JP5033540B2 - インクジェットヘッド、及びインクジェット装置 - Google Patents
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Description
記録ヘッドの一つであるインクジェットヘッドの中でも、加熱素子を駆動素子として利用したサーマルヘッドは、駆動素子が容易に小型化できるため、多数の吐出孔を高密度に配列することが可能であり、ヘッドの小型化や高解像度化に適している。しかし、加熱素子によりインクを加熱発泡させ、吐出エネルギーとしているため、駆動素子部は発泡動作による機械的なダメージと化学的なダメージを駆動の度に受けることとなる。発泡時には素子表面は高温となるため、インク成分との化学反応が駆動素子にダメージを与える。そのため駆動素子表面に保護膜を形成することで、電気配線がインクにより犯されないように絶縁性を保持する。
従来は上記のような課題に対して、特許文献1に記載されているように、保護膜の組成や構成を工夫し、あるいは、特許文献2に記載されているようにコゲーションを起こしにくいインク処方にて対応していた。
また、近年、難溶性の色材である顔料の分散性の改良や粒径の微小化が行われたため、インクジェットインクに使用されるケースが多くなってきている。特許文献3、特許文献4には、画質改善を目的として顔料インクに水不溶性樹脂を添加する手法が開示されている。
そのため、コゲーションを引き起こさない程度の量の難溶性色材や、樹脂成分をインクに含有させて使用している。
しかし、特許文献5や特許文献6のように、高固形分のインクにて画像濃度や発色性、定着性の改善を試みたインクが開示されてきている。
固形分を高めることで、浸透性を確保した上でフェザリングを低減させたり、色材のメディアへの浸透を抑制することが可能となり、画質向上を計ることが出来る。またバインダー成分をインクに多く添加することで、乾燥定着性や耐水性といった耐候性、乾燥後の平滑性が向上することによる光沢性などの光学特性、定着性を向上することでのメディア対応性が向上する。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドであって、前記荷電電極を前記加熱素子と略平行な平面に設けることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のインクジェットヘッドを備えたインクジェット装置であることを特徴とする。
本発明に用いられるインクは、難溶解性物質を多く含んでいる。また高固形分で添加するためには難溶解性物質をコロイドとして分散させ、図1(a)の様にコロイド表面に電荷(図1ではマイナス荷電コロイド粒子を例示)を有し、静電反発を利用して粒子が凝集しないように調整されている。このようなコロイドは、粒子近傍に対イオン分子(図1ではカチオン分子)がおり、電気的中性は保たれているが、粒子個々の表面は帯電したものとなっている。
従来のサーマルヘッドにおいては、インク中の荷電コロイド粒子が均等に拡散している状態(図2(a))となっており、難溶解性物質を多く含むインクをヘッドに充填した初期状態(図2(b))から加熱発泡させると、加熱素子側表面近傍に存在していた荷電コロイド粒子の分散状態が発泡による熱や液移動の剪断力により破壊され、コロイドを形成していた難溶解性物質が表面吸着および化学変化を起こしコゲーションが発生する(図2(c)の状態)。
荷電コロイド粒子と反発する電位を加熱素子側の電極に付与することで、加熱素子側電極付近の荷電コロイド粒子の存在率は低下し、コゲーションの原因物質となる難溶解性物質の加熱素子側表面への焦げ付きを抑制することが可能となる。このような電場形成には電極が直接インクに接触する必要はなく、電極表面に分極性の絶縁層を設ける構成(図4(a))でも、電極への電位の印加に応じて絶縁層が分極し、インク中に電界を形成することが可能となる(図4(b))。
またコロイド粒子の対イオンに低分子で化学的に安定なもの、化学変化後に分散性の良いものを用いることで、対イオンによるコゲーションを抑制することが出来る(図5)。特にリン原子および窒素原子を有するイオン性化合物を用いることでコゲーション抑制効果が高まる。
このような極性物質には非イオン性親水基とイオン性の親水基を分子内に共存した分子が望ましい。なぜなら、対極への吸着後に非イオン性親水基の溶解性により溶出脱離作用があるため、対極に堆積する可能性が少ないからである。
本発明の電場形成のために用いられる荷電電極は、コロイドを反発させ加熱素子をコゲーションから守るため、加熱素子側の一方の電極は加熱素子と略平行な平面に設けること好ましい。さらにこの電極を絶縁層を介して加熱素子の上層に設けることで、より強く加熱素子上からコロイド粒子を反発させることが可能となり、コゲーションを抑制することが出来る。
このように発熱時と荷電時は同時である必要はないため、電極の一方が加熱素子を兼ねることも可能である。このようにすることでヘッドの配線や制御回路を単純化することが出来る。
本発明に用いられるインクに含まれるコロイド粒子の荷電は、インクのゼータ電位を測定することで評価でき、コロイド粒子の表面荷電に応じて荷電状態が判る。
上記課題に用いられるような高濃度の分散系のゼータ電位は、超音波振動電位法(UVP法)、動電音響法(ESA法)にて測定することが可能である。このように測定されたゼータ電位に応じて、加熱素子側の荷電電極の極性を選択することができ、インクのゼータ電位が負のときには電極をカソードに設定し、インクのゼータ電位が正のときには電極をアノードとなるようにすることで、本発明を発現することが可能となる。
上記のヘッドおよびインクを用いることで、高固形分のインクを用いてもコゲーションを引き起こさない信頼性の高いインクジェット装置を提供することが可能となる。また通常のインクを用いた場合でも、従来よりコゲーションに耐性の高いサーマルインクジェットヘッドを提供することとなり、このヘッドを用いたインクジェット装置は従来の装置以上に高信頼性の装置を提供することが可能となる。
インクジェット装置101には、インクを吐出するヘッドを集積したヘッドユニット110K、110C、110M、110Yと、其々のヘッドユニットに対応しヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニット111K、111C、111M、111Y、インクを供給するインクカートリッジ107K、107C、107M、107Y、カートリッジからのインクを一部貯蔵し、ヘッドに適切な圧力でインクを供給するサブインクタンク108K、108C、108M、108Yを備えている。
さらに、記録媒体を吸着し搬送する搬送ベルト113、搬送ベルトを支える搬送ローラ119、121、搬送ベルトが適切な張力を保つようにコントロールするテンションローラ115、搬送ベルトが適切な平面性を保つためのプラテン124、記録媒体を吸着するための静電帯電を与える帯電ローラ118からなる搬送機構、媒体をベルトから分離させる分離爪120、排紙するための搬送を行う排紙ローラ116、媒体を押さえる排紙コロ117、排紙した記録媒体をストックしておく排紙トレイ104からなる排紙機構、印写する媒体をストックする給紙トレイ103、給紙トレイより一枚ずつ媒体を送り出す分離パッド112、送られてきた記録媒体を帯電ベルトに確実に吸着させるカウンターローラ123、手差しにて給紙した場合に用いられる手差しトレイ105からなる給紙機構を有している。
給紙トレイから記録媒体が分離コロにて一枚に分離され、加圧コロにて搬送ベルトに密着されることで搬送ベルト上に固定され、ヘッドユニット下を通過する際に記録媒体にインクを吐出することで、高速にインクにて記録媒体にパターンニングができ、分離爪にて搬送ベルトから分離され、排紙ローラと排紙コロにて支えられて排紙トレイに画像形成後の記録媒体が排出される。
各ヘッドユニットのノズル列は記録媒体の搬送方向に直行するように配列されており、記録領域以上の長さのノズル列を形成している。ヘッドユニットはヘッド外周部材160に記録ヘッド154を固定しており、ヘッドはノズルの一部が重複するように千鳥配置で固定されている。
図8(b)は図8(a)のヘッドユニットに配列しているヘッドを示した模式図で、ヘッドはノズルプレート201に2列の千鳥配置で開口されているノズル200が設けられており、ヘッドとヘッド外周部材との間には充填剤202にて密閉されており、ノズル面側からの隙間を失くしている。
また、ヘッド外周部材とノズル面はほぼ同一の平面に位置するように固定することが望ましい。ヘッドと外周部材との間に段差があると、ワイピング時にワイパーが段差に捕われ、ノズル面に均等な力で接触できなくなり、ワイピングを行ったときに拭き残しが生じる。
また、段差にはワイパーが接触できない死角が発生するためインクが溜りやすく、溜ったインクが印字中に記録媒体に落ちることで、画像品位を低下させる。さらに段差があると局所的にワイパーにかかる圧力が高くなるため、ワイパーと接触部位との摩擦が高まり、耐久的にワイパーのノズル面接触端面の摩耗が引き起こされる。ヘッドは図8(b)のように千鳥配列が1列の構成や、図9(b)の様な複数列を設けた構成もの可能であり、このヘッドを用いた図9(a)に示されるヘッドユニットであっても構わない。
図9(a)の構成で多色化を行った場合、隣接ノズル列の着弾位置精度が最も高くなるので、着弾位置を検知しやすい濃色インクをユニット中央側に、淡色インクをユニット外縁側に配置することが望ましい。フォトシアン(PC)、フォトマゼンタ(PM)を含む6色インクを用いるなら、外縁よりPM、PC、Y、M、C、Kと内側に向けて配列することが望ましい。
また本発明はラインヘッドインクジェット装置に限られるものではなく、図7(a)及び図7(b)に示すようなシリアルインクジェット装置でも良い。
キャリッジ131には、Y、C、M、Kの各色の記録用インク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなるヘッドユニット110を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
また、キャリッジ131には、ヘッドユニット110に各色のインクを供給するための各色のサブインクタンク108を搭載している。サブインクタンク108には、図示しない記録用インク供給チューブを介して、インクカートリッジからインクが供給されて補充される。
装置本体背面部には、両面給紙ユニット132が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット132は、搬送ベルト113の逆方向回転で戻される用紙を取り込んで反転させて再度カウンタローラ123と搬送ベルト113との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット132の上面には手差しトレイ105が設けられている。
副走査方向への間欠的な用紙搬送動作に応じて、上記主走査モータがキャリッジを走査させインクを吐出することで、ヘッドが用紙に非接触で像を形成することが出来る。
この制御部300は、装置全体の制御を司るCPU301と、CPU301が実行するプログラム、本発明において使用する所定インク吐出に対するノズル面汚染度合の値及びノズル面汚染許容閾値、駆動波形データ、その他の固定データを格納するROM302と、画像データ等を一時格納するRAM303と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)304と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC305とを備えている。
また、この制御部300は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F306と、記録ヘッド154の圧力発生手段を駆動制御するための駆動波形を生成するヘッド駆動制御部307と、媒体搬送モータ309を駆動するための媒体搬送モータ駆動部308と、ヘッドユニット(キャリッジ)移動モータ311を駆動するためのヘッドユニット移動モータ駆動部310と、維持ユニット移動モータ313を駆動するための維持ユニット移動モータ駆動制御部312と、インク経路の電磁弁315を開閉制御するためのインク経路バルブ制御部314、キャップ吸引モータ317やインク供給モータ318の駆動を制御する送液吸引モータ駆動制御部316と、搬送ベルト113の移動量及び移動速度に応じた検知信号を出力するエンコーダや、環境温度及び環境湿度(いずれか一方でも良い)を検出するセンサ323からの検知信号、サブインクタンクのインク量検知信号、図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/O322などを備えている。この制御部300には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル106が接続されている。
そして、CPU301は、I/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、記録ヘッド154のヘッド幅の1ページ分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッド駆動制御部307に送出する。
そして、CPU301は、I/F306に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC305にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッド駆動制御部307に画像データを転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM302にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの装置に転送するようにしても良い。
ヘッド駆動制御部307は、ページ単位で入力される記録ヘッド154の1ページ分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて選択的に記録ヘッド154の圧力発生手段に印加して記録ヘッド154を駆動する。
また本発明に用いられる記録液は記録液としてインクに留まらず、使用用途に応じてレジスト、医療分野におけるDNA試料、光学分野における樹脂レンズ材料など、ヘッド部材の耐久温度範囲で液化するものであれば、いずれも使用可能である。
これら記録液に用いられる色材として、顔料、染料のいずれでも用いることができ、混合して用いることもできる。
本発明の記録液に用いる水分散性着色剤として特に限定はないが、顔料表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するような処理がなされたことにより分散剤なしに水に分散可能となった顔料であるか、もしくは樹脂微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョン、また界面活性剤もしくは平均分子量50000以下の水溶性高分子化合物を単独もしくは併用することによって分散安定化された顔料の水分散着色剤を、単独もしくは併用することが望ましい。
このような水分散性着色剤は、色材分子が集合状態(結晶状態を含む)であるか樹脂分子と共存しており、単分子で存在していないため、耐水性、耐光性、耐ガス性に優れており、このような着色剤を用いると画像保存性を向上することが可能となる。特に顔料表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するような処理がなされたことにより分散剤なしに水に分散可能となった顔料、もしくは樹脂微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンを用いた場合、着色剤固形分に対するインク粘度が低く押さえられるため、水分散性樹脂や湿潤材を多く入れることが可能となる。
さらにインクジェットヘッドのインク流路やノズル口は小さいため、粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出性を悪化させることは知られている。インク吐出性を阻害させないために平均粒子径が500nm以下が望ましく、150nm以下が好ましい。水分散性樹脂は水分散着色剤を紙面に定着させる働きを持つ事が望ましく、定着性を向上させるためには最低造膜温度(MFT)が20℃以下であることが好ましい。しかしガラス転移点が−40℃以下になると樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移点が−30℃以上の水分散性樹脂であることが望ましい。
このようにコロイドに電荷を与えたものは、イオン性官能基を他の分子鎖を介して共有結合で結合したもの(図1(b))、イオン性官能基を有する高分子を微粒子表面に吸着させたもの(図1(c))、イオン性官能基を有する低分子(界面活性剤等)にてミセル化したもの(図1(d))などがある。いずれの場合でも本発明の効果は有効であり、限定されるものではない。
また、浸透剤は記録液と被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤ならびにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤が例示でき、これらの化合物は液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
本発明の記録液は防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐことができる。
本発明の記録液は酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を含有することによって、腐食の原因となるラジカル種が生じた場合にも酸化防止剤がラジカル種を消滅させることで腐食を防止することができる。
本発明の記録液はpH調整剤を含有することができる。本発明の記録液のpHは3〜11であることが好ましく、接液する金属部材の腐食防止の観点からは6〜10であることがさらに好ましい。pH調整剤は本発明記録液のpHを好ましい範囲に調整することが出来る。
本発明の記録液の表面張力は、20〜60mN/mであることが好ましく、被記録材との濡れ性と液滴の粒子化の両立の観点からは30〜50mN/mであることがさらに好ましい。
本発明の記録液の粘度は、1.0〜20.0mPa・sであることが好ましく、吐出安定性の観点からは2.0〜10.0mPa・sであることがさらに好ましい。
このような物質は、非イオン性親水基とイオン性の親水基を分子内に共存しているものが望ましく、イオン性親水基の反対側に非イオン性親水基が存在していることが望ましい。
上記化合物がコロイド粒子より先に電極に吸着し、イオン性基を電極側に非イオン性親水基をインク側に向けて配向することで、電極表面を非イオン性基で被覆することが出来る。これらの化合物は、電位を無くすとインク中に再溶解し、電極表面から剥離する。コロイド粒子が非イオン性基の上から吸着した場合でも同様に電極表面から剥離するため、コロイド粒子が電極表面上に堆積することを抑制すると考えられる。
コロイド粒子がカチオン性の場合、ポリオキシエチレントリヒドロキシエチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウム塩、コリンが例示でき、好ましくはコリンだが、限定されるものではない。
インクジェットヘッドは複数の加熱素子部46が形成された基板40と、基板上にパターニングされ、流路壁42を形成する被覆樹脂層45が形成され、被覆樹脂層上にノズルプレート44が形成されている。ノズルプレートにはインクを吐出するための吐出ノズル43が加熱素子部に対応するように形成されている。また基板にはインクを供給するためのインク供給口41が開口されており、基板を貫通するようになっている。
図11においては、インク流路の向きと吐出口の向きが異なるサイドシューター方式であるが、本発明で用いることができるインクジェットヘッドは、インク流路から吐出口にかけての形状が直線的であるエッジシューター方式であっても良い。
図12(a)では、本発明の特徴である荷電用電極は加熱素子部46にあり、加熱素子用電極配線50が下層に、荷電電極用配線51が上層に配線されている。
図13(a)は図12(a)のA−A’の断面図、図13(b)は図12(a)のB−B’の断面図である。図13(a)に示すように、下層よりSi基板60の上に、蓄熱層61として約1000nmの酸化シリコン膜が形成されており、その上に発熱抵抗体層62として約100nmのTaN、電極配線63として約500nmのAl層がそれぞれ所定のパターン形状に形成されている。
一対の電極配線63同士の間隙にある発熱抵抗体層62の部分が、上面のインクを急激に加熱沸騰させる発熱部となる。これら発熱抵抗体層62および電極配線63を覆う様に、主に発熱抵抗体用の電極配線63と荷電電極65用の電極配線の電極2間の絶縁性を保つ絶縁層64として1000nmの窒化シリコン層が形成されている。
Si基板60や蓄熱層61、発熱抵抗体層62、電極配線層63、絶縁層64、66、耐キャビテーション膜に用いる物質は一般的にサーマルヘッドに用いられる化合物であり、機能発現に応じて任意に変更可能であり特に限定されるものではない。
荷電電極65用の電極配線に用いられる電極配線部材は、インクと接触するため耐インク性があり、かつ耐熱性や耐キャビテーション性が求められる。そのため使用される物資は耐火性金属や貴金属から選ばれる元素との単一もしくはアマルガムであることが望ましい。
耐火性金属又は貴金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、金、銀及び白金から成る群から選択される。
これらの駆動素子部を形成するには半導体回路形成に用いられる技術や、従来のサーマルヘッドの工法技術を用いれば良い。例えばSi基板60の表面を酸化処理して酸化シリコンの蓄熱層61を形成し、蓄熱層61上に反応性スパッタリングで発熱抵抗体層62を形成する。その上にスパッタリングで電極配線層63を形成し、フォトリソグラフィ法により電極配線層63をウエットエッチングすることでパターンを作る。この上にスパッタリングにて絶縁層64を形成し、さらに荷電電極65用の電極配線層をスパッタリングもしくは蒸着にて形成する。その後フォトリソグラフィ法にて電極配線層をドライエッチングし、パターンを形成する。そしてその表面にスパッタリングにて絶縁層66と耐キャビテーション膜(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィ法にて絶縁層をドライエッチングし、駆動素子部を形成する。
荷電電極は電位の応答性に優れているインクに接している構成(図13(a))でも、インクの電気分解、電極の腐食の危険性が少ない電極表面が絶縁層で被覆されている構成(図14(a))でも可能である。
これらの加熱素子側の電極に対して対となる側の荷電電極の設置位置は、インクに電場を生じさせるためインクに隣接していることが望ましいが、接触している必要はない。
例えば対となる側の荷電電極が、電位応答性に優れたインクに接している構成(図16(a))や、インクの電気分解やコロイド粒子の吸着、電極腐食防止に優れた電極表面が絶縁層で覆われた構成(図16(b))も可能であり、上記の加熱素子部の製造方法と同様にして製造することが出来る。
このような対になる電極部は明確な電極として存在している必要はなく、加熱素子部表面の電位に応じて相対的に低い電位をもち、インク中に電場を生じさせる対極となっていれば良いものである。そのため対の荷電電極が存在しない構成(図17(e))であっても良く、その場合はインクと接する電位の低い部位が、対の荷電電極として働くこととなる。インクに接する部位でアースとなっているところが存在していると、対の荷電電極として働くと考えられる。このような明らかな対の荷電電極を持たない構成は、ヘッドの構成を容易にし設計の自由度を高めるため、より望ましい構成である。
なお、ノズル形状は図13乃至図16の吐出ノズル43に示すようにテーパーがついていることが好ましい。テーパーがつくことで、インクの供給がよりスムーズに行われる。
テーパー角θは、1〜45度であることが好ましく、3〜30度であることがさらに好ましい。θが1度未満ではインクリフィルが十分でなく、逆に45度を超えるとノズルの高集積化に支障が出てしまうからである。
一方、インク213を加熱沸騰させる発熱抵抗体214には発熱用電源216が接続され、発熱制御スイッチ215によって発熱抵抗体214の駆動・非駆動を切り替える。
このように、発熱抵抗素子と荷電電極とは別個の電源でそれぞれ駆動できる構成(図18(a))でもよいが、同一電源で駆動する構成(図18(b))でもかまわない。図18(b)では、発熱用電源216を荷電印加用電源として兼用している。図18(a)のように別個の電源を有する場合、電場形成に用いる電位を自由に選択することができ、電流が流れない絶縁層を有する構成の場合、高電圧を印加でき分極応答性を高めることが可能となる。図18(b)のように同一電源の場合、電源が単一となるため、他の電源からの干渉が起こらず信頼性の低下を抑制することが可能となる。
これらの構成で対となる荷電電極211側がアース219となっている構成(図18(c)、(d))でも同様の効果が得られ、電源が単一であっても、複数以上であってもかまわない。
このような対となる荷電電極211へのコロイド粒子の吸着を清掃するためのヘッド駆動も適時に利用可能であり、発泡による衝撃を用いて吸着物を剥離させ、剥離した物質ごとインクと共に吐出廃棄することができる。このようなクリーニング動作を行うことで、ヘッドの詰まりやコゲーション防止のための荷電の弊害を低減し、信頼性を向上させる。
上記のように荷電電極上の電位変動を荷電印加用電位切り替えスイッチ220で制御する方法や、荷電印加用交流電源221を用いて正弦波状に電位変動させる構成(図18(g))も可能である。荷電印加用交流電源221の周波数はインク中の荷電粒子の移動性に応じて任意に設定されるものであり、直流電源からのシフト電位や発泡パルス幅、加熱素子面積を踏まえて最適を設定することが望ましい。
加熱素子部の駆動タイミングについて図19を用いて説明する。荷電電極への電位印加は、随時印加しておいても良いし、発熱抵抗素子の通電タイミングに応じて印加することも出来る。電位を印加し駆動素子表面からコロイド粒子を遠ざけてコゲーションを抑制するためには、荷電電極への電位印加は加熱素子の通電より前に実施される必要がある(図19(a))。
さらに荷電電極への電位印加は加熱素子の通電より前に実施し、加熱素子に通電するときには印加を取りやめ、発泡後に再びインクがリフィールするまでの間に再度印加し続けること(図19(b))で、加熱素子と荷電電極の働きを同一の部材で実施することができ、熱応答性や熱効率の向上が見込め、同時に動作しないため最大電力を下げることが可能となり省電力にすることが出来る。
このような荷電電極は、共通のスイッチングで加圧液室にある加熱素子部の荷電電極に電位を印加することができる。この構成では回路を単純化することができ、製造性を向上させることが可能となる。逆にノズルに対応した加熱素子部の個々の荷電電極単位で印加駆動も可能で、個々の加熱素子に応じた発泡タイミングに最適ができ、信頼性が高い条件で駆動が見込める。
実施例に用いた顔料粒子の作例について説明する。ポリマー溶液Aの調整は、次のように行った。
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g及びメルカプトエタノール0.4g、メチルエチルケトン40gを混合し、65℃に昇温した。
次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン342gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。
滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、メチルエチルケトンを添加することで濃度調整を行い、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。
ポリマー溶液Aを28gと、C.I.ピグメントブルー15:3を42g、1mol/Lのコリン水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、顔料15%含有、固形分20%のマゼンタポリマー微粒子の水分散体を得た。
表面処理顔料分散液の調整は、次のように行った。
CTAB比表面積が150m2/g、DBP吸油量100ml/100gのカーボンブラック90gを、2.5N規定の過硫酸ナトリウム溶液3000mlに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させ酸化処理を行った。この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックをコリン水溶液で中和し、限外濾過を行った。得られたカーボンブラックを水洗いし乾燥させ、固形分20%となるよう純水中に分散させブラック顔料分散液を得た。
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、Rhodcal RS710 10.0g、イオン交換水350gを加え混合し、65℃に昇温した。昇温後、反応開始剤である過硫酸アンモニウム3.0gを加え、5分後にメタクリル酸メチル45g、メタクリル酸2エチルヘキシル160g、アクリル酸5g、メタクリル酸ブチル45g、メタクリル酸シクロヘキシル30g、エチレングリコールジメタクリレート15g、Rhodcal RS710 10.0g、イオン交換水340gを混合し、3時間かけて滴下を行った。その後80℃で2時間加熱熟成を行った後、常温まで冷却しコリンでpHを9〜10に調整した。エバポレータ用いてコリンでpHを8〜9に調整しつつアンモニアを留去し、水分調節をして固形分40%のポリマー溶液730gを得た。
まず湿潤剤、浸透剤、界面活性剤、水を混合し一時間攪拌を行い均一に混合する。この混合液に対して樹脂分散体を添加し一時間撹拌し、顔料分散体、消泡剤を添加し、一時間攪拌する。この分散液を0.8μセルロースアセテートメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して評価に用いるインクを得た。
インク組成は表1に示す。上記方法で調合し、インクとした。
[表1]
*1表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するような処理がなされたカーボンブラック
図12(a)に示すインクヘッドは実施例1のインクジェットヘッドの一部を透視した模式的上面図である。
図13(a)は図12(a)のA−A’の断面図、図13(b)は図12(a)のB−B’の断面図である。
図17(a)は、本発明の対電極を示したヘッドの断面説明図である。荷電電極65と絶縁層66の上層には流路壁42を形成し個々の加圧液室47を区分する感光性樹脂からなる被覆樹脂層45が形成され、その上層に荷電電極65の対となる荷電電極67が形成され、その上層に吐出ノズル43を持つノズルプレート44が形成される。
電位は荷電電極65と荷電電極67の間に与えられ、水の電気分解が起こらない程度の電位差を印加する。電位を印加するタイミングは図19(a)に示す様に加熱素子に通電する前に荷電電極65と荷電電極67に印加し、駆動素子表面からコロイド粒子を遠ざけてから、電位を下げると共に加熱素子部46に通電を行い発泡する様にした。
インクの吐出条件は、パルス幅3.0μs、駆動周波数1kHzでインク吐出可能な電圧で駆動させ、吐出耐久性で評価の終了した記録へッドを分解し、100000000回の連続吐出後に使用したノズルの加熱素子部の表面を光学顕微鏡(倍率400倍)で目視して、加熱素子部表面のコゲーションの状態を評価した。
連続吐出終了後にインクジェットヘッドを分解すると、加熱素子部表面の中央部が着色し一部にコゲが付着しているが、吐出パルスに応じた吐出は可能であった。
しかし対となる荷電電極67の表面にインクA由来の固形分が多量に吸着しており、複数のノズルで評価すると、付着物の成長により吐出曲りが見られた。
比較例として、インクジェットヘッド構成は実施例1と同様だが、荷電電極65と荷電電極67に電位差の印加を行わずに、表1記載のインクAを用いて実施例1と同様の駆動評価を行いコゲーションの評価を行った。
100000000回の連続吐出を終える前に吐出ができない状態となった。分解観察したところ、加熱素子部表面が黒く着色しており、加熱素子部がコゲに覆われており、吐出不良はコゲーションが原因と判断した。
図12(b)は、実施例2のインクジェットヘッドの一部を透視した模式的上面図である。また図13(a)は図12(b)のE−E’の断面図、図13(b)は図12(b)のF−F’の断面図である。
加熱素子部の構成は実施例1と同様であるが、対となる荷電電極67の構成を変更したものを用いた。
図17(b)は、本発明の対電極を示したヘッドの断面説明図である。荷電電極65と同一平面上に対となる荷電電極67を形成し、絶縁層66にて電極配線をインクから保護するようにした。これらの上層には流路壁42を形成し個々の液室を区分する感光性樹脂からなる被覆樹脂層45が形成され、その上層に吐出ノズル43を持つノズルプレート44を形成した。
荷電電極65と荷電電極67の間の電位印加条件は実施例1と同様に行い、表1記載のインクBを用いて実施例1と同様の駆動評価を行いコゲーションの評価を行った。
100000000回の連続吐出終了後に分解すると、加熱素子部表面に少し着色しているが、初期の90%以上の吐出量を維持しており、コゲーションによる顕著な吐出性の低下は見られなかった。
また対となる荷電電極67の表面にインクB由来の固形分が多量に吸着しており、複数のノズルで評価すると、小数のノズルで吐出曲りが見られ、分解評価したところ、荷電電極67から脱離した凝集物がノズルに付着していることが観察された。
図12(a)は、実施例3のインクジェットヘッドの一部を透視した模式的上面図である。
図14(a)は図12(a)のA−A’の断面図、図14(b)は図12(a)のB−B’の断面図である。図14(a)に示すように、下層よりSi基板60の上に、蓄熱層61として約1000nmの酸化シリコン膜が形成されており、その上にTaNの約100nmの発熱抵抗体層62、電極配線63として約500nmのAl層がそれぞれ所定のパターン形状に形成されている。一対の電極配線63同士の間隙にある発熱抵抗体層62の部分が、上面のインクを急激に発熱沸騰させる発熱部となる。これら発熱抵抗体層62および電極配線63を覆う様に、主に発熱抵抗体用の電極配線63と荷電電極65用の電極配線の電極2間の絶縁性を保つ窒化シリコンの1000nmの絶縁層64として窒化シリコン層が形成されている。電極配線63同士の間隙の発熱部を覆う位置で絶縁層64の上層に荷電電極65用の電極配線として200nmのAl層とその上層に50nmのPt膜がパターン形状に形成されている。
そして絶縁性を保つ絶縁層66として約1000nmの窒化シリコン層が形成されている。加熱素子部にはドライエッチングにて絶縁層66を300nmまで減らし、さらに図には示されていないが耐キャビテーション膜として100nmの耐インク腐食性の高い、Taを含むアモルファス合金膜が形成されている。
電位は荷電電極65と荷電電極67の間に与えられ、駆動による絶縁層66の絶縁破壊が起こらない程度の電位差を印加する。電位を印加するタイミングは図19(c)に示す様に加熱素子に通電する前に荷電電極に印加し、加熱素子に通電を行い発泡後、インクがリフィールするまで印加し続け、リフィール後に電圧を下げる様にした。このようにすることで、発砲後の加熱された加熱素子上にインクが満ちる際にコロイド粒子の焼き付きが起こりにくくなり、コゲーションを起こしにくくなる。
上記ヘッド構成と表1記載のインクAを用いて、実施例1と同様の駆動評価を行いコゲーションの評価を行った。
加熱素子部表面に少し着色しているが、初期の90%以上の吐出量を維持しており、コゲーションによる顕著な吐出性の低下は見られなかった。
また対となる荷電電極67の表面は若干のインクA由来の固形分が見られたが、付着物による吐出曲りは見られなかった。付着物は吐出時の衝撃により剥離し、インクと共に吐出されるため、荷電電極67に過度の堆積が起こらなかったものと考えられる。
しかし引き続き連続駆動で評価を進めると、徐々に吐出量の低下が見られるようになった。分解し評価を行うと、荷電電極67に堆積が進行し吐出ノズルの径が狭まっていたことが判明した。
図12(c)は、実施例4のインクジェットヘッドの一部を透視した模式的上面図である。また図14(a)は図12(c)のG−G’の断面図、図14(b)は図12(c)のH−H’の断面図である。
加熱素子部の構成は実施例3と同様であるが、荷電電極65の対となる荷電電極67の構成を変更したものを用いた。
図17(d)は、本発明の対電極を示したヘッドの断面説明図である。荷電電極65と同一平面側に対となる荷電電極67を形成し、絶縁層66にて電極配線をインクから保護するようにした。これらの上層には流路壁42を形成し個々の加圧液室47を区分する感光性樹脂からなる被覆樹脂層45が形成され、同被覆樹脂層にて形成されたフィルタ69を設けた。フィルタ69は加熱素子部が形成されている加圧液室47の入り口に作られており、隙間の間隔は吐出ノズル径より狭くなるように作られている。そしてその上層に吐出ノズル43を持つノズルプレートを形成した。
荷電電極間の電位印加条件は実施例3と同様に行い、表1記載のインクAを用いて実施例1と同様の駆動評価を行いコゲーションの評価を行った。
加熱素子部表面に少し着色しているが、初期の90%以上の吐出量を維持しており、コゲーションによる顕著な吐出性の低下は見られなかった。
また対となる荷電電極67の表面はインクA由来の固形分が見られたが、付着物による吐出曲りは見られなかった。付着凝集物は剥離した場合、吐出ノズルより大きくなるとフィルタにより個別液室に進入できないため、ノズルを詰めることなく吐出を阻害しない結果となった。
しかし引き続き連続駆動で評価を進めると、ノズルによっては吐出量の低下が見られるようになった。分解し評価を行うと、フィルタの目詰まりが引き起こされていることが観察された。
図12(d)は、実施例5のインクジェットヘッドの一部を透視した模式的上面図である。荷電用電極は加熱素子部46にあり、加熱素子用電極配線50が荷電電極用配線と兼ねる構成となっている。
図15(a)は図12(d)のC−C’の断面図、図15(b)は図12(d)のD−D’の断面図である。図15(a)に示すように、下層よりSi基板60の上に、蓄熱層61として約1000nmの酸化シリコン膜が形成されており、その上に発熱抵抗体層62として約100nmのTaN、電極配線63として約500nmのAl層がそれぞれ所定のパターン形状に形成されている。一対の電極配線63同士の間隙にある発熱抵抗体層62の部分が、上面のインクを急激に加熱沸騰させる発熱部となる。
これら発熱抵抗体層62および電極配線63を覆う様に、主に電極配線63と荷電電極65用の電極配線の電極2間の絶縁性を保つ絶縁層64として1000nmの窒化シリコン層が形成されている。図には示されていないが耐キャビテーション膜として100nmの耐インク腐食性の高い、Taを含むアモルファス合金膜が形成されている。
電位は荷電電極65と荷電電極67の間に与えられ水の電気分解が起こらない程度の電位差を印加する。電位を印加するタイミングは図19(b)に示す様に駆動素子表面からコロイド粒子を遠ざけてから、電位を下げると共に加熱素子に通電を行い発泡する。また発泡後、インクがリフィールするまでの間に再度印加し続け、リフィール後に電圧を下げる様にした。このようにすることで、加熱素子と荷電電極の働きを同一の部材で実施することができ、熱応答性や熱効率の向上が見込め、ヘッド工法が安易となる。
上記ヘッド構成と表1記載のインクCを用いて、実施例1と同様の駆動評価を行いコゲーションの評価を行った。加熱素子部表面は僅かに着色しているが、ほぼ初期と同等の吐出量を維持しており、コゲーションによる吐出性の低下は見られなかった。これはインクCに添加されている対イオンの窒素化合物(コリン)の効果により、コゲーションが抑制されたと推測される。
また対となる荷電電極67の表面は若干のインクC由来の固形分が見られたが、付着物による吐出曲りは見られなかった。付着物は吐出時の衝撃により剥離し、インクと共に吐出されるため、荷電電極67に過度の堆積が起こらなかったものと考えられる。
しかし実施例3同様、引き続き連続駆動で評価を進めると、徐々に吐出量の低下が見られるようになった。分解し評価を行うと、荷電電極67に堆積が進行し吐出ノズルの径が狭まっていたことが判明した。
実施例5と同一のヘッド構成と表1記載のインクDを用いて、実施例5と同様の駆動評価を行いコゲーションの評価を行った。
加熱素子部46の表面は僅かに着色しているが、ほぼ初期と同等の吐出量を維持しており、コゲーションによる吐出性の低下は見られなかった。
また対となる荷電電極67の表面に固着吸着物が見られなかった。インクDに添加されているリン化合物の効果で、荷電電極67への吸着が抑制されたと推測される。
[実施例7]
実施例4と同一のヘッド構成と表1記載のインクDを用いて、加熱素子と荷電電極が別の素子であるが、実施例5と同様の駆動評価を行いコゲーションの評価を行った。
加熱素子部表面は僅かに着色しているが、ほぼ初期と同等の吐出量を維持しており、コゲーションによる吐出性の低下は見られなかった。
また対となる荷電電極67の表面に固着吸着物が見られなかった。
図12(b)に示すインクヘッドは実施例8の模式的上面図である。また図13(a)は図12(b)のE−E’の断面図、図13(b)は図12(b)のF−F’の断面図である。
加熱素子部の構成は実施例1と同様であるが、荷電電極の対となる荷電電極の構成を変更したものを用いた。
図17(e)に示すように、加熱素子部の上層には流路壁を形成し個々の液室を区分する感光性樹脂からなる被覆樹脂層45が形成され、その上層に吐出ノズル43を持つノズルプレートを形成した。荷電電極65以外には対となる荷電電極を形成しなかったが、ノズルプレートをアースに落とすことでノズルプレートを対となる荷電電極とした。
荷電電極間の電位印加条件は実施例5と同様に行い、表1記載のインクDを用いて実施例1と同様の駆動評価を行いコゲーションの評価を行った。
加熱素子部表面は僅かに着色しているが、ほぼ初期と同等の吐出量を維持しており、コゲーションによる吐出性の低下は見られなかった。
また対となるノズルプレートのインク流路面の表面に固着吸着物が見られなかった。
実施例8のヘッドとインクをインクジェットプリンタ(IPSIO G707、株式会社リコー製)のヘッド部を上記のヘッドと交換し、サーマルヘッド駆動を吐出試験回路で制御しつつ、プリンタの紙搬送、キャリッジ移動と同期させながら普通紙(Type6200、株式会社リコー製)上に印字を行った。
1mmの線のチャートを印字し、印写した印字面を温度23℃、湿度50%で24時間乾燥させ、そのチャートの線上に純水を1滴滴下して静置乾燥を行い、インクのにじみだしについて目視評価を実施した。同様の評価を従来のサーマルインクジェットプリンタ(PIXUS MP810、キヤノン株式会社製)でテキスト画像(「―」)でチャートを作成して従来の黒顔料インク(BCI−9BK)にて印字するようにして評価した。
本発明は線からの顔料の滲みだしは見られず鮮明な線を保っていたが、従来のプリンタからの印字物では画像から顔料のにじみ出しが見受けられた。
また同様に印写した線チャートの印字部を印字10分後にゼブラ製蛍光マーカーペン オプティックス(黄)にてマーキングし、蛍光ペンによるインクの染み出し汚れを確認したが、本発明では汚れは見られなかったが、従来のプリンタによる印字物からは顔料の染みだしによる尾引が、マーカー部分に見られた。
Claims (4)
- インクを流入させる加圧液室と、前記加圧液室内に備えられると共に前記加圧液室内のインクを加熱沸騰させる加熱素子と、前記インクに電場を形成する荷電電極と、該荷電電極と対となる対極電極と、を備え、加熱沸騰して発生した気泡の圧力により前記インクをノズルから吐出させるインクジェットヘッドであって、
前記荷電電極は、絶縁層を介して前記加熱素子の上層に設けられており、
前記インクのゼータ電位が負のときには前記荷電電極の極性が負となる電位を該荷電電極に印加し、前記インクのゼータ電位が正のときには前記荷電電極の極性が正となる電位を該荷電電極に印加する電位印加手段を前記加圧液室内に設けることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記荷電電極を前記加熱素子と略平行な平面に設けることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記荷電電極への電圧印加のタイミングは、前記加熱素子に電圧を印加する前であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1乃至3の何れか一項に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とするインクジェット装置。
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