JP2015137203A - ガラス成形品の製造方法およびガラス成形品の製造装置 - Google Patents

ガラス成形品の製造方法およびガラス成形品の製造装置 Download PDF

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修志 池永
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Abstract

【課題】ガラス成形品の成形面において高い鏡面性が得られるガラス成形品の製造方法およびガラス成形品の製造装置、を提供する。
【解決手段】ガラス成形品の製造方法は、下型31に、溶融したガラス素材71を供給する工程と、ガラス素材71が供給された下型31と、下型31と距離を設けて対向配置される上型32との間を、ガラス素材71からの揮発ガスが上型32に付着することを防ぐように遮蔽する工程と、下型31および上型32によって、ガラス素材71を加圧成形する工程とを備える。
【選択図】図5

Description

この発明は、一般的には、ガラス成形品の製造方法およびガラス成形品の製造装置に関し、より特定的には、ダイレクトプレス法を用いたガラス成形品の製造方法およびガラス成形品の製造装置に関する。
従来のガラス成形品の製造方法に関して、たとえば、特開昭63−123820号公報には、レンズの表面に汚れを生じさせることなくガラス材料を成形することを目的とした、ガラスの成形方法が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示されたガラスの成形方法においては、金型の近くに吸引装置を配置することによって、加熱時のガラス材料から出るガスを吸引する。
また、特開平7−330349号公報には、ダイレクトモールド法において、表面の清浄なガラスコブを連続的に得ることによって、性能の良好な光学ガラス素子を効率的に製造することを目的とした、光学ガラス素子の製造方法が開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された光学ガラス素子の製造方法においては、溶融ガラスを受け、ガラスゴブとして保持するゴブ受け型に近接して、ガス吸引管が設けられる。これにより、ガラスゴブから揮発するガラス揮発物を、ガス吸引管によって吸引する。
特開昭63−123820号公報 特開平7−330349号公報
スマートフォンやタブレット端末に代表されるディスプレイ装置に具備されるカバーガラスが広く普及している。このようなカバーガラスが一例として挙げられるガラス成形品の製造方法として、上型および下型を含む金型により溶融したガラス素材を加圧成形するダイレクトプレス法が利用されている。
このダイレクトプレス法においては、下型に溶融したガラス素材を滴下した後、下型と上型とを組み合わせることによって、ガラス素材を加圧成形する。しかしながら、下型に滴下されたガラス素材から揮発ガスが発生することにより、下型に対して対向配置された上型にガラス揮発物が付着する。この場合、上型に付着したガラス揮発物がガラス成形品の表面に粗さとして転写し、上型による成形面の鏡面性が損なわれる可能性がある。
一方、上述の特許文献1〜2には、金型近くに配置した吸引装置またはガス吸引管によって、ガラス素材から発生した揮発ガスを吸引する手法が開示されている。しかしながら、このような手法では、揮発ガスを十分に排除することは難しく、上型へのガラス揮発物の付着を抑制する効果は小さい。
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、ガラス成形品の成形面において高い鏡面性が得られるガラス成形品の製造方法およびガラス成形品の製造装置を提供することである。
この発明に従ったガラス成形品の製造方法は、第1金型に、溶融したガラス素材を供給する工程と、ガラス素材が供給された第1金型と、第1金型と距離を設けて対向配置される第2金型との間を、ガラス素材からの揮発ガスが第2金型に付着することを防ぐように遮蔽する工程と、第1金型および第2金型によって、ガラス素材を加圧成形する工程とを備える。
このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、ガラス素材が供給された第1金型と、第1金型と距離を設けて対向配置される第2金型との間を遮蔽することによって、第2金型にガラス揮発物が付着することを抑制できる。これにより、第2金型によるガラス成形品の成形面において、高い鏡面性を得ることができる。
また好ましくは、第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程は、第1金型と第2金型との間に気流を形成する工程を含む。このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、気流によって第1金型と第2金型との間を遮蔽することができる。
また好ましくは、第1金型と第2金型との間に気流を形成する工程は、第1金型と第2金型との対向方向に直交する平面に平行に平面状の気流を形成する工程を含む。このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、気流が第1金型および第2金型に与える影響を、小さく抑えることができる。
また好ましくは、ガラス素材を加圧成形する工程は、第2金型を第1金型に向けて移動させる工程を含む。ガラス成形品の製造方法は、第2金型を第1金型に向けて移動させる工程の前に、第1金型と第2金型とを距離を設けて対向配置する工程をさらに備える。第1金型と第2金型とを距離を設けて対向配置する工程から、第2金型を第1金型に向けて移動させる工程の開始後に渡って、第1金型と第2金型との間に気流を形成する。
このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、第1金型と第2金型とを距離を設けて対向配置する工程から、第2金型を第1金型に向けて移動させる工程の開始後に渡って、第2金型へのガラス揮発物の付着を抑制することができる。
また好ましくは、第1金型と第2金型との間に気流を形成する工程は、第1金型と第2金型との対向方向において第2金型よりも第1金型に近い位置に、気流を形成する工程を含む。このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、第2金型を第1金型に向けて移動させる工程時、第2金型がガラス素材からの揮発ガスに晒される時間をより短縮することができる。
また好ましくは、ガラス素材を加圧成形する工程において、第2金型は加熱される。第1金型に向けて移動する第2金型が気流の形成位置に到達するよりも前に、気流の形成を停止する。このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、気流が第2金型の温度に影響を与えることを抑制できる。
また好ましくは、第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程は、第1金型と第2金型との間に板状部材を設ける工程を含む。このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、板状部材によって第1金型と第2金型との間を遮蔽することができる。
また好ましくは、第2金型は、第1金型と対面して設けられる型面を有する。第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程は、第1金型と第2金型との対向方向において型面が遮蔽領域内に投影されるように、第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程を含む。このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、第2金型へのガラス揮発物の付着をより効果的に抑制することができる。
また好ましくは、ガラス成形品の製造方法は、ガラス素材を加圧成形する工程の前に、第1金型と第2金型とを距離を設けて対向配置する工程をさらに備える。第1金型と第2金型とを対向配置する工程が終了するよりも前に、第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程を開始する。このように構成されたガラス成形品の製造方法によれば、第2金型へのガラス揮発物の付着をより効果的に抑制することができる。
この発明に従ったガラス成形品の製造装置は、溶融したガラス素材が供給される第1金型と、第1金型と対向して配置され、第1金型とともにガラス素材を加圧成形する第2金型と、ガラス素材が供給された第1金型と、第2金型との間を遮るように遮蔽体を設置するための遮蔽体設置部とを備える。
このように構成されたガラス成形品の製造装置によれば、ガラス素材が供給された第1金型と、第2金型との間を遮るように遮蔽体を設置することによって、第2金型にガラス揮発物が付着することを抑制できる。これにより、第2金型によるガラス成形品の成形面において、高い鏡面性を得ることができる。
以上に説明したように、この発明に従えば、ガラス成形品の成形面において高い鏡面性が得られるガラス成形品の製造方法およびガラス成形品の製造装置を提供することができる。
この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造装置を示す概略構成図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法を示すフロー図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の第1工程を示す断面図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の第2工程を示す断面図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の第3工程を示す断面図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の第3工程を示す上面図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の第4工程を示す断面図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の第5工程を示す断面図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の第6工程を示す断面図である。 この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の第7工程を示す断面図である。 実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程の第1変形例を示す断面図である。 実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程の第1変形例を示す断面図である。 実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程の第2変形例を示す断面図である。 実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程の第2変形例を示す断面図である。 実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程の第2変形例を示す断面図である。 実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程の第2変形例を示す断面図である。 この発明の実施の形態3におけるガラス成形品の製造方法の工程を示す断面図である。 実施例におけるガラス成形品の製造方法の第1工程を示す断面図である。 実施例におけるガラス成形品の製造方法の第2工程を示す断面図である。 実施例および比較例において、ガラス製品の成形面の表面粗さの測定結果を示す表である。
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造装置を示す概略構成図である。図1を参照して、まず、本実施の形態におけるガラス成形品の製造装置100の構成について説明する。なお、ガラス成形品の製造装置100は、金型により溶融したガラス素材を加圧成形してガラス成形品を得る、いわゆるダイレクトプレス法に基づくものである。ガラス成形品の製造装置100は、複数のガラス成形品を順次製造するものである。
本実施の形態におけるガラス成形品の製造装置100は、素材供給部10と、切断部20と、加圧成形部30と、離型部40と、遮蔽体設置部50と、制御部60とを有し、これらが組み合わさって構成されている。
素材供給部10は、ガラス素材を溶融させて溶融ガラスを加圧成形部30に供給する。素材供給部10は、連続溶融炉11と、ノズル部12と、流出管13とを有する。
連続溶融炉11は、ガラス素材を溶融させて溶融ガラスを貯留する。ノズル部12は、連続溶融炉11において貯留された溶融ガラスを流出管13に導入する。流出管13は、その下端に流出口を有しており、その流出口から鉛直下方に向けて連続的に溶融ガラス流70を流出させる。
切断部20は、素材供給部10から加圧成形部30に供給される溶融ガラスの量を適切な量に調整する。切断部20は、切断機構としてのカッター21と、カッター駆動機構22とを有する。
カッター21は、流出管13から流出する溶融ガラス流70を切断し、当該切断部分を溶融ガラス流70と分離させる。カッター21は、一対の平面形状の剪断刃によって構成され、これら一対の剪断刃が流出管13の下方において突き合わされることによって溶融ガラス流70を切断する。カッター駆動機構22は、カッター21を駆動する。カッター駆動機構22としては、カッター21を切断動作させることが可能な駆動機構であれば特に限定されないが、たとえば、エアシリンダ、サーボモータ、油圧シリンダ、リニアモータ、ステッピングモータ等が利用される。
加圧成形部30は、素材供給部10により供給されたガラス素材を金型36を用いて加圧成形する。加圧成形部30は、金型36を構成する下型31および上型32と、下型駆動機構33と、上型駆動機構34とを有する。
下型31は、後述する滴下工程時、素材供給部10により供給されたガラス素材を受け止める。下型31は、後述する滴下工程から加圧成形工程への移行時、上型32と距離を設けて対向して配置される。下型31は、上型32の鉛直下側に配置される。
金型36を形成する材料としては、耐熱合金(ステンレス合金等)、炭化タングステンを主成分とする超鋼材料、各種セラミックス(炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム等)、カーボンを含む複合材料等、ガラス成形品を製造するための型として公知の材料の中から適宜選択して用いられる。下型31および上型32は、同一の材料にて構成されてもよいし、それぞれ別の材料にて構成されてもよい。
金型36の表面は、耐久性の向上や、溶融したガラス素材との融着の防止を図る観点から、所定の被覆層にて覆われていることが好ましい。被覆層の材料は、特に制限されるものではないが、たとえば、種々の金属(クロム、アルミニウム、チタン等)、窒化物(窒化クロム、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化硼素等)、酸化物(酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化チタン等)等が用いられる。被覆層の成膜方法も、特に制限されないが、たとえば、真空蒸着法やスパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等が利用される。
金型36は、図示しない加熱手段によって所定温度に加熱できるように構成されている。加熱手段としては、公知の加熱手段が適宜選択して用いられ、たとえば、被加熱部材の内部に埋め込んで使用するカートリッジヒータや、被加熱部材の外側に接触させて使用するシート状のヒータ、赤外線加熱装置、高周波誘導加熱装置等が用いられる。
下型駆動機構33は、図1中の矢印で示すDR1方向(水平方向)に下型31を移動させる。これにより、下型31は、素材供給部10から滴下されるガラス素材を受け止めるための位置(滴下ポジションP1)と、受け止めたガラス素材を加圧成形するために上型32と対向する位置(成形ポジションP2)と、ガラス成形品を取り出すための位置(取り出しポジションP3)との間で移動する。なお、下型31の移動方向は、特に限定されず、たとえば、直動方向であってもよいし、旋回方向であってもよい。下型駆動機構33としては、下型31を移動させることが可能な駆動機構であれば特に限定されないが、たとえば、サーボモータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、リニアモータ、ステッピングモータ、またはこれらの組み合わせが利用される。
上型駆動機構34は、図1中に矢印で示すDR2方向(鉛直方向)に上型32を移動させる。これにより、上型32は、鉛直上方の位置と鉛直下方の位置との間を往復動することになり、上型32と下型31とが接近および離隔する。なお、このうちの鉛直上方の位置が、溶融ガラスの加圧成形の前に上型32が待機する位置であり、このうちの鉛直下方の位置が、下型31とともにガラス素材を加圧成形する位置である。上型駆動機構34としては、上型32を移動させることが可能な駆動機構であれば特に限定されないが、たとえば、サーボモータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、リニアモータ、ステッピングモータ、またはこれらの組み合わせが利用される。
離型部40は、加圧成形部30により得られるガラス成形品を金型36から取り出す。離型部40は、吸着装置41を有する。吸着装置41は、取り出しポジションP3に移動された下型31と対向するように設けられている。吸着装置41としては、たとえば、真空吸着を利用した公知の手段が利用される。
遮蔽体設置部50は、溶融ガラスが供給された下型31と、上型32との間を遮るように遮蔽体としての平面状の気流(エアカーテン)を設置する。遮蔽体設置部50は、加圧成形部30に併設されている。遮蔽体設置部50は、成形ポジションP2に配置された下型31と、その下型31と距離を設けて対向配置された上型32との間の空間にエアカーテンを設置する。
遮蔽体設置部50は、エアノズル51およびエア供給部52を有する。エア供給部52は、エアノズル51に向けてエアを供給するためのエア供給源として設けられており、たとえば、電気駆動式のエアコンプレッサーが用いられる。エアノズル51は、エア供給部52から供給されたエアを噴出し、下型31と上型32との間の空間にエアカーテンを形成する。
エアノズル51は、エア供給部52から供給されたエアを噴出する噴出口51aを有する。エアノズル51は、その噴出口51aが下型31と上型32との間の空間に向けて開口するように設けられている。噴出口51aは、適切な範囲に平面状の気流を形成可能なようにスリット形状を有することが好ましい。噴出口51aは、下型31と上型32との対向方向に直交する方向に細長く延びるスリット形状を有することが好ましい。噴出口51aのスリット長は、形成すべきエアカーテンの面積を考慮して適宜決定される。噴出口51aは、たとえば、1〜5mmのスリット幅を有する。エアノズル51から噴出されるエアは、たとえば、10〜50m/secの風速を有する。
なお、下型31と上型32との間に噴出される気体は、エア(空気)に限られず、たとえば、窒素であってもよい。
制御部60は、ガラス成形品の製造装置100の各種機構の動作を制御する。より具体的には、上述のカッター駆動機構22、下型駆動機構33、上型駆動機構34、吸着装置41およびエア供給部52の動作を制御する。制御部60は、カッター21による溶融ガラス流70の切断のタイミング、下型31の移動のタイミング、上型32の移動のタイミング、吸着装置41の動作のタイミング、エア供給部52の作動のタイミング等、ガラス成形品の製造に係る一連のシーケンスを制御する。
以上に説明した図1中のガラス成形品の製造装置100を用いて製造されるガラス成形品の一例として、スマートフォンに具備されるカバーガラスが挙げられる。
カバーガラスは、代表的には、略矩形の平面視を有する平板形状に形成されている。カバーガラスは、略矩形の平面視に限られず、たとえば、矩形の角部が大きく面取りされた形状や多角形状の平面視を有してもよい。カバーガラスは、非円形の平面視を有する。カバーガラスは、平板形状に限られず、たとえば、その外縁が全周に渡って一方の側に折り返されることによって、浅底の受け皿形状を有してもよい。
カバーガラスは、ガラス組成として、50重量%以上70重量%以下のSiO2と、5重量%以上15重量%以下のAl23と、0重量%以上5重量%以下のB23と、5重量%以上20重量%以下のNa2Oと、0重量%以上10重量%以下のK2Oと、0重量%以上10重量%以下のMgOと、0重量%以上10重量%以下のCaOと、0重量%以上5重量%以下のBaOと、0重量%以上5重量%以下のTiO2と、0重量%以上15重量%以下のZrO2とを含有してもよい。
このような組成のガラスは、ガラス転移温度をTgとした場合に、加圧成形においてガラスに転写される形状に大きく影響を及ぼす(Tg−30)[℃]以上(Tg+150)[℃]以下の温度範囲において適切なガラス粘性を維持し、良好な転写性を確保した状態で面転写を完了させることができ、かつ、ガラスの熱収縮による割れを抑制することができる。
ガラスの線膨張係数αは、100[℃]以上300[℃]以下の温度範囲において70以上110[×10-7/℃]以下であることが好ましい。たとえば、100℃以上300℃以下の範囲で98[×10-7/℃]の線膨張係数αを有するガラスを使用してもよい。また、ガラス粘性をη[dPa・s]とすると、logη=11.0〜14.5であることが好ましい。上記のような特性を持つガラスは、ダイレクトプレス法によるカバーガラスの成形に適している。
図2は、この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法を示すフロー図である。図3から図10は、この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程を示す図である。続いて、本実施の形態におけるガラス成形品の製造方法について説明する。
本実施の形態におけるガラス成形品の製造方法は、いわゆるダイレクトプレス法に基づくものであり、上述した本実施の形態におけるガラス成形品の製造装置100を用いて好適に実施される。また、本実施の形態におけるガラス成形品の製造方法は、後述する一連の工程が繰り返されることにより、複数のガラス成形品が順次製造するものである。
図1を参照して、本実施の形態におけるガラス成形品の製造方法においては、金型36が、予め、上述した加熱手段によって所定の温度に加熱されている。ここで、所定の温度とは、ガラス成形品に良好な転写面が形成できる温度を意味する。
一般的に、金型36の温度が低すぎると、ガラス成形品に高精度な転写面を形成することが困難になる。逆に、必要以上に金型36の温度を高くしすぎることは、金型36と溶融ガラスとの間で融着が発生し易くなったり、金型36の寿命が短くなったりするおそれがあるため好ましくない。
たとえば、加圧成形するガラス材料のガラス転移点Tg[℃]に対して、金型36の温度を(Tg−100)[℃]以上(Tg+100)[℃]以下の範囲に設定する。実際には、ガラス材料の種類、ガラス成形品の形状および大きさ、金型36の形成材料、保護膜の種類等、種々の条件を考慮に入れて適正な温度を決定する。金型36を構成する各型の加熱温度は、同一の温度であってもよいし、異なる温度であってもよい。
本実施の形態におけるガラス成形品の製造方法においては、金型36を所定の温度に加熱した後に、高温の状態にある溶融ガラスを金型36を用いて加圧成形する。この場合、金型36の温度を一定に保ったまま、後述する一連の工程を行なうことができる。さらに、金型36の温度を一定に保ったまま、複数のガラス成形品を順次製造することもできる。したがって、1つのガラス成形品を製造する毎に金型36の加熱と冷却とを繰り返す必要がないことから、極めて短時間で効率よく複数のガラス成形品を製造することができる。
ここで、金型36の温度を一定に保つとは、金型36を加熱するための温度制御における目標設定温度を一定に保つという意味である。したがって、後述する各工程の実施中において、溶融ガラスの接触等による金型36の温度変動までをも防止しようとするものではなく、かかる温度の変動は許容できる。
図2および図3を参照して、まず、下型31を滴下ポジションP1(図1を参照)に移動させる(S101)。下型31の現在位置を検出した結果、下型31が既に滴下ポジションP1に配置されている場合には、下型31の移動を行なわない。一方、下型31の現在位置を検出した結果、下型31が滴下ポジションP1以外の位置に配置されている場合には、制御部60からの指令により下型駆動機構33が作動し、下型31を滴下ポジションP1に移動させる。
次に、溶融ガラス流70を切断する(S102)。溶融した状態で連続溶融炉11内に貯留されたガラス素材は、ノズル部12を経由して連続溶融炉11から流出し、自重により流出管13から、溶融ガラス流70として液線状に落下する。流出管13から流出した溶融ガラス流70をカッター21によって切断し、滴状の形状を有するガラス素材71を得る。ガラス素材71は、下型31に向けて落下する。
図2および図4を参照して、溶融した状態の高温のガラス素材71を下型31に滴下する(S103)。カッター21により切断されて落下するガラス素材71は、下型31上に溜め受けられる。下型31に供給されたガラス素材71は、上型32と対面して設けられる下型31の型面31a上で濡れ広がる。下型31に滴下されるガラス素材71の温度は、たとえば、800℃以上900℃以下の範囲である。S102工程とS103工程とによって、ガラス素材71の滴下工程が完了する。
図2および図5を参照して、次に、下型31を成形ポジションP2(図1を参照)に移動させる(S104)。制御部60からの指令により下型駆動機構33が作動し、水平方向(図1中に示すDR2方向)に下型31を移動させる。これにより、下型31を成形ポジションP2に移動させ、下型31と上型32とを距離を設けて対向配置する。
この際、本実施の形態におけるガラス成形品の製造方法においては、ガラス素材71が供給された下型31と、下型31と距離を設けて対向配置される上型32との間を遮蔽するように、エアカーテンを設置する。より具体的には、制御部60からの指令によりエア供給部52を作動させ、エア供給部52からエアノズル51を通じて下型31と上型32との間の空間にエアを噴出する。
下型31に滴下されたガラス素材71から揮発ガスが発生するため、その揮発ガスによって、下型31と対面して設けられる上型32の型面32aにガラス揮発物が付着する懸念がある。本実施の形態では、エアカーテンの形成により下型31と上型32との間を遮蔽することによって、ガラス揮発物が上型32の型面32aに付着することを防止できる。
エアカーテンの形成を開始するタイミングは、下型31を成形ポジションP2に移動させる工程が終了するよりも前であることが好ましい。この場合、下型31と上型32とが対向配置されるよりも前にエアカーテンが設置されるため、上型32へのガラス揮発物の付着をより確実に防ぐことができる。エアカーテンの形成を開始するタイミングは、下型31を成形ポジションP2に移動させる工程よりも先行する工程(たとえば、ガラス素材71の滴下工程)からであってもよいし、下型31を成形ポジションP2に移動させる工程の開始後、下型31と上型32とが上下に対面する部分が生じる直前のタイミングであってもよい。
エアカーテンの形成を終了するタイミングは、下型31を成形ポジションP2に移動させる工程の後に続く加圧成形工程の開始直前としてもよいし、加圧成形工程の開始後も継続してエアカーテンを形成してもよい。
下型31と上型32との間に形成するエアカーテンの姿勢(傾き)は特に限定されないが、図5中に示されるように、下型31と上型32との対向方向に直交する平面に平行なエアカーテンを形成することが好ましい。すなわち、本実施の形態では、下型31と上型32との間で水平方向に延在するようにエアカーテンを形成することが好ましい。この場合、エアカーテンの形成によって、その上下に配置された上型32および下型31の温度が変化したり、下型31に供給されたガラス素材71の温度が変化したりすることを抑制できる。
図6中には、図5中の矢印VIに示す方向から見たガラス成形品の製造方法の工程が示されている。図6を参照して、エアカーテンの形成に際しては、下型31と上型32との対向方向において上型32の型面32aがエアカーテンによる遮蔽領域53内に投影されるように、エアカーテンを形成することが好ましい。
下型31と上型32との対向方向から見て、上型32の型面32aは、長さBの一辺を有する矩形形状に形成されている。エアノズル51は、その噴出口51aが型面32aの長さBの一辺に沿ってスリット状に延びるように設けられている。本実施の形態では、スリット状の噴出口51aが矩形形状の型面32aの長辺に沿って延びるように、エアノズル51が設けられている。エアノズル51からのエア噴出によって形成されるエアカーテンは、スリット状の噴出口51aの長手方向において、長さBよりも大きい幅Cを有することが好ましい。
この場合、下型31から見て、上型32の型面32aの全面がエアカーテンにより覆われるため、上型32へのガラス揮発物の付着をより確実に防ぐことができる。
図2および図7を参照して、次に、上型32を下降移動させる(S105)。制御部60からの指令により上型駆動機構34を作動させ、上型32を、図7中の矢印に示すように下型31へ向けて下降させる。
図2および図8を参照して、ガラス素材71を、下型31および上型32によって加圧成形する(S106)。ガラス素材71は、下型31の型面31aおよび上型32の型面32aによって押圧されることにより加圧成形される。S105工程とS106工程とによって、ガラス素材71の加圧成形工程が完了する。
加圧成形工程の開始時のガラス素材71の温度は、(Tg+50)℃以上(Tg+200)℃以下に設定されることが好ましい。たとえば、Tgが540℃の場合、加圧直前のガラス素材71の温度を680℃としてもよい。ガラス素材71の温度は、たとえば放射温度計によって測定することができる。このような温度設定を得るためには、ガラス転移温度をTgに対し、上型32の温度を(Tg−60)℃以上(Tg−20)℃以下に設定し、下型31の温度を(Tg−80)℃以上(Tg−10)℃以下に設定するとよい。たとえば、Tgが540℃の場合、上型32の温度を500℃とし、下型31の温度を520℃としてもよい。また、加圧の際には、たとえば、ガラス素材71には、略2トンの加圧力が略10秒間負荷される。これにより、ガラス素材71が加圧成形され、ガラス成形品72が形成される。
図2および図9を参照して、次に、上型32を上昇移動させる(S107)。図9中の矢印に示すように上型32を上昇移動させることにより、ガラス成形品72から上型32を分離させる。
上型32が上昇動作のための移動を開始するときのガラス成形品72の温度は、(Tg−30)℃以上(Tg+100)℃以下に設定されることが好ましい。たとえば、Tgが540℃の場合、上型32の上昇動作の開始時のガラス成形品72の温度は、510℃以上640℃以下に設定されるとよい。当該温度が(Tg−30)℃より低くなる場合は、ガラス成形品72の熱収縮量が大きくなり割れなどの欠陥が発生しやすくなる。一方、当該温度が(Tg+100)℃より高くなる場合には、上昇動作に伴ってガラス成形品72の面形状が崩れたり、良好な転写性が得られなくなることが懸念される。
図2および図10を参照して、次に、下型31を取り出しポジションP3(図1を参照)に移動させる(S108)。制御部60からの指令により下型駆動機構33を作動させ、水平方向(図1中に示すDR1方向)に下型31を移動させることにより、下型31を、上型32の下方に位置する成形ポジションP2から、上型32に対向しない取り出しポジションP3に移動させる。
次に、下型31からガラス成形品72を取り出して回収する(S109)。ガラス成形品72の取り出し作業は、たとえば、真空吸着を利用した吸引装置などの公知の離型装置を用いて行なう。これにより、下型31からガラス成形品72を離型する。
その後、下型31から離型されたガラス成形品72に対して、適当な切断工程および/または研磨工程を実施することによって、カバーガラス等のガラス製品の最終形状を得る。
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるガラス成形品の製造装置100およびガラス成形品の製造方法によれば、ガラス素材71が供給された下型31と、下型31に対向配置された上型32との間を遮蔽するようにエアカーテンを形成することによって、ガラス素材71から発生する揮発ガスの上型32への流動を阻止する。これにより、上型32の型面32aにガラス揮発物が付着することを防ぎ、上型32によるガラス成形品72の成形面において高い鏡面性を得ることができる。特に、カバーガラスのように比較的大面積のガラス部品を作製する場合には、従来のように揮発ガスを吸引する場合よりも効果的に揮発ガスの付着を防止することができる。
なお、本実施の形態においては、ガラス素材を加圧成形するための金型として一対の下型および上型を利用する場合を例示して説明したが、型の数はこれに限定されるものではなく、3つ以上の型を用いて加圧成形を行なってもよい。
また、本実施の形態においては、本発明が適用されて製造されるガラス成形品として、スマートフォンに具備されるカバーガラスを例示したが、これに限定されるものではなく、たとえばタブレット端末等の他のディスプレイ装置のカバーガラスの製造や、モバイルコンピュータ、デジタルカメラ等に代表される電子機器等の外装カバーの製造に本発明が適用されてもよいし、各種レンズや光記録媒体の製造に本発明が適用されてもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、主に、実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法においてエアカーテンを形成したタイミングの変形例について説明する。以下、実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法と比較して重複する工程については、その説明を繰り返さない。
図11および図12は、実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程の第1変形例を示す断面図である。図11中には、実施の形態1において図5を参照して説明した工程(S104)が示され、図12中には、実施の形態1において図7を参照して説明した工程(S105)が示されている。
図11を参照して、ガラス素材71が供給された下型31と、下型31と距離を設けて対向配置される上型32との間を遮蔽するように、エアカーテンを設置する。本変形例では、下型31を成形ポジションP2(図1を参照)に移動させる工程から、上型32を下型31に向けて下降移動させる工程の開始後に渡って、エアカーテンを継続して形成する。
図12を参照して、上型32を下型31に向けて下降移動させる工程の開始後、上型32は下型31に徐々に接近する。この際、上型32がエアカーテンの形成位置に到達するよりも前に、エアカーテンの形成を停止する。
本変形例では、上型32を下型31に向けて下降移動させる工程の開始後もエアカーテンを形成することによって、加圧成形工程時における上型32へのガラス揮発物の付着をも抑制することができる。また、上型32がエアカーテンの形成位置に到達するよりも前に、エアカーテンの形成を停止することによって、上型32にエアが噴き付けられることによる上型32の温度低下を防止できる。
図11中に示すように、エアカーテンの形成位置は、下型31と上型32との対向方向において上型32よりも下型31に近い位置であることが好ましい(H1<H2)。この場合、エアカーテンの形成を停止するタイミングをより遅くに設定して、上型32がガラス素材71からの揮発ガスに晒される時間をより短縮することができる。
図13から図16は、実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法の工程の第2変形例を示す断面図である。図13中には、実施の形態1において図5を参照して説明した工程(S104)が示され、図14および図15中には、実施の形態1において図7を参照して説明した工程(S105)が示され、図16中には、実施の形態1において図8を参照して説明した工程(S106)が示されている。
図13を参照して、本変形例では、上型32が水冷部37を有する。水冷部37は、上型32を冷却する冷却機構部として設けられている。水冷部37は、冷却水が循環される空間(通路)を上型32の内部に形成している。水冷部37は、上型32の型面32aから距離を隔てた位置に設けられている。水冷部37は、型面32aに対して下型31の反対側に設けられている。
ガラス素材71が供給された下型31と、下型31と距離を設けて対向配置される上型32との間を遮蔽するように、エアカーテンを設置する。本変形例においても、下型31を成形ポジションP2(図1を参照)に移動させる工程から、上型32を下型31に向けて下降移動させる工程の開始後に渡って、エアカーテンを継続して形成する。
図14を参照して、上型32を下型31に向けて下降移動させる工程の開始後、上型32は下型31に徐々に接近する。この際、上型32がエアカーテンの形成位置に到達するよりも前に、エアカーテンの形成を停止する。
図15を参照して、本変形例では、上記工程でエアカーテンの形成を一旦停止した後、エアが上型32に向けて噴き付けられるタイミングで、エアカーテンの形成を再び開始する。図16を参照して、ガラス素材71を、下型31および上型32によって加圧成形する。このとき、ガラス素材71と接触する上型32の型面32aの近傍と、水冷部37との間に生じる温度勾配によって、ガラス素材71を、上型32を上昇移動させることが可能な温度まで急速に冷却する。
本変形例では、図14中に示す工程でエアカーテンの形成を停止することによって、特にガラス素材71の加圧成形に大きく寄与する上型32の型面32aの表層部分が温度低下することを防ぐ。さらに本変形例では、図15および図16中に示す工程でエアカーテンの形成を再開することによって、型面32aから離れた上型32の部分にエアを積極的に噴き付ける。これにより、上型32の型面32aの近傍と、水冷部37との間により大きい温度勾配を生じさせることが可能となり、ガラス素材71の冷却を促進させることができる。結果、上型32を下降移動させてから上昇移動させるまでの時間を短くし、タクトタイムの短縮化を図ることができる。
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるガラス成形品の製造方法によれば、実施の形態1に記載された効果を同様に奏することができる。
(実施の形態3)
図17は、この発明の実施の形態3におけるガラス成形品の製造方法の工程を示す断面図である。本実施の形態におけるガラス成形品の製造方法は、実施の形態1におけるガラス成形品の製造方法と比較して、基本的には同様の工程を備える。以下、重複する工程についてはその説明を繰り返さない。
図17を参照して、図中には、実施の形態1において図5を参照して説明した工程(S104)が示されている。本実施の形態では、ガラス素材71が供給された下型31と、下型31と距離を設けて対向配置される上型32との間を遮蔽するように、板状部材としてのシャッター53を設置する。この際、下型31と上型32との対向方向において上型32の型面32aがシャッター53による遮蔽領域内に投影されるように、シャッター53を設置することが好ましい。
このような工程によれば、シャッター53によって下型31と上型32との間が物理的に遮断されるため、ガラス揮発物が上型32の型面32aに付着することをより確実に防止できる。一方、実施の形態1および2におけるエアカーテンによる遮蔽によれば、より短時間でエアカーテンの設置およびその解除が可能であるため、タクトタイムの短縮化を図ることができる。また、エアカーテンと金型36との物理的な衝突を考慮する必要がないため、ガラス成形品の製造装置の設計および制御が容易である。
上記のガラス成形品の製造方法を行なうための製造装置は、ガラス素材71が供給された下型31と、上型32との間を遮るように遮蔽体としてのシャッター53を設置するための遮蔽体設置部50を有する。
遮蔽体設置部50は、シャッター53およびシャッター駆動機構54を有する。シャッター53は、上型32の型面32aよりも大きい面積を有する。図17中には、1枚もののシャッター53が示されているが、複数枚のシャッターが組み合わさって下型31と上型32との間が遮蔽されてもよい。シャッター駆動機構54は、シャッター53を開閉駆動する。シャッター駆動機構54としては、シャッター53を開閉駆動させることが可能な駆動機構であれば特に限定されないが、たとえば、サーボモータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、リニアモータ、ステッピングモータ、またはこれらの組み合わせが利用される。
このように構成された、この発明の実施の形態3におけるガラス成形品の製造装置およびガラス成形品の製造方法によれば、実施の形態1に記載された効果を同様に奏することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、下型と上型とを対向配置する工程時、エアカーテンによる遮蔽を用いた場合の実施例と、シャッターによる遮蔽を用いた場合の実施例とについて、各種比較例と対比して説明を行なう。
図18および図19は、実施例におけるガラス成形品の製造方法の工程を示す断面図である。
図18および図19を参照して、本実施例におけるガラス成形品の製造方法の工程について説明すると、ガラス素材71が滴下された下型81と、上型82とを距離を設けて上下に対向配置した。この際、下型81と上型82との間を遮蔽する手段として、エアカーテン(実施例1)およびシャッター(実施例2)を用いた。なお、図18中には、代表的に、遮蔽手段としてエアカーテン84を用いた場合が示されている。次に、上型82を下型81に向けて近接移動させ、ガラス素材71を加圧成形することによって、ガラス成形品72を得た。その後、ガラス成形品72に研磨工程を施し、ガラス製品の最終形状を得た。
本実施例では、下型81が有する矩形平面視のサイズを、200(寸法A1)×140mmとし、上型82が有する矩形平面視のサイズを、150(寸法B1)×90mmとした。
実施例1においては、200mm(スリット長、寸法C1)×3mm(スリット幅)の噴出口を有するエアノズルを、平面視においてエアノズルの噴出口と、上型82の150mm長の一辺とが対面するように配置した。エアノズルから噴出されるエアの風速を、30m/secとした。実施例2においては、エアシリンダにより、1枚板のシャッターを下型81と上型82との間の空間に出退させた。
上記工程を1000回繰り返し実施し、1回目の工程で得られたガラス製品の、上型82による成形面の表面粗さRaと、1000回目の工程で得られたガラス製品の、上型82による成形面の表面粗さRaとを測定した。また、比較のため、下型81と上型82との間を遮蔽する手段を設けない場合(比較例1)と、下型81と上型82との間の空間に向けてエアノズルを配置し、水平方向にエア吸引を行なう場合(比較例2)とについても、同様の工程で得られたガラス製品の、上型82による成形面の表面粗さRaを測定した。
図20は、実施例および比較例において、ガラス製品の成形面の表面粗さの測定結果を示す表である。
図20を参照して、エア吸引を用いた比較例2では、遮蔽手段を設けなかった比較例1よりも若干改善されたものの、加圧成形工程の繰り返しにより成形面の表面粗さが大きくなる傾向となった。理由としては、ガラス素材71から上昇する揮発ガスを水平方向から吸引するため、一部の揮発ガスが吸引されることなく上型82に達したためと考えられる。一方、遮蔽手段としてエアカーテンを用いた実施例1およびシャッターを用いた実施例2においては、加圧成形工程の繰り返しに伴って成形面の表面粗さに大きな変化が認められなかった。以上の結果により、下型81と上型82との間を遮蔽する工程によって、成形面の鏡面性が高く維持されることを確認できた。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明は、主に、ダイレクトプレス法を用いたガラス成形品の製造に利用される。
10 素材供給部、11 連続溶融炉、12 ノズル部、13 流出管、20 切断部、21 カッター、22 カッター駆動機構、30 加圧成形部、31,81 下型、31a,32a 型面、32,82 上型、33 下型駆動機構、34 上型駆動機構、36 金型、37 水冷部、40 離型部、41 吸着装置、50 遮蔽体設置部、51 エアノズル、51a 噴出口、52 エア供給部、53 シャッター、54 シャッター駆動機構、60 制御部、70 溶融ガラス流、71 ガラス素材、72 ガラス成形品、84 エアカーテン、100 ガラス成形品の製造装置。

Claims (10)

  1. 第1金型に、溶融したガラス素材を供給する工程と、
    ガラス素材が供給された前記第1金型と、前記第1金型と距離を設けて対向配置される第2金型との間を、ガラス素材からの揮発ガスが前記第2金型に付着することを防ぐように遮蔽する工程と、
    前記第1金型および前記第2金型によって、ガラス素材を加圧成形する工程とを備える、ガラス成形品の製造方法。
  2. 前記第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程は、前記第1金型と前記第2金型との間に気流を形成する工程を含む、請求項1に記載のガラス成形品の製造方法。
  3. 前記第1金型と第2金型との間に気流を形成する工程は、前記第1金型と前記第2金型との対向方向に直交する平面に平行に平面状の気流を形成する工程を含む、請求項2に記載のガラス成形品の製造方法。
  4. 前記ガラス素材を加圧成形する工程は、前記第2金型を前記第1金型に向けて移動させる工程を含み、
    前記第2金型を第1金型に向けて移動させる工程の前に、前記第1金型と前記第2金型とを距離を設けて対向配置する工程をさらに備え、
    前記第1金型と第2金型とを距離を設けて対向配置する工程から、前記第2金型を第1金型に向けて移動させる工程の開始後に渡って、前記第1金型と前記第2金型との間に気流を形成する、請求項2または3に記載のガラス成形品の製造方法。
  5. 前記第1金型と第2金型との間に気流を形成する工程は、前記第1金型と前記第2金型との対向方向において前記第2金型よりも前記第1金型に近い位置に、気流を形成する工程を含む、請求項4に記載のガラス成形品の製造方法。
  6. 前記ガラス素材を加圧成形する工程において、前記第2金型は加熱され、
    前記第1金型に向けて移動する前記第2金型が気流の形成位置に到達するよりも前に、気流の形成を停止する、請求項4または5に記載のガラス成形品の製造方法。
  7. 前記第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程は、前記第1金型と前記第2金型との間に板状部材を設ける工程を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス成形品の製造方法。
  8. 前記第2金型は、前記第1金型と対面して設けられる型面を有し、
    前記第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程は、前記第1金型と前記第2金型との対向方向において前記型面が遮蔽領域内に投影されるように、前記第1金型と前記第2金型との間を遮蔽する工程を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のガラス成形品の製造方法。
  9. 前記ガラス素材を加圧成形する工程の前に、前記第1金型と前記第2金型とを距離を設けて対向配置する工程をさらに備え、
    前記第1金型と第2金型とを対向配置する工程が終了するよりも前に、前記第1金型と第2金型との間を遮蔽する工程を開始する、請求項1から8のいずれか1項に記載のガラス成形品の製造方法。
  10. 溶融したガラス素材が供給される第1金型と、
    前記第1金型と対向して配置され、前記第1金型とともにガラス素材を加圧成形する第2金型と、
    ガラス素材が供給された前記第1金型と、前記第2金型との間を遮るように遮蔽体を設置するための遮蔽体設置部とを備える、ガラス成形品の製造装置。
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