JP2015124244A - ゴム組成物およびこれを用いる空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物およびこれを用いる空気入りタイヤ Download PDF

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慶介 相武
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諭 三原
強 野間口
Tsutomu Nomaguchi
強 野間口
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Abstract

【課題】優れた接着性と高い硬度を維持しながら、耐熱老化性に優れるゴム組成物及びこれをスチールコートに用いて製造された空気入りタイヤの提供。【解決手段】天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、特定の構造を有する、イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体0.1〜3.5質量部、窒素吸着比表面積が75〜120m2/gであるカーボンブラック40〜70質量部、硫黄4.0〜8.0質量部、並びに、有機酸コバルト塩及び/又は有機コバルト錯体を前記有機酸コバルト塩及び/又は前記有機コバルト錯体が有するコバルト含有量で0.01〜0.50質量部含む、タイヤのスチールコート用のゴム組成物、当該ゴム組成物をスチールコートに用いて製造された空気入りタイヤ。【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤのスチールコート用のゴム組成物およびこれを用いる空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤは、スチールのような金属製のベルト及び/又はカーカス、ゴム等から形成されるいわゆる複合材である。このような観点から空気入りタイヤにおいては、ベルト及び/又はカーカスとゴムとの優れた接着性能が求められる。また、空気タイヤは走行中に受ける強い衝撃や荷重を負担するため、タイヤのゴムには高硬度であることが求められる。加硫ゴムの高弾性化の一般的な手法として、(1)カーボンブラックの増量、(2)硫黄の増量等の方法が知られている。
一方、ジエン系ゴムの架橋は一般的に硫黄等に由来するスルフィド結合やパーオキサイド架橋によって形成される。また、ジエン系ゴムの他飽和ゴムにも適用できるパーオキサイド架橋の際には、例えばトリアリルイソシアヌレートのような架橋助剤が使用される(例えば特許文献1)。
特開2012−197421号公報
しかし、本願発明者は、スチールコート用のゴムとして、(1)カーボンブラック又は(2)硫黄を単に増量したゴム組成物を使用する場合、耐熱老化前後の破断伸び(破断時伸び)の保持率が低いこと、及び耐熱老化後の接着性が低くなることを明らかとした。なお本発明において、耐熱老化前後での、破断物性及び接着性を合わせて耐熱老化性ということがある。
また、硫黄を含有するゴム組成物にトリアリルイソシアヌレートのような架橋助剤を使用する場合弾性率が低下すること、及び、ゴム組成物に多量のカルボン酸誘導体等を使用する場合、接着性(初期及び耐熱老化後)が低下することを明らかとした。
そこで、本発明は、優れた接着性と高い硬度を維持しながら、耐熱老化性(例えば、耐熱老化前後において、破断伸びの保持率が高く、接着性に優れる。以下同様。)を高次元に達成できるゴム組成物及びこれをスチールコートに用いて製造された空気入りタイヤの提供を目的とする。
本願発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、特定の構造を有する、イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体0.1〜3.5質量部、窒素吸着比表面積が75〜120m2/gであるカーボンブラック40〜70質量部、硫黄4.0〜8.0質量部、並びに有機酸コバルト塩及び/又は有機コバルト錯体を前記有機酸コバルト塩及び/又は前記有機コバルト錯体が有するコバルト含有量で0.01〜0.50質量部含むゴム組成物が、優れた接着性と高い硬度を維持しながら、耐熱老化性に優れる、タイヤのスチールコート用のゴム組成物となることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本願発明者らは以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
1. 天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、
下記式(1)で示されるイソシアヌル酸誘導体及び/又は下記式(2)で示されるカルボン酸誘導体0.1〜3.5質量部、
窒素吸着比表面積が75〜120m2/gであるカーボンブラック40〜70質量部、
硫黄4.0〜8.0質量部、並びに
有機酸コバルト塩及び/又は有機コバルト錯体を前記有機酸コバルト塩及び/又は前記有機コバルト錯体が有するコバルト含有量で0.01〜0.50質量部含む、タイヤのスチールコート用のゴム組成物。
[式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に−Ca2aOC(=O)Cb2bSHであり、a、bはそれぞれ独立に1以上の整数であり、R1、R2、R3は同一であっても異なってもよい。]
[式(2)中、R4、R5、R6はそれぞれ独立に−OC(=O)Cn2nSHであり、R7は−OC(=O)Cn2nSH、アルキル基又は水素原子であり、nはそれぞれ独立に2以上の整数であり、−OC(=O)Cn2nSHは同一であっても異なってもよい。]
2. 前記イソシアヌル酸誘導体又は前記カルボン酸誘導体の分子量が1,000以下である、上記1に記載のゴム組成物。
3. 前記式(2)中、nが2である、上記1又は2に記載のゴム組成物。
4. 前記天然ゴムの量が、前記ジエン系ゴム中の50〜100質量部である、上記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
5. 前記コバルト含有量が、前記イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体の量の0.0028〜500質量%である、上記1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
6. 上記1〜5のいずれかに記載のゴム組成物をスチールコートに用いて製造された空気入りタイヤ。
本発明によれば、優れた接着性と高い硬度を維持しながら、耐熱老化性に優れるゴム組成物、これを用いる空気入りタイヤを提供することができる。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
以下に、本発明のゴム組成物、及び、本発明のゴム組成物を用いた空気入りタイヤについて説明する。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、
天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、
上記式(1)で示されるイソシアヌル酸誘導体及び/又は上記式(2)で示されるカルボン酸誘導体0.1〜3.5質量部、
窒素吸着比表面積が75〜120m2/gであるカーボンブラック40〜70質量部、
硫黄4.0〜8.0質量部、並びに
有機酸コバルト塩及び/又は有機コバルト錯体を前記有機酸コバルト塩及び/又は前記有機コバルト錯体が有するコバルト含有量で0.01〜0.50質量部含む、タイヤのスチールコート用のゴム組成物である。
本発明のゴム組成物は、高い硬度と優れた接着性を維持しながら耐熱老化性に優れる。
これらの特性に優れる理由は明らかではないが、およそ以下のとおり推測される。
すなわち、特定構造を有するイソシアヌル酸誘導体および/またはカルボン酸誘導体は、例えば加硫時において、ジエン系ゴムが有する不飽和結合(例えば、共役ジエン単量体に由来する、ビニレン基、ビニル基等)と相互作用又は反応することによって、網目鎖の架橋点をモノスルフィド結合で形成すると考えられる。
また、イソシアヌル酸誘導体および/またはカルボン酸誘導体による架橋は、硫黄加硫による架橋点(スルフィド結合)とは異なり、3次元的な網目構造であるのでゴムの架橋密度を高くすることができ、架橋点間の距離が長いため柔軟性を付与することができると考えられる。
本発明において、有機酸コバルト塩及び/又は有機コバルト錯体は高い硬度の発現を阻害することはない。また、イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体は本発明のゴム組成物が有する優れた接着性を阻害することはなく、本発明のゴム組成物は高い接着性を維持することができる。
ジエン系ゴムについて以下に説明する。本発明のゴム組成物に含まれるジエン系ゴムは、天然ゴムを含有する以外は特に制限されない。
ジエン系ゴムとしての天然ゴムは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。天然ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
天然ゴムの量は、優れた接着性と高い硬度を維持しながら耐熱老化性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部中の50〜100質量部であるのが好ましく、70〜100質量部であるのがより好ましく、80〜100質量部であるのが更に好ましい。
本発明において、ジエン系ゴムは、天然ゴム以外のジエン系ゴムを更に含有することができる。天然ゴム以外のジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
本発明において、天然ゴム以外のジエン系ゴムの量は、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れ、破断特性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部中0〜30質量部であるのが好ましく、0〜20質量部であるのがより好ましい。
ジエン系ゴムの製造は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
式(1)で示されるイソシアヌル酸誘導体及び式(2)で示されるカルボン酸誘導体について以下に説明する。
本発明において、式(1)で示されるイソシアヌル酸誘導体(これを単にイソシアヌル酸誘導体ということがある。)及び式(2)で示されるカルボン酸誘導体(これを単にカルボン酸誘導体ということがある。)は、ジエン系ゴムの架橋剤及び/又は連鎖移動剤、可塑剤として機能することができる。
本発明において使用できるイソシアヌル酸誘導体は下記式(1)で示されるイソシアヌル酸誘導体である。
[式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に−Ca2aOC(=O)Cb2bSHであり、a、bはそれぞれ独立に1以上の整数であり、R1、R2、R3は同一であっても異なってもよい。]
−Ca2aOC(=O)Cb2bSH中の「OC(=O)」はエステル結合を意味する。
aは、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、1以上の整数であるのが好ましく、1〜18の整数であるのがより好ましく、2が更に好ましい。
bは、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、1以上の整数であるのが好ましく、1〜12の整数であるのがより好ましく、2が更に好ましい。
−Ca2aOC(=O)Cb2bSHは、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、−C24OC(=O)C24SH(a=b=2)が好ましい。
本発明のゴム組成物に使用されるカルボン酸誘導体は、下記式(2)で示されるカルボン酸誘導体である。
[式(2)中、R4、R5、R6はそれぞれ独立に−OC(=O)Cn2nSHであり、nはそれぞれ独立に2以上の整数であり、R7は−OC(=O)Cn2nSH、アルキル基又は水素原子であり、−OC(=O)Cn2nSHは同一であっても異なってもよい。]
−OC(=O)Cn2nSH中の「OC(=O)」はエステル結合を意味する。
nは、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、2以上の整数であるのが好ましく、2〜18の整数であるのがより好ましく、2であるのが更に好ましい。
アルキル基は特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基が挙げられる。
−OC(=O)Cn2nSHは、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、−OC(=O)C24SH(n=2)が好ましい。
7は、−OC(=O)C24SH(n=2)、メチル基が好ましい。
イソシアヌル酸誘導体又はカルボン酸誘導体の分子量は、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、1,000以下であるのが好ましく、150〜1,000であるのがより好ましい。
本発明において、イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体の量(両者併用の場合はこれらの合計量。以下同様。)は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜3.5質量部である。イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体の量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、1.0〜3.0質量部であるのが好ましく、1.0〜2.0質量部であるのがより好ましい。
本発明において、硫黄とイソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体との質量比[硫黄/(イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体)]は、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、0.1〜100であるのが好ましく、0.1〜80であるのがより好ましい。
カーボンブラックについて以下に説明をする。本発明のゴム組成物に含まれるカーボンブラックは窒素吸着比表面積が75〜120m2/gである以外は特に制限されない。タイヤ工業において一般的に用いられるものが挙げられる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、75〜115m2/gであることが好ましく、75〜110m2/gであることがより好ましい。本発明におけるカーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる値である。
カーボンブラックとしては、例えば、HAF、ISAF、HAF−LSが挙げられる。
カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、カーボンブラックの量は、ジエン系ゴム100質量部に対して40〜70質量部である。カーボンブラックの量は、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、45〜65質量部であるのが好ましく、50〜65質量部であるのがより好ましい。
硫黄について以下に制限されない。本発明において使用される硫黄は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
本発明において、硫黄の量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、4.0〜8.0質量部である。硫黄の量は、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、5.0〜7.5質量部であるのが好ましく、5.5〜6.5質量部であるのがより好ましい。
有機酸コバルト塩、有機コバルト錯体について以下に説明する。
本発明のゴム組成物に含有されうる有機酸コバルト塩は、有機酸とコバルトとで形成される塩であれば特に制限されない。有機酸は特に制限されず例えばカルボン酸が挙げられる。有機酸コバルト塩は有機酸のほかに、例えば、ホウ酸を有することができる。
本発明のゴム組成物に含有されうる有機コバルト錯体は、配位子としての有機化合物と配位金属としてのコバルトとで形成される錯体であれば特に制限されない。有機化合物は特に制限されない。
有機酸コバルト塩としては、例えば、酢酸コバルト、オクチル酸コバルト、ステアリン酸コバルトのような脂肪酸塩;ナフテン酸コバルトのような脂環式炭化水素基を有するカルボン酸塩;ネオデカン酸オルトホウ酸コバルトのような脂肪酸及びホウ酸の塩;オレイン酸コバルトのような不飽和脂肪酸塩;安息香酸コバルトのような芳香族炭化水素基を有するカルボン酸塩;メタクリル酸コバルトのような(メタ)アクリル酸の塩;トール油酸コバルト、ロジン酸コバルトが挙げられる。
有機コバルト錯体としては、例えば、コバルトアセチルアセトナート、コバルトベンゾイルアセトナートが挙げられる。
中でも、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、有機酸コバルト塩が好ましく、脂肪酸及びホウ酸の塩がより好ましく、ネオデカン酸オルトホウ酸コバルトが更に好ましい。
有機酸コバルト塩、有機コバルト錯体はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機酸コバルト塩及び/又は有機コバルト錯体の量(有機酸コバルト塩と有機コバルト錯体とを併用する場合はその合計量)は、ジエン系ゴム100質量部に対して、有機酸コバルト塩及び/又は有機コバルト錯体が有するコバルト含有量(有機酸コバルト塩と有機コバルト錯体とを併用する場合はそれぞれが有するコバルト含有量の合計)で0.01〜0.50質量部に相当する量である。
コバルト含有量は、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.05〜0.30質量部であるのが好ましく、0.10〜0.25質量部であるのがより好ましい。
また、コバルト含有量は、優れた接着性と高い硬度とを維持しながら、耐熱老化性により優れるという観点から、イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体の量の0.0028〜500質量%であるのが好ましく、1〜200質量%であるのがより好ましい。
〔任意成分〕
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を更に含有することができる。添加剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、オイル(例えば、アロマオイル、プロセスオイル)、テルペン樹脂、熱硬化性樹脂、加硫促進剤、式(1)で示されるイソシアヌル酸誘導体又は下記式(2)で示されるカルボン酸誘導体以外の架橋剤(例えば過酸化物)などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。添加剤の量は、ゴム組成物の用途等に応じて、その効果や目的を損なわない範囲で、例えば、従来公知と同様の量とすることができる。
〔ゴム組成物の製造方法〕
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。具体的には例えば、まず、硫黄と加硫促進剤とイソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体とを除く成分を混合してマスターバッチを製造し、得られたマスターバッチに硫黄と加硫促進剤とイソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体とを混合し、ゴム組成物を製造する方法が挙げられる。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
本発明において、ジエン系ゴムが有する不飽和結合と、イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体が有する3個以上のメルカプト基との相互作用及び/又は反応によって、網目鎖の架橋が形成される。このような架橋構造は耐老化特性に有利な働きをすると考えられる。当該網目構造の架橋は、硫黄加硫と同時にゴムに形成させることができる。
本発明のゴム組成物の用途はタイヤ(例えば空気入りタイヤ)のスチールコート用のゴム組成物である。本発明のゴム組成物を用いてタイヤのスチールコートを形成することができる。このほか例えば、防振ゴム、免震ゴム用のゴム組成物;パッキン等の自動車用部品用のゴム組成物などが挙げられる。
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物をスチールコートに用いて製造された空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤのスチールコートに使用されるゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明は添付の図面に限定されない。
図1において、空気入りタイヤは左右一対のビード部1およびサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3からなり、ビード部1、1間に、カーカス層4が装架され、カーカス層4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。トレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ベルト層7の両端部には、ベルトクッション8が配置されている。空気入りタイヤの内面には、タイヤ内部に充填された空気がタイヤ外部に漏れるのを防止するために、インナーライナー9が設けられ、インナーライナー9を接着するためのタイゴム10が、カーカス層4とインナーライナー9との間に積層されている。カーカス層4及び/又はベルト層7にはスチールコード(図示せず。)が埋設されている。なお図1に示す空気入りタイヤは重荷重車輌用タイヤである。
ゴム組成物(本発明のゴム組成物)は、スチールコート(図示せず。)に使用される。
ゴム組成物が適用される基材は特に制限されない。例えば、スチールコードが挙げられる。基材は、ブラスめっきのようなめっき処理がなされていてもよい。
スチールコートされた基材を例えば、カーカス層、ベルト層に使用することができる。
本発明の空気入りタイヤは、例えば従来公知の方法に従って製造することができる。例えば、ゴム組成物にブラスめっきされたスチールコードを所定の間隔、埋設長さとなるように埋め込み、これを加硫接着させることによって、カーカス層及び/又はベルト層を製造し、得られたカーカス層及び/又はベルト層を使用して空気入りタイヤを製造することができる。
タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
本発明の空気入りタイヤは例えば、一般車両用タイヤ、重荷重車両用タイヤ(例えば、バス、トラック)として使用することができる。
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明する。なお本発明はこれらに限定されない。
<ゴム組成物の製造>
下記表に示す成分を各表に示す割合(単位:質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記表に示す成分のうち硫黄と加硫促進剤とイソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、150±5℃に達したときに放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄と加硫促進剤とイソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体とを混合し、ゴム組成物を製造した。
<加硫ゴムシートの製造>
上記のとおり製造したゴム組成物を縦15cm×横15cm×厚さ0.2cmの金型中で148℃で45分間プレス加硫して加硫ゴムシートを製造した。
<評価>
上記のとおりにして製造された、加硫ゴムシート又はゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を下記表に示す。下記表において接着性、破断伸び保持率以外の評価結果を比較例1の結果を100とする指数で表示する。
・JIS A硬度(20℃):上記のとおり製造した加硫ゴムシートを用いて、JIS K 6253に準拠してJIS A硬度を測定した。指数が高いほうが硬度が高く良好である。
・耐熱老化後の破断伸び保持率(%):上記のとおり製造したゴム組成物を160℃で60分間、加圧加硫した厚さ2mmのシートをJIS K6251に準拠して、このシートからダンベル状3号形試験片を打ち抜き、さらに80℃、168時間の条件で空気加熱老化処理を行い、該処理前後における破断伸び(破断時伸び)を測定し、得られた値を下記式に当てはめて破断伸び保持率を算出した。破断伸び保持率が高いほど耐熱老化後の破断物性に優れる。
耐熱老化後の破断伸び保持率(%)=[(80℃×168時間暴露後の破断伸び)/(処理前の破断伸び]×100
・初期接着性:上記のとおり製造されたゴム組成物に3×9×15(0.22)構造のブラスめっきスチールコードをスチールコードの埋設長さが25mmとなるように埋め込み、これを148℃の条件下で45分間で加硫接着させてスチールコートサンプルとし、このスチールコートサンプルを用いてASTM D1871に準拠して、スチールコートサンプルからブラスめっきスチールコードを引き抜き、ブラスめっきスチールコード(ワイヤ)のゴム被覆率を評価した。指数が高いほうが接着性が良好である。
・耐熱老化後の接着性:上記の接着性の評価のために製造したスチールコートサンプルを用いて、これに80℃、168時間の条件で空気加熱老化処理を行い、処理後、スチールコートサンプルからブラスめっきスチールコードを引き抜き、ブラスめっきスチールコードのゴム被覆率(%)を測定した。
上記表に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム、RSS#1
・カーボンブラックA HAF−LS:カーボンブラック、グレードHAF−LS、東海カーボン社製、「シースト300(HAF−LS)」、窒素吸着比表面積78m3/g
・カーボンブラックB FEF:カーボンブラック、グレードFEF、東海カーボン社製、シーストF(FEF)、窒素吸着比表面積41m3/g、
・コバルト塩:ネオデカン酸ホウ酸コバルト、DIC CORPORATION製、「DICNATE NBC−II」、分子量749、コバルト含有率22質量%
・亜鉛華:正同化学工業社製、「酸化亜鉛3種」
・ステアリン酸:NOFコーポレーション社製、「ステアリン酸YR」
・老化防止剤:Solutia Europe社製、「Santoflex 6PPD」
・加硫促進剤:大内新興化学工業製、「ノクセラー DZ」
・硫黄:軽井沢精錬所製、「油処理イオウ」
・カルボン酸誘導体1(TMMP):下記式(2a)で表されるトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学社製TMMP(SH=3)、MW398.50
・イソシアヌル酸誘導体1(TEMPIC):下記式(1a)で表されるトリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、SC有機化学社製TEMPIC(SH=3)、MW525.62
上記表において、比較例1は硫黄を含むので、ゴムの架橋はポリスルフィド結合を含むスルフィド結合によるものである。
同表に示す結果から明らかなように、イソシアヌル酸誘導体又はカルボン酸誘導体を使用せず、カーボンブラックの量が70質量部より多い比較例2は比較例1より耐熱老化性(耐熱老化後の破断物性、接着性)が劣った。イソシアヌル酸誘導体又はカルボン酸誘導体を使用せず、カーボンブラックの量が40質量部より少ない比較例3は実施例より耐熱老化性が低く、比較例1より硬度が劣った。イソシアヌル酸誘導体又はカルボン酸誘導体を使用せず、窒素吸着比表面積が75m2/g未満のカーボンブラックを使用する比較例4は実施例より耐熱老化性が低く、比較例1より硬度が劣った。窒素吸着比表面積が75m2/g未満のカーボンブラックを使用する比較例5は比較例1より硬度が劣った。硫黄の量が8.0質量部より多い比較例6、7は比較例1より耐熱老化性、初期接着性が劣った。硫黄の量が4.0質量部より少ない比較例8は実施例より耐熱老化後の破断物性が低く、比較例1より耐熱老化後の接着性、初期接着性、硬度が劣った。有機酸コバルト塩等を含まない比較例9は、実施例より耐熱老化後の破断物性が低く、比較例1より耐熱老化後の接着性、初期接着性、硬度が劣った。イソシアヌル酸誘導体又はカルボン酸誘導体を使用せず、コバルト含有量が0.5質量部より多い比較例10は比較例1より耐熱老化性、初期接着性、硬度が劣った。コバルト含有量が0.5質量部より多い比較例11は実施例より耐熱老化後の破断物性が低く、比較例1より耐熱老化後の接着性、初期接着性、硬度が劣った。イソシアヌル酸誘導体又はカルボン酸誘導体の量が3.5質量部を超える比較例12は、比較例1より耐熱老化後の接着性、初期接着性が劣った。
これに対して、実施例1〜2は、高い硬度と優れた接着性を維持しながら、耐熱老化性(耐熱老化後の、破断物性、接着性)に優れる。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトクッション
9 インナーライナー
10 タイゴム

Claims (6)

  1. 天然ゴムを含有するジエン系ゴム100質量部に対して、
    下記式(1)で示されるイソシアヌル酸誘導体及び/又は下記式(2)で示されるカルボン酸誘導体0.1〜3.5質量部、
    窒素吸着比表面積が75〜120m2/gであるカーボンブラック40〜70質量部、
    硫黄4.0〜8.0質量部、並びに
    有機酸コバルト塩及び/又は有機コバルト錯体を前記有機酸コバルト塩及び/又は前記有機コバルト錯体が有するコバルト含有量で0.01〜0.50質量部含む、タイヤのスチールコート用のゴム組成物。
    [式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に−Ca2aOC(=O)Cb2bSHであり、a、bはそれぞれ独立に1以上の整数であり、R1、R2、R3は同一であっても異なってもよい。]
    [式(2)中、R4、R5、R6はそれぞれ独立に−OC(=O)Cn2nSHであり、R7は−OC(=O)Cn2nSH、アルキル基又は水素原子であり、nはそれぞれ独立に2以上の整数であり、−OC(=O)Cn2nSHは同一であっても異なってもよい。]
  2. 前記イソシアヌル酸誘導体又は前記カルボン酸誘導体の分子量が1,000以下である、請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記式(2)中、nが2である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 前記天然ゴムの量が、前記ジエン系ゴム中の50〜100質量部である、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. 前記コバルト含有量が、前記イソシアヌル酸誘導体及び/又はカルボン酸誘導体の量の0.0028〜500質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物をスチールコートに用いて製造された空気入りタイヤ。
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