JP2013204758A - 車両用変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】低速側の変速段と高速側の変速段との間でシームレスシフトを行う車両用変速機の部品点数を削減する。
【解決手段】第1遊転ギヤG1oに固定された第1被係合部材110と、第2遊転ギヤG2oに固定された第2被係合部材120と、出力軸A3に相対回転不能且つ第1被係合部材110と係合する係合位置と非係合位置との間を移動可能に設けられた第1係合部材130と、出力軸A3に相対回転不能且つ第2被係合部材120と係合する係合位置と非係合位置との間を移動可能に設けられた第2係合部材140と、第1係合部材130及び第2係合部材140を駆動する駆動装置とを備え、駆動装置により、第1係合部材130のみが係合する低速モードと、第2係合部材140のみが係合する高速モードと、低速モードと高速モードとの間で第1係合部材130及び第2係合部材140の双方が係合する中間モードとのいずれかのモードを選択的に達成するようにした。
【選択図】図2
【解決手段】第1遊転ギヤG1oに固定された第1被係合部材110と、第2遊転ギヤG2oに固定された第2被係合部材120と、出力軸A3に相対回転不能且つ第1被係合部材110と係合する係合位置と非係合位置との間を移動可能に設けられた第1係合部材130と、出力軸A3に相対回転不能且つ第2被係合部材120と係合する係合位置と非係合位置との間を移動可能に設けられた第2係合部材140と、第1係合部材130及び第2係合部材140を駆動する駆動装置とを備え、駆動装置により、第1係合部材130のみが係合する低速モードと、第2係合部材140のみが係合する高速モードと、低速モードと高速モードとの間で第1係合部材130及び第2係合部材140の双方が係合する中間モードとのいずれかのモードを選択的に達成するようにした。
【選択図】図2
Description
本発明は、車両用変速機に関する。
特表2010−510464号公報(特許文献1)には、車両用変速機の一例が開示されている。この変速機では、低速側のギヤに設けられた第1被係合部材(駆動構造体)に係合可能な一方の係合部材(係合要素セット)と、高速側のギヤに設けられた第2被係合部材(駆動構造体)に係合可能な他方の係合部材(係合要素セット)が用いられており、これら2つの係合部材(係合要素セット)のそれぞれが、各係合部材に専用の駆動部材及びアクチュエータによって軸方向に独立して駆動されるように構成されている。本構成によれば、各係合部材の駆動をアクチュエータによって制御することで、一方の係合部材が第1被係合部材に係合した低速側の変速段から、他方の係合部材が第2被係合部材に係合した高速側の変速段への変更(加速シフト)を瞬時に行うことが可能であり、これにより駆動トルクの途切れのない変速、所謂「シームレスシフト」を達成することができる。
ところで、上記特許文献1に記載のような変速機では、前述のシームレスシフトを達成するための要素の部品点数を削減することによって、当該変速機に関する組み付け工数、重量、コスト等を抑えたいという要請がある。
また、低速側の変速段と高速側の変速段との間の変更に関しては、アクチュエータを用いる代わりに、各係合部材のうち被係合部材との対向部位に、軸方向に対して傾斜するように延在する傾斜面を設ける構造を採用することができる。この構造によれば、例えば低速側の変速段から高速側の変速段に変更する加速シフトの過程で、一方の係合部材の傾斜面が、低速側のギヤとともに回転する第1被係合部材に当接することによって、軸方向に関し当該第1被係合部材から離間するように押し出し荷重を受ける。これにより、第1被係合部の回転力の一部を利用して、一方の係合部材と第1被係合部材との係合解除を行うことが可能になる。
しかしながら、一方の係合部材と第1被係合部材との係合解除のために上述のような傾斜面を用いる場合、この傾斜面に高い強度を持たせる必要があり、その結果、変速機の重量やコストが上昇する。更に、例えば高速側の変速段から低速側の変速段に変更する減速シフトの過程では、一方の係合部材の傾斜面が第1被係合部材から離間するような押し戻し荷重を受けるため、減速シフト時のシームレスシフトが阻害される。
また、低速側の変速段と高速側の変速段との間の変更に関しては、アクチュエータを用いる代わりに、各係合部材のうち被係合部材との対向部位に、軸方向に対して傾斜するように延在する傾斜面を設ける構造を採用することができる。この構造によれば、例えば低速側の変速段から高速側の変速段に変更する加速シフトの過程で、一方の係合部材の傾斜面が、低速側のギヤとともに回転する第1被係合部材に当接することによって、軸方向に関し当該第1被係合部材から離間するように押し出し荷重を受ける。これにより、第1被係合部の回転力の一部を利用して、一方の係合部材と第1被係合部材との係合解除を行うことが可能になる。
しかしながら、一方の係合部材と第1被係合部材との係合解除のために上述のような傾斜面を用いる場合、この傾斜面に高い強度を持たせる必要があり、その結果、変速機の重量やコストが上昇する。更に、例えば高速側の変速段から低速側の変速段に変更する減速シフトの過程では、一方の係合部材の傾斜面が第1被係合部材から離間するような押し戻し荷重を受けるため、減速シフト時のシームレスシフトが阻害される。
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、低速側の変速段と高速側の変速段との間でシームレスシフトを行う機構を含む車両用変速機において、部品点数を削減するのに有効な技術を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、本発明に係る車両用変速機は、車両の駆動源の駆動出力軸と車両の駆動輪とを結ぶ動力伝達系統に介装され、複数の変速段を有する変速機であって、入力軸、出力軸、複数の固定ギヤ、複数の遊転ギヤ、第1被係合部材、第2被係合部材、第1係合部材、第2係合部材及び駆動装置を備えている。
入力軸は、駆動出力軸との間で動力伝達系統が形成される軸である。出力軸は、駆動輪との間で動力伝達系統が形成される軸である。複数の固定ギヤは、それぞれが入力軸又は出力軸に同軸的且つ相対回転不能に設けられるとともに、複数の変速段のそれぞれに対応するギヤである。複数の遊転ギヤは、それぞれが入力軸又は出力軸に同軸的且つ相対回転可能に設けられるとともに、複数の変速段のそれぞれに対応し、且つ対応する変速段の固定ギヤと常時噛合するギヤである。これら複数の遊転ギヤは、複数の変速段のうちの低速側変速段及び高速側変速段につき、低速側変速段の固定ギヤに常時噛合する第1遊転ギヤと、高速側変速段の固定ギヤに常時噛合する第2遊転ギヤとを含む。
第1被係合部材は、第1遊転ギヤの第2遊転ギヤとの対向部位に固定されている。第2被係合部材は、第2遊転ギヤの第1遊転ギヤとの対向部位に固定されている。第1被係合部材が第1遊転ギヤと共に新たな第1遊転ギヤを構成し、また第2被係合部材が第2遊転ギヤと共に新たな第2遊転ギヤを構成してもよい。即ち、被係合部材を遊転ギヤの一構成要素とすることもできる。第1係合部材は、入力軸及び出力軸のうち第1遊転ギヤ及び第2遊転ギヤの双方が設けられている軸の第1被係合部材と第2被係合部材との間に前記軸に対して同軸的且つ相対回転不能且つ前記軸の軸方向に関して第1被係合部材と係合する係合位置と当該係合位置から第2被係合部材側に外れた非係合位置との間を移動可能に設けられている。第2係合部材は、前記軸の第1係合部材と第2被係合部材との間に前記軸に対して同軸的且つ相対回転不能且つ前記軸方向に関して第2被係合部材と係合する係合位置と当該係合位置から第1被係合部材側に外れた非係合位置との間を移動可能に設けられている。即ち、入力軸のみに第1遊転ギヤ及び第2遊転ギヤが設けられている場合には入力軸のみに第1被係合部材及び第2被係合部材を設け、出力軸のみに第1遊転ギヤ及び第2遊転ギヤが設けられている場合には出力軸のみに第1被係合部材及び第2被係合部材を設け、入力軸及び出力軸の双方に第1遊転ギヤ及び第2遊転ギヤが設けられている場合には入力軸及び出力軸の双方に第1被係合部材及び第2被係合部材を設けることができる。
駆動装置は、第1被係合部材及び第2被係合部材のそれぞれを前記軸方向に駆動するための装置であり、弾性部材及び駆動部材を含み、低速モード、高速モード及び中間モードのうちのいずれかのモードを選択的に達成する。弾性部材は、第1係合部材及び第2係合部材の双方に当該係合部材の係合位置から非係合位置に向かう弾発力を常時に付与する。この弾性部材を1又は複数の弾性要素によって構成することができる。駆動部材は、第1係合部材及び第2係合部材の双方を弾性部材の弾発力に抗して当該係合部材の非係合位置から係合位置に駆動する、第1係合部材及び第2係合部材に共用の部材である。低速モードでは、第1係合部材が当該第1係合部材の係合位置に位置し、且つ第2係合部材が当該第2係合部材の非係合位置に位置する。高速モードでは、第1係合部材が当該第1係合部材の非係合位置に位置し、且つ第2係合部材が当該第2係合部材の係合位置に位置する。中間モードでは、低速モードと高速モードとの間で、第1係合部材及び第2係合部材の双方が当該係合部材の係合位置に位置する。即ち、この中間モードでは、第1係合部材が第1被係合部材に係合し、且つ第2係合部材が第2被係合部材に係合した二重係合状態が形成される。これにより、駆動装置が、低速モードから中間モードを経て高速モードへと制御されることによって、或いは高速モードから中間モードを経て低速モードへと制御されることによって、駆動トルクの途切れのない変速(シームレスシフト)が達成される。
この場合、駆動部材が第1係合部材及び第2係合部材のために共用されるため、シームレスシフトを達成するための要素の部品点数を削減することができる。その結果、車両用変速機に関する組み付け工数、重量、コスト等を抑えることが可能になる。また、第1係合部材と第1被係合部材との係合解除、及び第2係合部材と第2被係合部材との係合解除のために弾性部材を用いるため、例えば被係合部材に上述のような高強度の傾斜面を設ける必要がない。その結果、変速機の重量やコストの上昇を抑えるとともに、減速シフト時のシームレスシフトも円滑に行うことが可能になる。た、第1係合部材及び第2係合部材をそれぞれ、当該係合部材の非係合位置に設定する構造を、弾性部材を用いて簡素化することができる。
本発明に係る更なる形態の車両用変速機では、駆動装置は、第1係合部材及び第2係合部材のそれぞれを前記軸方向に関して保持する保持装置を含むのが好ましい。この場合、保持装置による保持力と弾性部材による弾発力との大小が、駆動部材によって設定された第1係合部材と第2係合部材の間隔に応じて入れ替わるのが好ましい。これにより、第1係合部材及び第2係合部材のそれぞれを当該係合部材の係合位置と非係合位置との間で円滑に駆動することができる。
本発明に係る更なる形態の車両用変速機では、第1係合部材と第2係合部材は、低速モード及び高速モードにおいて第1の間隔を隔てて当該係合部材の係合位置又は非係合位置に配置されるとともに、保持装置による保持力の大きさが弾性部材による弾発力の大きさを上回るのが好ましい。このとき第1係合部材及び第2係合部材が当該係合部材の係合位置又は非係合位置に保持される。一方で、第1係合部材と第2係合部材は、中間モードにおいて第1の間隔を上回る第2の間隔を隔てて当該係合部材の係合位置に配置されるとともに、弾性部材による弾発力の大きさが保持装置による保持力の大きさを上回るのが好ましい。このとき第1係合部材及び第2係合部材の双方が当該係合部材の係合位置から非係合位置に移動する。これにより、各モードに適した態様で、第1係合部材及び第2係合部材のそれぞれの位置を設定することができる。
本発明に係る更なる形態の車両用変速機では、第1被係合部材及び第2被係合部材はそれぞれ、円板状の本体部と、本体部の片面において第1係合部材又は第2係合部材に向けて突出するとともに当該本体部の周方向に等間隔で配置された複数の被係合爪と、を含むのが好ましい。また、第1係合部材及び第2係合部材はそれぞれ、円板状の本体部と、被係合部材との係合のために本体部の片面において第1係合部材又は第2係合部材の複数の被係合爪に向けて突出するとともに複数の被係合爪に対応して当該本体部の周方向に等間隔で配置された複数の係合爪と、を含むのが好ましい。これにより、係合部材と被係合部材とが係合する構造を、互いに噛み合う一組又は複数組の爪体を用いて簡素化することができる。
以上のように、本発明によれば、低速側の変速段と高速側の変速段との間でシームレスシフトを行う機構を含む車両用変速機において、部品点数を削減することが可能になった。
以下、本発明の実施形態に係る車両用変速機について図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態に係る(車両用)変速機T/Mは、車両の駆動源であるエンジンの駆動出力軸と車両の駆動輪とを結ぶ動力伝達系統に介装され、車両前進用に5つ変速段(1速(1st)〜5速(5th))、及び、車両後進用に1つの変速段(リバース)を備えている。
図1に示すように、変速機T/Mは、入力軸A2及び出力軸A3を備えている。変速機T/Mの入力軸A2は、クラッチC/D及びフライホイールF/Wを介して、エンジンE/Gの駆動出力軸A1に接続されている。この入力軸A2とエンジンE/Gの駆動出力軸A1との間で動力伝達系統が形成される。変速機T/Mの出力軸A3は、ディファレンシャルD/Fを介して車両の駆動輪D/Wに接続されている。この出力軸A3と駆動輪D/Wとの間で動力伝達系統が形成される。
クラッチC/Dは、変速機T/Mの入力軸A2に一体回転するように設けられた周知の構成の1つを有する摩擦クラッチディスクである。より具体的には、エンジンE/Gの出力軸A1に一体回転するように設けられたフライホイールF/Wに対して、クラッチC/D(より正確には、クラッチディスク)が互いに向き合うように同軸的に配置されている。フライホイールF/Wに対するクラッチC/D(より正確には、クラッチディスク)の軸方向の位置が調整可能になっている。クラッチC/Dの軸方向位置は、クラッチアクチュエータACT1により調整される。なお、このクラッチC/Dは、運転者によって操作されるクラッチペダルを備えていない。
変速機T/Mは、複数の固定ギヤ(「駆動ギヤ」ともいう)G1i、G2i、G3i、G4i、G5iと、複数の遊転ギヤ(「被動ギヤ」ともいう)G1o、G2o、G3o、G4o、G5oを備えている。複数の固定ギヤG1i、G2i、G3i、G4i、G5iは、それぞれが入力軸A2に同軸的且つ相対回転不能に、且つそれぞれが入力軸A2の軸方向に相対移動不能に固定されるとともに、それぞれが前進用の複数の変速段のそれぞれに対応している。具体的には、これらの固定ギヤG1i、G2i、G3i、G4i、G5iがそれぞれ、1速、2速、3速、4速、5速に対応している。複数の遊転ギヤG1o、G2o、G3o、G4o、G5oは、それぞれが出力軸A3に同軸的且つ相対回転可能に設けられ、且つそれぞれが前進用の複数の変速段のそれぞれに対応するとともに、それぞれが対応する変速段の固定ギヤと常時噛合している。具体的には、これらの遊転ギヤG1o、G2o、G3o、G4o、G5oがそれぞれ、1速、2速、3速、4速、5速に対応している。
変速機T/Mは、動力伝達機構101,102,103を含み、変速段の変更・設定は、変速機アクチュエータACT2を用いて、動力伝達機構101,102,103のそれぞれを作動させることによって実行される。変速段を変更することで、減速比(出力軸A3の回転速度に対する入力軸A2の回転速度の割合)が調整される。
制御装置200は、アクセル開度センサS1、シフト位置センサS2、ブレーキセンサS3及び電子制御ユニットECUを備えている。アクセル開度センサS1は、アクセルペダルAPの操作量(アクセル開度)を検出するセンサである。シフト位置センサS2は、シフトレバーSFの位置を検出するセンサである。ブレーキセンサS3は、ブレーキペダルBPの操作の有無を検出するセンサである。電子制御ユニットECUは、上述のセンサS1〜S3、並びにその他のセンサ等からの情報等に基づいて、上述のアクチュエータACT1,ACT2を制御することで、C/Dのクラッチストローク(従って、クラッチトルク)、及び、変速機T/Mの変速段を制御する。また、この電子制御ユニットECUは、エンジンE/Gの燃料噴射量(スロットル弁の開度)を制御することで、エンジンE/Gの出力軸A1の駆動トルクを制御する。
上記の動力伝達機構101,102,103はいずれも同様の構造を有するため、ここでは図2〜図5を参照しつつ動力伝達機構101の構造についてのみ説明する。
図2に示す動力伝達機構101は、複数の変速段のうち相対的に低速の変速段である1速と、1速に対して高速の変速段である2速とに対応しており、特にニュートラル状態として示されている。この動力伝達機構101は、変速機T/Mの出力軸A3上にそれぞれ設けられた、第1遊転ギヤG1o、第2遊転ギヤG2o、第1被係合部材110、第2被係合部材120、第1係合部材130、第2係合部材140を含む。
遊転ギヤG1o,G2oはいずれも、スナップリング150(固定手段)によって出力軸A3の軸方向Xの移動が阻止されており、且つ出力軸A3との軸周り方向Yの相対回転が可能になっている。
第1被係合部材110は、第1遊転ギヤG1oと第2遊転ギヤG2oとの間において、第1遊転ギヤG1oの第2遊転ギヤG2oとの対向部位に固定されている。具体的には、この第1被係合部材110がスプライン嵌合によって第1遊転ギヤG1oに圧入されている。従って、この第1被係合部材110は、第1遊転ギヤG1oと共に軸周り方向Yに回転することができる。更に、この第1被係合部材110は、円板状の本体部111の片面(第1係合部材130との対向面)に、第1係合部材130に向けて突出する複数の被係合爪112を備えている。複数の被係合爪112を有するこの第1被係合部材110を第1遊転ギヤG1oの一構成要素とすることもできる。この第1被係合部材110が本発明の「第1被係合部材」に相当する。
同様に、第2被係合部材120は、第1遊転ギヤG1oと第2遊転ギヤG2oとの間において、第2遊転ギヤG2oの第1遊転ギヤG1oとの対向部位に固定されている。具体的には、この第2被係合部材120がスプライン嵌合によって第2遊転ギヤG2oに圧入されている。従って、この第2被係合部材120は、第2遊転ギヤG2oと共に軸周り方向Yに回転することができる。更に、この第2被係合部材120は、円板状の本体部121の片面(第2係合部材140との対向面)に、第2係合部材140に向けて突出する複数の被係合爪122を備えている。複数の被係合爪122を有するこの第2被係合部材120を第2遊転ギヤG2oの一構成要素とすることもできる。この第2被係合部材120が本発明の「第2被係合部材」に相当する。
第1係合部材130及び第2係合部材140はいずれも、第1被係合部材110と第2被係合部材120とによって区画される空間に配置されている。これら第1係合部材130及び第2係合部材140は、コイルスプリング151、フォーク133,143、フォークシャフト160、保持装置170,180及び変速機アクチュエータACT2からなる駆動装置によって、出力軸A3の軸方向Xに駆動される。
第1係合部材130は、出力軸A3に同軸的且つ相対回転不能に設けられるとともに、出力軸A3の軸方向Xに関して第1被係合部材110と係合する係合位置と当該係合位置から第2被係合部材120側に外れた非係合位置(図2に示す位置、「係合解除位置」ともいう)との間で移動可能である。また、この第1係合部材130は、円板状の本体部131の片面(第1被係合部材110との対向面)に、第1被係合部材110の複数の被係合爪112に向けて突出する複数の係合爪132を備えている。この第1係合部材130が本発明の「第1係合部材」に相当する。更に、この第1係合部材130と第2係合部材140との間にはコイルスプリング151が介装されている。このコイルスプリング151は、第1係合部材130及び第2係合部材140のそれぞれに対して当該係合部材の係合位置から非係合位置に向かう弾発力を常時に付勢する。このコイルスプリング151が本発明の「弾性部材」に相当する。このコイルスプリング151を、第1係合部材130及び第2係合部材140のそれぞれに専用に設けることもできる。また、このコイルスプリング151に代えて或いは加えて、コイルスプリング以外のバネや、バネ以外の弾性部材を用いることもできる。
この第1係合部材130は、フォーク133を介して1つのフォークシャフト160に接続されている。フォーク133は、第1係合部材130に連結されるとともに、フォークシャフト160に対して出力軸A3の軸方向Xに相対移動可能な可動部134を備えている。フォークシャフト160は、出力軸A3の軸方向Xに長尺状に延在する部材であり、上述の電子制御ユニットECUで制御されたアクチュエータACT2によって出力軸A3の軸方向Xに動作する。このフォークシャフト160は、第1係合部材130及び第2係合部材140に共用の1つの駆動部材であり、鍔部161により可動部134を図2中の矢印X1の方向に付勢することができる。このフォークシャフト160によって本発明の「駆動部材」が構成される。これにより、可動部134は、鍔部161の付勢力によってフォークシャフト160上を図2中の矢印X1の方向に移動することができる。また、この可動部134は、保持装置170による出力軸A3の軸方向Xに関する保持のための複数の(図2の実施例では出力軸A3の軸方向Xに並置された2つの)凹部135を備えている。
保持装置170は、変速機T/Mのハウジング(図示省略)に直接的又は間接的に取り付けられ、球状のロックボール171と、このロックボール171に対して弾発力を常時に付与するコイルスプリング172とを備えている。フォークシャフト160の鍔部161による可動部134の付勢が解除された状態では、ロックボール171が可動部134の凹部135に嵌ることによって可動部134が所定の保持力で保持される。一方で、可動部134は、フォークシャフト160の鍔部161によって図2中の矢印X1の方向に付勢された場合には、ロックボール171による保持力に打ち勝って図2中の矢印X1の方向に移動する。この保持装置170が本発明の「保持装置」に相当する。
同様に、第2係合部材140は、出力軸A3に同軸的且つ相対回転不能に設けられるとともに、出力軸A3の軸方向Xに関して第2被係合部材120と係合する係合位置と当該係合位置から外れた非係合位置(図2に示す位置「係合解除位置」ともいう)との間で移動可能である。また、この第2係合部材140は、円板状の本体部141の片面(第2被係合部材120との対向面)に、第2被係合部材120の複数の被係合爪122に向けて突出する複数の係合爪142を備えている。この第2係合部材140が本発明の「第2係合部材」に相当する。
この第2係合部材140は、フォーク143を介して前述の1つのフォークシャフト160に接続されている。フォーク143は、第2係合部材140に連結されるとともに、フォークシャフト160に対して出力軸A3の軸方向Xに相対移動可能な可動部144を備えている。一方で、フォークシャフト160は、鍔部162により可動部144を図2中の矢印X2の方向に付勢することができる。これにより、可動部144は、鍔部162の付勢力によってフォークシャフト160上を図2中の矢印X2の方向に移動することができる。また、この可動部144は、保持装置180による出力軸A3の軸方向Xに関する保持のための複数の(図2の実施例では出力軸A3の軸方向Xに並置された2つの)凹部145を備えている。
保持装置180は、変速機T/Mのハウジング(図示省略)に直接的又は間接的に取り付けられ、球状のロックボール181と、このロックボール181に対して弾発力を常時に付与するコイルスプリング182とを備えている。フォークシャフト160の鍔部162による可動部144の付勢が解除された状態では、ロックボール181が可動部144の凹部145に嵌ることによって可動部144が所定の保持力で保持される。一方で、可動部144は、フォークシャフト160の鍔部162によって図2中の矢印X2の方向に付勢された場合には、ロックボール181による保持力に打ち勝って図2中の矢印X2の方向に移動する。この保持装置180が本発明の「保持装置」に相当する。
上記の第1被係合部材110及び第2被係合部材120の具体的な構造についてはそれぞれ、図3及び図4が参照される。
図3に示す第1被係合部材110は、第1係合部材130の複数の係合爪132との係合のために、本体部111の片面(第1係合部材130との対向面)に周方向に等間隔で配置された4つの被係合爪112を備えている。被係合爪112はいずれも、断面形状が出力軸A3に向けて幅狭となるような2つの斜面112aを有する四角柱として構成されている。互いに隣接する2つの被係合爪112,112の間に形成された空間部113は、第1係合部材130の各係合爪132が挿入可能な挿入空間として構成されている。
同様に、図4に示す第2被係合部材120は、第2係合部材140の複数の係合爪142との係合のために、本体部121の片面(第2係合部材140との対向面)に周方向に等間隔で配置された4つの被係合爪122を備えている。被係合爪122は、第1被係合部材110の被係合爪112と同形状である。互いに隣接する2つの被係合爪122,122の間に形成された空間部123は、第2係合部材140の各係合爪142が挿入可能な挿入空間として構成されている。ここでいう被係合爪112,122が本発明の「被係合爪」に相当する。
上記の第1係合部材130及び第2係合部材140の具体的な構造についてはそれぞれ、図5及び図6が参照される。
図5に示す第1係合部材130は、第1被係合部材110の複数の被係合爪112との係合のために、本体部131の片面(第1被係合部材110との対向面)に周方向に等間隔で配置された4つの係合爪132を備えている。係合爪132は、第1被係合部材110の被係合爪112と概ね同形状であり、2つの斜面132aを有する四角柱として構成されている。即ち、この係合爪132は、出力軸A3の軸方向に関して断面形状が一様になっている。また、係合爪132は、出力軸A3からの径方向の距離が、第1被係合部材110の被係合爪112の場合と同一である。従って、第1係合部材130の係合爪132が第1被係合部材110の空間部113に挿入された状態では、係合爪132と被係合爪112が係合することによって、具体的には係合爪132の斜面132aと被係合爪112の斜面112aとが互いに当接することによって、第1係合部材130及び第1被係合部材110は、出力軸A3の軸周り方向Yに一体状に回転することができる。
同様に、図6に示す第2係合部材140は、第2被係合部材120の複数の被係合爪122との係合のために、本体部141の片面(第2被係合部材120との対向面)に周方向に等間隔で配置された4つの係合爪142を備えている。係合爪142は、第2被係合部材120の被係合爪122と概ね同形状であり、2つの斜面142aを有する四角柱として構成されている。即ち、この係合爪142は、出力軸A3の軸方向に関して断面形状が一様になっている。また、係合爪142は、出力軸A3からの径方向の距離が、第2被係合部材120の被係合爪122の場合と同一である。従って、第2係合部材140の係合爪142が第2被係合部材120の空間部123に挿入された状態では、係合爪142と被係合爪122が係合することによって、具体的には係合爪142の斜面142aと被係合爪122の斜面122aとが互いに当接することによって、第2係合部材140及び第2被係合部材120は、出力軸A3の軸周り方向Yに一体状に回転することができる。ここでいう係合爪132,142が本発明の「係合爪」に相当する。
以下、上記構成の動力伝達機構101の制御態様、特には変速機T/Mの変速段が1速から2速に変更される際の制御態様を、図7〜図11を参照しつつ説明する。この制御は、制御装置200の電子制御ユニットECUが変速機アクチュエータACT2を制御することによって遂行される。これにより、少なくとも下記の低速モード、高速モード及び中間モードのうちのいずれかのモードが選択的に達成される。なお、これらの図面では、4つの被係合爪112、4つの被係合爪122、4つの係合爪132、4つの係合爪142のうち係合に関与する代表的な爪のみを記載しており、また、第1遊転ギヤG1oと第2遊転ギヤG2oとのギヤ比が1:2の場合を想定している。
(低速モード)
変速機T/Mが図2に示すニュートラル状態から1速に変更された場合には、図7に示すように、第1係合部材130が当該第1係合部材の係合位置に制御され、且つ第2係合部材140が当該第2係合部材の非係合位置に制御される。このとき、第1係合部材130は、その係合爪132が第1被係合部材110の被係合爪112に係合する(「噛み合う」ともいう)ように、変速機アクチュエータACT2(フォークシャフト160)によって図7中の係合位置に設定される。具体的には、変速機アクチュエータACT2によってフォークシャフト160が矢印X1の方向に駆動され、このフォークシャフト160の鍔部161がフォーク133の可動部134を矢印X1の方向に付勢する。その結果、可動部134は、保持装置170による保持力に打ち勝つことによって、即ちロックボール171がコイルスプリング172の弾発力に抗して外側の凹部135から外れて内側の凹部135に嵌ることによって、フォークシャフト160と一体となって矢印X1の方向に移動する。このため、フォーク133に連結されている第1係合部材130は、コイルスプリング151の弾発力に抗して図2に示す非係合位置から図7に示す係合位置に移動する。一方で、フォークシャフト160の鍔部162による可動部144の付勢は解除されており、保持装置180による可動部144の保持力は有効である。このため、フォーク143に連結されている第2係合部材140は、図7に示す非係合位置に維持される。
変速機T/Mが図2に示すニュートラル状態から1速に変更された場合には、図7に示すように、第1係合部材130が当該第1係合部材の係合位置に制御され、且つ第2係合部材140が当該第2係合部材の非係合位置に制御される。このとき、第1係合部材130は、その係合爪132が第1被係合部材110の被係合爪112に係合する(「噛み合う」ともいう)ように、変速機アクチュエータACT2(フォークシャフト160)によって図7中の係合位置に設定される。具体的には、変速機アクチュエータACT2によってフォークシャフト160が矢印X1の方向に駆動され、このフォークシャフト160の鍔部161がフォーク133の可動部134を矢印X1の方向に付勢する。その結果、可動部134は、保持装置170による保持力に打ち勝つことによって、即ちロックボール171がコイルスプリング172の弾発力に抗して外側の凹部135から外れて内側の凹部135に嵌ることによって、フォークシャフト160と一体となって矢印X1の方向に移動する。このため、フォーク133に連結されている第1係合部材130は、コイルスプリング151の弾発力に抗して図2に示す非係合位置から図7に示す係合位置に移動する。一方で、フォークシャフト160の鍔部162による可動部144の付勢は解除されており、保持装置180による可動部144の保持力は有効である。このため、フォーク143に連結されている第2係合部材140は、図7に示す非係合位置に維持される。
この場合、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lは、第1係合部材130及び第2係合部材140の双方が非係合位置に設定された初期状態をL0とすると(図2参照)L0を上回る第1の間隔L1になる。即ち、初期状態に比べて間隔L(コイルスプリング151の長さ)が増えるため、第1係合部材130及び第2係合部材140をそれぞれ当該係合部材の非係合位置に向けて弾性付勢する弾発力は初期状態よりも大きくなる。一方で、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lが第1の間隔L1のときに生じるコイルスプリング151の弾発力は、保持装置170による可動部134の保持力を下回る。従って、図8に示すようにフォークシャフト160の鍔部161による可動部134の付勢が解除されても、第1係合部材130は保持装置170による保持力のみによってその係合位置に保持される。更に、第1係合部材130の係合爪132と第1被係合部材110の被係合爪112が互いに係合した状態では、保持装置170による保持力に加えて、係合爪132の斜面132aと被係合爪112の斜面112aとの当接によって生じる吸い込み荷重によって、第1係合部材130がその係合位置に確実に保持される。同様に、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lが第1の間隔L1のときのコイルスプリング151の弾発力は保持装置180による可動部144の保持力を下回るため、第2係合部材140は保持装置180による保持力のみによってその係合位置に保持される。
この低速モードでは、第1遊転ギヤG1oが所定の回転速度(「角速度」ともいう)ωで回転し、第2遊転ギヤG2oがその2倍の回転速度である2ωで回転している場合、第1遊転ギヤG1oに連結された第1被係合部材110は、第1遊転ギヤG1oと同一の回転速度ωで同一の方向に回転している。また、第1被係合部材110と係合状態にある第1係合部材130も、出力軸A3と共に同一の回転速度ωで同一の方向に回転している。この場合、入力軸A2の回転は、第1遊転ギヤG1oのみを介して出力軸A3に伝達され、1速の減速比を有する動力伝達系統が形成される。この低速モードが本発明の「低速モード」に相当する。
(中間モード)
図9には、低速モードと高速モードとの間で、変速機T/Mが1速から2速に変更される過程の状態である中間モードが示されている。即ち、図8に引き続いて、第2係合部材140は、その係合爪142が第2係合部材140の係合爪142に係合するように、変速機アクチュエータACT2(フォークシャフト160)によって図9中の係合位置に設定される。具体的には、変速機アクチュエータACT2によってフォークシャフト160が矢印X2の方向に駆動され、このフォークシャフト160の鍔部162がフォーク143の可動部144を矢印X2の方向に付勢する。その結果、可動部144は、保持装置180による保持力に打ち勝つことによって、即ちロックボール181がコイルスプリング182の弾発力に抗して外側の凹部145から外れて内側の凹部145に嵌ることによって、フォークシャフト160と一体となって矢印X2の方向に移動する。このため、フォーク143に連結されている第2係合部材140は、コイルスプリング151の弾発力に抗して図2に示す非係合位置から図9に示す係合位置に移動する。一方で、フォークシャフト160の鍔部162による可動部144の付勢は解除されており、保持装置180による可動部144の保持力は有効である。このため、フォーク143に連結されている第2係合部材140は、図7に示す非係合位置に維持される。一方で、第1係合部材130は、前述のような保持装置170による保持力と、係合爪132の斜面132aと被係合爪112の斜面112aとの当接によって生じる吸い込み荷重(コイルスプリング151の弾発力に対抗する荷重)とによって、その係合位置に維持される。従って、図9に示す中間モードでは、一時的に第1係合部材130が第1被係合部材110に係合し、且つ第2係合部材140が第2被係合部材120に係合した二重係合状態(「二重噛み合い状態」ともいう)が形成される。
図9には、低速モードと高速モードとの間で、変速機T/Mが1速から2速に変更される過程の状態である中間モードが示されている。即ち、図8に引き続いて、第2係合部材140は、その係合爪142が第2係合部材140の係合爪142に係合するように、変速機アクチュエータACT2(フォークシャフト160)によって図9中の係合位置に設定される。具体的には、変速機アクチュエータACT2によってフォークシャフト160が矢印X2の方向に駆動され、このフォークシャフト160の鍔部162がフォーク143の可動部144を矢印X2の方向に付勢する。その結果、可動部144は、保持装置180による保持力に打ち勝つことによって、即ちロックボール181がコイルスプリング182の弾発力に抗して外側の凹部145から外れて内側の凹部145に嵌ることによって、フォークシャフト160と一体となって矢印X2の方向に移動する。このため、フォーク143に連結されている第2係合部材140は、コイルスプリング151の弾発力に抗して図2に示す非係合位置から図9に示す係合位置に移動する。一方で、フォークシャフト160の鍔部162による可動部144の付勢は解除されており、保持装置180による可動部144の保持力は有効である。このため、フォーク143に連結されている第2係合部材140は、図7に示す非係合位置に維持される。一方で、第1係合部材130は、前述のような保持装置170による保持力と、係合爪132の斜面132aと被係合爪112の斜面112aとの当接によって生じる吸い込み荷重(コイルスプリング151の弾発力に対抗する荷重)とによって、その係合位置に維持される。従って、図9に示す中間モードでは、一時的に第1係合部材130が第1被係合部材110に係合し、且つ第2係合部材140が第2被係合部材120に係合した二重係合状態(「二重噛み合い状態」ともいう)が形成される。
この中間モードでは、第2係合部材140が第2被係合部材120と係合した結果、この第2係合部材140の回転速度は2ωからωに半減する。また、この第2係合部材140に連結された第2遊転ギヤG2oの回転速度も2ωからωに半減する。これにより、第2遊転ギヤG2oの回転が、固定ギヤG2i、入力軸A2及び固定ギヤG1iを経由して第1遊転ギヤG1oに伝達されることで、第1遊転ギヤG1o及び第1被係合部材110の回転速度はいずれもωから(1/2)ωに半減する。この場合、入力軸A2の回転は、一時的に第1遊転ギヤG1o及び第2遊転ギヤG2oの双方を介して出力軸A3に伝達される。この中間モードが本発明の「中間モード」に相当する。
この場合、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lは、低速モード時の第1の間隔L1を上回る第2の間隔L2になる。即ち、低速モード時に比べて間隔L(コイルスプリング151の長さ)が増えるため、第1係合部材130及び第2係合部材140をそれぞれ当該係合部材の非係合位置に向けて弾性付勢する弾発力は低速モード時よりも大きくなる。一方で、第1係合部材130の回転速度の低下によって第1係合部材130と第1被係合部材110との間に回転差が生じ、前述の吸い込み荷重が消失する。このため、保持装置170による保持力のみでは可動部134をもはや保持することができなくなり、フォーク133に連結されている第1係合部材130は、コイルスプリング151の弾発力にしたがってその係合位置から非係合位置に向けて移動する。
(高速モード)
図10に示すように、第1係合部材130が当該第1係合部材の非係合位置に制御され、且つ第2係合部材140が当該第2係合部材の係合位置に制御されることによって高速モードが達成される。このとき、第1係合部材130は、図8の中間モードに引き続きコイルスプリング151の弾発力にしたがってその係合位置から非係合位置に復帰する。具体的には、コイルスプリング151の弾発力が保持装置170による可動部134の保持力に打ち勝つことによって、即ちロックボール171がコイルスプリング172の弾発力に抗して内側の凹部135から外れて外側の凹部135に嵌ることによって、可動部134はフォークシャフト160と一体となって矢印X2の方向に移動する。その結果、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lは、中間モード時の第2の間隔L2から低速モード時と同一の第1の間隔L1に復帰し、第1係合部材130と第1被係合部材110との係合が完全に解除される。この場合、入力軸A2の回転は、第2遊転ギヤG2oのみを介して出力軸A3に伝達され、2速の減速比を有する動力伝達系統が形成される。かくして、1速から2速への変更(加速シフト)を瞬時に行うことができ、これにより駆動トルクの途切れのないシームレスシフトが達成される。この高速モードが本発明の「高速モード」に相当する。
図10に示すように、第1係合部材130が当該第1係合部材の非係合位置に制御され、且つ第2係合部材140が当該第2係合部材の係合位置に制御されることによって高速モードが達成される。このとき、第1係合部材130は、図8の中間モードに引き続きコイルスプリング151の弾発力にしたがってその係合位置から非係合位置に復帰する。具体的には、コイルスプリング151の弾発力が保持装置170による可動部134の保持力に打ち勝つことによって、即ちロックボール171がコイルスプリング172の弾発力に抗して内側の凹部135から外れて外側の凹部135に嵌ることによって、可動部134はフォークシャフト160と一体となって矢印X2の方向に移動する。その結果、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lは、中間モード時の第2の間隔L2から低速モード時と同一の第1の間隔L1に復帰し、第1係合部材130と第1被係合部材110との係合が完全に解除される。この場合、入力軸A2の回転は、第2遊転ギヤG2oのみを介して出力軸A3に伝達され、2速の減速比を有する動力伝達系統が形成される。かくして、1速から2速への変更(加速シフト)を瞬時に行うことができ、これにより駆動トルクの途切れのないシームレスシフトが達成される。この高速モードが本発明の「高速モード」に相当する。
なお具体的に図示しないものの、2速から1速への変速段の変更(減速シフト)については、図10から図7に至る制御態様が実質的に反対に実行されることによって、1速から2速への変速段の変更(加速シフト)と同様のシームレスシフトが達成される。
上述の各モードを参照した場合、第1係合部材130、第2係合部材140、可動部134及び可動部144に作用する荷重を、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lについて図11のように整理することができる。なお、図11では、保持装置170,180による可動部134,144の保持力を白抜き矢印で示し、コイルスプリング151の弾発力を黒塗り矢印で示している。この場合、各矢印の表示の大きさが荷重の大小を表している。また、便宜上、前述の吸い込み荷重の説明を省略している。
図11中の(a)は、図2に対応するものであり、第1係合部材130及び第2係合部材140が共に非係合位置にある初期段階を示している。この初期段階では、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lがコイルスプリング151の自然長さと一致するL0になっており、コイルスプリング151による弾発力は生じていない。
図11中の(b)及び(c)はそれぞれ、図7及び図9に対応するものであり、第1係合部材130及び第2係合部材140のうちの一方が係合位置にあり、他方が非係合位置にある第1段階を示している。この第1段階では、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lがコイルスプリング151の自然長さを上回る第1の間隔L1になっている。この場合、保持装置170による可動部134の保持力と、保持装置180による可動部144の保持力は共にコイルスプリング151の弾発力を上回っており、第1係合部材130及び第2係合部材140はそれぞれ、当該係合部材の係合位置又は非係合位置に維持される。
図11中の(d)は、図8に対応するものであり、第1係合部材130及び第2係合部材140の双方が当該係合部材の係合位置にある第2段階を示している。この第2段階では、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔Lが、第1段階での第1の間隔L1を上回る第2の間隔L2になっている。この場合、コイルスプリング151の弾発力は、保持装置170による可動部134の保持力と、保持装置180による可動部144の保持力の双方を上回っており、第1係合部材130及び第2係合部材140はそれぞれ、当該係合部材の係合位置から非係合位置に移動する。要するに、本実施形態では、保持装置170,180による可動部134,144の保持力とコイルスプリング151による弾発力との大小が、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔に応じて入れ替わる。なお、保持力と弾発力との大小が入れ替わる間隔については、第1係合部材130や第2係合部材140のための制御モードに応じて当該間隔を適宜に設定することができる。
上記構成の動力伝達機構101によれば、フォークシャフト160や、このフォークシャフト160を駆動するアクチュエータが、第1係合部材130及び第2係合部材130のために共用されるため、シームレスシフトを達成するための要素の部品点数を削減することができる。その結果、変速機T/Mに関する組み付け工数、重量、コスト等を抑えることが可能になる。また、第1係合部材130と第1被係合部材110との係合解除、及び第2係合部材140と第2被係合部材120との係合解除のためにコイルスプリング151を用いるため、例えば被係合部材110,120に上述のような高強度の傾斜面、即ち出力軸A3の軸方向に対して傾斜するように延在する傾斜面を設ける必要がない。その結果、変速機T/Mの重量やコストの上昇を抑えるとともに、減速シフト時のシームレスシフトも円滑に行うことが可能になる。また、第1係合部材130及び第2係合部材140をそれぞれ、当該係合部材の非係合位置に設定する構造を、1つのコイルスプリング151を用いて簡素化することができる。
更に、保持装置170,180による保持力とコイルスプリング151による弾発力との大小が、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔に応じて入れ替わるため、第1係合部材130及び第2係合部材140のそれぞれを当該係合部材の係合位置と非係合位置との間で円滑に駆動することができる。とりわけ、各モードに適した態様で、第1係合部材130及び第2係合部材140のそれぞれの位置を設定することができる。
更に、第1係合部材130と第1被係合部材110とが係合する構造、及び第2係合部材140と第2被係合部材120とが係合する構造を、互いに噛み合う一組又は複数組の爪体(係合爪及び被係合爪)を用いて簡素化することができる。
更に、保持装置170,180による保持力とコイルスプリング151による弾発力との大小が、第1係合部材130と第2係合部材140の間隔に応じて入れ替わるため、第1係合部材130及び第2係合部材140のそれぞれを当該係合部材の係合位置と非係合位置との間で円滑に駆動することができる。とりわけ、各モードに適した態様で、第1係合部材130及び第2係合部材140のそれぞれの位置を設定することができる。
更に、第1係合部材130と第1被係合部材110とが係合する構造、及び第2係合部材140と第2被係合部材120とが係合する構造を、互いに噛み合う一組又は複数組の爪体(係合爪及び被係合爪)を用いて簡素化することができる。
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記の実施形態では、動力伝達機構101,102,103を出力軸A3に設ける場合について記載したが、本発明では、動力伝達機構101,102,103に相当する機構をそれぞれ入力軸A2及び出力軸A3の少なくとも一方に設けることができる。即ち、所定の遊動ギヤが設けられている軸に対して、本発明の動力伝達機構を適用することができる。
上記の実施形態では、一例として1速と2速との間で変速が行われる動力伝達機構について記載したが、相対的に低速の変速段と相対的に高速側の変速段との間で変速が行われる動力伝達機構に本発明を適用することができる。
T/M…変速機、C/D…クラッチ、D/F…ディファレンシャル、D/W…駆動輪、E/G…エンジン、F/W…フライホイール、A1…駆動出力軸、A2…入力軸、A3…出力軸、ACT1…クラッチアクチュエータ、ACT2…変速機アクチュエータ、AP…アクセルペダル、BP…ブレーキペダル、SL…シフトレバー、ECU…電子制御ユニット、G1i、G2i、G3i、G4i、G5i…固定ギヤ、G1o、G2o、G3o、G4o、G5o…遊転ギヤ、S1…アクセル開度センサ、S2…シフト位置センサ、S3…ブレーキセンサ、101,102,103…動力伝達機構、110…第1被係合部材、111,121…本体部、112,122…被係合爪、112a,122a…斜面、113,123…空間部、120…第2被係合部材、130…第1係合部材、131,141…本体部、132,142…係合爪、132a,142a…斜面、133,143…フォーク、134,144…可動部、135,145…凹部、140…第2係合部材、150…スナップリング、151…コイルスプリング、160…フォークシャフト、161,162…鍔部、170,180…保持装置、171,181…ロックボール、172,182…コイルスプリング、200…制御装置
Claims (4)
- 車両の駆動源の駆動出力軸と前記車両の駆動輪とを結ぶ動力伝達系統に介装され、複数の変速段を有する車両用変速機であって、
前記駆動出力軸との間で動力伝達系統が形成される入力軸と、
前記駆動輪との間で動力伝達系統が形成される出力軸と、
それぞれが前記入力軸又は前記出力軸に同軸的且つ相対回転不能に設けられるとともに、前記複数の変速段のそれぞれに対応する複数の固定ギヤと、
それぞれが前記入力軸又は前記出力軸に同軸的且つ相対回転可能に設けられるとともに、前記複数の変速段のそれぞれに対応し、且つ対応する変速段の前記固定ギヤと常時噛合する複数の遊転ギヤと、
を備え、
前記複数の遊転ギヤは、
前記複数の変速段のうちの低速側変速段及び高速側変速段につき、前記低速側変速段の前記固定ギヤに常時噛合する第1遊転ギヤと、前記高速側変速段の前記固定ギヤに常時噛合する第2遊転ギヤと、を含み、
当該車両用変速機は更に、
前記第1遊転ギヤの前記第2遊転ギヤとの対向部位に固定された第1被係合部材と、
前記第2遊転ギヤの前記第1遊転ギヤとの対向部位に固定された第2被係合部材と、
前記入力軸及び前記出力軸のうち前記第1遊転ギヤ及び前記第2遊転ギヤの双方が設けられている軸の前記第1被係合部材と前記第2被係合部材との間に前記軸に対して同軸的且つ相対回転不能且つ前記軸の軸方向に関して前記第1被係合部材と係合する係合位置と当該係合位置から前記第2被係合部材側に外れた非係合位置との間を移動可能に設けられた第1係合部材と、
前記軸の前記第1係合部材と前記第2被係合部材との間に前記軸に対して同軸的且つ相対回転不能且つ前記軸方向に関して前記第2被係合部材と係合する係合位置と当該係合位置から前記第1被係合部材側に外れた非係合位置との間を移動可能に設けられた第2係合部材と、
前記第1係合部材及び前記第2係合部材のそれぞれを前記軸方向に駆動するための駆動装置と、
を備え、
前記駆動装置は、
前記第1係合部材及び前記第2係合部材の双方に当該係合部材の前記係合位置から前記非係合位置に向かう弾発力を常時に付与する弾性部材と、
前記第1係合部材及び前記第2係合部材の双方を前記弾性部材の弾発力に抗して当該係合部材の前記非係合位置から前記係合位置に駆動する、前記第1係合部材及び前記第2係合部材に共用の駆動部材と、を含み、
前記第1係合部材が当該第1係合部材の前記係合位置に位置し、且つ前記第2係合部材が当該第2係合部材の前記非係合位置に位置する低速モードと、
前記第1係合部材が当該第1係合部材の前記非係合位置に位置し、且つ前記第2係合部材が当該第2係合部材の前記係合位置に位置する高速モードと、
前記低速モードと前記高速モードとの間で、前記第1係合部材及び前記第2係合部材の双方が当該係合部材の前記係合位置に位置する中間モードと、のうちのいずれかのモードを選択的に達成する、車両用変速機。 - 請求項1に記載の車両用変速機であって、
前記駆動装置は、前記第1係合部材及び前記第2係合部材のそれぞれを前記軸方向に関して保持する保持装置を含み、前記保持装置による保持力と前記弾性部材による弾発力との大小が、前記駆動部材によって設定された前記第1係合部材と前記第2係合部材の間隔に応じて入れ替わる、車両用変速機。 - 請求項2に記載の車両用変速機であって、
前記第1係合部材と前記第2係合部材は、前記低速モード及び前記高速モードにおいて第1の間隔を隔てて当該係合部材の前記係合位置又は前記非係合位置に配置されるとともに、前記保持装置による保持力の大きさが前記弾性部材による弾発力の大きさを上回る一方で、前記中間モードにおいて前記第1の間隔を上回る第2の間隔を隔てて当該係合部材の前記係合位置に配置されるとともに、前記弾性部材による弾発力の大きさが前記保持装置による保持力の大きさを上回る、車両用変速機。 - 請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の車両用変速機であって、
前記第1被係合部材及び前記第2被係合部材はそれぞれ、円板状の本体部と、前記本体部の片面において前記第1係合部材又は前記第2係合部材に向けて突出するとともに当該本体部の周方向に等間隔で配置された複数の被係合爪と、を含み、
前記第1係合部材及び前記第2係合部材はそれぞれ、円板状の本体部と、前記被係合部材との係合のために前記本体部の片面において前記第1係合部材又は前記第2係合部材の前記複数の被係合爪に向けて突出するとともに前記複数の被係合爪に対応して当該本体部の周方向に等間隔で配置された複数の係合爪と、を含む、車両用変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012076124A JP2013204758A (ja) | 2012-03-29 | 2012-03-29 | 車両用変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012076124A JP2013204758A (ja) | 2012-03-29 | 2012-03-29 | 車両用変速機 |
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JP2013204758A true JP2013204758A (ja) | 2013-10-07 |
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ID=49524058
Family Applications (1)
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JP2012076124A Pending JP2013204758A (ja) | 2012-03-29 | 2012-03-29 | 車両用変速機 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015140893A (ja) * | 2014-01-30 | 2015-08-03 | 株式会社イケヤフォ−ミュラ | トランスミッション |
JP2016211650A (ja) * | 2015-05-08 | 2016-12-15 | ジヤトコ株式会社 | 自動変速機 |
-
2012
- 2012-03-29 JP JP2012076124A patent/JP2013204758A/ja active Pending
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