JP2015133217A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】、正極集電体と正極活物質層との剥離強度を高めることができる非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】本発明に係る非水電解液二次電池は、正極活物質層が正極集電体に保持された正極と、負極活物質層が負極集電体に保持された負極と、非水電解液とを備える。正極活物質層は、正極活物質とバインダとを含んでいる。正極活物質は、ジルコニウム(Zr)を0.1mol%〜0.5mol%の割合で含むZr含有リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる。バインダは、数平均分子量が32万以上38万以下のポリフッ化ビニリデンからなる。正極活物質層全体に占めるバインダの割合が、1質量%〜5質量%である。
【選択図】図2

Description

本発明は非水電解液二次電池に関し、特に正極活物質層が正極集電体に保持された正極を備えた非水電解液二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池(例えば特許文献1)、ニッケル水素電池その他の二次電池(蓄電池)は、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられている。
この種のリチウムイオン二次電池の一つの典型的な構成では、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出し得る材料(電極活物質)が導電性部材(電極集電体)に保持された構成の電極を備える。例えば、正極に用いられる電極活物質(正極活物質)の代表例としては、リチウムとニッケルとコバルトとマンガンとを含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が例示される。また、正極に用いられる電極集電体(正極集電体)の代表例としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主体とするシート状または箔状の部材が挙げられる。かかる構成を有する正極を製造するにあたって正極集電体に正極活物質を保持させる代表的な方法の一つとして、正極活物質の粉末とバインダ(結着剤)とを適当な媒体に分散させたペーストを正極集電体に塗布し、これを乾燥させることにより正極活物質層を形成する方法が挙げられる。
特開2012−186054号公報
しかしながら、上記正極を製造するにあたって正極活物質粉末とバインダを含有するペーストを正極集電体に塗布して乾燥させると、乾燥中に対流が発生し、正極集電体近傍のバインダがペースト塗布物(ひいては正極活物質層)の表層部に浮き上がるマイグレーション(偏在)が発生する。その結果、正極集電体近傍のバインダの量が少なくなり、正極集電体と正極活物質層の剥離強度(接着強度)が低下するという問題がある。かかる問題に対処すべく、正極活物質層中のバインダ量を増やして正極集電体と正極活物質層の接着強度を高くする方法も考えられるが、バインダは抵抗成分としても機能するため、正極活物質層中のバインダ量を単純に増やすだけでは、電池抵抗が上昇する要因になり得る。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電池抵抗を上昇させることなく、正極集電体と正極活物質層との剥離強度を高めることができる非水電解液二次電池を提供することである。
本発明に係る非水電解液二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)は、正極活物質層が正極集電体に保持された正極と、負極活物質層が負極集電体に保持された負極と、非水電解液とを備える。前記正極活物質層は、正極活物質とバインダとを含んでいる。前記正極活物質は、該正極活物質中のニッケルとコバルトとマンガンとジルコニウムとを含む遷移金属元素の合計をモル百分率で100mol%としたとき、ジルコニウム(Zr)を0.1mol%〜0.5mol%の割合で含むZr含有リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる。また、前記バインダは、数平均分子量が32万以上38万以下のポリフッ化ビニリデンからなる。そして、前記正極活物質層全体に占めるバインダの割合が、1質量%〜5質量%である。
かかる構成によると、正極活物質中のZr量を0.1mol%〜0.5mol%とし、かつ、バインダの数平均分子量を32万以上38万以下とするにより、バインダと正極活物質との接着性(結着性)が向上し、かつバインダのマイグレーション(偏在)が起こりにくくなる。このことによって、バインダのマイグレーションに起因する正極活物質層と正極集電体の剥離強度の低下を回避でき、正極活物質層が正極集電体から剥がれにくい正極を備えた非水電解液二次電池が得られうる。かかる非水電解液二次電池は、正極活物質層が正極集電体から剥がれにくいため、より高い耐久性を示す(例えば充放電サイクル後における容量維持率がより高い)ものであり得る。また、少量のバインダでも高い剥離強度を実現し得るため、正極活物質層中のバインダ量を従来に比して低減できる(1質量%〜5質量%)。そのため、より低抵抗(ひいては高出力)な電池となり得る。
図1は、非水電解液二次電池の構造の一例を示す図である。 正極活物質中のZr量と剥離強度との関係を示すグラフである。 正極活物質中のZr量とマイグレーション指数との関係を示すグラフである。 正極活物質中のZr量とIV抵抗との関係を示すグラフである。 正極活物質中のZr量と容量維持率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、「非水電解液二次電池」とは、非水電解液(典型的には、非水溶媒中に支持塩(支持電解質)を含む電解液)を備えた電池をいう。また、「リチウムイオン二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間のリチウムイオンの移動により充放電する二次電池をいう。また、電極活物質とは、電荷担体となる化学種(リチウムイオン二次電池ではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出し得る材料をいう。
以下、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池を図面に基づいて説明する。なお、同じ作用を奏する部材、部位には適宜に同じ符号を付している。また、各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。以下、リチウムイオン二次電池に本発明を適用する場合を例として、本発明の実施形態を説明するが、本発明の適用対象を限定する意図ではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100を示している。このリチウムイオン二次電池100は、図1に示すように、捲回電極体20と電池ケース30とを備えている。本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、図1に示すように、扁平形状の捲回電極体20が、図示しない液状電解質(電解液)とともに、扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されている。
電池ケース30は、一端(電池の通常の使用状態における上端部に相当する。)に開口部を有する箱形(すなわち有底直方体状)のケース本体32と、その開口部に取り付けられて該開口部を塞ぐ矩形状プレート部材からなる蓋体34とから構成される。電池ケース30の材質は、例えばアルミニウムが例示される。図1に示すように、蓋体34には外部接続用の正極端子42および負極端子44が形成されている。蓋体34の両端子42、44の間には、安全弁36が形成されている。
捲回電極体20は、長尺なシート状正極(正極シート50)と、該正極シート50と同様の長尺シート状負極(負極シート60)とを計二枚の長尺シート状セパレータ(セパレータ70)とを備えている。
正極シート50は、帯状の正極集電体52と正極活物質層54とを備えている。正極集電体52には、例えば、厚さが凡そ15μmの帯状のアルミニウム箔が用いられている。正極集電体52の幅方向片側の縁部に沿って正極活物質層非形成部52aが設定されている。図示例では、正極活物質層54は、正極集電体52に設定された正極活物質層非形成部52aを除いて、正極集電体52の両面に保持されている。正極活物質層54には、正極活物質やバインダや導電材が含まれている。
正極活物質には、少なくともリチウム(Li)とニッケル(Ni)とコバルト(Co)とマンガン(Mn)とを含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が用いられている。また、バインダには、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が用いられている。また、正極活物質とバインダの他に、導電材を混合することができる。導電材としては、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の粉末状カーボン材料を混合することができる。これらを適当な分散媒体に分散させて混練することによって、正極活物質層形成用組成物(ペースト)を調製することができる。正極活物質層54は、この正極活物質層形成用組成物を正極集電体52に塗布し、乾燥させ、予め定められた厚さにプレスすることによって形成されている。なお、正極活物質およびバインダの詳細についてはさらに後述する。
負極シート60は、帯状の負極集電体62と負極活物質層64とを備えている。負極集電体62には、例えば、厚さが凡そ10μmの帯状の銅箔が用いられている。負極集電体62の幅方向片側には、縁部に沿って負極活物質層非形成部62aが設定されている。負極活物質層64は、負極集電体62に設定された負極活物質層非形成部62aを除いて、負極集電体62の両面に保持されている。負極活物質層64には、負極活物質や増粘剤やバインダなどが含まれている。
負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボンなどの炭素系材料が挙げられる。そして正極と同様、かかる負極活物質を、PVDF、SBR、CMC(増粘剤としても機能し得る)等のバインダとともに適当な分散媒体に分散させて混練することによって、負極活物質層形成用組成物(ペースト)を調製することができる。負極活物質層64は、この負極活物質層形成用組成物を負極集電体62に塗布し、乾燥させ、予め定められた厚さにプレスすることによって形成されている。
セパレータ70は、正極シート50と負極シート60とを隔てる部材である。この例では、セパレータ70は、微小な孔を複数有する所定幅の帯状の基材から構成されている。該基材には、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造(例えばポリエチレンの単層構造)のシート材、或いは積層構造(例えばポリプロピレンとポリエチレンとポリプロピレンの3層構造)のシート材を用いることができる。
捲回電極体20は、電池ケース30(この例では、蓋体34)に取り付けられた電極端子42、44に取り付けられている。捲回電極体20は、捲回軸に直交する一の方向において扁平に押し曲げられた状態で電池ケース30に収納されている。また、捲回電極体20は、捲回軸方向において、正極シート50の正極活物質層非形成部52aと負極シート60の負極活物質層非形成部62aとが互いに反対側にはみ出ている。このうち、一方の電極端子42は、正極集電体52の正極活物質層非形成部52aに固定されており、他方の電極端子44は、負極集電体62の負極活物質層非形成部62aに固定されている。かかる捲回電極体20は、ケース本体32の扁平な内部空間に収容される。ケース本体32は、捲回電極体20が収容された後、蓋体34によって塞がれる。
電解液(非水電解液)としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、等を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF等のリチウム塩を用いることができる。非水電解液には、シクロヘキシルベンゼン(CHB)が添加されている。CHBは、凡そ4.35Vから4.6V程度の過充電時において重合反応が活性化し、水素ガスを発生させる。非水電解液に対するCHBの添加量は、例えば、凡そ0.1質量%以上10質量%以下(好ましくは3質量%以上8質量%、例えば6±1質量%)にするとよい。
また、このリチウムイオン二次電池100は、電流遮断機構90を備えている。電流遮断機構90は、電池ケース内の圧力が異常に高くなった場合に、電流経路を遮断する機構である。この実施形態では、電流遮断機構90は、図1に示すように、正極における電池電流の導通経路が遮断されるように、正極端子42の内側に構築されている。
以下、このリチウムイオン二次電池100をより詳細に説明する。ここで提案されるリチウムイオン二次電池100では、正極活物質層54は、正極活物質とバインダとを含んでいる。正極活物質は、該正極活物質中のニッケルとコバルトとマンガンとジルコニウムとを含む遷移金属元素の合計をモル百分率で100mol%としたとき、ジルコニウム(Zr)を0.1mol%〜0.5mol%の割合で含むZr含有リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる。また、バインダは、数平均分子量が32万以上38万以下のポリフッ化ビニリデンからなる。そして、正極活物質層54全体に占めるバインダの割合が、1質量%〜5質量%である。
ここで開示されるZr含有リチウムイオン二次電池100に用いられる正極活物質は、少なくともリチウムとニッケルとコバルトとマンガンとを構成元素として含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物である。NiとCoとMnとを概ね同程度の割合で含有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が特に好ましい。また、かかるZr含有リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、Li、Ni、CoおよびMnのほかに、付加的な構成元素(添加元素)として、Zrを含んでいる。Zrを添加元素として含むことにより、正極活物質表面のアルカリ成分が除去され、バインダとの接着性(結着性)が向上する。かかる添加元素としてのZrは、前記複合酸化物中のニッケルとコバルトとマンガンとジルコニウムとを含む遷移金属元素の合計をモル百分率で100mol%としたとき、0.1mol%以上(好ましくは0.2mol%以上)の割合で添加されるとよい。Zrの添加量が0.1mol%よりも少なすぎると、バインダとの接着性向上効果が不十分になる場合がある。その一方で、Zrの添加量が多すぎると、IV抵抗が低下傾向になる場合がある。抵抗上昇抑制の観点からは、Zrの添加量は0.5mol%以下(好ましくは0.4mol%以下)にすることが適当である。バインダとの接着性向上および抵抗上昇抑制の双方を満足する観点からは、Zrの添加量は0.3±0.1mol%が好適である。
上記Zr含有リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、該複合酸化物を構成するNiとCoとMnとを含む水溶液から該NiとCoとMnとをNiCoMn水酸化物を適切な条件で析出させ、そのNiCoMn水酸化物とリチウム化合物(炭酸リチウムや水酸化リチウム)とを混合し、さらにZr化合物(例えばZrO)を添加して焼成する法により製造され得る。このように焼成時にZr化合物を添加することにより、正極活物質粒子の表面にZr化合物層(例えばZrO層)が形成され、該活物質粒子表面のアルカリ成分を好適に取り除くことができる。
ここで開示されるリチウムイオン二次電池100に用いられるバインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる。かかるバインダの数平均分子量は32万以上38万以下である。このようにバインダの数平均分子量を制御することにより、該バインダを含む正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布して乾燥した際にバインダのマイグレーションが抑制され、バインダが正極活物質層54内で均一に分散しやすくなる。そのため、正極活物質層54と正極集電体52の剥離強度が高まり、より耐久性の高い正極を作製できるようになる。バインダの数平均分子量としては概ね32万以上38万以下にすることが適当であり、好ましくは33万〜36万であり、特に好ましくは35万である。
また、正極活物質層54全体に占めるバインダの割合は凡そ1質量%以上5質量%以下である。バインダの割合が1質量%よりも少なすぎると、正極集電体近傍のバインダ量が不足して正極活物質層54と正極集電体52との剥離強度が低下傾向になる場合がある。一方、バインダの割合が5質量%よりも多すぎると、バインダが正極活物質の表面を覆うことでリチウムイオンの出入りが阻害され、電池抵抗が上昇傾向になる場合がある。したがって、正極活物質層全体に占めるバインダの割合は、凡そ1質量%以上5質量%以下(典型的には2質量%〜4質量%)であることが適当であり、凡そ3±0.5質量%であることが好ましい。なお、正極活物質層54に占める正極活物質の割合は凡そ50質量%以上(典型的には50〜95質量%)であることが好ましく、凡そ75〜90質量%であることが好ましい。また、正極活物質およびバインダ以外の正極活物質層形成成分(例えば導電材)を含有する場合は、それら任意成分の合計含有割合を凡そ7質量%以下とすることが好ましく、凡そ5質量%以下(例えば凡そ1〜5質量%)とすることが好ましい。
かかるリチウムイオン二次電池100では、正極活物質中のZr量を0.1mol%〜0.5mol%とし、かつ、バインダの数平均分子量を32万以上38万以下とするにより、バインダと正極活物質との接着性(結着性)が向上し、かつバインダのマイグレーション(偏在)が起こりにくくなる。このことによって、バインダのマイグレーションに起因する正極活物質層54と正極集電体52の剥離強度の低下を回避でき、正極活物質層54が正極集電体52から剥がれにくい正極を備えたリチウムイオン二次電池100が得られうる。かかるリチウムイオン二次電池100は、正極活物質層54が正極集電体52から剥がれにくいため、より高い耐久性を示す(例えば充放電サイクル後における容量維持率がより高い)ものであり得る。また、少量のバインダでも高い剥離強度を実現し得るため、正極活物質層中のバインダ量を従来に比して低減できる。そのため、より低抵抗(ひいては高出力)なリチウムイオン二次電池100となり得る。さらに、正極活物質層中にバインダが均一に分散するため、電解液が正極活物質層54に染み込みやすい。そのため、正極活物質層54内に予め存在しているガス発生剤(例えばCHB)が消費された後、新たなガス発生剤が速やかに供給され、ガス発生剤によるガス発生量をより適切に確保できる。その結果、ガス発生量を多くすることができ、電流遮断機構90を適切に作動させることができる。
正極活物質中のZr量およびバインダの数平均分子量が異なる正極を作製し、該正極の剥離強度およびマイグレーション指数を評価した。
<実施例1>
評価用セルの正極は、次のようにして作製した。まず、正極活物質としてのZr含有リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(ここではZrを所定割合で添加したLiNi1/3Co1/3Mn1/3)粉末と、バインダとしてのPVdFと、導電材としてのABとを、これらの材料の質量比が91:3:6となるようにNMP中で混合して、正極活物質層用組成物を調製した。この正極活物質層用組成物を長尺シート状のアルミニウム箔(正極集電体)の両面に帯状に塗布して乾燥することにより、正極集電体の両面に正極活物質層が設けられた正極シートを作製した。ここでは、正極活物質中のZrの添加量を0.1mol%とし、PVdFの数平均分子量を35万とした。
<実施例2>
正極活物質中のZrの添加量を0.3mol%とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<実施例3>
正極活物質中のZrの添加量を0.5mol%とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<比較例1>
正極活物質中のZrの添加量を0mol%(Zr添加なし)とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<比較例2>
正極活物質中のZrの添加量を0.08mol%(Zr添加なし)とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<比較例3>
正極活物質中のZrの添加量を0.55mol%(Zr添加なし)とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<比較例4>
PVdFの数平均分子量を1.5万とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<比較例5>
PVdFの数平均分子量を30万とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<比較例6>
PVdFの数平均分子量を40万とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<比較例7>
PVdFの数平均分子量を100万とした。それ以外は実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。
<剥離強度>
各例の正極シートの剥離強度を測定した。具体的には、請求項シートを測定台に載せ、正極活物質層の面を両面テープで治具に固定し、該治具を負極集電体の面に対して垂直(剥離角度が90±5°)となる方向に引っ張り、毎秒0.5mmの速度で連続的に剥がした。そして、正極活物質層が正極集電体から剥がれる間の荷重の平均値を剥離強度とした。結果を表1の該当欄および図2に示す。図2は、正極活物質中のZr量と剥離強度との関係を示すグラフである。
<マイグレーション指数>
また、各例の正極シートの断面を電子線マイクロアナライザ(EPMA)により分析し、正極活物質層断面を厚さ方向に半分割したときのバインダのマイグレーション指数(上層側のバインダ濃度/下層側のバインダ濃度)を調べた。上層側と下層側のバインダ濃度の比は、バインダ(PVdF)のフッ素元素検出強度比から算出した。結果を表1の該当欄および図3に示す。図3は、正極活物質中のZr量とマイグレーション指数との関係を示すグラフである。ここではマイグレーション指数が1に近いほど、バインダが正極活物質層中に均一に分布していることを示唆している。
表1および図2に示すように、実施例1〜3に係る正極シートは、正極活物質中のZr量が0.1mol%〜0.5mol%である。かかる正極シートは、正極活物質中のZr量が0.1mol%を下回る比較例1、2に比べて、剥離強度がより高く、正極活物質層と正極集電体との密着性が良好であった。また、表1および図3に示すように、実施例1〜3に係る正極シートは、バインダの分子量が32万〜38万(ここでは35万)である。かかる正極シートは、バインダの分子量が30万未満もしくは40万以上である比較例4、6、7に比べて、マイグレーション指数が1により近く、バインダがより均一に分散していた。この結果から、正極活物質中のZr量を0.1mol%〜0.5mol%とし、かつ、バインダの分子量を35万とすることにより、剥離強度がより高く、かつ、バインダがより均一に分散した正極シートが得られることが確認できた。
さらに、各例の正極シートを用いて評価用セル(リチウムイオン二次電池)を構築し、電池の過充電試験時におけるガス発生量、電池容量、IV抵抗およびサイクル後容量維持率を評価した。以下、具体的な方法を示す。
評価用セルの負極シートは、次のようにして作製した。まず、負極活物質としての天然黒鉛とバインダとしてのSBRと増粘剤としてのCMCとを、これらの材料の質量比が98:1:1となるように水に分散させて負極活物質層用組成物を調製した。この負極活物質層用組成物を長尺シート状の銅箔(負極集電体)の両面に塗布し、負極集電体の両面に負極活物質層が設けられた負極シートを作製した。
評価用セルのセパレータとしては、多孔質ポリエチレン(PE)シートを使用した。
評価用セルの非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを約1mol/リットルの濃度で含有させたものを用いた。
正極シートおよび負極シートを2枚のセパレータシートを介して捲回することによって捲回電極体を作製した。このようにして得られた捲回電極体を非水電解液とともに電池容器(18650型の円筒容器を使用した)に収容し、電池容器の開口部を気密に封口した。このようにして評価用セル(リチウムイオン二次電池)を組み立てた。
<過充電ガス発生量>
各評価用セルの過充電ガス発生量は、次のようにして測定した。評価用セルに用いた電極体と同一の電極体を、ガス発生剤が添加された電解液とともにラミネート袋に入れて、真空封止し、ラミネートセルを作製した。かかるラミネートセルに過充電試験を施した。過充電試験前にラミネートセルのフッ素系液体中重量をあらかじめ測っておき、その後、ラミネートセルを60℃の試験槽中で、定電流定電圧方式にて1Cで4.1V(SOC100%)まで充電し、さらに1Cの定電流で充電してSOC140%の過充電状態とした。その後、3Vまで放電処理を行い、試験槽から取り出し、再度フッ素系液体中重量を測定して、ラミネートセルの体積変化をアルキメデス法に基づき測定し、過充電ガスの発生量として求めた。結果を表1の該当欄に示す。
<初期容量(定格容量)>
各評価用セルについて、1Cの定電流で4.1Vまで充電し、続いて合計充電時間が3時間となるまで定電圧で充電し(CCCV充電)、10分間休止した。次いで、0.33Cの定電流で4.1Vまで充電し(CV充電)、10分間停止した。そして、0.33Cで3.0Vまで放電し、続いて合計放電時間が4時間となるまで定電圧で放電し、10分間停止する(CCCV放電)。上記CCCV放電における放電容量を初期容量とした。結果を表1の該当欄に示す。
<IV抵抗>
各評価用セルについて、初期容量の凡そ60%の充電状態(SOC60%)に調整した後、25℃の環境雰囲気下において、10Cの電流値で10秒間の放電を行い、放電開始から10秒後の電圧値を測定し、IV抵抗を算出した。結果を表1の該当欄および図4に示す。図4は、正極活物質中のZr量とIV抵抗との関係を示すグラフである。
<サイクル後容量維持率>
各評価用セルそれぞれに対し、60℃環境下において、2Cで4.1Vまで充電した後、2Cで3.1Vまで放電を行う充放電サイクルを500回連続して繰り返した。かかるサイクル後の電池容量を上述した初期容量と同じ条件で測定し、(サイクル後の電池容量/初期容量)×100からサイクル後容量維持率を算出した。結果を表1の該当欄および図5に示す。図5は、正極活物質中のZr量とサイクル後容量維持率との関係を示すグラフである。
Figure 2015133217
表1、図4および図5に示すように、実施例1〜3に係る評価用セルは、正極活物質中のZr量が0.1mol%〜0.5mol%であり、かつ、バインダの分子量が32万〜38万に設定されている。かかる評価用セルは、比較例3、4、6、7に比べて、IV抵抗がより低く、出力特性に優れるものであった。また、実施例1〜3に係る評価用セルは、比較例1、2、5〜7に比べて、サイクル後における容量維持率がより高く、耐久性に優れるものであった。さらに、過充電ガス発生量についても、実施例1〜3に係る評価用セルは、比較例1、2、4〜7に比べてより多く、電流遮断機構を適切に作動し得るレベルであった。この結果から、正極活物質中のZr量を0.1mol%〜0.5mol%とし、かつ、バインダの分子量を32万〜38万にすることによって、出力特性、サイクル耐久性および過充電時ガス発生量のすべてを満足する高性能なリチウムイオン二次電池が得られることが確認できた。
以上、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池を説明したが、本発明に係る二次電池は、上述した何れの実施形態にも限定されず、種々の変更が可能である。
50 正極シート
52 正極集電体
54 正極活物質層
60 負極シート
62 負極集電体
64 負極活物質層
100 リチウムイオン二次電池

Claims (1)

  1. 正極活物質層が正極集電体に保持された正極と、負極活物質層が負極集電体に保持された負極と、非水電解液とを備え、
    前記正極活物質層は、正極活物質とバインダとを含んでおり、
    前記正極活物質は、該正極活物質中のニッケルとコバルトとマンガンとジルコニウムとを含む遷移金属元素の合計をモル百分率で100mol%としたとき、ジルコニウム(Zr)を0.1mol%〜0.5mol%の割合で含むZr含有リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなり、
    前記バインダは、数平均分子量が32万以上38万以下のポリフッ化ビニリデンからなり、
    前記正極活物質層全体に占めるバインダの割合が、1質量%〜5質量%である、非水電解液二次電池。




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