JP2015123404A - 電極及びその製造方法並びにそれを有する通液型コンデンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】通液型コンデンサ用の電極として好適に用いられる、電極抵抗が小さく、イオン交換層の膨潤による皺の発生が少なく(寸法変化が小さい)、耐久性に優れる電極を提供する。【解決手段】集電体層上に、多孔質電極層とイオン交換層が形成されている電極であって、前記イオン交換層がグラフト共重合体であるイオン交換体(A)を含有することを特徴とする電極を用いることで、課題は解決できる。【選択図】なし

Description

本発明は、集電体層、多孔質電極層及びイオン交換層を有する電極及びその製造方法に関する。また、そのような電極を有する通液型コンデンサに関する。
通液型コンデンサ(通液型電気二重層コンデンサ)は、ガス中、液(水溶液や非水溶液)中に含まれる物質の除去や、組成の変更に用いられる。通常、通液型コンデンサは、高表面積の電極層を有する電極と、該電極間に設置される流路とを有する。物質の除去や組成の変更には、当該電極を用いた、静電気的な吸着、電気化学的な反応、触媒的な分解などが利用される。
これまでに、電極によるイオンの静電気的な吸着を利用したイオン性物質を含む水の脱塩に用いられる通液型コンデンサはいくつか報告されている。
通常、通液型コンデンサによる脱塩は、通液型コンデンサの電極間に直流電圧を印加することにより、電極間に供給された水中のイオンを各電極間に吸着させた後、イオン性物質が除去された水を回収する脱塩工程(イオン吸着工程)と、直流電源を逆に接続するか、電極を短絡することにより各電極に吸着しているイオンを脱着させて電極を再生させる電極洗浄工程(イオン脱着工程)とを繰り返すことにより行われる。
特許文献1及び2には、液体の精製を目的とする定電荷クロマトグラフ用カラムに用いられる通液型コンデンサが記載されている。当該通液型コンデンサには、第1の導電性支持層、第1の高表面積導電性層、第1の非導電性多孔質のスペーサー層、第2の導電性支持層、第2の高表面積導電性層、第2の非導電性多孔質のスペーサー層を含む隣接層群が用いられている。そして、前記通液型コンデンサは、塩化ナトリウム等のイオン性物質を含む水の精製に使用することができると記載されている。特許文献2には、上述した捲回型の通液型コンデンサの他、導電性支持ワッシャ、高表面積導電性ワッシャ及び非導電性スペーサーワッシャを積層してなるワッシャ型の電極を積層した通液型コンデンサも記載されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載された通液型コンデンサには、脱塩工程において、電極に吸着されている副イオン(電極の電荷と同符号の電荷を有するイオン)が、本来吸着されるべき対イオン(電極の電荷と反対符号の電荷を有するイオン)の吸着を阻害するという問題や、副イオンが脱着されて電極外に放出され、脱塩されている水中に混入することにより電流効率が低下するという問題があった。また、電極洗浄工程において、直流電源の接続を反転させることによって電極から脱着されたイオンが、当該イオンの電極とは反対符号の電荷を有する電極に再吸着され、電極が汚染されてしまう問題もあった。
これに対して、電極層の表面にイオン交換膜が設置された電極を使用した通液型コンデンサがいくつか報告されている。このような通液型コンデンサを用いて脱塩を行う場合は、脱塩工程では、イオン交換膜の固定電荷と同符号の荷電を電極に与え、電極洗浄工程では、イオン交換膜の固定電荷と反対符号の荷電を電極に与える。脱塩工程では、電極から脱着された副イオンの電極外への放出が前記イオン交換膜によって遮蔽されることにより電流効率が高まる。また、電極洗浄工程では、上述した、電極による脱着されたイオンの吸着が、前記イオン交換膜により防止される。
特許文献3には、多孔質電極にイオン交換膜が隣接している電極を用いた通液型コンデンサが報告されている。そして、前記イオン交換膜として用いられるイオン性基を有する重合体が多数例示されている。特許文献4には、多孔質材料を含み、電極の電荷とは反対符号の電荷を有するイオンを吸着するように構成された電極と、その電極と接触しているイオン交換材料を含む電極アセンブリが記載されている。特許文献4には、前記イオン交換材料として、イオン伝導性ポリマーが記載されている。しかしながら、特許文献3及び4に記載された通液型コンデンサは、電流効率がなお不十分であった。
非特許文献1には、カーボン電極表面にカチオン交換樹脂が塗布されてなる電極を有する通液型コンデンサが記載されている。電極表面のカチオン交換樹脂には、ポリビニルアルコールを電極表面に塗布した後、該ポリビニルアルコールをスルホコハク酸で処理することにより、架橋とスルホン酸基導入を行うことができる多孔質電極表面にポリビニルアルコールを塗布し、その後架橋とスルホン酸基を導入することで多孔質電極とイオン交換膜の密着性は改善したが、架橋後のイオン交換層の膨潤による皺の発生(寸法変化)やイオン交換層が脆くなる等の耐久性の問題があった。
米国特許第5192432号公報 特開平5−258992号公報 米国特許第6709560号公報 特表2010−513018号公報
J.Membr.Sci.,Vol.355,p.85(2010)
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電極抵抗が小さく、イオン交換層の膨潤による皺の発生(寸法変化)が少なく、耐久性に優れる通液型コンデンサ用の電極として好適に用いられる電極及びその製造法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、そのような電極を用いた通液型コンデンサを提供することを目的とするものである。
本発明者は、前記課題について種々検討した結果、多孔質電極表面に設けたイオン交換層がグラフト共重合体であるイオン交換体(A)を含有することで架橋後のイオン交換層の膨潤による皺の発生が少なく、耐屈曲性に優れるため耐久性に優れることを見出し本発明に到達した。
本発明第1の構成は、集電体層上に、多孔質電極層とイオン交換層が形成されている電極であって、前記イオン交換層がグラフト共重合体であるイオン交換体(A)を含有することを特徴とする電極である。
前記多孔質電極層が炭素材料を含有することが好ましい。
前記イオン交換体(A)がビニルアルコール系グラフト共重合体(A-1)であることが好ましい。
前記ビニルアルコール系グラフト共重合体(A-1)が、下記一般式(a)で表される構成単位と、ビニルアルコール系構成単位(b)と、から構成する側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(P1)を幹ポリマーとし、該メルカプト基から、カチオン性単量体(c)またはアニオン性単量体(d)を重合してなるイオン性重合体(P2)がグラフト結合した電極であることが好ましい。
Figure 2015123404

(式中、Rは、水素原子又はカルボキシル基であり、Rは、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基であり、Xは、炭素原子及び水素原子を含みかつ窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜22の2価の基であり、Rがカルボキシル基である場合、当該カルボキシル基は、隣接するビニルアルコール単位の水酸基と環を形成していてもよく、Rがカルボキシル基又はカルボキシメチル基である場合、当該カルボキシル基又はカルボキシメチル基は、隣接するビニルアルコール単位の水酸基と環を形成していてもよい。)
前記イオン交換体(A)において、Xは、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、エーテル結合(−O−)、アミノ結合〔−NR−(Rは水素原子またはNと結合する炭素を含む基)〕、アミド結合(−CONH−)、アルコキシ基、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい炭素数1〜22の2価の直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
前記イオン交換体(A)において、Xは、*−CO−NH−X−(式中、*は重合体主鎖と結合する結合手を示し、Xは窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基を示す)で表される2価の基であることが好ましい。
前記イオン交換体(A)において、前記側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(P1)の構成単位である(a)および(b)と前記イオン性重合体(P2)の構成単位である(c)または(d) のモル比が99.5:0.5〜50:50の範囲であることが好ましい[(a)+(b)+(c)=100または、(a)+(b)+(d)=100]。
前記集電体層上に形成される、前記多孔質電極層と前記イオン交換層が、集電体層/多孔質電極層/イオン交換層の順に積層されていることが好ましい。
前記多孔質電極層上に形成される前記イオン交換層の厚みが1〜70μmの範囲であり、前記多孔質電極層の厚みが50〜1000μmの範囲であることが好ましい。
本発明第2の構成は、集電体層上に、多孔質電極層とイオン交換層が形成されている電極であって、イオン交換層がグラフト共重合体である前記イオン交換体(A)を含有することを特徴とする通液型コンデンサ用電極である。
本発明第3の構成は、前記集電体層の表面に、多孔質材料を含有するスラリーと、前記イオン交換体(A)を含有する溶液とを塗布した後、塗膜を乾燥させ、イオン交換体(A)を架橋させることにより、前記多孔質電極層と前記イオン交換層を形成することを特徴とする電極の製造方法である。
前記電極の製造方法において、前記集電体層の表面に、前記多孔質材料を含有するスラリーと前記イオン交換体(A)を含有する溶液を同時に塗布してもよい。
前記電極の製造方法において、前記多孔質材料を含有するスラリーを塗布した後に、該スラリーの表面に前記イオン交換体(A)を含有する溶液を塗布してもよい。
前記電極の製造方法において、塗膜を乾燥させた後に、熱処理を行って、または熱処理を行うことなく架橋処理を行うことが好ましい。
本発明第4の構成は、前記電極を対向して配置して、前記電極間に流路部を形成し、一方の電極中のカチオン交換層がアニオン性基を有する前記イオン交換体(A)を含有し、他方の電極中のアニオン交換層がカチオン性基を有する前記イオン交換体(A)を含有しており、アニオン交換層とカチオン交換層とが流路部を介して対向するように配置されてなることを特徴とする通液型コンデンサである。
本発明の電極は、イオン交換層の膨潤による皺の発生が少なく(寸法変化が小さい)、耐久性に優れる電極であり、電極抵抗が低く抑制できた電極である。したがって、前記電極を用いた通液型コンデンサは、長時間にわたり、効率よく安定的に脱塩やイオン性物質と非イオン性物質の分離を行うことができる。また、本発明による製造方法によれば、電極界面の親和性が高い、より均質性の高い電極を得ることができる。
本発明の電極を用いた通液型コンデンサがイオンを吸着する様子の一例を示す模式図である。 本発明の電極を用いた通液型コンデンサがイオンを脱着する様子の一例を示す模式図である。 実施例における、電極抵抗の測定方法を示す模式図である。
本発明の電極は、集電体層上に、多孔質電極層とイオン交換層が形成されている電極であって、前記イオン交換層がグラフト共重合体であるイオン交換体(A)を含有することを特徴とする電極である。
本発明の電極は、イオン交換層の膨潤による皺の発生が少なく、脆性が高いため耐久性に優れ、イオンの吸着及び脱着を効率良く行うことができる。本発明の電極によるイオンの吸着及び脱着は、多孔質電極層において行われる。イオンの吸着及び脱着には、電極の電圧を印加して多孔質電極層に電荷を与えることにより生じる、当該多孔質電極層とイオンとの間の静電力が利用される。
前記多孔質層の一面は、集電体層と対向し、多孔質電極層と集電体層は電気的に接続される。前記電極と外部電源の接続は、通常、集電体層の一部と外部電源とを電気的に接続することにより行われる。このように前記電極を外部電源に接続することにより、多孔質電極層に電荷を与えることができる。
前記多孔質電極層の他面は、イオン交換層と対向する。本発明の電極を用いてイオンの吸着や脱着を行う場合、多孔質電極層と電極外部の間のイオンの移動が、概ね当該イオン交換層を介して行われる。当該イオン交換層はイオン交換性重合体に由来する固定電荷を有するために、当該イオン性基の電荷と反対符号の電荷を有するイオンを選択的に透過させる。このようなイオン選択性を有するイオン交換層を介してイオンの移動が行われることにより、イオンの吸着と脱着を繰り返し行った場合における、吸着及び脱着効率の低下が抑制できる。
本発明の電極は、多孔質電極層に対して配置されるイオン交換層として、グラフト共重合体であるイオン交換体(A)を含有するイオン交換層を用いる。当該イオン交換層は、膜抵抗が小さい上に、イオンが透過しやすく、イオン選択性に優れる。更に、当該イオン交換層は優れた耐屈曲性と寸法安定性を有する。このようなイオン交換層を用いることにより、本発明の電極は皺の発生が少なく、かつ効率良く長期間にわたり安定的に、イオンの吸着及び脱着を行うことができる。
(グラフト共重合体)
本発明のイオン交換層に含有される、グラフト共重合体であるイオン交換体(A)としては、イオン性重合体セグメントが主鎖を構成している場合、主鎖に含有している場合、側鎖を構成している場合、側鎖に含有している場合とがある。本発明においては特に限定されないが、強度的性質を得やすい点から、イオン性重合体セグメントが側鎖を構成、または、側鎖に含有しているグラフト共重合体が好ましい。この様なグラフト共重合体であるイオン交換体(A)としては特に限定されないが、主鎖にポリアクリル系樹脂を用いたポリアクリル系グラフト共重合体、ポリアクリルアミド系樹脂を用いたポリアクリルアミド系グラフト共重合体やポリスチレン系樹脂を用いたポリスチレン系グラフト共重合体,セルロース系樹脂を用いたセルロース系グラフト共重合体,ビニルアルコール系樹脂を用いたビニルアルコール系グラフト共重合体が好ましく用いられる。なかでも、ビニルアルコール系グラフト共重合体が特に好ましく用いられる。
ビニルアルコール系グラフト共重合体(A-1)は、例えば、側鎖にメルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体を得て、当該側鎖にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体の存在下、少なくとも1種類のカチオン性単量体またはアニオン性単量体をラジカル重合させることにより得られる。
(側鎖にメルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体)
本発明のイオン交換層を構成するグラフト共重合体の合成に利用される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体は、以下の式(I)に示される構成単位を有する。
Figure 2015123404
式(I)において、Rは、水素原子又はカルボキシル基であり、Rは、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基であり、Xは、炭素原子及び水素原子を含みかつ窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜22の2価の基である。Rがカルボキシル基である場合又はRがカルボキシル基若しくはカルボキシメチル基である場合は、隣接する水酸基と環を形成していてもよい。
式(I)で表される単位中のXは、重合体主鎖とメルカプト基との間のスペーサーの役割を果たし、メルカプト基の反応性を立体的因子の点から向上させる部位である。スペーサーとしてのXは、炭素原子及び水素原子を含みかつ窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜22の2価の基であればよく、特に限定されない。Xの炭素数としては、1〜20が好ましい。Xが含む水素原子、窒素原子及び酸素原子の数は特に限定されない。Xが窒素原子及び/又は酸素原子を含む場合としては、例えば、脂肪族炭化水素基の炭素原子間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、エーテル結合(−O−)、アミノ結合〔−NR−(Rは水素原子またはNと結合する炭素を含む基)〕、アミド結合(−CONH−)等として含む場合や、脂肪族炭化水素基の水素原子を置換する、アルコキシ基、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)等として含む場合が挙げられる。Xの例としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基(特に、アルキレン基);カルボニル結合、エステル結合、エーテル結合、アミノ結合、及びアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を含み、合計炭素数が1〜22の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基(特に、アルキレン基);アルコキシ基、カルボキシル基及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する合計炭素数が1〜22の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基(特に、アルキレン基);アルコキシ基、カルボキシル基及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有し、かつカルボニル基、エステル結合、エーテル結合及びアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を含み、合計炭素数が1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基(特に、アルキレン基)等が挙げられる。
好ましい一実施形態では、式(I)において、R1が、水素原子であり、Rが、水素原子又はメチル基であり、Xが、炭素原子及び水素原子を含みかつ窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の基である。当該実施形態においては、Xは、原料入手性、合成上の容易さから、カルボキシル基又は水酸基で置換されていてもよい合計炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることが好ましく、合計炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることがより好ましく、合計炭素数2〜14の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることがさらに好ましく、合計炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることがさらにより好ましい。さらに反応性の観点から、最も好ましくは、直鎖状の炭素数6のアルキレン基である。
別の好ましい一実施形態では、式(I)において、Xが、アミド結合を含み、当該アミド結合が、直接又は一つのメチレン基を介して、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体の主鎖に結合する。当該実施形態では、式(I)で表される構成単位は、例えば、下記式(I’)となる。
Figure 2015123404
式中、R1及びRは、前記と同義であり、nは0又は1であり、Xは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基である。
nは0であることが好ましい。このとき、Xは、*−CO−NH−X−(式中、*は重合体主鎖と結合する結合手を示し、Xは前記と同義である)となる。nが0である場合、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体の製造の際に、未反応の単量体が残りにくく、未反応の単量体による影響を低減することができる。
で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖又は分岐状である。前記脂肪族炭化水素基が分岐している場合には、脂肪族炭化水素基の主鎖(硫黄原子と窒素原子との間で原子が連続する鎖)から分岐した部位の炭素数は、1〜5であることが好ましい。Xが窒素原子及び/又は酸素原子を含む場合としては、例えば、窒素原子及び/又は酸素原子を、前記脂肪族炭化水素基に挿入された、カルボニル結合、エーテル結合、アミノ結合、アミド結合等として含む場合や、窒素原子及び/又は酸素原子を、前記脂肪族炭化水素基を置換する、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基等として含む場合が挙げられる。原料入手性、合成上の容易さから、Xは、好ましくは、合計炭素数が1〜20の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、より好ましくは、合計炭素数が2〜15の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、さらに好ましくは、合計炭素数が2〜10の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキレン基である。
かかる構成単位は、式(I)で表される構成単位に変換可能な不飽和単量体より誘導することができ、好ましくは、式(II)で表される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体より誘導することができる。
Figure 2015123404
式中、R及びRは、水素原子又はカルボキシル基であり、Rは、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基であり、Xは、炭素原子及び水素原子を含みかつ窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜22の基であり、Rはメチル基であるか、Xに含まれる特定の炭素原子と共有結合して環状構造を形成する。
がアミド結合を含み、当該アミド結合のカルボニル炭素がビニル炭素と結合している場合には、式(II)で表される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体は、後述するビニルエステルとの共重合性が良好であり、本発明に用いる側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体の変性量、重合度を高くすることが容易である。また、一般にチオエステル系単量体を使用した場合、重合終了時に残留する未反応の単量体に起因する臭気が懸念されている。しかしながら、Xがアミド結合を含み、当該アミド結合のカルボニル炭素がビニル炭素と結合している場合には、式(II)で表される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体は、重合終了時に残留する未反応の単量体が非常に少ない。
式(II)で表される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体は、公知方法に準じて製造することができる。
式(II)で表される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体の好ましい具体例としては、例えば、チオ酢酸S−(3−メチル−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−17−オクタデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−15−ヘキサデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−14−ペンタデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−13−テトラデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−12−トリデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−11−ドデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−10−ウンデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−9−デセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−8−ノネン−1−イルエステル、チオ酢酸S−7−オクテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−6−ヘプテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−5−ヘキセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−4−ペンテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−3−ブテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−2−プロペン−1−イルエステル、チオ酢酸S−[1−(2−プロペン−1−イル)ヘキシル]エステル、チオ酢酸S−(2,3−ジメチル−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(1−エテニルブチル)エステル、チオ酢酸S−(2−ヒドロキシ−5−ヘキセン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(2−ヒドロキシ−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(1,1−ジメチル−2−プロペン−1−イル)エステル、2−[(アセチルチオ)メチル]−4−ペンテン酸、チオ酢酸S−(2−メチル−2−プロペン−1−イル)エステル等、また下記式(a−1)〜(a−30)が挙げられる。
Figure 2015123404
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上記化合物群の中でも、原料入手性、合成上の容易さの観点から、チオ酢酸S−7−オクテン−1−イルエステル、(a−6)、(a−7)、(a−9)、(a−10)、(a−11)、(a−12)、(a−14)、(a−15)、(a−16)、(a−17)、(a−19)、(a−20)、(a−21)、(a−22)、(a−24)、(a−25)、(a−26)、(a−27)、(a−29)、(a−30)が好ましい。
側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体における式(I)に示される構成単位の含有率は特に限定されないが、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは0.05〜10モル%であり、より好ましくは0.1〜7モル%、特に好ましくは0.2〜5モル%である。
側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体は、式(I)で表される構成単位を1種又は2種以上有することができる。2種以上の当該構成単位を有する場合、これら2種以上の構成単位の含有率の合計が上記範囲にあることが好ましい。なお、本発明において重合体中の構成単位とは、重合体を構成する繰り返し単位のことをいう。例えば、下記のビニルアルコール単位や、下記のビニルエステル単位も構成単位である。
側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体におけるビニルアルコール単位の含有率(すなわち、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のけん化度)は特に限定されないが、下限に関しては、水に対する溶解性の観点から、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上である。一方、上限に関しては、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは99.94モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下である。99.94モル%より含有率が高いビニルアルコール系重合体は、一般に製造は難しい。
ビニルアルコール単位は、加水分解や加アルコール分解などによってビニルエステル単位から誘導することができる。そのためビニルエステル単位からビニルアルコール単位に変換する際の条件等によってはビニルアルコール系重合体中にビニルエステル単位が残存することがある。よって、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体はビニルエステル単位を含んでいてもよい。
ビニルエステル単位のビニルエステルの例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを挙げることができ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体は、本発明の効果が得られる限り、式(I)で表される構成単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の構成単位をさらに有することができる。当該構成単位は、例えば、ビニルエステルと共重合可能でありかつ式(I)で表される構成単位に変換可能な不飽和単量体及びビニルエステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位である。エチレン性不飽和単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n―プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルである。
側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は特に限定されず、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは200〜4,000である。粘度平均重合度が100未満になると、後述するグラフト共重合体皮膜の機械的強度が低下することがある。粘度平均重合度が5,000を超える側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体は、工業的な製造が難しい。なお、前記ビニルアルコール系重合体の粘度変気重合度はJIS K6726に準拠して測定した値である。
側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体の製造方法は、目的とする側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体が製造できる限り特に限定されない。例えば、そのような製造方法としては、(i)ビニルエステルと、(ii)ビニルエステルと共重合可能であり、かつ式(I)で表される構成単位に変換可能な不飽和単量体とを共重合する共重合工程と、加溶媒分解により、得られた共重合体のビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換し、一方で式(I)で表される構成単位に変換可能な不飽和単量体に由来する単位を式(I)で表される構成単位に変換する変換工程とを含む方法が挙げられる。
特に、ビニルエステルと式(II)で表される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体(以下、チオエステル系単量体(II)と称する)とを共重合し、得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合及びチオエステル系単量体(II)由来の構成単位のチオエステル結合を、加水分解又は加アルコール分解する方法が簡便であり好ましく用いられ、以下この方法について説明する。
ビニルエステルとチオエステル系単量体(II)との共重合は、ビニルエステルを単独重合する際の公知の方法及び条件を採用して行うことができる。
なお、共重合の際、ビニルエステル及びチオエステル系単量体(II)と共重合可能な単量体をさらに共重合させてもよい。当該共重合可能な単量体は、前記のエチレン性不飽和単量体と同様である。
得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合と、チオエステル系単量体(II)由来の構成単位のチオエステル結合は、ほぼ同じ条件で加水分解又は加アルコール分解可能である。したがって、得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合及びチオエステル系単量体(II)由来の構成単位のチオエステル結合の加水分解又は加アルコール分解は、ビニルエステルの単独重合体をけん化する際の公知の方法及び条件を採用して行うことができる。
このようにして得られる側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体と、カチオン性単量体又はアニオン性単量体とを用いてビニルアルコール系グラフト共重合体を得る方法としては、例えば、特開昭59−189113号公報などに記載された、ブロック共重合体の合成方法を応用することができる。すなわち、ビニルアルコール系グラフト共重合体は、前記側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体を準備する工程と、この側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体に対して、カチオン性単量体又はアニオン性単量体をグラフト結合させるグラフト化工程と、を経て製造することができる。前記グラフト重合は、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体の存在下にカチオン性単量体又はアニオン性単量体をラジカル重合させることにより行われる。このラジカル重合は公知の方法、例えば水やジメチルスルホキシドを主体とする媒体中で行うのが好ましい。また、重合プロセスとしては、回分法、半回分法、連続法のいずれをも採用することができる。
上記ラジカル重合は、通常のラジカル重合開始剤、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の中から重合系に適したものを使用して行うことができるが、水系での重合の場合、ビニルアルコール系重合体側鎖のメルカプト基と臭素酸カリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸化剤によるレドックス反応によって重合を開始することも可能である。
側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体の存在下にカチオン性単量体又はアニオン性単量体をラジカル重合させるに際し、重合系が中性または酸性であることが望ましい。これはメルカプト基が、塩基性下においては、単量体の二重結合へイオン的に付加し消失する速度が大きく、重合効率が著しく低下するためである。また、水系の重合であれば、すべての重合操作をpH4以下で実施することが好ましい。
(アニオン交換基を有するグラフト重合体)
本発明で用いるアニオン交換基を有するイオン性重合体(カチオン性重合体と称することがある)は、ビニルアルコール系単量体とカチオン性単量体とのグラフト共重合体が好ましい。カチオン基としては、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などが例示される。また、アミノ基やイミノ基のように、水中においてその一部が、アンモニウム基やイミニウム基に変換し得る官能基を含有する重合体も、本発明のカチオン基を持つ重合体に含まれる。この中で工業的に入手しやすい観点から、アンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基(アンモニウム塩)、2級アンモニウム基(アンモニウム塩)、3級アンモニウム基(塩)、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基等)のいずれを用いることができるが、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基)がより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみのカチオン基を含有しても良いし、複数種のカチオン基を含有しても良い。また、カチオン基の対アニオンは特に限定されず、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。この中で、入手の容易性の点から、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの対アニオンを含有しても良いし、複数種の対アニオンを含有しても良い。
カチオン性重合体としては、以下の一般式(1)〜(8)の構造単位を有するものが例示される。
Figure 2015123404

[式中、R7は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R8、R9、R10はそれぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表わす。R8、R9、R10は、相互に連結して飽和若しくは不飽和環状構造を形成していてもよい。Zは−O−、−NH−、または−N(CH)−を表し、Yは酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含んでもよい総炭素数1〜8の二価の連結基を表す。Xはアニオンを表す。]
一般式(1)中の対アニオンXとしては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。一般式(1)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体しては、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−(メタ)アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなど3−(メタ)アクリルアミド−アルキルトリアルキルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体などが例示される。
Figure 2015123404

[式中、R11は水素原子またはメチル基を表わす。R8、R9、R10、およびXは一般式(1)と同義である。]
一般式(2)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体としては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体などが例示される。
Figure 2015123404

[式中、R8、R9、およびXは一般式(1)と同義である。]
Figure 2015123404

[式中、R8、R9、およびXは一般式(1)と同義である。]
一般式(3)および一般式(4)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどジアリルジアルキルアンモニウム塩が環化重合して得られる単独重合体または共重合体が例示される。
Figure 2015123404

[式中、nは0または1を表わす。R8およびR9は一般式(1)と同義である。]
一般式(5)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミンの単独重合体または共重合体が例示される。
Figure 2015123404

[式中、nは0または1を表わす。R8、R9、R10、およびXは一般式(1)と同義である。]
一般式(6)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体としては、アリルアミン塩酸塩などアリルアンモニウム塩の単独重合体または共重合体が例示される。
Figure 2015123404

[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは−CH(OH)CH−、−CHCH(OH)−、−C(CH)(OH)CH−、−CHC(CH)(OH)−、−CH(OH)CHCH−、または−CHCHCH(OH)−を表す。Eは−N(R12または−N(R12・Xを表し、R12は水素原子またはメチル基を表す。Xはアニオンを表す。)
一般式(7)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体として、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンまたはその4級アンモニウム塩の単独重合体または共重合体、N−(4−アリルオキシ−3−ヒドロキシブチル)ジエチルアミンまたはその4級アンモニウム塩の単独重合体または共重合体が例示される。
Figure 2015123404

[式中、R11は水素原子またはメチル基、R13は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはi−プロピル基、R14は水素原子、メチル基、またはエチル基をそれぞれ表わす。]
一般式(8)で表わされる構造単位を含有するカチオン性重合体として、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が例示される。
(カチオン交換基を有するグラフト共重合体)
本発明で用いられるカチオン交換基を有するイオン性重合体(アニオン性重合体と称することがある)は、ビニルアルコール系単量体とアニオン性単量体とのグラフト共重合体が好ましい。アニオン基としては、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基などが例示される。また、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基のように、水中において少なくともその一部が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基に変換し得る官能基も、アニオン基に含まれる。この中で、イオン解離定数が大きい点から、スルホネート基が好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみのアニオン基を含有していてもよいし、複数種のアニオン基を含有していてもよい。また、アニオン基の対カチオンは特に限定されず、水素イオン、アルカリ金属イオン、などが例示される。この中で、設備の腐蝕問題が少ない点から、アルカリ金属イオンが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの対カチオンを含有していてもよいし、複数種の対カチオンを含有していてもよい。
本発明で用いられるアニオン性重合体は、上記アニオン基を含有する構造単位のみからなる重合体であってもよいし、上記アニオン基を含有しない構造単位をさらに含む重合体であってもよい。また、これらの重合体は架橋性を有するものであることが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの重合体からなるものであってもよいし、複数種のアニオン性重合体を含むものであってもよい。また、これらアニオン性重合体と別の重合体との混合物であっても構わない。ここでアニオン性重合体以外の重合体はカチオン性重合体でないことが望ましい。
アニオン性重合体としては、以下の一般式(9)および(10)の構造単位を有するものが例示される。
Figure 2015123404

[式中、R11は水素原子またはメチル基を表す。Gは−SOH、−SO 、−POH、−PO 、−COHまたは−CO を表す。Mはアンモニウムイオンまたはアルカリ金属イオンを表す。]
一般式(9)で表わされる構造単位を含有するアニオン性重合体としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の単独重合体または共重合体などが例示される。
Figure 2015123404

[式中、R11は水素原子またはメチル基を表わし、Tは水素原子がメチル基で置換されていてもよいフェニレン基またはナフチレン基を表わす。Gは一般式(9)と同義である。]
一般式(10)で表わされる構造単位を含有するアニオン性重合体としては、p−スチレンスルホン酸ナトリウムなどp−スチレンスルホン酸塩の単独重合体または共重合体などが例示される。
また、アニオン性重合体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸などのスルホン酸またはその塩の単独重合体または共重合体、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸、その誘導体またはその塩の単独重合体または共重合体なども例示される。
一般式(9)または(10)において、Gは、より高い荷電密度を与えるスルホネート基、スルホン酸基、ホスホネート基、またはホスホン酸基であることが好ましい。また一般式(9)および一般式(10)中、Mで表わされるアルカリ金属イオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。
(共重合体中における側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体とイオン性重合体との比率)
本発明において、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(P1)の構成単位である(a)および(b)とイオン性重合体(P2)の構成単位である(c)または(d) との比率は、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(P1)が99.5〜50モル%,イオン性重合体(P2)が0.5〜50モル%[重合体中の全構成単位を100モル%とする。即ち、(a)+(b)+(c)=100または、(a)+(b)+(d)=100モル%]の範囲内にあることが好ましく、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(P1)が99〜60モル%、イオン性重合体(P2)が1〜40モル%の範囲内にあることがより好ましく、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(P1)が97〜70モル%、イオン性重合体(P2)が3〜30モル%の範囲内にあることがさらに好ましい。
イオン性重合体の比率が0.5モル%未満では、イオン交換層の有効荷電密度が低下し、膜の対イオン選択性が低下するおそれがある。また、イオン性重合体の比率が50モル%を超えると、イオン交換層の膨潤度が高くなり、機械的強度が低下するおそれがある。
(多孔質電極層)
多孔質電極層に含有される炭素材料としては、活性炭、カーボンブラックなどが用いられ、特に、活性炭が好適に用いられる。活性炭の形状は任意で選択でき、粉末状、粒子状、繊維状等があげられる。活性炭の中でもイオンの吸着量が多い点から、高比表面積活性炭が好んで用いられる。高比表面積活性炭のBET比表面積は、700m/g以上が好ましく、1000m/g以上がより好ましく、1500m/g以上更に好ましい。
多孔質電極層中の炭素材料の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。炭素材料の含有量が70質量%未満の場合は、イオンの吸着量が不十分になるおそれがある。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、多孔質電極層は、各種添加剤を含有しても良い。添加剤としては、バインダー、導電剤、分散剤、増粘剤などがあげられる。多孔質電極層に含まれる前記添加剤の含有量は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
多孔質電極層の電気伝導性は、電極の用途により、適宜調整すれば良く、前記炭素材料として、電気伝導性を有する炭素材料を用いることや、導電剤を含有させることにより調整できる。
(集電体層)
本発明の電極に用いられる集電体層は、電気伝導性及び耐腐食性が高いものであれば特に限定されず、黒鉛シートやチタン、金、白金またはこれらの複合材料等の金属箔等があげられる。なかでも、耐腐食性と導電性のバランスに優れる点から黒鉛シートが好ましい。集電体層の厚みは特に限定はされないが、5〜5000μmが好ましく、10〜3000μmがより好ましい。
本発明の電極は、集電体層上に形成される、多孔質電極層とイオン交換層が、集電体層/多孔質電極層/イオン交換層の順に積層されていることが好ましい。積層とは集電体層の表面に多孔質電極層が直接形成され、さらに多孔質電極層の表面にイオン交換層が直接形成された構造である。イオン交換層に含まれるビニルアルコール系グラフト重合体(A−1)は、多孔質電極層に対して高い親和性を保有するため、両層間では高い密着性が発現する。従って、イオン交換層と多孔質電極層間の界面抵抗を下げられるうえに、両層間の剥離はおさえることができる。
本発明の電極において、集電体層と多孔質電極層の間で電荷の授受が効率的に行われて、多孔質電極層と電極外部の間のイオンの移動が概ねイオン交換層を介して行われ、かつ多孔質電極層が所定量のイオンを吸着できる表面積を有していれば、各層の大きさは特に限定されず、電極の用途によって適宜調整して対応すれば良い。また、本発明の電極は、本発明の効果を阻害しない範囲で、集電体層、多孔質電極層およびイオン交換層以外の層を有していても構わない。
耐有機汚染性に優れる観点から、本発明の電極においては、最表面にビニルアルコール系グラフト重合体(A-1)を含有するイオン交換層が配置されていることが好ましい。
(添加物)
本発明の電極は、本発明の目的を損なわない範囲で、消泡剤、無機フィラーなど種々の添加剤を含んでいてもよい。
(電極の製造方法)
本発明の電極の製造方法は特に限定されないが、集電体層の表面に、多孔質材料を含有したスラリーとイオン交換体(A)を含有した溶液を塗布した後、塗膜を乾燥させることにより、多孔質電極層とイオン交換層を形成する方法が好ましい。このような方法により、集電体層、多孔質電極層及びイオン交換層が一体化された電極を得ることができる。前記製造方法では、塗布された前記スラリーと前記溶液とを同時に乾燥させるため、形成されるイオン交換層の欠陥が少ないうえに、多孔質電極層とイオン交換層との接着性が更に向上する。
前記スラリーにおける分散媒は、炭素材料等の多孔質電極層の原料を分散させることができれば特に限定はなく、水、有機溶媒又はそれらの混合物などがあげられる。分散質の組成は、形成される多孔質電極層の組成に合わせて適宜調整すれば良い。前記スラリー中の分散質の含有量は特に限定されないが、通常10〜60質量%である。
前記製造方法で用いられるイオン交換体(A)を含む溶液における溶媒は、該重合体が溶解できるものであれば特に限定されず、水、有機溶媒又はそれらの混合物などがあげられる。溶質の組成は、形成される多孔質電極層の組成に合わせて適宜調整すれば良い。前記溶液中の溶質の含有量は特に限定されないが、通常5〜30質量%である。
(塗工)
前記スラリーと溶液を塗工する場合に用いられる塗布装置は特に限定はされず、公知の塗布装置を用いることができる。例えば、カーテン型塗布装置、エクストルージョン型塗布装置、スライド型塗布装置があげられる。前記、スラリーと溶液を同時塗布する場合、一度の塗布操作によって前記スラリーと前記溶液が塗布されればよく、前記スラリーと前記溶液と予め混ざった後で、集電体層の表面に塗布されても良い。また、べつべつに前記スラリーと前記溶液を塗布させる場合は、同じ塗布方法で行ってもよいし、異なる塗布方法で塗布してもよい。塗布方法は具体的なものとして、ロールコーター、コンマコータ、キスコータ、グラビアコータ、スライドビードコータがあげられる。
通液型コンデンサ用の電極として用いた場合に必要なイオンの吸着量、塗膜強度、その他の性能や、ハンドリング性等を確保する観点から、本発明の電極における、炭素材料を含有する多孔質電極層の厚みは50〜1000μmであることが好ましい。多孔質電極層の厚みが50μm未満である場合は、イオンの吸着容量が不十分でなるおそれがある。逆に多孔質電極層の厚みが1000μmを超える場合は、多孔質電極層が脆くなり、ひび割れ等の欠陥が発生しやすくなるおそれがある。多孔質電極層の厚みは、より好ましくは100〜800μmであり、更に好ましくは150〜500μmである。なお、多孔質電極層の厚みは、乾燥した多孔質電極層の厚みのことを示す。
通液型コンデンサ用の電極として用いた場合に必要な、イオン透過性、その他の性能や表面被覆性等を確保する観点から、本発明の電極のイオン交換層の厚みは、1〜70μmであることが好ましい。イオン交換層の厚みが1μm未満の場合は、イオン交換層に欠陥が生じやすくなる。イオン交換層の厚みは、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは3μm以上である。一方、厚みが70μmより超える場合は、イオン透過抵抗が大きくなるおそれがある。イオン交換層の厚みは、より好ましくは50μm以下であり、更に好ましくは30μmである。なお、イオン交換層の厚みは、乾燥したイオン交換層の厚みである。
(熱処理)
前記製造方法において、塗膜を乾燥させた後で、更に熱処理することが好ましい。塗膜を熱処理することにより、イオン交換基を導入したビニルアルコール系重合体の結晶化が促進され、イオン交換層の機械強度が更に増大する。熱処理の方法は特に限定されず、熱風乾燥機などが一般に用いられる。熱処理の温度は、特に限定されないが、100〜250℃であることが好ましい。熱処理温度が100℃未満の場合は、イオン交換基を導入したビニルアルコール系重合体の結晶化促進されず、機械強度を向上させる効果が得られないおそれがある。逆に250℃以上で処理した場合は、イオン交換基を導入したビニルアルコール系重合体が融解、分解するおそれがある。更に好ましくは、120℃以上200℃以下で熱処理することが更に好ましい。
(架橋処理)
前記製造方法において、塗膜を乾燥させた後に、更に架橋処理を施すことが好ましい。
架橋処理の方法は、重合体の分子鎖同士を化学結合によって結合できる方法であればよく、特に限定されない。通常、イオン交換体を、架橋処理剤を含む溶液に浸漬する方法などが用いられる。該架橋処理剤としては、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキザールなどが例示される。特に好ましいのは架橋構造の安定性からグルタルアルデヒドを用いるのが良い。該架橋処理剤の濃度は、通常、溶液に対する架橋処理剤の体積濃度が0.001〜10体積%である。
前記製造方法においては、熱処理を行うことなく架橋処理を行ってもよいが、熱処理を施した後に、架橋処理を施すことが好ましい。熱処理を施すことにより架橋されにくい部位が生じ、その後、架橋処理を行うことで、架橋された部位と架橋されない部位が混在することによって、膜強度が高くなるからである。熱処理、架橋処理の順番で行うことが、得られるイオン交換層の機械的強度の面から特に好ましい。また、イオン交換体が水溶性重合体である場合には、上記熱処理後に、架橋処理を行うことにより、溶出するのを防止することもできる。
図1,2に示すように、前記電極を対向して配置して、前記電極間に流路部を形成し、一方の電極中のカチオン交換層がアニオン性基を有するイオン交換体(A)を含有し、他方の電極中のアニオン交換層がカチオン性基を有するイオン交換体(A)を含有しており、アニオン交換層とカチオン交換層とが流路部を介して対向するように配置されてなることを特徴とする通液型コンデンサであることが好ましい。さらに、前記一方のイオン交換体(A)が、前記ビニルアルコール系重合体(P1)とカチオン性重合体(P2)とからなるアニオン性基を有するカチオン交換層であり、他方の電極中のイオン交換体(A)が前記ビニルアルコール系重合体(P1)とアニオン性重合体(P2)とからなるカチオン性基を有するアニオン交換層であり、アニオン交換層とカチオン交換層とが流路部を介して対向するように配置されている通液型コンデンサであることがより好ましい。
上述のように本発明の電極は、イオンの吸着と脱着とを長時間にわたり、効率よくかつ安定定期に行うことができる。従って、当該電極は通液型コンデンサ用の電極等として好適に使用できる。
(用途)
本発明の電極並びにそれを有する通液型コンデンサは、種々の用途に用いることができる。本発明の電極は多孔質層とイオン交換層での界面接着に優れ、水中に浸漬させた状態で長期にわたり良質な外観を保持できる電極であり、電極抵抗が低く抑制できた電極である。したがって、前記電極を用いた通液型コンデンサは、長時間にわたり、効率よく安定的に脱塩やイオン性物質と非イオン性物質の分離を行うことができるので、地下水からの有害イオン(硝酸性窒素、フッ素、砒素など)の除去、海水やかん水の脱塩、水道水の脱塩、軟水化などに適している。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例中、特に断りのない限り「%」および「部」は質量基準である。実施例および比較例における分析および評価は、下記の方法にしたがって行った。
1)イオン交換体(A)に含まれるイオン交換ユニット割合(変性量)の評価方法
重合して得られたイオン交換ユニットを含んだ各重合体を、所望の溶媒に溶解(濃度5wt%)させ、以下のNMR装置、条件で測定した。イオン交換基を持つユニットのピーク強度とイオン交換基を持たないユニットとのピーク強度より、重合して得られたポリマー中に含まれるイオン交換ユニットの割合(変性量)を算出した。
装置名 : 日本電子製 超伝導核磁気共鳴装置Lambda 500
観測周波数 : 500MHz(1H)
ポリマー濃度 : 5wt%(H−NMR)
測定温度 : 80℃(H−NMR)
積算回数 : 256回(H−NMR)
パルス繰り返し時間 : 4秒(H−NMR)
サンプル回転速度 : 10〜12Hz
作製した電極の評価は、以下の方法により測定した。
2)屈曲性評価
作製した電極を2cm×4cmの大きさに切り出し、片側を直径12mmの丸棒に巻き付けて戻す操作を繰り返し、電極表面に亀裂が入るまでの回数を計測した。3回試験を行った平均値から以下の判定方法で評価した。
◎:10回以上繰り返しても割れなかった。
○:10回未満〜5回以上で割れた。
△:5回未満〜3以上で割れた。
×:3回未満で割れた。
3)厚み測定(多孔質電極層とイオン交換層)
作製した電極を真空乾燥機「DP32」(ヤマト科学(株)製)にて温度50℃、60時間真空乾燥させた後、株式会社ミツトヨ製のデジマチックマイクロメーターで集電体層/多孔質電極層/イオン交換層を合わせた電極全体の厚みを測定した。電極表面に形成されたイオン交換層の厚みは、走査型電子顕微鏡「S−3000」(日立製作所製)で観察して厚みを評価した。また、集電体は事前に厚みをデジマチックマイクロメーターで測定して、イオン交換層の厚みを差し引いて、残りの多孔質電極層の厚みを算出した。なお、ここで得られた厚みの値は、乾燥時における値である。
4)電極抵抗の測定
図3は、実施例における、電極抵抗の測定方法を示す模式図である。図3に示すように、直径20mm、高さ10mmの円柱状のチタン電極22間に直径12mmの円形にカットした電極23、直径16mmの円形にカットしたセパレータ24(日本特殊織物株式会社製「LS60」、厚み90μm)、直径12mmの円形にカットした電極23の順に配置した。このとき2枚の電極は何れも集電体層がチタン電極22を1〜2kg/cmの圧力にて押さえつけた状態でBioLogic社製ポテンシャルスタット/カルバノスタットVSPを用いて周波数8mHz〜1MHzの範囲で交流インピーダンスを測定し、周波数1Hzにおける実部抵抗をインピーダンス抵抗として、当該インピーダンス抵抗を電極抵抗とした。
5)電極の寸法安定性評価
作製した電極を、5cm×5cmの大きさに2枚切り出し、これらのイオン交換層側を同サイズに切り出したセパレータ(日本特殊織物株式会社製「LS60」、厚み90μm)に向けて重ね合わせ、両サイドをPMMA板(5cm×5cmの大きさ)で挟み、さらに両サイドをクリップで挟み圧着した。この構造体を23℃の脱イオン水中に1週間浸漬させた後、構造体を解体しイオン交換層の表面を目視観察することで寸法安定性(皺の発生)の評価を行った。3回試験を行った平均値から以下の判定方法で評価した。
◎:イオン交換層の寸法変化は小さく、皺の発生は無かった。
○:イオン交換層の寸法変化があり、全面積の1/5未満で皺が発生していた。
△:イオン交換層の寸法変化があり、全面積の1/5以上1/2未満で皺が発生していた。
×:イオン交換層の寸法変化が激しく、全面積の1/2以上で皺が発生していた。
[側鎖メルカプト基含有ポリビニルアルコールの合成]
<PVA−1>
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、コモノマー添加口及び重合開始剤の添加口を備
えた反応器に、酢酸ビニル1100質量部、コモノマーとして前記化学式(a−16)で
示されるチオエステル系単量体、0.77質量部、及びメタノール473質量部を仕込み
、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。これとは別に、コモ
ノマーの逐次添加溶液(以降ディレー溶液と表記する)としてチオエステル系単量体(a
−16)のメタノール溶液(濃度5質量%)を調製し、30分間アルゴンをバブリングし
た。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブ
チロニトリル0.28質量部を添加し重合を開始した。重合反応の進行中は、調製したデ
ィレー溶液を系内に滴下することで、重合溶液におけるモノマー組成(酢酸ビニルとチオ
エステル系単量体(a−16)のモル比率)が一定となるようにした。60℃で240分
間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。次に、
30℃の減圧下でメタノールを追加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーを留去し、チオ
エステル系単量体(a−16)が導入された変性ポリビニルアセテートのメタノール溶液
を得た。
上記で得られたチオエステル系単量体(a−16)が導入されたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを加え、さらに水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度14.1%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のチオエステル系単量体(a−16)が導入されたポリ酢酸ビニル濃度30%、チオエステル系単量体(a−16)が導入されたポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.050)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後、ゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでよく洗浄し、真空乾燥機中40℃で12時間乾燥することにより、側鎖メルカプト基含有PVA(PVA−1)を得た。1H−NMR測定により求めたチオエステル系単量体(a−16)由来の構成単位の変性量は0.5mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.3モル%であった。
<PVA−2>
PVA−1において、前記化学式(a−16)で示されるチオエステル系単量体を0.77質量部から1.56質量部に変更し、メタノールを473質量部から438質量部に変更したこと以外はPVA−1の合成と同様の操作を行い、側鎖メルカプト基含有PVA(PVA−2)を得た。1H−NMR測定により求めたチオエステル系単量体(a−16)由来の構成単位の変性量は1.0mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.1モル%であった。
<アニオン性重合体P−1の合成>
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水376g、側鎖にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA−1を42.3gと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を1.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の1.0%水溶液2.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアニオン性重合体P-1の溶液(10wt%)を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対する2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の単位の含有量は0.5モル%であった。
<アニオン性重合体P−2〜8の合成>
組成を表1のように変更した以外は、カチオン性重合体P−1と同様の方法によって、アニオン性重合体P−2〜8を合成した。得られたアニオン性重合体のイオン交換ユニットの割合を表1に示す。
Figure 2015123404
[側鎖メルカプト基含有ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの合成]
<PHEMA−1>
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、コモノマー添加口及び重合開始剤の添加口を備
えた反応器に、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1660質量部、コモノマーとして前記化学式(a−16)で示されるチオエステル系単量体、0.77質量部、及びメタノール473質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。これとは別に、コモノマーの逐次添加溶液(以降ディレー溶液と表記する)としてチオエステル系単量体(a−16)のメタノール溶液(濃度5質量%)を調製し、30分間アルゴンをバブリングした。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.28質量部を添加し重合を開始した。重合反応の進行中は、調製したディレー溶液を系内に滴下することで、重合溶液におけるモノマー組成(酢酸ビニルとチオエステル系単量体(a−16)のモル比率)が一定となるようにした。60℃で240分間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。次に、その後、125℃、3mmHgにおけるエバポレーションにより未反応のモノマーを留去し、チオエステル系単量体(a−16)が導入された変性ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのメタノール溶液を得た。
上記で得られたチオエステル系単量体(a−16)が導入されたポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのメタノール溶液にメタノールを加え、さらに水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度14.1%)を添加して、40℃で1時間攪拌してチオエステル部分のけん化を行った(チオエステル系単量体(a−16)が導入されたポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのメタクリル酸2−ヒドロキシエチルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.02)。これに酢酸を加えて残存するアルカリを中和した後、真空乾燥機中40℃で12時間乾燥することにより、側鎖メルカプト基含有ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(PHEMA−1)を得た。1H−NMR測定により求めたチオエステル系単量体(a−16)由来の構成単位の変性量は0.5mоl%であった。
<アニオン性重合体P−9の合成>
組成を表1のように変更した以外は、アニオン性重体P−3と同様の方法によって、アニオン性重合体P−9を合成した。得られたアニオン性重合体のイオン交換ユニットの割合を表1に示す。
<PVAとポリ(パラスチレンスルホン酸ナトリウム)混合物P−10の作製>
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水163g、パラスチレンスルホン酸ナトリウムを20.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の1.0%水溶液34.0mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させた。その後、PVA−1を4.0g添加し、攪拌下90℃で溶解した。その後、冷却して、ポリビニルアルコールとポリ(パラスチレンスルホン酸ナトリウム)の混合物P−9の水溶液(10wt%)を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するパラスチレンスルホン酸ナトリウム単位の含有量は50モル%であった。
<アニオン性重合体P−11の合成>
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、コモノマー添加口及び重合開始剤の添加口を備
えた反応器に、酢酸ビニル1100質量部、パラスチレンスルホン酸ナトリウムを、4.6質量部、及びメタノール421質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。これとは別に、逐次添加溶液(以降ディレー溶液と表記する)としてパラスチレンスルホン酸ナトリウムのメタノール溶液(濃度20質量%)を調製し、30分間アルゴンをバブリングした。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部を添加し重合を開始した。重合反応の進行中は、調製したディレー溶液を系内に滴下することで、重合溶液におけるモノマー組成(酢酸ビニルとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのモル比率)が一定となるようにした。60℃で240分間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。次に、30℃の減圧下でメタノールを追加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーを留去し、パラスチレンスルホン酸ナトリウムが導入された変性ポリビニルアセテートのメタノール溶液を得た。
上記で得られたパラスチレンスルホン酸ナトリウムが導入されたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを加え、さらに水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度14.1%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のパラスチレンスルホン酸ナトリウムが導入されたポリ酢酸ビニル濃度30%、パラスチレンスルホン酸ナトリウムが導入されたポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.050)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後、ゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでよく洗浄し、真空乾燥機中40℃で12時間乾燥することにより、アニオン性重合体P−10を得た。1H−NMR測定により求めたパラスチレンスルホン酸ナトリウム由来の構成単位の変性量は3.0mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.1モル%であった。
<カチオン性重合体P−12〜19の合成>
上記のP−1の重合条件を表2のように変更した以外は、アニオン性重合体P−1と同様の方法でカチオン性重合体P−11〜18を合成した。得られたカチオン性重合体のイオン交換ユニットの割合を表2に示す。
<カチオン性重合体P−20の合成>
組成を表2のように変更した以外は、アニオン性重体P−14と同様の方法によって、カチオン性重合体P−20を合成した。得られたカチオン性重合体のイオン交換ユニットの割合を表2に示す。
<PVAとポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)混合物P−21の作製>
P-9の作製において、パラスチレンスルホン酸ナトリウム20.0質量部をビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド19.3質量部に変更し、水を163質量部から168質量部に変更したこと以外はPVA−9の合成と同様の操作を行い、ポリビニルアルコールとポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)の混合物P−17の水溶液(10wt%)を作製した。水溶液の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでの1H−NMR測定に付した結果、ビニルアルコール単位に対するビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド単位の含有量は50モル%であった。
<カチオン性重合体P−22の合成>
P-10の作製において、パラスチレンスルホン酸ナトリウム4.6質量部をビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド4.7質量部に変更したこと以外はPVA−10の合成と同様の操作を行い、カチオン性重合体P−20を得た。1H−NMR測定により求めたビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド由来の構成単位の変性量は3.0mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は98.0モル%であった。
Figure 2015123404
[実施例1]
電極−1の作製
(炭素材料を含有するスラリーの調製)
キャパシタ用活性炭(クラレケミカル(株)製、BET比表面積:1800m/g)、導電性カーボンブラック、カルボキシメチルセルロース、水を100:5:1:140の重量比で混合した後で混練した。得られた塊状混練物100質量部に対して20重量部の水と15質量部の水系SBRエマルジョンバインダー(固形分率40質量%)を添加し、混練することで固形分率36%の活性炭スラリーを得た。得られたスラリーの温度25℃での粘度をB型粘度計(株式会社トキメック製)で測定したところ、3000mPa・sであった。
(カチオン交換電極の作製)
黒鉛シート(東洋炭素(株)製、厚み:250μm)の上に、アプリケーターバー(塗布幅:10cm)を用いて、炭素材料を含有するスラリーを塗布した。その後、熱風乾燥機「DKM400」(YAMATO製)にて温度90℃、10分間乾燥した。次いで、前記スラリー層の上に、上述で得られたアニオン性重合体P−1の水溶液(濃度10wt%)を水溶液で120μmの厚みで塗工した。その後、熱風乾燥機で温度90℃、10分間乾燥を行い、一体型電極を得た。得られたそれぞれの層の厚みは、カチオン交換層のは厚み5μmであり、多孔質電極層の厚みは280μmであった。
得られた一体型電極を、160℃で30分間熱処理して、ビニルアルコール系重合体の結晶化を行った。ついで、積層体を2mol/Lの硫酸ナトリウムの水溶液に24時間浸漬させた。該水溶液にそのpHが1.0になるように濃硫酸を加えた後、1.0体積%グルタルアルデヒド水溶液に前記の一体型電極を浸漬させ、50℃で1時間、スターラーで攪拌し、架橋処理を行った。ここで、グルタルアルデヒド水溶液としては、石津製薬株式会社製「グルタルアルデヒド」(25体積%)を水で希釈したものを用いた。架橋処理の後、前記のカチオン交換一体型電極を脱イオン水に浸漬して、数回脱イオン水を交換しながら、電極―1を作製した。
(電極の評価)
このようにして作製した電極−1を所望の大きさに裁断し、測定試料を作製した。得られた測定試料を用い、上記方法にしたがって、屈曲性の評価、電極抵抗の評価及び寸法安定性試験を行った。得られた結果を表3に示す。
[実施例2〜9]
重合体の種類を表3に示す内容に変更した以外は、前述の電極−1と同じ作製方法で、電極−2〜電極−9を作製、評価を行った。それぞれの電極の評価結果を表3に示す。
[比較例1〜3]
重合体の種類を表3に示す内容に変更した以外は、前述の電極−1と同じ作製方法で、電極−10〜電極−12を作製し、評価を行った。それぞれの電極の評価結果を表3に示す。
Figure 2015123404
(アニオン交換電極の作製)
[実施例10〜18]
重合体の種類を表4に示す内容に変更した以外は、前述の電極−1と同じ作製方法で、電極−13〜電極−21を作製し、評価を行った。それぞれの電極の評価結果を表4に示す。
[比較例4,5]
重合体の種類を表4に示す内容に変更した以外は、前述の電極−1と同じ作製方法で、電極−22、電極−23を作製、評価を行った。それぞれの電極の評価結果を表4に示す。
Figure 2015123404
表3と表4の結果より、炭素材料を含有する多孔質電極層とアニオン交換の層もしくはカチオン交換の層を積層させた一体型電極において、イオン交換層にグラフト共重合体を用いることで、耐屈曲性があり、かつ、寸法安定性の高い電極が得られることがわかる。また、電極抵抗も低く、電極として優れた性能を発現することが分かる(実施例1〜18)。特に、ポリビニルアルコール系グラフト共重合体で、かつイオン性基含有量が3〜30モル%の場合には、耐屈曲性、寸法安定性により優れ、かつ低電極抵抗の電極が得られることが判る(実施例2〜3、6〜7、11〜12、15〜16、)。一方、PVAとイオン重合体との混合物をイオン交換層として、電極に用いると、電極が脆いことや、寸法安定性が悪い(比較例1、4)。イオン交換層にランダム共重合体を用いると、電極抵抗値は大きくなる(比較例2、5)。また、イオン交換ユニットを導入していないポリビニルアルコールを電極に用いると、得られる電極抵抗値は大きくなる(比較例3)。
本発明に係る電極を用いた通液型コンデンサは、長時間にわたり効率よく安定的に脱塩やイオン性物質と非イオン性物質の分離を行うことができるので、産業上の利用可能性がある。
以上、本発明の好ましい実施態様を説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に開示した本発明の範囲および精神から逸脱することなく多様な修正、付加および置換ができることが理解可能であろう。
1 通液型コンデンサ
2、3、16 電極
4 アニオン交換層
5、8 多孔質電極層
6、9 集電体層
7 カチオン交換層
10 流路部
11、14 アニオン
12、13 カチオン
15 チタン電極
17 セパレータ

Claims (15)

  1. 集電体層上に、多孔質電極層とイオン交換層が形成されている電極であって、前記イオン交換層がグラフト共重合体であるイオン交換体(A)を含有することを特徴とする電極。
  2. 前記多孔質電極層が炭素材料を含有することを特徴とする請求項1記載の電極。
  3. 前記イオン交換体(A)がビニルアルコール系グラフト共重合体(A-1)であることを特徴とする請求項1または2記載の電極。
  4. 前記ビニルアルコール系グラフト共重合体(A-1)が、下記一般式(a)で表される構成単位と、ビニルアルコール系構成単位(b)と、から構成する側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(P1)を幹ポリマーとし、該メルカプト基から、カチオン性単量体(c)またはアニオン性単量体(d)を重合してなるイオン性重合体(P2)がグラフト結合したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極。
    Figure 2015123404

    (式中、Rは、水素原子又はカルボキシル基であり、Rは、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基であり、Xは、炭素原子及び水素原子を含みかつ窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜22の2価の基であり、Rがカルボキシル基である場合、当該カルボキシル基は、隣接するビニルアルコール単位の水酸基と環を形成していてもよく、Rがカルボキシル基又はカルボキシメチル基である場合、当該カルボキシル基又はカルボキシメチル基は、隣接するビニルアルコール単位の水酸基と環を形成していてもよい。)
  5. 前記イオン交換体(A)において、Xは、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、エーテル結合(−O−)、アミノ結合〔−NR−(Rは水素原子またはNと結合する炭素を含む基)〕、アミド結合(−CONH−)、アルコキシ基、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい炭素数1〜22の2価の直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素基であることを特徴とする請求項4記載の電極。
  6. 前記イオン交換体(A)において、Xは、*−CO−NH−X−(式中、*は重合体主鎖と結合する結合手を示し、Xは窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基を示す)で表される2価の基であることを特徴とする請求項4記載の電極。
  7. 前記イオン交換体(A)において、前記側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体(P1)の構成単位である(a)および(b)と前記イオン性重合体(P2)の構成単位である(c)または(d) のモル比が99.5:0.5〜50:50の範囲であることを特徴とする請求項4記載の電極。
  8. 前記集電体層上に形成される、前記多孔質電極層と前記イオン交換層が、集電体層/多孔質電極層/イオン交換層の順に積層されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極。
  9. 前記多孔質電極層上に形成される前記イオン交換層の厚みが1〜70μmの範囲であり、前記多孔質電極層の厚みが50〜1000μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電極。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の電極からなる通液型コンデンサ用電極。
  11. 前記集電体層の表面に、多孔質材料を含有するスラリーと、イオン交換体(A)を含有する溶液とを塗布した後、塗膜を乾燥させ、前記イオン交換体(A)を架橋させることにより、前記多孔質電極層と前記イオン交換層を形成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
  12. 前記集電体層の表面に、前記多孔質材料を含有するスラリーと前記イオン交換体(A)を含有する溶液を同時に塗布する、請求項11記載の電極の製造方法。
  13. 前記集電体層上に、前記多孔質材料を含有するスラリーを塗布した後に、該スラリーの表面に前記イオン交換体(A)を含有する溶液を塗布する請求項11記載の電極の製造方法。
  14. 塗膜を乾燥させた後に、熱処理を行って、または熱処理を行うことなく架橋処理を行う請求項11〜13のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
  15. 請求項10記載の電極を対向して配置して、前記電極間に流路部を形成し、一方の電極中のカチオン交換層がアニオン性基を有するイオン交換体(A)を含有し、他方の電極中のアニオン交換層がカチオン性基を有するイオン交換体(A)を含有しており、アニオン交換層とカチオン交換層とが流路部を介して対向するように配置されてなることを特徴とする通液型コンデンサ。
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