JP2015131930A - 粉体塗料、その製造方法、および塗装物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バインダー樹脂と該バインダー樹脂を硬化させるための硬化剤13とを含む樹脂粒子11から少なくとも構成される粉体塗料であって、前記バインダー樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分11aと、分子量50,000未満の第2の樹脂成分11bとを少なくとも含有し、樹脂粒子11は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有し、さらに第2のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第3のバインダー樹脂を含む第3層11cを備えることをすることを特徴とする熱硬化型粉体塗料17。
【選択図】図1
Description
前記バインダー樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、前記樹脂粒子は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有することを特徴とする熱硬化型粉体塗料。
前記複数の層は、第1のバインダー樹脂を含む第1層と、前記第1のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第2のバインダー樹脂を含む第2層と、を含むことを特徴とする上記(3)に記載の熱硬化型粉体塗料。
前記バインダー樹脂を含む樹脂微粒子を形成する段階と、
前記樹脂微粒子を凝集させて凝集粒子を形成する段階と、
前記凝集粒子を融着させて樹脂粒子を形成する段階と、
前記樹脂微粒子の形成から前記樹脂粒子の形成までのいずれかの段階で前記硬化剤を添加する段階と、を含み、
前記樹脂粒子は、GPC法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000以下の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有することを特徴とする熱硬化型粉体塗料の製造方法。
・カラム:TSKguardcolumm+TSKgelSuperHZM−M 3連(東ソー社製)
・カラム温度:40℃
・溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:0.2ml/分
・検出器:屈折率検出器(RI検出器)
粉体塗料粒子の分子量は、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンは10点用いる。分子量50,000以上の第1の樹脂成分及び分子量50,000未満の第2の樹脂成分の含有比率は、積分分子量分布曲線を用いて求められる。なお、溶媒に不溶な成分は上記フィルターによって除かれるが、溶媒に溶解する、樹脂以外の成分が含まれる場合は、分子量分布曲線において、樹脂に由来する部分のみを使って、上記樹脂成分の含有比率を求めるようにする。
粉体塗料を構成する樹脂粒子は、バインダー樹脂、及び、塗装を行う際にバインダー樹脂を硬化させるための硬化剤を含む。上述した樹脂微粒子の凝集体の融着物で樹脂粒子を構成することにより、樹脂微粒子を構成する樹脂成分を樹脂粒子全体にわたって均一に分布させやすくなるというメリットがある。
樹脂粒子の体積基準メディアン径は、より良好な塗膜を得られることから、4.5〜30μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。本明細書においては、体積基準メディアン径は、「コールターマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)」で測定された値を用いる。
バインダー樹脂は、粉体塗料の塗膜形成を担う役割を果たし、また、場合により、着色剤同士を結び付ける。バインダー樹脂は、重合性単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。バインダー樹脂は、粉体塗料としての樹脂粒子について、硬化前の状態で、GPC法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを含み、第1の樹脂成分を、バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有するものを用いる。好ましくは、上記第1の樹脂成分のバインダー樹脂の全質量に対する含有比率が3.0質量%〜25質量%、好ましくは3.0質量%〜22質量%、より好ましくは5.0質量〜20質量%、さらに好ましくは7.0質量%〜20質量%の範囲で含むようにする。具体的には、後述するように、樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂を適宜選択することにより、粉体塗料のバインダー樹脂として上述の特性を示すものを得ることができる。このようなバインダー樹脂は、後述するように、高分子量のバインダー樹脂とそれよりも低分子量のバインダー樹脂とを含む樹脂微粒子を用いるとともに、その調製時に、各樹脂成分を調製するための、重合性単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度等の製造条件や、各樹脂成分の組合せを調整することによって得ることができる。
バインダー樹脂の粉体塗料中の含有量は、塗膜形成性、その他の添加剤との含有量等を考慮して適宜設定されるが、粉体塗料中、50〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましい。バインダー樹脂の粉体塗料中の含有量が、50質量%以上であれば、粉体塗料粒子中に充分に高分子量の樹脂成分が含まれている事になるため耐熱保管性の低下をより効果的に抑制することができ、尚且つ良好な塗膜形成性を発現することができる点で優れている。上記バインダー樹脂の粉体塗料中の含有量が95質量%以下であれば、硬化剤によるバインダー樹脂間の架橋が充分に行われるため、塗膜強度の低下をより効果的に抑制する事ができ、尚且つ優れた耐熱保管性を実現することができる点で優れている。
粉体塗料は、塗膜形成温度で加熱することによって、上記特性を持つバインダー樹脂が樹脂粒子に含まれる硬化剤により架橋されることが好ましい。したがって、バインダー樹脂としては、硬化剤と反応する置換基を有する樹脂を用いることが好ましい。かような樹脂を用いることによって、塗膜形成時の加熱によりバインダー樹脂が架橋されて硬化反応が効率的に進行する。なお、硬化剤と反応する置換基を有する樹脂は、樹脂微粒子が多層樹脂微粒子の場合には、多層樹脂微粒子中の硬化剤を含有する層を構成するバインダー樹脂に少なくとも用いられることが好ましい。また、樹脂微粒子が単層の樹脂微粒子の場合には、硬化剤と反応する置換基を有する樹脂をバインダー樹脂として、その内部に硬化剤を含有することが好ましい。
上記したバインダー樹脂が有する硬化剤と反応する置換基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミダゾール基、チオール基、酸無水物等が挙げられる。
硬化剤と反応する置換基を有するバインダー樹脂は、上記重合性単量体として、硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体を1種類以上使用することによって得られる。硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシメチルアクリレート、カルボキシフェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2ヒドロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−ヒドロキシ−3−フェイキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、イミダゾール−4−アクリル酸、3−(1H−イミダゾール−4−イル)アクリル酸エチル、エテンチオール、プロピレンチオール等が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の全重合性単量体中の含有量は特に限定されるものではないが、硬化剤との反応を考慮して、硬化剤を含有する層(または単層樹脂微粒子)を構成する重合性単量体100質量部に対して、硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の量が2〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
重合性単量体としては、塗膜形成の観点から、上記硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体以外の重合性単量体を用いてもよい。硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体以外の重合性単量体としては、例えば、下記のビニル系重合性単量体が挙げられる。これらビニル系重合性単量体は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等が挙げられる。
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等が挙げられる。
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
塗料を保管する際の耐熱保管性の点から、各重合で得られる樹脂微粒子の各層(1層の場合を含む)のバインダー樹脂のTgは、25〜70℃であることが好ましく、30〜60℃であることがより好ましい。なお、本明細書において、バインダー樹脂のTgは、最終的に得られる粉体塗料について、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(島津製作所製:DSC−60A)を用いて測定した値で示す。この装置(DSC−60A)の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間保持し、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間保持し、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行い、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析を行い、オンセット温度をTgとする。
樹脂粒子は、バインダー樹脂を硬化させるための硬化剤を含む。樹脂微粒子に硬化剤を含んでいてもよいし、樹脂微粒子とともに凝集させてから融着してもよい。多層樹脂微粒子の場合には、最外層よりも内側の層に硬化剤を含み、最外層には硬化剤を含まないのが望ましい。
硬化剤としてはTGIC等のエポキシ基を含有する化合物、HAA(βヒドロキシアルキルアミド)、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。特にブロックイソシアネート化合物が好ましい。ブロックイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ポリメリックMDI、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)=ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族、脂環式又は芳香族イソシアネートをフェノール類、ε−カプロラクタム類、アルコール類等でブロックしたものが挙げられる。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
硬化剤の含有量は、塗膜形成時に硬化反応が適切に進行するよう適宜設定されるが、粉体塗料100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることが好ましい。
硬化剤の含有位置は、特に限定されるものではなく、樹脂微粒子を凝集・融着させて樹脂粒子を生成する場合は、樹脂微粒子の生成から樹脂粒子の生成までのいずれかの工程で添加すればよい。多層樹脂微粒子の場合には、最外層よりも内層に含まれているのが望ましい。また、多層樹脂微粒子中の複数層にまたがって硬化剤が含有されていてもよい。好ましくは、硬化剤は、多層樹脂微粒子中の最内層に含まれる、および/または、最外層に隣接する内層(外から2番目の層)に含有されていることが好ましい。こうすることで、図1に示すように、個々の多層樹脂微粒子11内に硬化剤13を内包させることができる。この多層樹脂微粒子11を凝集・融着して樹脂粒子(粉体塗料粒子)17を得たときに、粉体塗料粒子17内で硬化剤13を均一に存在させることができる。このため、塗膜硬化時の塗膜収縮が起きにくく、塗膜強度が高いものとなる点で優れている。
上述したように、樹脂微粒子を複数凝集させた凝集物を融着させて樹脂粒子を得ることができる。以下、樹脂微粒子について説明する。
樹脂微粒子は、上記した特徴を持つバインダー樹脂および硬化剤を含み、1層から構成される単層樹脂微粒子又は多層から構成される多層樹脂微粒子とすることができる。樹脂微粒子を複数層とすることで、樹脂微粒子内において、硬化剤や特定の重量平均分子量を有するバインダー樹脂の存在位置を制御することができる。例えば、最外層より内側の層に、重量平均分子量が最も大きいバインダー樹脂を含有させることができる。また、硬化剤を最外層より内側の層に含有させることができる。多層樹脂微粒子を用いる場合、該多層樹脂微粒子を構成する層の数は特に限定するものではないが、生産効率や、効果の飽和を考慮すると、2〜10層であることが好ましく、2〜5層であることがより好ましく、2または3層であることがより好ましい。このような多層樹脂微粒子は、後述の製造方法の欄で述べるように、重合性単量体の重合を複数回にわたって行うことによって、得ることができる。
樹脂微粒子の体積平均粒径は80〜300nmであることが好ましく、80〜200nmであることがより好ましい。かような範囲に樹脂微粒子の体積平均粒径があることで、硬化剤の分散性がより良好となり、塗膜硬化がより均一となる点で優れている。同様に、バインダー樹脂の分散性がより良好となり、樹脂微粒子、ひいては粉体塗料粒子全体に、バインダー樹脂として、上述した第1及び第2の樹脂成分を均一に分布することができる点でも優れている。ここで、樹脂微粒子の体積平均粒径は、樹脂微粒子の分散液中の粒子の粒子径を測定することによって得られる。本明細書において、樹脂微粒子の体積平均粒径は、レーザー回析式粒度分布測定装置を用いた方法で測定された値を用いる。
また、多層樹脂微粒子を用いる場合、該多層樹脂微粒子を構成する各層の厚さは適宜設定されるが、第1段階の重合で形成されるコア部である第1層の体積平均粒径は、40〜90nmであることが好ましく、50〜80nmであることがより好ましい。コア部の体積平均粒径は、製造段階の分散液中の粒子の粒径を検出することによって測定することができる。
上述した分子量分布を示すバインダー樹脂を含む粉体塗料を得るために、高分子量のバインダー樹脂とそれより低分子量のバインダー樹脂とを含む樹脂微粒子を用いて、樹脂粒子を作製することが望ましい。こうすることで、主として高分子量のバインダー樹脂に由来して上記第1の樹脂成分を生成させ、また、主として低分子量のバインダー樹脂に由来して上記第2の樹脂成分を生成させることができる。この場合、多層樹脂微粒子の各層を構成するバインダー樹脂として、分子量の異なるものを用いたり、互いに分子量の異なるバインダー樹脂で構成される単層構成の樹脂微粒子を複数種類組み合わせて用いたりすることができる。前者の場合、各樹脂成分を、樹脂粒子全体にわたってより均一に分布させやすくなる点で好ましい。また、いずれの場合も、分布量分布が広い単独の樹脂で粉体塗料粒子を作製するのに比べて製造が容易になる。さらに、いずれの場合も、樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂として、適切な重量平均分子量を持つものを選択する。具体的には、塗膜形成時の良好なレベリングによる塗膜平滑性確保の点から、樹脂微粒子を構成するバインダー樹脂の重量平均分子量は、1万〜30万であることが好ましく、2万〜25万であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができる。
樹脂粒子には、必要に応じて着色剤が含有されていてもよい。樹脂粒子に含有される着色剤としては、一般の粉体塗料で使用される顔料、染料、及び、これらの混合物を用いることができる。光輝顔料等であってもよい。無着色の透明なクリア塗膜を形成する場合に用いられる樹脂粒子の場合には、着色剤は不要である。
黒色の着色剤としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も使用可能である。
樹脂粒子中の着色剤の含有量は、適宜設定すればよいが、着色剤を用いる場合には、粉体塗料100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部の範囲で用いる。かような範囲であると着色剤の機能を確保できる。
また、着色剤の大きさとしては、体積平均粒子径で、10〜300nmであることが好ましい。
本実施形態の粉体塗料は、必要に応じて粉体塗料に通常用いられる添加剤を含んでいても構わない。添加剤としては、ジメチルシリコーンやメチルシリコーンなどのシリコーン類およびアクリルオリゴマーなどの表面調整剤、ベンゾインやベンゾイン誘導体などのベンゾイン類に代表される発泡防止剤、硬化促進剤(または硬化触媒)、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤、紫外線吸収剤、アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等の硬化促進剤(または硬化触媒)、体質顔料や防錆顔料などを例示することができる。
他の添加剤の含有量は、所望の性能を発揮させるために適宜設定されるが、粉体塗料100質量部に対して、通常0〜10質量部程度である。
本発明の粉体塗料の製造方法の好適な一実施形態は、樹脂微粒子を得る工程(1)と、得られた樹脂微粒子を凝集し、融着させることにより樹脂粒子を得る工程(2)と、を含む。より好適な一実施形態としては、上記樹脂微粒子を得る工程(1)及び樹脂粒子を得る工程(2)として、高分子量のバインダー樹脂とそれより低分子量のバインダー樹脂とを含有する樹脂微粒子を形成する段階(a)と、水系媒体中に分散させた、複数の樹脂微粒子を凝集させて凝集粒子を形成する段階(b)と、凝集粒子を加熱して融着させて樹脂粒子を形成する段階(c)と、樹脂微粒子の形成から樹脂粒子の形成までのいずれかの段階で硬化剤(更に必要に応じて用いられる着色剤)を添加する段階(d)と、を含む。樹脂粒子は、GPC法で測定することにより算出される分子量分布における、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを含み、第1の樹脂成分を、バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有する。本実施形態の製造方法では、樹脂微粒子、特に2〜3層構造の樹脂微粒子を用いて樹脂粒子を生成することにより、樹脂微粒子の各層の分子量の調節がし易く、生成される樹脂粒子の上記第1及び第2の樹脂成分を含有させ易く、更に当該第1及び第2の樹脂成分の、バインダー樹脂全体に対する含有比率を調整しやすい点でも優れている。
上記したような、高分子量のバインダー樹脂とそれより低分子量のバインダー樹脂とを含有する樹脂微粒子を形成する方法としては、多層樹脂微粒子の少なくとも1層を高分子量の樹脂成分を第1のバインダー樹脂として含む層とし、多層樹脂微粒子の残りの層を上記高分子量の樹脂成分より低分子量の樹脂成分を第2のバインダー樹脂として含む層とする。そして重合性単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度といった重合条件を適宜調節(制御)する。さらに、各層の厚みを適宜設定することで、得られる樹脂粒子におけるバインダー樹脂が上記第1及び第2の樹脂成分を含有し、延いては、バインダー樹脂全体に対する含有比率が適切に設定されたものとすることができる。また、高分子量のバインダー樹脂とそれより低分子量のバインダー樹脂とを(別々に)含有する単層の樹脂微粒子を形成する方法としては、高分子量のバインダー樹脂を含む単層の樹脂微粒子とそれより低分子量のバインダー樹脂を含む単層の樹脂微粒子とを別々に形成し、それぞれの含有比率を適宜調整して混合したものを凝集・融着に用いることで、得られる樹脂粒子における、上記第1及び第2の樹脂成分を含むバインダー樹脂を構成することができる。上述した樹脂微粒子の製造方法としては、小径で均一な粒度分布を有する粒子を得やすく、また、小粒径の多層樹脂微粒子を製造でき、また簡便に多層構造とすることができることから、重合法による製造方法が好ましい。重合法としては、具体的には、小粒径の多層樹脂微粒子が得られることから、水系媒体中に重合性単量体を添加して重合を行う、懸濁重合や乳化重合が好ましく、より好ましくは乳化重合法で製造することが好ましい。高分子量のバインダー樹脂としては、分子量が10万以上、より好ましくは10〜20万のものを用いる。低分子量のバインダー樹脂としては、分子量が10万未満、より好ましくは分子量が1万以上10万未満、より好ましくは、1〜2万のものを用いる。
第1段階の重合によってコア部の第1層が形成される。
なお、後述する第2段階(更には第3段階以上)の重合により、第2層以上に高分子量のバインダー樹脂を含むようにする場合にも、上記と同様にして適宜調節(制御)すればよい。同様に、第2層以上に低分子量のバインダー樹脂を含むようにする場合にも、上記と同様にして適宜調節(制御)すればよい。即ち、第2層については、第1層を形成した後の粒子、第3層については第2層までを形成した後の粒子に、その粒子の最外層に形成される。各層の分子量は、単量体の組成比、重合開始剤量、連鎖移動剤量、反応時温度によってほぼ決定されるため、本実施形態における第2層、第3層(更にはそれ以降)の各層毎の分子量は、単層で樹脂微粒子を形成した場合に所望の分子量を得られる重合条件を、そのまま第2層や第3層(更にはそれ以降の層)の重合時に適用する事で、狙いの分子量を持つ層が形成できる。
「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
水系媒体の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜800質量部であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
乳化重合法による重合では、通常、界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、以下に示すイオン性界面活性剤が好ましいものとして使用できる。イオン性界面活性剤には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等がある。
分散した重合性単量体の液滴の凝集を防ぐために、分散安定剤が添加されてもよい。分散安定剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等のものがある。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等、一般に界面活性剤として使用されるものも分散安定剤として使用できる。これらの分散安定剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
バインダー樹脂の分子量調整のために、公知の連鎖移動剤を用いることもできる。具体的には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等がある。これらの連鎖移動剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
重合工程においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行うことが好ましい。重合性単量体を重合する際に用いられる重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知の重合開始剤を使用することができる。乳化重合法で樹脂微粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等がある。乳化重合法を好適に使用する観点からは、過硫酸カリウムがより好ましい。
次いで、第2段階の重合を行う。第2段階の重合によってコア部の外に第2層目の樹脂層が形成される。多層樹脂微粒子が2層から構成される場合には、第2段階の重合で重合は終了となる。
多層樹脂微粒子が3層以上の場合には、第3段階以降の重合がさらに行われる。この際用いられる重合性単量体としては、上記バインダー樹脂の欄に記載した重合性単量体を用いることができる。また、用いられる重合性単量体は、第1段階の重合で用いられた第1の重合性単量体および第2段階の重合で用いられた第2の重合性単量体と、同一の種類であっても異なる種類であってもよいが、融着時の相溶性や生産性の観点からは同一の種類であることが好ましい。また、用いられる重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤等も第1段階および/または第2段階の重合と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
本実施形態では、最外層よりも内側の層に高分子量の第1のバインダー樹脂及び硬化剤が含まれるのが望ましい。したがって、第1のバインダー樹脂を含有する層を形成するときに、対象となる層について、重合性単量体や重合条件、添加剤(連鎖移動剤など)を適宜調節(制御)することによって、高分子量の樹脂成分が最外層よりも内側の層に含有された多層樹脂微粒子を形成することができる。また硬化剤を含有させたい層を形成するときに硬化剤を重合性単量体とともに添加することによって、硬化剤が最外層よりも内側の層に含有された多層樹脂微粒子を形成することができる。硬化剤おいては粉体塗料粒子の耐熱保管性を考える場合、なるべく粒子の表面に露出させないことが望ましい。即ち、上記したように多層樹脂微粒子は2〜3層が好ましいことから、高分子量体成分や硬化剤は、通常、最内層に含まれる、および/または、最外層に隣接する層に含まれることが好ましいといえる。
(凝集工程;凝集粒子形成段階)
次いで、水系媒体中に凝集剤を添加して前述の樹脂微粒子を凝集させる。この工程では、樹脂微粒子を含有する水系媒体中に、塩化マグネシウム等に代表されるアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の凝集剤を添加して、前記樹脂微粒子を凝集させる。次いで、水系媒体を前記樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱して凝集を進行させ、同時に凝集させた樹脂粒子同士を融着させる。そして、凝集の進行により樹脂粒子の大きさが目標になったときに、食塩等の塩を添加して凝集を停止させる(段階(b))。
使用可能な凝集剤は特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記で得られた凝集粒子を融着することによって樹脂粒子が得られる。この工程で、上記で得られた凝集粒子を加熱して融着させて樹脂粒子を形成する(段階(c))。凝集粒子の融着方法は特に限定されるものではないが、容易な操作で確実に融着が行われることから、融着は加熱により行われることが好ましい。
融着後に冷却し、樹脂粒子を得る。冷却の工程においては、0〜45℃まで冷却することが好ましい。
この濾過・洗浄工程では、冷却された樹脂粒子の分散液から、水等の溶媒を用いて、樹脂粒子を固液分離して樹脂粒子を濾別する濾過処理と、濾別された樹脂粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離および洗浄の方法としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。この濾過・洗浄工程においては適宜、pH調整や粉砕などを行ってもよい。このような操作は繰り返し行ってもよい。
この乾燥工程では、洗浄処理された樹脂粒子に乾燥処理が施され、乾燥した粉体からなる粉体塗料とすることができる。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理された粒子中のカールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。
上述した粉体塗料を、例えば、静電粉体スプレー又は摩擦帯電塗装機等による静電粉体塗装により被塗装物に付着させ、焼き付けを行うことにより、熱硬化された塗膜を有する塗装物を得ることができる。
(樹脂微粒子の体積平均粒径の測定方法)
樹脂微粒子の体積平均粒径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)で測定した。
〔粉体塗料Aの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Aを作製した。
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子A1の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部とイオン交換水3000質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温させた。
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、上記の樹脂微粒子分散液〔A1〕を固形分換算で40質量部と、下記表2の組成の単量体混合液〔a2〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔A2〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表4の組成の単量体混合液〔a3〕を1時間かけて滴下した。
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記表5に示す成分を投入し、撹拌した。
第2段階の重合の際に用いる樹脂微粒子分散液〔A1〕の添加量を固形分換算で、40質量部から28質量部に変更した以外は、実施例1と同じ手順で、粉体塗料Bを構成する粉体塗料粒子Bを作製した。
第2段階の重合の際に用いる樹脂微粒子分散液〔A1〕の添加量を固形分換算で、40質量部から76質量部に変更した以外は、実施例1と同じ手順で、粉体塗料Cを構成する粉体塗料粒子Cを作製した。
実施例4の粉体塗料Dを構成する粉体塗料粒子Dは、実施例1の第1層の部分が無くなり、第2段階以降から1層目として操作を開始し、第1層作製時の過硫酸カリウムの量を変更した例である。以下詳しく説明する。
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Dを作製した。
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子D1の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、下記の表6の組成の単量体混合液〔d1〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
(2)第2段階の重合による樹脂微粒子D2の作製
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔D1〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表7の組成の単量体混合液〔d2〕を1時間かけて滴下した。
〔粉体塗料Eの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Eを作製した。
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子E1の作製
実施例1の第1段階の重合の際の重合開始剤である過硫酸カリウムの量を8質量部から10質量部に、また連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン量を使用するように変更した以外は、実施例1の第1段階の重合と同じ手順で、樹脂微粒子E1(コア部;第1層)の分散液(樹脂微粒子E1が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔E1〕)を作製した。樹脂微粒子E1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ4.0万(重量平均分子量が10万未満の低分子量の成分)であった。樹脂微粒子分散液〔E1〕を構成する樹脂微粒子E1の体積平均粒径85nmであった。
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、上記の樹脂微粒子分散液〔E1〕を固形分換算で190質量部と、下記表8の組成の単量体混合液〔e2〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔E2〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表10の組成の単量体混合液〔e3〕を1時間かけて滴下した。
〔粉体塗料Fの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Fを作製した。
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子F1の作製
実施例1の第1段階の重合の際の重合開始剤である過硫酸カリウムの量を8質量部から10質量部に、また連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン量を8質量部使用することに変更した以外は、実施例1の第1段階の重合と同じ手順で、樹脂微粒子F1(コア部;第1層)の分散液(樹脂微粒子F1が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔F1〕)を作製した。前記樹脂微粒子F1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ4.0万(重量平均分子量が10万未満の低分子量の成分)であった。樹脂微粒子分散液〔F1〕を構成する樹脂微粒子F1の体積平均粒径は85nmであった。
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、上記の樹脂微粒子分散液〔F1〕を固形分換算で190質量部と、下記表11の組成の単量体混合液〔f2〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔F2〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム3質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表13の組成の単量体混合液〔f3〕を1時間かけて滴下した。
実施例4の第1段階の重合の際のn−オクチルメルカプタンを0.5質量部から5質量部に、第2段階の重合の際のn−オクチルメルカプタンを13質量部から9質量部に変更した以外は、実施例4と同じ手順で、粉体塗料Gを構成する粉体塗料粒子Gを作製した。
第2段階の重合の際に用いる樹脂微粒子分散液〔A1〕の添加量を固形分換算で、40質量部から13質量部に変更した以外は、実施例1と同じ手順で、粉体塗料Hを構成する粉体塗料粒子Hを作製した。
第2段階の重合の際に用いる樹脂微粒子分散液〔A1〕の添加量を固形分換算で、40質量部から96質量部に変更した以外は、実施例1と同じ手順で、粉体塗料Iを構成する粉体塗料粒子Iを作製した。
〔粉体塗料Jの作製〕
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)Jを作製した。
(1)第1段階の重合による樹脂微粒子J1の作製
実施例1の第1段階の重合の際の重合開始剤である過硫酸カリウムの量を8質量部から10質量部に、また連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタン量を8質量部使用することに変更した以外は、実施例1の第1段階の重合と同じ手順で、樹脂微粒子J1(コア部;第1層)の分散液(樹脂微粒子J1が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔J1〕)を作製した。前記樹脂微粒子J1の重量平均分子量をGPC法で測定したところ4.0万であった。樹脂微粒子分散液〔J1〕を構成する樹脂微粒子J1の体積平均粒径は82nmであった。
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、上記の樹脂微粒子分散液〔J1〕を固形分換算で300質量部と、下記表14の組成の単量体混合液〔j2〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
次に、上記反応容器内の上記樹脂微粒子分散液〔J2〕中に、重合開始剤である過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加した後、上記反応容器内の液温を80℃にして、下記表16の組成の単量体混合液〔j3〕を1時間かけて滴下した。
(母体粒子K3の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度(液温)を80℃に昇温、加熱した。昇温、加熱後、この界面活性剤溶液に、下記表17の化合物を含有する単量体混合液〔k1〕を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液を調製した。
攪拌装置、温度調節計、還流管を備えた反応容器に、脱イオン水300質量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.2質量部を加え、反応容器内の液温を80℃に昇温した。これに重合開始剤である過硫酸カリウム1質量部を添加した後、窒素雰囲気下で2時間かけて以下の表18に示す混合物〔l1〕を滴下した。滴下後終了後、さらに同温度にて1時間保持し反応を終了した。
次に、スパイラフローSFC−15型(フロイント産業株式会社製)の転動流動層内に、上記で得られた母体粒子K3を154質量部仕込み、50℃の温風を送り、母体粒子K3が転動するように気流量を調節した後、母体粒子K3に対し固形分比にして2重量%の樹脂微粒子(付着被覆用粒子)L1分散液のエマルション10質量部を間欠的にスプレーした。スプレー後、母体粒子K3と樹脂微粒子(付着被覆用粒子)L1に含まれる水が蒸発するまで温風を送り乾燥させた。その後、ヘンシェルミキサーによる解砕を行い母体粒子K3の表面に樹脂微粒子(付着被覆用粒子)L1を保持した表面改質粉体塗料粒子M3を得た。粉体塗料粒子M3の体積基準メディアン径は6.6μm、CV値は21.8%であった。
[粉体塗料O1の作製]
以下のようにして粉体塗料(粉体塗料粒子)O1を作製した。
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水1270質量部を投入し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌して界面活性剤溶液を作製し、反応容器内の溶液温度を80℃に昇温した。昇温後、この溶液に、下記化合物を含有する単量体混合液[m1]を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散処理して乳化粒子分散液[m2]を調製した。なお、単量体混合液[m1]は、下記の組成からなるものであり、80℃に加温してεカプロラクタムブロックイソシアネートを溶解させている。
・硬化時のレベリング性確認(塗膜の表面状態)
被塗装物であるAl基板上に、実施例1〜9ないし比較例1〜3で得られた粉体塗料(粉体塗料粒子)を用いて、厚さ30μmの粉体塗料粒子層を形成後、180℃のホットプレート上で20分加熱して、各実施例および比較例毎にそれぞれの硬化塗膜を作製した。硬化後の塗膜の表面状態を10倍のルーペを用いて目視観察した。判断基準は以下の通りである。得られた結果を表20に示す。
○:平滑性が良好
△:一部凹凸感が見られるが実用上問題ない
×:全体的に凹凸感が見られる(実用上問題あり)。
サンプル管に実施例1〜9ないし比較例1〜3で得られた粉体塗料(粉体塗料粒子)試料をそれぞれ0.5g計量し、タッピングデンサーで600回タッピングを行った。その後サンプル管を35%RH、55℃下で3日間放置した。次いで48メッシュの篩上に試料を入れ、10秒振動後、メッシュ上に残存した試料の重量を記録した。初めの試料の重量とメッシュ上に残存した試料の重量比率から粉体塗料(粉体塗料粒子)の凝集率(質量%)を算出した。判断基準は以下の通りである。得られた結果を表20に示す。
○:凝集率10質量%以上20質量%未満;耐熱保管性が良好
△:凝集率20質量%以上50質量%未満;耐熱保管性として実用上問題ない
×:凝集率50質量%以上;耐熱保管性として実用上に問題がある。
11a コア粒子(第1層)、
11b 第2層、
11c 第3層、
13 硬化剤、
15 凝集粒子、
16 着色剤、
17 樹脂粒子(粉体塗料粒子)。
Claims (15)
- バインダー樹脂と該バインダー樹脂を硬化させるための硬化剤とを含む樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料であって、
前記バインダー樹脂は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000未満の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、前記樹脂粒子は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有することを特徴とする熱硬化型粉体塗料。 - 前記樹脂粒子は、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上25質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型粉体塗料。
- 前記樹脂粒子は、前記バインダー樹脂から少なくとも構成される樹脂微粒子を含む凝集体の融着物である請求項1又は2に記載の熱硬化型粉体塗料。
- 前記樹脂微粒子は、複数の層を備える多層樹脂微粒子であり、
前記複数の層は、第1のバインダー樹脂を含む第1層と、前記第1のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第2のバインダー樹脂を含む第2層と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の熱硬化型粉体塗料。 - 前記樹脂微粒子は、前記第1のバインダー樹脂として、重量平均分子量が10万以上の樹脂を含むことを特徴とする請求項4に記載の熱硬化型粉体塗料。
- 前記樹脂微粒子は、前記第2のバインダー樹脂として、重量平均分子量が2万以下の樹脂を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の熱硬化型粉体塗料。
- 前記複数の層は、前記第2のバインダー樹脂とは異なる重量平均分子量を有する第3のバインダー樹脂を含む第3層を備えることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
- 前記第3のバインダー樹脂は、前記第1及び第2のバインダー樹脂のいずれとも重量平均分子量が異なることを特徴とする請求項7に記載の熱硬化型粉体塗料。
- 前記複数の層において、内側の層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量が、外側の層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量よりも大きいことを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
- 前記複数の層のうち少なくとも一つの層に、前記硬化剤を含む請求項4〜9のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料。
- バインダー樹脂と硬化剤とを含む樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料の製造方法において、
前記バインダー樹脂を含む樹脂微粒子を形成する段階と、
前記樹脂微粒子を凝集させて凝集粒子を形成する段階と、
前記凝集粒子を融着させて樹脂粒子を形成する段階と、
前記樹脂微粒子の形成から前記樹脂粒子の形成までのいずれかの段階で前記硬化剤を添加する段階と、を含み、
前記樹脂粒子は、GPC法で測定することにより算出される分子量分布において、分子量50,000以上の第1の樹脂成分と、分子量50,000以下の第2の樹脂成分とを少なくとも含有し、前記第1の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上含有することを特徴とする熱硬化型粉体塗料の製造方法。 - 前記樹脂粒子は、前記分子量50,000以上の樹脂成分を、前記バインダー樹脂の全重量に対して3.0質量%以上25質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項11に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
- 前記樹脂微粒子を水系媒体中に分散させ、前記水系媒体中で前記樹脂微粒子を複数凝集させて凝集粒子を形成することを特徴とする請求項11又は12に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
- 前記樹脂微粒子を形成する段階において、複数回の重合反応を段階的に行う事により、前記樹脂微粒子として複数の層を備える多層樹脂微粒子を形成することを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の熱硬化型粉体塗料の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱硬化型粉体塗料を被塗装物に塗布して得られることを特徴とする塗装物。
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