駆動力が途切れず、変速ショックや加速の遅れを抑制し、重量軽減を図ることができ、且つ構造を簡単にすることを可能にするという目的を、噛合いクラッチが、変速操作部の動作により変速下段及び変速上段のクラッチ・リングが同時噛合いした時に変速下段又は変速上段のクラッチ・リングに第2の噛み合い位置で噛合い解除方向の軸力を生じさせるガイド面を備えことにより実現した。
本発明実施例1は、変速操作部の動作により変速下段及び変速上段のクラッチ・リングが同時噛合いした時に変速下段又は変速上段のクラッチ・リングに第2の噛み合い位置で噛合い解除方向の軸力を生じさせるガイド面を噛合いクラッチが備えたことを特徴とするが、このガイド面を備えた噛合いクラッチを採用した構造の前に、理解を容易とする目的で、図1〜図24の参考例により本発明実施例1の前提となるトランスミッションの構造、作用を全体的に説明し、その後、図25〜図28を用いて実施例1の要部を関連付けて説明する。
図1は、本発明実施例1の参考例に係るトランスミッションをフロント・デファレンシャル装置と共に示す概略断面図、図2は、同トランスミッションの要部拡大断面図である。
図1、図2のように、トランスミッション1は、駆動力伝達軸として中実のメイン・シャフト3及びカウンター・シャフト5、アイドラー・シャフト7を備えている。これらメイン・シャフト3及びカウンター・シャフト5は、軸受9,11,13,15等によりミッションケース17に回転自在に支持されている。アイドラー・シャフト7は、ミッションケース17側に固定されている。
メイン・シャフト3とカウンター・シャフト5とには、複数段の変速ギヤとして1速ギヤ19、2速ギヤ21、3速ギヤ23、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29が相対回転可能に支持されている。
カウンター・シャフト5上の1速ギヤ19、3速ギヤ23は、メイン・シャフト3の出力ギヤ31,33に噛合い、メイン・シャフト3上の2速ギヤ21、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29は、カウンター・シャフト5の入力ギヤ35,37,39,41にそれぞれ噛合っている。
アイドラー・シャフト7上のリバース・アイドラー43は、軸方向移動によりメイン・シャフト3上の出力ギヤ44及びカウンター・シャフト5上の入力ギヤ45に噛合い可能に配置されている。
1速ギヤ19、3速ギヤ23は、第1の噛合いクラッチ47によりカウンター・シャフト5に選択的に結合され、2速ギヤ21、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29は、第2、第3の噛合いクラッチ49,51によりメイン・シャフト3に選択的に結合される。この選択的な結合によりメイン・シャフト3からカウンター・シャフト5に変速出力可能となっている。
第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51は、複数段の変速ギヤの変速上段への変速を、複数の第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51を変更して行なうようになっている。
すなわち、複数段の変速ギヤである1速ギヤ19、2速ギヤ21、3速ギヤ23、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29は、第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51を変更して変速を行うように配列されている。
例えば1速ギヤ19から2速ギヤ21への変速は、複数の第1、第2の噛合いクラッチ47,49を変更して行なう。
第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51は、基本的には同一構造であり、クラッチ・カム・リング53,55,57、クラッチ・リング59,61,63、クラッチ・リング59,61,63及び1速ギヤ19〜6速ギヤ29の各対向面に形成されたクラッチ歯47a,47b,49a,49b,51a,51b、19a,21a,23a,25a,27a,29aを備えている。
したがって、クラッチ・リング59,61,63は、メイン・シャフト3、カウンター・シャフト5の軸方向へ噛合い移動してクラッチ歯47a,47b,49a,49b,51a,51b、19a,21a,23a,25a,27a,29aの選択的な噛合いにより変速出力のための結合を行わせる。
第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51のクラッチ・カム・リング53,55,57には、略V字状のカム溝65,67,69が形成されている。第1の噛合いクラッチ47のクラッチ・カム・リング53は、カウンター・シャフト5にスプライン嵌合などにより結合され、一体回転可能となっている。第2,第3の噛合いクラッチ49,51のクラッチ・カム・リング55,57は、メイン・シャフト3にスプライン嵌合などにより結合され、一体回転可能となっている。
第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51のクラッチ・リング59,61,63は、クラッチ・カム・リング53,55,57の外周に嵌合配置され、軸方向へ移動可能となっている。このクラッチ・リング61,63は、変速ギヤである2速ギヤ21、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29を前記駆動力伝達軸であるメイン・シャフト3に選択的に結合して変速出力するために複数備えら、クラッチ・リング59は、変速ギヤである1速ギヤ19、3速ギヤ23を前記駆動力伝達軸であるカウンター・シャフト5に選択的に結合して変速出力するために複数備えられている。クラッチ・リング59,61,63の内周には、突部として断面円形のカム突部71,73,75が形成され、カム溝65,67,69に嵌合しガイドされるようになっている。
クラッチ・リング59及びリバース・アイドラー43には、後述するシフト・フォーク77,79が嵌合する周凹条81,83が形成されている。クラッチ・リング59の外周には、さらに前記入力ギヤ45が形成されている。クラッチ・リング61,63には、後述するシフト・フォーク85,87が嵌合する周凸条89,91が形成されている。クラッチ・リング59,61,63の両サイドには、1速ギヤ19、2速ギヤ21、3速ギヤ23、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29を選択して各両サイドに2速以上はなして配置し、それぞれ両サイドの変速ギヤに選択的な噛み合いが可能となっている。つまり、クラッチ・リング59の両サイドには1速ギヤ19、3速ギヤ23が配置され、クラッチ・リング61の両サイドには2速ギヤ21、5速ギヤ27が配置され、クラッチ・リング63の両サイドには4速ギヤ25、6速ギヤ29が配置されている。
第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51は、変速操作部93により選択的に操作されるようになっている。リバース・アイドラー43も、変速操作部93により操作されるようになっている。
変速操作部93は、ミッションケース17内に備えられ、複数のシフト・フォーク77,79,85,87と複数のシフト・ロッド103,105,107,109とシフト・アーム111,113,115,117とシフト・ドラム119とを備えている。
シフト・フォーク77,79,85,87は、第1〜第3の各噛合いクラッチ47,49,51毎及びリバース・アイドラー43に備えられ、各噛合いクラッチ47,49,51、リバース・アイドラー43を連動させるものである。
シフト・ロッド103,105,107,109は、各シフト・フォーク77,79,85,87を支持している。
シフト・アーム111,113,115,117は、各シフト・ロッド103,105,107,109に結合されている。
シフト・ドラム119は、シフト溝120,121,123,125を備え、このシフト溝120,121,123,125に各シフト・アーム111,113,115,117の先端突部を係合させている。
シフト・フォーク85,87側とミッションケース17側との間には、凹凸部127,129及びチェック部131,133が設けられている。シフト・フォーク99側とミッションケース17側との間にも、同一構造の、凹凸部及びチェック部が設けられているが、図示は省略する。
凹凸部127,129は、シフト・フォーク95,97に形成され、山形の位置決め凹部127a,127b,127c、129a,129b,129cを備えている。位置決め凹部127a,129aは、ニュートラル位置に対応し、位置決め凹部127b,127c、129b,129cは、コースト噛み合い位置に対応している。
チェック部131,133は、ミッションケース17側に支持され、チェック・ボール131a,133aをチェック・スプリング131b,133bにより付勢し、凹凸部127,129に弾性力を持って係合させている。この係合により第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51をニュートラル位置とコースト噛合い位置とへ位置決めることができる。
トランスミッション1の出力は、カウンター・シャフト5の出力ギヤ135に噛合うフロント・デファレンシャル装置137から行う。
すなわち、シフト・レバーのマニュアル操作信号に基づき、或いはアクセル・ペダルの操作によるアクセル開度及び車速信号等に基づき、シフト・モータ(図示せず)によりシフト・ドラム119が回転駆動されると、シフト溝120,121,123,125のガイドにより何れかのシフト・アーム111,113,115,117を介してシフト・ロッド103,105,107,109が軸方向へ選択駆動される。
このシフト・ロッド103,105,107,109の選択駆動によりシフト・フォーク77,79,85,87の何れかを介して第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51、或いはリバース・アイドラー43が選択操作される。この選択操作により、1速ギヤ19〜6速ギヤ29、リバース・アイドラー43が選択的に動作し、シフト・アップ、シフト・ダウン、リバースのチェンジを行わせることができる。
[ガイド部]
前記変速操作部93及び第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51に、前記変速操作部93の動作により変速下段と変速上段の噛合いクラッチが同時噛合いした時、エンジンの出力トルクに係らず、機構上必然的に発生する内部循環トルクにより変速上段のクラッチ・リングにはドライブ方向のトルクが働いてより深く噛み合う方向の軸力を生じさせ、変速下段のクラッチ・リングにはコースティング・トルクによりクラッチをニュートラル方向へ移動させて噛合いを解除する方向の軸力を各別に生じさせるガイド部Gを各段に設けている。
ガイド部Gは、前記のようにカム溝65,67,69及びカム突部71,73,75を第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51に備えている。カム溝65,67,69及びカム突部71,73,75により、第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51のコースト噛合い位置で駆動トルク及びコースティング・トルクを前記1速ギヤ19、2速ギヤ21、3速ギヤ23、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29に伝達し、コースト噛合い位置よりも噛合い離脱側へ移動した離脱待機の位置でのみコースティング方向トルクにより前記噛合いをニュートラル方向へガイドすることができる。
また、ガイド部Gは、移動力伝達機構Mを変速操作部93に備え、後述する駆動斜面Fを第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51の正の駆動トルク伝達側のみに備えている。
駆動斜面Fは、ドライブ・トルクにより第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51のクラッチ・リング59,61,63を離脱待機の位置へ移動させる移動力を発生させることができる。尚斜面Fは歯車側のクラッチ歯に設けても良く同様の機能を得ることが出来る。
クラッチ・リング59,61,63の深い噛合い状態は、第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51の第1の噛合い位置での噛合い状態となる。これに対し、前記離脱待機の位置は、第1の噛合い位置よりも噛合いを浅くする第2の噛み合い位置で第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51が噛合う状態である。
すなわち、本実施例では、クラッチ・リング59,61,63を、第2の噛み合い位置で第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51が噛合う状態にする機構は、駆動斜面Fが構成する。
駆動斜面Fは、後述のように、クラッチ歯47a,47b,49a,49b,51a,51b及びクラッチ歯19a,21a,23a,25a,27a,29aの一方の回転方向一側の歯元に形成され駆動力伝達時にクラッチ歯47a,47b,49a,49b,51a,51b、クラッチ歯19a,21a,23a,25a,27a,29aの他方の先端部をガイドしてクラッチ・リング59,61,63を第1の噛合い位置から第2の噛み合い位置へ移動させるものである。
図3、図4は、カム溝及びカム突部を示す展開図、図5、図6は、クラッチ・カム・リング及びクラッチ・リングの関係を示す斜視図、図7は、クラッチ・カム・リングを示す斜視図、図8は、クラッチ・リングを示す斜視図である。
図3〜図7のように、カム溝65,67,69は、クラッチ・カム・リング53,55,57の外周面に周方向等間隔で複数形成されている。このカム溝65,67,69は、ニュートラルに対応する部分を含めて軸方向の中央部にV形状部65a,67a,69aが形成され、その両側に平坦部65b,67b,69bが形成されたものである。
このため、噛み合いクラッチ47,49,51が非待機位置に位置する場合、該平坦部65b,67b,69bにカム突部71,73,75が位置するため、コースティング・トルクが作用しても、ニュートラル方向へのスラストは生ぜず、噛み合いを保つ。
カム突部71,73,75は、クラッチ・リング59,61,63の内周に周方向一定間隔で径方向に突設され、前記カム溝65,67,69にそれぞれ嵌入し、ガイドされるようになっている。
したがって、第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51のコースト噛合い位置では、カム突部71,73,75が平坦部65b,67b,69bに位置して駆動トルク及びコースティング・トルクを前記1速ギヤ19、2速ギヤ21、3速ギヤ23、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29に伝達することができる。
第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51の離脱待機の位置では、カム突部71,73,75がV形状部65a,67a,69aに位置するから、図4のようにコースティング方向トルクにより噛合いをニュートラル方向へガイドすることができる。
図9、図10は、シフト・フォーク、チェック部、及び噛合いクラッチとの関係を示す概略図、図11は、クラッチ・リングの要部展開図、図12は、噛合いクラッチの噛合いを示し、(a)は、コースト噛合い位置、(b)は、待機噛合い位置を示す要部展開図である。図9〜図12は、第3の噛合いクラッチについて説明する。第1、第2の噛合いクラッチについても同様であり、重複説明は省略する。
図1、図9〜図12のように、第3の噛合いクラッチ51は、クラッチ・リング63のクラッチ歯51a、51bと4速ギヤ25、6速ギヤ29のクラッチ歯25a、29aとが、周方向の配置において、歯幅よりも大きな相互間隔を有している。各クラッチ歯51a、51b、25a、29aの周方向噛合い面は、歯の根元が若干細くなるように傾斜形成されている。
クラッチ・リング63のクラッチ歯51a、51bの根元には、駆動トルクを受ける噛合い面に前記駆動斜面Fがそれぞれ形成されている。
したがって、第3の噛合いクラッチ51を、例えば6速ギヤ29に噛合い結合させ、駆動トルクが働くと、図12(b)のように駆動斜面Fによってクラッチ・リング63が移動する。このとき図10に示すシフト・フォーク87の凹部129bがボール133aを押しのけ、スプリング133bは加圧されエネルギーを蓄える。この移動を許すのはシフト・アーム117のガイドに対しシフト溝125に適宜軸方向の遊びを設けているからである。この移動によりクラッチ・リング63は、図9、図12(a)のコースト噛合い位置よりも噛合い離脱側へ移動した図10、図12(b)の離脱待機の位置となる。
次に駆動トルクがコースト方向に変化すると、歯は反対側に押し付けられ、図9、図12に示す斜面Fから離脱する。このため上記スプリング133bの弾性エネルギーにより凹部129b、ボール133aの作用で図9、図12(a)に示す深い噛み合い状態となる。この状態においては、図2に示すカム突部75がカム溝69の軸方向端部側の平坦部69bに位置するため、クラッチ・リング63にスラストは発生しない。
このように、本実施例では、シフト・フォーク87の凹部129b、ボール133a、スプリング133bが、変速下段のクラッチ・リング(59、61、63)のみが噛合いを行った駆動力伝達時に該クラッチ・リング(59、61、63)を第2の噛み合い位置から第1の噛合い位置へ復帰させるための弾性エネルギーを蓄積させる機構を構成し、この機構を変速操作部93側に備えた構成となる。
クラッチ・リング61についてもシフト・フォーク85の凹部127b、ボール131a、スプリング131bが、同様の弾性エネルギーを蓄積させる機構を構成する。
すなわち、変速操作部93側に、変速下段又は変速上段のクラッチ・リング(59、61、63)の一方のみが噛合いを行った駆動力伝達時にクラッチ・リング(59、61、63)に対して弾性エネルギーを蓄積し、コースティング・トルク時にクラッチ・リング(59、61、63)を弾性エネルギーにより第2の噛み合い位置から第1の噛合い位置へ復帰させるための機構を備えた構成となる。
一方、変速上段への変速が開始された場合、図1に示すシフト・ドラム119が回転しているので変速下段のシフト溝125の形状によりシフト・アーム117のガイドに対する上記遊びをなくし、シフト・ロッド109、シフト・フォーク87を介してクラッチ・リング63の軸方向の動きが規制され、コースト・トルクが作用しも離脱待機位置を保持する。このときカム突部75はカム溝69の平坦部69bから斜面部へ移動しているため上段ギヤの噛合いにより、下段ギヤにコースティング・トルクが負荷されると、カム溝69の斜面によりニュートラル方向へ移動するスラスト分力を得ることができる。具体的な変速アクションについては後記する。
したがって、シフト・ドラム119、シフト溝125(120、123)、シフト・アーム117(111、115)、シフト・フォーク87(77、85)、クラッチ・リング63(59、61)の連携構成により、変速下段及び変速上段のクラッチ・リング(59、61、63)が同時噛合いしたコースティング・トルク時に、クラッチ・リング(59、61、63)を第2の噛み合い位置から第1の噛合い位置へ復帰させるためのエネルギーに抗して第2の噛み合い位置を維持させる機構を備えた構成となる。
[シフト・アップ4速→5速]
図13は、シフト・アップ時トランスミッションの4速ギヤ噛み合いを示す概略図、図14は、シフト・アップ時トランスミッションの4速クラッチ・リングの離脱待機
の位置を示す概略図、図15は、5速に変速終了時の概略図、図16は、シフト・ダウン時、4速5速がニュートラルであることを示す概略図である。
ここでは、説明を簡単にするため、4速(変速下段)から5速(変速上段)へのシフト・アップのみ説明する。他の段のシフト・アップも同様である。
図13〜図15にシフト・アップ時の動き、図16にシフト・ダウン完了を示す。図13の4速のクラッチ歯25aにはドライブ・トルクが付加されているため前記したようにクラッチ・リング63は斜面Fの作用により、図14のように離脱待機位置となる。つまり4速位置にあるクラッチ・リング63のカム突部75はカム溝69の斜面に位置することとなる。このときシフト・ドラム119の回転により5速へのシフト・アップ操作が行われると、シフト溝123が働き、シフト・アーム115、シフト・ロッド107、シフト・フォーク85を介してクラッチ・リング61が操作される。この操作によりクラッチ・リング61が5速ギヤ27に噛み合い、4速ギヤ25及び5速ギヤ27が同時噛合いとなる。
このときエンジン出力トルクの如何に係らず同時噛み合いによる機構的必然による内部循環トルクにより4速側にはコースティング・トルク、5速側にはドライブ・トルクが発生する。このトルクがカム溝69、67の斜面の作用で4速位置にあるクラッチ・リング63には図右側ニュートラル方向、5速位置のクラッチ・リング61には図右側噛み合いを深める方向のスラストが発生し、それぞれのクラッチ・リング63、61を所定の位置に移動し、図15に示すように5速へのシフト・アップを終了させる。
本発明実施例の特徴は、クラッチ・リング59、61、63が軸方向へ移動するとき、カム溝65、67、69の斜面の作用で、メイン・シャフト3またはカウンター・シャフト5と同回転するカム・リング53、55、57に対して相対的に変速下段側のクラッチ・リング59、61、63は回転が遅れ、変速上段側のクラッチ・リング59、61、63は回転が先行する。このような状況で回転する変速下段と変速上段との歯車のクラッチ歯19a、21a、23a、25a、27a、29aとの相対速度をなくしダブル噛み合いを許容すると共に、シンクロ作用を発生し変速ショックを緩和する。
[エンジンブレーキが働いているときのシフト・アップ]
エンジンブレーキが作用しているときシフト・アップすると、4速位置にあるクラッチ・リング63は待機位置に位置しない状態で変速が行われる。このときシフト・アップ操作によりクラッチ・リング61が5速ギヤ27に噛み合い、4速に更なるコースティング・トルクが働くが、4速位置のクラッチ・リング63は離脱待機位置に無いため、ニュートラル方向へのスラスト分力は発生しない。
しかし、エンジンブレーキ時のコースティング・トルクは加速時のトルクに比べ絶対値が小さく、噛み合いクラッチに働く摩擦力は小さい。5速位置のクラッチ・リング61にはカム溝67の斜面作用で強力なスラスト分力が発生する。
このスラストが5速位置のシフト・フォーク85、シフト・ロッド107、シフト・アーム115、シフト・ドラム119のシフト溝123及びシフト溝125を経て、4速位置のシフト・ロッド109、シフト・フォーク87へと伝達され、4速位置のクラッチ・リング63を図右側のニュートラル方向の離脱待機位置側に移動する。従って、このような場合でもシフト・アップへの支障は生じない。シフト溝123及びシフト溝125は、このような連携動作を行わせるように溝が切られており、シフト・アーム115側からのスラスト力でシフト溝123を介しシフト・ドラム119が僅かに回転し、シフト溝125を介してシフト・アーム117にスラスト力が伝達されることになる。
したがって、クラッチ・リング59、61、63を、第2の噛み合い位置で第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51が噛合う状態にする機構は、変速下段及び変速上段の各クラッチ・リング59、61、63のシフト・フォーク77、85、87、シフト・ロッド103、107、109、シフト・ドラム119の各シフト溝120、123、125、及びシフト・アーム111、115、117と前記シフト・ドラム119とを備えた構成となる。
またドライブ・トルクが働いている場合であっても、斜面Fがないとクラッチ・リング63は離脱待機位置に位置しない。しかし、この場合であっても、上記5速位置のシフト機構からの力の伝達により、強制的にニュートラル方向へクラッチ・リング63を移動できる。
このため斜面Fは本発明に必須のものではなく、変速をより円滑にするためのものである。
また、本実施例はシフト・ドラム119のシフト溝120、121、123、125(円筒カム)によりシフト操作するが、平面カム、または各シフト・ロッドを制御された油圧や電動モーター空気圧等で駆動しても本発明は成立する。
[シフト・ダウン 5速→4速]
減速時は加速時のような、シームレス・シフトの必要性は無い。減速は主にブレーキにより受け持たれ、エンジンからの出力は基本的に関係しないから、エンジンからの駆動トルクやエンジンブレーキトルクが途切れても問題ないためである。このため通常のマニアルトランスミッションと同じように、まず変速上段の5速位置にあるクラッチ・リング61を図16に示すニュートラルに移動させ動力を遮断し、次にクラッチ・リング63を4速ギヤ25に噛み合わせることでシフト・ダウンする。
以上で、図13の噛み合い状態となる。
このように本実施例はシフト・アップとシフト・ダウンで、噛み合い移行の形態が異なることを特徴とする。これは、変速上段と変速下段のシフト・リング61、63が独立しているためと円筒カム119のシフト溝125、123の連携形状による。
以下このようにシフト・アップとシフト・ダウンとで変速形態を異ならせる機構について図17により説明する。図17は、シフト・アップ、シフト・ダウンのときのドラム溝の作動説明である。
[シフト・アップ 4速→5速]
図13に示す4速時、シフト・アーム117および5速位置のシフト・アーム115は、図17に示す位置115aおよび位置117aにある。シフト・ドラム119がシフト・アップのため図手前側へ回転すると、シフト溝123の斜面123aによりシフト・アーム115が位置115b1から、位置115b2、115cへと移動する。このときダブル噛み合いが生じシフト・アーム117は、位置117b1からカム・リング57のカム溝69の斜面の働きで位置117b2に自動的に移動しニュートラルとなる。更にシフト・ドラム119の回転で位置117C に移行する。以上で4速から5速へのシフト・アップは終了する。
[シフト・ダウン 5速→4速]
5速でクラッチが噛み合っているとき、シフト・フォーク87はチェック部133により図1に示すようにニュートラル位置に保持されている。シフト・ドラム119が回転し、シフト溝125がシフト・アーム117に対し、図17の位置117b2にあって軸方向の遊びがあっても、上記チェック部133によりシフト・アーム117は位置117b2においてニュートラルに保持される。
一方、シフト・アーム115は位置115cから、位置115b1に移行し4速、5速とも図16に示すようにニュートラルとなる。
更にシフト・ドラム119が回転するとシフト・フォーク87は、位置117b2から位置117aに移行しクラッチ・リング63が4速ギヤ25のクラッチ歯25aと噛み合い、シフト・ダウンにより図13の状態で完了する。
トランスミッションは上記した変速原理と同一であるが、ガイド部Gのカム溝の斜面の向き及び斜面Fの位置を、クラッチ歯に対し逆位置とし、変速上段と変速下段が同時噛み合いしたとき、ガイド部Gの作用により、変速下段側はクラッチ・リングがより深く噛み合う方向に、変速上段側はニュートラル方向へガイドされるようにすることもできる。
これは、建機、農機、大型トラック等が低速時の、泥濘地走行または坂道登坂等、速度エネルギーが小さく走行抵抗が大きい場合、より大きな駆動力を得るため、シフト・ダウンが必要となる。このような場面で、通常の噛み合い変速機によりシフト・ダウンする場合、駆動力が短時間であっても途切れると、車両は停止してしまい、登坂が困難となる等の問題が発生する。当発明によれば、駆動力が途切れず変速可能となるため、容易にシフト・ダウンが可能で走行を維持できる。
前記トランスミッション1のガイド部Gによる変速ガイドは、変速操作部93のシフト・アップ動作側のみ、シフト・ダウン動作側のみの何れかに構成することもできる。この場合、他方側のシフト・ダウン動作側又はシフト・アップ動作側は、クラッチのオン、オフ及びシンクロ・メッシュ機構を介した変速構成とすることも可能である。
[弾性部及び減衰部]
図18〜図20は、他の参考例に係り、図18は、トランスミッションをフロント・デファレンシャル装置と共に示す概略断面図、図19は、結合部周辺の拡大断面図、図20(A)は、結合伝達部のアウター・プレートの拡大正面図、(B)は、結合伝達部のインナー・プレートの拡大正面図である。この実施例1のトランスミッションの全体的な基本構成は、図1〜図17の参考例と同一であり、図18〜図20では、図1〜図17と同一構成部分に同符号を付し、特徴部分についてさらに説明する。
図18、図19のように、この参考例のトランスミッション1は、上記同様にメイン・シャフト3が駆動力伝達軸として駆動入力を行う構成である。このメイン・シャフト3は、中空のアウター・シャフト201と、弾性部としてのトーション・バー202とを備えている。トーション・バー202は、ガイド部Gが機能する変速時に発生する変速ショックをねじり弾性力により吸収するものである。
中空のアウター・シャフト201は、変速ギヤ21、25、27、29及びクラッチ・リング61、63を外周部に配置し、軸芯部に貫通孔205が形成されている。中空のアウター・シャフト201の両端には、貫通孔205に対してニードル・ベアリング207a、207bが設けられている。中空のアウター・シャフト201の一端は、軸受9外に突出し、スプライン201aが形成されている。
トーション・バー202は、トーション部203の一端部に入力結合部209を備え、他端部に減衰部としての摩擦結合伝達部211を結合する結合軸部213が形成されている。摩擦結合伝達部211は、弾性部であるトーション・バー202の振動を減衰し、またトルク・リミッター的機能も奏する。
トーション部203は、ねじり反力を発生する部分であり、貫通孔205に対し僅かに小径に形成され、相対回転可能に嵌合配置されている。このトーション部203は、貫通孔205内で両端部がニードル・ベアリング207a、207bにより相対回転自在に支持されている。
入力結合部209は、トーション部203よりも大径に形成され、この入力結合部209は、基端はアウター・シャフト201の外径と同一に形成され、アウター・シャフト201に端面相互の突き合わせが行われている。入力結合部209の先端側は若干小径に形成され、この先端側に入力結合用のスプライン209aが形成されている。入力結合部209の基端とスプライン209aとの間は、テーパー形状等に形成されている。
結合軸部213は、アウター・シャフト201の端部から突出し、スプライン213aとネジ部213bとが形成されている。
図19、図20のように、摩擦結合伝達部211は、ケース215と押圧プレート217と多板のアウター・プレート219及びインナー・プレート221を備え、ナット223により締結されている。
ケース215は、側壁及び周壁の内周にそれぞれインナー・スプライン215a、215bが形成されている。側壁のインナー・スプライン215aは、アウター・シャフト201のスプライン201aに嵌合している。周壁のインナー・スプライン215bには、アウター・プレート219の外周突起219aが係合し、結合軸部213のスプライン213aにインナー・プレート221の内周突起221aが係合している。
アウター・プレート219及びインナー・プレート221は交互に配置され、外端のインナー・プレート221に対面して押圧プレート217が配置されている。押圧プレート217の内周には、インナー・スプライン217aが形成され、結合軸部213のスプライン213aに係合している。
押圧プレート217の軸方向での外面は、結合軸部213のネジ部213bに螺合するナット223により締結されている。アウター・プレート219及びインナー・プレート221間の摩擦伝達力はナット223の締結力で調整することができる。
なお、摩擦結合伝達部211は、前記機能を奏するものであればその機構は特に限定されず、磁性流体を用いたクラッチ、シリコーン・オイルとアウター・プレート及びインナー・プレートを用いたカップリング、電磁石と多板のパイロット・クラッチ及びパイロット・クラッチの締結力で動作するカムを介して締結されるメイン・クラッチとでなる電磁クラッチ等を適宜採用することができる。
かかる構造により、エンジンからトーション・バー202の入力結合部209に駆動入力があると、トーション部203、結合軸部213、摩擦結合伝達部211を介してアウター・シャフト201に入力が行われ、上記トランスミッション1の作用効果を奏することができる。
トランスミッション1は、変速ショックを著しく低減したものであるが、僅かに残る変速ショックも、トーション・バー202のねじり弾性力で吸収することができる。
さらに述べると、上記変速時に変速ショックがアウター・シャフト201に入力されるとスプライン201a及びインナー・スプライン215aを介してケース215に入力される。
ケース215への入力は、インナー・スプライン215bからアウター・プレート219に伝達され、アウター・プレート219及びインナー・プレート221間の摩擦伝達力を介してスプライン213aから結合軸部213に入力される。
結合軸部213への入力は、エンジンからの入力を受ける入力結合部209との間でトーション部203が受け、トーション部203の捻じれ弾性力で吸収される。
さらに、トーション部203の捻じれが戻り振動するようなときは、摩擦結合伝達部211がダンピング機能を奏し、振動を減衰することができる。
メイン・シャフト3に対し急激な駆動入力があったときは、アウター・プレート219及びインナー・プレート221間が滑ることで摩擦結合伝達部211がトルク・リミッター的機能を発揮することができる。
これらのため、変速音の発生を低減し、機能部品の保護を図ることができる。
なお、トーション・バー202のトーション部203の径の変更によりねじり弾性特性を容易に変更することができる。
ナット223によるアウター・プレート219及びインナー・プレート221間の締結力調整により摩擦結合伝達部211の減衰特性、トルク・リミッター的特性を外部調整により変更することができる。
前記トーション・バー202のトーション部203をマシーンドスプリング(登録商標「三木プーリ株式会社」)に代えることもできる。マシーンドスプリングは、切削加工により螺旋切り込みを入れたコイルスプリング状のものであり、一定以上のねじりトルクでの巻締りによりねじりトルクを確定することができ、確実なトルク伝達を行わせることができる。
図21は、さらに他の参考例に係り、トランスミッションをフロント・デファレンシャル装置と共に示す概略断面図である。なお、基本的な構成は図1〜図20の参考例と同様であり、同一構成部分には同符号、対応する構成部分には、同符号にAを付して説明し、重複した説明は省略する。
本実施例のトランスミッション1Aは、入力結合部209とアウター・シャフト201Aとの間に、減衰部としての摩擦結合伝達部211Aを設けたものである。すなわち、入力結合部209とアウター・シャフト201Aとが突き合う端部側外周に双方に亘るスプラインが形成され、このスプラインに摩擦結合伝達部211Aを係合させている。
つまり、摩擦結合伝達部211Aのケース215Aは、アウター・シャフト201Aのスプラインに係合し、アウター・プレートがケース215Aにスプライン係合している。摩擦結合伝達部211Aのインナー・プレートは、入力結合部209のスプラインに係合し、ナット223Aが入力結合部209の外周に螺合又は圧入固定されている
アウター・シャフト201Aには、軸受9外で結合部材210がスプライン嵌合し、この結合部材210は、トーション・バー202Aの結合軸部213Aにナット212により締結固定されている。
したがって、本参考例では、トーション・バー202Aからアウター・シャフト201Aに結合部材210を介してトルク伝達を行うことができ、変速ショックをトーション・バー202Aのねじり弾性により吸収することができる。また、変速ショック吸収時のアウター・シャフト201Aに対するトーション・バー202Aのねじり振動を、摩擦結合伝達部211Aにより的確に減衰することができる。
その他、図1〜図20の参考例と同様な作用効果を奏することができる。
図22、図23は、さらに他の参考例に係り、図22は、トランスミッションをフロント・デファレンシャル装置と共に示す概略断面図、図23(A)は、図22のXXIIIA−XXIIIA矢視におけるプレーシャー・リングの係合を示す概略断面図、(B)は、センター・リングの断面図、(C)は、センター・リングの正面図、(D)は、プレッシャー・リングの正面図、(E)は、プレッシャー・リングの断面図である。なお、基本的な構成は図1〜図20の参考例と同様であり、同一構成部分には同符号、対応する構成部分には、同符号にBを付して説明し、重複した説明は省略する。
本参考例のトランスミッション1Bは、図22、図23のように、デファレンシャル装置としてのフロント・デファレンシャル装置137Bに弾性部としての弾性部材である皿ばね225と減衰部としての減衰カム機構227とを設けたものである。
具体的には、フロント・デファレンシャル装置137Bは、デフ・ケース229内にピニオン・ギヤ231と一対のサイド・ギヤ233とを備える他、センター・リング235、プレッシャー・リング237、前記皿ばね225、減衰カム機構227を備えている。
センター・リング235は、ピニオン・シャフト238を介してピニオン・ギヤ231を支持しデフ・ケース229の軸回りに相対回転可能に支持されている。
プレッシャー・リング237は、デフ・ケース229の軸回りに相対回転不能且つ軸方向移動可能に支持されている。軸回りに相対回転不能の支持は、デフ・ケース229内面の溝とプレッシャー・リング237外周面の凹部との間に配置されたピン239により行われ、プレッシャー・リング237は、ピン239に沿ってデフ・ケース229に対し軸方向移動可能に構成されている。
皿ばね225は、両プレッシャー・リング237とデフ・ケース229との間に配置されている。
減衰カム機構227は、センター・リング235に形成された山形のカム凸部227aがプレッシャー・リング237に形成された対応する形状のカム凹部227bに嵌合することで構成されている。
したがって、フロント・デファレンシャル装置137に変速ショックが入るとデフ・ケース229からピン239を介してプレッシャー・リング237に入力される。
このとき、センター・リング235は、ピニオン・シャフト238、ピニオン・ギヤ231、ピニオン・ギヤ231に噛合うサイド・ギヤ233を介して後輪側から抵抗を受けるため、プレッシャー・リング237が変速ショックによりセンター・リング235に対して相対回転する。
この相対回転により減衰カム機構227が作用し、プレッシャー・リング237が軸方向の外側へ移動し、この移動が各皿ばね225の弾性力により吸収されることになる。
このときの各皿ばね225の振動は、カム凸部227a及びカム凹部227b間の摩擦力により減衰される。
こうして本参考例でも、変速ショックの吸収と減衰とを行わせることができる。
その他、図1〜図20の参考例と同様な作用効果を奏することができる。
図24は、さらに他の参考例に係り、ERベースのトランスミッションへの適用を示す概略断面図である。なお、発明としての基本的な構成は図1〜図20の参考例と同様である。
本参考例のトランスミッション1Cは、図24のようにフロントエンジン・リヤドライブ(FR)の自動車に適用する構成である。
トランスミッション1Cの各変速段には、図1〜図20の参考例同様にガイド部Gが設けられ、前記変速操作部93、移動力伝達機構M、カム溝及びカム突部を介してシームレスな変速操作ができるようになっている。
一方このトランスミッション1Cでは、カウンター・シャフト241が、中空のアウター・シャフト201Cとこのアウター・シャフト201Cに嵌合するトーション・バー202Cとを備えている。
トーション・バー202Cのトーション部203Cは、入力ギヤ243に一体に形成され、アウター・シャフト201Cに対するトーション部203Cの結合は実施例2と同様に行われている。つまり、アウター・シャフト201Cに、軸受245外で結合部材210Cがスプライン嵌合し、この結合部材210Cは、トーション・バー202Cの結合軸部213Cにナット212Cにより締結固定されている。
アウター・シャフト201Cと入力ギヤ243との間には、アウター・プレート及びインナー・プレートからなる摩擦結合伝達部211Cが設けられ、アウター・プレートがアウター・シャフト201Cにスプライン係合し、インナー・プレートがトーション部203Cにスプライン係合している。このアウター・プレート及びインナー・プレートの締結は、ナット212Cによりアウター・シャフト201C及び入力ギヤ243間で行われている。
したがって、本参考例では、トーション・バー202Cからアウター・シャフト201Cに結合部材210Cを介してトルク伝達を行うことができ、変速ショックをトーション・バー202Cのねじり弾性により吸収することができる。また、変速ショック吸収時のアウター・シャフト201Cに対するトーション・バー202Cのねじり振動を、摩擦結合伝達部211Aにより的確に減衰することができる。
その他、図1〜図20の参考例と同様な作用効果を奏することができる。
図25は、実施例1の噛合いクラッチの要部に係り、ドライブ噛み合い位置を示す断面図である。本実施例は、図1〜図20の参考例、図21〜図24のその他の参考例の何れにも適用できる。
本実施例のトランスミッションは、参考例の第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51を変更し、参考例におけるガイド部Gのカム溝65,67,69及びカム突部71,73,75を無くした。クラッチ・リング59は、カウンター・シャフト5にスプラインや平行溝等により軸方向移動可能に結合され、クラッチ・リング61、63は、メイン・シャフト3にスプラインや平行溝等により軸方向移動可能に結合される。
すなわち、本発明実施例1は、駆動力伝達軸であるメイン・シャフト3又はカウンター・シャフト5に相対回転可能に支持された複数段の変速ギヤである1速ギヤ19、2速ギヤ21、3速ギヤ23、4速ギヤ25、5速ギヤ27、6速ギヤ29と、変速ギヤをメイン・シャフト3又はカウンター・シャフト5に選択的に結合して変速出力するために複数備えられ変速ギヤが2速以上はなれて両サイドにそれぞれ配置され両サイドの変速ギヤに噛合いクラッチにより選択的な噛み合いが可能なクラッチ・リング59、61、63と、このクラッチ・リングを選択的に操作する変速操作部93とを備えた構成となっている。
図9、図10での説明のように、本実施例1のクラッチ・リング59、61、63は、変速ギヤ1速ギヤ19、3速ギヤ23、2速ギヤ21、5速ギヤ27、4速ギヤ25、6速ギヤ29に対し軸方向の第1の噛合い位置で第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51が噛合う状態と第1の噛合い位置よりも噛合いを浅くする第2の噛み合い位置で第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51が噛合う状態とに移動可能である。
図12と同様に第3の噛合いクラッチ51を代表して説明すると、図25のようにガイド面51baを備えている。このガイド面51baは、回転方向に傾斜設定されており、前記変速操作部93の動作により変速下段及び変速上段のクラッチ・リング63、61が同時噛合いした時に変速下段のクラッチ・リング63に第2の噛み合い位置で噛合い解除方向の軸力を生じさせるものである。
つまり、第3の噛合いクラッチ51は、変速ギヤである6速ギヤ29側のクラッチ歯29aとクラッチ・リング63側のクラッチ歯51bとを有し、ガイド面51baは、クラッチ歯51b、29aの一方51bに設けられ、コースティング・トルク時にクラッチ歯51b、29aの他方29aの先端部29aaの相対的なガイドによりクラッチ・リング63に噛合い解除方向の軸力を生じさせるものである。
ガイド面51baは、歯先側に向かってドライブ方向に傾斜形成されている。クラッチ歯51bの回転方向の歯元には、コースト噛合い面51bbが形成され、ガイド面51baに滑らかに連続している。
コースト噛合い面51bbに対応してクラッチ歯51b、29aの他方29aの先端部29aaに連続するコースト噛合い面29abが形成されている。コースト噛合い面29abに連続して逃げ面29acが形成されている。
クラッチ・リング63は、前記第2の噛み合い位置で第3の噛合いクラッチ51が噛合う状態にする機構として、駆動斜面Fを備えている。
駆動斜面Fは、クラッチ歯51b、29aの何れか一方51bの回転方向他側の歯元に形成され、駆動力伝達時にクラッチ歯51b、29aの他方29aの先端部29adとの間の相対的なガイドによりクラッチ・リング63を前記第1の噛合い位置から前記第2の噛み合い位置へ移動させるものである。
したがって、クラッチ・リング63を、第2の噛み合い位置で第3の噛合いクラッチ51が噛合う状態にする機構は、クラッチ歯51b、29aの何れか一方51bの回転方向一側の歯元に形成され駆動力伝達時にクラッチ歯51b、29aの他方29aの先端部29aaとの間の相対的なガイドによりクラッチ・リング63を第1の噛合い位置から第2の噛み合い位置へ移動させる駆動斜面Fである。クラッチ・リング59、61について第1、2の噛合いクラッチ47、49も同様である。
クラッチ歯51bの回転方向他側には、駆動斜面Fに連続するドライブ噛合い面51bcが形成されている。ドライブ噛合い面51bcは、歯先側に向かってドライブ方向に傾斜形成されている。
ドライブ噛合い面51bcに対応してクラッチ歯51b、29aの他方29aの先端部29adに連続するドライブ噛合い面29aeが傾斜形成されている。
なお、ガイド面51ba、駆動斜面Fは、変速ギヤである6速ギヤ29側に形成することもできる。
かかるクラッチ歯51b、29aの構造は、第1、第2の噛合いクラッチ47、49についても同様である。
[ドライブ]
第3の噛合いクラッチ51を、例えば6速ギヤ29に噛合い結合させ、駆動トルクが働くと、図25のように駆動斜面Fによってクラッチ・リング63が移動する。このとき図10に示すシフト・フォーク87の凹部129bがボール133aを押しのけ、スプリング133bは加圧されエネルギーを蓄える。この移動を許すのはシフト・アーム117のガイドに対しシフト溝125に適宜軸方向の遊びを設けているからである。
この移動によりクラッチ・リング63は、コースト噛合い位置(図9、図12(a)参照)よりも噛合い離脱側へ移動した図25の離脱待機の位置となる。
この離脱待機の位置は、後述する第1の噛合い位置よりも噛合いを浅くする第2の噛み合い位置で第3の噛合いクラッチ51がドライブ噛合い面51bc、29aeで噛合う状態である。
次に駆動トルクがコースト方向に変化すると、クラッチ歯29aはライブ噛合い面51bc、29aeが離間する。このとき上記スプリング133bのエネルギーにより凹部129b、ボール133aの作用で第1の噛合い位置で深い噛み合い状態となる(図9、図12(a)参照)。この状態においては、図25に示すコースト噛合い面29abがコースト噛合い面51bbに当接するため、クラッチ・リング63にスラスト力は発生しない。
[シフト・アップ4速→5速]
再度、図13〜図15のシフト・アップ時の動きにより図25を用いて説明する。なお、図25は、第3の噛合いクラッチ51の6速ギヤ29側での説明であるが、第1、第2の噛合いクラッチ47、49についても同様の構造であるため、対応するガイド面等の説明は、同符号を用い、図25を参照して説明する。
図13の4速のクラッチ歯25aにはドライブ・トルクが付加されているため前記したようにクラッチ・リング63は駆動斜面Fの作用により、図14のように離脱待機位置となる。
つまり図25と同様に、4速位置にあるクラッチ・リング63のガイド面51baは、クラッチ歯29aのドライブ噛合い面29aeに回転方向で対向することになる。
このときシフト・ドラム119の回転により5速へのシフト・アップ操作が行われると、シフト溝123が働き、シフト・アーム115、シフト・ロッド107、シフト・フォーク85を介してクラッチ・リング61が操作される。この操作によりクラッチ・リング61が5速ギヤ27に噛み合い、4速ギヤ25及び5速ギヤ27が同時噛合いとなる。
このとき上記のように、エンジン出力トルクの如何に係らず同時噛み合いによる機構的必然による内部循環トルクにより4速側にはコースティング・トルク、5速側にはドライブ・トルクが発生する。このトルクがガイド面51baの斜面の作用で4速位置にあるクラッチ・リング63に対し噛合い解除(ニュートラル)方向のスラスト力を発生させ、クラッチ・リング63は、4速位置から解除位置に移動する。
5速位置のクラッチ・リング61は、ドライブ噛合い面51bcがドライブ噛合い面29aeの傾斜によりガイドされ噛み合いを深める方向のスラスト力を発生させ、クラッチ・リング61は、噛合い方向に移動して5速位置となる。
かかる解除及び噛合いにより、図15に示すように5速へのシフト・アップが終了する。
変速時には、図18〜図24の弾性部及び減衰部により上記同様に変速ショックを吸収又は緩和することができる。
したがって、実施例1の構造により、上記同様の作用効果を素することができる。
その他の変速段におけるシフト・アップも同様に行わせることができる。図26は、変形例に係る噛合いクラッチの要部に係り、ドライブ噛み合い位置を示す断面図である。
図26においては、ドライブ噛合い面51bc及びドライブ噛合い面29aeが傾斜せず、軸方向にほぼ平行に設定されている。
この例では、同時噛合い時にドライブ噛合い面51bc及びドライブ噛合い面29ae間でスラスト力を発生せず、変速上段側のクラッチ・リングは、変速操作部93からのシフト力でのみ移動することになる。
したがって、ドライブ噛合い面51bcは、ガイド面を構成し、第1〜第3の噛合いクラッチ47,49,51は、変速操作部93のシフト・アップ動作又はシフト・ダウン動作により変速下段及び変速上段のクラッチ・リング(59、61、63)が同時噛合いした時に変速下段と変速上段とのクラッチ・リング(59、61、63)相互間に第2の噛み合い位置でコースティング・トルクにより噛合い方向と噛合い解除方向との異なる方向の軸力を各別に生じさせるガイド面(51ba、51bc)を備えた構成となる。
[クラッチ歯の摩耗防止]
図27は、比較例に係り、噛合いクラッチの歯先の摩耗を説明し、(A)は、噛合い歯及び被噛合い歯の噛合いの一つをクラッチ・リングの接線方向から見た概略断面図、(B)は、(A)のXXVIIB−XXVIIB矢視断面図、図28は、本実施例に係り、噛合いクラッチの歯先の摩耗を説明し、(A)は、クラッチ歯の噛み合いの一つをクラッチ・リングの接線方向から見た概略断面図、(B)は、クラッチ歯の噛み合い離脱状態をクラッチ・リングの接線方向から見た概略断面図、(C)は、(A)のXXIIXC−XXIIXC矢視断面図である。
図27(A)のように、例えばクラッチ・リング63のクラッチ歯51bと6速ギヤ29のクラッチ歯29aとの噛合いをクラッチ・リング63の接線方向から側面を見て透視すると、クラッチ・リング63の径方向においてクラッチ歯51b及びクラッチ歯29aの全丈で噛み合っている。
このような噛合いでは、噛合い及び噛合い解除の繰り返しでクラッチ歯29aの先端部29adがクラッチ歯51bに対する衝突を繰り返し、長期使用等により摩耗を招くことになる。
クラッチ歯29aの先端部29adが摩耗すると、駆動斜面Fに対するクラッチ歯29aの位置が第1のが噛合い位置側へ若干ずれることになり、離脱待機位置である第2の噛合い位置がずれ、離脱が円滑に行われなくなる恐れがある。
これに対し、本実施例では、図28(A)、(B)のように、クラッチ歯51bに衝突回避斜面51beを設けた。
この図28(A)、(B)のクラッチ歯では、衝突回避斜面51beにより噛合い始めにおいてクラッチ歯29aの先端部29adがクラッチ歯51bに衝突しない部分29adaができるため、少なくともこの部分の摩耗が無いか、大幅に減少する。
このため、クラッチ歯29aの先端部29adとクラッチ歯51bの駆動斜面Fとの相対的なガイドによりクラッチ・リング63が第2の噛合い位置に移動するとき、駆動斜面Fに対して衝突しない部分29adaが相対的なガイドを受けるため、クラッチ・リング63の第2の噛合い位置への移動を正確に行わせることができる。
他のクラッチ・リング59、61においても同様である。
なお、クラッチ・リング59,61,63は、同時噛合い時に第2の噛み合い位置において噛合い解除方向のスラスト力が働けば良く、変速ギヤが2速以上はなれて両サイドにそれぞれ配置される必要はない。