JP2015126157A - 薄膜キャパシタ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐圧性能を長期にわたって維持できる薄膜キャパシタを提供する。【解決手段】下部電極2と、下部電極上に設けられ欠陥を包含する誘電体層3と、誘電体層上に形成された上部電極とを備える。誘電体層の欠陥5領域と上部電極との界面には樹脂材料による絶縁体構造物6が形成されている。この絶縁体構造物は上部電極と接するように形成されており、かつ、誘電体層の欠陥上に空隙7を形成する構造を有する。絶縁体構造物と空隙とにより、欠陥と上部電極とを確実に離間させ、薄膜キャパシタ1の長期的な耐圧特性を向上させる。【選択図】図1

Description

本発明は薄膜キャパシタに関する。
近年の各種電子機器では、電子部品を実装するスペースが縮小される傾向にある。このためキャパシタ(いわゆる「コンデンサ」をいう。)では素子の低背化が要求されている。
キャパシタの低背化には誘電体層を薄くすることが有効である。誘電体層厚を薄くしたキャパシタとして、スパッタリング法等の薄膜形成技術を用いて誘電体層を形成したキャパシタ(以下、「薄膜キャパシタ」という。)が知られている(特許文献1参照。)。特許文献1に記載の薄膜キャパシタは、ベース基板上に、第1の電極層、誘電体層、第2の電極層をこの順に積層して形成されている。
従来の薄膜キャパシタでは、誘電体層厚を薄くしていくと、誘電体層に欠陥が生じて短絡不良が発生したり、リーク電流が増加したり、耐電圧が低下したりするといった問題があった。ここで「欠陥」とは、誘電体層上や誘電体層内部に存在する、異物や誘電体のクラック、ピンホールなどのような誘電体の正常な状態とは異なる部位のことをいう。
特許文献1では、短絡不良の発生、リーク電流の増加、耐電圧の低下という問題は、誘電体層に存在するピンホール部や結晶粒界に起因して発生するとの考えを示している。特許文献1は、この問題の解決手段として、誘電体層のピンホール部や結晶粒界と第1の電極層の間に、第1の電極層を構成する材料を酸化させた絶縁層を設ける技術を開示している。
特許文献2は、下層の導体パターン上に、絶縁層または低誘電体層を積層し、この絶縁層等の上に上層の導体パターンを積層してなる多層配線基板における絶縁層等の欠損部分を補修する技術を開示している。この技術では、絶縁層等の形成後に、下層の導体パターンを一方の電極とした電着法を用いて、絶縁層等の欠損部分に、エポキシ樹脂等の絶縁性材料を付着させている。
特許文献3は、誘電体層のピンホール部などに対して電気泳動法を用いた樹脂絶縁物を形成する製造方法を開示している。
特開2002−26266号公報 特開2002−185148号公報 特開2008−160040号公報
特許文献1乃至3の発明者らが開示するように、誘電体層の欠陥をなんらかの絶縁体構造物でコーティングする技術は知られている。しかし、本発明者らはこのようなコーティングをおこなっても薄膜キャパシタに耐圧性能の低下が発生する場合があることを見いだした。
本発明者らの検討したところによれば、薄膜キャパシタの耐圧性能の低下は、使用を通じて絶縁体構造物に誘電体層と同様の電荷蓄積が生じることに拠る。絶縁体構造物に蓄えられた電荷が過大となった場合、絶縁体構造物の内部を伝播して欠陥に到達する場合がある。そのため、薄膜キャパシタは絶縁体構造物の形成を行っても絶縁破壊が生じるおそれがある。
本発明は、耐圧性能を長期にわたって維持できる薄膜キャパシタを提供することを課題とする。
上記の課題を解決する薄膜キャパシタは、下部電極と、下部電極上に設けられた誘電体層と、誘電体層上に形成された上部電極とを備える。薄膜キャパシタの誘電体層には欠陥が含まれている。薄膜キャパシタの、誘電体層の欠陥包含部分の近傍と上部電極との界面には、樹脂材料による絶縁体構造物が形成されている。この絶縁体構造物は上部電極と接するように形成されており、かつ、誘電体層の欠陥上に空隙を形成する構造を有する。絶縁体構造物の「空隙を形成する構造」とは、
(1)内部に空隙を有する構造、
(2)誘電体層と絶縁体構造物との間に空隙を有する構造、
のいずれかである。誘電体層と上部電極と絶縁体構造物とが上記の構造をとることにより、欠陥と上部電極とを確実に離間させることができる。そのため、絶縁体構造物に蓄積された電荷が誘電体層の欠陥に到達することはなく、薄膜キャパシタの耐圧特性を向上させることができる。
本発明の薄膜キャパシタの絶縁体構造物が形成する空隙は、薄膜キャパシタの厚み方向の空隙厚みが、誘電体層の厚みの1.0〜1.5倍であることが好ましい。これにより、誘電体層の欠陥部分と上部電極との距離が担保され、耐圧性能の低下をより確実に抑えることができる。加えて、誘電体層よりも容量が低い領域の形成を最小限に抑えることができるため、薄膜キャパシタの性能維持という観点からも好ましい。
本発明の薄膜キャパシタの絶縁体構造物が上部電極と接する側の絶縁体構造物厚みは、誘電体層の欠陥中心の上部において、誘電体層の厚みの0.5〜1.2倍であることが好ましい。より詳細には、上記「空隙を形成する構造」のうちの(1)の場合は0.5〜0.8倍であることが、(2)の場合は0.6〜1.2倍であることが、それぞれ好ましい。これにより、誘電体の欠陥部分と上部電極との絶縁が担保され、耐圧性能脳低下をより確実に抑えることができる。加えて、誘電体層よりも容量が低い領域の形成を最小限に抑えることができるため、薄膜キャパシタの性能維持という観点からも好ましい。
本発明によれば、従来よりも長期的な耐圧特性に優れた薄膜キャパシタを提供することができる。
第1の実施形態に係る薄膜キャパシタを模式的に示した斜視断面図である。 第1の実施形態に係る薄膜キャパシタの絶縁体構造物を上面から観察した光学顕微鏡の観察像である。 第1の実施形態に係る薄膜キャパシタの絶縁体構造物を断面観察した電子顕微鏡の観察像である。 第1の実施形態に係る薄膜キャパシタの絶縁体構造物を模式的に示した断面図である。 第2の実施形態に係る薄膜キャパシタの絶縁体構造物を模式的に示した断面図である。 第1および第2の実施形態に係る薄膜キャパシタへの絶縁体構造物の形成プロセスである。 第1および第2の実施形態に係る薄膜キャパシタへ絶縁体構造物を形成する電着槽の模式図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の第一の実施形態における薄膜キャパシタの斜視断面図である。薄膜キャパシタ1は、下部電極2、下部電極2上に形成された誘電体層3、さらにその上に形成された上部電極4(図1では図示せず)により構成されている。誘電体層3にはピンホールや結晶のズレなどに起因する欠陥5が存在する。誘電体層3の上面には、欠陥5を略中心に置くような態様で絶縁体構造物6が形成されている。第一の実施形態は、絶縁体構造物の中に空隙が形成されている態様(前述の態様(1)をいう。)であるため、絶縁体構造物6は上部の6aおよび下部の6bが形成され、両者の間に空隙7が存在する。
図2は、本発明の第一の実施形態に係る薄膜キャパシタ1の絶縁体構造物6近傍の光学顕微鏡による観察像である。誘電体層3の表面に絶縁体構造物6が略円形に形成されているのが確認できる。欠陥5は、絶縁体構造物6の略中央に透過観察されている。図3は、本発明の第一の実施形態に係る薄膜キャパシタ1の絶縁体構造物6近傍の電子顕微鏡による断面観察像である。この断面観察は、焦点制御されたイオンビームによるエッチング加工を用いて断面形成をおこない、観察したものである。図3の観察により、絶縁体構造物6における上部6aと下部6bとの間には空隙が形成されていることが明瞭に観察される。
第一の実施形態における誘電体層3と絶縁体構造物6との関係を、模式断面図を用いて詳細に説明する。図4は、本発明の第一の実施形態に係る薄膜キャパシタを模式的に示した断面図である。第一の実施形態では、誘電体層3の欠陥5を略中心とするように絶縁体構造物6が形成されており、絶縁体構造物6が上部6aと下部6bとに分離して空隙7を形成している。図4では誘電体層3の欠陥5がピンホールなどの欠損型の欠陥であった場合を示しているが、欠陥5がパーティクルなどの付着型の欠陥であった場合は、絶縁体構造物6の下部6bはその欠陥5を被覆する態様となるが、下部6bから欠陥5の一部が露出していてもよい。ただし、その場合は欠陥5の一部が絶縁体構造物6の上部6aに接触していないことが望ましい。絶縁体構造物6に蓄積された電荷が欠陥5に流れる経路を構成してしまう場合があるためである。ここで、第一の実施形態における薄膜キャパシタにおいて本発明の効果を発揮するため、誘電体層3と絶縁体構造物6との位置関係は以下のようになっている。
(1)第一の実施形態における絶縁体構造物6が形成する空隙7は、薄膜キャパシタ1の厚み方向の空隙厚みδが、誘電体層の厚みαの1.0〜1.5倍であることが好ましい。厚みδは図4に示すとおり欠陥5の位置で測定される値をいう。上述のように欠陥5が付着型であった場合は、付着物を被覆した絶縁体構造物6の上端もしくは付着物の上部先端から測定する値となる。この空隙7は気体であり誘電体層3よりも低誘電率であるため、誘電体層3と同等もしくは大きな厚みを有することにより、欠陥5の近傍を低誘電率化することができる。これにより、誘電体層3の欠陥部分の電荷集中を回避することができ、絶縁体構造物6に電荷が蓄積されてもその電荷が欠陥5に到達することを回避できる。
(2)第一の実施形態における絶縁体構造物6の上部6aの厚みβと下部6bの厚みγとは、誘電体層3の欠陥5の上部において、βとγとの合計が誘電体層3の厚みαの0.5〜0.8倍であることが好ましい。これにより、空隙7が十分な機械的強度で維持されるため、誘電体の欠陥部分と上部電極との絶縁が担保される。その結果、耐圧性能脳低下をより確実に抑えることができる。
図5は、本発明の第二の実施形態に係る薄膜キャパシタを模式的に示した断面図である。第二の実施形態では、第一の実施形態(図4)の薄膜キャパシタ1とは異なり、誘電体層3の表面にある絶縁体構造物6は上部電極4の側のみに存在する。この形態は、絶縁体構造物6が上部6aのみからなると解釈できるが、第一の実施形態の上部6aと同様に薄膜キャパシタ1の厚み方向の空隙厚みδが、誘電体層の厚みαの1.0〜1.5倍であることが好ましい。ただし、絶縁体構造物6の上部6aの厚みβについては、第一の実施形態の範囲よりも若干大きな0.6〜1.2倍であることが好ましい。空隙7の維持が絶縁体構造物の上部6aのみで行われるため、機械的な強度を確実に担保することが望ましいからである。
以下、第一および第二の実施形態における薄膜キャパシタ1を、理解の容易のため工程にそって説明する。下部電極2の材料は、公知の導電性材料を適宜選択することができる。公知の導電性材料とは、たとえば、金属、金属酸化物、導電性有機材料などをいう。特に、下部電極2は低電気抵抗であることが望ましく、機械的強度が高いことが望ましいため、金属材料を用いることが好ましい。中でも、NiやCuは電気抵抗の低い比較的強靭な金属材料であるため好ましい。特に、高温負荷信頼性および耐湿負荷信頼性の見地から、少なくともNiを含んだ導電体であることが望ましい。ここでいうNiを含んだ導電体とは純Ni(Ni99.9%以上)のこと、もしくはNi系の合金のことをいう。Ni系の合金の場合、例えばPt、Pd、Ir、Ru、Rhなどの貴金属元素を含むことが望ましく、その含有量は75wt%以下が望ましい。このような含有率の範囲内であれば、純Niを使用した場合と同等な薄膜キャパシタ1の高温負荷信頼性および耐湿負荷信頼性が得られる。
第一および第二の実施形態における下部電極2の形態は、金属を含む導電性の箔、金属を含む焼結体あるいは任意の基板上に形成された導電性薄膜など、各種の形態を選択することができる。下部電極2は、特に金属多結晶体よりなるNi金属箔であることが好ましい。金属箔にすることで、誘電体層との熱膨張係数の差を小さくすることが可能となり、薄膜キャパシタ1の容量の減少を抑制することが可能となる。導電性薄膜としては、例えば、Si基板やセラミック基板(図示せず)の上に、下部電極2としてスパッタリングや蒸着等によってNi電極層を形成して用いてもよい。このような形態の場合、基板は誘電体層3との熱膨張係数差が小さな材料を選択することが望ましい。基板には、例えばNi膜つきのSi基板、Ni膜つきのセラミック基板などを用いることができる。これにより、熱膨張係数差に起因する薄膜キャパシタ1の容量低下を抑制することができる。
第一および第二の実施形態における下部電極2の形態は、さらに下部電極2と誘電体層3との間には異なる導電性材料を介在させたものであってもよい。あるいは、多層電極構造であってもよい。多層電極構造としては、誘電体層3と接する面側にNi電極層を配置した多層電極膜とすることができる。このような多層電極層は、例えばCu金属箔にNi電極層をスパッタリングや蒸着等によって形成し積み重ねた構造であってもよい。ただし、Ni電極層と誘電体層3とが接している場合は、薄膜キャパシタ1の高温負荷信頼性および耐湿負荷信頼性が向上する。
第一および第二の実施形態における誘電体層3の材料は、誘電率の大きなペロブスカイト型結晶構造の酸化物誘電体が好ましい。このような酸化物誘電体であれば適宜選択し、第一および第二の実施形態に適用して本発明の効果を得ることができるが、鉛を含まないチタン酸バリウム系の誘電体は環境保全の見地から好ましい。チタン酸バリウム系の誘電体の場合、Baサイトの一部をCa、Srなどのアルカリ土類で置換したものを用いてもよい。またTiサイトの一部をZr、Sn、Hfなどの元素で置換したものを用いてもよい。さらに、この誘電体に希土類元素やMn、V、Nb、Taなどを添加してもよい。
第一および第二の実施形態における誘電体層3の形成は、一般に誘電体薄膜形成で通常使用される方法、例えば錯体などの原料溶液の塗布と焼成、直接的な薄膜形成方法としてスパッタリング、蒸着、パルスレーザー成長(PLD)などの物理的気相成長(PVD)法、化学的気相成長(CVD)法などを適宜用いることができる。
第一および第二の実施形態における誘電体層3の構造は、全体の厚みが1000nm以下である薄膜とすることが好ましい。ここでいう全体の厚みとはリークバルブ粒子5の食い込み深さを除く誘電体層3の厚みをいう。誘電体層3全体の厚みが1000nmを超える場合、単位面積あたりの容量値が減少してしまうおそれがある。また膜厚の下限は特にないが、薄くなるに従い絶縁抵抗値が小さくなる。そのため50nm以上は必要と考えられる。以上の絶縁抵抗値と容量の関係を考慮し、薄膜キャパシタ1の好ましい誘電体層3の膜厚の範囲は250nmから1000nmであると考えられる。
第一および第二の実施形態における絶縁体構造物6の独特の構造は、絶縁体構造物6の形成にガス発生要素を付与した形成工程により実現される。図6(a)から(c)を用いて、絶縁体構造物6の形成工程を説明する。
図6(a)は、絶縁体構造物6を形成する前の被形成物の状態を模式的に示す。下部電極2上に形成された誘電体層3の一部に、欠陥5が形成されている。図6(b)に示すように、この被形成物の欠陥5近傍に、絶縁体構造物6の母材AおよびBを堆積させる。母材Aは樹脂材料であり、後述する電気泳動法により供給される。母材Bは不活性ガスを放出するガス発生要素であり、例えば、二酸化炭素ガスを放出する炭酸水素ナトリウムや、窒素ガスを放出するジアゾニウム塩を好適に用いることができる。ここで、母材AおよびBの供給方法によって、第一の実施形態の絶縁体構造物6と、第二の実施形態の絶縁体構造物6とを、以下のとおり作り分けることができる。
(1)後述する電気泳動法による絶縁体構造物6の電着形成の際に、母材AとBとを同時に供給することにより、樹脂材料中にガス発生要素を包含する母材を形成することができる。これにより、絶縁体構造物6は後述する電着プロセス後の加熱時に上部6aと下部6bとに分割されて空隙7を形成するため、第一の実施形態における絶縁体構造物6を形成することができる。
(2)後述する絶縁体構造物6の電気泳動法による電着形成において母材Aを供給する前に、誘電体層3の欠陥5の部分に炭酸水素ナトリウムやジアゾニウム塩を付着させることができる。具体的には、純水に母材Bを溶解させた溶液中に、下部電極2上に誘電体層3を形成した試料を浸漬する。溶液から引き上げた試料を純水等適当な溶媒でリンスして乾燥すると、試料の欠陥5に母材Bが残留する。この残留は、欠陥がピンホールやパーティクルの場合は凹凸形状により生じ、誘電体層の結晶的な欠陥の場合は静電的に生じるのではないかと考えられる。これにより、絶縁体構造物6は後述する電着プロセス後の加熱時に誘電体層3から浮き上がった上部6aのみとなって空隙7を形成するため、第二の実施形態における絶縁体構造物6を形成することができる。
図6(b)に示す絶縁体構造物6の母材Aは、電気泳動法による樹脂材料の電着形成によって行われる。絶縁体構造物6の樹脂材料としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、PEEK樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂等の高抵抗樹脂材料を用いることができる。高抵抗樹脂材料の中でも、ポリイミド樹脂は機械的強度の面からも特に好ましい。 絶縁体構造物6には、複数の樹脂材料を組み合わせて用いてもよい。また、ポリアミック酸塩等のポリイミド前駆体樹脂を含む溶液を用いた電気泳動法によりポリアミック酸の電着物を形成し、その後、この電着物を、加熱脱水することによりポリイミド樹脂体とし、これを絶縁体構造物6とすることもできる。
絶縁体構造物6の形成は、純水を溶媒とし、図6(b)の母材Aにあたる樹脂材料のモノマーを分散させて実施する電気泳動法により形成するのが好ましい。この電気泳動法により、誘電体層3の表面に樹脂材料を容易に電着することができる。図7に、第一および第二の実施形態における電着装置の概略図を示す。例えば、特に好適な樹脂材料としてポリイミド樹脂を用いる場合を例にとると、ポリアミック酸塩等のポリイミド前駆体樹脂を含む溶液を電着液13とし、アノード9とカソード10との間に通電することにより、カソード10に設けられた電着用試料11に電着によりポリアミック酸の電着物を形成する。電着用試料11では、誘電体層3がアノード9に対向している(図示せず。)。この電着物を加熱脱水してポリイミド樹脂体とし、絶縁体構造物6を得る。
ただし、本実施形態の電気泳動法は、従来知られている樹脂材料の電着形成とは異なる装置の構造であり、形成条件である。具体的には、(A)電気泳動法に用いるアノード電極9を、電極本体であるSUS系材料表面にアルミナやシリカあるいは酸化鉄等の酸化物からなる不動体被膜を形成した構造とすること、(B)電着溶液中の樹脂材料含有量を、0.1wt%以上1.0wt%以下の低濃度とする製造条件を用いること、である。これらの要件(A)と(B)とを組み合わせた電着泳動法によって、第一および第二の実施形態に示すような欠陥5が略中心にあるほぼ円形の絶縁体構造物6が得られるが、その原因は必ずしも明確ではない。本発明者らは、研究を通じて以下のようにメカニズムを推測している。
要件(A)により、電着溶液中の樹脂材料モノマーからの電子引き抜き反応が抑制され、極性モノマーの割合が低下する。極性モノマーは電着時の電界が集中しやすい欠陥5に集まろうとする。他の非極性モノマーは、極性モノマーに引きずられるように誘電体層3の表面に移動するが、欠陥5に吸引されるほどの電気的ポテンシャルを有するわけではないため、欠陥5に到達する前に誘電体層3上に吸着される。非極性モノマーの運動エネルギーは、電着溶液中の集団としてある分布を持っている。そのため、絶縁体構造物6の形状は、非極性モノマーの運動エネルギー分布に応じた、面方向と厚み方向との広がりをもつ。この結果、本実施形態の絶縁体構造物6は、誘電体層3において、欠陥5を略中心に配した略円形の形状を呈する。絶縁体構造物6の大きさや端部の形状は、電流の強弱によっても変化する。高電流では厚みやテーパー角度が大きくなり、低電流では厚みやテーパー角度が小さくなる傾向がある。この結果は、極性モノマーが欠陥5に吸引されるポテンシャルが増減することによって非極性モノマーが到達できる誘電体層3の面積も変化するためと考えられる。第一および第二の実施形態では、樹脂材料の電気泳動法として低い電流(1〜50mA/cm2)で電着を実施している。
要件(B)により、電着溶液中の過剰なモノマー会合が抑制される。本実施形態における電気泳動法は、純水の溶媒(電着液13)中に樹脂材料のモノマーを分散させておこなう。この場合、モノマーの濃度が高ければ溶媒中でモノマー同士の会合が起こり、モノマーが集合体として欠陥5の方向に運ばれる場合がある。集合体としてのモノマーには極性モノマーが含まれうるため、多くのモノマーが欠陥5の付近に堆積する可能性がある。電着溶液中の樹脂材料含有量を、0.1wt%以上1.0wt%以下の低濃度とすることにより、溶媒中でのモノマーの会合確率が低下するため、モノマーが集合体でなく単体で誘電体層3の表面に移動する確率が高くなる。この結果、絶縁体構造物6の形状は、モノマーの運動エネルギー分布のみに応じた、面方向と厚み方向との広がりをもち、欠陥5を略中心に配した略円形の形状を呈する。
なお、上記のように電着溶液中の樹脂材料含有量を調整するほか、電着溶液中に適量の分散剤を添加してもよい。このような分散剤には、公知の界面活性剤を適宜用いることができる。特に、界面活性剤であるアルキルグルコシドやポリエチレングリコール、脂肪酸ナトリウムなどを用いることができる。あるいは、超音波撹拌によって樹脂材料のモノマーを分散させてもよい。
以上の工程で得られた絶縁体構造物6の母材AおよびBに対して加熱処理をおこなう。この加熱処理では母材Bに起因するガス放出が生ずるため、絶縁体構造物6は、その内部または誘電体層3との界面のいずれかに空隙7を伴った構造で形成される。これにより、図6(c)に示すふくらみを持った略円形の絶縁体構造物6が形成される。加熱処理の温度は母材Aの分解温度よりも低いこと、母材Bからのガス放出が促されること、の二点を条件に設定される。したがって母材AおよびBの種類によって加熱処理温度は変動するものの、おおむね180℃から230℃の温度範囲となる。
第一および第二の実施形態の薄膜キャパシタ1では、絶縁体構造物6を形成した後に上部電極4を形成する。上部電極4の材料は、公知の導電性材料を適宜選択することができる。公知の導電性材料とは、たとえば、金属、金属酸化物、導電性有機材料などをいい、これらを適宜選択することができる。特に、上部電極4は低電気抵抗であること、機械的強度が高いことが好ましい。そのため、金属を用いることが好ましい。中でもNiやCuは電気抵抗の低い比較的強靭な金属材料であるため好ましい。上部電極4は、Ni電極層あるいはCu電極層の単層からなっていてもよいが、Ni電極層とCu電極層の二層構造であってもよい。上部電極4と誘電体層3あるいは絶縁体構造物6との間には、異なる導電性材料を介在させてもよい。上部電極4にNi電極層を含む場合は、信頼性の見地から、Ni電極層側が誘電体層3に接触していることが望ましい。上部電極4の全部または一部にNi電極層を用いる場合、下部電極2と同様に純NiもしくはNi系の合金を用いることができる。Ni系の合金である場合、例えばPt、Pd、Ir、Ru、Rhなどの貴金属元素を含むことが望ましく、その含有量は75wt%以下が望ましい。さらにその厚みは、0.1μm以上2.0μm以下が好ましい範囲である。
本実施形態のNi電極層の上には、Cu電極層が形成されていてもよい。ここでいうCu電極層は純Cu(Cu99.9%以上)のこと、もしくはCu系の合金が好ましい。合金の場合、例えばPt、Pd、Ir、Ru、Rhなどの貴金属元素を含むことが望ましく、その含有量は50vol%以下が望ましい。CuはAuやAgと抵抗率が同等で、工業的に使用し易い特徴がある。そのため電子機器の配線に多く使用されている。またその抵抗率が比較的小さいため、本実施形態のような薄膜キャパシタの電極層として使用する場合、等価直列抵抗(ESR)を減少させるといった効果がある。
上部電極4の形成には、金属薄膜形成に通常使用される方法、例えば錯体などの原料溶液の塗布と焼成、直接的な薄膜形成方法としてスパッタリング、蒸着、パルスレーザー成長(PLD)などの物理的気相成長(PVD)法、化学的気相成長(CVD)法などを適宜用いることができる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例1から12までは、上述の「第一の実施形態」に類する薄膜キャパシタについて例示する。また、実施例13から21までは、「第二の実施形態」に類する形態の薄膜キャパシタについて例示する。
(実施例1)
100mm×100mmの大きさのNi金属箔上に誘電体層(BaTiO系誘電体)を形成した。誘電体層はスパッタリング法により1000nmの厚みで成膜した。成膜後の試料はアニールして誘電体層を結晶化させた。その後、絶縁体構造物を形成する前処理として、誘電体層の表面をスクラブ洗浄して異物を除去した。
結晶化した誘電体層に対して、電気泳動法を用いて絶縁体パッチ材を形成した。誘電体層を形成したNi金属箔を電着槽の電解液に浸漬する。電着槽のアノード電極は、SUS系材料にアルミナ不動体被膜を2μm形成した電極を用いた。電着槽の電解液には、純水に樹脂母材であるイミド系樹脂0.5wt%と、ガス供給源である炭酸水素ナトリウム1wt%とを添加した。Ni箔を電着液に浸漬した状態で、電流5mA/cm一定とし、電着の状況を目視観察しながら電圧を適宜制御しながら電着を実施した。得られた試料を200℃のオーブンでキュアさせて絶縁体構造物を形成した。ここまでの試料から複数の絶縁体構造物の部分を分取し、外観を光学顕微鏡で、断面を電子顕微鏡でそれぞれ観察したところ、絶縁体構造物の形状は、中間に空隙を有する構造物であって、空隙は誘電体欠陥の直上で約1200nm(誘電体層の厚みの約1.2倍)の厚みを有し、空隙上部の絶縁体構造物の厚みは約300nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約450nmであった。したがって、絶縁体構造物の絶縁体分の厚みは約750nm(誘電体層の厚みの約0.75倍)であった。また、絶縁体構造物の端部から欠陥の端部までの最短距離は約54μmであった。
絶縁体構造物の形成後、上部電極としてNiとCuとを、この順でそれぞれスパッタリング法により成膜した。上部電極形成後、上部電極のパターニングを行って5mm×5mmのキャパシタ素子部分を形成した。その後、Cu電極層の粒子成長のために340℃の真空中でアニールを行って薄膜キャパシタを得た。得られた薄膜キャパシタ100個について信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。
信頼性試験は、温度85度/湿度85%に保持した大気圧密閉容器の中に薄膜キャパシタ100個を挿入し、AC5V(1kHz)の信号を印加してストレスを加え続け、200時間後/400時間後/600時間後の容量値と絶縁抵抗値とを測定して実施した。容量値は、大気圧密閉容器外においたAgilent社製LCRメーター4284Aを使用し、1kHz、1Vrmsにて測定を行った。絶縁抵抗値は、大気圧密閉容器外においたAgilent社製4339B高抵抗計を使用し、直流4Vの条件で測定を行った。経時変化の判定は、薄膜キャパシタの一般的なスペックである容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上を基準値とし、これを満足した薄膜キャパシタの個数から維持率を求めた。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の92%(92/100pcs)の良品が得られた。
(実施例2)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約400nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約380nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約780nm,誘電体層の厚みの約0.78倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.6wt%として色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の91%(91/100pcs)の良品が得られた。
(実施例3)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約270nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約250nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約520nm,誘電体層の厚みの約0.52倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.4wt%として色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の91%(91/100pcs)の良品が得られた。
(実施例4)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約490nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約260nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約750nm,誘電体層の厚みの約0.75倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.7wt%として色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の93%(93/100pcs)の良品が得られた。
(実施例5)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約200nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約250nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約450nm,誘電体層の厚みの約0.45倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.3wt%とし、電着時の電流を2mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の82%(82/100pcs)の良品が得られた。
(実施例6)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約600nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約320nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約920nm,誘電体層の厚みの約0.92倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.8wt%とし、電着時の電流を10mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の83%(83/100pcs)の良品が得られた。
(実施例7)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約210nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約130nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約340nm,誘電体層の厚みの約0.34倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.1wt%とし、電着時の電流を2mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の85%(85/100pcs)の良品が得られた。
(実施例8)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約560nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約650nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約1210nm,誘電体層の厚みの約1.21倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を1.0wt%とし、電着時の電流を10mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の82%(82/100pcs)の良品が得られた。
(実施例9)
絶縁体構造物の形状について、空隙の最大厚みが約1060nm(誘電体層の厚みの約1.06倍)、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約560nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約650nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約1210nm,誘電体層の厚みの約1.21倍)となるよう、炭酸水素ナトリウムの添加量を0.80wt%、イミド系樹脂の添加量を1.0wt%とし、電着時の電流を10mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の81%(81/100pcs)の良品が得られた。
(実施例10)
絶縁体構造物の形状について、空隙の最大厚みが約1480nm(誘電体層の厚みの約1.48倍)、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約550nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約670nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約1220nm,誘電体層の厚みの約1.22倍)となるよう、炭酸水素ナトリウムの添加量を1.50wt%、イミド系樹脂の添加量を1.0wt%とし、電着時の電流を10mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の80%(80/100pcs)の良品が得られた。
(実施例11)
絶縁体構造物の形状について、空隙の最大厚みが約920nm(誘電体層の厚みの約0.92倍)、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約560nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約650nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約1210nm,誘電体層の厚みの約1.21倍)となるよう、炭酸水素ナトリウムの添加量を0.60wt%、イミド系樹脂の添加量を1.0wt%とし、電着時の電流を10mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の66%(66/100pcs)の良品が得られた。
(実施例12)
絶縁体構造物の形状について、空隙の最大厚みが約1560nm(誘電体層の厚みの約1.56倍)、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約560nm、空隙下部の絶縁体構造物の厚みは約650nm(絶縁体構造物の絶縁体分の厚みが約1210nm,誘電体層の厚みの約1.21倍)となるよう、炭酸水素ナトリウムの添加量を2.0wt%、イミド系樹脂の添加量を1.0wt%とし、電着時の電流を10mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例1と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の64%(64/100pcs)の良品が得られた。
(実施例13)
実施例1と同様に、100mm×100mmの大きさのNi金属箔上に誘電体層(BaTiO系誘電体)を形成した。誘電体層はスパッタリング法により1000nmの厚みで成膜した。成膜後の試料はアニールして誘電体層を結晶化させた。その後、絶縁体構造物を形成する前処理として、誘電体層の表面をスクラブ洗浄して異物を除去した。この前処理後の試料を、純水にガス発生源である炭酸水素ナトリウム1.0wt%を溶解した処理液に浸漬し、引き上げ後、純水−エタノール液に再び浸漬し、余分な炭酸水素ナトリウムを除去した。
ガス発生源を付着させた誘電体層に対して、電気泳動法を用いて絶縁体パッチ材を形成した。誘電体層を形成したNi金属箔を電着槽の電解液に浸漬する。電着槽のアノード電極は実施例1と同じである。電着槽の電解液には、純水に樹脂母材であるイミド系樹脂0.80wt%を添加した。Ni箔を電着液に浸漬した状態で、電流10mA/cm一定とし、電着の状況を目視観察しながら電圧を適宜制御しながら電着を実施した。得られた試料を200℃のオーブンでキュアさせて絶縁体構造物を形成した。ここまでの試料から複数の絶縁体構造物の部分を分取し、外観を光学顕微鏡で、断面を電子顕微鏡でそれぞれ観察したところ、絶縁体構造物の形状は、誘電体層との間に空隙を有する構造物であって、空隙は誘電体欠陥の直上で約1200nm(誘電体層の厚みの約1.2倍)の厚みを有し、空隙上部の絶縁体構造物の厚みは約900nm(誘電体層の厚みの約0.9倍)であった。また、絶縁体構造物の端部から欠陥の端部までの最短距離は約60μmであった。
絶縁体構造物の形成後、実施例1と同様に、上部電極としてNiとCuとを、この順でそれぞれスパッタリング法により成膜した。上部電極形成後、上部電極のパターニングを行って5mm×5mmのキャパシタ素子部分を形成した。その後、Cu電極層の粒子成長のために340℃の真空中でアニールを行って薄膜キャパシタを得た。得られた薄膜キャパシタ100個について、実施例1と同様の信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の92%(92/100pcs)の良品が得られた。
(実施例14)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約1110nm(誘電体層の厚みの約1.11倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.90wt%として色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例13と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の91%(91/100pcs)の良品が得られた。
(実施例15)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約630nm(誘電体層の厚みの約0.63倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.70wt%とし、電着時の電流を5mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例13と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の90%(90/100pcs)の良品が得られた。
(実施例16)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約1280nm(誘電体層の厚みの約1.28倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を1.0wt%として、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例13と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の82%(82/100pcs)の良品が得られた。
(実施例17)
絶縁体構造物の形状について、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約585nm(誘電体層の厚みの約0.59倍)となるよう、イミド系樹脂の添加量を0.60wt%とし、電着時の電流を5mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例13と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の83%(83/100pcs)の良品が得られた。
(実施例18)
絶縁体構造物の形状について、空隙の最大厚みが約1490nm(誘電体層の厚みの約1.49倍)、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約560nm(誘電体層の厚みの約0.56倍)となるよう、炭酸水素ナトリウムの添加量を1.50wt%、イミド系樹脂の添加量を0.50wt%とし、電着時の電流を5mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例13と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の82%(82/100pcs)の良品が得られた。
(実施例19)
絶縁体構造物の形状について、空隙の最大厚みが約1100nm(誘電体層の厚みの約1.10倍)、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約570nm(誘電体層の厚みの約0.57倍)となるよう、炭酸水素ナトリウムの添加量を0.80wt%、イミド系樹脂の添加量を0.50wt%とし、電着時の電流を5mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例13と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の81%(81/100pcs)の良品が得られた。
(実施例20)
絶縁体構造物の形状について、空隙の最大厚みが約1570nm(誘電体層の厚みの約1.57倍)、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約580nm(誘電体層の厚みの約0.58倍)となるよう、炭酸水素ナトリウムの添加量を2.0wt%、イミド系樹脂の添加量を0.30wt%とし、電着時の電流を5mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例13と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の65%(65/100pcs)の良品が得られた。
(実施例21)
絶縁体構造物の形状について、空隙の最大厚みが約960nm(誘電体層の厚みの約0.96倍)、空隙上部の絶縁体構造物の厚みが約550nm(誘電体層の厚みの約0.55倍)となるよう、炭酸水素ナトリウムの添加量を0.60wt%、イミド系樹脂の添加量を0.30wt%とし、電着時の電流を5mA/cmとして、色調変化を目視観察しつつ電着時の電圧と時間とを調整した以外は実施例13と同じ製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の63%(63/100pcs)の良品が得られた。
(比較例1)
絶縁体構造物を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の2%(2/100pcs)の良品が得られた。
(比較例2)
ガス発生源を添加せず、絶縁体構造物に空隙を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の製造方法と評価方法によって薄膜キャパシタ100個を作成して信頼性試験を行い、容量値と絶縁抵抗値との経時変化を評価した。その結果、本実施例では600時間後において、測定点の1%(1/100pcs)の良品が得られた。
以上の実施例と比較例との結果を、表1に示す。
以上、実施例および比較例を通じて、本発明の実施により、耐圧性能を長期にわたって維持できる薄膜キャパシタの提供が可能であることを確認した。
1 薄膜キャパシタ
2 下部電極
3 誘電体層
4 上部電極
5 欠陥
6 絶縁体構造物(6aは絶縁体構造物6の上部、6bは絶縁体構造物6の下部)
7 絶縁体構造物6の空隙
8 電着装置
9 アノード電極
10 カソード電極
11 電着用試料(下部電極2および誘電体層3を設けた絶縁体構造物6形成前の被形成物)
12 電着槽
13 電着液

Claims (4)

  1. 下部電極と、前記下部電極上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層上に形成された上部電極とを備え、
    前記誘電体層は欠陥を包含し、
    前記誘電体層の前記欠陥領域と前記上部電極との界面には樹脂材料による絶縁体構造物が形成されており、
    前記絶縁体構造物は前記上部電極と接するように形成されており、かつ、前記誘電体層の欠陥上に空隙を形成する構造を有する
    ことを特徴とする薄膜キャパシタ。
  2. 前記絶縁体構造物における前記「空隙を形成する構造」が、
    (1)前記絶縁体構造物の内部に空隙を有する構造、
    (2)前記誘電体層と前記絶縁体構造物との間に空隙を有する構造、
    のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜キャパシタ。
  3. 前記絶縁体構造物が形成する空隙の厚みが、前記誘電体層の厚みの1.0〜1.5倍である
    ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の薄膜キャパシタ。
  4. 前記絶縁体構造物の上部電極と接する側の厚みは、前記誘電体層の前記欠陥の中心上部において、
    (1)前記絶縁体構造物が、内部に空隙を有する構造であった場合は、前記誘電体層の厚みの0.5〜0.8倍であり、
    (2)前記絶縁体構造物が、前記誘電体層と前記絶縁体構造物との間に空隙を有する構造であった場合は、前記誘電体層の厚みの0.6〜1.2倍である
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の薄膜キャパシタ。
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