JP2015131257A - 流体デバイス及びその製造方法、並びに流体デバイス製造用熱転写媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 流体デバイスを製造する場合に、紫外線硬化性インクなどを多孔質の部材に浸透させて流路の隔壁を形成したときには、インクが滲んだり、対向面に到達しなかったりするなど、インクの浸透を制御することが難しくなるので、適切な厚みの流路を形成しにくくなるという課題が生じる。
【解決手段】 流体デバイス製造用熱転写媒体は、熱可塑性材料を有する流路形成用材料層を有している。これにより、熱転写により流路の隔壁を形成することが可能となるので、隔壁を構成する材料の多孔質の部材への浸透を制御しやすくなり、適切な厚みの流路を形成し易くなるという効果を奏する。
【選択図】図1A

Description

本発明は、流体デバイス及びその製造方法、並びに流体デバイス製造用熱転写媒体に関する。
近年のナノテクノロジーの発展に伴い、様々な分野で装置の小型化が進められている。例えば、環境負荷の大きい有機溶剤の使用量を最小限にするための反応装置の小型化や、可搬性が求められるフィールドワーク用途での簡易分析装置の小型化などが挙げられる。更に、血液検査やDNA検査向けのバイオセンサー、食品や飲料の品質管理用途等の分野においても小型の分析機器が求められている。このような用途に対応できる技術として、マイクロ流体デバイスが注目されている。前記マイクロ流体デバイスは、手のひらサイズの基板(又は立方体)内に検体を含む試料液や反応試薬等を運ぶ複数の微細な流路や試薬等の反応部を有し、前記微細流路及び反応部で、化学反応、遺伝子反応、分離、混合、分析等の各種操作が可能なものである。
従来のマイクロ流体デバイスは、半導体技術で培った微細加工技術を応用しており、基板としては、シリコン、プラスチック、ガラス等が用いられている。しかし、前記基板を用いたマイクロ流体デバイスの作製方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法では、フォトレジストの浸漬、加熱処理、紫外線(UV)照射、フォトレジストの除去等の多くの工程が必要である。また、フォトレジスト、該フォトレジストの除去に用いる洗浄液、クリーンルーム、マスク、UV光源等に使用する溶剤及び試薬が多くなり、大掛かりな装置が必要であり、更に高度な専門技術が必要である。そして、マイクロ流体デバイスの作製にかかる人件費、材料費等がマイクロ流体デバイスの価格を引き上げてしまい、ビジネスとして実用化できるレベルには至っていない。
装置を小型化するためには、装置の構造や仕組みが簡素であることが有利となる。また、化学分析又は生化学分析の用途では必然的に使い捨てであるため、これらの装置は小型化であると共に、安価であることも求められている。そこで、例えば、化学分析を行うときに高価な試料あるいは試薬の無駄をなくすことができる化学分析用膜が提案されている(特許文献1参照)。
前記化学分析膜は、ニトロセルロース膜等の化学分析用膜の使用部位と未使用部位をワックスの含浸により画定したものである。しかし、この化学分析膜では膜面に鉛直方向に流れる流路を形成しているため、膜の厚み分の長さしか流路を形成することができないという課題がある。
また、比較的安価で簡便なマイクロ流体デバイスとして、例えば、紙を基材としたマイクロ流体デバイスである「μPADs」(microfluidic paper−based analytical devices)が提案されている(特許文献2参照)。
前記「μPADs」は、紙を基材とし、疎水性樹脂によって形成された流路を有する流体デバイスであり、前記疎水性樹脂により紙上で親水性領域と疎水性領域を区分したものである。初期の「μPADs」では重合フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法により紙の厚み方向に流体が流れていく流路を形成している。
また、近年では、低廉で容易に利用可能な方法として、例えば、インクジェット方式等の印刷技術を用いた流路形成方法が報告されている。
しかし、前記インクジェット方式では、インクが滲みやすいため、安定した流速が得られる微細な流路の形成が困難である。また、インク中に含まれるVOC(揮発性有機化合物)や紫外線(UV)硬化性樹脂の感作性の問題が指摘され、生化学分野に好適な材料ではなかった。
また、相変化インクを用いたワックスプリンタによる流路形成方法についても報告されている(非特許文献1及び特許文献3参照)。しかし、従来のインクは、樹脂成分が紙表面に留まるように設計されているため、単純に印刷しただけでは樹脂成分が紙内部にまで浸透せず、紙上において親水性領域と疎水性領域とを区分することが困難であった。
また、特許文献4には、前記特許文献1〜3とは異なり、紙の面方向に流体が流れる方式の紙ベース反応用チップが提案されている。この提案のように紙の面方向に流体が流れる場合、試料液の蒸発が流量や流速の変化を生じさせ、検査結果に影響する懸念ある。このため、前記特許文献4ではインクジェットプリンタを用いて紫外線硬化性インクを用いてカバーを形成している。
ところで、上記のような方法で流体デバイスの流路を形成する場合に、流路の厚みが薄すぎると、流路を流れる検査液が蒸発してしまい、検査液の濃度変化が発生するなどして、十分な検出感度が得られなくなる場合がある。一方、流路の厚みが厚すぎると、検査液の量が多くなり、結果としてそれを検査する側の試薬も大量に必要になる。検査用の試薬は高価なものも多いため、流路の厚みが大きくなりすぎないように制限して、より少ない量の試薬で検査できることが好ましい場合もある。
しかしながら、流体デバイスを製造する場合に、紫外線硬化性インクなどを多孔質の部材に浸透させて流路の隔壁を形成したときには、インクが滲んだり、対向面に到達しなかったりするなど、インクの浸透を制御することが難しくなるので、適切な厚みの流路を形成しにくくなるという課題が生じていた。
請求項1にかかる発明は、少なくとも支持体と、該支持体上に設けられた流路形成用材料層と、を有しており、該流路形成用材料層は、流体デバイスを構成する多孔質の部材に当該流路形成用材料層が熱転写されるときに、前記多孔質の部材に浸透する熱可塑性材料を有しており、前記流路形成用材料層の厚みは、30μm以上250μm以下であることを特徴とする流体デバイス製造用熱転写媒体である。
本発明の流体デバイス製造用転写材は、熱可塑性材料を有する流路形成用材料層を有している。これにより、熱転写により流路の隔壁を形成することが可能となるので、隔壁を構成する材料の多孔質の部材への浸透を制御しやすくなり、適切な厚みの流路を形成し易くなるという効果を奏する。
図1Aは、本発明の流体デバイス製造用熱転写媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。 図1Bは、流体デバイス製造用熱転写媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。 図2は、流体デバイス製造用熱転写媒体を基材上の多孔質層に重ね合わせる様子を示す図である。 図3Aは、本発明の流体デバイスの一例を示す模式断面図である。 図3Bは、本発明の流体デバイスの一例を示す模式断面図である。 図4は、実施例における多孔質基材に形成した流路の一例を示す図である。 図5は、本発明の流体デバイスの一例を示す模式断面図である。 図6は、図4の流路上に保護層を設けた状態を示す平面図である。 図7Aは、試料液による「浸食なし」の流壁の状態を示す図である。 図7Bは、試料液による「浸食あり」の流壁の状態を示す図である。 図7Cは、試料液による「浸食あり」の流壁の状態を示す図である。 図8は、流体デバイスに形成された流路を示す図である。 図9は、比較例4における流路のエッジ部の写真である。 図10は、図9の画像処理後の画像である。 図11は、実施例1における流路のエッジ部の写真である。 図12は、図11の画像処理後の画像である。 図13は、流壁の流路側の側壁面における直線度の求め方を示す摸式図である。
(流体デバイス)
本発明の流体デバイスは、第1の形態では、多孔質層と、該多孔質層内に配された流壁と、前記多孔質層と隣接し前記流壁と共に試料液の流路を形成する基材とを有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
本発明の流体デバイスは、第2の形態では、基材と、前記基材の上に設けられた多孔質層と、前記多孔質層内に設けられた流壁と、前記多孔質層の上に設けられた保護層とによって囲まれた流路を有してなり、前記流壁と前記保護層とが、熱可塑性材料で形成され融合しており、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
前記流体デバイスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血液検査やDNA検査向けのバイオセンサー(センシングチップ)、食品や飲料の品質管理用途などにおける小型の分析機器、各種マイクロ流体デバイス、などが挙げられる。
前記流体デバイスをバイオセンサーとして用いる場合、検出成分はクロマトグラフィーの原理により検出する。前記流体デバイスにおいて、流体を移動相とし、多孔質層が固定相となり、固定相と物質の相互作用によって混合物を分離・検出する。前記流壁は、検出成分を吸着することなく反応部まで運搬する。
前記多孔質層内に熱可塑性材料を充填して流壁を形成し、該流壁によって流路を画成することにより、液漏れがなく、安全性に優れ、低廉で使い捨てが可能な流体デバイスの提供が可能となる。
前記流体デバイスの多孔質層に適した材質の一つとして紙がある。前記紙の長所は、安価で取り扱いが容易であり、薄く軽量であるため可搬性に優れ、安全に廃棄が可能であり、使い捨て用途に適しており、試料液が前記紙の毛細管現象によって流れるためポンプ等の外部駆動装置が不要であるという利点がある。
前記流壁は、通常、流体デバイス製造用熱転写媒体の流路形成用材料層を多孔質層に熱圧着し、溶融した流路形成用材料層で多孔質層内の空隙を充填することにより形成される。前記多孔質層は、流路以外の領域が部分的又は完全に流壁で覆われているか又は充填されている。このように、溶融した流路形成用材料層で多孔質層内の空隙が充填されて形成された流壁は、液体をはじき、液体を目的の(例えば、転写されていない基材)領域に閉じ込め、多孔質層の毛細管現象によって試料液を流すことができる流路を形成できる。
このような要件を満たす流体デバイスの製造には熱転写方式のプリンタが好適に用いられる。前記熱転写方式のプリンタで用いる流体デバイス製造用熱転写媒体の流路形成用材料層は、熱可塑性材料を含有し、一般的な熱転写記録媒体のインク層と比較して熱可塑性材料を多く含む。前記熱可塑性材料は、溶融時の溶融粘度が非常に小さいので熱転写時に紙へ浸透しやすく、水に不溶であるため、溶融後(充填後)は疎水性を示す。
また、インクジェット方式のプリンタが印字の際に紙に非接触であるのに対し、熱転写方式のプリンタは、流体デバイス製造用熱転写媒体を介して熱と圧力により多孔質層に流壁を転写する。このため、熱転写方式では溶融した流路形成用材料層を物理的にも紙内部へ浸透させることができる。
また、前記熱転写方式のプリンタは、乾電池程度の電源で駆動し、片手で持ち運びができるほど小型でモバイル性が高い。この点は従来のインクジェットプリンタやワックスプリンタでは成し得なかった技術であり、電源の確保が困難又は不可能な地域でのオンデマンドな流体デバイスを提供することが可能となる。
本発明の第1の形態の流体デバイスにおいては、前記流壁の前記流路側の側壁面における輪郭線の直線度が30%以下であり、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
前記直線度を30%以下とすることによって、流路内を流れる流体に乱流が生じることを防ぐことができ、流速低下等による検出感度の低下を抑制することができる。
以下、直線度の求め方について説明する。(1)流路に着色液を流し、着色させた状態で、流壁部分の任意の範囲の画像を取得する。画像の取得は例えば光学顕微鏡を用いて行うことができるが、これに限定されるものではない。なお、少なくとも10mm×10mmの視野範囲の画像を取得することが好ましく、画像解析に用いる画像の解像度は20dot/mm以上が好ましく、40dot/mm以上がより好ましい。(2)得られた画像を、画像処理ソフトを用いて解析し、流壁の流路側における輪郭線の長さA(mm)を計測する。なお、輪郭線の長さA(mm)は、輪郭線上の任意の2点間の線分の長さBに対応する部分の実測値とする(図13参照)。前記任意の2点間の線分の長さBは10mm以上であることが好ましい。(3)任意の10箇所について輪郭線の長さAを算出し、その平均値を求め、下記式に代入し、直線度(%)を求める。
直線度(%)={[A(mm)−B(mm)]/B(mm)}×100
以下、直線度を求めた具体例について説明する。
流体デバイスの多孔質層内に図8に示す流路4を形成し、エッジ部(図8中X)における流路4と流壁2aとの境界を明瞭にする目的で、流路内に赤色色素(キリヤ化学株式会社製、カルミンレッドKL−80)の0.07質量%水溶液を流す。図9は、比較例4のインクジェットプリンタを用いてUVインクにより流路を形成した流体デバイスの流路を染色したものである。また、図11は、同様にして実施例1の流体デバイスの流路を染色したものである。これらは、いずれも流路内がすべて染色されていることを確認している。
次に、光学顕微鏡(キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX−1000)を用いて、倍率100倍で染色した流路を拡大し、デジタル画像として記録する。
このときデジタル画像の解像度は40dot/mm、視野範囲は30mm×30mmである。ただし、ここで示した数値範囲はこれに限定されるものではない。
得られたデジタル画像を、画像処理ソフト(Image J、フリーソフトウェア)を用いて、画像処理を行った。なお、画像処理ソフトについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
次に、流路4と流壁2aとの境界をより明確にするため、エッジを強調する処理(Find Edgeコマンド)を行う。得られた画像が比較例4では図10、実施例1では図12となる。
比較例4では、図10に示すように、エッジの直線部分においては、バリア形成するために塗布したUVインクが、多孔性層の面内で不均一に拡散しまうため、流路4と流壁2aとの境界が上から見て非直線(凹凸状)になってしまっており、直線性が不良であることが確認できる。一方、実施例1では、図12に示すように、流路4と流壁2aとの境界が直線であることがわかる。
次に、図10及び図12を用いて、流壁の流路側の側壁面における走査方向D1と副走査方向D2とについて、輪郭線の任意の2点間の線分の長さBを10mmとした場合の、対応する輪郭線の長さAを測定した。輪郭線の長さAの測定は画像処理ソフト(Image J)の線分距離測定(Perimeterコマンド)を利用する。図10の比較例4の場合には、輪郭線の任意の2点間の線分の長さB(10mm)に対して、対応する輪郭線の長さAは、流壁の主走査方向D1で14.2mm、副走査方向D2で15.6mmとなる。図12の実施例1の場合には、輪郭線の任意の2点間の線分の長さB(10mm)に対して、対応する輪郭線の長さAは、流壁の主走査方向D1で10.4mm、副走査方向D2で10.6mmとなる。
ここで、流壁の前記流路側の側壁面における輪郭線の直線度(%)は、直線度(%)={[A(mm)−B(mm)]/B(mm)}×100から求めることができる。なお、前記直線度は、図13に示すように測定位置を変えて10箇所測定し、得られた測定値を平均した平均値である。
比較例4では、主走査方向D1は、直線度=14.2−10/10×100=42%、副走査方向D2は、直線度=(15.6−10)/10×100=56%となる。
実施例1では、主走査方向D1は、直線度=10.4−10/10×100=4%、副走査方向D2は、直線度=(10.6−10)/10×100=6%となる。
なお、前記直線度が0%に近づくほど、流壁の流路側の側壁面が直線であること(直線性が高いこと)を示し、直線度の数値が大きくなるほど、流壁の流路側の側壁面に凹凸が生じており、直線性が低いことを示している。
前記流体デバイスにおける多孔質層は、ペーパークロマトグラフィーの原理に基づいて流速が制御される。前記ペーパークロマトグラフィーでは吸着剤(多孔質層)の間隙を移動する移動相の流速は流れの方向に垂直な平面内で均一であることを理想とする。流速の不均一は吸着帯の歪みを生むことになり、その結果分離能が低下する(「薄層クロマトグラフィー −基礎と応用−」6〜7頁、石川正幸、南山堂、1963年)。したがって、流体デバイスの試料液が流れる流壁の流路側の側壁面の直線性が低いと試料液に乱流が発生し、その結果、試料液の流速が低下し、感度が低下してしまうことが予測される。
本発明の第2の形態の流体デバイスにおいては、前記流壁と前記保護層とが、熱可塑性材料で形成され融合している。これにより、基材、流壁、及び保護層により囲まれた管状構造の流路でき、流路内の気密性が大幅に向上する。
<多孔質層>
前記多孔質層としては、親水性であっても疎水性であってもよく、使用する試料液との関係において適宜選択することができるが、親水性を示し空隙率が高い多孔質層が好適に用いられる。
前記多孔質層とは、水溶液が容易に浸透可能な多孔質層であり、容易に浸透可能とは、120℃で1時間乾燥した板状試験片の表面に純水0.01mLを滴下する水浸透性の評価試験で、前記純水0.01mLが10分間以内にすべて浸透することを意味する。
前記多孔質層の空隙率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40%〜90%が好ましく、65%〜80%がより好ましい。前記空隙率が、90%を超えると、基材としての強度が保てなくなることがあり、40%未満であると、試料液の浸透性が悪くなることがある。
前記空隙率は、例えば、前記多孔質層の坪量(g/m)、厚み(μm)、組成分比重から、下記の計算式1により求めることができる。
〔計算式1〕
空隙率(%)={1−〔坪量(g/m)/厚み(μm)/組成分比重〕}×100
前記多孔質層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ろ紙、普通紙、上質紙、水彩紙、ケント紙、合成紙、合成樹脂フィルム、コート層を有する専用紙、布地、繊維製品、フィルム、無機基板、ガラス、などが挙げられる。
前記布地としては、例えば、レーヨン、ベンベルグ、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ビニロン等の人造繊維、綿、絹等の天然繊維、これらの混紡繊維、又はこれらの不織布を用いることができる。
これらの中でも、高い空隙率と良好な親水性を有する点から、ろ紙が好ましい。前記流体デバイスをバイオセンサーの目的で使用する際には、前記ろ紙はペーパークロマトグラフィーにおける固定相として好適である。
前記多孔質層の形状及び平均厚みについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多孔質層の形状としては、シート状が好ましい。前記多孔質層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01mm〜0.3mmが好ましい。前記平均厚みが、0.01mm未満であると、基材としての強度を保てなくなることがあり、0.3mmを超えると、溶融した流壁を多孔質層内の空隙に充填する際に多くの印加エネルギーを必要とし、電力消費量が増大してしまうことがある。
<流壁>
前記流壁は、熱可塑性材料を含有し、有機脂肪酸、及び長鎖アルコールを含有することが好ましく、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
<<熱可塑性材料>>
前記熱可塑性材料としては、流体デバイスを水に含浸させたとき、容易にその構造が崩壊しない耐久性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、油脂、及び熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1種が好適である。
−油脂−
前記油脂は、常温で固体の脂肪、脂肪油、及びロウを指す。
前記油脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、カスターワックス、牛脂硬化油、ラノリン、木ロウ、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ステアリルアルコール、ポリアミドワックス、オレイルアミド、ステアリルアミド、ヒドロキシステアリン酸、天然エステルワックス、合成エステルワックス、合成合金ワックス、ヒマワリワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、流壁形成時の熱転写特性に優れている点から、キャンデリラワックス、エステルワックスが好ましい。
−熱可塑性樹脂−
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、ウレタン樹脂、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、石油樹脂、ロジン樹脂、ナイロン、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記熱可塑性材料は、そのままの形態で用いてもよいが、有機脂肪酸及び長鎖アルコールと共にエマルションの形態にして含有することが好ましい。この場合、サーマルヘッドで加熱された際に、エマルションを形成していた各粒子の境界で優先的に切断されて剥離し、多孔質層に移行するため、流体デバイス製造用熱転写媒体のエッジ部分がシャープになる。また、前記熱可塑性材料エマルションは水系であるため、環境への負荷が小さいという利点がある。
前記熱可塑性材料の水系エマルションの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機脂肪酸と有機塩基とを水中に添加して生成した塩を乳化剤とすることにより、熱可塑性材料を乳化する方法、などが挙げられる。
前記熱可塑性材料の溶融開始温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜150℃が好ましく、60℃〜100℃がより好ましい。前記溶融開始温度が、50℃未満であると、高温環境下での保存性が悪くなることがあり、150℃を超えると、熱転写時の転写特性が低下することがある。
ここで、前記熱可塑性材料の溶融開始温度とは、まず、前記熱可塑性材料を固め、それをシリンダー状で底に直径0.5mmの穴のあいた容器内に導入した後、該容器を高架式フローテスタ(株式会社島津製作所製、商品名:島津フローテスタCFT−100D)を使用し、シリンダー圧力980.7kPaの荷重下で試料を5℃/minで等速昇温させ、温度上昇に伴う試料の溶融粘性及び流動特性を測定して確認された流出開始温度を意味する。
前記熱可塑性材料の前記流壁における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、75質量%以上が好ましい。前記含有量が、75質量%未満であると、流壁の熱に対する感度が低下することがある。
−有機脂肪酸−
前記有機脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所定の酸価及び所定の融点を有するものが好適に用いられる。
前記有機脂肪酸の酸価は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90mgKOH/g〜200mgKOH/gが好ましく、140mgKOH/g〜200mgKOH/gがより好ましい。前記酸価が、90mgKOH/g未満であると、前記熱可塑性材料をエマルションにすることができないことがあり、200mgKOH/gを超えると、前記熱可塑性材料をエマルションにすることはできるが、該エマルションがクリーム化し、塗布液にできないことがある。
前記酸価を有する有機脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オレイン酸(酸価200mgKOH/g)、ベヘン酸(酸価160mgKOH/g)、モンタン酸(酸価132mgKOH/g)などが挙げられる。
前記酸価は、例えば、試料をトルエン、イソプロピルアルコール及び少量の水の混合溶剤に溶かし、水酸化カリウム溶液で滴定することにより測定することができる。
前記有機脂肪酸の融点は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃〜90℃が好ましい。前記融点が好ましい数値範囲内であると、前記熱可塑性材料の溶融開始温度と近いため、感度特性が良好となる。前記融点が、70℃未満であると、夏場等の高温環境下では、流壁が軟化してしまうことがある。
前記融点を有する有機脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベヘン酸(融点76℃)、モンタン酸(融点80℃)、などが挙げられる。
前記融点は、例えば、示差走査熱量計「DSC7020」(セイコーインスツルメント社製)を用いて、前記示差走査熱量計による昇温測定時に発現する結晶融解吸熱ピークの終点温度より測定することができる。
前記有機脂肪酸の前記流壁における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱可塑性材料100質量部に対して、1質量部〜6質量部が好ましい。前記含有量が、1質量部未満であると、熱可塑性材料をエマルションにすることができないことがあり、6質量部を超えると、熱可塑性材料のブルーミングが発生することがある。
−長鎖アルコール−
前記長鎖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される長鎖アルコール及び下記一般式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれかが好適である。
<一般式(1)>
ただし、前記一般式(1)中、R1は、炭素数28〜38のアルキル基を表す。
<一般式(2)>
ただし、前記一般式(2)中、R2は、炭素数28〜38のアルキル基を表す。
前記長鎖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が70℃〜90℃の脂肪族アルコールが好ましい。前記融点が、70℃未満であると、夏場等の高温環境下では、流壁が軟化してしまうことがある。90℃を超えると、流壁の転写特性が低下してしまうことがある。前記融点が、前記好ましい数値範囲内であると、前記熱可塑性材料の溶融開始温度と近いため、流壁の転写特性が良好となる。
前記融点は、例えば、前記有機脂肪酸と同様の方法により測定することができる。
前記長鎖アルコールにおける長鎖は、直鎖のみからなるものであってもよいし、分岐鎖を有するものであってもよい。長鎖部分の炭素数(アルキル基の炭素数)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、28〜38であることが好ましい。
前記炭素数が、前記数値範囲外であると、時間経過に伴い、前記流壁表面にブルーミングし、流体デバイス製造用熱転写媒体をロール状にして保管すると、バック層表面を汚してしまうという問題が生じることがある。
前記長鎖アルコールの前記流壁における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱可塑性材料100質量部に対して、6質量部〜12質量部が好ましい。
前記含有量が、6質量部未満であると、ブルーミング抑制効果が得られないことがあり、12質量部を超えると、前記熱可塑性材料の溶融開始温度との温度差がある場合には、流壁の転写特性が低下してしまうことがある。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機塩基、ノニオン界面活性剤、着色剤、などが挙げられる。
−有機塩基−
前記有機塩基は、前記熱可塑性材料を乳化する際に、前記有機脂肪酸と共に使用することができる。
前記有機塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥後に揮発しやすい点から、モルホリンが好適である。
前記有機塩基の前記流壁における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱可塑性材料100質量部に対して、0.5質量部〜5質量部が好ましい。
−ノニオン界面活性剤−
前記ノニオン界面活性剤を添加すると、前記熱可塑性材料の水系エマルションを小粒径化することができ、前記流壁の凝集力が向上し、地汚れを防止することができる。
前記ノニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、POEオレイルエーテル、などが挙げられる。
前記ノニオン界面活性剤の前記流壁における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱可塑性材料100質量部に対して、2質量部〜7質量部が好ましい。前記含有量が、2質量部未満であると、前記熱可塑性材料を水系エマルション化する際に小粒径化の効果がなくなることがあり、7質量部を超えると、前記流壁が軟らかくなることにより、形成された流壁の耐摩擦性が低下することがある。
−着色剤−
前記着色剤は、前記多孔質層内において流壁を識別する機能を付与するために添加することができる。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、アゾ系染顔料、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、キノフタロン、アニリンブラック、酸化チタン、亜鉛華、酸化クロム、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
前記着色剤の前記流壁における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱可塑性材料100質量部に対して、0.5質量部〜5質量部が好ましい。
前記流壁は、前記多孔質層に直接形成してもよいが、後述する流体デバイス製造用熱転写媒体を用いて熱転写により形成することが好ましい。
前記流壁を前記多孔質層に熱転写することによって、溶融した流壁が多孔質層の空隙に充填され、前記多孔質層内に流路を形成することができる。
前記流壁の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直線、曲線、複数に分岐した接合点、の1種類、又はこれらの組み合わせ、などが挙げられる。また、試料液の特定の混合及び反応のために所定の領域内に留まるように、前記流壁によって囲まれた流路を設けてもよい。
前記流壁の幅としては、特に制限はなく、流体デバイスのサイズに応じて任意の幅でパターニングすることができるが、500μm以上が好ましい。前記流壁の幅が、500μm未満であると、多孔質層の空隙の充填が不十分になり、液体不浸透性バリアとして機能しないことがある。
前記流壁は、前記多孔質層の表面から内部の厚み方向に対して、即ち、深さ方向に対して、任意の長さで流壁を形成することができる。
前記長さを制御する因子としては、熱可塑性材料である油脂又は熱可塑性樹脂の溶融粘度及び親水性で制御可能である。前記溶融粘度は、低い程、多孔質層の表面から内部に浸透し易くなり、長さを大きくすることができる。逆に溶融粘度が高くなる程、多孔質層の表面から内部に浸透し難くなり、実質的に浸透しない状態にできる。前記溶融粘度を制御すれば、厚みを制御することが可能である。
一方、油脂及び熱可塑性樹脂の親水性については、親水性の高いもの程、多孔質層の表面から内部に浸透し易くなり、長さを大きくすることができる。
逆に親水性の低いもの程、多孔質層の表面から内部に浸透し難くなり、実質的に浸透しない状態にできる。親水性を制御すれば、厚みを制御することも可能ではあるが、溶融粘度の方が浸透性に与える影響がかなり大きい。
前記溶融粘度は、前記多孔質層の材料、即ち、油脂又は熱可塑性樹脂の親水性によっても変化するため、常にこの範囲であるとは限らないが、例えば、セルロースのような多孔質材料の場合、前記熱可塑性材料(油脂又は熱可塑性樹脂)の溶融粘度は、3mPa・s以上1600mPa・s以下と非常に広い粘度範囲の材料から自由に選択し、熱転写することが可能である。特に、流壁を多孔質層の表面から内部に浸透させ、流壁の厚み方向に対する長さを大きくするためには、溶融粘度が6mPa・s以上200mPa・s以下の熱可塑性材料を用いることが好ましい。
一方、紫外線硬化樹脂インクを用いたインクジェット方式のプリンタはインクをヘッドから吐出し、インクを液滴として飛翔させ多孔質層に着弾させる方式のため、ヘッドから吐出させるために、最大でも吐出させる液体の粘度が15mPa・s、実際には10mPa・sを下回らなければ、ヘッドから吐出できないという制限があり、材料の自由度が低い。こうした理由で、インクジェット方式のプリンタで使用できるインクは粘度が非常に低いため、多孔質層内部に拡散しやすくなり、滲みが大きくなる。
ワックスプリンタの場合も同様である。ワックスプリンタは、固体インクを熱溶融させておいてヘッドから吐出し、溶融状態のインクを液滴として飛翔させ多孔質層に着弾させる方式のため、ヘッドから吐出させるために、上記と同様の粘度制限があり、材料の自由度が低い。更に、ワックスプリンタの場合は、実際には飛翔時に固体インクの温度が低下してしまい、多孔質層に着弾した時にはすでに多孔質層に浸透する粘度を上回ることから、多孔質層の表面にとどまることとなり、多孔質層の内部には浸透させることができない。そこで、多孔質層を熱可塑性材料が充分に溶融する温度まで加温して浸透する工程が必ず必要となるため、工程が複雑になるだけでなく、多孔質層全体を加温せざるをえないために、インクが水平方向にも拡散しやすくなり、にじみが大きくなる。
これに対して、熱転写方式の場合、流体デバイス製造用熱転写媒体を介してサーマルヘッドと多孔質層が直接接触しながら印字する方式である。このため、サーマルヘッドでは、インクを転写させる微小な区間だけに局所的に加熱を行うため、水平方向への熱可塑性材料の拡散を効果的に抑制することができ、その結果にじみのない直線性の高い流路が得られる。
また、熱圧着における印加エネルギーの制御によっても長さの制御が可能である。即ち、より印加エネルギーを大きくして、熱可塑性材料である油脂及び熱可塑性樹脂の温度を上げれば、より内部に浸透することになり、温度を下げれば、より表面にのみ留まる。
前記流壁を、油脂及び熱可塑性樹脂の溶融粘度を高くしたり、親水性を低くしたり、熱圧着における印加エネルギーを小さくしたりすることで、多孔質層の表面から内部に浸透し難くし、実質的には浸透しない状態にすることができる。この作用を利用して、前記多孔質層の表面上に流壁を厚み方向に形成することが可能である。即ち、前記油脂及び熱可塑性樹脂の熱転写量を増やせば、前記多孔質層の表面上に流壁を厚く形成できる。一方、前記油脂及び熱可塑性樹脂の熱転写量を減じれば、流壁をより薄く形成することになる。前記熱転写量は、熱圧着における印加エネルギーの増減、流体デバイス製造用熱転写媒体の流壁の厚みの増減により制御可能である
<流路>
前記流壁によって多孔質層内に画成される流路としては、試料添加部と、反応部と、検出部とが少なくとも有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記試料添加部は、試料液を添加する部位であり、その開口周縁に前記多孔質層よりも隆起した隆起部を有することが好ましい。これにより、試料液が外部に溢れ出ることを防止でき、試料液の添加量を増加することができる。
前記隆起部は、保護層により形成することもできるが、シール部材などにより形成することもできる。
前記反応部は、試料液とマーカーとを反応させて検出する部位である。
前記検出部は、試料液が前記反応部まで十分に流れていることを確認する部位である。
<基材>
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。
前記基材の平均厚みは、0.01mm以上0.5mm以下が好ましい。前記平均厚みが、0.01mm未満であると、基材としての強度を保てなくなることがあり、0.5mmを超えると、材質によってはフレキシブル性に欠けることがある。
なお、前記基材の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、測定対象物の厚みを長手方向に5箇所、幅方向に3箇所、測定箇所がほぼ均等の間隔となるように合計15箇所をマイクロメーターで測定したときの平均値を平均厚みとすることができる。
前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記基材は、多孔質層の少なくとも流路が形成される部分と重畳するように設けられていることが好ましく、これにより流路からの液漏れを防止できる。
前記基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、セルロースアセテート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
<保護層>
前記保護層としては、その形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記保護層は、前記多孔質層の少なくとも一部上に配されていることが好ましく、多孔質層の全部に配されていてもよい。前記多孔質層の一部に配する場合には、流路部分に設けることが好ましい。これにより、流路を閉じた系にすることができ、試料液の乾燥を防ぐことができる。更に試料液が手に付着するのを防止でき、安全性が向上する。
前記保護層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記流壁と同様な熱可塑性材料を用いることが好ましい。また、前記流壁と同様に熱転写法により形成することができる。
前記保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100μm以下が好ましい。
前記平均厚みを100μm以下とすることによって、流路を形成する熱可塑性材料に十分に伝熱され、流路を構成している熱可塑性材料と保護層を構成する熱可塑性材料との融合が良好に行われ良好な融合状態とすることができる。
(流体デバイス製造用熱転写媒体)
続いて、図1Aを用いて流体デバイス製造用熱転写媒体について説明する。図1Aは、本発明の流体デバイス製造用熱転写媒体の一例を示す概略図である。本発明の一実施形態によると、流体デバイス製造用熱転写媒体115は、少なくとも、支持体112と、該支持体112上に設けられた流路形成用材料層114と、をこの順に有している。流路形成用材料層114は、当該流路形成用材料層114が多孔質層(多孔質の部材の一例)に熱転写されるときに、多孔質層に浸透する熱可塑性材料を有しており、流路形成用材料層114の厚みは、30μm以上250μm以下である。なお、支持体112上に設ける、とは、支持体112に接して設けることを意味する。また、熱可塑性材料が多孔質層に浸透するとは、熱転写により熱可塑性材料が多孔質層を形成する空隙に充填されることを意味する。
前記流体デバイス製造用熱転写媒体115は、多孔質層内に流路を形成してなる流体デバイスの製造に用いられる。
従来の記録用の熱転写記録媒体(インクリボン)の構成では、支持体と前記流路形成用材料層との間に流路形成用材料層の剥離性を向上させる離型層を設けているため、サーマルヘッドの熱が流路形成用材料層に伝わりにくい。このため、仮に従来の記録用の熱転写記録媒体で多孔質層に流路を設けようとした場合には、高いエネルギーを要することになる。
一方、本実施形態での流体デバイス製造用熱転写媒体の構成は、少なくとも支持体上に熱可塑性材料を有する流路形成用材料層が設けられている。これにより、熱転写時にサーマルヘッドの熱が流路形成用材料層に伝わりやすくなるため、より低いエネルギーで流路形成用材料が多孔質層の厚み方向に完全に転写することができる。
<支持体>
前記支持体112としては、その形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。前記大きさとしては、前記流体デバイス製造用熱転写媒体115の大きさに応じて適宜選択することができる。
前記支持体112の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、セルロースアセテート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
前記支持体112の表面には、該支持体112の上に設ける層との密着性を向上させるため、表面活性化処理を行うことが好ましい。前記表面活性化処理としては、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、などが挙げられる。
前記支持体112は、前記流体デバイス製造用熱転写媒体115の流路形成用材料層114を前記多孔質層に転写後、そのまま残しておいてもよく、また、流路形成用材料層114を転写後、離型層113で支持体112等を剥離し除去してもよい。
前記支持体112は、特に制限はなく、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記支持体112の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜50μmが好ましい。
<流路形成用材料層>
前記流路形成用材料層114の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホットメルト塗工法や、前記熱可塑性材料を溶剤に分散させた塗布液を塗布する方法として、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーターなどの一般的な塗布法により、流路形成用材料層塗布液を前記支持体112上又は前記離型層113上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。
前記流路形成用材料層114の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30μm以上250μm以下であることが好ましい。前記平均厚みが、30μm未満であると、多孔質層内の空隙を充填するには流路形成用材料層114の量が不足することがあり、250μmを超えると、サーマルヘッドの熱が流路形成用材料層114に伝わりづらくなり、転写性が劣ることがある。なお、流体デバイスにおいて、流路の厚み(流壁の高さ)が30μm以上、好ましくは50μm以上であると、流路を流れる検査液などの液体が蒸発しにくくなるとともに、十分な検出感度が得られるようになる。また、流体デバイスにおいて、流路の厚み(流壁の高さ)が250μm以下、好ましくは120μm以下であると、検査液などの液体の必要量が多くなり過ぎない。このような厚みの流壁を形成するために、流路形成用材料層114の平均厚みとしては、30μm以上250μm以下であることが好ましく、特に、50μm以上120μm以下であると、使用する熱可塑性材料に過不足がなく流壁を形成出来るという点においてより好ましい。なお、本実施形態において、平均厚みとは、特に制限はないが、測定対象物の厚みを長手方向に5箇所、幅方向に3箇所、測定箇所がほぼ均等の間隔となるように合計15箇所をマイクロメーターで測定したときの平均値とすることができる。また、本実施形態において、流路形成用材料層114の厚みとは、離型層113と流路形成用材料層114との接触面に対して垂直方向の対象物の長さとすることができる。
前記流路形成用材料層114の付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30g/m〜250.0g/mが好ましく50g/m〜120.0g/mがより好ましい。
また、流路形成用材料層114を構成する熱可塑性材料の溶融粘度は、上述の流壁を形成する材料の説明のとおり、3mPa/sec以上1600mPa/sec以下であることが好ましく、6mPa・s以上200mPa・s以下であることがより好ましい。なお、溶融粘度の測定方法としては、特に限定されないが、ISO11443に準拠した試験方法による測定が挙げられる。なお、本実施形態において、溶融粘度は、ヘッドの加熱により熱可塑性材料が到達する温度に相当する100度での測定を行った。
<その他の層及び部材>
前記その他の層及び部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離型層、バック層、アンダー層、保護フィルム、などが挙げられる。
<離型層>
本実施形態の熱転写媒体は、流路形成用材料層に効率よく熱を伝え低エネルギーで印字するために、離型層を有しない構成が望ましい。但し、支持体との接着力が極めて弱い離型層か、あるいは熱可塑性材料と離型層を構成する材料の溶融粘度が近い場合は離型層を有しても構わない。
以下、図1Bを用いて流体デバイス製造用熱転写媒体に離型層を設ける場合について説明する。
図1Bは、流体デバイス製造用熱転写媒体の一例を示す概略図である。本発明の一実施形態によると、流体デバイス製造用熱転写媒体115は、少なくとも、支持体112と、該支持体112上に設けられた離型層113と、該離型層113上に設けられた流路形成用材料層114(流路形成用材料層の一例)と、をこの順に有している。
前記離型層113は、転写の際に、前記支持体112と前記流路形成用材料層114との剥離性を向上させる機能を有する。また、前記離型層113は、サーマルヘッド等の加熱加圧手段で加熱すると熱溶融して低粘度の液体となり、加熱部分と非加熱部分との界面近傍で、前記流路形成用材料層114の切断を容易にする機能を有する。
前記離型層113は、ワックス、及びバインダー樹脂を含有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の成分を含んでなる。
−ワックス−
前記ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蜜ロウ、カルナバワックス、鯨ロウ、木ロウ、キャンデリラワックス、米ぬかロウ、モンタンワックス等の天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス;マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロイン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸;ステアリンアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;ソルビタンの脂肪酸エステル等のエステル類;ステアリンアミド、オレインアミド等のアミド類、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、離型性に優れている点から、カルナバワックス、ポリエチレンワックスが好ましい。
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸ナトリウム共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアクリル酸、イソブチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記離型層113の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホットメルト塗工法、前記ワックス及び前記バインダー樹脂を溶剤に分散させた塗布液を塗布する方法、などが挙げられる。
前記離型層113の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜2.0μmが好ましい。
前記離型層113の付着量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5g/m2〜8g/m2が好ましく、1g/m2〜5g/m2がより好ましい。
−バック層−
前記流体デバイス製造用熱転写媒体115には、前記支持体112の前記流路形成用材料層114が形成されている面とは反対側の面に、バック層111を有することが好ましい。前記反対側の面には、転写時に、サーマルヘッド等で流路形成用材料層114に合わせて熱が直接印加されるため、前記バック層111は、高熱への耐性、サーマルヘッド等との摩擦への耐性を有することが好ましい。
前記バック層111は、バインダー樹脂を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ニトロセルロース、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タルク、シリカ、オルガノポリシロキサン等の無機微粒子、滑剤、などが挙げられる。
前記バック層111の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター等の一般的な塗布法、などが挙げられる。
前記バック層111の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜1.0μmが好ましい。
−アンダー層−
前記支持体121と前記流路形成用材料層114との間、又は前記支持体112上に設けられた前記離型層113と前記流路形成用材料層114との間には、アンダー層を設けることができる。
前記アンダー層は、樹脂を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記流路形成用材料層114及び前記離型層113で用いた各種樹脂が使用可能である。
−保護フィルム−
前記流路形成用材料層114上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために保護フィルムを設けることが好ましい。
前記保護フィルムの材料としては、前記流路形成用材料層114から容易に剥がすことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン紙、ポリプロピレン等のポリオレフィンシート、ポリテトラフルオロエチレンシート、などが挙げられる。
前記保護フィルムの平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜100μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
ここで、図1Aは、本発明の流体デバイス製造用熱転写媒体の一例を示す概略図である。この図1Aの流体デバイス製造用熱転写媒体115は、支持体112上流路形成用材料層114をこの順に有し、支持体112の流路形成用材料層を有しない側の面上にバック層111を有している。なお、流路形成用材料層114の表面には、必要に応じて保護フィルムを設けることができる。
本発明の流体デバイス製造用熱転写媒体は、特に制限はなく、各種用途に用いることができるが、以下に説明する本発明の流体デバイス、及び流体デバイスの製造方法に好適に用いることができる。
(流体デバイスの製造方法)
本発明の一実施形態における流体デバイスの製造方法は、上記の本発明の一実施形態における流体デバイスを製造する方法であって、多孔質層と、前記流体デバイス製造用熱転写媒体の流路形成用材料層とを対向させて重ね合わせ、流体デバイス製造用熱転写媒体における支持体(バック層)側から熱と圧力を加えることにより、前記流体デバイス製造用熱転写媒体の流路形成用材料層を前記多孔質層に熱転写して、流路形成用材料層に含まれる熱可塑性材料を、多孔質層に浸透させることにより前記多孔質層内に流路を形成するものである。これにより、流体デバイス製造用熱転写媒体における熱可塑性材料が、多孔質層に浸透することによって形成された流路部材を有する流体デバイスが得られる。
更に、流路上に保護層として前記熱可塑性材料を、熱エネルギーにより再度転写することで、基材、流壁、及び保護層により囲まれた管状構造の流路を有する流体デバイスを得ることができる。
前記流体デバイス製造用熱転写媒体の熱転写方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリアルサーマルヘッド、ライン型サーマルヘッド等の熱圧着によって前記流路形成用材料層を溶融させて転写する方法、などが挙げられる。
なお、前記多孔質層に対して、熱転写方法で両面印刷することにより、前記多孔質層中に異なる角度の流路を形成でき、三次元の流路パターン構造を形成することができる。
まず、図1Aに示す流体デバイス製造用熱転写媒体115の流路形成用材料層114上に保護フィルムを設けている場合には、保護フィルムを取除き、図2に示すように、前記流体デバイス製造用熱転写媒体115の流路形成用材料層114を、基材5上の多孔質層1に対向させて重ね合わせる。
次に、サーマルヘッドで熱圧着することにより前記流体デバイス製造用熱転写媒体の流路形成用材料層114を前記多孔質層1に熱転写して、前記多孔質層1内に流路を形成する。
更に、流路上に保護層を形成することにより、基材、流壁、および保護層により囲まれた管状構造の流路を有する流体デバイスを得ることができる。
前記熱圧着における印加エネルギーは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mJ/dot〜1.30mJ/dot、さらに0.1mJ/dot〜1.00mJ/dotが好ましい。
前記エネルギーが、0.05mJ/dot未満であると、流路形成用材料層の溶融が不十分となることがあり、1.30mJ/dotを超えると、サーマルヘッドに熱が過剰にかかりヘッド内の配線が焼き切れることや、前記多孔質層が変質してしまうといった問題が生じる。以上により、図3Aに示す、基材5上に、多孔質層1と、流壁2a,2aと、保護層2bとからなる流路4を形成した流体デバイスが得られる。
また、図3Bは、流壁2a,2a上に保護層2bの代わりに隆起部9,9を設けた流体デバイスである。前記隆起部9,9は前記保護層と同じ材料を用いることができる。
本発明の流体デバイスは、化学及び生化学の分野のセンシングチップ(マイクロ流体デバイス)などで好適に用いられる。これらの中でも、安全性に優れている点から、生化学の分野が特に好ましい。
前記生化学の分野の検査に用いる試料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細菌、ウイルス等の病原体、生体から分離された血液、唾液、組織病片等、あるいは糞尿等の排泄物、などが挙げられる。更に、出生前診断を行う場合は、羊水中に存在する胎児の細胞、試験管内での分裂卵細胞の一部などであってもよい。また、これらの試料は、直接、又は必要に応じて遠心分離操作等により沈渣として濃縮した後、例えば、酵素処理、熱処理、界面活性剤処理、超音波処理、これらの組合せ等による細胞破壊処理を予め施されていてもよい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例において、多孔質層の空隙率は、以下のようにして算出した。また、基材の親水性は、以下のようにして評価した。また、熱可塑性材料の溶融開始温度は、以下のようにして測定した。
<多孔質層の空隙率の算出>
前記多孔質層の前記空隙率は、前記多孔質層の坪量(g/m2)、厚み(μm)、組成分比重から、以下の計算式1により求めた。〔計算式1〕
空隙率(%)={1−〔坪量(g/m)/厚み(μm)/組成分比重〕}×100
<多孔質層の親水性の評価>
前記多孔質層の親水性の評価は、120℃で1時間乾燥した板状試験片の表面に純水0.01mLを滴下する水浸透性の評価試験を行い、前記純水0.01mLが10分間以内にすべて浸透する多孔質層を親水性と評価し、10分間後に純水が残っている多孔質層を疎水性と評価した。
<熱可塑性材料の溶融開始温度>
前記熱可塑性材料の溶融開始温度は、まず、前記熱可塑性材料を固め、それをシリンダーで底に直径0.5mmの穴のあいた容器内に導入した後、該容器を高架式フローテスタ(株式会社島津製作所製、商品名:島津フローテスタCFT−100D)を使用し、シリンダー圧力980.7kPaの荷重下で試料を5℃/minで等速昇温させ、温度上昇に伴う試料の溶融粘性及び流動特性を測定し、確認された流出開始温度を測定した。
<溶融粘度>
前記熱可塑性材料の溶融粘度は、ISO11443に準拠した試験方法により測定した。なお、本実施形態において、溶融粘度は、ヘッドの加熱により熱可塑性材料が到達する温度に相当する100度での測定を行った。
(実施例1)
−流体デバイス製造用熱転写媒体の作製−
<流路形成用材料層塗布液の調製>
熱可塑性材料としてのエステルワックス(日油株式会社製、WE−11、溶融開始温度65℃、溶融粘度5mPa・s)100質量部、モンタン酸(BASF社製、商品名:Luwax−E、融点76℃)2質量部、及び下記一般式(1)で表される長鎖アルコール(Rは炭素数28〜38のアルキル基、融点75℃、日本精蝋株式会社製)9質量部を、120℃で溶解した後、攪拌下、モルホリン5質量部を投入した。次いで、90℃の熱水を固形分30質量%になる量滴下し、水中油型のエマルションを形成した後、冷却して固形分30質量%のエステルワックス水系エマルションを得た。
<一般式(1)>
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数28〜38のアルキル基を表す。
得られたエステルワックス水系エマルションの平均粒径を、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(「LA−920」、株式会社堀場製作所製)を用いて測定したところ、0.4μmであった。
次に、得られたエステルワックス水系エマルション(固形分30質量%)100質量部と、カーボンブラック水分散体(富士色素株式会社製、フジSPブラック8625、固形分30質量%)2質量部とを混合し、流路形成用材料層塗布液を作製した。
<バック層塗布液の調製>
シリコーン系ゴムのエマルション(信越化学工業株式会社製、KS779H、固形分30質量%)16.8質量部、塩化白金酸触媒0.2質量部、及びトルエン83質量部を混合し、バック層塗布液を得た。
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
支持体としての平均厚み25μmのポリエステルフィルム(東レ株式会社製、ルミラーF65)片面に、前記バック層塗布液を塗布し、80℃で10秒間乾燥して、平均厚み0.02μmのバック層を形成した。
次に、前記支持体におけるバック層が形成された面とは反対側の面上に、前記流路形成用材料層塗布液を塗布し、70℃で10秒間乾燥して、平均厚み100μmの流路形成用材料層を形成した。以上により、実施例1の流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
ポリエステル系ホットメルト系接着剤(東亜合成株式会社製、アロンメルトPES375S40)を、ロールコーターを用いて、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、ルミラーS10、厚み50μm)上に厚みが50μmとなるように、190℃に加熱後、塗布して接着剤層を形成した。得られた塗工物を2時間以上静置した後、接着剤層面に、多孔質層としてのメンブレンフィルター(メルクミリポア社製、SVLP04700、厚み125μm、空隙率70%)を重ねて、150℃の温度で10秒間1kgf/cmの荷重をかけ、基材上に多孔質層を形成した。
<熱転写による流壁形成>
作製した流体デバイス製造用熱転写媒体と、前記基材上の多孔質層とを対向させて重ね合わせた後、下記の熱転写プリンタを用いて、以下に示す条件で熱転写し、図4に示す、流路の壁部の幅が600μm(図4中2a)の流路bを形成した後、再度、前記流体デバイス製造用熱転写媒体を対向させて重ね合わせた後、同様に熱転写プリンタを用いて、流路b上に図6に示す保護層2bを形成した。即ち、図5に示す流壁2a,2aと、基材5と、保護層2bとからなる流路bを有する図5及び図4に示す実施例1の流体デバイスを形成した。
流壁の形成は、ヘッド密度300dpi(TDK株式会社製)のサーマルヘッドを用い、印加速度16.9mm/sec、印加エネルギー0.68mJ/dotの評価系システムを構築して行った。
また、保護層2bの形成には、上記条件のうち印加エネルギーを0.22mJ/dotに変えた以外は、同様の評価系システムを構築して行った。
<センサ用流体デバイスの作成>
また、上記の流体デバイスとは別に、新たに流体デバイス製造用熱転写媒体と、前記基材上の多孔質層とを対向させて重ね合わせた後、上記と同様の条件で熱転写し、図4に示す、流路の壁部の幅が600μm(図4中2a)の流路bを形成した後、反応部cにpH指示薬(0.04質量%BTB溶液、和光純薬工業株式会社製)を塗布し、乾燥させた。このとき、反応部の色は黄色だった。
その後、再度、前記流体デバイス製造用熱転写媒体と前記基材上の多孔質層とを対向させて重ね合わせた後、上記と同様の条件にて流路b上に図6に示す保護層2bを形成し、センサ用流体デバイスを作製した。
(実施例2)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1において、平均厚み100μmの流路形成用材料層を形成する代わりに、平均厚み30μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
流体デバイス製造用熱転写媒体と、多孔質層として、ビニロン紙(クラレ社製、BFN No.1、厚み58μm、空隙率82%)とを対向させて重ね合わせた後、以下に示す条件で多孔質層の全面にベタ画像熱転写し、基材を有する多孔質層を形成した。なお、基材を有する多孔質層の断面形状を光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−1000、キーエンス株式会社製)にて観察したところ、多孔質層の厚み方向に対して、基材としての流路形成用転写材料が多孔質層の表面に露出した部分が10μm、基材としての流路形成用転写材料が多孔質層内部に浸透した部分が24μm、多孔質層は34μmであった。
基材の形成には、ヘッド密度300dpi(TDK株式会社製)のサーマルヘッドを用い、印加速度16.9mm/sec、印加エネルギー0.33mJ/dotの評価系システムを構築して行った。 <熱転写による流壁形成>
実施例1において、熱転写プリンタの評価系システムにおける流壁形成時の印加エネルギーを0.68mJ/dotから0.43mJ/dotに、保護層形成時の印加エネルギーを0.22mJ/dotから0.11mJ/dotに変更した以外は、全て同様にして実施例2の流体デバイスを作製した。
更に、実施例1と同様にして、センサ用流体デバイスを作製した。
(実施例3)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1において、平均厚100μmの流路形成用材料層を形成する代わりに、平均厚み50μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
実施例1において、多孔質層としてメンブレンフィルターを用いる代わりに、ビニロン紙(クラレ社製、BFN No.1、厚み58μm、空隙率82%)を用い、多孔質層を作成した。
<熱転写による流壁形成>
実施例1において、熱転写プリンタの評価系システムにおける流壁形成時の印加エネルギーを0.68mJ/dotから0.50mJ/dotに、保護層形成時の印加エネルギーを0.22mJ/dotから0.14mJ/dotに変更した以外は、全て同様にして実施例3の流体デバイスを作製した。
更に、実施例1と同様にして、センサ用流体デバイスを作製した。
(実施例4)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1において、平均厚100μmの流路形成用材料層を形成する代わりに、平均厚み120μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
実施例1において、多孔質層としてメンブレンフィルターを用いる代わりに、ニトロセルロースメンブレンフィルター(メルクミリポア株式会社製、ハイフロープラスHF075UBXSS、厚み135μm、空隙率70%)を用い、多孔質層を作成した。
<熱転写による流壁形成>
実施例1において、熱転写プリンタの評価系システムにおける流壁形成時の印加エネルギーを0.68mJ/dotから0.74mJ/dotに、保護層形成時の印加エネルギーを0.22mJ/dotから0.25mJ/dotに変更した以外は、全て同様にして実施例4の流体デバイスを作製した。
更に、実施例1と同様にして、センサ用流体デバイスを作製した。
(実施例5)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1において、平均厚100μmの流路形成用材料層を形成する代わりに、平均厚み250μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
実施例1において、多孔質層としてメンブレンフィルターを用いる代わりに、定性ろ紙(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社製、ワットマン定性ろ紙#4、厚み210μm、空隙率72%)を用い、多孔質層を作成した。
<熱転写による流壁形成>
実施例1において、熱転写プリンタの評価系システムにおける流壁形成時の印加エネルギーを0.68mJ/dotから1.18mJ/dotに、保護層形成時の印加エネルギーを0.22mJ/dotから0.45mJ/dotに変更した以外は、全て同様にして実施例4の流体デバイスを作製した。
更に、実施例1と同様にして、センサ用流体デバイスを作製した。
(実施例6)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1の流体デバイス製造用熱転写媒体の作製において、熱可塑性材料としてエステルワックスを用いる代わりに、ポリエチレンワックス(ベーカー・ペトロライト社製、PW400、溶融開始温度81℃、溶融粘度3mPa・s)を用いた以外は、実施例1と同様にして、流体デバイス作製した。
更に、実施例1と同様にして、センサ用流体デバイスを作製した。
(実施例7)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1において、熱可塑性材料としてエステルワックスを用いる代わりに、合成ワックス(三菱化学株式会社製、ダイヤカルナ、溶融開始温度86℃、溶融粘度160mPa・s)を用い、平均厚100μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
実施例1と同様にして基材上に多孔質を形成した。
<熱転写による流壁形成>
実施例1において、熱転写プリンタの評価系システムにおける流壁形成時の印加エネルギーを0.68mJ/dotから0.93mJ/dotに、保護層形成時の印加エネルギーを0.22mJ/dotから0.33mJ/dotに変更した以外は、全て同様にして実施例7の流体デバイスを作製した。
更に、実施例1と同様にして、センサ用流体デバイスを作製した。
(実施例8)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1において、熱可塑性材料としてエステルワックスを用いる代わりに、ポリオレフィン系樹脂(三菱化学株式会社製、ポリテール、溶融開始温度94℃、溶融粘度1500mPa・s)を用い、平均厚100μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
実施例1と同様にして基材上に多孔質を形成した。
<熱転写による流壁形成>
実施例1において、熱転写プリンタの評価系システムにおける流壁形成時の印加エネルギーを0.68mJ/dotから1.09mJ/dotに、保護層形成時の印加エネルギーを0.22mJ/dotから0.41mJ/dotに変更した以外は、全て同様にして実施例8の流体デバイスを作製した。
更に、実施例1と同様にして、センサ用流体デバイスを作製した。
(比較例1)
<離型層塗布液の調製>
ポリエチレンワックス(東洋アドレ株式会社製、ポリワックス1000、融点99℃、25℃における針入度2)14質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル株式会社製、EV−150、重量平均分子量2,100、VAc21%)6質量部、トルエン60質量部、及びメチルエチルケトン20質量部を、平均粒径が2.5μmとなるまで分散し、離型層塗布液を得た。
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
支持体としての平均厚み25μmのポリエステルフィルム(東レ株式会社製、ルミラーF65)片面に、前記バック層塗布液を塗布し、80℃で10秒間乾燥して、平均厚み0.02μmのバック層を形成した。
次に、前記ポリエステルフィルムにおける前記バック層が形成された面とは反対側の面に、前記離型層塗布液を塗布し、40℃で10秒間乾燥して、平均厚み1.5μmの離型層を形成した。
次に、前記離型層上に、前記流路形成用材料層塗布液を塗布し、70℃で10秒間乾燥して、平均厚み100μmの流路形成用材料層を形成した。
<熱転写による流壁形成>
上記で作製した流体デバイス製造用熱転写媒体を用い、実施例1と同様の条件で比較例1の流体デバイスを作製した。
しかし、比較例1は、熱転写プリンタのエネルギーが不足し、流路形成用材料が多孔質層の厚み方向に完全に浸透せず、バリア性を評価するパターン幅の数値範囲では、多孔質層の空隙を流路形成用材料によって充分に埋めることができず、バリア性を確保できるだけの流路が形成できなかった。
(比較例2)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
比較例1において、平均厚み100μmの流路形成用材料層を形成する代わりに、平均厚み30μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
上記で作製した流体デバイス製造用熱転写媒体を用い、実施例2と同様の条件で比較例2の多孔質層を作製した。
<熱転写による流壁形成>
上記で作製した流体デバイス製造用熱転写媒体を用い、実施例2と同様の条件で比較例2の流体デバイスを作製した。
しかし、比較例2は、熱転写プリンタのエネルギーが不足し、流路形成用材料が多孔質層の厚み方向に完全に浸透せず、バリア性を評価するパターン幅の数値範囲では、多孔質層の空隙を流路形成用材料によって充分に埋めることができず、バリア性を確保できるだけの流路が形成できなかった。
(比較例3)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
比較例1において、平均厚み100μmの流路形成用材料層を形成する代わりに、平均厚み250μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
上記で作製した流体デバイス製造用熱転写媒体を用い、実施例5と同様の条件で比較例3の多孔質層を作製した。
<熱転写による流壁形成>
上記で作製した流体デバイス製造用熱転写媒体を用い、実施例5と同様の条件で比較例3の流体デバイスを作製した。
しかし、比較例3は、熱転写プリンタのエネルギーが不足し、流路形成用材料が多孔質層の厚み方向に完全に浸透せず、バリア性を評価するパターン幅の数値範囲では、多孔質層の空隙を流路形成用材料によって充分に埋めることができず、バリア性を確保できるだけの流路が形成できなかった。
(比較例4)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1において、平均厚み100μmの流路形成用材料層を形成する代わりに、平均厚み25μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
流体デバイス製造用熱転写媒体と、多孔質層として、ビニロン紙(クラレ社製、BFN No.1、厚み58μm、空隙率82%)とを対向させて重ね合わせた後、以下に示す条件で多孔質層の全面にベタ画像を熱転写し、基材を有する多孔質層を形成した。なお、基材を有する多孔質層の断面形状を光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−1000、キーエンス株式会社製)にて観察したところ、多孔質層の厚み方向に対して、基材としての流路形成用転写材料が多孔質層内部に浸透した部分が30μm、多孔質層は28μmであった。
基材の形成は、ヘッド密度300dpi(TDK株式会社製)のサーマルヘッドを用い、印加速度16.9mm/sec、印加エネルギー0.40mJ/dotの評価系システムを構築して行った。
<熱転写による流壁形成>
実施例1において、熱転写プリンタの評価系システムにおける流壁形成時の印加エネルギーを0.68mJ/dotから0.40mJ/dotに、保護層形成時の印加エネルギーを0.22mJ/dotから0.09mJ/dotに変更した以外は、全て同様にして比較例4の流体デバイスを作製した。
更に、実施例1と同様にして、センサ用流体デバイスを作製した。
しかし、比較例4は、多孔質層の厚みが薄いため、pH指示薬の試薬量が不足し、本評価で用いた試薬の濃度では、目視で発色を確認することができず、センサとして機能しなかった。
(比較例5)
<流体デバイス製造用熱転写媒体の作製>
実施例1において、平均厚100μmの流路形成用材料層を形成する代わりに、平均厚み280μmの流路形成用材料層を形成し、流体デバイス製造用熱転写媒体を作製した。
<多孔質層の形成>
実施例1において、多孔質層としてメンブレンフィルターを用いる代わりに、定性ろ紙(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社製、ワットマン定性ろ紙#4、厚み210μm、空隙率72%)を用い、多孔質層を作成した。
<熱転写による流壁形成>
実施例1において、熱転写プリンタの評価系システムにおける流壁形成時の印加エネルギーを0.68mJ/dotから1.29mJ/dotに、保護層形成時の印加エネルギーを0.22mJ/dotから0.50mJ/dotに変更した以外は、全て同様にして比較例5の流体デバイスを作製した。
しかし、比較例5は、流路形成材料層の厚みが厚く、熱転写プリンタのエネルギーでは熱量が不足しているため、流路形成用材料が多孔質層の厚み方向に完全に浸透せず、バリア性を評価するパターン幅の数値範囲では、多孔質層の空隙を流路形成用材料によって充分に埋めることができず、バリア性を確保できるだけの流路が形成できなかった。
<流壁の浸食の有無(バリア性)の評価>
各流体デバイスの流路内にマイクロピペットで試料液(食用色素(食用赤色2号、アマランス)で赤色に着色した蒸留水)を35μL滴下し、10分間放置した後の試料液による流壁の浸食の有無を目視観察し、「浸食あり」の流体デバイスの個数を数え、以下の基準で評価した。なお、各実施例及び比較例につき、流体デバイスの評価数nは10個とした。
各流体デバイスにおける流壁の浸食の有無の判定については、図7Aに示したように、流壁内に試料液が留まっている状態を「浸食なし」とし、図7B及び図7Cに示したように、流壁の一部から外部に試料液が漏れ出ている状態や流壁の全体から外部に試料液が漏れ出している状態を「浸食あり」とした。
〔評価基準〕
○:「浸食あり」の流壁を有する流体デバイスの数が、10個中0個である
×:「浸食あり」の流壁を有する流体デバイスの数が、10個中1個〜10個である
<センサとしての性能評価>
センサ用流体デバイスの流路内にマイクロピペットで試料添加部aに無色透明のNaOH 1質量%水溶液を35μL滴下し、10分間放置した後の反応部cにおけるNaOH水溶液とpH指示薬の呈色反応の有無を目視観察し、「呈色あり」の流体デバイスの個数を数え、以下の基準で評価した。なお、各実施例及び比較例につき、各流体デバイスの評価数nは10個とした。
流体デバイスにおける呈色の有無の判定については、反応部cが黄色から青色の色変化が確認できたものを「呈色あり」とし、色変化が見られないもの、もしくは発色を確認できないものは「呈色なし」とした。
〔評価基準〕
○:「呈色あり」のセンサ用流体デバイスの数が、10個中10個である
×:「呈色あり」のセンサ用流体デバイスの数が、10個中0個〜9個である
表1の結果から、実施例1〜8の流体デバイスは、比較例1〜3、比較例5の流体デバイスに比べて、流路を構成する流壁の液体不浸透性(バリア性)が高いことがわかった。
さらに実施例1〜8のセンサ用流体デバイスは、比較例4のセンサ用流体デバイスに比べて、反応性指示薬の発色性が高いことがわかった。



























本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>
少なくとも支持体と、
該支持体上に設けられた流路形成用材料層と、を有しており、
該流路形成用材料層は、流体デバイスを構成する多孔質の部材に当該流路形成用材料層が熱転写されるときに、前記多孔質の部材に浸透する熱可塑性材料を有しており、
前記流路形成用材料層の厚みは、30μm以上250μm以下であることを特徴とする流体デバイス製造用熱転写媒体。
<2>
前記流路形成用材料層の厚みは、50μm以上120μm以下であることを特徴とする<1>に記載の流体デバイス製造用熱転写媒体。
<3>
前記<1>又は<2>に記載の流体デバイス製造用熱転写媒体における流路形成用材料層と、前記多孔質の部材とを重ね合わせ、前記流体デバイス製造用熱転写媒体に熱と圧力を加えることにより、前記流路形成用材料層を前記多孔質の部材に転写させ、前記熱可塑性材料を、前記多孔質の部材に浸透させることにより前記多孔質の部材に流路を形成する工程を含むことを特徴とする流体デバイスの製造方法。
<4>
前記<1>又は<2>に記載の流体デバイス製造用熱転写媒体における前記熱可塑性材料が、前記多孔質の部材に浸透することによって形成された流路部材を有することを特徴とする流体デバイス。
1 多孔質層
2 流壁
2a 流壁
2b 保護層
3 試料液
4 流路
5 基材
9 隆起部
13 保護層
111 バック層
112 支持体
113 離型層
114 流路形成用材料層
115 流体デバイス製造用熱転写媒体
特開平8−233799号公報 特表2010−515877号公報 特開2012−37511号公報 国際公開第2012/160857号パンフレット
E.Carrilho,A.W.Martinez,G.M.Whitesides,Anal.Chem.,81,7091(2009)

Claims (4)

  1. 少なくとも支持体と、
    該支持体上に設けられた流路形成用材料層と、を有しており、
    該流路形成用材料層は、流体デバイスを構成する多孔質の部材に当該流路形成用材料層が熱転写されるときに、前記多孔質の部材に浸透する熱可塑性材料を有しており、
    前記流路形成用材料層の厚みは、30μm以上250μm以下であることを特徴とする流体デバイス製造用熱転写媒体。
  2. 前記流路形成用材料層の厚みは、50μm以上120μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の流体デバイス製造用熱転写記録媒体。
  3. 請求項1又は2に記載の流体デバイス製造用熱転写媒体における流路形成用材料層と、前記多孔質の部材とを重ね合わせ、前記流体デバイス製造用熱転写媒体に熱と圧力を加えることにより、前記流路形成用材料層を前記多孔質の部材に転写させ、前記熱可塑性材料を、前記多孔質の部材に浸透させることにより前記多孔質の部材に流路を形成する工程を含むことを特徴とする流体デバイスの製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の流体デバイス製造用熱転写媒体における前記熱可塑性材料が、前記多孔質の部材に浸透することによって形成された流路部材を有することを特徴とする流体デバイス。
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