JP7005359B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インクに熱エネルギを作用させることで生じる膜沸騰に基づいてインクを吐出するサーマル方式のインクジェット記録装置に関し、特に、自己分散型カーボンブラックを含有する水性インクを吐出するインクジェット記録装置に関する。
近年、インクジェット記録用の水性インクの色材(着色剤)として、一般に染料と比べて記録画像の耐水性や耐光性等の堅牢性に優れる、顔料が用いられるようになっている。顔料をインクの水性媒体中に安定して分散させるために、インク組成中に樹脂分散剤を配合する方法がある。樹脂分散剤は、顔料の表面に吸着されて層を形成し、顔料粒子間のファンデル・ワールス力に打ち勝つ斥力を付与することなどによって、顔料の分散性を改善すると考えられている。しかしながら、樹脂分散剤の配合量が多いと、インクの粘度を上昇させてしまい、インクの吐出特性を低下させる虞がある。また、顔料の表面に吸着されずにインク中に溶解した状態で存在している樹脂分散剤が、記録ヘッドのオリフィス等に付着することによって、ノズルの目詰まりを生じさせる場合がある。
そこで近年では、インク組成中に樹脂分散剤を配合しなくとも顔料の安定した分散が可能となるように、水分散性に優れた表面官能基として親水基を顔料の表面に導入した、いわゆる自己分散型顔料の検討が積極的になされている(例えば特許文献1、2)。
特開平8-3498号公報 特開平10-195360号公報
ところで、従来、電気熱変換素子のような発熱素子の駆動によってインクに熱エネルギを作用させ、これにより生じるインクの膜沸騰に基づいてインクを吐出する、いわゆるサーマル方式のインクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置がある。このような記録ヘッドでは、発熱素子の発熱部(ヒータ)上にインク成分の焦げが付着して堆積することで、インクに熱エネルギを作用させる際のインクへの熱伝導性が低下し、インクの吐出速度が低下して、吐出が不安定になることが分かっている。特に、自己分散型顔料を含有するインクでは、吐出時に分散系が破壊されて顔料がヒータ上に凝集し易く、さらに、顔料がヒータの熱では殆ど分解しないカーボンブラックのような材料である場合は、凝集した顔料が堆積していくため、かかる問題が生じ易い。
本発明は上記問題点を解消するためになされたものである。よってその目的とするところは、自己分散型顔料を含有する水性インクを用いたサーマル方式のインクジェット記録において、記録ヘッドのヒータ上へのインク成分由来の付着物の堆積量の増大を抑制し、吐出の不安定化を抑制することである。
上記課題を解決するための本発明のインクジェット記録装置は、発熱素子を備え、前記発熱素子の駆動によってインクに熱エネルギを作用させることで生じる膜沸騰に基づいてインクを吐出する記録ヘッドと、前記発熱素子の駆動を制御する制御部と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記インクは、自己分散型顔料と、前記インク中で粒子状を示し所定の熱分解温度を有する樹脂と、を含み、前記制御部は、画像記録のための前記インクの吐出用に設定され前記インクの膜沸騰温度以上である第1の温度で前記インクを加熱する第1の駆動モード、に先立って、前記第1の温度よりも低く且つ前記第1の温度よりも前記所定の熱分解温度に近い第2の温度で前記インクを加熱する第2の駆動モード、を実行することを特徴とする。
本実施形態によれば、自己分散型顔料を含有する水性インクを用いたサーマル方式のインクジェット記録において、記録ヘッドのヒータ上へのインク成分に由来する付着物の堆積量の増大を抑制できる。また、これにより、付着物の堆積に起因する吐出の不安定化を抑制することができる。
本発明を適用可能なインクジェット記録装置の概要を示す斜視図である。 1色分のヘッドユニットの外観斜視図である。 インクジェット記録装置における制御系の構成を示すブロック図である。 記録ヘッドの構造を示す概略的な部分破断斜視図である。 ヘッド用基板の構造を示す概略的な断面図である。 ヒータ上における顔料の付着および剥離の様子を示す図である。 ヒータ上における顔料および添加樹脂の付着および剥離の様子を示す図である。 ヒータの表面温度とヒータ上における付着物量との関係図である。 加熱シーケンスを含む画像記録時の駆動フロー図である。 ヒータ上における付着物量の変化を示す図である。
以下に、図面を用いて、本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの駆動方法および記録装置を詳細に説明する。なお、図中、矢印A,B,X,Y,Zで示される方向を、それぞれ単にA方向,B方向,X方向,Y方向,Z方向というものとする。
(インクジェット記録装置の概要)
図1は、本実施形態に適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)500の概略構成図である。本例のインクジェット記録装置は、記録ヘッドを移動させながら記録ヘッドと対向する相対位置にある記録媒体に対してインクを吐出して画像記録を行う、いわゆるシリアル方式のインクジェット装置である。
シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのヘッドユニット410が装着されるキャリッジ505は、駆動プーリ503Aおよび従動プーリ503Bの周囲に架け渡された無端ベルト501の一部に取り付けられている。キャリッジモータ504を駆動源とする駆動プーリ503Aが回転すると、無端ベルト501が駆動プーリ503Aおよび従動プーリ503Bの周囲を回動し、キャリッジ505はガイドシャフト502に案内支持されながらA方向に往復移動する。
キャリッジ505にはエンコーダセンサ508が取り付けられており、A方向に延在するリニアスケール507のスリットを検出する。記録装置500の制御部は、エンコーダセンサ508がリニアスケール507を検出した結果に基づいて、A方向におけるキャリッジ505の位置を認識することができる。
記録媒体Pは、上流側の搬送ローラ対510と下流側の搬送ローラ対511とにニップされ、ヘッドユニット410の吐出口面に対向する位置の平滑性が維持されている。上流側の搬送ローラ対510と下流側の搬送ローラ対511は、不図示の搬送モータ509によって回転し、記録媒体PをB方向に搬送する。
このような構成のもと、記録装置500の制御部は、キャリッジモータ504を駆動させながら、エンコーダセンサ508の検出結果に基づいて、吐出データに従ってヘッドユニット410より記録媒体Pに向けてインクを吐出する。これにより、1バンド分の画像が記録媒体Pに形成される。その後、制御部は搬送モータを駆動し、1バンド分に相当する距離だけ記録媒体PをB方向に搬送する。以上のような記録主走査と搬送動作を交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに段階的に画像が形成されて行く。
記録装置500においてA方向の端部に位置するホームポジションには、ヘッドユニット410に配された記録ヘッドのメンテナンスを行うための回復ユニット512が配備されている。回復ユニット512には、記録ヘッドの吐出口面を保護するためのキャップ部材513や、キャップ部材内を負圧にして吐出口より強制的にインクを排出させるための吸引ポンプ514等が配されている。
図2は、1色分のヘッドユニット410の外観斜視図である。ヘッドユニット410は、内部にインクを収容するタンク404に、当該インクを吐出するための記録ヘッド1が取り付けられて構成されている。ヘッドユニット410の一部周囲には、記録ヘッド1に吐出データや電力を供給するための配線テープ402が配されている。また、配線テープ402には、ヘッドユニット410をキャリッジ505に装着したときに記録装置500の本体と電気的に接続するための接点403が形成されている。
なお、以上では、記録ヘッド1とタンク404とが一体型となったヘッドユニット410を例示したが、記録ヘッド1とタンク404とは分離されていてもよい。この場合、吐出ヘッド1のみがキャリッジ505に搭載され、記録装置内のいずれかの位置に固定されたタンクより、チューブなどを介して記録ヘッド1に液体を供給してもよい。この場合、記録ヘッド1自体は、4色のインクに対応した1チップとすることもできる。また、対応可能なインクの種類や数も上記に限定されるものではなく、1色のみであってもよいし、さらに多くの種類のインクを備える形態であってもよい。
図3は、インクジェット記録装置500における制御系の構成を示すブロック図である。インターフェース1700は、記録装置500と、記録装置500に接続された外部のホスト装置1000との間で、情報の授受を行う。具体的には、ホスト装置1000より記録コマンドや画像データを受信したり、記録装置500のステータス情報をホスト装置1000に提供したりする。ホスト装置1000としては、コンピュータのほか、デジタルカメラ、スキャナまたは携帯端末を用いることもできる。ホスト装置1000で記録コマンドが発生すると、当該コマンドが画像データと共に、インターフェース1700を介して記録装置500に入力される。
制御部90は、MPU1701、ROM1702、DRAM1703、EEPROM1726およびゲートアレイ(G.A.)1704を有し、装置全体を制御している。EEPROM1726は、電源がOFFにされた状態でも、次に電源がONになった時に記録装置500に必要な情報を記録しておくためのメモリである。ゲートアレイ1704は、MPU1701の指示のもと、インターフェース1700、MPU1701、DRAM1703の間でデータ転送制御を行う。なお、図3では制御部90を記録ヘッド1とは別に設ける例で説明するが、これに限らず制御部を記録ヘッド1に設ける構成でよく、また、制御部を装置本体および記録ヘッド1の双方に備える形態であってもよい。
MPU1701は、ROM1702に格納されているプログラムやパラメータに従って、DRAM1703をワークエリアとしながら、様々な制御を行う。例えば、MPU1701は、CRモータドライバ1707を介してキャリッジモータ504を駆動することにより、キャリッジ505をA方向に移動させる。この際、ヘッドドライバ1705を介して、DRAM1703より吐出データを転送し、記録ヘッド1を駆動することにより、記録媒体Pに1行分の画像が記録される。また、MPU1701は、1行分の記録主走査が行われるたびにLFモータドライバ1710を介して搬送モータ509を駆動し、記録媒体Pを所定の距離だけB方向に搬送する。このような記録主走査と搬送動作を交互に繰り返すことにより、ホスト装置から受信した画像データを、記録媒体Pに形成する。
1ページ分の記録動作が終了した後などの適宜なタイミングで、MPU1701は、回復モータドライバ1706を介して回復系モータ1711を駆動し、記録ヘッド1に対する吸引回復処理を実行する。
ROM1702には、以上に説明したような様々な制御を行うためにMPU1701が使用する様々なパラメータが記憶されている。例えば、記録ヘッド1の発熱素子(電気熱変換素子)に印加する電圧のパルス幅(パルス時間)、周波数、記録媒体Pの搬送速度、キャリッジ505の走査速度等のパラメータを挙げることができる。
(記録ヘッドの構成)
図4(a)は、記録ヘッド1の部分破断斜視図であり、図4(b)は、図4(a)の線IVb-IVbで取った断面図である。記録ヘッド1は、主にヘッド用基板100と流路形成部材120とで構成されている。ヘッド用基板100には、背面(Z方向の上流側)から供給されたインクを流路形成部材120に供給する貫通口としての供給口107が形成され、本実施形態において供給口107は長手方向(Y方向)に延在している。供給口107の両側には、インクを吐出するための熱エネルギを生成する発熱部108が、所定のピッチでY方向に配列している。
流路形成部材120において、ヘッド用基板100の個々の発熱部108に対応する部分には、インクを吐出するための吐出口121が形成されている。また、流路形成部材120には、供給口107から供給されたインクを個々の吐出口まで導く流路となる液室117も形成されている。
このような構成のもと、供給口107から供給されたインクは、毛管力によって個々の液室117に導かれ、吐出口121の近傍でメニスカスを形成する。そして、吐出データに従って、発熱素子に電圧パルスが印加されると、発熱部108が急激に発熱し、これに接触するインクに膜沸騰が生じ、所定量のインクが吐出口121より吐出される。吐出口121が開口する流路形成部材120の外面には、インクの付着が防止されてインクの円滑な吐出を可能にする撥水性の層306が設けられていてもよい。
図5は、図4(b)の点線Vで囲われた部分の拡大図であり、ヘッド用基板100の概略的な構造を示す断面図である。図5に示すように、基体101上において、下層には発熱抵抗体層103が、さらにその上層には電極配線層104が形成されている。発熱部108は、発熱抵抗体層103が電極配線層104で覆われずに露出している部分である。電極配線層104によって形成された電極配線のパターンは基体101上で引き回され、駆動素子回路ないし外部電源端子に接続されて、外部からの電力供給を受けることができる。電極配線層104を介して外部から電流を流す(電圧を印加する)ことによって、電極配線層104の非存在部分である発熱部108が熱エネルギを発生し、いわゆる熱作用部として機能してインクを加熱し発泡させる。
ここで、基体101にはシリコン基板を用いることができ、シリコン基板と発熱抵抗体層103との間には蓄熱層が設けられていてもよい。発熱抵抗体層103は、電気抵抗値が高い材料で形成されている。電極配線層104を形成する材料には、AlもしくはAlを含む合金材料(Al-Si、Al-Cu等)が主に用いられる。
発熱抵抗体層103と電極配線層104が配された領域を含む基体101のさらに上層には、SiO2、SiNなどの絶縁材料からなる保護層(絶縁保護膜)105が設けられていてもよい。記録ヘッド1の実使用において、ヘッド用基板100の表面は液室117内を流れるインクが接触することになるが、保護層105が配されることにより、発熱抵抗体層103や配線層104はインク中に露出しない。ヘッド用基板100の端部であって、流路形成部材120が積層されない領域には、保護層105を配さず電極配線層104が露出されたスルーホールが形成され、電極配線層104に電流を流すための端子となる(不図示)。保護層105の上には、インクの膜沸騰に伴う発泡と消泡の繰り返しによるキャビテーションがもたらす機械的ダメージや、発泡後の高温下での保護層形成材料のインク成分との電気化学反応によるダメージ(腐蝕等)を防ぐための層110が設けられていてもよい。層110は、一般に、耐キャビテーション膜とも呼ばれ、機械的および化学的安定性の高いTa(タンタル)等の材料により構成される。
図6および図7は、発熱素子の発熱部(以下、ヒータともいう)108上におけるインク成分の付着および剥離の様子を示す概略図である。図6および図7において、ヒータ108の詳細な層構成の記載は省略している。
(インク成分がヒータ上に堆積するメカニズム)
図6を用いて、自己分散型顔料として自己分散型カーボンブラックを含むインクを例に、インク成分がヒータ上に付着し堆積する一般的なメカニズムを説明する。インクに熱エネルギを作用させてインクに膜沸騰を生じさせ、それに基づきインクの吐出を行う記録ヘッドにおいては、インク成分302は、インク吐出時の発泡および消泡に伴い、ヒータ108上で焦げによる付着および一部剥離を繰り返す。付着物(焦げ成分)の分解温度が、インク吐出時にヒータ表面が到達する最高の温度以上の温度である場合、付着物は、熱で分解されることは殆どないので、消泡時の衝撃を受けたとしてもヒータ上から剥離し難い。自己分散型カーボンブラックを含むインクにおいて、自己分散性を付与するために導入された親水基がインク吐出に伴う熱によって分解されると、カーボンブラック自体はこの熱では殆ど分解されないため、顔料の疎水性表面が露出し、顔料粒子同士が凝集する。そのため、自己分散型カーボンブラック由来の付着物は、より強固にヒータ上に付着することとなる。このような場合にインク吐出のための発熱素子の駆動を継続すると、図6に示すように、剥離量に対して付着量が勝る現象が起こり、付着物が堆積していく。ヒータ108上に堆積した付着物の量が増加し続けると、それに伴い、ヒータからの熱エネルギのインクへの伝達効率が落ちていくため、吐出速度が継続的に低下し、吐出が不安定になる。
本発明者らは、自己分散型カーボンブラックのような自己分散型顔料を含む水性インクを用いたインクジェット記録において、ヒータ上の自己分散型顔料由来の付着物の堆積を低減させるために、自己分散型顔料由来の付着物が剥離し易い環境の整備を検討した。本発明者らは、自己分散型顔料よりも熱分解し易い物質をヒータと自己分散型顔料由来の付着物との間に介在させることができれば、その物質の熱分解を利用して、付着量以上の剥離量をもたらすことができると考えた。そして本発明者らは、そのような物質として、所定の樹脂をインク組成中に配合することが有効であり得ることを見出した。以下、本明細書において、この所定の樹脂を「添加樹脂」とも称するものとする。添加樹脂は、上述のように、自己分散型顔料と比べて熱分解し易い必要がある。また、インクに配合されていてもインクの物性への影響が小さく、且つ、ヒータと自己分散型顔料由来の付着物との間に介在し易いことを要する。本発明の実施形態に適用可能な添加樹脂についてのより詳細な説明は後述することとし、まず、インク中に添加樹脂が含まれる場合のインク成分のヒータ上への堆積メカニズムについて説明する。
(自己分散型顔料と添加樹脂とを含むインク成分がヒータ上に堆積するメカニズム)
図7を用いて、インク中に自己分散型顔料としての自己分散型カーボンブラックと添加樹脂とが混在する場合の、インク成分が記録ヘッドの発熱素子の発熱部(ヒータ)上に付着し堆積するメカニズムを説明する。特に、付着量以上の剥離量をもたらすためには、インク中に添加樹脂が存在していること、およびそれに加えていくつかの状況をさらに満たす必要があることを説明する。
図7(a)および(b)に、想定される状況を場合分けして示す。図7(a)は、ヒータ108上の付着物の最下層の(すなわちヒータとの界面の)物質の主たる成分が自己分散型カーボンブラック由来の成分(以下、単に顔料とも記す)401である場合を示す。図7(a)に示されるように、添加樹脂由来の成分(以下、単に樹脂とも記す)402と樹脂の上に付着している一部の顔料401は、インク吐出のための発熱素子の駆動を続けると、それに伴う熱によって樹脂が分解されることにより、剥離していく。しかしながら、その同一のヒータ上において、樹脂の下層に位置する顔料は、剥離され難い。そのため、付着物中の顔料401の割合が徐々にではあるが高くなり、堆積(積層)が進んでいく。
これに対し、図7(b)は、ヒータ108上の付着物の最下層の(すなわちヒータとの界面の)物質の主たる成分が添加樹脂由来の成分(樹脂)402である場合を示す。なお、インク中の樹脂の粒子(一次粒子)同士はヒータ上で複合体(二次粒子)を形成し得るが、その様子の図示は省略している。図7(b)においては、最下層の樹脂402がインク吐出のための発熱素子の駆動に伴う熱によって分解されることにより、ヒータ上の樹脂402とその上の顔料401とがまとまって剥離する。そのため、付着物の最下層の物質の主たる成分が樹脂であるヒータ上の領域においては、付着物の堆積量が微量に抑えられる。これにより、付着物によるヒータの熱伝導性の低下が抑制され、吐出速度が不安定になることが抑制される。
以上のメカニズムを踏まえ、本発明者らは、次いで、自己分散型カーボンブラックと添加樹脂とが混在する水性インクについて、図7(b)のようにインク成分のうち添加樹脂由来の成分がヒータ上の付着物の最下層の物質の主たる成分となるような方法を検討した。
まず、記録ヘッドの発熱素子の駆動条件を変動させて、駆動時にヒータ表面が到達する最高の温度を変動させた。本実施形態の発熱素子は電気熱変換素子であるところ、本例では、電気熱変換素子に印加する電圧の駆動周波数を固定し、駆動パルス数を数百パルス程度の一定数として、駆動パルス時間(駆動パルス幅)を変動させた。駆動パルス時間が長くなるほど、ヒータ表面が到達する最高の温度は高くなる。
次いで、各条件での駆動によってヒータ上に付着した自己分散型カーボンブラックおよび添加樹脂のそれぞれに由来する付着物の量を測定した。具体的には、測定の前処理として、記録ヘッドを洗浄してインクを洗い流し、記録ヘッドを分解して流路形成部材を取り外すことによって、ヒータを露出させた。そして、SEM-EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギ分散型X線分光法)(S-4800;株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、ヒータ全体におけるネットカウントマッピング分析を行い、各付着物の相対的な付着量を得た。
図8に結果を示す。縦軸は、ヒータ上に付着した添加樹脂由来の付着物(図中、樹脂と記す)および自己分散型カーボンブラック由来の付着物(図中、顔料と記す)の相対的な付着量を示す。横軸は、発熱素子の駆動によりヒータ108の表面が到達した最高の温度(以下、ヒータ最高到達温度、または単にヒータ温度とも記す)を示す。また、図中、Tsは、画像記録のためのインク吐出用に設定されたヒータ温度を示し、Trは、添加樹脂の分解温度を示す。
この図から明らかなように、添加樹脂の分解温度Trは、画像記録のためのインク吐出用に設定されたヒータ温度Tsよりも低い。ヒータ上における樹脂の付着量は、添加樹脂の分解温度Trに至るまでは、ヒータ温度が上がるにつれて増していき、ヒータ温度が添加樹脂の分解温度Trを超えると、急速に減少する。これに対し、ヒータ上における顔料の付着量は、添加樹脂の分解温度Trを超えるあたりまでは添加樹脂の付着量を下回っているが、ヒータ温度が上がるにつれて緩やかに漸増していき、両付着量は、やがて逆転する。また、画像記録のためのインク吐出用に設定されたヒータ温度Tsにおいては、顔料が主に付着し、樹脂の付着は殆ど見られない。
つまり、ヒータ温度が添加樹脂の分解温度Trの近傍の温度域となるような、例えば分解温度Trを超えない温度となるような駆動条件で発熱素子の駆動を行うことで、インク成分のうち添加樹脂が、ヒータ上に付着する付着物の主たる成分となる。また、ヒータ温度が添加樹脂の分解温度Trよりも高くなる画像記録のためのインク吐出用に設定された駆動条件で、発熱素子の駆動を行うことで、インク成分のうち自己分散型カーボンブラック由来の成分が、ヒータ上に付着する付着物の主たる成分となる。
したがって、本実施形態においては、画像記録のためのインク吐出を実行する前に、ヒータ温度が、画像記録のためのインク吐出用よりも低く、添加樹脂の熱分解温度Trに近い温度となるような駆動条件で、しばらくの間にわたって発熱素子を駆動する。これにより、自己分散型カーボンブラックよりも熱分解し易い物質としての添加樹脂由来の成分を、ヒータと自己分散型カーボンブラック由来の成分との間に介在させることができる。
以下、このように添加樹脂由来の成分がヒータと自己分散型顔料由来の成分との間に介在し得るように添加樹脂由来の成分をヒータ上に供給することを、「添加樹脂の充填」と称することとする。また、添加樹脂の充填を目的として、画像記録時よりも低いヒータ温度となるような駆動条件で発熱素子を駆動する制御工程を、「加熱シーケンス」と称することとする。
加熱シーケンスを、画像記録のためのインク吐出を行う前に予め行うことによって、画像記録による付着物の剥離を促し堆積量の増大を抑制することができる。また、それによって、安定した吐出を維持する効果を得ることができる。ただし、その後、画像記録のためのインク吐出を継続すると、添加樹脂の熱分解が進み、添加樹脂の充填量が不十分になって、効果が得られなくなるようになる。そのため、予め充填された添加樹脂の分解が進みきらないタイミングで、新たに添加樹脂を充填する(補充する)ための加熱シーケンスを行うことが必要となる。
(加熱シーケンスを含む画像記録時のインクジェット記録装置の駆動制御)
本発明の実施形態において、加熱シーケンスは、記録媒体へのインク吐出を行う前(記録開始前)に行うことができる。また、加熱シーケンスは、自己分散型顔料由来の成分の付着量を増やさないよう添加樹脂を確実に充填するために、記録主走査毎(記録走査間、記録ヘッドの回復時、シート間、等)に加熱シーケンス行うことが望ましい。
図9を用いて、シリアル方式のインクジェット記録装置において画像記録を行う際の、加熱シーケンスを含む記録装置の駆動制御フローの好ましい実施形態を説明する。
記録装置の制御部は、記録コマンドや画像データを受信すると、記録ヘッドによる記録主走査を開始するのに先立って、ステップS101において上述の加熱シーケンス(記録開始前)を実行する。本実施形態の加熱シーケンスでは、記録ヘッドの各発熱素子(電気熱変換素子)に対して印加する電圧の駆動パルス時間(駆動パルス幅)を画像記録時よりも短く(小さく)し、画像記録時と同じ駆動周波数および駆動パルス数(数百パルス)にて駆動を行う。
加熱シーケンスを実行することにより、インク成分のうち主に添加樹脂由来の成分を発熱部(ヒータ)上に付着させることができる。この加熱シーケンスは、全発熱素子(電気熱変換素子)に対して同時に行うことができる。また、事前の記録主走査において使用した発熱素子を記憶しておき、その発熱素子のみ加熱シーケンスを行うようにすることで、消費インクや蓄熱を効果的に少なくしてもよい。
加熱シーケンスでは、ヒータ温度がインクに膜沸騰を生じせしめる最低の温度(以下、膜沸騰温度ともいう)(約300℃)の近傍の温度域の第2の温度となるように、発熱素子の駆動条件(第2の駆動モード)が設定されている。そのため、加熱シーケンスを行うとインクの吐出を伴い得るので、記録ヘッドを記録媒体(以下シートともいう)の領域外に位置付けて加熱シーケンスを実行する。
次いで、ステップS102において、制御部は、シートに対して記録ヘッドによる1行分の記録主走査を実行する。記録主走査においては、ヒータ温度がインクに膜沸騰を生じせしめる最低の温度以上の温度(膜沸騰温度以上の温度)であって上記第2の温度よりも高い第1の温度となるように、発熱素子の駆動条件(第1の駆動モード)が設定されている。
次いで、ステップS103に進み、制御部は、1枚のシートの終端までに記録すべき画像データに基づく画像記録が完了したか、つまり、シートに対する最終記録主走査が終了したか否かを判断する。
ステップS103においてシートに対する最終記録主走査が終了していないと判断された場合は、ステップS104に進み、制御部は、記録ヘッドの吸引回復の必要性を判断する。ステップS104において、吸引回復が不要であると判断されると、ステップS105に進み、制御部は、記録ヘッド1が次の1行分の記録主走査を開始する前に、加熱シーケンス(記録主走査間)を実行して、ステップS102に戻る。また、ステップS104において、記録ヘッドの吸引回復が必要であると判断されると、ステップS106に進み、制御部は、記録ヘッド1を吸引回復しながら加熱シーケンス(記録ヘッドの回復時)を実行して、ステップS102に戻る。
一方、ステップS103において、シートに対する最終記録主走査が終了したと判断された場合は、ステップS107に進み、制御部は、記録すべき次のシートの有無を判断する。ステップS107において、次のシートがあると判断されると、ステップS108に進み、制御部は、次のシートに対する記録主走査が開始されるまでの間に加熱シーケンス(シート間)を実行して、ステップS102に戻る。一方、ステップS107において次のシートが無いと判断されると、ステップS109に進み、制御部は、記録動作を終了する。
以上のフローに従うインクジェット記録装置の制御により、自己分散型カーボンブラックのような自己分散型顔料を含有するインクを用いる画像記録において、ヒータ上への自己分散型顔料由来の成分の付着物の堆積量の増大を抑制することができる。それにより、吐出速度の低下を抑制し、吐出の不安定化を抑制することができる。
(インクの組成)
本実施形態に適用可能なインクは、水性インクであり、自己分散型顔料と、添加樹脂と、水性媒体と、を含む。必要に応じて、インク成分として一般的に用いられる他の成分を含んでいてもよい。
(水性媒体)
インクには、水、または水および水溶性有機溶剤の混合溶媒のような、水性媒体を配合することができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができ、1種または2種以上をインクに含有させることができる。水性媒体を、水を少なくとも含有する混合溶媒とすることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。
(自己分散型顔料)
本実施形態に適用可能な自己分散型顔料としては、自己分散型カーボンブラックを用いることができる。本明細書において、自己分散型顔料とは、その表面に直接または他の原子団を介して親水基が結合している顔料であり、水中に分散され懸濁液とされた際に、界面活性剤や高分子化合物を添加することなく安定した分散状態を維持可能な顔料をいう。自己分散型カーボンブラックを用いることにより、カーボンブラックをインク溶媒中に分散するための樹脂分散剤の添加が不要となるか、または樹脂分散剤の添加量を少量とすることができる。
インク中の自己分散型カーボンブラックの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下、さらには1.00質量%以上5.00質量%以下であることが好ましい。また、自己分散型カーボンブラックの平均粒径は、50nm以上200nm以下、さらには60nm以上120nm以下であることが好ましい。なお、この平均粒径は、体積基準の平均粒径(D50)であり、粒径分布の50%累積値のことである。
カーボンブラックとは、工業的に品質制御して製造される炭素の微粒子であり、化学的には単体の炭素として扱われるが、表面には様々な官能基を有し、いわゆる無定形炭素と呼ばれるものである。カーボンブラックは、製造法の名でしばしば分類されるが、本発明に適用可能なカーボンブラックの種類は特に限定されず、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ガスブラックなど、いずれのものも用いることができる。
カーボンブラック粒子の表面に直接またはは他の原子団を介して結合している親水基としては、-COOM、-SO3M、-PO3HM、及び-PO32などのアニオン性基が挙げられる。式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、または有機アンモニウムである。式中、Mで表されるアルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができる。式中、Mで表される有機アンモニウムの具体例としては、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類が挙げられる。また、Mで表される有機アンモニウムの具体例として、さらに、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの炭素数1以上4以下のアルカノールアミン類などのイオンが挙げられる。親水基が対イオンで中和されて塩を形成している場合、インク中の塩は、その一部が解離した状態および全てが解離した状態のいずれであってもよい。
他の原子団(-R-)としては、炭素原子数が1以上12以下の直鎖または分岐のアルキレン基;フェニレン基およびナフチレン基などのアリーレン基;アミド基;スルホニル基;アミノ基;カルボニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基などを挙げることができる。
(添加樹脂)
本実施形態に適用可能な添加樹脂は、インク中で粒子状を示し、所定の熱分解温度を有する樹脂である。
添加樹脂は、例えば、その酸価と当量のアルカリで中和した場合に粒径を測定し得る粒子を形成する樹脂であってもよい。中和により形成された粒子は、水性溶媒中に分散している状態で存在することができる。本実施形態のインクにおいて、添加樹脂は、アルカリで中和された状態で用いられる。粒径の測定法としては、一般的な粒度分布測定装置(レーザー回折式、動的光散乱式、SAXS)を用いるものであればよく、特に方法や測定装置を限定するものではない。以下同様に、本明細書において粒径または平均粒径について言及する場合、その測定法、測定装置、測定条件は特に限定されるものではない。添加樹脂の酸価は、インクの安定性の観点から、40mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の範囲内にあることが好ましい。なお、本明細書において、酸価とは、1gの樹脂を中和するのに必要となるKOHの量(mg)であり、その親水性(アニオン性)を示す指標となり得る。酸価は、電位差滴定等の知られている方法により求めることができる。
また、添加樹脂は、上述のように、自己分散型顔料より熱分解され易いことを要する。さらに、添加樹脂は、画像記録のためのインク吐出時におけるヒータ最高到達温度で熱分解されないと、発明の効果(付着物の剥離)が得られない。一方、添加樹脂は、あまりにも熱分解され易すぎると、ヒータに付着する前あるいは直後に分解するなどして、ヒータと自己分散型顔料由来の成分との間に十分に介在できず、添加樹脂の充填が不十分となってしまい好ましくない。一般に、インクに膜沸騰を生じせしめる最低の温度(膜沸騰温度)Tbは約300℃であり、画像記録のためのインク吐出用に設定されるヒータ温度Tsは、膜沸騰温度Tbよりも高めの350~400℃の温度に設定されることが多い。これらを鑑みると、本実施形態に適用可能な添加樹脂の所定の分解温度Trは、膜沸騰温度Tb(約300℃)以下の温度であることが望ましく、また、膜沸騰温度Tb近傍の温度であることが望ましい。
上述の要件を満たし得る本実施形態に適用可能な添加樹脂は、親水性ユニットとなるアニオン性基を有するモノマーを含むポリマーであり、樹脂中に含まれるモノマーのうち分解温度が最も低いモノマーの分解温度Tmが膜沸騰温度Tb以下であればよい。また、この分解温度が最も低いモノマーの分解温度Tmは、膜沸騰温度Tb近傍の温度であることが望ましい。添加樹脂は、添加樹脂中のモノマー成分のうち分解温度が最も低いモノマー成分の箇所から分解され易く、そのモノマー成分の分解温度Tmによって樹脂全体としての分解温度Trが決定されるからである。添加樹脂は、好ましくは、分解温度の異なるモノマー成分からなるコポリマー(共重合体)である。
なお、既存の技術として、温度変化によるインクの粘度の変動を抑制するなどして吐出を安定化させる目的で、記録ヘッドを所定の温度に温度調節すること(温調)が行われている。しかしながら、温調の温度と、本発明の実施形態による加熱シーケンスにおける添加樹脂の充填のために設定されるヒータ温度とは、温度域が異なる。本実施形態に適用可能な添加樹脂は、温調に一般的に用いられる温度域よりも高い温度域に、分解温度Trを有する。温調は、インクの膜沸騰温度近傍のような高い温度域では行わないのが一般的である。例えば、一般的な45℃の温度に温調する際の発熱素子の駆動に用いられるエネルギは、加熱シーケンスにおける発熱素子の駆動に用いられるエネルギに比べて、高くとも約7割程度である。そのため、既存の温調における加熱条件では、ヒータ上への添加樹脂の充填は不十分となる。
(添加樹脂のモノマー成分)
上述のように、本実施形態に適用可能な添加樹脂は、重合により親水性ユニットとなるアニオン性基を有するモノマーを少なくとも含む。重合により親水性ユニットとなるアニオン性基を有するモノマーの例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などの酸モノマー、これらの酸モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーが挙げられる。なお、酸モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。本実施形態においては、添加樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットを少なくとも有することが特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」および「メタクリル酸」を意味する。
また、上述のように、本実施形態に適用可能な添加樹脂に含まれるモノマーのうち少なくとも1つのモノマーは、インクの膜沸騰温度Tb(約300℃)以下の分解温度を有する。このモノマーは、上記の重合により親水性ユニットとなるアニオン性基を有するモノマーであってもよく、なくてもよい。
その他、本実施形態に適用可能な添加樹脂の上記条件を満たすポリマーを構成し得る任意のモノマーを使用することができる。分解温度がインクの膜沸騰温度Tb(約300℃)を超えるモノマーについては、分解温度が膜沸騰温度以下のモノマーと重合することで使用可能である。例えば、メタクリル酸メチルはそれのみで重合すると分解温度が327℃となるが、より低温で分解するモノマーと共重合することで使用可能となる。
本実施形態において、インク中における添加樹脂の粒子の平均粒径は、30nm以上200nm以下の範囲内にあることが好ましい。なお、この平均粒径は、体積基準の平均粒径(D50)であり、粒径分布の50%累積値のことである。添加樹脂の平均粒径が30nm未満であると、平均粒径が大きい場合と比べて熱により分解され易く、添加樹脂(一次粒子)が集まって複合体(二次粒子)を形成することが困難となる傾向がある。その結果、添加樹脂はヒータに接した直後に分解するなどしてヒータ上に付着しづらく、添加樹脂によるヒータ表面の被覆が不十分となって、ヒータと自己分散型顔料との間に十分に介在できなくなり、効果が低減してしまう虞がある。
インク全質量を基準にした際のインク中の添加樹脂の含有量(配合率)は、好ましくは0.05質量%以上0.50質量%以下である。一般に、インクに何らかの機能を付与するための機能性材料として樹脂を加える場合、機能を得るには、例えば最低数%というように、ある程度の含有量となるように樹脂を配合する必要がある。しかしながらその場合には、インクの様々な物性に影響があり、結果的にインク組成が制限されてしまう虞がある。一方、発明者らは、添加樹脂の含有量について、0.50質量%以下の低い含有量で、吐出速度の安定化の効果を確認している。したがって、本実施形態によれば、インクの物性に大きな影響を与えることなく、インク吐出の不安定化を抑制する効果を得ることができる。
また、添加樹脂の含有量が低すぎると添加樹脂由来の成分によるヒータ表面の被覆が不十分となる虞があるため、添加樹脂の含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。インク物性への影響が機能上問題なければ、添加樹脂を、0.50質量%を超える含有量でインクに配合することも可能である。例えば、水性媒体に含まれる溶剤の濃度や組成によってインクの粘度上昇の抑制に対応したり、インク吐出条件を最適化したりすることで、添加樹脂の含有量が高くても安定した吐出を維持することができる。
(他の樹脂)
インクには、本発明の解決課題である吐出不安定化の抑制のために配合する上述の添加樹脂の他に、画像性能の向上や光沢性付与などの他の目的のために、別の樹脂をさらに配合することもできる。別の樹脂は、水溶性樹脂であってもよく、水分散性樹脂であってもよい。インク中の別の樹脂の含有量は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、さらには0.10質量%以上2.00質量%以下であることが好ましい。別の樹脂が、上述のように規定される本発明の実施形態に適用可能な添加樹脂の条件を満たさない場合は、別の樹脂の含有量を添加樹脂の含有量に含めて考える必要は無い。別の樹脂として、上述のように規定される本発明の実施形態に適用可能な添加樹脂の条件を満たす樹脂を用いていれば、本発明の効果を得ることができる。
なお、インクには、自己分散型カーボンブラックの粒子と、中和されて粒子状となった添加樹脂と、が存在しており、また、粒子状の別の樹脂が存在してもよいので、複数種類の粒子が存在する。自己分散型カーボンブラックの粒子を含めない粒子の含有量として表した場合、インク中の粒子の合計含有量は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上15.0質量%以下、さらには0.10質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
(他の成分)
インクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。インク中のこれらの水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、それぞれ、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。特に、インクには、自己分散型カーボンブラックとの相性がよく、且つ、保湿性に優れるトリメチロールプロパンを含有させることが好ましく、その含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上5.00質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて所望の物性値を有するインクとするために、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
特に、インクの表面張力を調整するために、ノニオン性の界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン性の界面活性剤は、インクの表面張力を低下させ、吐出口からの吐出特性を向上させる効果を奏し得る。具体的には、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンの共重合体、シリコーン系、フッ素系などのノニオン性界面活性剤を用いることができる。インク中のノニオン性界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上2.00質量%以下、さらには0.50質量%以上1.50質量%以下であることが好ましい。
(インクの物性)
インクの各種の物性は、一般的なインクジェット用のインクと同等の範囲内にあればよい。インクの粘度は、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下、さらには1.5mPa・s以上3.0mPa・s以下であることが好ましい。また、インクのpHは、7.5以上9.5以下であることが好ましい。また、インクの表面張力は、30.0mN/m以上45.0mN/m以下であることが好ましい。なお、ここで記載した表面張力は、いわゆる静的表面張力であり、白金などのプレートを用いたウィルヘルミー法により測定することができる。
[検証例]
以下に、検証例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記検証例によって限定されるものではない。なお、文中「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準である。
[検証例1]
<顔料分散液の調製>
まず、顔料10.0部と、樹脂分散液A 25.0部と、水65.0部と、からなる混合物を調製した。顔料としては、表面に親水基が導入された自己分散型カーボンブラックであるBlack Pearls(登録商標)880(キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製)を用いた。樹脂分散液Aとしては、水溶性樹脂をその酸価と当量の水酸化ナトリウムで中和することによって得られた樹脂粒子の水分散液を用いた。樹脂分散液A中の水溶性樹脂(固形分)の含有量は、20.0%であった。水溶性樹脂としては、酸価130mgKOH/g、重量平均分子量7,000、熱分解温度300℃のスチレン-アクリル酸共重合体であるジョンクリル679(ジョンソンポリマー株式会社製)を用いた。
次いで、この混合物を、0.3mm径のジルコニアビーズの充填率を80.0%としたビーズミル(LMZ2、アシザワ・ファインテック株式会社製)に入れて、回転数1,800rpmで5時間にわたって分散した。得られた分散物を、次いで、回転数5,000rpmで30分間にわたって遠心分離し、凝集成分を除去し、水で希釈した。このようにして、固形分の含有量が22.50%である顔料分散液を得た。固形分の内訳として、顔料の含有量は15.00%であり、水溶性樹脂の含有量は7.50%であった。
<インクの調製>
Figure 0007005359000001
上述のようにして調製した顔料分散液を用い、表1.に示すインク組成に従って材料を混合して十分に撹拌した。得られた混合物を、次いで、ポアサイズが1.2μmであるメンブレンフィルター(HDCIIフィルター;ポール製)を用いて加圧ろ過することによって、検証例1のインクを調製した。アセチレノールE100(商品名)は川研ファインケミカル株式会社製のノニオン性の界面活性剤である。ポリエチレングリコールは数平均分子量1,000のものを使用した。
<平均粒径の測定>
顔料分散液中の粒子の平均粒径、および樹脂分散液A中の粒子の平均粒径を、動的光散乱方式の粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150;日機装製)を用いて測定した。測定条件および測定試料は以下の通りとした。
[測定条件]
SetZero:30s
測定回数: 3回
測定時間: 180秒
屈折率: 1.5
[測定試料]
顔料分散液をローディングインデックス値が1~2の範囲になるように純水で希釈して、顔料分散液中の粒子の平均粒径を測定するための試料とした。また、樹脂分散液Aを体積基準で50倍になるように純水で希釈して、樹脂粒子の平均粒径を測定するための試料とした。
[測定結果]
上記のようにして測定した顔料分散液中の粒子の平均粒径、および樹脂分散液A中の樹脂粒子の平均粒径は、それぞれ90nmであった。これにより、インク中の顔料の平均粒径および樹脂粒子の平均粒径が同程度であることを確認した。
<評価方法>
以下の評価には、熱エネルギの作用によるインクの膜沸騰に基づき記録ヘッドの吐出口からインクを吐出するインクジェット記録装置(PIXUS Pro9500(商品名);キヤノン株式会社製)を、記録ヘッドの発熱素子の駆動シーケンスを改造して用いた。記録ヘッドには、吐出口面がフッ素含有樹脂によって撥水処理されたものを用いた。検証例および各比較例のインクをそれぞれインクカートリッジに充填して使用した。このインクジェット記録装置は、1/600インチ×1/600インチの単位領域に対して1滴当たりの質量が3.5ng(ナノグラム)であるインクを8滴付与して記録したベタ画像を、記録デューティが100%の条件で記録した画像と定義するものである。なお、記録デューティ(%)とは、単位領域あたりの総画素数に対するインクが付与される画素数の割合をいう。
<画像記録>
上述のようにして調製した検証例1のインクを用い、図9を用いて説明した加熱シーケンスを含む画像記録のための駆動制御フローの変形例に従って、A4判のサイズの用紙(シート)52枚に対して連続的に、記録デューティ100%のベタ画像の記録を行った。
ここで、サーマル方式のインクジェット記録ヘッドには個体差があり、インク吐出に必要な電気熱変換素子の最短の駆動パルス時間t0を個別に有する。インク吐出に必要な最短の駆動パルス時間t0を基準にして、加熱シーケンスにおけるインク加熱のための駆動パルス時間t1と、画像記録のためのインク吐出に用いる駆動パルス時間t2と、を設定した。加熱シーケンスにおける駆動パルス時間t1を、インク吐出に必要な最短の駆動パルス時間t0よりも1%だけ短い時間とした。また、安定したインク吐出を確保するために、画像記録のための駆動パルス時間t2を、インク吐出に必要な最短の駆動パルス時間t0よりも15%だけ長い時間とした。
このような条件のもと、駆動パルス時間t1で発熱素子を駆動した際のヒータ温度は、280℃~320℃であった。この温度範囲は、添加樹脂の分解温度近傍である。また、発熱素子を駆動パルス時間t1で駆動した場合の駆動エネルギE1は、駆動パルス時間t2で駆動した場合の駆動エネルギE2と比べて、14%程度だけ小さかった。なお、発熱素子を駆動パルス時間t1で駆動した場合の駆動エネルギE1は、45℃の低温で記録ヘッドの温調を行った場合の駆動エネルギE3と比べて、43%以上大きかった。
図9のフローの変形例として、具体的には、まず1行分の記録主走査を行ってから、フローに従ってステップS101、ステップS105(記録途中の記録主走査間)、ステップS106(回復処理時)、ステップS108(シート間)で加熱シーケンスを実行した。各加熱シーケンスにおける発熱素子の駆動条件としては、駆動パルス時間は上述のt1とし、画像記録のためのインク吐出用と同じ駆動周波数および駆動パルス数(500パルス)を用いて、全吐出口に対応する発熱素子に対して駆動制御を行った。
<ヒータ上への付着物量の計測>
ヒータ上に付着した付着物の量の測定には、SEM-EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギ分散型X線分光法)(S-4800;株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。具体的には、前処理として、記録ヘッドを洗浄してインクを洗い流し、次いで、記録ヘッドを分解して流路形成部材を取り外して、ヒータを露出させた。そして、ヒータ全体におけるネットカウントマッピング分析を行い、「C(炭素;付着物)のシグナル検出強度/Ta(タンタル;ヒータ最表面の薄膜の構成元素)のシグナル検出強度」を相対的な付着物量とした。
[比較例1]
比較例1は、加熱シーケンスを不実施とした例である。検証例1で調製したインクと同一のインクを用い、加熱シーケンスを実行しなかった以外は検証例1と同様にして画像記録を行った。
[比較例2]
比較例2は、添加樹脂を無配合とした例である。樹脂分散液Aを配合しなかった以外は検証例1と同様にして、比較例2のインクを調製した。次いで、検証例1のインクの代わりに比較例2のインクを用い、検証例1と同様にして画像記録を行った。
[比較例3]
比較例3は、添加樹脂を無配合とし、その代わりに別の樹脂を配合した例である。つまり、検証例1の水溶性樹脂を、それよりも分解温度が高く、画像記録のためのインク吐出用に設定された駆動条件で発熱素子を駆動した際のヒータ温度近くの温度でも分解しにくい水溶性樹脂で代替した例である。詳細には、樹脂分散液Aの代わりに樹脂分散液Bを配合した以外は検証例1と同様にして、比較例3のインクを調製した。樹脂分散液Bとしては、水溶性樹脂をその酸価と当量の水酸化ナトリウムで中和することによって得られた樹脂粒子の水分散液を用いた。樹脂分散液B中の水溶性樹脂(固形分)の含有量は、20.0%であった。水溶性樹脂としては、熱分解温度390℃の水溶性ナイロンであるAQナイロンP-95(東レ株式会社製)を用いた。次いで、検証例1のインクの代わりに比較例3のインクを用い、検証例1と同様にして画像記録を行った。
(評価結果)
(1)ヒータ上への付着物量
検証例および各比較例のヒータ上への付着物量を図10(a)に示す。図の縦軸は、相対的な付着物量を示し、横軸は、発熱素子の駆動回数を示す。図中の矢印は、加熱シーケンスを行ったタイミングを示す。図10(b)は、図10(a)の一部を拡大した図であり、検証例1における付着物量の変化を示す図である。
図10(a)より明らかなように、添加樹脂を配合していないインクを用いた比較例2および3においては、加熱シーケンスの実行の有無に関わらず、発熱素子の駆動回数が増加するに従い、ヒータ上の付着物量が漸増していった。比較例2と3では、ヒータ上の付着物量の増加率は同程度であった。また、検証例1と同一のインクを用いたが加熱シーケンスを行わなかった比較例1においては、発熱素子の駆動回数が増加するに従い、ヒータ上の付着物量が漸増していったが、その増加率は、比較例2および3と比べて抑えられていた。
これに対し、検証例1においては、発熱素子の駆動回数が増加しても、画像記録のためのインク吐出用の発熱素子の駆動の間に、加熱シーケンスにおけるインク加熱用の発熱素子の駆動を挿入することで、ヒータ上の付着物が定常的に少なく抑えられていた。詳細には、図10(b)に示すように、画像記録のためのインク吐出用の駆動条件(第1の駆動モード)で発熱素子の駆動を継続したフェーズAでは、ヒータ上への樹脂および顔料の付着が進み、付着物量が増えていった。次いで、加熱シーケンスにおけるインク加熱用の駆動条件(第2の駆動モード)で発熱素子の駆動を行ったフェーズBでは、添加樹脂の充填が行われ、付着物量が急増した。次いで、再度、画像記録のためのインク吐出用の駆動条件で発熱素子の駆動を継続したフェーズCでは、当初、添加樹脂の分解・剥離に伴い、付着量以上の剥離量がもたらされ、ヒータ上の付着物量は減少していった。そして、ヒータ上の付着物の最下層の添加樹脂がある程度まで減少すると(図中、点D)、再び、ヒータ上に樹脂および顔料の付着が進み、付着物量が増えていった。この後はフェーズBおよびCが繰り返され、このようにして、ヒータ上の付着物は定常的に少なく抑えられていた。
(2)画像品位
検証例1および各比較例において、ベタ画像を連続記録した1枚目のシートと52枚目のシートの記録画像の画質を目視にて比較した。検証例1においては、その画像濃度の差がほとんど分からなかったが、これに対して、各比較例においては、いずれも画像濃度の差が見受けられ、画像濃度は52枚目の方が1枚目よりも低かった。
これは、発熱素子の駆動回数の増加に伴いヒータ上の付着物量が増加した結果、吐出速度の低下および吐出量の減少が生じたためと思われる。
以上のように、添加樹脂を配合したインクを用いるインクジェット記録において、加熱シーケンスを含む画像記録方法によれば、ヒータ上の付着物の堆積量の増大を抑制することができる。そして、それにより、ヒータ上の付着物に起因する吐出不安定化を抑制し、インクやヘッドの性能を維持しつつ吐出速度を安定化することが可能となる。
(他の実施形態)
上述の実施形態においては、発熱素子は電気熱変換素子であるものとして説明したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、光や高周波を受けることで発熱するような発熱部を有する発熱素子であってもよい。
上述の実施形態においては、ヒータ温度を変動させる方法として、発熱素子に印加する電圧の駆動周波数を一定としていたが、本発明においてはこれに限定されない。つまり、添加樹脂の充填のための加熱シーケンスにおけるインク加熱のための駆動周波数を、画像記録のためのインク吐出用の駆動周波数と同様にする必要はない。1つの加熱シーケンスにおいては、発熱素子を駆動させる回数が多いほど、添加樹脂のヒータ上への付着量が増加し、吐出速度の安定化の効果が望める。そのため、記録ヘッドの昇温による画像記録への影響が少ない限りは、駆動周波数を高くすることが望ましい。また、画像記録途中に挿入する加熱シーケンスによる記録ヘッドの昇温が懸念される場合は、シート間に行う加熱シーケンスにおける駆動周波数を、記録ヘッドの回復処理時に行う加熱シーケンスにおける駆動周波数よりも小さくすることで、昇温を抑制してもよい。
上述の実施形態においては、加熱シーケンスにおいて、ヒータ温度がインクの膜沸騰温度の近傍となるように発熱素子の駆動条件を設定していた。しかしながら、本発明においてはこれに限定されず、添加樹脂の充填が可能である限り、加熱シーケンスにおいて、ヒータ温度が膜沸騰温度よりも低い温度となるように発熱素子の駆動条件を設定してもよい。その場合、インクの吐出を伴わないので、記録ヘッドがシートの領域外に位置付けられているときのみならず、記録ヘッドがシートに対向して位置付けられているときにも(つまり、記録領域においても)、加熱シーケンスを実行することができる。
上述の実施形態においては、顔料がカーボンブラックである自己分散型顔料を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。カーボンブラックのように画像記録のためのインク吐出に伴う熱によって殆ど分解されることのない別の顔料からなる自己分散型顔料に対しても、本発明を適用することができる。
上述の実施形態においては、自己分散型顔料および添加樹脂の親水性は、アニオン性によるものとして本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。自己分散型顔料および添加樹脂がカチオン性を示すことで水性媒体中に分散可能な構成に対しても、本発明を適用することができる。
インクによっては、加熱シーケンスを行うことによって吐出口付近のインク中の溶剤濃度が増加し、その後に液滴の吐出を開始する際に、吐出不良(いわゆる発一不吐出)が生じる場合があり得る。そのような場合は、加熱シーケンスの終了直前に、吐出不良を回避する回避シーケンスを追加してもよい。回避シーケンスの例として、添加樹脂の充填のために設定したヒータ温度(例えば300℃)よりも高いヒータ温度(例えば320℃)となるように発熱素子を駆動するインクの予備吐出操作を適宜行ってもよい。
上述の実施形態では、記録ヘッドはシリアル方式であるものとして説明したが、本発明は、これに限定されず、長尺ヘッド(いわゆるライン方式の記録ヘッド)にも適用することができる。長尺ヘッドのように吐出口数が多い場合には、加熱シーケンスにおける消費インクや蓄熱のことを考えると、駆動されるヒータの数はできるだけ少ないことが望ましい。自己分散型カーボンブラックを用いる記録は、通常はテキスト記録であることが多いため、使用される吐出口数は少なくなる。そこで、事前の記録において使用した吐出口を記憶しておき、その吐出口に対して加熱シーケンスを行うようにすることで、消費インクや蓄熱を効果的に少なくすることができる。
記録ヘッドが、ヒータを保護する耐キャビテーション膜を有する構成である場合、耐キャビテーション膜は、インクやキャビテーションに対する耐久性の高い材料で形成されていることが望ましい。しかしながら、一般に、ヒータ上の付着物は耐キャビテーション膜が削れるにつれて剥離しやすくなるため、耐久性が高くて削れにくい耐キャビテーション膜では、ヒータ上への付着物の堆積が進んで肥大化し、これにより吐出が不安定になる傾向がある。したがって、従来、耐キャビテーション膜には、ヒータ上への付着物の量の少なさと耐久性とを兼ね備えたタンタル膜を採用することが多く、高耐久性の他の材料による耐キャビテーション膜の採用は実質的に困難であった。本発明の実施形態によれば、ヒータ上の付着物は剥離しやすいため、ヒータ上の付着物の肥大化を抑制することができる。そのため、例えばIr(イリジウム)、SiN(窒化ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)のような、樹脂や顔料が付着し易いとしても耐久性の高い材料による耐キャビテーション膜の採用が可能である。これによって、ヘッド用基板(ヒータボード)の寿命の向上が望める。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワークまたは記憶媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
1 記録ヘッド
108 ヒータ
401 顔料
402 樹脂

Claims (10)

  1. 発熱素子を備え、前記発熱素子の駆動によってインクに熱エネルギを作用させることで生じる膜沸騰に基づいてインクを吐出する記録ヘッドと、
    前記発熱素子の駆動を制御する制御部と、
    を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記インクは、自己分散型顔料と、前記インク中で粒子状を示し所定の熱分解温度を有する樹脂と、を含み、
    前記制御部は、
    画像記録のための前記インクの吐出用に設定され前記インクの膜沸騰温度以上である第1の温度で前記インクを加熱する第1の駆動モード、に先立って、
    前記第1の温度よりも低く且つ前記第1の温度よりも前記所定の熱分解温度に近い第2の温度で前記インクを加熱する第2の駆動モード、を実行することを特徴とする、インクジェット記録装置。
  2. 前記第2の温度は、前記インクの膜沸騰温度よりも低い温度であることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記第1の温度は、前記インクの膜沸騰温度よりも高い温度であることを特徴とする、請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記制御部は、前記第2の駆動モードを、前記第1の駆動モードを実行する毎に実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドが記録媒体と対向する相対位置にあるときにインクを吐出することで画像の記録を行い、
    前記制御部は、前記記録ヘッドが前記相対位置にあるときに、前記第2の駆動モードを実行しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドによる記録主走査により画像記録を行うシリアル方式のインクジェット記録装置であり、
    前記制御部は、前記第2の駆動モードを、記録主走査毎に行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記制御部は、画像記録の開始前には、前記第2の駆動モードを全ての発熱素子に対して実行し、画像記録の途中には、前記第2の駆動モードを直前の記録走査において駆動した発熱素子のみに対して実行することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記自己分散型顔料は、自己分散型カーボンブラックであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記樹脂は、表面に親水基を有し、その酸価と当量のアルカリで中和した場合に粒子を形成する樹脂であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記樹脂の熱分解温度は、前記インクの膜沸騰温度以下であって、前記インクの膜沸騰温度の近傍の温度域の温度であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
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