JP2015122331A - 差動信号伝送用ケーブル - Google Patents

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Abstract

【課題】スキュー及び差動同相変換量を抑制する差動信号伝送用ケーブルを提供する。【解決手段】差動信号伝送用ケーブル1は、離れて平行に並んだ一対の導線2と、一対の導線2を被覆し、短手方向の断面の外周形状が曲率半径が異なる複数の曲線を組み合わせた形状となる絶縁体3と、絶縁体3に巻き付けて設けられ、短手方向の断面の内周形状が絶縁体3の外周形状に基づいた複数の曲線を組み合わせた形状となる金属箔テープ7を備えて概略構成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、差動信号伝送用ケーブルに関する。
従来の技術として、平行に並べられた一対の絶縁電線に、さらに、少なくとも1本のドレイン導体を平行に並べ、この一対の絶縁電線とドレイン導体とを一括して金属箔テープで巻き回してシールド導体とし、このシールド導体の外周部を外被で覆った平行2心シールド電線が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の平行2心シールド電線は、金属箔テープの巻き回しによりシールド導体を形成するので、製造にかかる時間を短縮することができる。
特開2002−289047号公報
特許文献1に係る平行2心シールド電線は、短手方向の断面において、金属箔テープが平坦な部分が生じる。この平坦な部分は、金属箔テープの張力の方向と、平坦な部分の表面が作る面と、が平行となるため、張力に基づく金属箔テープを押し付ける圧力が発生しなくなり、金属箔テープが緩み易くなる。従来の平行2心シールド電線は、金属箔テープの緩みによって、スキュー(skew)および差動同相変換量が増加する問題がある。
従って、本発明の目的は、スキューおよび差動同相変換量を抑制する差動信号伝送用ケーブルを提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、離れて平行に並んだ一対の導体と、一対の導体を被覆し、短手方向の断面の外周形状が曲率半径が異なる複数の曲線を組み合わせた形状となる絶縁体と、絶縁体上に継ぎ目または重なり合う領域をらせん状に有するように巻き付けて設けられ、短手方向の断面の内周形状が絶縁体の外周形状に基づいた複数の曲線を組み合わせた形状となるシールド導体と、前記シールド導体を被覆した被覆部材と、を備え、前記シールド導体は、前記被覆部材と向い合う金属箔を有し、前記絶縁体は、前記断面の前記外周形状が楕円形状を有し、前記複数の曲線の曲率半径の最小値が、前記複数の曲線の曲率半径の最大値の1/20以上1/4以下であると共に、前記断面の短径が、長径の0.37倍以上0.63倍以下である差動信号伝送用ケーブルを提供する。
上記の差動信号伝送用ケーブルは、被覆部材が、編組であることが好ましい。
上記の差動信号伝送用ケーブルは、絶縁体が、発泡材料を用いて形成されることが好ましい。
上記の差動信号伝送用ケーブルは、内部よりも発泡度の小さい層を外側に有することが好ましい。
本発明に係る差動信号伝送用ケーブルによれば、スキューおよび差動同相変換量を抑制することができる。
図1は、実施例1に係る差動信号伝送用ケーブルの斜視図である。 図2(a)は、実施例1に係る差動信号伝送用ケーブルを短手方向で切断した断面図であり、(b)は、差動信号伝送用ケーブルを短手方向で切断した断面の模式図である。 図3(a)は、比較例1に係る断面が円形状となる絶縁電線に押え巻きテープを巻き付けた場合の張力Tと圧力Pとの関係を示す模式図であり、(b)は、比較例2に係る平坦部を有する絶縁電線に押え巻きテープを巻き付けた場合の張力Tと圧力Pとの関係を示す模式図である。 図4は、実施例1に係る差動信号伝送用ケーブルの曲率半径と金属箔テープの緩みが発生する確率との関係を示す図である。 図5(a)は、実施例2に係る差動信号伝送用ケーブルの短手方向の断面図であり、(b)は、曲率半径の最大値と最小値とに関するグラフである。 図6は、実施例3に係る差動伝送用ケーブルの断面図を示す。 図7は、変形例に係る差動信号伝送用ケーブルの斜視図である。
[実施の形態の要約]
実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブルは、離れて平行に並んだ一対の導体と、一対の導体を被覆し、短手方向の断面の外周形状が曲率半径が異なる複数の曲線を組み合わせた形状となる絶縁体と、絶縁体に巻き付けて設けられ、短手方向の断面の内周形状が絶縁体の外周形状に基づいた複数の曲線を組み合わせた形状となるシールド導体と、を備える。
(差動信号伝送用ケーブル1の構成の概要)
図1は、実施例1に係る差動信号伝送用ケーブルの斜視図である。図2(a)は、実施例1に係る差動信号伝送用ケーブルを短手方向で切断した断面図であり、(b)は、差動信号伝送用ケーブルを短手方向で切断した断面の模式図である。図2(b)に点線で示す2つの円は、説明を容易にするために図示したものであり、差動信号伝送用ケーブル1と同程度の短手方向の断面形状を有するケーブルを作成する際、用いられる絶縁電線の断面形状を示している。以下では、特に断らない限り、断面は、短手方向で切断した断面を示すものとする。
この差動信号伝送用ケーブル1は、一例として、10Gbps以上の差動信号を用いたサーバ、ルータおよびストレージ等の電子機器間または電子機器内の差動信号伝送用のケーブルである。
この差動信号伝送とは、一対の導線において、位相が180°異なる信号をそれぞれの導線に伝送し、受信装置側において、この位相が異なる2つの信号の差分を取り出すものである。この一対の導線に流れる電流は、互いに逆方向に流れているため、この電流が流れる伝送経路である導線から放射される電磁波が小さくなる。また、差動信号伝送は、外部から受けたノイズが2つの導線に等しく重畳することから、差分を取ることにより、ノイズを除去することが可能となる。
本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、例えば、図1に示すように、離れて平行に並んだ一対の導線2(導体)と、一対の導線2を被覆し、短手方向の断面の外周形状が曲率半径が異なる複数の曲線を組み合わせた形状となる絶縁体3と、絶縁体3に巻き付けて設けられ、短手方向の断面の内周形状が絶縁体3の外周形状に基づいた複数の曲線を組み合わせた形状となるシールド導体としての金属箔テープ7を備えて概略構成されている。
また、本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、例えば、金属箔テープ7を被覆した被覆部材としての押え巻きテープ8を備え、金属箔テープ7が、絶縁部材としてのプラスチックテープ5と、プラスチックテープ5の絶縁体3と向い合う面の反対側の面(すなわち、押え巻きテープ8と向かい合う面)に設けられた導電膜としての金属箔6と、を備えている。
導線2は、例えば、銅等の電気良導体の単線、または、この電気導体にメッキ等を施した単線である。また、導線2の半径rは、例えば、0.511mmである。さらに、導線2と導線2の間隔Lは、例えば、0.99mmである。この間隔Lは、導線2の断面における、導線2の中心と導線2の中心との間隔を示している。なお、導線2は、例えば、屈曲特性を重視する場合、複数の導線を撚って形成する撚線を用いても良い。
絶縁体3は、例えば、誘電率、誘電正接の小さい材料を用いて形成される。この材料は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフロロアルコキシ(PFA)、ポリエチレン等である。なお、絶縁体3は、誘電率、誘電正接を小さくするため、発泡材料として発泡絶縁樹脂を用いて形成されても良い。絶縁体3は、例えば、発泡絶縁樹脂を用いて形成される場合、樹脂に発泡剤を練り込み、成型時の温度によって発泡度を制御する方法、窒素等のガスを成型圧力で注入し、圧力解放時に発泡させる方法等を用いて形成される。
絶縁体3は、例えば、図2(b)に示すように、断面形状が略楕円形状であり、一例として、長軸方向の幅W1が2.8mm、短軸方向の幅W2が1.54mmである。
また、絶縁体3は、例えば、図2(b)に点線で示す2つの円の頂点を結んだ面と絶縁体3とで囲まれる領域30(斜線で示す領域)を有する。この点線で示す円は、例えば、絶縁体3の断面の外周に内接する円である。領域30は、例えば、図2(b)に点線で示す2つの円を絶縁電線とする場合、この2つの絶縁電線を被覆する絶縁体には、形成されない領域を示している。この領域30の最大の幅tは、一例として、0.07mmである。以下に、比較例1および比較例2を参照しながら、絶縁体3の断面形状について、さらに説明する。
図3(a)は、比較例1に係る断面が円形状となる絶縁電線に押え巻きテープを巻き付けた場合の張力Tと圧力Pとの関係を示す模式図であり、(b)は、比較例2に係る平坦部を有する絶縁電線に押え巻きテープを巻き付けた場合の張力Tと圧力Pとの関係を示す模式図である。
ここで、差動信号伝送用ケーブルは、数Gbpsの高速信号を伝送するため、スキューを低減する必要がある。このスキューとは、差動信号間の到着時間の時間差(すなわち、ペア内スキュー)を示す。
スキューは、例えば、2本の絶縁電線を用いてケーブルが形成される場合、絶縁体の僅かな誘電率差、絶縁体の僅かな外径の差、絶縁体の長手方向に添えられるドレイン線の僅かなずれ、絶縁体の外側に設けられる金属箔テープの緩みによる絶縁体と金属箔テープとの界面にできる空隙等に起因して発生する。
また、差動信号伝送用ケーブルは、EMI(Electro-Magnetic Interference)を低減する必要から、差動同相変換量を低く抑える必要がある。ケーブルの(左右)対称性が良くないと、入力した差動信号の一部が同相信号に変換されてしまう。この同相に変換されてしまう割合を差動同相変換量と言う。特に、ポート1の差動信号に対するポート2にあらわれる同相信号の割合は、Sパラメータとして測定することができ、「Scd21」であらわされる。
スキューを低減する方法としては、2つの導体を1つの絶縁体で一緒に被覆することで、絶縁体の誘電率差を抑える方法が知られている。また、他の方法として、2つの絶縁電線を、シールド用の導電体で覆う前に、絶縁体のテープを巻き付けて、シールドと導体の距離を相対的に離すことで、導体間の電磁結合を強くし、スキューが発生し難いケーブルとする方法も知られている。
上記のスキューを低減する方法は、絶縁体内部の誘電率差に起因するスキューには、一定の効果が確認され、絶縁体の外周形状を一定とすること、導体の位置ずれが起きないようにすることと併せることで、スキューの低減を図れる。
しかし、絶縁体に巻き付ける金属箔テープの緩みにより生じる空隙による影響は、上記の対策を施しても僅かに残る。差動信号伝送用ケーブルは、例えば、10Gbps相当の高速信号伝送用のケーブルとして用いられる際には、この空隙による影響により、歩留まりが下がる問題がある。
この金属箔テープの緩みは、例えば、金属箔テープを絶縁体に巻き付ける場合、または金属箔テープを縦添えし、押え巻きテープを巻き付ける場合、のいずれの場合にも発生する。
巻き付けた金属箔テープが緩む原因は、例えば、金属箔テープが絶縁体を押す力、すなわち、金属箔テープが絶縁体に与える圧力Pが小さいことが挙げられる。
図3(a)に示すように、断面が円形状となる絶縁電線100に金属箔テープ101を巻き付ける比較例1の場合、金属箔テープ101の張力Tと釣り合うように、絶縁電線100に力が作用する。
この力が、絶縁電線100の側面に加わる圧力Pとなるが、この圧力は、P=T/(2wr1)(w:金属箔テープの幅、r1:絶縁電線の半径)で示す関係を有する。
一方、図3(b)に示すように、断面が平坦部103と曲線部104とを組み合わせた形状となる絶縁電線102に金属箔テープ101を巻き付ける比較例2の場合、曲線部104には、上記のP=T/(2wr1)で示すPと同じ圧力が加わる。しかし、平坦部103においては、金属箔テープ101の張力Tの方向と、平坦部103の表面が作る面と、が平行となるので、張力Tに基づいて平坦部103に付加される圧力Pはゼロとなる。
ここで、円形状の絶縁電線を2つ並べて形成された断面形状、および図3(b)に示すような曲線部104と平坦部103とを組み合わせた断面形状のいずれにおいても、金属箔テープ101を巻き付けたとき、その断面に、金属箔テープ101が直線状になる部分が存在する。
つまり、比較例2の場合、金属箔テープ101を巻き付ける際に、金属箔テープ101の張力Tと、平坦部103の表面が作る面とが平行となるため、平坦部103には、力が作用しない。平坦部103では、金属箔テープ101を巻き付ける際の差動信号伝送用ケーブルのわずかな動き、金属箔テープ101の張力の僅かな変化等により、巻き付ける金属箔テープ101の緩みが生じる。その結果、スキューが発生し、また、差動同相変換量が増加する。
上記の結果により、本実施例に係る絶縁体3は、図2(b)に示す斜線の部分である領域30を、図2(b)の紙面の上下に有する。従って、金属箔テープ7を巻き付けることにより生じる圧力Pのベクトルは、金属箔テープ7の張力Tの方向と、平坦部103の表面が作る面と、が平行となる箇所がなくなる。
金属箔テープ7のプラスチックテープ5は、例えば、ポリエチレン等の樹脂材料を用いて形成される。
金属箔テープ7の金属箔6は、例えば、プラスチックテープ5の一方の面に、銅またはアルミニウムを張り合わせて形成される。
また、金属箔テープ7は、絶縁体3の長手方向に沿って継ぎ目、または重なり合う領域を有する。本実施例に係る金属箔テープ7は、例えば、絶縁電線4の絶縁体3を覆うように、たばこ巻きされる。このたばこ巻きとは、絶縁体3の長手方向に金属箔テープ7を添え、絶縁体3の長手方向の側面から金属箔テープ7を1回で巻き付ける方法である。図1に示す継ぎ目70は、例えば、金属箔テープ7の長手方向の一方端部と他方端部とが対向することにより、長手方向に沿って生じる。また、金属箔テープ7が、絶縁体3の短手方向の外周よりも長いとき、金属箔テープ7の一方端部と他方端部とが重なり合う領域が生じる。
押え巻きテープ8は、例えば、樹脂材料を用いて形成される。
押え巻きテープ8は、金属箔テープ7上に継ぎ目または重なり合う部分をらせん状に有する。本実施例に係る押え巻きテープ8は、例えば、金属箔テープ7を覆うように、らせん状に巻き付けられる。押え巻きテープ8は、短手方向の一方端部と他方端部とが重なり合わないように絶縁体3に巻き付けられる。従って、図1に示す継ぎ目80は、金属箔テープ7上にらせん状に形成される。また、押え巻きテープ8の一方端部と他方端部とが重なり合うように金属箔テープ7上に巻き付けられるとき、金属箔テープ7上に重なり合う領域がらせん状に生じる。
以下に、本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1の製造方法について説明する。
(差動信号伝送用ケーブル1の製造方法)
まず、一対の導線2を絶縁体3によって被覆し、絶縁電線4を作製する。具体的には、導線2を離して平行に配置する。この一対の導線2は、一例として、0.99mm離して平行に配置される。また、導線2の半径rは、一例として、0.511mmである。次に、発泡ポリエチレンを用いて一対の導線2を被覆し、絶縁体3を形成する。この絶縁体3の形成は、発泡度を調整することにより、一例として、絶縁体3の比誘電率が1.5となるように行われる。
また、絶縁体3の形状は、図2(b)に示すような曲率半径が異なる複数の曲線からなる形状を有し、一例として、長軸方向の幅W1が2.8mm、短軸方向の幅W2が1.54mmとなる。ここで、領域30の最大幅tは、一例として、0.07mmである。この領域30の曲率半径は、一例として、7mmである。
この絶縁体3は、例えば、絶縁体3の形状に基づいた押出機の押出口金を作製し、この押出口金から一対の導線2と共に発泡ポリエチレンを押出すことにより形成される。
次に、絶縁電線4の長手方向に金属箔テープ7を添え、金属箔テープ7を絶縁電線4に巻き付ける。この巻き付けは、プラスチックテープ5側が絶縁体3に対向し、金属箔6側が外側に露出するように行われる。なお、金属箔6は、後工程においてハンダ付けが行われるため、外側に露出させている。
次に、押え巻きテープ8を金属箔テープ7にらせん状に巻き付け、所定の工程を経た後、差動信号伝送用ケーブル1を得る。
(曲率半径と金属箔テープ7の緩みの関係について)
図4は、実施例1に係る差動信号伝送用ケーブルの曲率半径と金属箔テープの緩みが発生する確率との関係を示す図である。図4は、横軸が曲率半径、縦軸が金属箔テープ7の緩み発生率である。この金属箔テープ7の緩み発生率とは、作製したケーブル全体において、あるケーブル断面において、絶縁体3と金属箔テープ7の間に空隙が発生する確率を示す。
金属箔テープ7の緩み発生率の測定は、以下に示す方法で実施する。まず、作製したケーブル全長から偏ることなく、ケーブルサンプルを抜き取り、ケーブルの断面を観察する。それぞれのサンプルにおいて、絶縁体3と金属箔テープ7の間に空隙が有るか無いかを確認し、サンプル全体の数に対する、空隙が有るサンプルの数の割合を緩み発生率とする。
この図4に示す測定結果から、絶縁体3の領域30の曲率半径が14mm(長軸方向に位置する曲線の曲率半径の20倍)以下であれば、金属箔テープ7の緩み発生率は、数%以下となり、差動信号伝送用ケーブル1の性能を維持することができる。
一方、領域30の曲率半径が2.8mm(長軸方向に位置する曲線の曲率半径の4倍)となるとき、金属箔テープ7の緩み発生率は低くなるが、領域30による厚みの増加が約0.25mmとなる。この増加により、差動信号伝送用ケーブル1の特性インピーダンスが大きくなる。また、曲率半径が2.8mmとして作製された差動信号伝送用ケーブルは、複数の差動信号用伝送用ケーブルを寄り合わせたケーブルの外径が大きくなり、取り扱いが困難となる。よって、曲率半径の範囲は、4倍から20倍が好ましい。
(実施例1の効果)
本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1によれば、スキューおよび差動同相変換量を抑制することができる。具体的には、差動信号伝送用ケーブル1の絶縁体3の断面の外周は、図2(b)に示すように、曲率半径が異なる複数の曲線の組み合わせ、つまり、曲率半径が0.7mmの長軸方向に位置する曲線と、曲率半径が7mmの領域30を含んで構成される。よって、差動信号伝送用ケーブル1では、絶縁電線4に押え巻きテープ8を巻き付ける際、金属箔テープ7の張力Tと釣り合うように、絶縁体3の表面に常に圧力Pが加わる。張力Tを一定とすると、圧力Pは、断面の外周の曲率半径に反比例すると考えられるので、領域30における圧力Pは、長軸方向の約1/10に低下するが、領域30を絶縁体3に形成しない場合は、上記に示すように、直線部分において、絶縁体に圧力Pが加わらない。
また、本実施例に係る絶縁体3は、領域30が形成されるため、圧力Pが、常に絶縁体3に付加されるので、金属箔テープ7を絶縁体3に巻き付ける際に、絶縁電線4が移動したり、押え巻きテープ8の張力Tが所定の張力より弱くなったりしたとしても、押え巻きテープ8の緩みの発生を抑制することができる。従って、金属箔テープ7の緩みを抑制することができるので、絶縁体3と金属箔テープ7との界面に生じる空隙の形成を抑制することができる。よって、本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、スキューおよび差動同相変換量が増大することによる性能の低下を抑制することができる。
実施例2は、絶縁体3の短手方向の断面の外周形状が楕円形状となる点において、実施例1とは異なっている。
図5(a)は、実施例2に係る差動信号伝送用ケーブルの短手方向の断面図であり、(b)は、曲率半径の最大値と最小値とに関するグラフである。図5(b)は、横軸がx軸、縦軸がy軸である。この楕円において、x軸上に長軸が存在し、y軸上に短軸が存在する。なお、以下の各実施例において、実施例1と同じ構成および機能を有する部分については、実施例1と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
本実施例における差動信号伝送用ケーブル1は、絶縁体3の外周形状が、焦点Aおよび焦点Bを有する楕円形状となっている。他の構成については、実施例1に係る差動信号伝送用ケーブル1と同様である。
また、本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1の製造方法は、長径(=2a)が3.20mm、短径(=2b)が1.64mmとなる楕円形状を有する絶縁体3を形成する点において、実施例1と異なっている。
本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、押え巻きテープ8を金属箔テープ7に巻き付ける際、圧力Pが、常に絶縁体3に付加される。また、金属箔テープ7が絶縁体3に付加する圧力Pのベクトルは、図5(b)に示す焦点Aおよび焦点Bのいずれかに向くこととなる。
この金属箔テープ7の張力Tを一定としたとき、上記に示したように、圧力Pは絶縁体3の断面の外周の曲率半径に反比例する。そこで、図4に示すように、長径2a、短径2bの楕円を示す式を式(1)とするとき、この楕円曲線上の任意の点(x、y)における曲率半径は、式(2)となる。
この式(2)によれば、曲率半径は、b2/a以上a2/b以下の範囲で変化することが分かる。よって、圧力Pの最小値は、最大値の(b/a)3倍、すなわち本実施例の形状であれば、圧力Pは、短軸上では、約13%程度まで低下することになる。
しかし、本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、実施例1と同様、常に絶縁体3に圧力が付加されるように金属箔テープ7を巻くことができるので、金属箔テープ7を絶縁体3に巻き付ける際に、絶縁電線4が移動したり、押え巻きテープ8の張力Tが所定の張力より弱くなったりしたとしても、押え巻きテープ8の緩みを発生を抑制することができる。
その結果、金属箔テープ7の緩みを抑制することができるので、絶縁体3と金属箔テープ7との界面に生じる空隙の形成を抑制することができる。また、実施例1に比べて、曲率半径が急激に変化する箇所がないので、より隙間が生じる確率が小さくなる。従って、本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、スキューおよび差動同相変換量が増大することによる性能の低下を抑制することができる。
なお、曲率半径の最小と最大との比は、上記で示したとおり、(b/a)3である。よって、曲率半径が、1/20以上1/4以下となる範囲は、絶縁体3の断面の短径が、長径の0.37倍以上0.63倍以下であり、曲率半径がこの範囲に収まれば実施例1と同様、金属箔テープ7の緩みを抑制することができる。
実施例3は、絶縁体3の内部と外周部とで発泡度が異なる点で上記の各実施例と異なっている。
図6は、実施例3に係る差動伝送用ケーブルの断面図を示す。図6において、絶縁体3の外周と点線と、で囲まれた領域は、絶縁体層31である。
本実施例における差動信号伝送用ケーブル1は、絶縁体3の内部と外周部とで発泡度が異なっている。他の構成については、実施例1に係る差動信号伝送用ケーブル1と同様である。この発泡度は、一例として、内部は50%であり、絶縁体層31は数%である。
絶縁体3の絶縁体層31は、絶縁体3の内部よりも発泡度が小さくなっている。つまり、絶縁体3は、絶縁体層31が形成されるため、内部よりも外周部が硬くなっている。
また、本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1の製造方法は、実施例1および実施例2と同様に、押出機を用いて、一対の導線2を被覆するが、その際に絶縁体3の最外周に発泡度の小さい絶縁体層31を再被覆するように押し出す工程を含む。他の製造方法は、実施例1および実施例2と同様である。
本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1によると、実施例1および実施例2の差動信号伝送用ケーブルと比べて、外周部に絶縁体層31が形成されているため、絶縁体3の形状が安定するので、より押え巻きテープ8から受ける圧力Pが安定して絶縁体3に作用する。その結果、金属箔テープ7の緩みを抑制することができるので、絶縁体3と金属箔テープ7との界面に生じる空隙の形成を抑制することができる。従って、本実施例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、スキューおよび差動同相変換量が増大することによる性能の低下を抑制することができる。
(変形例)
図7は、変形例に係る差動信号伝送用ケーブルの斜視図である。変形例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、金属箔テープ7が、絶縁体3上に継ぎ目80をらせん状に有し、金属箔テープ7を被覆する被覆部材が、編組9である。この金属箔テープ7は、プラスチックテープ5の一方の面に銅からなる金属箔6を張り合わせたものであり、編組9は、素線径が0.08mmの銅素線を64本用いたものである。
本変形例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、絶縁体3が実施例1〜実施例3のいずれかに記載の形状を有しているので、金属箔テープ7をらせん状に巻き付けたとしても、緩みの発生を抑えることができる。その結果、絶縁体3と金属箔テープ7との界面に生じる空隙の形成を抑制することができる。従って、本変形例に係る差動信号伝送用ケーブル1は、スキューおよび差動同相変換量が増大することによる性能の低下を抑制することができる。
なお、金属箔テープ7は、絶縁体3上に重なり合う領域をらせん状に有していても良い。
以上、本発明の実施の形態、実施例及びその変形例を説明したが、上記に記載した実施の形態、実施例及び変形例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態、実施例及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
1…差動信号伝送用ケーブル
2…導線
3…絶縁体
4…絶縁電線
5…プラスチックテープ
6…金属箔
7…金属箔テープ
8…押え巻きテープ
9…編組
30…領域
31…絶縁体層
70…継ぎ目
80…継ぎ目
100…絶縁電線
101…金属箔テープ
102…絶縁電線
103…平坦部
104…曲線部

Claims (8)

  1. 離れて平行に並んだ一対の導体と、
    前記一対の導体を被覆し、短手方向の断面の外周形状が曲率半径が異なる複数の曲線を組み合わせた形状となる絶縁体と、
    前記絶縁体上に継ぎ目または重なり合う領域をらせん状に有するように巻き付けて設けられ、短手方向の断面の内周形状が前記絶縁体の前記外周形状に基づいた前記複数の曲線を組み合わせた形状となるシールド導体と、
    前記シールド導体を被覆した被覆部材と、
    を備え、前記シールド導体は、前記被覆部材と向い合う金属箔を有し、
    前記絶縁体は、前記断面の前記外周形状が楕円形状を有し、前記複数の曲線の曲率半径の最小値が、前記複数の曲線の曲率半径の最大値の1/20以上1/4以下であると共に、前記断面の短径が、長径の0.37倍以上0.63倍以下である
    差動信号伝送用ケーブル。
  2. 前記被覆部材は、樹脂材料を用いて形成され、前記シールド導体にらせん状に巻き付けられている請求項1に記載の差動信号伝送用ケーブル。
  3. 前記被覆部材が、編組である請求項1に記載の差動信号伝送用ケーブル。
  4. 前記絶縁体が、発泡材料を用いて形成される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブル。
  5. 前記絶縁体が、内部よりも発泡度の小さい層を外側に有する請求項4に記載の差動信号伝送用ケーブル。
  6. 前記シールド導体は、前記絶縁体と向い合う絶縁部材を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブル。
  7. 前記金属箔は、銅からなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブル。
  8. 10Gbps以上の差動信号の伝送に用いられる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブル。
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