JP2015135811A - 非水系二次電池負極用炭素材、それを用いた非水系二次電池用負極及び非水系二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
この電池の負極材としては種々のものが提案されているが、高容量であること及び放電電位の平坦性に優れていることなどから、天然黒鉛、コークス等の黒鉛化で得られる人造黒鉛や、黒鉛化メソフェーズピッチ、黒鉛化炭素繊維等の黒鉛質の炭素材料が前記負極材として用いられている。
例えば、特許文献1では、Si化合物の微粉末と黒鉛と炭素質物前駆体であるピッチ等との混合物を焼成しSi複合炭素粒子を製造する方法が提案されている。
よる導電パス切れを、炭素材料を混合させることで改善し、サイクル劣化を抑制できることが記載されている。しかしながら、高速での充放電において十分に性能が得られない(低出力)問題は解決できず、極板剥がれも十分に抑制できるものではなかった。
本発明は上記従来技術の問題点を解決し、高容量、高出力で且つサイクル特性に優れ、不可逆容量が少ない非水系二次電池負極用炭素材、当該炭素材料を用いて得られる非水系二次電池用負極、及び当該負極を備える非水系二次電池を提供することを目的とする。
とが可能となる。また、Si複合炭素粒子(A)の粒子間に、複合炭素粒子(B)が入り込むことで電解液の大きな流路と充填性が確保されたことにより、充放電時の膨張収縮に起因するパス切れが抑制されサイクル特性が向上すると考えられる。複合炭素粒子(B)は表面に炭素質粒子の微小な凹凸を有するため、電解液の細かな流路が確保され、低温時の入出力特性が向上すると考えられる。更には、複合炭素粒子(B)が有する微小な凹凸により粒子同士の接点が増え、極板強度が向上すると考えられる。このため高容量でサイクル特性に優れ、不可逆容量が少ない非水系二次電池負極用炭素材を得ることができたと考えられる。
また、本発明の他の要旨は、上記非水系二次電池負極用炭素材を用いて形成されることを特徴とする、非水系二次電池用負極に存する。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材はSi複合炭素粒子(A)及び複合炭素粒子(B)を含有し、Si複合炭素粒子(A)は少なくとも黒鉛質粒子及び珪素元素を含み、複合炭素粒子(B)は少なくとも黒鉛質粒子、炭素質粒子及び炭素質物を含むことを特徴とする。
以下、本発明に用いるSi複合炭素粒子(A)と、複合炭素粒子(B)について説明す
る。
本発明におけるSi複合炭素粒子(A)について以下に説明する。
本発明のSi複合炭素粒子(A)は少なくとも黒鉛質粒子及び珪素元素を含む材料であれば特に限定されない。
Si複合炭素粒子(A)の体積基準平均粒径(d50)(以下、平均粒径d50ともいう)は、通常1μm以上、好ましくは4μm以上、より好ましくは7μm以上であり、また、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。平均粒径d50が大きすぎると、総粒子が少なくなり本発明の炭素材中のSi複合炭素粒子(A)の存在割合が低下するため、複合黒鉛粒子(B)を含有する効果が得られ難くなる傾向がある。一方、平均粒径d50が小さすぎると、比表面積が大きくなるため電解液の分解が増え、本発明の炭素材を用いて得られる非水系二次電池(以下、「非水系二次電池」、「電池」とも呼ぶ)の初期効率が低下する傾向がある。
Si複合炭素粒子(A)のアスペクト比は、通常1以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上、更に好ましくは1.5以上、通常4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下である。
アスペクト比が大きすぎると、電極とした際に粒子が集電体と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのリチウムイオン移動性が低下し、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。アスペクト比は、粒子の樹脂包埋物又は極板を平板に対して垂直に研磨して、その断面写真を撮影し、ランダムに50個以上の粒子を抽出して、粒子の最長径(平板に対して平行方向)と最短径(平板に対して垂直方向)を画像解析により測定し、最長径/最短径の平均を取ることによって測定することができる。樹脂包埋又は極板化した粒子は、通常は平板に対して粒子の厚み方向が垂直に並ぶ傾向があることから、上記の方法より、粒子に特徴的な最長径と最短径を得ることが出来る。
Si複合炭素粒子(A)の円形度は、通常0.85以上、好ましくは0.88以上、より好ましくは0.89以上、更に好ましくは0.90以上である。また円形度は通常1以下、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、更に好ましくは0.97以下である。なお、本明細書における球状を上記円形度の範囲にて表現することもできる。
なお、本発明において円形度は下記式(1)で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
円形度
=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)
円形度の値は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックスインダストリアル社製FPIA)を用い、界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)モノラウレートを使用し、分散媒としてイオン交換水を使用し、円相当径による円形度の算出を行うことで求められる。円相当径とは、撮影した粒子像と同じ投影面積を持つ円(相当円)の直径であり、円形度とは、相当円の周囲長を分子とし、撮影された粒子投影像の周囲長を分母とした比率である。測定した相当径が10〜40μmの範囲の粒子の円形度を平均し、本発明における円形度を求める。
Si複合炭素粒子(A)のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、通常0.337nm以下、好ましくは0.336nm以下である。d値が大きすぎると結晶性が低下し、非水系二次電池の放電容量が低下する傾向がある。一方、下限値は黒鉛の理論値である0.3356nmである。
また、Si複合炭素粒子(A)の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、電池の放電容量が低下する傾向がある。
Si複合炭素粒子(A)のラマンR値は、Si複合炭素粒子(A)のラマンスペクトルにおいて、1580cm−1付近の最大ピークPAの強度IAと、1360cm−1付近の最大ピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出して定義する。その値は通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下であり、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎてLi挿入サイト数が減り、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
Si複合炭素粒子(A)は、下記式(2)で表される表面官能基量O/C値が通常0.1%以上であり、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、一方通常30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。この表面官能基量O/C値が小さすぎると、負極活物質表面におけるLiイオンと電解液溶媒の脱溶媒和反応性が低下し、非水系二次電池の大電流充放電特性が低下する傾向があり、O/Cが大きすぎると、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く傾向がある。
O/C値(%)
={(X線光電子分光法(XPS)分析におけるO1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたO原子濃度)/(XPS分析におけるC1sのスペクトルのピーク面積に基づいて求めたC原子濃度)}×100
本発明における表面官能基量O/C値はX線光電子分光法(XPS)を用いて以下のように測定することができる。
Si複合炭素粒子(A)のBET法で測定した比表面積については、通常0.1m2/g以上、好ましくは0.7m2/g以上、より好ましくは1m2/g以上である。また、通常40m2/g以下、好ましくは30m2/g以下、より好ましくは20m2/g以下、更に好ましくは18m2/g以下、特に好ましくは17m2/g以下である。
なおBET比表面積は、比表面積測定装置を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定する。
Si複合炭素粒子(A)のタップ密度は、通常0.5g/cm3以上であり、好ましくは0.6g/cm3以上、より好ましくは0.8g/cm3以上、更に好ましくは0.85g/cm3以上、特に好ましくは0.9g/cm3以上、通常1.3g/cm3以下であり、好ましくは1.2g/cm3以下であり、より好ましくは1.1g/cm3以下である。タップ密度が低すぎると、非水系二次電池の高速充放電特性に劣り、タップ密度が高すぎると、粒子接触性の低下による導電パス切れにより、サイクル特性の低下を招く場合がある。
本発明において、タップ密度は、粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cm3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、試料(Si複合炭素粒子(A))を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度として定義する。
Si複合炭素粒子(A)のDBP(フタル酸ジブチル)吸油量は、通常65ml/10
0g以下、好ましくは62ml/100g以下、より好ましくは60ml/100g以下、更に好ましくは57ml/100g以下である。また、通常30ml/100g以上、好ましくは40ml/100g以上、より好ましくは50ml/100g以上である。DBP吸油量が大きすぎると、負極を形成する際の、本発明の炭素材を含むスラリーの塗布時のスジ引きなどを引き起こしやすい傾向があり、小さすぎると、粒子内の細孔構造が殆ど存在していない可能性があり、反応面が少なくなる傾向がある。
本発明におけるSi複合炭素粒子(A)中に含有される珪素元素の態様としては、Si,SiOx,SiNx,SiCx、SiZxOy(Z=C、N)などが挙げられ、本発明ではこれらを総称してSi化合物と呼ぶ。中でも非水系二次電池の容量の観点から、好ましくはSi及びSiOxである。この一般式SiOxの化合物は、二酸化Si(SiO2)と金属Si(Si)とを原料として得られるが、そのxの値は通常0<x<2であり、好ましくは0.2以上1.8以下、より好ましくは0.4以上1.6以下、更に好ましくは0.6以上1.4以下である。この範囲であれば、非水系二次電池が高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
また、本発明におけるSi複合炭素粒子(A)中の珪素元素の含有量は、Si複合炭素粒子(A)に対して通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。この範囲であると、十分な容量の非水系二次電池を得ることが可能となる点で好ましい。
本発明に使用されるSi複合炭素粒子(A)における、以下の測定方法にて算出される珪素元素の存在比率は、通常0.2以上であり、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.6以上であり、また、通常1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下である。この数値が高いほど、Si複合炭素粒子(A)の外部に存在する珪素元素に比べて、Si複合炭素粒子(A)の内部に存在する珪素元素が多くなる可能性があり、負極を形成した際、粒子間の導電パス切れによる充放電効率の減少が抑制できる傾向がある。
SEM(走査型電子顕微鏡)にて該Si複合炭素粒子(A)1粒子の断面を観察する際の加速電圧は好ましくは通常1kV以上、より好ましくは2kV以上、更に好ましくは3kV以上であり、通常10kV以下、より好ましくは8kV以下、更に好ましくは5kV以下である。この範囲であれば、SEMの画像において反射二次電子像の違いにより、黒鉛粒子とSi化合物の識別が容易となる。また、撮像倍率は通常500倍以上、より好ましくは1000倍以上、更に好ましくは2000倍以上であり、通常10000倍以下である。上記の範囲であれば、Si複合炭素粒子(A)の1粒子の全体像が取得可能である。解像度は200dpi(ppi)以上、好ましくは256dpi(ppi)以上である。また、画素数は800ピクセル以上で評価することが好ましい。次に像の観察をしながらエネルギー分散型(EDX)及び波長分散型(WDX)にて、黒鉛及び珪素元素の識別を行う。
上記で算出した面積(b)を面積(a)で割った値を任意の3粒子にて測定し、それら3粒子の値を平均化した値を該Si複合炭素粒子(A)中の珪素元素の存在比率とする。
以上説明したSi複合炭素粒子(A)の態様としては、珪素元素が含有された炭素材料であれば特に制限されないが、例えば、
(イ)炭素材料からなる造粒体の中にSi化合物粒子が分散したもの、
(ロ)核となる炭素材料の外周にSi化合物粒子が添着又は被覆しているもの、
(ハ)球形化処理された炭素材料の内部にSi化合物粒子が分散したもの、
(ニ)核となるSi化合物粒子の外周に炭素質物が添着又は被覆したもの、
(ホ)これらを組み合わせた態様
等が挙げられる。
(Si複合炭素粒子(A)の原料)
上述したSi複合炭素粒子(A)は、珪素元素と炭素材料が複合化したSi複合炭素粒
子であれば、その原料は特に限定されないが、例えば炭素材料、Si化合物粒子、及び炭素質物となる有機化合物を用いて製造することができる。
原料として使用する炭素材料は、特に限定されないが、上記(イ)や(ハ)のSi複合炭素粒子(A)を製造する場合、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛粒子、又は、これらよりもやや結晶性の低い石炭系コークス、石油系コークス、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びピッチ系炭素繊維からなる群から選ばれる材料の焼成物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
CARBON,GRAPHITE, DIAMOND AND FULLERENES」(N
oyesPubLications発行)参照)。黒鉛結晶性(黒鉛化度)は、鱗状黒鉛が100%で最も高く、これに次いで鱗片状黒鉛が99.9%で高いので、これらの黒鉛を用いることが好ましい。
これらの天然黒鉛の中で、鱗片状黒鉛や鱗状黒鉛は、黒鉛結晶性が高く不純物量が低い等の長所があるため、本発明において好ましく使用することができ、鱗片状黒鉛がより好ましい。黒鉛が鱗片状であることを確認するための視覚的手法としては、走査電子顕微鏡による粒子表面観察、粒子を樹脂に包埋させて樹脂の薄片を作製し粒子断面を切り出す、あるいは粒子からなる塗布膜についてクロスセクションポリッシャーによる塗布膜断面を作製し粒子断面を切り出した後、走査電子顕微鏡による粒子断面を観察する方法などが挙げられる。
また、上記(ロ)のSi複合炭素粒子(A)を製造する場合、粒子の核として形を保てる点から例えば鱗片状黒鉛などに機械的応力を加え球形化処理した黒鉛粒子や、黒鉛と炭素質物となる有機化合物を混合し造粒した黒鉛粒子を用いることが好ましい。
原料として使用する炭素材料の体積基準平均粒径(d50)は、特に制限はないが、通常1μm以上120μm以下であり、好ましくは3μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上90μm以下である。原料として使用する炭素材料の平均粒子径d50が大きすぎると、Si複合炭素粒子(A)の粒径が大きくなり、該Si複合炭素粒子(A)を混合した負極用活物質をスラリー状で塗布する工程で、大粒子に起因したスジ引きや凹凸を生じることがある。平体粒径d50が小さすぎると、複合化が難しくなり、Si複合炭素粒子(A)を製造することが困難となる場合がある。
粒子の膨張収縮によるSi複合炭素粒子(A)の破壊を抑制できる。
本発明におけるSi複合炭素粒子(A)の原料として使用するSi化合物粒子としては、以下の物性を示すものが好ましい。
原料として使用するSi化合物粒子の体積平均粒子径(d50)は、サイクル寿命の観点から、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、更に好ましくは0.03μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径(d50)が前記範囲内であると、非水系二次電池の充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性を得ることができる。
原料として使用するSi化合物粒子の含有酸素量には、特に制限はないが、通常0.01質量%以上12質量%以下であり、0.05質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
原料として使用するSi化合物粒子の結晶子サイズには、特に制限はないが、通常、XRDより算出される(111)面の結晶子サイズにおいて通常0.05nm以上、好ましくは1nm以上であり、通常100nm以下であり、50nm以下であることが好ましい。該粒子の結晶子サイズが前記範囲内であると、SiとLiイオンの反応が迅速に進み、電池の入出力に優れるので好ましい。
なお、Si複合炭素粒子(A)中のSi化合物粒子は、原料となるSi化合物粒子の物性と同様の性質を持つことが好ましい。
本発明におけるSi複合炭素粒子(A)の原料として使用する炭素質物となる有機化合物としては、以下の(a)又は(b)に記載の炭素材が好ましい。
(a)石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた炭化可能な有機物
前記石炭系重質油としては、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、乾留液化油等が好ましく、前記直流系重質油としては、常圧残油、減圧残油等が好ましく、前記分解系石油重質油としては、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等が好ましく、前記芳香族炭化水素としては、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等が好ましく、前記N環化合物としては、フェナジン、アクリジン等が好ましく、前記S環化合物としては、チオフェン、ビチオフェン等が好ましく、前記ポリフェニレンとしては、ビフェニル、テルフェニル等が好ましく、前記有機合成高分子としては、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、ポリアクリロニトリル、ポリピロール、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ウレタン樹脂、尿素樹脂等の窒素含有高分子、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸等が好ましく、前記天然高分子としては、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロース等の多糖類等が好ましく、前記熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等が好ましく、前記熱硬化性樹脂としては、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等が好ましい。
また、これらは1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
なお、Si複合炭素粒子(A)中における炭素質物としては、黒鉛粒子よりも黒鉛結晶性が低いもの(非晶質物)が好ましい。具体的には、以下の物性を示すものが好ましい。
上述したSi複合炭素粒子(A)は、珪素元素と炭素材料とが複合化したSi複合炭素粒子であれば、その製造方法は特に限定されないが、例えば以下の手法(i)〜手法(iii)によって製造することができる。
上述した(イ)炭素材料からなる造粒体の中にSi化合物粒子が分散したSi複合炭素粒子(A)や(ロ)核となる炭素材料の外周にSi化合物粒子が添着又は被覆しているS
i複合炭素粒子(A)を製造するには、例えば、炭素材料、Si化合物粒子、炭素質物となる有機化合物を混合し、造粒する手法が挙げられる。
(1)Si化合物粒子、炭素材料、および炭素質物となる有機化合物を混合する工程、及び
(2)(1)で得られた混合物を焼成する工程、が挙げられる。
上記の(1)〜(2)工程を少なくとも含む方法によってSi複合炭素粒子(A)を製造することができる。以下、(1)及び(2)の工程について説明する。
Si化合物粒子、炭素材料、および炭素質物となる有機化合物を混合し、混合物を得られれば特に原料を仕込む順序に制限はないが、例えば、Si化合物粒子に炭素材料を混合した後に炭素質物となる有機化合物を混合する方法、炭素材料に炭素質物となる有機化合物を混合した後にSi化合物粒子を混合する方法、Si化合物粒子に炭素質物となる有機化合物を混合した後に炭素材料を混合する方法、Si化合物粒子、炭素材料および炭素質物となる有機化合物を一度に混合する方法等の方法が挙げられる。
Si化合物粒子、炭素材料および炭素質物となる有機化合物を混合する方法における具体的な混合方法としては、例えば粉末混合法、溶融混合法、溶液混合法等が挙げられる。
Si化合物粒子、炭素材料および炭素質物となる有機化合物を混合する際、通常は常圧下で行うが、所望ならば、減圧下又は加圧下に行うこともできる。混合は回分方式及び連続方式のいずれで行うこともできる。いずれの場合でも、粗混合に適した装置及び精密混合に適した装置を組合せて用いることにより、混合効率を向上させることができる。
分散を行う構造の装置、半円筒状混合槽の側面に沿ってシグマ型などの撹拌翼が回転する構造を有する、いわゆるニーダー形式の装置、撹拌翼を3軸にしたトリミックスタイプの装置、容器内に回転ディスクと分散媒体を有するいわゆるビーズミル型式の装置などが用いられる。
Si化合物粒子、炭素材料、および炭素質物となる有機化合物の合計に対するSi化合物粒子の混合割合は、通常1質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上である。また、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。Si化合物粒子が多すぎると、非水系二次電池において充放電に伴う体積膨張が大きくなり、容量劣化が顕著になる傾向がある。また、Si化合物粒子が少なすぎると、十分な容量が得られない傾向がある。
本工程では(1)工程で得られた、Si化合物粒子、炭素材料および炭素質物となる有機化合物とを含む混合物を焼成する。
焼成する際の雰囲気は、非酸化性雰囲気であり、好ましくは窒素、アルゴン、二酸化炭素、アンモニア、水素などを流通させ非酸化性雰囲気にて焼成する。
る有機化合物の酸化を防ぐ必要があるからである。
焼成温度は焼成雰囲気及び炭素質物となる有機化合物により異なるが、一例として窒素流通雰囲気下であれば通常は500℃以上、好ましくは800℃以上、より好ましくは850℃以上である。また、通常は高くても3000℃以下、好ましくは2000℃以下であり、1500℃以下がより好ましい。焼成温度が低すぎると炭化が十分に進行せず、非水系二次電池の充放電初期の不可逆容量が増大する虞があり、またSi化合物の還元速度が低下するため、焼成時間をより長くとる必要が生じる。ただし、還元速度については、焼成雰囲気を水素雰囲気などのより強い還元雰囲気にすることで、低温でも速めることが可能である。
焼成処理条件において、熱履歴温度条件、昇温速度、冷却速度、熱処理時間等は、適宜設定する。また、比較的低温領域で熱処理した後、所定の温度に昇温することもできる。
上記工程を経た複合炭素材に対しては、粉砕、解砕、分級処理等の粉体加工を実施し、Si複合炭素粒子(A)を得る。
粉砕や解砕に用いる装置に特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはせん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
上述のような製造方法により、Si複合炭素粒子(A)が製造できる。ただし、Si複合炭素粒子(A)は、上記製造方法で製造されたものに限定されない。
上述した(ハ)球形化処理された炭素材料の内部にSi化合物粒子が分散したSi複合炭素粒子(A)を製造する方法としては、例えば、炭素材料とSi化合物粒子を混合し、その後、球形化処理を施すことでSi複合炭素粒子の内側にSi化合物粒子を内包する方法が挙げられる。なお、手法(ii)における原料としての炭素材料、Si化合物粒子、及び後述する工程(3)にて使用される炭素質物となる有機化合物は、特に限定されるものでなく、手法(i)と同じものを用いることができる。
(1)炭素材料とSi化合物粒子を混合、固定化する工程
(2)(1)で得られたものに対して球形化処理を施す工程
(1)炭素材料とSi化合物粒子を混合、固定化する工程
Si化合物粒子と炭素材料の合計に対するSi化合物粒子の混合割合は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。また、通常95質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは35質量%以下である。この範囲であると、非水系二次電池において十分な容量を得ることが可能となる点で好ましい。
分散溶媒の混合割合が高すぎるとコスト増になる傾向があり、分散溶媒の混合割合が低すぎるとSi化合物粒子の均一な分散が困難になる傾向がある。
または、過剰の分散溶媒を加えることなく、そのまま高速撹拌機中で加温しながら分散溶媒を蒸発させながら混合、固定化してもよい。この際、炭素材料にSi化合物粒子を固定化させるために、樹脂やピッチ等の緩衝材を使うことができ、なかでも樹脂を使うことが好ましい。この樹脂は、炭素材料へのSi化合物粒子の固定化の役割を担うだけでなく、球形化工程時に炭素材料からSi化合物粒子が脱離することを防ぐ役割を担うと考えられる。なお、緩衝材を加える場合は、この段階で加えてもよいし、Si化合物粒子の湿式
粉砕時に添加してもよい。
混合は通常は常圧下で行うが、所望ならば、減圧下又は加圧下で行うこともできる。混合は回分方式及び連続方式のいずれで行うこともできる。いずれの場合でも、粗混合に適した装置及び精密混合に適した装置を組合せて用いることにより、混合効率を向上させることができる。また、混合・固定化(乾燥)を同時に行う装置を利用してもよい。乾燥は通常は減圧下又は加圧下で行うこともでき、好ましくは減圧にて乾燥させる。
乾燥温度は、溶媒によって異なるが上記時間を実現できる時間であることが好ましい。また、樹脂が変性しない温度以下であることが好ましい。
本(2)工程を経ることにより、炭素材料が折り畳まれた構造が観察され、且つ該折り畳まれた構造内の間隙にSi化合物粒子が存在するSi複合炭素粒子(A)を製造することができる。なお、前記の構造は、例えば、電界放射型走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線(SEM−EDX)分析、X線光電子分光法(XPS)分析等の手法を用いSi
複合炭素粒子(A)の粒子断面を観察することにより確認することができる。
このような装置を使用して球形化処理を行うが、この処理の際には、ローターの回転数を通常2000rpm以上8000rpm以下、好ましくは4000rpm以上7000rpm以下として、通常1分以上60分以下の範囲で、球形化処理を行う。
気力分級がコストや生産性の面から好ましい。
上記工程(2)のようにしてSi複合炭素粒子(A)が得られるが、当該Si複合炭素粒子(A)は、炭素質物を含有することが好ましく、より具体的な態様として、炭素質物でその表面の少なくとも一部が被覆されていることがより好ましい(以下、このようなSi複合炭素粒子(A)を炭素質物被覆Si複合炭素粒子ともいう)。なお、本明細書では炭素質物被覆Si複合炭素粒子は、便宜上Si複合炭素粒子(A)と区別して記載しているが、本明細書では炭素質物被覆Si複合炭素粒子もSi複合炭素粒子(A)に含まれて解釈されるものとする。
焼成温度を、通常600℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは900℃以上、通常2000℃以下、好ましくは1500℃以下、より好ましくは1200℃以下とすると炭素質物として非晶質物が得られ、通常2000℃以上、好ましくは2500℃以上、通常3200℃以下で熱処理を行うと炭素質物として黒鉛質物が得られる。前記非晶質物とは結晶性の低い炭素であり、前記黒鉛質物とは結晶性の高い炭素である。
炭素微粒子が、1次粒子が集合・凝集した2次構造を有する場合、1次粒径が3nm以上、500nm以下であればその他の物性や種類は特に限定されないが、1次粒径は、好ましくは3nm以上、より好ましくは15nm以上であり、更に好ましくは30nm以上であり、特に好ましくは40nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下、特に好ましくは70nm以下である。炭素微粒子の1次粒径は、SEM等の電子顕微鏡観察やレーザー回折式粒度分布計などによって測定することができる。
炭素質物被覆Si複合炭素粒子は上述したSi複合炭素粒子(A)と同じ物性を示すものであるが、とりわけ被覆処理により変化する炭素質物被覆Si複合炭素粒子の好ましい物性を以下に記載する。
炭素質物被覆Si複合炭素粒子のX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)は通常0.336nm以上、好ましくは0.337nm以上、より好ましくは0.340nm以上、更に好ましくは0.342nm以上である。また、通常0.380nm未満、好ましくは0.370nm以下、より好ましくは0.360nm以下である。d002値が大きすぎるということは結晶性が低いことを示し、非水系二次電池のサイクル特性が低下する傾向があり、d002値が小さすぎると炭素質物を複合化させた効果が得られ難い。
炭素質物被覆Si複合炭素粒子は、非晶質物又は黒鉛質物を含有しているものであるが、この中でも非晶質炭素質物が含有されていることがリチウムイオンの受入性の点から好ましい。非晶質炭素質物の含有量は、通常0.5質量%以上30質量%以下、好ましくは1質量%以上25質量%以下、より好ましくは2質量%以上20質量%以下である。この含有量が大きすぎると負極材の非晶質物部分が多くなり、電池を組んだ際の可逆容量が小さくなる傾向がある。一方含有量が小さすぎると、核となるSi複合炭素粒子(A)に対して非晶質物が均一にコートされないとともに強固な造粒がなされず、焼成後に粉砕した際、粒径が小さくなりすぎる傾向がある。
式(3)
炭素質物の含有量(質量%)
=(炭素質物となる有機化合物の質量×残炭率×100)/{試料(Si複合炭素粒子(
A))に含有される黒鉛粒子とSi化合物粒子の合計の質量+(炭素質物となる有機化合物の質量×残炭率)}
手法(ii)には、前述した炭素質物の被覆工程のほか、粉砕処理工程、粒径の分級処理工程、他の負極活物質との混合工程が含まれてもよい。
上述した(ニ)核となるSi化合物粒子の外周に炭素質物が添着又は被覆したSi複合炭素粒子(A)を製造する方法としては、例えば、固相反応、液相反応、スパッタ、化学蒸着などを用いた手法が挙げられる。
ここでは、固相反応を利用した合成方法について説明する。固相反応とは、粉末状等の固体原料を所定の組成となるように秤量、混合した後、加熱処理を行って複合粒子を合成する方法である。本発明におけるSi複合炭素粒子(A)については、例えばSi化合物粒子及び炭素質物となる有機化合物を、高温下で接触させて反応させる方法がこれに該当する。
ましくは1000Pa以下、より好ましくは500Pa以下である。さらに処理時間は通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、また通常3時間以下、好ましくは2.5時間以下、より好ましくは2時間以下である。
粉砕処理工程に使用する粗粉砕機としては、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コ−ンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
粉砕速度は、装置の種類、大きさによって適宜設定するものであるが、例えば、ボールミルの場合、通常50rpm以上、好ましくは100rpm以上、より好ましくは150rpm以上、更に好ましくは200rpm以上である。また、通常2500rpm以下、好ましくは2300rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。速度が速すぎると、粒径の制御が難しくなる傾向があり、速度が遅すぎると処理速度が遅くなる傾向がある。
振動ミルの場合、粉砕速度は、通常50rpm以上、好ましくは100rpm以上、より好ましくは150rpm以上、更に好ましくは200rpm以上である。また、通常2500rpm以下、好ましくは2300rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。速度が速すぎると、粒径の制御が難しくなる傾向があり、速度が遅すぎると処理速度が遅くなる傾向がある。
分級処理工程の分級処理条件としては、上記粒径になるように、目開きが、通常53μm以下、好ましくは45μm以下、より好ましくは38μm以下である。
[複合炭素粒子(B)]
本発明における複合炭素粒子(B)について以下に説明する。
である。炭素質粒子を含有させることで、複合炭素粒子(B)の表面に均一かつ連続的な微細流路が生成し、低温下においてもスムーズなリチウムイオンの移動が可能となるため、非水系二次電池の低温時における入出力特性を向上させることが可能となる。なお、本発明でいう「黒鉛質粒子、炭素質粒子及び炭素質物を含む複合粒子」とは、黒鉛質粒子に下記に例示する炭素質粒子及・BR>ム炭素質物が添着、付着、複合化した状態、より具体
的には、黒鉛質粒子の細孔内に付着している状態、黒鉛質粒子の表面全体又は一部に結着し複合化した状態等を表す。
本発明の複合炭素粒子(B)は以下のような特性を持つことが好ましい。
(a)複合炭素粒子(B)のX線パラメータ
複合炭素粒子(B)の、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、通常0.337nm以下、好ましくは0.336nm以下である。d002値が大きすぎるということは結晶性が低いことを示し、非水系二次電池とした場合に初期不可逆容量が増加する場合がある。一方、黒鉛の002面の面間隔の理論値は0.3354nmであるため、前記d値は通常0.3354nm以上である。
複合炭素粒子(B)の平均粒径d50は通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下であり、通常5μm以上、好ましくは、7μm以上、より好ましくは10μm以上である。平均粒径d50が小さすぎると、比表面積が大きくなるため電解液の分解が増え、非水系二次電池の初期効率が低下する傾向があり、平均粒径d50が大きすぎると急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
複合炭素粒子(B)のアスペクト比は、通常1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上、通常4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下である。
アスペクト比が大きすぎると、電極とした際に粒子が集電体と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのリチウムイオン移動性が低下し、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
複合炭素粒子(B)のBET法による比表面積は通常0.5m2/g以上、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、更に好ましくは3m2/g以上である。また、通常15m2/g以下、好ましくは12m2/g以下、より好ましくは10m2/g以下、更に好ましくは8m2/g以下、特に好ましくは6m2/g以下である。比表面積が大きすぎると負極活物質として用いた時に電解液に露出した部分と電解液との反応性が増加し、初期効率の低下、ガス発生量の増大を招きやすく、好ましい電池が得られにくい傾向がある。比表面積が小さすぎるとリチウムイオンが出入りする部位が少なく、高速充放電特性及び出力特性に劣る傾向がある。
複合炭素粒子(B)のタップ密度は、0.8g/cm3以上が好ましく、0.9g/c
m3以上がより好ましく、0.95g/cm3以上が更に好ましい。また、通常1.8g/cm3以下、1.5g/cm3以下が好ましく、1.3g/cm3以下がより好ましい。
複合炭素粒子(B)の円形度は、通常0.88以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは0.92以上である。また、円形度は通常1以下、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.97以下である。円形度が小さすぎると、非水系二次電池の高電流密度充放電特性が低下する傾向がある。
複合炭素粒子(B)のラマンR値(定義は上述の通りである)は通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下であり、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎてLi挿入サイト数が減り、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
(複合炭素粒子(B)の原料)
上述した複合炭素粒子(B)は、少なくとも黒鉛質粒子、炭素質粒子及び炭素質物を含む複合炭素粒子であれば、その原料は特に限定されないが、例えば黒鉛質粒子、炭素質粒子、及び炭素質物となる有機化合物を用いて製造することができる。
本発明の複合炭素粒子(B)の原料として使用する黒鉛質粒子(以下黒鉛粒子(C)ということがある)としては、前述のSi複合炭素粒子(A)の項に記載の天然黒鉛、人造黒鉛の何れを用いてもよいが、極板構造を制御しやすい等の理由から球形化処理した天然黒鉛を用いることが好ましい。
黒鉛質粒子(C)の平均粒径d50は通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは、4μm以上、より好ましくは10μm以上である。平均粒径d50が小さすぎると、比表面積が大きくなるため電解液の分解が増え、初期効率が低下する傾向があり、平均粒径d50が大きすぎると急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
黒鉛質粒子(C)のアスペクト比は、通常1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上、通常4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下である。
アスペクト比が大きすぎると、電極とした際に粒子が集電体と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのリチウムイオン移動性が低下し、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
黒鉛質粒子(C)のBET法による比表面積は通常0.5m2/g以上、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、更に好ましくは3m2/g以上である。また、通常15m2/g以下、好ましくは10m2/g以下、より好ましくは8m2/g以下、更に好ましくは7m2/g以下、特に好ましくは6.5m2/g以下である。比表面積が大きすぎると負極活物質として用いた時に電解液に露出した部分と電解液との反応性が増加し、初期効率の低下、ガス発生量の増大を招きやすく、好ましい電池が得られにくい傾向がある。比表面積が小さすぎるとリチウムイオンが出入りする部位が少なく、高速充放電特性及び出力特性に劣る傾向がある。
黒鉛質粒子(C)のタップ密度は、0.8g/cm3以上が好ましく、0.9g/cm3以上がより好ましく、0.95g/cm3以上が更に好ましい。また、通常1.8g/cm3以下、1.5g/cm3以下が好ましく、1.3g/cm3以下がより好ましい。
タップ密度が0.8g/cm3以上であるということは、黒鉛質粒子(C)が球状を呈していることを示す指標の一つである。タップ密度が0.8g/cm3より小さいと、電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持された電解液内のリチウムイオンの移動性が落ちることで、急速充放電特性が低下する傾向がある。
黒鉛質粒子(C)の円形度は、通常0.88以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは0.92以上である。また、円形度は通常1以下、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.97以下である。円形度が小さすぎると、非水系二次電池の高電流密度充放電特性が低下する傾向がある。
黒鉛質粒子(C)のラマンR値は通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下であり、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎてLi挿入サイト数が減り、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
なお、複合炭素粒子(B)中の黒鉛質粒子は、黒鉛質粒子(C)の物性と同様の性質を持つことが好ましい。
本発明の複合炭素粒子を構成する材となる、炭素質粒子としては種類も特に限定されないが、石炭微粉、気相炭素粉、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー等が挙げられる。この中でもカーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックであると、低温下においても入出力特性が高くなり、同時に安価・簡便に入手が可能という利点がある。
本発明における炭素質粒子は、次に示す物性の何れか1つ又は複数を満たしていることが好ましい。本発明においては、かかる物性を示す炭素質粒子1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
本発明における炭素質粒子の1次粒径は、通常3nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、更に好ましくは20nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下、特に好ましくは70nm以下である。なお、炭素質粒子の1次粒子径は、SEM等の電子顕微鏡観察やレーザー回折式粒度分布計などによって測定することができる。
1次粒径が大きすぎる場合、比表面積が小さくなり、低温時の入出力特性が低下する傾向がある。また、1次粒径が小さすぎる場合、比表面積が大きくなりとなり、容量が低下する傾向がある
炭素質粒子のBET法による比表面積は、通常1m2/g以上、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは30m2/g以上、更に好ましくは50m2/g以上、特に好ましくは70m2/g以上であり、通常は1000m2/g以下、好ましくは500m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下、更に好ましくは150m2/g以下の範囲である。比表面積が大きすぎると負極活物質として用いた時に電解液に露出した部分と電解液との反応性が増加し、初期効率の低下、ガス発生量の増大を招きやすく、好ましい電池が得られにくい傾向がある。比表面積が小さすぎるとリチウムイオンが出入りする部位が少なく、高速充放電特性及び出力特性に劣る傾向がある。
炭素質粒子の嵩密度は、通常0.01g/cm3以上、好ましくは0.1g/cm3以上、より好ましくは0.15g/cm3以上であり、更に好ましくは0.17g/cm3以上であり、通常1g/cm3以下、好ましくは0.8g/cm3以下、より好ましくは0.6g/cm3以下である。
嵩密度は、粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cm3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、原料炭素材を落下させて、セルに満杯に充填した後、その時の体積と試料の重量から密度を求めることによって測定することができる。
炭素質粒子のタップ密度は、通常0.1g/cm3以上、好ましくは0.15g/cm3以上、より好ましくは0.2g/cm3以上であり、通常2g/cm3以下、好ましくは1g/cm3以下、より好ましくは0.8g/cm3以下である。タップ密度が大きすぎる場合、低温入出力特性が低下する傾向があり、小さすぎる場合、電池容量が低下する傾向がある。
炭素質粒子のDBP吸油量は、通常10ml/100g以上、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは60ml/100g以上、通常1000ml/100g以下
、好ましくは500ml/100g以下、より好ましくは200ml/100g以下、更に好ましくは150ml/100g以下である。
DBP吸油量が大きすぎる場合、容量が低下する傾向があり、小さすぎる場合、低温入出力特性が低下する傾向がある。
本発明の複合炭素粒子(B)の原料となる、炭素質物となる有機化合物としては、前述のSi複合炭素粒子(A)の項に記載の炭素質物となる有機化合物の何れを用いてもよい。
本発明の複合炭素粒子(B)としては、黒鉛質粒子と炭素質粒子と炭素質物との複合粒子であれば特に製造方法は限定されないが、例えば、以下の(1)及び(2)の観点を考慮した製造方法を採用することが好ましい。
(1)黒鉛質粒子(C)と炭素質粒子を混合した混合粉体を準備し、それに炭素質物となる有機化合物を混合して、これを不活性ガス中で熱処理すること。
このような製造方法を採用することにより、本発明の複合炭素粒子(B)の好ましい形態である、複合炭素粒子(B)の一部若しくは全面を炭素質粒子と炭素質物が被覆した複層構造炭素材を作製し易くなる利点がある。
このような解砕混合機を用いて黒鉛質粒子(C)と炭素質粒子を混合することにより、黒鉛質粒子(C)や炭素質粒子の凝集体を解砕して均一に混合することができる。複合化する前に黒鉛質粒子(C)や炭素質粒子の凝集体を十分に解砕して均一に混合しておくことにより、その後の工程において生じる炭素質粒子同士の凝集も抑制することができる。例えば、炭素質粒子の凝集体が多く残存する炭素材は、合計細孔体積及び顕微ラマン分光装置によるラマンR値の比が大きくなる傾向にあり、保存特性が低下する傾向がある。
工程(a):黒鉛質粒子(C)と炭素質粒子を解砕しながら混合撹拌する工程
工程(b):工程(a)で得られた粉体に炭素質物となる有機化合物を混合する工程
工程(c):工程(b)で得られた混合物を、不活性ガス中2600℃以下の温度で熱処理する工程
なお、黒鉛質粒子(C)、炭素質粒子及び炭素質物となる有機化合物はそれぞれ1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
黒鉛質粒子(C)と炭素質粒子を解砕しながら混合撹拌する方法は、常法により行うことができる。以下に一例を示す。
(1)黒鉛質粒子(C)と炭素質粒子の混合比率
黒鉛質粒子(C)と炭素質粒子の混合比率は、目的とする複合粒子の組成に基づいて適宜選択されるべきものであるが、黒鉛質粒子(C)に対して、炭素質粒子は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。上記範囲であると、電池の充放電効率および放電容量などリチウムイオン二次電池に求められる諸特性を満足しつつ、低温下においても入出力特性が高くなる利点がある。
黒鉛質粒子(C)と炭素質粒子を混合する装置として解砕混合機を採用する場合、具体的な装置は特に限定されず、市販されているものを適宜採用することができるが、例えばロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。また、解砕混合条件も特に限定されないが、解砕羽根(チョッパー)の回転数は、通常100rpm以上、好ましくは1000rpm以上、より好ましくは2000rpm以上であり、通常100000rpm以下、好ましくは30000rpm以下、好ましくは10000rpm以下である。さらに解砕混合時間は、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上であり、通常24時間以下、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下である。上記範囲内であると、黒鉛質粒子(C)や炭素質粒子の凝集を効果的に防止することができる。
工程(a)で得られた粉体と炭素質物となる有機化合物との混合は常法により行うことができる。以下に、一例を示す。
(1)混合温度
混合温度は炭素質物となる有機化合物の軟化点以上である。通常5℃以上であり、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、一方通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。軟化点より低い温度で混合した場合、炭素質物となる有機化合物の流動性が悪くなり、均一に混合できないばかりではなく、加圧処理の際に液漏れの原因となる傾向がある。一方、温度が高すぎる場合、均一に混合又は捏合することが困難になり、且つ液状にするまでの加熱時間の長期化や高温で取り扱う必要が生じるため生産性に欠ける傾向がある。
工程(a)で得られた粉体と炭素質物となる有機化合物の混合比率は、目的とする複合粒子の組成に基づいて適宜選択されるべきものであるが、黒鉛質粒子(C)に対して、炭素質物となる有機化合物は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上であり、通常60質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。上記範囲であると、電池の充放電効率、放電容量、および低温下における入出力特性が高くなる利点がある。
有機溶媒の種類としては、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ジメチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、アミルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル等のエーテル;アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸イソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸シクロヘキシル、酪酸メチル、酪酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル等のエステル;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、アミルベンゼン、ジアミルベンゼン、トリアミルベンゼン、テトラアミルベンゼン、ドデシルベンゼン、ジドデシルベンゼン、アミルトルエン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素等があるが、これらに限定されるものではない。
また、有機溶媒による希釈比率は、有機溶媒の質量に対して、炭素質物となる有機化合物が、通常5質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは質量50%以上であり、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。この希釈倍率が大きすぎると炭素質物となる有機化合物の濃度が低下し、効率的に原料炭素材を被覆することができない傾向がある。希釈倍率が小さすぎると炭素質物となる有機化合物の濃度が充分に低下せず、効率的に原料炭素材を被覆することができない傾向がある。
本工程で得られた混合物又は希釈混合物の粘度は、通常100cP以下、好ましくは70cP以下、より好ましくは50cP以下である。また1cP以上、好ましくは10cP以上である。粘度が高すぎると、サイクル時の劣化が起こり易く、サイクル特性が悪くなる傾向がある。
回分方式の混合装置としては、2本の枠型が自転しつつ公転する構造の混合機;高速高剪断ミキサーであるディゾルバーや高粘度用のバタフライミキサーの様な、一枚のブレートがタンク内で撹拌・分散を行う構造の装置;半円筒状混合槽の側面に沿ってシグマ型などの撹拌翼が回転する構造を有する、いわゆるニーダー形式の装置;撹拌翼を3軸にしたトリミックスタイプの装置;容器内に回転ディスクと分散媒体を有するいわゆるビーズミル型式の装置などが用いられる。
(1)焼成温度
焼成温度は混合物の調製に用いた炭素質物となる有機化合物により異なるが、炭素化する場合、通常は600℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上に加熱し、通常1500℃以下、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1200℃以下に止めるのが好ましい。
焼成処理条件において、熱履歴温度条件、昇温速度、冷却速度、熱処理時間等は、適宜設定する。また、比較的低温領域で熱処理した後、所定の温度に昇温することもできる。なお、本工程に用いる反応機は回分式でも連続式でも、また一基でも複数基でもよい。
焼成に使用する炉は上記要件を満たせば特に制約はないが、例えば、シャトル炉、トンネル炉、リードハンマー炉、ロータリーキルン、オートクレーブ等の反応槽、コーカー(コークス製造の熱処理槽)、タンマン炉、アチソン炉、高周波誘導加熱炉などを用いることができ、加熱方式も、直接式抵抗加熱、間接式抵抗加熱、直接燃焼加熱、輻射熱加熱等を用いることができる。熱処理時には、必要に応じて攪拌を行なってもよい。
前述の製造方法によって得られた複合粒子について、別途粉砕処理を行ってもよい。
粉砕処理に使用する粗粉砕機としては、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コ−ンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
粉砕速度は、装置の種類、大きさによって適宜設定するものであるが、例えば、ボールミルの場合、通常50rpm以上、好ましい100rpm以上、より好ましくは150rpm以上、更に好ましくは200rpm以上である。また、通常2500rpm以下、好ましくは2300rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。速度が速すぎると、粒径の制御が難しくなる傾向があり、速度が遅すぎると処理速度が遅くなる傾向がある。
振動ミルの場合、粉砕速度は、通常50rpm以上、好ましい100rpm以上、より好ましくは150rpm以上、更に好ましくは200rpm以上である。また、通常2500rpm以下、好ましくは2300rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。速度が速すぎると、粒径の制御が難しくなる傾向があり、速度が遅すぎると処理速度が遅くなる傾向がある。
さらに、前述の製造方法によって得られた複合粒子について、粒径の分級処理を行ってもよい。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合:回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い等を用いることができ、乾式気流式分級の場合:重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)等を用いることができ、湿式篩い分けの場合:機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
本発明の複合炭素粒子(B)における炭素質物の含有量は、複合炭素粒子(B)中の黒鉛質粒子に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.7質量%以上であり、また前記含有量は、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
一方、含有量が少なすぎると、被覆による効果が得られにくくなる傾向がある。すなわち、電池において電解液との副反応を十分に抑制できず、初期サイクル時充放電不可逆容量の増大、初期効率の低下を招く傾向がある。
式(4)
炭素質物の含有量(質量%)
=(炭素質物となる有機化合物の質量×残炭率×100)/{試料(複合炭素粒子(B)
)に含有される黒鉛質粒子(C)と炭素質粒子の合計の質量+(炭素質物となる有機化合物の質量×残炭率)}
本発明の複合炭素粒子(B)における炭素質粒子の含有量は、複合炭素粒子(B)中の黒鉛質粒子に対する炭素質粒子の含有量を示すものであり、本発明においてこれは通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.7質量%以上であり、また前記含有量は、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
一方、含有量が少なすぎると、被覆による効果が得られにくくなる傾向がある。すなわち、電池において電解液との副反応を十分に抑制できず、初期サイクル時充放電不可逆容量の増大、初期効率の低下を招く傾向がある。
また、炭素質粒子の含有量は、炭素質粒子の混合時における添加量とする。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材は、以上説明したSi複合炭素粒子(A)及び複合黒鉛粒子(B)を含有したものであれば特に限定されないが、以下の特性を持つものが好ましい。
なお、本発明の炭素材の各種特性は、それを構成するSi複合炭素粒子(A)及び非晶質複合黒鉛粒子(B)、ならびに存在する場合は天然黒鉛粒子(D)や後述するその他の材料の、対応する特性の値を加重平均することで、おおよそ予測可能である。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材の、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、通常0.337nm以下、好ましくは0.336nm以下である。d002値が大きすぎるということは黒鉛結晶性が低いことを示し、非水系二次電池とした場合に初期不可逆容量が増加する場合がある。一方、黒鉛の002面の面間隔の理論値は0.3356nmであるため、前記d値は通常0.3356nm以上である。
また、本発明の非水系二次電池負極用炭素材の結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上の範囲である。この範囲を下回ると、結晶性が低下し、電池の放電容量が低下する傾向がある。なお、Lcの下限は黒鉛の理論値である。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材の平均粒径d50は通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下であり、特に好ましくは22μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm、特に好ましくは18μm以上である。平均粒径d50が小さすぎると、比表面積が大きくなるため電解液の分解が増え、非水系二次電池の初期効率が低下する傾向があり、平均粒径d50が大きすぎると急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材のアスペクト比は、通常1以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上、更に好ましくは1.5以上、通常4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下である。
アスペクト比が大きすぎると、電極とした際に粒子が集電体と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのリチウムイオン移動性が低下し、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材のBET法による比表面積は通常0.5m2/g以上、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは3m2/g以上、更に好ましくは5m2/g以上、特に好ましくは8m2/gである。また、通常30m2/g以下、好ましくは20m2/g以下、より好ましくは18m2/g以下、更に好ましくは16m2/g以下、特に好ましくは14m2/g以下である。比表面積が大きすぎると負極活物質として用いた時に電解液に露出した部分と電解液との反応性が増加し、初期効率の低下、ガス発生量の増大を招きやすく、好ましい電池が得られにくい傾向がある。比表面積が小さすぎるとリチウムイオンが出入りする部位が少なく、非水系二次電池の高速充放電特性及び出力特性に劣る傾向がある。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材の円形度は、通常0.85以上、好ましくは0.88以上、より好ましくは0.89以上、更に好ましくは0.90以上である。また、円形度は・BR>ハ常1以下、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、更に
好ましくは0.97以下である。円形度が小さすぎると、電極とした際に粒子が集電体と平行方向に並ぶ傾向があるため、電極の厚み方向への連続した空隙が充分確保されず、厚み方向へのリチウムイオン移動性が低下し、急速充放電特性の低下を招く傾向がある。円形度が大きすぎると導電パス切れ抑制効果の低減、非水系二次電池のサイクル特性の低下を招く傾向がある。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材のラマンR値(定義は上述の通りである)は通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下であり、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上である。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎてLi挿入サイト数が減り、非水系二次電池の急速充放電特性の低下を招く傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が乱れ、電解液との反応性が増し、非水系二次電池の充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材は、タップ密度は通常0.6g/cm3以上、好ましくは0.7g/cm3以上、より好ましくは0.8g/cm3以上、更に好ましくは0.9g/cm3以上、特に好ましくは1.1g/cm3以上であり、一方、通常1.8g/cm3以下、好ましくは1.5g/cm3以下、より好ましくは1.3g/cm3以下であり、更に好ましくは1.2g/cm3以下である。
タップ密度が上記範囲より小さいと、電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持された電解液内のリチウムイオンの移動性が落ちることで、非水系二次電池の急速充放電特性が低下する傾向がある。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材において、Si複合炭素粒子(A)及び複合炭素粒子(B)の総量に対する複合炭素粒子(B)の質量割合は、特に制限はないが、0質量%より大きく、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
なお、本発明の炭素材を得るにあたって、これらのSi複合炭素粒子(A)及び複合炭素粒子(B)が均一に混合されればそれらの混合方法は特に制限はないが、例えば、回分方式の混合装置としては、2本の枠型が自転しつつ公転する構造の混合機;高速高剪断ミキサーであるディゾルバーや高粘度用のバタフライミキサーの様な、一枚のブレードがタンク内で撹拌・分散を行う構造の装置;半円筒状混合槽の側面に沿ってシグマ型などの撹拌翼が回転する構造を有する、いわゆるニーダー形式の装置;撹拌翼を3軸にしたトリミックスタイプの装置;容器内に回転ディスクと分散媒体を有するいわゆるビーズミル型式の装置などが用いられる。
された複数のすき状又は鋸歯状のパドルが位相を変えて複数配置された容器を有し、その内壁面はパドルの回転の最外線に実質的に沿って、好ましくは円筒型に形成された構造の(外熱式)装置(例えばレーディゲ社製のレーディゲミキサー、大平洋機工社製のフローシェアーミキサー、月島機械社製のDTドライヤーなど)を用いることもできる。連続方式で混合を行うには、パイプラインミキサーや連続式ビーズミルなどを用いればよい。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材は、Si複合炭素粒子(A)及び複合炭素粒子(B)を任意の組成及び組み合わせで併用して、非水系二次電池の負極材として好適に使用することができるが、一種又は二種以上の、上述の材料に該当しないその他の材料と混合し、これを非水系二次電池、好ましくは非水系二次電池の負極材料として用いてもよい。
その他炭素材料の混合割合が、前記範囲を下回ると、添加した効果が現れ難い傾向がある。一方、前記範囲を上回ると、本発明の非水系二次電池負極用炭素材の特性が現れ難い傾向がある。
前記天然黒鉛としては、例えば、高純度化した鱗片状黒鉛質粒子や鱗状黒鉛を用いることができる。
前記非晶質炭素被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質炭素前駆体を被覆、焼成した粒子や、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質炭素をCVDにより被覆した粒子を用いることができる。
前記非晶質炭素としては、例えば、バルクメソフェーズを焼成した粒子や、炭素化可能なピッチ等を不融化処理し、焼成した粒子を用いることができる。
この中でも、Si化合物好ましい。Si化合物としては、Si複合炭素粒子(A)中のSi化合物と同様のものを用いることができる。
非水系二次電池負極用炭素材の必須成分とその他材料との混合に用いる装置としては、特に制限はないが、例えば、回転型混合機の場合:円筒型混合機、双子円筒型混合機、二重円錐型混合機、正立方型混合機、鍬形混合機、固定型混合機の場合:螺旋型混合機、リボン型混合機、Muller型混合機、Helical Flight型混合機、Pug
mill型混合機、流動化型混合機等を用いることができる。
本発明はまた、本発明の非水系二次電池負極用炭素材を用いて形成される非水系二次電池用負極に関するものであり、その具体例として、リチウムイオン二次電池用負極が挙げられる。
非水系二次電池用負極の製造方法や非水系二次電池用負極を構成する本発明の非水系二次電池負極用炭素材以外の材料の選択については、特に限定されない。
バインダは、特に限定されないが、分子内にオレフィン性不飽和結合を有するものが好ましい。具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などが挙げられる。
このような分子内にオレフィン性不飽和結合を有するバインダと、本発明の非水系二次電池負極用炭素材とを組み合わせて用いることにより、負極板の機械的強度を高くすることができる。負極板の機械的強度が高いと、非水系二次電池の充放電による負極の劣化が抑制され、サイクル寿命を長くすることができる。
バインダの分子量としては、重量平均分子量を通常1万以上とすることができ、また、通常100万以下とすることができる。この範囲であれば、機械的強度及び可撓性の両面を良好な範囲に制御できる。重量平均分子量は、好ましくは5万以上であり、また、好ましくは30万以下の範囲である。
バインダとして、分子内にオレフィン性不飽和結合を有さないバインダも、使用することができる。分子内にオレフィン性不飽和結合を有するバインダと分子内にオレフィン性不飽和結合を有さないバインダとを併用することによって、塗布性の向上等が期待できる。
下である。
分子内にオレフィン性不飽和結合を有さないバインダの例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カラギーナン、プルラン、グアーガム、ザンサンガム(キサンタンガム)等の増粘多糖類;
ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類;
ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール類;
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ酸またはこれらの金属塩;
ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー;
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルカン系ポリマーまたはこれらの共重合体などが挙げられる。
導電助剤の添加量は、本発明の非水系二次電池負極用炭素材100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましい。
スラリーを塗布する集電体としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、圧延銅箔、電解銅箔、ステンレス箔等の金属薄膜などが挙げられる。
スラリーを塗布、乾燥して得られる活物質層の厚さは、負極としての実用性及び高密度の電流値に対する十分なリチウムイオンの吸蔵・放出の機能の点から、通常5μm以上とすることができ、また、通常200μm以下とすることができる。好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下である。
活物質層における非水系二次電池負極用炭素材の密度は、用途により異なるものの、例えば車載用途やパワーツール用途などの入出力特性を重視する用途においては、通常1.1g/cm3以上、1.65g/cm3以下である。 この範囲であれば、密度が低すぎることによる粒子同士の接触抵抗の増大を回避することができ、一方、密度が高すぎることによるレート特性の低下も抑制することができる。
携帯電話やパソコンといった携帯機器用途などの容量を重視する用途では、通常1.45g/cm3以上とすることができ、また、通常1.9g/cm3以下とすることができる。
きる。
密度は、好ましくは1.55g/cm3以上、さらに好ましくは1.65g/cm3以上、特に好ましくは1.7g/cm3以上である。
本発明に係る非水系二次電池の基本的構成は、例えば、公知のリチウムイオン二次電池と同様とすることができ、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備え、前記負極は上述した本発明に係る非水系二次電池用負極である。
正極は、集電体と、集電体上に形成された活物質層とを備えることができる。活物質層は、正極用活物質の他に、好ましくはバインダを含有する。
正極用活物質としては、リチウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電時に吸蔵、放出できる金属カルコゲン化合物などが挙げられる。中でもリチウムイオンを吸蔵・放出可能な金属カルコゲン化合物が好ましい。
金属カルコゲン化合物としては、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、マンガン酸化物、クロム酸化物、チタン酸化物、タングステン酸化物などの遷移金属酸化物;
バナジウム硫化物、モリブデン硫化物、チタン硫化物、CuSなどの遷移金属硫化物;
NiPS3、FePS3等の遷移金属のリン−硫黄化合物;
VSe2、NbSe3などの遷移金属のセレン化合物;
Fe0.25V0.75S2、Na0.1CrS2などの遷移金属の複合酸化物;
LiCoS2、LiNiS2などの遷移金属の複合硫化物等が挙げられる。
正極用のバインダは、特に限定されず、公知のものを任意に選択して用いることができる。例としては、シリケート、水ガラス等の無機化合物や、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン等の不飽和結合を有さない樹脂などが挙げられる。中でも好ましいのは、酸化反応時に分解しにくいため、不飽和結合を有さない樹脂である。
正極活物質層中には、正極の導電性を向上させるために、導電助剤を含有させてもよい。導電助剤は、特に限定されず、その例として、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種の金属の繊維、粉末、箔などが挙げられる。
電解質(「電解液」と称することもある。)は、特に限定されず、非水系溶媒に電解質としてリチウム塩を溶解させた非水系電解液や、該非水系電解液に有機高分子化合物等を
添加することによりゲル状、ゴム状、または固体シート状にしたものなどが挙げられる。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は、特に限定されず、公知の非水系溶媒を用いることができる。
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;
1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;
ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
非水系電解液に使用されるリチウム塩も特に制限されず、公知のリチウム塩を用いることができる。例えば、LiCl、LiBrなどのハロゲン化物;
LiClO4、LiBrO4、LiClO4などの過ハロゲン酸塩;
LiPF6、LiBF4、LiAsF6などの無機フッ化物塩などの無機リチウム塩;
LiCF3SO3、LiC4F9SO3などのパーフルオロアルカンスルホン酸塩;
Liトリフルオロメタンスルフォニルイミド((CF3SO2)2NLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩などが使用可能である。これらの中でもLiClO4、LiPF6、LiBF4が好ましい。
上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませることで、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;
ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;
ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;
ポリエピクロルヒドリン;
ポリフォスファゼン;
ポリシロキサン;
ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;
ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
被膜形成剤の具体例としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネートなどのカーボネート化合物;
エチレンサルファイド、プロピレンサルファイドなどのアルケンサルファイド;
1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどのスルトン化合物;
マレイン酸無水物、コハク酸無水物などの酸無水物などが挙げられる。
上記各種添加剤を用いる場合、初期不可逆容量の増加や低温特性、レート特性の低下等、他の電池特性に悪影響を及ぼさないようにするために、添加剤の総含有量は非水系電解液全体に対して通常10質量%以下とすることができ、中でも8質量%以下、さらには5質量%以下、特に2質量%以下の範囲が好ましい。
高分子固体電解質としては、前述のポリエーテル系高分子化合物にLi塩を溶解させたものや、ポリエーテルの末端水酸基がアルコキシドに置換されているポリマーなどが挙げられる。
正極と負極との間には、通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させることができ、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いることが便利である。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ;ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
また、これらの形態の電池を任意の外装ケースに収めることにより、コイン型、円筒型、角型等の任意の形状及び大きさにして用いることができる。
本発明の非水系二次電池負極用炭素材を用いることで、安定性に優れ、高出力、高容量で、不可逆容量が小さく、サイクル維持率に優れた非水系二次電池を提供することができる。
<平均粒径d50の測定方法>
平均粒径d50の測定方法は、以下の通りである。界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標))の0.2質量%水溶液10mLに、試料0.01gを懸濁させ、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「HORIBA製LA−920」に導入し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、測定装置における体積基準のメジアン径を測定し、これを本発明における平均粒径d50と定義した。
BET比表面積(SA)は、大倉理研社製比表面積測定装置「AMS8000」を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定した。具体的には、試料0.4gを
セルに充填し、350℃に加熱して前処理を行った後、液体窒素温度まで冷却して、窒素30%、He70%のガスを飽和吸着させ、その後室温まで加熱して脱着したガス量を計測した。得られた結果から、通常のBET法により比表面積を算出した。
測定対象試料を測定セル内へ自然落下させることで充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定した。ラマンスペクトルの測定条件を下記に示す。
ラマン分光器 :日本分光社製「ラマン分光器」
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
得られたラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出し、これをラマンR値とした。
タップ密度の測定方法は、以下の通りである。粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cm3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して試料を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から求めた密度をタップ密度と定義した。
DBP吸油量は、JIS K6217に準拠し、測定材料を40g投入し、滴下速度4ml/min、回転数125rpm、設定トルクは500N・mとしたときの測定値によって定義される。測定には、あさひ総研の吸収量測定器(S−500)を用いた。
複合炭素粒子のSi含有量は、以下のようにして求めた。複合炭素粒子をアルカリで完全に溶融した後、水で溶解、定容し、誘導結合プラズマ発光分析装置(堀場製作所 ULTIMA2C)にて測定を行い、検量線からSi量を算出した。その後、Si量を複合炭素粒子の重量で割ることで、複合炭素粒子のSi含有量を算出した。
複合炭素粒子の断面構造は次のように測定した。後述する<電極シートの作製>で作製した極板を、クロスセクションポリッシャー(日本電子 IB−09020CP)で加工し極板断面を得た。得られた極板断面を、SEM(日立ハイテク SU−70)で観察しながらEDXを用いて黒鉛、Siのマッピングを行った。なお、SEM取得条件は加速電圧3kV、倍率2000倍であり、解像度256dpiにて1粒子が取得できる範囲の像を得た。
後述の方法で作製した非水系二次電池(2016コイン型電池)を用いて、下記の測定方法で電池充放電時の容量を測定した。
0.05C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)の電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、さらに5mVの一定電圧で電流密度が0.005Cになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、
0.1Cの電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行った。このときの放電容量(mAh/g)を試験した炭素材の放電容量(mAh/g)とし、充電容量(mAh/g)と放電容量(mAh/g)の差分を不可逆容量(mAh/g)とした。また、ここで得られた1サイクル目の放電容量(mAh/g)を充電容量(mAh/g)で割り返し、100倍した値を初期効率(%)とした。
25℃環境下で0.2Cの定電流により150分間充電を行い、その後25℃の恒温槽に3時間以上保管した後に各々0.25C、1.00C、3.00C、4.50Cで10秒間の放電と充電を行い、その10秒目の電圧を測定した。
測定して得られた電流−電圧直線の傾きを入出力抵抗(Ω)とした。
下記非水系二次電池の作製法により作製したラミネート型非水系二次電池を用いて、下記の測定方法でサイクル特性を測定した。
充放電サイクルを経ていない非水系二次電池に対して、25℃で電圧範囲4.1V〜3.0V、電流値0.2Cにて3サイクル、電圧範囲4.2V〜3.0V、電流値0.2Cにて(充電時には4.2Vにて定電圧充電をさらに2.5時間実施)2サイクル、初期充放電を行った。
さらに、60℃で電圧範囲4.2V〜3.0V、電流値2.0Cにて10サイクル充放電を行った後、10サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で割った値を放電容量維持率(サイクル維持率)として算出した。
実施例又は比較例の炭素材(負極材料)を用い、活物質層密度1.6±0.03g/cm3の活物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材料20.00±0.02g
に、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を20.00±0.02g(固形分換算で0.200g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン0.75±0.05g(固形分換算で0.3g)を加えて、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
上記方法で作製した電極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:7)に、LiPF6を1mol/
Lになるように溶解させた電解液を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、2016コイン型電池をそれぞれ作製した。
正極活物質としてニッケルマンガンコバルト酸リチウム(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)を用い、これに導電剤と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミ箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、正極活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm及び集電用の未塗工部を有する形状に切り出して正極とした。正極活物質層の密度は2.6g/cm3であった。
正極と負極をそれぞれの活物質面が対向するように配置し、電極の間に多孔製ポリエチレンシートのセパレータが挟まれるようにした。この際、正極活物質面が負極活物質面内から外れないよう対面させた。
1サイクル:0.2Cで1時間充電後、0.2Cで3Vまで放電
2サイクル:0.2Cで4.1Vまで充電後、0.2Cで3Vまで放電
3サイクル:0.5Cで4.2Vcccv充電(電流量0.05Cカット条件)後、0
.2Cで3Vまで放電
4サイクル:0.5Cで4.2Vcccv充電(電流量0.05Cカット条件)
( “cccv充電”とは定電流で一定量充電した後に、定電圧で終止条件になるまで充
電することを表す。)
下記表1に、実施例及び比較例で用いた黒鉛粒子の物性を記載する。
なお、Si複合炭素粒子(A)、複合炭素粒子(B)、複合炭素粒子(X)、天然黒鉛粒子(D1)及び天然黒鉛粒子(D2)は以下の様に作成した。
d50が30μmの単結晶Siを、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)とともに、ビーズミル(アシザワファインテック)でd50:0.17μmまで粉砕し、Siスラリー(I)を作製した。このSiスラリー(I)4050g(固形分9.8%)に、NMP650gを加えたのち、ポリアクリロニトリル90gを加え、均一に溶解させた。次いで、鱗片状天然黒鉛(d50:8μm)3000gを投入、混合し、ポリアクリロニトリル、Si、黒鉛が均一に分散したスラリー(II)を得た。このスラリー(II)からポリアクリロニトリルが変性しないよう、ポリアクリロニトリルの熱分解温度以下である150℃にて3時間減圧下で適度に乾燥を行った。なお、DSC分析よりポリアクリロニトリルの分解温度は270度であった。得られた塊状物を、ハンマーミル(IKA社製MF10)で回転数6000rpmにて解砕した後、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)に投入、ローター回転数7000rpm、180秒間の条件にて、装置内を循環または滞留させて球形化処理を行い、Si粒子を内包したSi複合黒鉛粒子(E)を得た。
チを混合し、2軸混練機により混練・分散させた。
得られた分散物を、焼成炉に導入し、窒素雰囲気下1100℃、1時間焼成した。焼成収率から、得られた炭素質粒子(B)において、非晶質炭素の添着量は7.5質量%であることが確認された。焼成した塊状物は上記記載のミルを用いて回転数3000rpmの条件で解砕し、次いで目開き45μmの振動ふるいで分級し、非晶質炭素が被覆されたSi複合黒鉛粒子(A)を得た(Si含有量は8.2質量%)。
また、上記測定法で断面構造を観察したところ、Si複合炭素粒子(A)は鱗片状黒鉛が折り畳まれた構造を有しており、該折り畳まれた構造内の間隙にSi化合物粒子が存在していた。また、Si化合物粒子と鱗片状黒鉛が接触している部分があることが観察された。
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型にて、ローター周速度85m/秒で3分間の機械的作用による球形化処理を行った。このサンプルを分級により処理し、d50が15.7μmの球形化黒鉛粒子(C1)を得た。得られた球形化黒鉛粒子(C)に、一次粒子径が24nm、BET比表面積(SA)が115m2/g、DBP吸油量が110ml/100gのカーボンブラックを、黒鉛質粒子に対して2.0質量%添加し、混合・攪拌した。その混合粉体と炭素質物前駆体としてナフサ熱分解時に得られる石油系重質油を混合し、不活性ガス中で1300℃熱処理を施した後、焼成物を粉砕・分級処理することにより、黒鉛質粒子の表面にカーボンブラック微粒子と非晶質炭素とが添着された複合炭素粒子(B)を得た。
残炭率から、得られた複合炭素粒子(B)において、球形化黒鉛粒子(C)と非晶質炭素との質量比率(球形化黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.03であることが確認された。
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−1型にて、ローター周速度85m/秒で3分間の機械的作用による球形化処理を行った。このサンプルを分級により処理し、d50が22.7μmの球形化黒鉛粒子(C2)を得た。得られた球形化黒鉛粒子(C2)と非晶質炭素前駆体としてコールタールピッチを混合し、不活性ガス中で1300℃熱処理を施した後、焼成物を解砕・分級処理することにより、球形化黒鉛粒子と非晶質炭素とが複合化した複層構造炭素材を得た。残炭率から、得られた複層構造炭素材において、球形化黒鉛粒子と非晶質炭素との質量比率(球形化黒鉛粒子:非晶質炭素)は1:0.03であることが確認された。
複合炭素粒子(B)を製造する際に用いた球形化黒鉛粒子(C1)を天然黒鉛粒子(D1)とした。
・天然黒鉛粒子(D2)
複合炭素粒子(X)を製造する際に用いた球形化黒鉛粒子(C2)を天然黒鉛粒子(D2)とした。
市販のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を用いた。
以上の各種材料の各種特性を、下記表1にまとめる。
Si複合炭素粒子(A)と複合炭素粒子(B)をSi複合炭素粒子(A)/複合炭素粒子(B)=70/30(質量比)で混合し、非水系二次電池負極用炭素材とした。このサンプルについて、前記測定法で初期放電容量、初期効率、入出力抵抗、放電容量維持率(サイクル維持率)を測定した。結果を下記表2に示す。
Si複合炭素粒子(A)と複合炭素粒子(B)をSi複合炭素粒子(A)/複合炭素粒子(B)=50/50(質量比)で混合し、非水系二次電池負極用炭素材とした。このサンプルについて、前記測定法で初期放電容量、初期効率、入出力抵抗、放電容量維持率(サイクル維持率)を測定した。結果を下記表2に示す。
Si複合炭素粒子(A)と複合炭素粒子(B)をSi複合炭素粒子(A)/複合炭素粒子(B)=30/70(質量比)で混合し、非水系二次電池負極用炭素材とした。このサンプルについて、前記測定法で初期放電容量、初期効率、入出力抵抗、放電容量維持率(サイクル維持率)を測定した。結果を下記表2に示す。
Si複合炭素粒子(A)を非水系二次電池負極用炭素材とした。このサンプルについて、前記測定法で初期放電容量、初期効率、入出力抵抗、放電容量維持率(サイクル維持率)を測定した。結果を下記表2に示す。
[比較例2]
複合炭素粒子(B)を非水系二次電池負極用炭素材とした。このサンプルについて、前記測定法で初期放電容量、初期効率、入出力抵抗、放電容量維持率(サイクル維持率)を測定した。結果を下記表2に示す。
Si複合炭素粒子(A)及び複合黒鉛粒子(X)をSi複合炭素粒子(A)/複合黒鉛粒子(X)=70/30(質量比)で混合し、非水系二次電池負極用炭素材とした。このサンプルについて、前記測定法で初期放電容量、初期効率、入出力抵抗、放電容量維持率(サイクル維持率)を測定した。結果を下記表2に示す。
Si複合炭素粒子(A)及びMCMBをSi複合炭素粒子(A)/MCMB=70/30(質量比)で混合し、非水系二次電池負極用炭素材とした。このサンプルについて、前記測定法で初期放電容量、初期効率、入出力抵抗、放電容量維持率(サイクル維持率)を測定した。結果を下記表2に示す。
また、実施例1とSi複合炭素粒子(A)を同じ量含有している比較例3及び比較例4とを比較すると、初期放電容量、入出力抵抗、放電容量維持率が高いことが分かる。
これは、複合炭素粒子(B)表面の炭素質粒子の微小な凹凸により、電解液の細かな流路が確保され、低温時の入出力特性が向上したこと、更には、複合炭素粒子(B)が有する微小な凹凸により粒子同士の接点が増えているためであると考えられる。
Claims (7)
- 複合炭素粒子(A)及び複合炭素粒子(B)を含有する非水系二次電池負極用炭素材であって、該複合炭素粒子(A)は少なくとも黒鉛質粒子及び珪素元素を含み、該複合炭素粒子(B)は少なくとも黒鉛質粒子、炭素質粒子及び炭素質物を含むことを特徴とする非水系二次電池負極用炭素材。
- 前記黒鉛質粒子が、天然黒鉛であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池負極用炭素材。
- 前記炭素質粒子が石炭微粉、気相炭素粉、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバーの群より選ばれるいずれか一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系二次電池負極用炭素材。
- 前記珪素元素がSi及びSiOx(0<x<2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のSi化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非水系二次電池負極用炭素材。
- 前記複合炭素粒子(A)は、鱗片状黒鉛が折り畳まれた構造を有し、該折り畳まれた構造内の間隙にSi化合物粒子が存在していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非水系二次電池負極用炭素材。
- 集電体と、前記集電体上に形成された活物質層とを備える非水系二次電池用負極であって、前記活物質層が、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非水系二次電池負極用炭素材を含有することを特徴とする非水系二次電池用負極。
- 正極及び負極、並びに、電解質を備える非水系二次電池であって、前記負極が請求項6に記載の非水系二次電池用負極であることを特徴とする非水系二次電池。
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