JP2015131930A - 粉体塗料、その製造方法、および塗装物 - Google Patents

粉体塗料、その製造方法、および塗装物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱保管性に優れ、良好な塗膜を形成することができる粉体塗料を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂と該バインダー樹脂を硬化させるための硬化剤13とを含む樹脂粒子11から少なくとも構成される粉体塗料であって、前記バインダー樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分11aと、分子量50,000未満の第2の樹脂成分11bとを少なくとも含有し、樹脂粒子11は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有し、さらに第2のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第3のバインダー樹脂を含む第3層11cを備えることをすることを特徴とする熱硬化型粉体塗料17。
【選択図】図1

Description

本発明は、粉体塗料、その製造方法、および塗装物に関する。
粉体塗料は、塗料中に有機溶剤や水などの溶媒を用いず、顔料などの着色剤を含んだバインダー樹脂が配合されている粉末状塗料である。粉体塗料は直接金属等の被塗装物に吹き付けることにより、細かい粒子で被塗装物が覆われるため、パウダーコーティングとも呼ばれる。
粉体塗料を構成する粉体塗料粒子は一般的に静電気の力で被塗装物に付着する。通常、被塗装物はアースされ、そこに摩擦帯電等によって電荷が付与された粉体塗料粒子が付着する。その後、加熱(焼き付け)することによってバインダー樹脂が溶融して塗膜が形成される。
粉体塗料は、トルエン、キシレンなどの溶剤を使用しないため、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機物質)規制に対応でき、環境に優しい塗料として注目されている。また、被塗装物に塗着しなかった粉体塗料は回収して再使用できるため、資源を有効活用できるという利点もある。このように、粉体塗料は、有機溶剤に樹脂を溶解してなる溶剤型塗料にはない利点を持つものとして注目を浴びている。その中でも、塗膜性能や塗膜物性の観点から、熱硬化型粉体塗料が用いられている。特に近年、自動車車体の塗装に適用できるような優れた塗膜外観が得られる熱硬化型粉体塗料が求められている。
一般的に粉体塗料は、樹脂、顔料、添加剤などを溶融混練した後、粉砕・分級して得られる。例えば、粉体塗料用原料粒子を溶融混練して得られたペレットを粉砕することによって得られる。しかしながら、こうした溶融混合・粉砕による既存の粉体塗料は、粒子径の分布範囲がブロードであり、例えば5〜50μmといった広い粒径範囲に分布しており、バラツキが大きいものである。従って、塗膜を形成した場合に塗膜表面に凹凸が生じ易く、美観性に優れた塗膜が得られにくいという問題点があった。また、熱硬化型粉体塗料においては、粉体塗料を加熱(焼き付け)して溶融することにより塗膜が形成されるが、溶剤型塗料に比べ、塗膜の平滑性が十分に得られないという問題があった。塗膜の平滑性を向上させるためには、粉体塗料に含まれるバインダー樹脂の溶融粘度を低減し、加熱溶融による流動性を向上させることが必要となる。しかしながら、バインダー樹脂の溶融粘度を低減することを目的として、融点が低い樹脂や分子量の低い樹脂を用いると、得られる塗膜の平滑性は向上するものの、耐ブロッキング性や耐固相反応性のような保存安定性が低下するという問題を生じる。従って、良好な平滑性の塗膜を得ることと、保存安定性とを両立させることは従来十分達成できていなかった。
一方、重合法により粉体塗料の粒子径を小径均一化する事が検討されており、粒子径を小径均一化するための製造方法として、上記の溶融混合・粉砕による方法とは別の粉体塗料の製造方法が開発されている。例えば、特許文献1では、硬化可能な樹脂微粒子と硬化剤を含む粒子を、凝集剤を加えた水性分散物中に分散させ凝集して凝集粒子を生成する工程、凝集粒子を樹脂のガラス転移温度又はそれより高い温度まで加熱して融合粒子を生成する工程、および、融合粒子を水性分散物より取り出す工程を経て製造される粉体塗料が記載されている。
また、耐ブロッキング性を向上させるためにコア粒子の周りに別の樹脂でシェル層を設ける等の方法なども検討されている。例えば、特許文献2には、水性媒体中に懸濁した液状熱硬化性樹脂組成物の油滴を水性媒体中の懸濁状態で固化させてコアとなる樹脂粒子を得る工程、固化したコア樹脂粒子に対し、コア樹脂粒子の平均粒子径の1/10以下の平均粒子径を有するビニル系重合体微粒子を両者が湿潤状態にある間に付着被覆する工程、および、ビニル系重合体微粒子で被覆したコア樹脂粒子を乾燥する工程を経て製造される粉体塗料が記載されている。
特開2005−213507号公報 特開平10−130541号公報
しかしながら、特許文献1の凝集型粉体塗料は耐熱保管性について十分検討されておらず、この点で課題を有している。即ち、特許文献1の粉体塗料では、小径化される事によって各々の粒子が互いに密な状態で保管される事になるため、長期間保管中に環境温度の変化があった場合に異物形成が起きやすくなる。例えば、平均粒径6〜7μmの粉体塗料粒子が凝集して数十〜数百μmの粒径を持つ凝集物(固まってしまったもの;異物)が形成され、振動を与えても解砕されない程度に固着し、塗膜形成時に、これらの凝集物(大粒子)がレベリングを阻害し、異物形成が起きやすくなる。そのため、かえって塗膜面に異常欠陥(突起状物等)が発生するという問題点がある。
また、コア粒子の周りに別の樹脂でシェル層を設ける引用文献2の粉体塗料では、コア粒子とは異なる溶融特性を持つシェル層がコア粒子の表面を覆っており、塗膜形成時にレベリング性を阻害し、レベリングムラ等による塗膜欠陥が出来やすくなるという問題点がある。
したがって、本発明の目的は、耐熱保管性に優れ、良好な塗膜を形成することができる粉体塗料およびその製造方法を提供することにある。また、これによって得られた粉体塗料を用いて良好な塗膜の形成された塗装物を提供することにある。
そこで、本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、高分子量体が塗料粒子内に分散された状態とすることにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(1) バインダー樹脂と該バインダー樹脂を硬化させるための硬化剤とを含む樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料であって、
前記バインダー樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、前記樹脂粒子は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有することを特徴とする熱硬化型粉体塗料。
(2) 前記樹脂粒子は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上25質量%以下の範囲で含有することを特徴とする上記(1)に記載の熱硬化型粉体塗料。
(3) 前記樹脂粒子は、前記バインダー樹脂から少なくとも構成される樹脂微粒子を含む凝集体の融着物である上記(1)又は(2)に記載の熱硬化型粉体塗料。
(4) 前記樹脂微粒子は、複数の層を備える多層樹脂微粒子であり、
前記複数の層は、第1のバインダー樹脂を含む第1層と、前記第1のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第2のバインダー樹脂を含む第2層と、を含むことを特徴とする上記(3)に記載の熱硬化型粉体塗料。
(5) 前記樹脂微粒子は、前記第1のバインダー樹脂として、重量平均分子量が10万以上の樹脂を含むことを特徴とする上記(4)に記載の熱硬化型粉体塗料。
(6) 前記樹脂微粒子は、前記第2のバインダー樹脂として、重量平均分子量が2万以下の樹脂を含むことを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の熱硬化型粉体塗料。
(7) 前記複数の層は、前記第2のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第3のバインダー樹脂を含む第3層を備えることを特徴とする上記(4)〜(6)のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
(8) 前記第3のバインダー樹脂は、前記第1及び第2のバインダー樹脂のいずれとも重量平均分子量が異なることを特徴とする上記(7)に記載の熱硬化型粉体塗料。
(9) 前記複数の層において、内側の層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量が、外側の層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量よりも大きいことを特徴とする上記(4)〜(8)のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
(10) 前記複数の層のうち少なくとも一つの層に、前記硬化剤を含む上記(4)〜(9)のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
(11) バインダー樹脂と硬化剤とを含む樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料の製造方法において、
前記バインダー樹脂を含む樹脂微粒子を形成する段階と、
前記樹脂微粒子を凝集させて凝集粒子を形成する段階と、
前記凝集粒子を融着させて樹脂粒子を形成する段階と、
前記樹脂微粒子の形成から前記樹脂粒子の形成までのいずれかの段階で前記硬化剤を添加する段階と、を含み、
前記樹脂粒子は、GPC法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000以下の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有することを特徴とする熱硬化型粉体塗料の製造方法。
(12) 前記樹脂粒子は、前記分子量50,000以上の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上25質量%以下の範囲で含有することを特徴とする上記(11)に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
(13) 前記樹脂微粒子を水系媒体中に分散させ、前記水系媒体中で前記樹脂微粒子を複数凝集させて凝集粒子を形成することを特徴とする上記(11)又は(12)に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
(14) 前記樹脂微粒子を形成する段階において、複数回の重合反応を段階的に行う事により、前記樹脂微粒子として複数の層を備える多層樹脂微粒子を形成することを特徴とする上記(11)〜(13)のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
(15) 上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の熱硬化型粉体塗料を被塗装物に塗布して得られることを特徴とする塗装物。
本発明によれば、耐熱保管性に優れ、異物形成が起き難く、塗膜面の異常欠陥を防止し、さらに塗膜形成時にレベリング不良による塗膜欠陥が起こり難い熱硬化型粉体塗料およびその製造方法を提供することができる。また、塗膜欠陥の無い、外観性に優れた塗装物を提供することができる。
本実施形態の熱硬化型粉体塗料に含まれる粉体塗料粒子の好適な一実施形態と、その製造過程を示す概念図である。
本発明の熱硬化型粉体塗料(以下、単に粉体塗料ともいう)の一実施形態は、バインダー樹脂と硬化剤とを含む樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料であって、硬化前のバインダー樹脂は、GPC法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有する。
典型的な本実施形態の粉体塗料は、これに制限されるものではないが、粉体塗料を構成する樹脂粒子(以下、粉体塗料粒子ともいう)が、複数の樹脂微粒子を含む凝集粒子(凝集体)を融着して生成した融着物により構成される。樹脂粒子としては、複数の層を備える多層樹脂微粒子を用いるのが好ましい。また、多層樹脂微粒子は、最外層よりも内側の層に硬化剤を含むのが望ましい。
図1は、本実施形態の熱硬化型粉体塗料に含まれる粉体塗料粒子の好適な一実施形態を示す概念図である。図1(a)は、粉体塗料粒子を作製するための樹脂微粒子の一例の模式的な拡大図(断面を図示)であり、少なくともバインダー樹脂と硬化剤を用いて形成した3層構造(コア粒子11a+2層構造のシェル層(第2層11b+第3層11c))からなる多層樹脂微粒子11を示し、第2層11bに硬化剤13が内包されている。図1(b)の模式図(部分的に断面を図示)に示すように、複数の多層樹脂微粒子11が凝集することにより、樹脂微粒子の凝集体である凝集粒子15を形成する。多層樹脂微粒子11と、必要に応じて添加される着色剤16とで凝集粒子15を形成していてもよい。図1(c)に示す外観図のように、凝集粒子15を融着して塊状にすることによって、凝集粒子15の融着物である樹脂粒子(粉体塗料粒子)17となる。なお、図1は理解を補助するための概念図であり、粒子数や粒径、含有量、硬化剤が含有される層、多層樹脂微粒子の積層数(層構造)等は、これに拘束されるものではない。例えば、多層樹脂微粒子11は、2層構造(コアシェル構造)であってもよいし、多層樹脂微粒子11に代えて、単層構造の(単層)樹脂微粒子であってもよい。
粉体塗料を構成するバインダー樹脂の分子量は、分子量分布測定が可能な公知の方法で測定することができるが、本明細書では、最終的に得られる粉体塗料を試料として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定したものとする。GPC法は、粉体塗料中の粉体塗料粒子(樹脂粒子)を直接測定し、得られた測定値よりコンピュータ等の演算手段により当該バインダー樹脂の分子量分布を算出することが可能であり、他の測定方法に比べて容易かつ高精度に定量が可能である。以下に、GPC法による、粉体塗料を構成するバインダー樹脂の分子量の測定手順を説明する。
先ず、粉体塗料を構成する粉体塗料粒子を1mg/mlとなるようにテトラヒドロフランに溶解する。溶解条件は、室温下で超音波分散機を用いて5分間行うこととする。次に、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、下記測定装置に試料溶解液を10μl注入する。
GPC法の測定装置及び測定条件を下記に示す。
・測定装置:HLC−8220(東ソー社製)
・カラム:TSKguardcolumm+TSKgelSuperHZM−M 3連(東ソー社製)
・カラム温度:40℃
・溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:0.2ml/分
・検出器:屈折率検出器(RI検出器)
粉体塗料粒子の分子量は、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンは10点用いる。分子量50,000以上の第1の樹脂成分及び分子量50,000未満の第2の樹脂成分の含有比率は、積分分子量分布曲線を用いて求められる。なお、溶媒に不溶な成分は上記フィルターによって除かれるが、溶媒に溶解する、樹脂以外の成分が含まれる場合は、分子量分布曲線において、樹脂に由来する部分のみを使って、上記樹脂成分の含有比率を求めるようにする。
樹脂粒子17を構成するバインダー樹脂として、硬化前の状態で、GPC法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、第1の樹脂成分を、バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有するものを用いることにより、低分子量の樹脂成分と、適度な高分子量の樹脂成分とが樹脂粒子内に含まれ、粉体塗料粒子17全体の耐熱性を保ちつつ、レベリング不良による塗膜欠陥の発生を抑制することができる。その結果、耐熱保管性と良好な塗膜の形成の両立を図ることができる。
硬化前のバインダー樹脂は、上記第1の樹脂成分の、バインダー樹脂の全質量に対する含有比率が3.0質量%〜25質量%の範囲で含むのが望ましい。上記含有比率が3.0質量%以上であれば、耐熱保管性の低下を効果的に抑制することができ、尚且つ良好な塗膜を形成することができる点で優れている。また、上記含有比率が25質量%以下であれば、良好な塗膜形成能の低下をより効果的に抑制することができ、尚且つ優れた耐熱保管性を実現することができる点で優れている。
樹脂粒子を作製するに当たっては、詳細は後述するが、典型的には、上記バインダー樹脂を含む樹脂微粒子を水系媒体中に分散させ、複数の樹脂微粒子を凝集させる事によって生成された凝集粒子を、さらに加熱して融着させる事によって生成する。硬化剤は樹脂微粒子の形成から樹脂粒子の形成までのいずれかの段階で添加する。樹脂微粒子としては、多層、特に2〜3層構造を有する多層樹脂微粒子を用いることが好ましい。多層樹脂微粒子は各層の分子量の調節がし易い点で優れている。
以下、本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[樹脂粒子]
粉体塗料を構成する樹脂粒子は、バインダー樹脂、及び、塗装を行う際にバインダー樹脂を硬化させるための硬化剤を含む。上述した樹脂微粒子の凝集体の融着物で樹脂粒子を構成することにより、樹脂微粒子を構成する樹脂成分を樹脂粒子全体にわたって均一に分布させやすくなるというメリットがある。
(樹脂粒子の体積基準メディアン径)
樹脂粒子の体積基準メディアン径は、より良好な塗膜を得られることから、4.5〜30μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。本明細書においては、体積基準メディアン径は、「コールターマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)」で測定された値を用いる。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、粉体塗料の塗膜形成を担う役割を果たし、また、場合により、着色剤同士を結び付ける。バインダー樹脂は、重合性単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。バインダー樹脂は、粉体塗料としての樹脂粒子について、硬化前の状態で、GPC法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを含み、第1の樹脂成分を、バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有するものを用いる。好ましくは、上記第1の樹脂成分のバインダー樹脂の全質量に対する含有比率が3.0質量%〜25質量%、好ましくは3.0質量%〜22質量%、より好ましくは5.0質量〜20質量%、さらに好ましくは7.0質量%〜20質量%の範囲で含むようにする。具体的には、後述するように、樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂を適宜選択することにより、粉体塗料のバインダー樹脂として上述の特性を示すものを得ることができる。このようなバインダー樹脂は、後述するように、高分子量のバインダー樹脂とそれよりも低分子量のバインダー樹脂とを含む樹脂微粒子を用いるとともに、その調製時に、各樹脂成分を調製するための、重合性単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度等の製造条件や、各樹脂成分の組合せを調整することによって得ることができる。
(バインダー樹脂の粉体塗料中の含有量)
バインダー樹脂の粉体塗料中の含有量は、塗膜形成性、その他の添加剤との含有量等を考慮して適宜設定されるが、粉体塗料中、50〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましい。バインダー樹脂の粉体塗料中の含有量が、50質量%以上であれば、粉体塗料粒子中に充分に高分子量の樹脂成分が含まれている事になるため耐熱保管性の低下をより効果的に抑制することができ、尚且つ良好な塗膜形成性を発現することができる点で優れている。上記バインダー樹脂の粉体塗料中の含有量が95質量%以下であれば、硬化剤によるバインダー樹脂間の架橋が充分に行われるため、塗膜強度の低下をより効果的に抑制する事ができ、尚且つ優れた耐熱保管性を実現することができる点で優れている。
(バインダー樹脂の種類)
粉体塗料は、塗膜形成温度で加熱することによって、上記特性を持つバインダー樹脂が樹脂粒子に含まれる硬化剤により架橋されることが好ましい。したがって、バインダー樹脂としては、硬化剤と反応する置換基を有する樹脂を用いることが好ましい。かような樹脂を用いることによって、塗膜形成時の加熱によりバインダー樹脂が架橋されて硬化反応が効率的に進行する。なお、硬化剤と反応する置換基を有する樹脂は、樹脂微粒子が多層樹脂微粒子の場合には、多層樹脂微粒子中の硬化剤を含有する層を構成するバインダー樹脂に少なくとも用いられることが好ましい。また、樹脂微粒子が単層の樹脂微粒子の場合には、硬化剤と反応する置換基を有する樹脂をバインダー樹脂として、その内部に硬化剤を含有することが好ましい。
(硬化剤と反応する置換基)
上記したバインダー樹脂が有する硬化剤と反応する置換基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミダゾール基、チオール基、酸無水物等が挙げられる。
(硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体)
硬化剤と反応する置換基を有するバインダー樹脂は、上記重合性単量体として、硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体を1種類以上使用することによって得られる。硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシメチルアクリレート、カルボキシフェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2ヒドロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−ヒドロキシ−3−フェイキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、イミダゾール−4−アクリル酸、3−(1H−イミダゾール−4−イル)アクリル酸エチル、エテンチオール、プロピレンチオール等が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
(硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の全重合性単量体中の含有量)
硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の全重合性単量体中の含有量は特に限定されるものではないが、硬化剤との反応を考慮して、硬化剤を含有する層(または単層樹脂微粒子)を構成する重合性単量体100質量部に対して、硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の量が2〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
(硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体以外の重合性単量体)
重合性単量体としては、塗膜形成の観点から、上記硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体以外の重合性単量体を用いてもよい。硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体以外の重合性単量体としては、例えば、下記のビニル系重合性単量体が挙げられる。これらビニル系重合性単量体は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
以下に、ビニル系重合性単量体の具体例を示す。
(1)スチレンあるいはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。
(2)メタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
(3)アクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等が挙げられる。
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等が挙げられる。
(8)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
(9)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
(バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg))
塗料を保管する際の耐熱保管性の点から、各重合で得られる樹脂微粒子の各層(1層の場合を含む)のバインダー樹脂のTgは、25〜70℃であることが好ましく、30〜60℃であることがより好ましい。なお、本明細書において、バインダー樹脂のTgは、最終的に得られる粉体塗料について、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(島津製作所製:DSC−60A)を用いて測定した値で示す。この装置(DSC−60A)の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間保持し、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間保持し、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行い、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析を行い、オンセット温度をTgとする。
(硬化剤)
樹脂粒子は、バインダー樹脂を硬化させるための硬化剤を含む。樹脂微粒子に硬化剤を含んでいてもよいし、樹脂微粒子とともに凝集させてから融着してもよい。多層樹脂微粒子の場合には、最外層よりも内側の層に硬化剤を含み、最外層には硬化剤を含まないのが望ましい。
硬化剤としては、塗膜形成温度で加熱することによって、樹脂微粒子を構成する樹脂と硬化反応を生じる硬化剤であることが好ましい。塗膜形成温度の加熱によって硬化反応で塗膜を硬化できるので、塗装が容易となる。かような硬化剤は、塗膜形成温度および硬化速度やバインダー樹脂種等を考慮して適宜選択される。
(硬化剤の具体例)
硬化剤としてはTGIC等のエポキシ基を含有する化合物、HAA(βヒドロキシアルキルアミド)、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。特にブロックイソシアネート化合物が好ましい。ブロックイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ポリメリックMDI、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)=ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族、脂環式又は芳香族イソシアネートをフェノール類、ε−カプロラクタム類、アルコール類等でブロックしたものが挙げられる。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(硬化剤の含有量)
硬化剤の含有量は、塗膜形成時に硬化反応が適切に進行するよう適宜設定されるが、粉体塗料100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることが好ましい。
(硬化剤の含有位置)
硬化剤の含有位置は、特に限定されるものではなく、樹脂微粒子を凝集・融着させて樹脂粒子を生成する場合は、樹脂微粒子の生成から樹脂粒子の生成までのいずれかの工程で添加すればよい。多層樹脂微粒子の場合には、最外層よりも内層に含まれているのが望ましい。また、多層樹脂微粒子中の複数層にまたがって硬化剤が含有されていてもよい。好ましくは、硬化剤は、多層樹脂微粒子中の最内層に含まれる、および/または、最外層に隣接する内層(外から2番目の層)に含有されていることが好ましい。こうすることで、図1に示すように、個々の多層樹脂微粒子11内に硬化剤13を内包させることができる。この多層樹脂微粒子11を凝集・融着して樹脂粒子(粉体塗料粒子)17を得たときに、粉体塗料粒子17内で硬化剤13を均一に存在させることができる。このため、塗膜硬化時の塗膜収縮が起きにくく、塗膜強度が高いものとなる点で優れている。
[樹脂微粒子]
上述したように、樹脂微粒子を複数凝集させた凝集物を融着させて樹脂粒子を得ることができる。以下、樹脂微粒子について説明する。
(樹脂微粒子の層構成)
樹脂微粒子は、上記した特徴を持つバインダー樹脂および硬化剤を含み、1層から構成される単層樹脂微粒子又は多層から構成される多層樹脂微粒子とすることができる。樹脂微粒子を複数層とすることで、樹脂微粒子内において、硬化剤や特定の重量平均分子量を有するバインダー樹脂の存在位置を制御することができる。例えば、最外層より内側の層に、重量平均分子量が最も大きいバインダー樹脂を含有させることができる。また、硬化剤を最外層より内側の層に含有させることができる。多層樹脂微粒子を用いる場合、該多層樹脂微粒子を構成する層の数は特に限定するものではないが、生産効率や、効果の飽和を考慮すると、2〜10層であることが好ましく、2〜5層であることがより好ましく、2または3層であることがより好ましい。このような多層樹脂微粒子は、後述の製造方法の欄で述べるように、重合性単量体の重合を複数回にわたって行うことによって、得ることができる。
(樹脂微粒子の平均粒径)
樹脂微粒子の体積平均粒径は80〜300nmであることが好ましく、80〜200nmであることがより好ましい。かような範囲に樹脂微粒子の体積平均粒径があることで、硬化剤の分散性がより良好となり、塗膜硬化がより均一となる点で優れている。同様に、バインダー樹脂の分散性がより良好となり、樹脂微粒子、ひいては粉体塗料粒子全体に、バインダー樹脂として、上述した第1及び第2の樹脂成分を均一に分布することができる点でも優れている。ここで、樹脂微粒子の体積平均粒径は、樹脂微粒子の分散液中の粒子の粒子径を測定することによって得られる。本明細書において、樹脂微粒子の体積平均粒径は、レーザー回析式粒度分布測定装置を用いた方法で測定された値を用いる。
(多層樹脂微粒子の各層の厚さ)
また、多層樹脂微粒子を用いる場合、該多層樹脂微粒子を構成する各層の厚さは適宜設定されるが、第1段階の重合で形成されるコア部である第1層の体積平均粒径は、40〜90nmであることが好ましく、50〜80nmであることがより好ましい。コア部の体積平均粒径は、製造段階の分散液中の粒子の粒径を検出することによって測定することができる。
(樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂)
上述した分子量分布を示すバインダー樹脂を含む粉体塗料を得るために、高分子量のバインダー樹脂とそれより低分子量のバインダー樹脂とを含む樹脂微粒子を用いて、樹脂粒子を作製することが望ましい。こうすることで、主として高分子量のバインダー樹脂に由来して上記第1の樹脂成分を生成させ、また、主として低分子量のバインダー樹脂に由来して上記第2の樹脂成分を生成させることができる。この場合、多層樹脂微粒子の各層を構成するバインダー樹脂として、分子量の異なるものを用いたり、互いに分子量の異なるバインダー樹脂で構成される単層構成の樹脂微粒子を複数種類組み合わせて用いたりすることができる。前者の場合、各樹脂成分を、樹脂粒子全体にわたってより均一に分布させやすくなる点で好ましい。また、いずれの場合も、分布量分布が広い単独の樹脂で粉体塗料粒子を作製するのに比べて製造が容易になる。さらに、いずれの場合も、樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂として、適切な重量平均分子量を持つものを選択する。具体的には、塗膜形成時の良好なレベリングによる塗膜平滑性確保の点から、樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂の重量平均分子量は、1万〜30万であることが好ましく、2万〜25万であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができる。
多層樹脂微粒子の場合は、第1のバインダー樹脂を含む第1層と、第1のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第2のバインダー樹脂を含む第2層とが含まれるようにすることが好ましい。塗膜形成時のレベリング性の改善に適する樹脂と、耐熱保管性に寄与する樹脂の選択が容易になるからである。多層化された樹脂微粒子を凝集し融着して樹脂粒子を得ることで、樹脂粒子内で各層を構成する樹脂が均一に分布する。また、高分子量の樹脂成分とそれより低分子量の樹脂成分が島状に均一に分散して存在することにより、耐熱保管性とレベリング性が両立されるものと推測される。
第1のバインダー樹脂の重量平均分子量は、10万以上、より好ましくは10万〜30万、さらに好ましくは10万〜20万とすることができる。多層樹脂微粒子の場合、少なくとも1層、好ましくは最外層より内側の層に第1のバインダー樹脂を含むことが好ましい。一方、第2のバインダー樹脂の重量平均分子量は、第1のバインダー樹脂よりも低分子量、すなわち10万未満であり、好ましくは2万以下とする。下限値はこれに制限されるものではないが1万以上であることが望ましい。このように、重量平均分子量が互いに異なるバインダー樹脂を用いることで、耐熱保管性と塗膜形成時のレベリング性を両立することができる。
多層樹脂微粒子が、第2のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第3のバインダー樹脂を含む第3層を備えていてもよい。この場合、粉体塗料としての樹脂粒子内での樹脂の分布の制御が容易になったり、耐熱保管性と塗膜形成時のレベリング性との両立を実現しやすくなったりする。ここで、第3層を構成する第3のバインダー樹脂は、第1及び第2のバインダー樹脂のいずれとも重量平均分子量が異なるものとしてもよいし、何れかと同じになるようにしてもよい。また、内側の層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量が、外側の層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量よりも大きくなるようにすると、耐熱保管性と塗膜形成時のレベリング性との両立がさらに実現しやすくなる。なお、2層目以上の各層の重量平均分子量は、各層の重合条件を変えることなく、単層の構造のバインダー樹脂からなる樹脂微粒子を形成して、上記測定方法を用いて算出することができる。かような樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂の重量平均分子量は、重合性単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度によってほぼ決定されるため、これらの条件を制御(調節)することにより、所望の重量平均分子量を持つものを重合させることができる。
上記第1のバインダー樹脂は、バインダー樹脂全体に対する含有比率が2.0質量%〜15質量%、好ましくは3.0質量%〜6.0質量%の範囲で含むのが望ましい。また、上記第1のバインダー樹脂の以外のバインダー樹脂の含有量(例えば、第1のバインダー樹脂からなる層と第2のバインダー樹脂からなる層の2層構成の樹脂微粒子の場合、第2のバインダー樹脂の含有量)は、バインダー樹脂全体に対して75〜98質量%、好ましくは94〜97質量%とすることが望ましい。
樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂(多層樹脂微粒子の場合は各層を構成するバインダー樹脂)は、上述したバインダー樹脂から適宜選択して使用することができる。この際、同一の種類の樹脂(主たる繰り返し単位が同じである樹脂)を用いるようにすれば、塗膜形成時のレベリング性を良好にさせやすくなる。この場合、主骨格が同じで互いに分子鎖長が異なる少なくとも一組の樹脂を用いたり、同じ主骨格で分子鎖長の異なる分子の分子量分布が互いに異なる少なくとも一組の樹脂を用いたりすることができる。
[着色剤]
樹脂粒子には、必要に応じて着色剤が含有されていてもよい。樹脂粒子に含有される着色剤としては、一般の粉体塗料で使用される顔料、染料、及び、これらの混合物を用いることができる。光輝顔料等であってもよい。無着色の透明なクリア塗膜を形成する場合に用いられる樹脂粒子の場合には、着色剤は不要である。
(各着色剤の具体例)
黒色の着色剤としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も使用可能である。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同149、同150、同163、同166、同168、同170、同177、同178、同184、同185、同187、同188、同202、同206、同207、同209、同214、同222、同238、同256、同257、同269等がある。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ同13、31、同34、同36、同38、同43、同62、C.I.ピグメントイエロー12、同13、同14、同15、同17、同74、同81、同83、同93、同94、同97、同120、同138、同139、同151、同154、同155、同162、同175、同180、同181、同185、同191、同242等がある。
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同25、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等がある。
光輝顔料としては、例えば、アルミニウム粉顔料、ニッケル粉顔料、ステンレス粉顔料、銅粉、ブロンズ粉、金粉、銀粉、雲母顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料、薄片化加工したプラスチック顔料、及び鱗片状酸化鉄顔料等を挙げることができる。
これらの着色剤は、1種単独で用いることもできるし、2種以上併用してもよい。
(着色剤の含有量)
樹脂粒子中の着色剤の含有量は、適宜設定すればよいが、着色剤を用いる場合には、粉体塗料100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部の範囲で用いる。かような範囲であると着色剤の機能を確保できる。
(着色剤の体積平均粒子径)
また、着色剤の大きさとしては、体積平均粒子径で、10〜300nmであることが好ましい。
[その他の添加剤]
本実施形態の粉体塗料は、必要に応じて粉体塗料に通常用いられる添加剤を含んでいても構わない。添加剤としては、ジメチルシリコーンやメチルシリコーンなどのシリコーン類およびアクリルオリゴマーなどの表面調整剤、ベンゾインやベンゾイン誘導体などのベンゾイン類に代表される発泡防止剤、硬化促進剤(または硬化触媒)、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤、紫外線吸収剤、アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等の硬化促進剤(または硬化触媒)、体質顔料や防錆顔料などを例示することができる。
(他の添加剤の含有量)
他の添加剤の含有量は、所望の性能を発揮させるために適宜設定されるが、粉体塗料100質量部に対して、通常0〜10質量部程度である。
[粉体塗料の製造方法]
本発明の粉体塗料の製造方法の好適な一実施形態は、樹脂微粒子を得る工程(1)と、得られた樹脂微粒子を凝集し、融着させることにより樹脂粒子を得る工程(2)と、を含む。より好適な一実施形態としては、上記樹脂微粒子を得る工程(1)及び樹脂粒子を得る工程(2)として、高分子量のバインダー樹脂とそれより低分子量のバインダー樹脂とを含有する樹脂微粒子を形成する段階(a)と、水系媒体中に分散させた、複数の樹脂微粒子を凝集させて凝集粒子を形成する段階(b)と、凝集粒子を加熱して融着させて樹脂粒子を形成する段階(c)と、樹脂微粒子の形成から樹脂粒子の形成までのいずれかの段階で硬化剤(更に必要に応じて用いられる着色剤)を添加する段階(d)と、を含む。樹脂粒子は、GPC法で測定することにより算出される分子量分布における、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを含み、第1の樹脂成分を、バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有する。本実施形態の製造方法では、樹脂微粒子、特に2〜3層構造の樹脂微粒子を用いて樹脂粒子を生成することにより、樹脂微粒子の各層の分子量の調節がし易く、生成される樹脂粒子の上記第1及び第2の樹脂成分を含有させ易く、更に当該第1及び第2の樹脂成分の、バインダー樹脂全体に対する含有比率を調整しやすい点でも優れている。
さらに、冷却工程、濾過・洗浄工程、乾燥工程などが含まれ得る。
[樹脂微粒子を得る工程(工程(1))]
上記したような、高分子量のバインダー樹脂とそれより低分子量のバインダー樹脂とを含有する樹脂微粒子を形成する方法としては、多層樹脂微粒子の少なくとも1層を高分子量の樹脂成分を第1のバインダー樹脂として含む層とし、多層樹脂微粒子の残りの層を上記高分子量の樹脂成分より低分子量の樹脂成分を第2のバインダー樹脂として含む層とする。そして重合性単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度といった重合条件を適宜調節(制御)する。さらに、各層の厚みを適宜設定することで、得られる樹脂粒子におけるバインダー樹脂が上記第1及び第2の樹脂成分を含有し、延いては、バインダー樹脂全体に対する含有比率が適切に設定されたものとすることができる。また、高分子量のバインダー樹脂とそれより低分子量のバインダー樹脂とを(別々に)含有する単層の樹脂微粒子を形成する方法としては、高分子量のバインダー樹脂を含む単層の樹脂微粒子とそれより低分子量のバインダー樹脂を含む単層の樹脂微粒子とを別々に形成し、それぞれの含有比率を適宜調整して混合したものを凝集・融着に用いることで、得られる樹脂粒子における、上記第1及び第2の樹脂成分を含むバインダー樹脂を構成することができる。上述した樹脂微粒子の製造方法としては、小径で均一な粒度分布を有する粒子を得やすく、また、小粒径の多層樹脂微粒子を製造でき、また簡便に多層構造とすることができることから、重合法による製造方法が好ましい。重合法としては、具体的には、小粒径の多層樹脂微粒子が得られることから、水系媒体中に重合性単量体を添加して重合を行う、懸濁重合や乳化重合が好ましく、より好ましくは乳化重合法で製造することが好ましい。高分子量のバインダー樹脂としては、分子量が10万以上、より好ましくは10〜20万のものを用いる。低分子量のバインダー樹脂としては、分子量が10万未満、より好ましくは分子量が1万以上10万未満、より好ましくは、1〜2万のものを用いる。
したがって、好適には、工程(1)(上記段階(a)を含む)は、第1の重合性単量体(2種以上の重合性単量体を含んでいてもよい)を水系媒体に添加して第1の重合性単量体を重合することによって樹脂微粒子分散液を調製する工程(工程(A))と、該樹脂微粒子分散液中に第2の重合性単量体(2種以上の重合性単量体を含んでいてもよい)を添加して第2の重合性単量体を重合することによって樹脂微粒子分散液を調製する(工程(B))と、を有し、必要により、さらに樹脂微粒子分散液中に重合性単量体を添加して該重合性単量体を重合する工程を繰り返す。すなわち、工程(A)において第1段階の重合を行い、工程(B)において、第2段階の重合を行い、さらに必要により第3段階以降の重合を行う。かように複数回の重合反応を段階的に行うことによって、多層樹脂微粒子を得ることができる。
1.第1段階の重合(工程(A))
第1段階の重合によってコア部の第1層が形成される。
この際用いられる第1の重合性単量体としては、上記バインダー樹脂の欄に記載した重合性単量体を用いることができる。
単量体の水系媒体への混合や重合の際には、単量体の分散を良好なものとし、重合が円滑に進行するよう、機械的エネルギーを用いて撹拌しながら行うことが好ましい。かような機械的エネルギーを付与する機器としては、「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」などが挙げられる。ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機、アルティマイザーなどの分散機を用いてもよい。
重合性単量体の重合は、常圧、減圧、加圧のいずれでも行うことができるが、好ましくは常圧(又はその近傍、通常±10mmHg)で行われる。また、重合工程における重合温度は、特に限定されず、重合性単量体の重合が進行する範囲において適宜選択することができる。重合温度としては、例えば、50℃以上100℃以下であることが好ましく、55℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。さらに、重合時間も重合性単量体の重合が進行する範囲において適宜選択することができ、2〜12時間であることがより好ましい。
ここで、第1段階の重合により、第1のバインダー樹脂を得る。例えば、コア部(第1層)に高分子量のバインダー樹脂を含むようにするには、第1層の分子量が重合性単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度によってほぼ決定されるため、これらの条件を高分子量化するように適宜調節(制御)すればよいが、これらに何ら制限されるものではなく、従来公知の高分子量化技術を適宜利用することができる。逆に第1段階の重合により、コア部(第1層)に高分子量のバインダー樹脂より低分子量のバインダー樹脂を含むようにするには、第1層の分子量が重合性単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度によってほぼ決定されるため、これらの条件を高分子量化することなく低分子量に留まるように適宜調節(制御)すればよいが、これらに何ら制限されるものではなく、従来公知の重合技術を適宜利用することができる。この際、上記高分子量のバインダー樹脂の、バインダー樹脂全体に対する含有比率が3.0質量%以上、好ましくは3.0質量%〜25質量%の範囲で含むようにする。この点については、上述した通りである。
(第2層以降のバインダー樹脂の重量平均分子量)
なお、後述する第2段階(更には第3段階以上)の重合により、第2層以上に高分子量のバインダー樹脂を含むようにする場合にも、上記と同様にして適宜調節(制御)すればよい。同様に、第2層以上に低分子量のバインダー樹脂を含むようにする場合にも、上記と同様にして適宜調節(制御)すればよい。即ち、第2層については、第1層を形成した後の粒子、第3層については第2層までを形成した後の粒子に、その粒子の最外層に形成される。各層の分子量は、単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度によってほぼ決定されるため、本実施形態における第2層、第3層(更にはそれ以降)の各層毎の分子量は、単層で樹脂微粒子を形成した場合に所望の分子量を得られる重合条件を、そのまま第2層や第3層(更にはそれ以降の層)の重合時に適用する事で、狙いの分子量を持つ層が形成できる。
重合性単量体および重合開始剤の水系媒体への添加順序は特に限定されるものではなく、(1)重合開始剤を水系媒体に添加した後、重合性単量体(混合物)を添加する方法、(2)重合性単量体(混合物)を水系媒体に添加した後、重合性開始剤を添加する方法のどちらであってもよい。
第1段階の重合において、硬化剤を含まない場合には、簡便性の観点から、(1)重合開始剤を水系媒体に添加した後、重合性単量体(混合物)を添加する方法が好ましく、重合性単量体(混合物)を滴下しながら添加することがより好ましい。
一方、第1段階の重合において、硬化剤を単量体とともに分散させる際には、(2)重合性単量体(混合物)および硬化剤を水系媒体に添加した後、重合性開始剤を添加する方法が好ましい。硬化剤の分散性を良好にするために、硬化剤および第1の重合性単量体の混合物を水系媒体に添加した後、機械的エネルギーを付与して撹拌することが好ましく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機、アルティマイザーなどの分散機を用いることが好ましい。分散機としては市販品を用いることもでき、例えば、「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)を用いることができる。乳化重合の際には、界面活性剤を用いて第1の重合性単量体および硬化剤を乳化・分散させることが好ましい。
硬化剤を最内層のコア部に含有させる場合には、工程(A)において、硬化剤を第1の重合性単量体と共に水系媒体中に添加した後、第1の重合性単量体を重合させればよい。
(水系媒体)
「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
(水系媒体の使用量)
水系媒体の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜800質量部であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
(界面活性剤)
乳化重合法による重合では、通常、界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、以下に示すイオン性界面活性剤が好ましいものとして使用できる。イオン性界面活性剤には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等がある。
上記イオン性界面活性剤の1種である硫酸エステル塩には、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等があり、脂肪酸塩には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムとも記す)等がある。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤を使用することも可能で、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル、等がある。
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(分散安定剤)
分散した重合性単量体の液滴の凝集を防ぐために、分散安定剤が添加されてもよい。分散安定剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等のものがある。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等、一般に界面活性剤として使用されるものも分散安定剤として使用できる。これらの分散安定剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子(多層樹脂微粒子のコア部ないし第1層の粒子)としては、粒径が0.5〜3μmのものが好ましく、具体的には、ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
(連鎖移動剤)
バインダー樹脂の分子量調整のために、公知の連鎖移動剤を用いることもできる。具体的には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等がある。これらの連鎖移動剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(重合開始剤)
重合工程においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行うことが好ましい。重合性単量体を重合する際に用いられる重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知の重合開始剤を使用することができる。乳化重合法で樹脂微粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等がある。乳化重合法を好適に使用する観点からは、過硫酸カリウムがより好ましい。
上記のようにして第1段階の重合により、(単層の)第1の樹脂微粒子分散液が調製される。
得られた(単層の)第1の樹脂微粒子の体積平均粒径は40〜90nmであることが好ましく、50〜80nmであることがより好ましい。
2.第2段階の重合(工程(B))
次いで、第2段階の重合を行う。第2段階の重合によってコア部の外に第2層目の樹脂層が形成される。多層樹脂微粒子が2層から構成される場合には、第2段階の重合で重合は終了となる。
この際用いられる第2の重合性単量体としては、上記バインダー樹脂の欄に記載した重合性単量体を用いることができる。また、第1段階の重合で用いられた第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体とは、同一の種類であっても異なる種類であってもよいが、融着時の相溶性や生産性の観点からは同一の種類であることが好ましい。また、用いられる重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤等も第1段階の重合と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
一方、第2段階の重合において、硬化剤を第2の重合性単量体とともに分散させる際には、硬化剤の分散性を良好にするために、硬化剤および第2の重合性単量体の混合物を機械的エネルギーを付与して撹拌することが好ましく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機、アルティマイザーなどの分散機を用いることが好ましい。分散機としては市販品を用いることもでき、例えば、「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)を用いることができる。
また、好適な重合条件は、第1段階の重合と同様である。
上記のようにして第2段階の重合により、2層(コア部(第1層)+第2層(1層目のシェル層ないし被覆層)の樹脂微粒子を含有する樹脂微粒子分散液が調製される。
得られた2層の樹脂微粒子の体積平均粒径は90〜200nmであることが好ましく、100〜180nmであることがより好ましい。
3.第3段階以降の重合
多層樹脂微粒子が3層以上の場合には、第3段階以降の重合がさらに行われる。この際用いられる重合性単量体としては、上記バインダー樹脂の欄に記載した重合性単量体を用いることができる。また、用いられる重合性単量体は、第1段階の重合で用いられた第1の重合性単量体および第2段階の重合で用いられた第2の重合性単量体と、同一の種類であっても異なる種類であってもよいが、融着時の相溶性や生産性の観点からは同一の種類であることが好ましい。また、用いられる重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤等も第1段階および/または第2段階の重合と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
また、重合の際の重合性単量体、重合開始剤の添加順序や、好適な分散方法、重合条件等は第1および/または第2段階の重合と同様であるので説明を割愛する。
(樹脂微粒子への硬化剤の添加)
本実施形態では、最外層よりも内側の層に高分子量の第1のバインダー樹脂及び硬化剤が含まれるのが望ましい。したがって、第1のバインダー樹脂を含有する層を形成するときに、対象となる層について、重合性単量体や重合条件、添加剤(連鎖移動剤など)を適宜調節(制御)することによって、高分子量の樹脂成分が最外層よりも内側の層に含有された多層樹脂微粒子を形成することができる。また硬化剤を含有させたい層を形成するときに硬化剤を重合性単量体とともに添加することによって、硬化剤が最外層よりも内側の層に含有された多層樹脂微粒子を形成することができる。硬化剤おいては粉体塗料粒子の耐熱保管性を考える場合、なるべく粒子の表面に露出させないことが望ましい。即ち、上記したように多層樹脂微粒子は2〜3層が好ましいことから、高分子量体成分や硬化剤は、通常、最内層に含まれる、および/または、最外層に隣接する層に含まれることが好ましいといえる。
したがって、好適には、工程(1)は、(I)工程(A)において、硬化剤を前記第1の重合性単量体と共に水系媒体中に添加した後、第1の重合性単量体を重量平均分子量が10万以上の高分子量の第1のバインダー樹脂となるように重合する、または、(II)最外層を形成するための重合性単量体を重量平均分子量が10万未満の低分子量の第2のバインダー樹脂となるように重合する工程の直前の重合性単量体を重合する工程において、硬化剤を重合性単量体と共に水系媒体中に添加した後、重合性単量体を重量平均分子量が10万以上の高分子量体成分の樹脂成分となるように重合する工程であることが好ましい。
[凝集・融着工程]
(凝集工程;凝集粒子形成段階)
次いで、水系媒体中に凝集剤を添加して前述の樹脂微粒子を凝集させる。この工程では、樹脂微粒子を含有する水系媒体中に、塩化マグネシウム等に代表されるアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の凝集剤を添加して、前記樹脂微粒子を凝集させる。次いで、水系媒体を前記樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱して凝集を進行させ、同時に凝集させた樹脂粒子同士を融着させる。そして、凝集の進行により樹脂粒子の大きさが目標になったときに、食塩等の塩を添加して凝集を停止させる(段階(b))。
(凝集剤の具体例)
使用可能な凝集剤は特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(融着工程;加熱、融着による樹脂粒子形成段階)
上記で得られた凝集粒子を融着することによって樹脂粒子が得られる。この工程で、上記で得られた凝集粒子を加熱して融着させて樹脂粒子を形成する(段階(c))。凝集粒子の融着方法は特に限定されるものではないが、容易な操作で確実に融着が行われることから、融着は加熱により行われることが好ましい。
この融着工程における融着温度は、バインダー樹脂のガラス転移温度Tg以上であることが好ましい。融着温度は、バインダー樹脂のTgより0〜20℃高い温度であることが好ましい。
また、凝集・融着時の最高温度が塗膜形成時の硬化温度よりも低いことが好ましい。凝集・融着時の最高温度をかような温度に設定することで、硬化剤が失活せず、塗膜形成時の加熱により、バインダー樹脂と架橋構造を形成することができ、塗膜の強度が一層向上する。凝集・融着時の最高温度は、塗膜形成時の硬化温度よりも20℃以上低い事が好ましい。
さらに、バインダー樹脂のTg以上の温度に到達した後、分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させる。これにより、粒子の成長(バインダー樹脂粒子(更に、着色剤を用いる場合には着色剤粒子)の凝集)と、融着(粒子間の界面の消失)とを効果的に進行させることができる。保持時間としては、融合がされる程度行えばよく、融着時の最高温度で0.5〜10時間程度行えばよい。
融着は、樹脂粒子の体積基準メディアン径を測定し、4.5〜30μmになるまで行うことが好ましい。成長の停止は、塩化ナトリウム等の塩を添加して行うことができる。体積基準メディアン径は、例えば、コールター・ベックマン社製コールターマルチサイザー3によって測定できる。
樹脂粒子を得る工程(2)は、工程(1)で得られた複数の多層樹脂微粒子(更に、着色剤を用いる場合には複数の着色剤粒子)を凝集し、融着させる工程であることが好ましい。着色剤を用いる場合には、この工程(2)の凝集工程で、上記段階(d)のうち、上記した凝集粒子形成段階(b)で着色剤を添加するのが望ましい。かような工程(段階)により、塗料に着色剤を簡便かつ安定的に配合することができる。また、多層樹脂微粒子とともに着色剤を水系媒体中に分散し昇温して凝集・融着させることがより好ましい。かような方法により、着色剤を樹脂粒子に均一に分散することができる。
着色剤を水系媒体中に分散させる際には、着色剤の水系媒体分散液を調製し、該分散液と、多層樹脂微粒子の水系媒体分散液とを用いて、凝集・融着を行うことが好ましい。
着色剤の水系媒体分散液を調製する際に用いられる水系媒体は上記で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記で挙げたように、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、あるいは、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられ、具体的には例えば(株)スギノマシン製、HJP30006などを挙げることができる。
[冷却工程]
融着後に冷却し、樹脂粒子を得る。冷却の工程においては、0〜45℃まで冷却することが好ましい。
融着して得た樹脂粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経て粉体塗料粒子とすることができる。
[濾過・洗浄工程]
この濾過・洗浄工程では、冷却された樹脂粒子の分散液から、水等の溶媒を用いて、樹脂粒子を固液分離して樹脂粒子を濾別する濾過処理と、濾別された樹脂粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離および洗浄の方法としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。この濾過・洗浄工程においては適宜、pH調整や粉砕などを行ってもよい。このような操作は繰り返し行ってもよい。
[乾燥工程]
この乾燥工程では、洗浄処理された樹脂粒子に乾燥処理が施され、乾燥した粉体からなる粉体塗料とすることができる。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理された粒子中のカールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。
また、乾燥処理された粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置を使用することができる。
[塗装物]
上述した粉体塗料を、例えば、静電粉体スプレー又は摩擦帯電塗装機等による静電粉体塗装により被塗装物に付着させ、焼き付けを行うことにより、熱硬化された塗膜を有する塗装物を得ることができる。
塗装の際の焼付条件(塗膜形成温度)は、硬化剤がバインダー樹脂と反応して架橋構造を形成できる温度とし、粉体塗料粒子を構成するバインダー樹脂の溶融温度以上であって、硬化剤の反応開始温度以上とする。また、加熱時間は硬化反応が適切に進行する時間を適宜設定すればよいが、通常は粉体塗料粒子が塗布された非塗布物全体の温度が、硬化反応温度以上に達してから10〜30分程度であることが好ましい。
また、本実施形態の粉体塗料は、粒子径が小径でありながら、粉体状態での保存性が高いために塗膜欠陥に繋がる粉体塗料粒子の凝集物などの異物が生じにくく、より美観性に優れた薄い塗膜を有する塗装物を得る事が可能である。
粉体塗料は、従来から使用されている被塗装物に塗装することができる。該被塗装物としては、例えば、鉄鋼、亜鉛、アルミニウム、銅、及びスズ等の金属素材(車体、筐体など)、これらの金属に表面処理を施したもの、並びにこれらの金属素材に必要に応じてプライマーや中塗り塗装を施した下地塗装膜;耐熱性樹脂;ガラス;セラミックス等が挙げられる。
また、適用される分野としては、例えば、移動体(自動車や電車等の車両、航空機、船舶、重機等)関係、家電関係、建築関係、道路関係、及び事務用機器等に適用することができる。
以下、本発明の具体的な実施例を比較例と対比して説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。
<測定方法>
(樹脂微粒子の体積平均粒径の測定方法)
樹脂微粒子の体積平均粒径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)で測定した。
<実施例1>
〔粉体塗料Aの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Aを作製した。
(多層樹脂微粒子Aaの作製)
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子A1の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部とイオン交換水3000質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温させた。
昇温後、重合開始剤である過硫酸カリウム8質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を上記反応容器内の界面活性剤溶液に添加し、液温を75℃にして、下記表1の組成の単量体混合液〔a1〕を1時間かけて滴下した。滴下後、液温75℃にて2時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、樹脂微粒子A1(コア部;第1層)の分散液(樹脂微粒子A1が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔A1〕)を作製した。樹脂微粒子A1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ20万であった。樹脂微粒子分散液〔A1〕を構成する樹脂微粒子A1の体積平均粒径は80nmであった。
なお、上記単量体混合液〔a1〕は、下記表1の組成からなるものである。
(2)第2段階の重合による樹脂微粒子A2の作製
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、上記の樹脂微粒子分散液〔A1〕を固形分換算で40質量部と、下記表2の組成の単量体混合液〔a2〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
上記単量体混合液〔a2〕は、下記表2の組成からなるもので、液温を80℃に加温して、硬化剤であるεカプロラクタムブロックイソシアネートを溶解させている。
続いて、上記乳化粒子分散液中に、重合開始剤である過硫酸カリウム5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃で1時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、樹脂微粒子A2の分散液(樹脂微粒子A1表面に第2段階の重合により樹脂(第2層)が被覆された2層構造を有する樹脂微粒子A2が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔A2〕)を作製した。樹脂微粒子分散液〔A2〕を構成する樹脂微粒子A2の体積平均粒径は140nmであった。
なお、樹脂成分の分子量の測定を目的として、上記表2の単量体混合液〔a2〕から硬化剤を除いた組成とした下記表3の単量体組成で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第2段階の重合時と同じ条件とした)をして重合し、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子A2の第2層(樹脂成分)の重量平均分子量は9万であることを確認した。
(3)第3段階の重合による樹脂微粒子A3の作製
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔A2〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表4の組成の単量体混合液〔a3〕を1時間かけて滴下した。
上記単量体混合液〔a3〕を滴下終了後、上記反応容器内の液温を80℃の温度下で2時間加熱、撹拌して重合反応を行った後、28℃まで冷却して、樹脂微粒子A3の分散液(樹脂微粒子A2の表面に第3段階の重合により樹脂(第3層)が被覆された3層構造を有する樹脂微粒子A3が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔A3〕)を作製した。得られた樹脂微粒子分散液〔A3〕中の樹脂微粒子A3を多層樹脂微粒子Aaとし、樹脂微粒子分散液〔A3〕を多層樹脂微粒子Aa分散液とする。多層樹脂微粒子Aaの体積平均粒径は180nmであった。
なお、上記表4の単量体混合液〔a3〕で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第3段階の重合時と同じ条件とした)をして重合し、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子A3(多層樹脂微粒子Aa)の第3層(樹脂成分)の重量平均分子量は1.6万であることを確認した。
(粉体塗料粒子の形成(凝集・融着工程))
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記表5に示す成分を投入し、撹拌した。
その後、反応容器内の溶液温度(液温)を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10に調整した。
次に、凝集剤である塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、上記反応容器内の溶液撹拌の下で該反応容器内の溶液温度(液温)30℃にて10分間かけて添加した。添加後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系(液温)を60分間かけて85℃まで昇温させ、85℃に保持させたまま複数の上記多層樹脂微粒子Aa(樹脂微粒子A3)の凝集、融着を継続した。この状態で「マルチサイザー3(ベックマンコールター社製)」を用いて形成されている粒子の粒径測定を行い、粒子の体積基準メディアン径(D50)が6.7μmになったときに、凝集停止剤である塩化ナトリウム200質量部をイオン交換水860質量部に溶解させた水溶液を反応系(反応容器内)に添加して凝集を停止させた。
凝集停止後、熟成処理として液温を95℃にして加熱撹拌を8時間行って凝集させた多層樹脂微粒子Aa(樹脂微粒子A3)間での融着を進行させて粉体塗料粒子(融着粒子;融着物)Aを含有する分散液を作製した。熟成処理の後、液温を30℃に冷却した。
上記工程を経て作製した粉体塗料粒子Aを含有する分散液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、粉体塗料粒子Aのウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄した後、「フラッシュジェットドライヤ(セイシン企業(株)製)」に移し、水分量が0.50質量%になるまで乾燥処理を行って粉体塗料(粉体塗料粒子)Aを作製した。粉体塗料Aは、着色剤を含まないクリア塗膜に適したものである。
得られた粉体塗料粒子Aの重量平均分子量をGPC法で測定したところ44000であり、GPC法による分子量分布における、分子量5万以上の第1の樹脂成分の、バインダー樹脂全体に占める割合(含有比率)は10.0質量%であり、分子量5万未満の第2の樹脂成分の、バインダー樹脂全体に占める割合(含有比率)は90.0質量%であった。
得られた粉体塗料粒子Aの粒度分布を評価するため、以下の手順で、個数基準の粒径分布における変動係数(CV値)を測定した。CV値は、樹脂微粒子の粒径分布における分散度を示しており、CV値が小さくなるほど粒径分布がシャープで、粒子の大きさが揃っていることを意味する。粉体塗料粒子の粒度分布におけるCV値は、粉体塗料粒子の個数粒度分布における分散度を体積基準で表したものであり、以下の式によって規定される。
ここでは、個数粒度分布における標準偏差と体積基準の粒度分布におけるメディアン径(D50)は、ベックマン・コールター社製コールターマルチサイザー3に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピュータシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて測定・算出した。以下の各実施例及び比較例も同様である。粉体塗料粒子Aの体積基準メディアン径は6.2μm、CV値は19.1%であった。なお、粉砕方式で製造された粉体塗料粒子のCV値は一般的に25%以上を示す。
<実施例2>
第2段階の重合の際に用いる樹脂微粒子分散液〔A1〕の添加量を固形分換算で、40質量部から28質量部に変更した以外は、実施例1と同じ手順で、粉体塗料Bを構成する粉体塗料粒子Bを作製した。
得られた粉体塗料粒子Bの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、4.4万であり、GPCによる分子量分布における、第1の樹脂成分の含有比率は6.0質量%であり、第2の樹脂成分の含有比率は94.0質量%であった。粉体塗料粒子Bの体積基準メディアン径は6.3μm、CV値は19.4%であった。
<実施例3>
第2段階の重合の際に用いる樹脂微粒子分散液〔A1〕の添加量を固形分換算で、40質量部から76質量部に変更した以外は、実施例1と同じ手順で、粉体塗料Cを構成する粉体塗料粒子Cを作製した。
得られた粉体塗料粒子Cの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、4.6万であり、GPCによる分子量分布における、第1の樹脂成分の含有比率は19.5質量%であり、第2の樹脂成分の含有比率は80.5質量%であった。粉体塗料粒子Cの体積基準メディアン径は6.4μm、CV値は19.3%であった。
<実施例4>
実施例4の粉体塗料Dを構成する粉体塗料粒子Dは、実施例1の第1層の部分が無くなり、第2段階以降から1層目として操作を開始し、第1層作製時の過硫酸カリウムの量を変更した例である。以下詳しく説明する。
〔粉体塗料Dの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Dを作製した。
(多層樹脂微粒子(多段式重合樹脂粒子)Dの作製)
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子D1の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、下記の表6の組成の単量体混合液〔d1〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
なお、単量体混合液〔d1〕は、下記表6の組成からなるもので、液温を80℃に加温して、硬化剤であるεカプロラクタムブロックイソシアネートを溶解させている。
続いて、上記乳化粒子分散液中に、重合開始剤である過硫酸カリウム3質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃で1時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、樹脂微粒子D1(コア部;第1層)の分散液〔D1〕を作製した。樹脂微粒子D1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ11万であった。樹脂微粒子分散液〔D1〕を構成する樹脂微粒子D1の体積平均粒径は130nmであった
(2)第2段階の重合による樹脂微粒子D2の作製
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔D1〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表7の組成の単量体混合液〔d2〕を1時間かけて滴下した。
上記単量体混合液〔d2〕を滴下終了後、上記反応容器内の液温を80℃の温度下で2時間加熱、撹拌して重合反応を行った後、28℃まで冷却して、樹脂微粒子D2の分散液(樹脂微粒子A1の表面に第2段階の重合により樹脂(第2層)が被覆された2層構造を有する樹脂微粒子D2が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔D2〕)を作製した。得られた樹脂微粒子分散液〔D2〕中の樹脂微粒子D2を多層樹脂微粒子Dとし、樹脂微粒子分散液〔D2〕を多層樹脂微粒子D分散液とする。多層樹脂微粒子Dの体積平均粒径は170nmであった。
なお、上記表7の単量体混合液〔d2〕で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第2段階の重合時と同じ条件とした)をして重合した、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子D2(多層樹脂微粒子D)の第2層(樹脂成分)の重量平均分子量は16000であることを確認した。
これ以降の「粉体塗料粒子の形成(凝集・融着工程)」については、実施例1と同じように操作し、粉体塗料Dを構成する粉体塗料粒子Dを作製した。
得られた粉体塗料粒子Dの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、4万であり、GPCによる分子量分布において、第1の樹脂成分の含有比率は6.0質量%であり、第2の樹脂成分の含有比率は94.0質量%であった。粉体塗料粒子Dの体積基準メディアン径は6.3μm、CV値は18.8%であった。
<実施例5>
〔粉体塗料Eの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Eを作製した。
(多層樹脂微粒子(多段式重合樹脂粒子)Eaの作製)
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子E1の作製
実施例1の第1段階の重合の際の重合開始剤である過硫酸カリウムの量を8質量部から10質量部に、また連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン量を使用するように変更した以外は、実施例1の第1段階の重合と同じ手順で、樹脂微粒子E1(コア部;第1層)の分散液(樹脂微粒子E1が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔E1〕)を作製した。樹脂微粒子E1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ4.0万(重量平均分子量が10万未満の低分子量の成分)であった。樹脂微粒子分散液〔E1〕を構成する樹脂微粒子E1の体積平均粒径85nmであった。
(2)第2段階の重合による樹脂微粒子E2の作製
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、上記の樹脂微粒子分散液〔E1〕を固形分換算で190質量部と、下記表8の組成の単量体混合液〔e2〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
単量体混合液〔e2〕は、下記表8の組成からなるもので、液温を80℃に加温して、硬化剤であるεカプロラクタムブロックイソシアネートを溶解させている。
続いて、上記乳化粒子分散液中に、重合開始剤である過硫酸カリウム3質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃にして1時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、樹脂微粒子E2の分散液(樹脂微粒子E1表面に第2段階の重合により樹脂(第2層)が被覆された2層構造を有する樹脂微粒子E2が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔E2〕)を作製した。樹脂微粒子分散液〔E2〕を構成する樹脂微粒子E2の体積平均粒径は135nmであった。
なお、樹脂成分の分子量の測定を目的として、上記表8の単量体混合液〔e2〕から硬化剤を除いた組成とした下記表9の単量体組成で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第2段階の重合時と同じ条件とした)をして重合することにより、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定したところ、重量平均分子量は11万となり、樹脂微粒子E2の第2層(樹脂成分)の重量平均分子量は11万であることを確認した。
(3)第3段階の重合による樹脂微粒子E3の作製
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔E2〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表10の組成の単量体混合液〔e3〕を1時間かけて滴下した。
上記単量体混合液〔e3〕を滴下終了後、上記反応容器内の液温を80℃の温度下で2時間加熱、撹拌して重合反応を行った後、28℃まで冷却して、樹脂微粒子E3の分散液(樹脂微粒子E2の表面に第3段階の重合により樹脂(第3層)が被覆された3層構造を有する樹脂微粒子E3が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔E3〕)を作製した。得られた樹脂微粒子分散液〔E3〕中の樹脂微粒子E3を多層樹脂微粒子Eaとし、樹脂微粒子分散液〔E3〕を多層樹脂微粒子Ea分散液とする。多層樹脂微粒子Eaの体積平均粒径は175nmであった。
なお、上記表10の単量体混合液〔e3〕で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第3段階の重合時と同じ条件とした)をして重合し、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子E3(多層樹脂微粒子E)の第3層(樹脂成分)の重量平均分子量は1.5万であることを確認した。
これ以降の「粉体塗料粒子の形成(凝集・融着工程)」については、実施例1と同じように操作し、多層樹脂微粒子Eaを凝集・融着させることにより、粉体塗料Eを構成する粉体塗料粒子Eを作製した。
得られた粉体塗料粒子Eの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、4.0万であり、GPCによる分子量分布において、第1の樹脂成分の含有比率は10.0質量%であり、第2の樹脂成分の含有比率は90.0質量%であった。粉体塗料粒子Eの体積基準メディアン径は6.2μm、CV値は18.6%であった。
<実施例6>
〔粉体塗料Fの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Fを作製した。
(多層樹脂微粒子Faの作製)
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子F1の作製
実施例1の第1段階の重合の際の重合開始剤である過硫酸カリウムの量を8質量部から10質量部に、また連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン量を8質量部使用することに変更した以外は、実施例1の第1段階の重合と同じ手順で、樹脂微粒子F1(コア部;第1層)の分散液(樹脂微粒子F1が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔F1〕)を作製した。前記樹脂微粒子F1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ4.0万(重量平均分子量が10万未満の低分子量の成分)であった。樹脂微粒子分散液〔F1〕を構成する樹脂微粒子F1の体積平均粒径は85nmであった。
(2)第2段階の重合による樹脂微粒子F2の作製
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、上記の樹脂微粒子分散液〔F1〕を固形分換算で190質量部と、下記表11の組成の単量体混合液〔f2〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
上記単量体混合液〔f2〕は、下記表11の組成からなるもので、液温を80℃に加温して、硬化剤であるεカプロラクタムブロックイソシアネートを溶解させている。
続いて、上記乳化粒子分散液中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃で1時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、樹脂微粒子F2の分散液(樹脂微粒子F1表面に第2段階の重合により樹脂(第2層)が被覆された2層構造を有する樹脂微粒子F2が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔F2〕)を作製した。樹脂微粒子分散液〔F2〕を構成する樹脂微粒子F2の体積平均粒径は150nmであった。
なお、樹脂成分の分子量の測定を目的として、上記表11の単量体混合液〔f2〕から硬化剤を除いた組成とした、下記表12の単量体組成で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第2段階の重合時と同じ条件とした)をして重合し、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子F2の第2層(樹脂成分)の重量平均分子量は1.5万であることを確認した。
(3)第3段階の重合による樹脂微粒子F3の作製
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔F2〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム3質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表13の組成の単量体混合液〔f3〕を1時間かけて滴下した。
上記単量体混合液〔f3〕を滴下終了後、上記反応容器内の液温を80℃の温度下で2時間加熱、撹拌して重合反応を行った後、28℃まで冷却して、樹脂微粒子F3の分散液(樹脂微粒子F2の表面に第3段階の重合により樹脂(第3層)が被覆された3層構造を有する樹脂微粒子F3が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔F3〕)を作製した。得られた樹脂微粒子分散液〔F3〕中の樹脂微粒子F3を多層樹脂微粒子Faとし、樹脂微粒子分散液〔F3〕を多層樹脂微粒子Fa分散液とする。多層樹脂微粒子Faの体積平均粒径は190nmであった。
なお、上記表13の単量体混合液〔f3〕で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第3段階の重合時と同じ条件とした)として重合し、得られた樹脂微粒子(コア部;単層構造)の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子F3(多層樹脂微粒子Fa)の第3層(樹脂成分)の重量平均分子量は11万であることを確認した。
これ以降の「粉体塗料粒子の形成(凝集・融着工程)」については、実施例1と同じように操作し、多層樹脂微粒子Faを凝集・融着させることにより、粉体塗料Fを構成する粉体塗料粒子Fを作製した。
得られた粉体塗料粒子Fの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、4.0万であり、GPCによる分子量分布において、第1の樹脂成分の含有比率は10.0質量%であり、第2の樹脂成分の含有比率は90.0質量%であった。粉体塗料粒子Fの体積基準メディアン径は6.4μm、CV値は21.3%であった。
<実施例7>
実施例4の第1段階の重合の際のn−オクチルメルカプタンを0.5質量部から5質量部に、第2段階の重合の際のn−オクチルメルカプタンを13質量部から9質量部に変更した以外は、実施例4と同じ手順で、粉体塗料Gを構成する粉体塗料粒子Gを作製した。
なお、上記1段階の重合の際のn−オクチルメルカプタンを0.5質量部から5質量部に変更して得られた樹脂微粒子G1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ9万であった。樹脂微粒子分散液〔G1〕を構成する樹脂微粒子G1の体積平均粒径は130nmであった。
また、上記2段階の重合の際のn−オクチルメルカプタンを13質量部から9質量部に変更した単量体混合液〔g2〕で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第2段階の重合時と同じ条件とした)をして重合し、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子G2(多層樹脂微粒子G)の第2層(樹脂成分)の重量平均分子量は3万であることを確認した。
更に得られた粉体塗料粒子Gの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、4.5万であり、GPCによる分子量分布において、第1の樹脂成分の含有比率は6.0質量%であり、第2の樹脂成分の含有比率は94.0質量%であった。粉体塗料粒子Gの体積基準メディアン径は6.3μm、CV値は19.0%であった。
<実施例8>
第2段階の重合の際に用いる樹脂微粒子分散液〔A1〕の添加量を固形分換算で、40質量部から13質量部に変更した以外は、実施例1と同じ手順で、粉体塗料Hを構成する粉体塗料粒子Hを作製した。
得られた粉体塗料粒子Hの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、4.2万であり、GPCによる分子量分布において、第1の樹脂成分の含有比率は3.0質量%であり、第2の樹脂成分の含有比率は97.0質量%であった。粉体塗料粒子Hの体積基準メディアン径は6.4μm、CV値は19.9%であった。
<実施例9>
第2段階の重合の際に用いる樹脂微粒子分散液〔A1〕の添加量を固形分換算で、40質量部から96質量部に変更した以外は、実施例1と同じ手順で、粉体塗料Iを構成する粉体塗料粒子Iを作製した。
得られた粉体塗料粒子Iの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、5.7万であり、GPCによる分子量分布において第1の樹脂成分の含有比率は22.0質量%であり、第2の樹脂成分の含有比率は78.0質量%であった。粉体塗料粒子Iの体積基準メディアン径は6.5μm、CV値は21.1%であった。
<比較例1>
〔粉体塗料Jの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Jを作製した。
(多層樹脂微粒子Jの作製)
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子J1の作製
実施例1の第1段階の重合の際の重合開始剤である過硫酸カリウムの量を8質量部から10質量部に、また連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン量を8質量部使用することに変更した以外は、実施例1の第1段階の重合と同じ手順で、樹脂微粒子J1(コア部;第1層)の分散液(樹脂微粒子J1が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔J1〕)を作製した。前記樹脂微粒子J1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ4.0万であった。樹脂微粒子分散液〔J1〕を構成する樹脂微粒子J1の体積平均粒径は82nmであった。
(2)第2段階の重合による樹脂微粒子J2の作製
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、上記の樹脂微粒子分散液〔J1〕を固形分換算で300質量部と、下記表14の組成の単量体混合液〔j2〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
上記単量体混合液〔j2〕は、下記表14の組成をもつもので、液温を80℃に加温して、硬化剤であるεカプロラクタムブロックイソシアネートを溶解させている。
続いて、上記乳化粒子分散液中に、重合開始剤である過硫酸カリウム3質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃にして1時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、樹脂微粒子J2の分散液(樹脂微粒子J1表面に第2段階の重合により樹脂(第2層)が被覆された2層構造を有する樹脂微粒子J2が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔J2〕)を作製した。樹脂微粒子分散液〔J2〕を構成する樹脂微粒子J2の体積平均粒径は143nmであった。
なお、樹脂成分の分子量の測定を目的として、上記表14の単量体混合液〔j2〕から硬化剤を除いた組成とした下記表15の単量体組成で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第2段階の重合時と同じ条件とした)をして重合し、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子J2の第2層(樹脂成分)の重量平均分子量は3万であることを確認した。
(3)第3段階の重合による樹脂微粒子J3の作製
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔J2〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表16の組成の単量体混合液〔j3〕を1時間かけて滴下した。
上記単量体混合液〔j3〕を滴下終了後、上記反応容器内の液温を80℃の温度下で2時間加熱、撹拌して重合反応を行った後、28℃まで冷却して、樹脂微粒子J3の分散液(樹脂微粒子J2の表面に第3段階の重合により樹脂(第3層)が被覆された3層構造を有する樹脂微粒子J3が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔J3〕)を作製した。得られた樹脂微粒子分散液〔J3〕中の樹脂微粒子J3を多層樹脂微粒子Jaとし、樹脂微粒子分散液〔J3〕を多層樹脂微粒子Ja分散液とする。多層樹脂微粒子Jaの体積平均粒径は184nmであった。
なお、上記表16の単量体混合液〔j3〕で、第1段階の重合時と同じ操作(但し、開始剤溶液、単量体混合液滴下時からその後の重合反応終了時までの液温(重合温度)及び重合時間は第3段階の重合時と同じ条件とした)をして重合し、得られた樹脂微粒子の重量平均分子量をGPC法で測定することにより、樹脂微粒子J3(多層樹脂微粒子J)の第3層(樹脂成分)の重量平均分子量は1.6万であることを確認した。
これ以降の「粉体塗料粒子の形成(凝集・融着工程)」については、実施例1と同じように操作し、多層樹脂微粒子Jaを凝集・融着させることにより、粉体塗料Jを構成する粉体塗料粒子Jを作製した。
得られた粉体塗料粒子Jの重量平均分子量をGPC法で測定したところ、3.0万であり、GPCの分子量分布における第1の樹脂成分の、バインダー樹脂全体に占める割合(含有比率)は0質量%であり、第2の樹脂成分の、バインダー樹脂全体に占める割合(含有比率)は100質量%であった。粉体塗料粒子Jの体積基準メディアン径は6.2μm、CV値は19.2%であった。
<比較例2>
(母体粒子K3の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、下記表17の化合物を含有する単量体混合液〔k1〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
上記単量体混合液〔k1〕は、下記表17の化合物を含有するもので、液温を80℃に加温して、硬化剤であるεカプロラクタムブロックイソシアネートを溶解させている。
続いて、上記乳化粒子分散液中に、重合開始剤である過硫酸カリウム8質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃で1時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、樹脂微粒子K1(コア部;第1層)の分散液(樹脂微粒子K1が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔K1〕)を作製した。前記樹脂微粒子K1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ30000であった。樹脂微粒子分散液〔K1〕を構成する樹脂微粒子K1の体積平均粒径は160nmであった。
この樹脂微粒子分散液〔K1〕を樹脂微粒子K1分散液として、該樹脂微粒子K1分散液を用いて、実施例1と同じように、凝集し融着工程まで同様の操作を行い、母体粒子(融着粒子;融着物)K2を含有する融着樹脂粒子K2分散液を得た。
上記工程を経て作製した母体粒子K2を含有する融着樹脂粒子K2分散液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、母体粒子(融着粒子;融着物)K2のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄し、含水率30%の母体粒子K3を作製した。
(付着被覆用粒子L1の作製)
攪拌装置、温度調節計、還流管を備えた反応容器に、脱イオン水300質量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.2質量部を加え、反応容器内の液温を80℃に昇温した。これに重合開始剤である過硫酸カリウム1質量部を添加した後、窒素雰囲気下で2時間かけて以下の表18に示す混合物〔l1〕を滴下した。滴下後終了後、さらに同温度にて1時間保持し反応を終了した。
以上の重合反応により、樹脂微粒子(付着被覆用粒子)L1の分散液〔L1〕を作製した。この樹脂微粒子L1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ、4.0万であった。樹脂微粒子(付着被覆用粒子)分散液〔L1〕を構成する樹脂微粒子(付着被覆用粒子)L1の体積平均粒径は145nmであった。
(粉体塗料粒子M3の作製)
次に、スパイラフローSFC−15型(フロイント産業株式会社製)の転動流動層内に、上記で得られた母体粒子K3を154質量部仕込み、50℃の温風を送り、母体粒子K3が転動するように気流量を調節した後、母体粒子K3に対し固形分比にして2重量%の樹脂微粒子(付着被覆用粒子)L1分散液のエマルション10質量部を間欠的にスプレーした。スプレー後、母体粒子K3と樹脂微粒子(付着被覆用粒子)L1に含まれる水が蒸発するまで温風を送り乾燥させた。その後、ヘンシェルミキサーによる解砕を行い母体粒子K3の表面に樹脂微粒子(付着被覆用粒子)L1を保持した表面改質粉体塗料粒子M3を得た。粉体塗料粒子M3の体積基準メディアン径は6.6μm、CV値は21.8%であった。
<比較例3>
[粉体塗料O1の作製]
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)O1を作製した。
(単層樹脂微粒子N1の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌して界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度を80℃に昇温した。昇温後、この溶液に、下記化合物を含有する単量体混合液[m1]を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液[m2]を調製した。なお、単量体混合液[m1]は、下記の組成からなるものであり、80℃に加温してεカプロラクタムブロックイソシアネートを溶解させている。
続いて、上記乳化粒子分散液[m2]中に、過硫酸カリウム5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、80℃で1時間加熱、撹拌して重合反応を行うことにより、樹脂微粒子分散液[N1]を作製した。この後、実施例1と同じ手順で凝集及び融着を行って比較例3の粉体塗料O1を構成する粉体塗料粒子O1を得た。得られた粉体塗料粒子O1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ6.0万であり、GPCによる分子量分布における分子量5万以上の第1の樹脂成分のバインダー樹脂全体に占める含有比率は2.5質量%、分子量5万未満の第2の樹脂成分のバインダー樹脂全体に占める含有比率は97.5質量%であった。粉体塗料粒子O1の体積基準メディアン径は6.1μm、CV値は18.9%であった。
実施例1〜9及び比較例1〜3で得られた粉体塗料(粉体塗料粒子)の粒子構成を表20に示し、各層の分子量一覧を表21に示す。なお、表21に比較例2がないのは、比較例2は、多層構造の樹脂微粒子でなく、各層の分子量がないためである。
<評価方法>
・硬化時のレベリング性確認(塗膜の表面状態)
被塗装物であるAl基板上に、実施例1〜9ないし比較例1〜3で得られた粉体塗料(粉体塗料粒子)を用いて、厚さ30μmの粉体塗料粒子層を形成後、180℃のホットプレート上で20分加熱して、各実施例および比較例毎にそれぞれの硬化塗膜を作製した。硬化後の塗膜の表面状態を10倍のルーペを用いて目視観察した。判断基準は以下の通りである。得られた結果を表20に示す。
◎:全体的に均一に平滑性に優れ特に良好
○:平滑性が良好
△:一部凹凸感が見られるが実用上問題ない
×:全体的に凹凸感が見られる(実用上問題あり)。
・耐熱保管性
サンプル管に実施例1〜9ないし比較例1〜3で得られた粉体塗料(粉体塗料粒子)試料をそれぞれ0.5g計量し、タッピングデンサーで600回タッピングを行った。その後サンプル管を35%RH、55℃下で3日間放置した。次いで48メッシュの篩上に試料を入れ、10秒振動後、メッシュ上に残存した試料の重量を記録した。初めの試料の重量とメッシュ上に残存した試料の重量比率から粉体塗料(粉体塗料粒子)の凝集率(質量%)を算出した。判断基準は以下の通りである。得られた結果を表20に示す。
◎:凝集率0質量%以上10質量%未満;耐熱保管性が特に良好
○:凝集率10質量%以上20質量%未満;耐熱保管性が良好
△:凝集率20質量%以上50質量%未満;耐熱保管性として実用上問題ない
×:凝集率50質量%以上;耐熱保管性として実用上に問題がある。
上記表20において、比較例2は、他の実施例や比較例のように、コア粒子(第1層)の表面に樹脂の被覆層(第2層)が形成された多層樹脂粒子を凝集・融着して得られたものではなく、母材粒子の表面に付着被覆用粒子を付着させて得られた粉体塗料粒子であり、多層樹脂微粒子には含まれないため、単に「コアシェル構成」とした。
上記表20、21に記載のとおり、実施例1〜9の粉体塗料は、耐熱保管性と塗膜のレベリング性を両立できることが理解できる。
一方、比較例1、3の粉体塗料は、耐熱保管性が悪く、保管時の凝集率が50質量%以上であった。
また、比較例2の粉体塗料は、塗膜状態が悪く、全体的に凹凸感が見られた。
実施例1〜9の粉体塗料の中では、表1の実施例1〜3、5と実施例8〜9との対比から明らかなように、GPC法で測定することにより算出される分子量における、分子量50,000以上の樹脂成分のバインダー樹脂全体に対する含有比率を少なくとも3.0質量%の範囲、好ましくは3.0質量%〜25質量%とすることで、耐熱保管性と塗膜形成の双方により優れた効果を発現し得ることが理解できる。
また、表20の実施例1〜3、5と実施例7との対比から明らかなように、重量平均分子量10万以上の高分子量体を含有する層を有する多層樹脂微粒子を用いて形成した粉体塗料の方が、耐熱保管性と塗膜形成の双方により優れた効果を発現し得ることが理解できる。
また、表20の実施例1〜3、5と実施例6との対比、及び、実施例1〜3と実施例5との対比から明らかなように、重量平均分子量10万以上の高分子量体を含有する層が最外層より内側の内層、より好ましくはコア部(第1層)にある多層樹脂微粒子を用いて形成した粉体塗料の方が、耐熱保管性と塗膜形成の双方により優れた効果を発現し得ることが理解できる。
更に、表20の実施例1〜3、5と実施例4との対比から明らかなように、重量平均分子量10万以上の高分子量体を含有する多層樹脂微粒子は、2層構造よりも3層構造のものを用いて形成した粉体塗料の方が、耐熱保管性と塗膜形成の双方により優れた効果を発現し得ることが理解できる。
11 多層樹脂微粒子、
11a コア粒子(第1層)、
11b 第2層、
11c 第3層、
13 硬化剤、
15 凝集粒子、
16 着色剤、
17 樹脂粒子(粉体塗料粒子)。

Claims (15)

  1. バインダー樹脂と該バインダー樹脂を硬化させるための硬化剤とを含む樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料であって、
    前記バインダー樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、前記樹脂粒子は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有することを特徴とする熱硬化型粉体塗料。
  2. 前記樹脂粒子は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上25質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型粉体塗料。
  3. 前記樹脂粒子は、前記バインダー樹脂から少なくとも構成される樹脂微粒子を含む凝集体の融着物である請求項1又は2に記載の熱硬化型粉体塗料。
  4. 前記樹脂微粒子は、複数の層を備える多層樹脂微粒子であり、
    前記複数の層は、第1のバインダー樹脂を含む第1層と、前記第1のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第2のバインダー樹脂を含む第2層と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の熱硬化型粉体塗料。
  5. 前記樹脂微粒子は、前記第1のバインダー樹脂として、重量平均分子量が10万以上の樹脂を含むことを特徴とする請求項4に記載の熱硬化型粉体塗料。
  6. 前記樹脂微粒子は、前記第2のバインダー樹脂として、重量平均分子量が2万以下の樹脂を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の熱硬化型粉体塗料。
  7. 前記複数の層は、前記第2のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第3のバインダー樹脂を含む第3層を備えることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
  8. 前記第3のバインダー樹脂は、前記第1及び第2のバインダー樹脂のいずれとも重量平均分子量が異なることを特徴とする請求項7に記載の熱硬化型粉体塗料。
  9. 前記複数の層において、内側の層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量が、外側の層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量よりも大きいことを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
  10. 前記複数の層のうち少なくとも一つの層に、前記硬化剤を含む請求項4〜9のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
  11. バインダー樹脂と硬化剤とを含む樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料の製造方法において、
    前記バインダー樹脂を含む樹脂微粒子を形成する段階と、
    前記樹脂微粒子を凝集させて凝集粒子を形成する段階と、
    前記凝集粒子を融着させて樹脂粒子を形成する段階と、
    前記樹脂微粒子の形成から前記樹脂粒子の形成までのいずれかの段階で前記硬化剤を添加する段階と、を含み、
    前記樹脂粒子は、GPC法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000以下の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有することを特徴とする熱硬化型粉体塗料の製造方法。
  12. 前記樹脂粒子は、前記分子量50,000以上の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上25質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項11に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
  13. 前記樹脂微粒子を水系媒体中に分散させ、前記水系媒体中で前記樹脂微粒子を複数凝集させて凝集粒子を形成することを特徴とする請求項11又は12に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
  14. 前記樹脂微粒子を形成する段階において、複数回の重合反応を段階的に行う事により、前記樹脂微粒子として複数の層を備える多層樹脂微粒子を形成することを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
  15. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱硬化型粉体塗料を被塗装物に塗布して得られることを特徴とする塗装物。
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