JP2015136814A - インクジェット記録装置 - Google Patents

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洋典 石井
鈴木 一生
Kazuo Suzuki
一生 鈴木
横澤 琢
Migaku Yokozawa
琢 横澤
白川 宏昭
Hiroaki Shirakawa
宏昭 白川
長村 充俊
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充俊 長村
悠平 及川
Yuhei Oikawa
悠平 及川
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Abstract

【課題】顔料インクを吐出する場合に、加熱制御時に駆動する発熱素子と、駆動しない発熱素子が存在しても、濃度ムラが生じないインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の吐出口が配列され、前記吐出口に連通する流路に設けられた発熱素子を有し、前記発熱素子に駆動信号を印加することによって前記発熱素子を発熱させ、前記発熱素子が発熱されることによって前記吐出口からインク滴を吐出する記録ヘッドと、インクを吐出しない程度に前記発熱素子を発熱させることで記録ヘッドの加熱を行う際に、配列内の前記発熱素子のうち一部を選択的に駆動して記録ヘッドの加熱を行う選択加熱手段を有するインクジェット記録装置であって、前記選択加熱手段による加熱制御が終了してから、前記吐出口からインク滴を吐出するまでの間に、所定の待機時間を設定する待機時間設定手段を有することを特徴とする。
【選択図】図14

Description

本発明は、インクジェット記録ヘッドの温度制御の技術に関するもので、特に、顔料インクを吐出する記録ヘッドの温度制御に関する技術である。
最近、記録媒体に画像を形成する画像形成装置として、記録ヘッドよりインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置が多く採用されている。インクジェット記録装置には、発熱素子に駆動パルスを印加して加熱させることにより発熱素子上のインク内で気泡を発生させ、気泡の生成に伴ってインクを記録媒体上に吐出して記録を行う形式のものがある。そのようなインクジェット記録装置においては、インクの吐出信頼性を確保し、ムラなどの弊害がない画像を記録するために、吐出時に吐出口列全体を適切な温度、かつ、均一に加熱制御する必要がある。特許文献1には、吐出口列方向に発熱素子を適切に選択し、それらの発熱素子を気泡が発生しない程度に駆動することで、吐出口列方向全体を均一温度に加熱制御する方法について開示されている。
特開平2−258266号公報
上記先行技術文献に開示された発明では、加熱制御時に駆動する発熱素子と駆動しない発熱素子が存在する。そのため、加熱制御時に駆動した発熱素子と駆動しない発熱素子とで、加熱制御終了時における発熱素子近傍の微小領域の温度に差が生じ得る。
記録ヘッドから顔料インクを吐出する場合、吐出時における発熱素子近傍の温度によって、発熱素子に付着する異物の量が敏感に変化する。そのため、加熱制御終了直後の吐出時に、加熱制御時に駆動した発熱素子と、駆動しなかった発熱素子とで異物付着量に差が生じ、その後の吐出において異物付着量の差に応じた濃度ムラが生じてしまう可能性がある。そこで本発明では、顔料インクを吐出する場合に、加熱制御時に駆動する発熱素子と、駆動しない発熱素子が存在しても、濃度ムラが生じないインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
本発明は、複数の吐出口が配列され、前記吐出口に連通する流路に設けられた発熱素子を有し、前記発熱素子に駆動信号を印加することによって前記発熱素子を発熱させ、前記発熱素子が発熱されることによって前記吐出口からインク滴を吐出する記録ヘッドと、インクを吐出しない程度に前記発熱素子を発熱させることで記録ヘッドの加熱制御を行う際に、前記配列内の前記発熱素子のうち一部を選択的に駆動して記録ヘッドの加熱制御を行う選択加熱手段を有するインクジェット記録装置であって、前記選択加熱手段による加熱制御が終了してから、前記吐出口からインク滴を吐出するまでの間に、所定の待機時間を設定する待機時間設定手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、顔料インクを吐出する記録ヘッドを加熱制御する際にも、加熱制御が終了してから所定の待機時間を設定することにより、加熱制御時に駆動された発熱素子と駆動されなかった発熱素子の間の温度差が緩和される。その結果、加熱制御時に駆動された発熱素子と駆動されなかった発熱素子とで、加熱制御終了直後の吐出時に発熱素子上に残る異物量の差が軽減されるので、その後の吐出において濃度ムラを抑制することができる。
(a)は本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置について一部を分解して示した斜視図あり、(b)は(a)のインクジェット記録装置に搭載されている記録ヘッドの斜視図であり、(c)は(b)の記録ヘッドの平面図である。 図1のインクジェット記録装置の制御系について概略構成を示したブロック図である。 図1(b)の記録ヘッドにおける一つの吐出口形成基板を取り出して示した平面図である。 図3の吐出口形成基板の断面図である。 (a)は吐出口形成基板が組み付けられる放熱基板の斜視図であり、(b)は(a)の放熱基板に吐出口形成基板が組み付けられたときの斜視図である。 加熱制御に用いられるパルスの長さ、電圧、周期を説明するための説明図である。 図1のインクジェット記録装置によって加熱制御が行われる際のフローを説明したフローチャートである。 図1のインクジェット記録装置の加熱制御で使用される発熱素子のパターンを説明するための説明図である。 加熱制御時の温度センサ位置での温度変化を説明するための説明図である。 吐出時における発熱素子近傍の温度と消泡後に発熱素子上に残る異物の関係を説明するための説明図である。 加熱制御終了時の発熱素子近傍の温度と加熱素子終了後の吐出で生じる発熱素子上の異物量の関係を説明するための説明図である。 加熱制御終了時の発熱素子近傍の温度と加熱素子終了後の吐出で生じる発熱素子上の異物量の関係を説明するための説明図である。 第1実施形態における待機時間を決定するための実験結果を示す図である。 本発明において待機時間を設定するシーケンスを説明する図である。 第2実施例における待機時間を決定するための実験結果を示す図である。 第2実施形態における待機時間を説明する図である。 第3実施形態における待機時間を説明する図である。 第4実施例における待機時間を決定するための実験結果を示す図である。 第4実施形態における待機時間を説明する図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100の構成および記録、加熱動作について説明する。
図1(a)は、本実施形態のインクジェット記録装置100の内部機構を説明するために一部を分解して示した斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)に示されるインクジェット記録装置100のキャリッジ1に搭載された記録ヘッド5の斜視図である。また、図1(c)は、記録ヘッド5の記録媒体4に対向する面である吐出口形成面の平面図である。
図1(a)に示されるように、搬送モータ(図示せず)の駆動に伴って、記録媒体4が矢印F方向に搬送される。また、ガイドシャフト3が、記録媒体4の搬送方向F(副走査方向)と直交する方向に延在するように配置されている。記録ヘッド5を搭載したキャリッジ1(走査手段)は、ガイドシャフト3に支持されながら、キャリッジモータ(図示せず)の駆動によって図中矢印S方向(主走査方向)に往復移動(往復走査)する。キャリッジ1に搭載された記録ヘッド5は、キャリッジ1の移動走査中に記録データに応じて記録媒体へのインクの吐出を行い、記録媒体への記録が行われる。
また、図1(b)及び図1(c)に示されるように、記録ヘッド5には6つの吐出口形成基板6が取り付けられている。それぞれの吐出口形成基板6には、主走査方向に直交する方向に、吐出口列6aが形成されている。記録ヘッド5には、ジョイント部7が形成されている。ジョイント部7は、記録ヘッド5から離れた位置に配置されたインクタンク(図示せず)から延びたインク供給路2に接続される。インクタンクからインク供給路2及びジョイント部7を介して記録ヘッド5の内部にインクが供給される。
本実施形態のインクジェット記録装置100では、記録ヘッド5が往路に沿って移動する場合と、復路に沿って移動する場合のいずれにおいてもインクを吐出して記録媒体に記録を行う、いわゆる双方向記録方式が採用されている。記録ヘッド5による1回の記録を伴った走査が行われると、記録媒体4は搬送モータ(図示せず)によって所定量搬送される。
図2は、図1に示したインクジェット記録装置100の制御構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、インクジェット記録装置100における制御部24は、インタフェース23、CPU200、ROM201及びRAM202を備えている。インタフェース23は、外部装置22から画像データを入力するのに用いられる。ROM201は、CPU200が実行するプログラムを格納するメモリとして機能している。また、RAM202は、インクジェット記録装置100の制御に用いられる各種データ(画像データや記録ヘッドに供給される記録信号など)を保存している。また、ゲートアレイ203は、記録ヘッド5に記録信号の供給を行うと共に、インタフェース23、CPU200、RAM202間のデータ転送も行う。
記録ヘッドドライバ25は、制御部24から出力された記録信号に応じて記録ヘッド5を駆動させてインクの吐出を行う。また、モータドライバ26は、制御部24から出力された信号に応じて、搬送モータ9を駆動させ、記録媒体の搬送動作を行う。モータドライバ27は、制御部24から出力された信号に応じて記録ヘッド5を主走査方向の所定の記録位置に移動させるためにキャリッジモータ8を駆動させる。また、記録ヘッド5には、記録ヘッド5の温度を検出するための記録ヘッド温度検知センサ20が取り付けられている。また、記録ヘッド5の吐出量や、発熱素子、配線の抵抗などの工場検査時に取得される記録ヘッド5の初期の特性を記憶させるためのEEPROM21が、記録ヘッド5に備えられている。
また、この制御部24のゲートアレイ203とCPU200は、インタフェース23を介して外部装置22から受信した画像データを記録データに変換してRAM202に格納する。さらに、制御部24は、モータドライバ26、27、及び記録ヘッドドライバ25を同期させて駆動させることで、記録ヘッド5の記録動作、記録媒体の搬送動作、記録ヘッド5の主走査方向への往復移動を行う。これにより、記録データに応じた記録画像が記録媒体上に形成され、結果的に記録媒体上に記録が行われる。
図3に、記録ヘッド5における、吐出口列6aの形成された吐出口形成基板6の平面図を示す。また、図4に、図3に示される吐出口形成面の断面の概略図を示す。
本実施形態で適用する記録ヘッド5の一つの吐出口形成基板6には、図3に示されるように、2列の吐出口列が形成されている。これらの2列の吐出口列が、それぞれ向かい合う吐出口列に対して1200dpi(ドット/インチ)ずらされた状態で、副走査方向に640個ずつ、計1280個の吐出口30が配列されて形成されている。また、20は記録ヘッドの温度を検出するための温度センサであり、図4に示された発熱素子形成基板31に形成されたダイオードのアノード・カソード間電圧の温度依存性を利用して温度を検出する。
発熱素子形成基板31上には、上板部材35が配置されている。上板部材35が発熱素子形成基板31上に配置されることで、吐出口形成基板6が構成される。発熱素子形成基板31と、上板部材35との間には、共通インク室33が形成されており、共通インク室33にはインク供給口32が連通している。共通インク室33からはインク流路36が延びており、インク流路36は、上板部材35に形成された吐出口30に連通する。インク流路36における吐出口30側の端部には、発泡室38が形成されており、発泡室38には、吐出口30と対向する位置に発熱素子34が配置されている。すなわち、この上板部材35と発熱素子形成基板34との間には、それぞれの吐出口30と共通インク室33との両方に連通するインク流路36が形成され、隣接する流路36同士の間には仕切り壁37が形成されている。
記録動作では、記録信号に従って記録ヘッドドライバ25が発熱素子34を駆動させることで、発熱素子34から発生する熱により、インクが局所的に加熱される。これによって発泡室38内部のインク内で膜沸騰を生じさせ、その際に生じる圧力によってインクの液滴が吐出口30から吐出される。
図5(a)に、記録ヘッド5を形成する部材の一つである放熱基板10の斜視図を、また図5(b)に、放熱基板10に吐出口形成基板6が組み付けられた状態の斜視図を示す。放熱基板10は、吐出口形成基板6とジョイント部7を含むモールド部材との中間にあって、吐出に伴って発生する熱を吐出口形成基板6から逃がす役割と、吐出口形成基板6の組み付け精度を向上させる役割とを持つ。よって、熱伝導度及び熱容量が大きく、且つ平面精度を出し易い材質が選ばれる。本実施例においてはアルミナが用いられている。放熱基板10には組み付けられる吐出口形成基板6に対応するインク流路11が形成されており、インク流路11は図4におけるインク供給口32に連通している。
次に、本発明のインクジェット記録装置において行われる記録ヘッドの加熱制御について述べる。
記録ヘッドの加熱制御時には、加熱制御信号に従って記録ヘッドドライバ25がインク内で気泡が生じない程度に発熱素子34を駆動させることで、発熱素子34を発熱させて加熱制御を行う。発熱素子は200Ωの抵抗体であり、図6に示したように、本実施例の加熱制御では、電圧24V、パルス幅0.1μsecの矩形パルスを10kHzの周波数で発熱素子に印加する。加熱制御は記録動作を伴う各スキャンの開始前に行われる。図7に加熱制御のシーケンスを示す。加熱制御は吐出口形成基板に設けられた温度センサ20で温度をモニタしながら、温度センサの温度が目標温度に到達するまで発熱素子を駆動して、加熱を行う。
本実施例においては、目標温度は40℃である。まず、S502において検出した温度が目標温度に達していない場合、S504から加熱制御を開始する。本実施形態のインクジェット記録装置では、加熱制御を行う際に、図3の吐出口30と一対一に対応して1280個配列されたそれぞれの発熱素子について、全てを駆動するわけではない。本実施形態のインクジェット記録装置の記録ヘッドに配列された発熱素子は、吐出口配列方向に16のブロック(発熱素子80個ごと)に分けられ、ブロックごとにON/OFFできる構成になっている。加熱制御時に駆動される発熱素子ブロックは、吐出口形成基板の温度が吐出口配列方向にできるだけ均一となるように選択する。全ての発熱素子をONにして加熱制御を行った場合(図8(c))、加熱制御開始時の吐出口形成基板の温度が30℃、環境温度30℃であった場合、温度センサが40℃に到達した時点で、図8(d)のような温度分布になる。
これは、図5(b)に示したような構成で吐出口形成基板が放熱基板に組み付けられるため、ノズル列端部ほど放熱基板へ放熱し易いことに起因する。そこで本実施例では、ノズル列中央部の昇温ピークを抑制するため、発熱素子ブロック2、4、6、8、9、11、13、15をOFF(図8(a))する。図8(a)のパターンで加熱制御を行った場合は、加熱制御開始時の吐出口形成基板の温度が30℃、環境温度30℃であった場合、温度センサが40℃に到達した時点で、図8(b)に示した温度分布になり、ピーク温度は図8(d)より5℃低下する。
また図9は図8(a)(c)それぞれのパターンで、加熱制御開始時の吐出口形成基板の温度が30℃、環境温度30℃で、温度センサが40℃に到達するまでの、温度センサ位置、および、吐出口列方向のピーク温度を示した図である。図9からわかるように、本実施例の図8(a)のパターンでは、温度センサ位置が40℃に到達するまでの時間は2.6secであり、図8(c)のパターンの1.8secより長くなるが、図8にも示したように、ピーク温度は5℃低くなり、吐出口列方向の温度分布は均一になる。
本発明のインクジェット記録装置では上述のように、加熱制御時に駆動する発熱素子と駆動しない発熱素子が存在する構成である。そのようにすることで、加熱制御終了時(S507)における吐出口列方向の温度分布を均一化することができる。しかし、一方で、発熱素子近傍のミクロな領域について考えた場合、加熱制御で駆動した発熱素子と駆動しなかった発熱素子とで温度差が生じる。その温度差に起因する発熱素子上の異物残存量の差による濃度ムラが本発明の解決しようとする課題であり、その異物量差が生じるメカニズムを以下詳細に述べる。
図10は吐出駆動時の発熱素子近傍の温度と、インク滴を吐出するために発熱素子を駆動してインク内に気泡を生じさせたときの気泡のサイズ、その吐出終了後に発熱素子上に残存している異物量をまとめた図である。本実施例においては、電圧24V・パルス幅0.6μsecの矩形パルスを印加することで、インク滴を吐出する。吐出駆動時の発熱素子近傍の温度が高いと、生じる気泡のサイズが大きくなり、そのため、発熱素子表面に与えられる消泡時の圧力が大きくなる。水性顔料インクは、顔料が水と有機溶剤から成る液体相の分散媒体に分散している。
そして、その分散性は分散体である顔料種・量、含まれる有機溶剤種・量に依存し、熱を加えると分散が破壊されやすく、固体成分が凝集しやすいインクがある。熱によって分散が破壊されやすいインクでは、分散破壊によって生じた異物は発熱素子表面上に残存する。しかしながら、残存した異物は、消泡時の圧力が強い場合は、その圧力で除去されうる。したがって、消泡時の圧力が相対的に大きい方が、相対的に小さい場合よりも、残存する異物量が少なくなる。つまり、吐出駆動時の発熱素子近傍の温度が低い方が相対的に発熱素子上の異物の残存量が多くなる。
その関係、つまり、吐出駆動時の発熱素子近傍の温度差と吐出後に発熱素子上に残る異物の量の関係を踏まえた上で、加熱制御時に駆動した発熱素子と、駆動しなかった発熱素子とで、加熱制御終了後の吐出で残存する異物量に差が生じるメカニズムを図11の模式図を用いて述べる。
本発明のインクジェット記録装置の加熱制御では、加熱制御時に駆動する発熱素子と駆動しない発熱素子が存在する構成である。加熱制御で駆動した発熱素子と、駆動しなかった発熱素子とでは、加熱制御終了時に発熱素子近傍のミクロな領域における温度に差が生じる。その温度差が生じた状態から吐出を行った場合の発熱素子近傍の温度変化を図11に示した。図11に示したように、加熱制御終了時に温度差が生じた状態(図11中の時間A)から発熱素子を駆動すると、インク吐出時の発熱素子近傍のピーク温度にも差が生じる。既に述べたように、熱による分散破壊が生じる顔料インクにおいて、温度と消泡時の圧力の関係から発熱素子近傍の温度が低い方が発熱素子上の異物残存量が多い。
したがって、吐出時にある閾値Tt以上の温度となれば、異物残量は問題のないレベルとなり、実質的に発熱素子上に異物が残らないと言ってよいレベルとなる。そのため、加熱制御時に駆動した発熱素子と駆動しなかった発熱素子の、加熱制御終了後の吐出における発熱素子近傍の温度が、発熱素子上に異物が残るかどうかの閾値Ttを跨ぐと、異物の残存量に差が生じる。また、加熱制御時に駆動した発熱素子と駆動しなかった発熱素子が両方閾値Tt以下であった場合にも、加熱制御終了時の両者の温度差ΔTがあれば、異物の残存量に差が生じる。そして、その加熱制御終了直後の吐出で生じた異物量差が、さらにその後の吐出において、吐出量の差として表れ、ムラなどの画像弊害を生じる。
その画像弊害を抑制するために、本発明の第1実施形態においては、加熱制御が終了してから、その後の吐出を行うまでの間に、所定の待機時間を設定し、待機することでムラの原因であるΔTを緩和する。図12は加熱制御終了後に所定時間待機することで、発熱素子間の温度差が緩和する様子を説明した模式図である。加熱終了後の温度差ΔT1を、待機時間txを設定することで、ムラが視認できない異物量差になる温度差ΔT2以下にすればムラは生じない。
加熱制御時に駆動した発熱素子と駆動しなかった発熱素子の、加熱制御終了時の温度差ΔT1は、加熱制御時に駆動した発熱素子に投入された総エネルギー量が大きいほど大きくなる。また、加熱制御時に駆動した発熱素子に投入された総エネルギー量が大きくなるのは、加熱制御時に目標温度に到達するのに時間がかかる場合、つまり、環境温度が低く、加熱制御前のヘッドの初期温度が低い場合である。本発明のインクジェット記録装置が記録動作可能な環境温度範囲は15℃〜30℃である。したがって、15℃環境におけるtxが最大となる。そこで、本発明の第1実施例では、15℃環境において、加熱制御開始前のヘッドの初期温度が15℃におけるtxを用いるものとする。
ここで、本発明の第1実施形態における、ムラが視認できない異物量差になる待機時間txを決定する方法を述べる。
txは、図7に示した加熱制御を実行し、加熱制御が終了した後に待機時間を設けて記録を行い、その記録画像におけるムラの発生有無について、待機時間を変化させて取得したデータから決定する。txを決定するデータを取得する実験は、15℃環境において行い、加熱制御開始時の記録ヘッドの温度は15℃、加熱制御の目標温度は40℃で行う。この条件においては、加熱制御時を開始してから、目標温度40℃に到達するためにかかる時間は4.5secである。また、待機後の記録は、キャリッジを12.5インチ/秒で記録媒体上を移動させながら、24V、0.6μsecの矩形波を15kHzの周波数で発熱素子に印加することでインク滴を吐出し、記録媒体上に画像を形成する。
インク滴は各ノズル1000発吐出し、その結果、記録媒体上には主走査方向に1200ドット/インチの間隔で1000ドット、副走査方向に1200ドット/インチの間隔で1280ドット配置された画像が形成される。この画像におけるムラの発生有無とtxの関係を得ることによって、ムラが発生しないtxを求め、本発明における第1実施例に用いるtxとする。
図13(a)は、上述の実験を行った結果である。×はムラが発生した待機時間、○はムラが発生しなかった待機時間である。実験で得た記録画像に生じるムラは図13(b)に示したように、加熱制御における発熱素子駆動部は濃度が高く、また、非駆動部は濃度が低くなることで生じる。このムラが発生した待機時間では、加熱制御時に駆動した発熱素子と、駆動しなかった発熱素子間で生じた温度差が、ムラを生じさせない異物量差になるまで緩和していないと判断できる。一方、図13(c)のように、加熱制御時における発熱素子駆動部と、非駆動部とで濃度差が生じない画像となり、待機時間が十分であると判断できる。この実験を行うことで、本発明の第1実施例においては、tx=500msecと設定すれば、ムラのない画像を形成できることがわかる。
図14に本実施形態の制御シーケンスを示す。各スキャンの開始前S1001において、図7に示した加熱制御S1002を行う。そして、S1003において、加熱制御に引き続いて、tx=500msec待機する。ここで、加熱制御時に駆動した発熱素子と駆動しなかった発熱素子の間の温度差を緩和する。設定した待機時間が経過した後、記録走査が開始され、そのまま該当記録走査が終了する(S1005)。この様な制御を行うことにより、加熱制御時に駆動した発熱素子と駆動しなかった発熱素子の異物残存量差が問題ないレベルとなるため、濃度ムラの発生を抑制することが出来る。
(第2実施形態)
第1実施形態においては、txが最も大きくなる状況を想定して必要な待機時間を決定し、待機時間として500msecを設定することで発熱素子間の温度差を緩和した。しかし加熱制御は、図5に示したように、温度センサが目標温度に達するまで行われるため、加熱制御終了までに発熱素子の生成する熱エネルギーは状況によって変化しうる。そして、加熱制御で駆動した発熱素子と駆動しなかった発熱素子近傍のミクロな温度差は、加熱制御時に駆動した発熱素子が生成した熱エネルギーが大きいほど大きくなる。
つまり、第1実施形態においては、環境温度、および、加熱制御開始時の記録ヘッド温度は15℃を想定して待機時間を設定したが、それらが高くなれば、加熱制御に要する時間は短くなる。加熱制御に要する時間が短くなれば、駆動した発熱素子に印加されたパルス数は少なくなり、生成した熱エネルギーは小さくなるため、駆動した発熱素子と駆動しなかった発熱素子間の温度差は小さくなる。つまり、加熱制御時に駆動する発熱素子に印加されるパルスが多いほど、必要な待機時間txは大きくなる。
そこで、本発明の第2実施形態では、加熱制御時に駆動する発熱素子の駆動パルス数が多いほど、待機時間を長くすることを特徴とする。
本発明の第2実施形態における待機時間txも、第1実施形態の場合と同様に、待機時間とムラの関係を示すデータを取得することによってtxを決定する。ただし、第2実施形態での実験では、加熱制御時に印加したパルス数との関係を明らかにするため、第1実施形態で行った実験とは異なり、印加したパルス数を変化させて、txを決定する。第1実施形態での条件では、加熱制御時に4.2sec、つまり、42000パルス印加されており、そのときの条件が最もパルス数が多くなるので、50000パルスまでの実験を行えばよい。
図15にムラと待機時間の関係を求めた結果を示す。この結果から、本発明の第2実施形態においては加熱制御時に印加したパルス数Nに応じて、ムラが生じない待機時間txを図16のように設定する。このように、加熱制御時に駆動する発熱素子の駆動パルス数が多いほど待機時間を長くすることで、発熱素子間の温度が緩和する時間を確保し、ムラの発生を抑制しながら、状況に応じて第1実施形態より待機時間を短くすることができる。
(第3実施形態)
第2実施形態において、加熱制御時に駆動する発熱素子の駆動パルス数に応じて、待機時間を設定したが、本発明におけるインクジェット記録装置の加熱制御における駆動パルスの駆動周波数は10kHzである。したがって、発熱素子を駆動した時間によっても、必要な待機時間を設定できる。そこで、本発明の第3実施形態では、加熱制御時に駆動する発熱素子の駆動時間が長いほど、待機時間を長くすることを特徴とする。
第3実施形態における待機時間txは図16に示した第2実施形態におけるtxの設定値から、駆動パルス数に加熱制御時の駆動パルスの周波数10kHzを乗じることで得られ、図17のようになる。このように、加熱制御時に駆動する発熱素子の駆動時間が長いほど待機時間を長くすることで、発熱素子間の温度が緩和する時間を確保し、ムラの発生を抑制しながら、状況に応じて第1実施形態より待機時間を短くすることができる。
(第4実施形態)
第2および第3実施形態では、加熱制御における発熱素子の駆動パルス数や駆動時間に基づいて待機時間を設定した。
ところで、本発明における加熱制御では、図5に示したように温度センサの出力値が目標温度以下の場合に発熱素子が駆動され、加熱制御が継続される。したがって、発熱素子駆動開始前の温度センサの出力値(S502での温度)と目標温度との乖離が大きいほど、加熱制御を終了するまでの時間が長くなる。つまり、加熱制御開始前の温度センサの出力値と目標温度との乖離が大きいほど、加熱制御時に駆動した発熱素子近傍と、駆動しなかった発熱素子近傍との間の温度差が大きくなり、その温度差を緩和するための待機時間も長くなる。
そこで、本発明の第4実施形態においては、加熱制御開始時の記録ヘッドの温度と加熱制御の目標温度の差が大きいほど、待機時間を長くする。
本実施形態における待機時間txも第1実施形態と同様に、待機時間txとムラの関係を求めることで決定する。本実施形態においては、加熱制御開始時における目標温度40℃と記録ヘッド温度との差と待機時間の関係を明らかにするため、加熱制御開始時における目標温度40℃と記録ヘッド温度との差を変化させて実験を行う。
図18にムラと待機時間の関係を求めた結果を示す。この結果から、本発明の第2実施形態においては加熱制御時に加熱制御開始時における目標温度40℃と記録ヘッド温度との差応じて、ムラが生じない待機時間txを図19のように設定する。このように、加熱制御開始時における目標温度40℃と記録ヘッド温度との差が大きいほど待機時間を長くすることで、発熱素子間の温度が緩和する時間を確保し、ムラの発生を抑制しながら、状況に応じて第1実施形態より待機時間を短くすることができる。
5 記録ヘッド
30 吐出口
34 発熱素子
100 インクジェット記録装置

Claims (4)

  1. 複数の吐出口が配列され、前記吐出口に連通する流路に設けられた発熱素子を有し、前記発熱素子に駆動信号を印加することによって前記発熱素子を発熱させ、前記発熱素子が発熱されることによって前記吐出口からインク滴を吐出する記録ヘッドと、
    インクを吐出しない程度に前記発熱素子を発熱させることで前記記録ヘッドの加熱制御を行う際に、前記配列内の前記発熱素子のうちの一部を選択的に駆動して前記記録ヘッドの加熱制御を行う選択加熱手段と、
    を有するインクジェット記録装置であって、
    前記選択加熱手段による加熱制御が終了してから、インク滴を吐出するまでの間に、所定の待機時間を設定する待機時間設定手段
    を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記待機時間設定手段は、前記選択加熱手段によって駆動される発熱素子の駆動数が多いほど、前記待機時間を長く設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記待機時間設定手段は、前記選択加熱手段によって駆動される発熱素子の駆動時間が長いほど、前記待機時間を長く設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記待機時間設定手段は、前記選択加熱手段による発熱素子の駆動前における前記記録ヘッドの温度と、前記加熱制御の目標温度の差が大きいほど、前記待機時間を長く設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
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