み、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を除去した。次にイオン交換水に乳化剤、キレート剤、硫酸ナトリウムを溶解し、撹拌しながらモノマー100重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド(PMHP)0.03重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.12重量部を添加してモノマーエマルジョンを作製した。また、イオン交換水にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)とFrostFeを溶解して活性水溶液を作製した。重合反応器にモノマーエマルジョンの10重量%を添加後、撹拌しながらPMHP0.005重量部と活性水溶液の10重量%を添加して反応させた。1時間後から、残りのモノマーエマルジョンを3時間かけて連続添加した。また、活性水溶液は4時間かけて連続添加した。添加終了後、さらに反応を3時間行い、コアシェル構造ラテックスを得た。重合温度は10〜15℃で推移させた。重合転化率は97.8%であった。コアシェル構造ラテックスを前記と同様に凝固乾燥して得たコアシェル型ゴムを用いた。
ポリエステル樹脂:ポリブチレンテレフタレート樹脂「“トレコン”(登録商標)1100S」(東レ(株)製)、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定した固有粘度[η]0.85dl/g、融点225℃
ポリエステルエラストマー1:ポリエステル系熱可塑性エラストマー「“Hytrel”(登録商標)7247」(東レ・デュポン(株)製)、融点216℃、ショアーD硬度72D
ポリエステルエラストマー2:ポリエステル系熱可塑性エラストマー「“Hytrel”(登録商標)5557」(東レ・デュポン(株)製)、融点208℃、ショアーD硬度55D
ポリアミド樹脂:ポリアミド6樹脂「“アミラン”(登録商標)CM1010」(東レ(株)製)、98%硫酸1g/dlにおける相対粘度2.8、融点225℃。
ポリエーテルアミドエラストマー:ポリエーテルアミドエラストマー「“UBESTA”(登録商標)9068X1」(宇部興産(株)製)、融点176℃
架橋剤:ブタンテトラカルボン酸
[実施例1〜10、比較例1〜4、6〜7]
表1〜2記載の原料を、シリンダー温度を240℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて前記方法により評価した結果を表1〜2に示した。
[比較例5]
表2記載のコアシェル型ゴム4とポリエステルエラストマー2を、シリンダー温度を240℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを真空乾燥機を用いて80℃、15時間乾燥した後に、架橋剤と、シリンダー温度を240℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数150rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給して溶融混練し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後、ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。得られたペレットを用いて前記方法により評価した結果を表2に示した。
以上の結果から、コアシェル型ゴム(A)と熱可塑性樹脂(B)との重量比(A)/(B)を90/10〜75/25とすることで、電子顕微鏡で観察される相分離構造においてコアシェル型ゴムが連続相となる相構造を形成する熱可塑性エラストマー組成物が得られ、これらの熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形品は、ショアーA硬度が90A以下かつ引張永久歪み(150℃×24時間熱処理後)が80%以下となり、柔軟性、高温における引張永久歪み特性に優れることがわかる。かかる熱可塑性エラストマー組成物は架橋を用いないことから、容易に成形可能である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形品は、柔軟性、高温における引張永久歪み特性に優れ、さらに容易に製造可能でリサイクル性に優れる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、これらの特性を活かして各種成形品に広く用いることができ、特に、自動車外装部品用途や電気・電子部品用途として有用に用いることができる。

Claims (7)

  1. 少なくともコアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)を配合してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、コアシェル型ゴム(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対して、コアシェル型ゴム(A)を75〜90重量部、熱可塑性樹脂(B)を10〜25重量部配合してなり、かつ、電子顕微鏡で観察される相分離構造において、コアシェル型ゴム(A)が連続相となる相構造を形成することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 前記コアシェル型ゴム(A)のコア層が、アクリルゴムおよび/またはシリコーンゴムを含むゴム層であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂(B)がポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリエーテルアミドエラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形品。
  5. 300℃以下で溶融可能である請求項4に記載の成形品。
  6. 射出成形品、フィルムまたはシートである請求項4または5のいずれか1項に記載の成形品。
  7. 自動車用部品または電気・電子部品である請求項4〜6のいずれか1項に記載の成形品。
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