JP2015115392A - 積層型セラミック電子部品およびその製造方法 - Google Patents

積層型セラミック電子部品およびその製造方法 Download PDF

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祐樹 木村
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Abstract

【課題】外部電極の、セラミック積層体の側面に回り込んだ部分の先端である回り込み先端部近傍から、水分やめっき液などがセラミック積層体の内部に浸入することを確実に抑制、防止することが可能で、信頼性の高い積層型セラミック電子部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】外部電極6,7の、セラミック積層体5の側面5a,5bに回り込んだ部分の先端である回り込み先端部6a,7aとの間に隙間が生じないような態様で、セラミック積層体5の側面5cの回り込み先端部6a,7aと接する領域を覆うようにコーティング層8を形成するとともに、コーティング層の、外部電極の回り込み先端部と接する方の側辺から逆側の側辺までの寸法(幅x)を2〜20μmとする。
また、コーティング層の一部を、外部電極の回り込み先端部を覆うように形成する。
また、コーティング層を構成する材料として、ガラス材料、または樹脂系材料を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明はセラミック誘電体層と内部電極層が積層されたセラミック積層体と、セラミック積層体の互いに対向する端面のそれぞれに、内部電極層と導通するように配設された外部電極とを備えた積層型セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
代表的な積層型セラミック電子部品の一つに、積層セラミックコンデンサがある。そして、このような積層セラミックコンデンサとして、特許文献1には、主としてセラミックスからなる素体と、素体の内部に設けられ、かつ素体の端面に一部が露出した内部電極と、素体の端面上に形成された下地電極と、下地電極の形成部位以外の素体の露出面を被覆するガラス層と、下地電極の表層にガラスが浸透して形成されたガラス浸透層とを有するセラミック積層電子部品(積層セラミックコンデンサ)が開示されている。
さらに特許文献1には、そのようなセラミック積層電子部品(積層セラミックコンデンサ)を製造する方法として、主としてセラミックからなる素体と、素体に内蔵されかつ素体の端面において一部が露出した内部電極とを備える積層構造体を形成する工程と、素体の端面に導電性ペーストを塗布して下地電極を形成する工程と、下地電極の形成部位以外の素体の露出面にガラススラリーを塗布して該露出面を被覆するガラス層を形成し、かつ下地電極の表層にガラス浸透層を形成する工程とを有するセラミック積層電子部品の製造方法が開示されている。
そして、特許文献1の実施形態には、セラミック積層電子部品を製造するにあたって、
(a)図9に示すように、積層構造体(コンデンサチップ)101の内部電極102が露出している端面103に、ガラスフリットを含んだAgペースト104を塗布して乾燥させた後、
(b)ガラス粉末とバインダーとを含む水性塗料をスプレー法によってスプレーすることにより、図10に示すように、積層構造体101の表面の、Agペースト104が塗布された領域およびその他の領域にガラススラリー層105を形成し、
(c)さらに、積層構造体101を焼成することにより、図11に示すように、積層構造体101が焼成されてなる素体101Aの表面上に、ガラススラリー層105が焼成されてなるガラス層105Aを形成するとともに、Agペースト104が焼成されてなる下地電極104Aの表層にガラス浸透層(図示せず)を形成するようにしている。
そして、このようにすることにより、ガラス層105Aにより素体101Aが保護され、かつガラス浸透層により下地電極104Aの細孔が充填されることから、素体101Aへのめっき液の侵入および下地電極104Aの細孔へのめっき液の残留を十分にかつ有効に防止することができる、とされている(特許文献1の段落0015,0035)。また、下地電極104Aや素体101Aの表面に存在するポアをガラスで埋めることにより、めっき液の浸食を防ぎ、爆ぜ不良を低減することができるとされている(特許文献1の段落0036)。
しかしながら、ガラスを下地電極に拡散させる方法では、図12に示すように、ガラスが、下地電極に吸収されて消失し、下地電極上の一部領域が、ガラス浸透層の存在しない領域104Bとなる場合や、下地電極と素体101Aの境界部にガラス層105Aが存在しない領域105Bが形成される場合があり、その領域では十分なシールドを行うことができず、当該領域およびその近傍からのめっき液や水分の浸入を許し、はんだ爆ぜや耐湿性の低下を原因になるという問題点がある。
特開2010−245095号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、外部電極の、セラミック積層体の側面に回り込んだ部分の先端である回り込み先端部近傍から、水分やめっき液などがセラミック積層体の内部に浸入することを抑制、防止することが可能で、信頼性の高い積層型セラミック電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の積層型セラミック電子部品は、
セラミック誘電体層と内部電極層が積層された直方体形状を有するセラミック積層体と、前記セラミック積層体の端面に、前記内部電極層と導通するように配設された外部電極とを備えた積層型セラミック電子部品であって、
前記外部電極は、前記セラミック積層体の前記端面から稜線部を経て前記セラミック積層体の側面に回り込むように形成され、
前記外部電極の、前記セラミック積層体の前記側面に回り込んだ部分の先端である回り込み先端部と、前記セラミック積層体の前記側面との境界部を覆うようにコーティング層が帯状に形成されているとともに、
前記コーティング層の、前記外部電極の前記回り込み先端部と接する方の辺から前記セラミック積層体の前記側面と接する方の辺までの寸法(以下、「コーティング層の幅」という)が2〜20μmの範囲にあること
を特徴としている。
また、本発明の積層型セラミック電子部品においては、前記コーティング層の一部が、前記外部電極の回り込み先端部を覆うように形成されていることが好ましい。
コーティング層の一部が、セラミック積層体の側面の回り込み先端部と接する領域のみではなく、外部電極の回り込み先端部をも覆うように形成されている場合、回り込み先端部およびその近傍からの、水分やめっき液などの、セラミック積層体の内部への浸入をより確実に抑制、防止することが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
また、前記コーティング層を構成する材料がガラス系材料、または樹脂系材料であることが好ましい。
コーティング層の構成材料としてガラス系または樹脂系の材料を用いることにより、回り込み先端部およびその近傍からの、水分やめっき液などの浸入をさらに確実に抑制、防止することが可能で、信頼性の高い積層型セラミック電子部品を提供することが可能になる。
また、本発明の積層型セラミック電子部品の製造方法は、
セラミック誘電体層と内部電極層が積層されたセラミック積層体を作製するセラミック積層体作製工程と、
前記セラミック積層体の端面に導電性ペーストを塗布して、焼き付けることにより、前記セラミック積層体の前記端面から稜線部を経て前記セラミック積層体の側面に回り込むように外部電極を形成する外部電極形成工程と、
前記外部電極が形成されたセラミック積層体にコーティング材を塗布して熱処理することにより、コーティング層を形成するコーティング層形成工程と、
前記コーティング層が形成された前記セラミック積層体から、前記外部電極の前記回り込み先端部と、前記セラミック積層体の前記側面との境界部とその近傍以外の領域に位置するコーティング層を除去するコーティング層除去工程と、
を備えることを特徴としている。
また、本発明の積層型セラミック電子部品の製造方法においては、前記コーティング層除去工程が、平均粒径が2μmから前記セラミック積層体の互いに対向する前記端面の一方から他方に向かう方向の寸法の33%の範囲にある研磨媒体を用いて研磨することにより、前記コーティング層を除去する工程であることが好ましい。
研磨媒体として、平均粒径が2μmからセラミック積層体の互いに対向する端面の一方から他方に向かう方向(長さ方向)の寸法の33%の範囲にある研磨媒体を用いることにより、研磨後において、外部電極の回り込み先端部とセラミック積層体の側面との境界部(外部電極の回り込み先端部とセラミック積層体の境界部)近傍に、コーティング層を確実に存在(残留)させて、シールを行うことが可能になり、水分やめっき液などの浸入を抑制、防止することが可能で、信頼性の高い積層型セラミック電子部品をより確実に提供することが可能になる。
なお、上記研磨媒体の平均粒径が2μm未満になると、コーティング層の幅xが狭くなりすぎる傾向があり、また、セラミック積層体の長さ方向の寸法の33%を超えると、セラミック積層体自体に物理的なダメージが生じるため好ましくない。
また、前記コーティング層除去工程がサンドブラスト工法によって実施されることが好ましい。
上述の条件を満たす研磨媒体を用いたサンドブラスト工法を適用することにより、研磨後において、外部電極の回り込み先端部とセラミック積層体の境界部近傍に、コーティング層を確実に存在(残留)させることが可能になるとともに、その他の部分においてコーティング層をより確実に除去することが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
本発明の積層型セラミック電子部品は、上述のように、外部電極が、セラミック積層体の端面から稜線部を経てセラミック積層体の側面に回り込むように形成され、かつ、外部電極の、セラミック積層体の側面に回り込んだ部分の先端である回り込み先端部と、セラミック積層体の側面との境界部を覆うように、幅が2〜20μmの範囲にあるコーティング層が帯状に形成されているので、外部電極の回り込み先端部とセラミック積層体の側面との境界部からセラミック積層体の内部に水分やめっき液などが浸入することを防止して、水分やめっき液などの浸入に起因する特性の劣化やはんだ爆ぜなどの発生のない信頼性の高い積層型セラミック電子部品を得ることが可能になる。
また、本発明の積層型セラミック電子部品の製造方法は、セラミック誘電体層と内部電極層が積層されたセラミック積層体を作製するセラミック積層体作製工程と、セラミック積層体の端面に導電性ペーストを塗布して、焼き付けることにより、外部電極を形成した後、外部電極が形成されたセラミック積層体にコーティング材を塗布して熱処理することにより、コーティング層を形成し、その後、外部電極の回り込み先端部と、セラミック積層体の側面との境界部とその近傍以外の領域に位置するコーティング層を除去するようにしているので、上述の本発明に係る積層型セラミック電子部品、すなわち、セラミック積層体の側面の、外部電極の回り込み先端部と接する領域を覆うようにコーティング層が形成され、外部電極の回り込み先端部との境界部からセラミック積層体の内部に水分やめっき液などが浸入することを防止することが可能な、信頼性の高い積層型セラミック電子部品を効率よく製造することができる。
すなわち、本発明の積層型セラミック電子部品の製造方法によれば、外部電極を形成し、外部電極を含むセラミック積層体全体にコーティングを施した後、外部電極およびセラミック積層体上の不要なコーティング層を除去するようにしているので、外部電極の回り込み先端部とセラミック積層体の側面との境目部およびその近傍が選択的に被覆された構造を有する積層型セラミック電子部品を確実に製造することができる。
なお、セラミック積層体上の小さなクラックやポアのようなセラミック積層体の内部に広がった空間は、コーティング材が浸透することにより封止された状態となる。そして、このクラックやポアなどに充填されたコーティング材は、その後のコーティング層除去工程においても除去されず、積層素体は、耐候性が良好な状態に保たれる。
その結果、めっき工程におけるめっき液の浸入によるはんだ爆ぜや水分の浸入による耐湿性の低下を防止することが可能な積層型セラミック電子部品を確実に製造することが可能になる。
なお、コーティング層形成工程は、例えば、ドラムコーティング装置を用いて実施することにより、セラミック積層体に均一なコーティングを行うことが可能になり、品位の安定した積層型セラミック電子部品を効率よく、確実に製造することが可能になる。
本発明の実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ(積層型セラミック電子部品)の構成を示す正面断面図である。 本発明の実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ(積層型セラミック電子部品)の外観構成を示す斜視図である。 本発明の実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ(積層型セラミック電子部品)の製造方法を説明するための正面断面図である。 本発明の実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ(積層型セラミック電子部品)の製造方法の一工程(コーティング層除去工程)を説明するための正面断面図である。 本願発明の実施形態において用いたコーティング装置の構成を示す図である。 比較例にかかる積層セラミックコンデンサの製造工程における一工程方法を示す図である。 比較例にかかる積層セラミックコンデンサの製造工程における他の工程方法を示す図である。 比較例にかかる積層セラミックコンデンサの構成を示す正面断面図である。 従来のセラミック積層電子部品の製造方法の一工程を示す図である。 従来のセラミック積層電子部品の製造方法の他の工程を示す図である。 従来のセラミック積層電子部品の製造方法のさらに他の工程を示す図である。 従来のセラミック積層電子部品の製造方法の問題点を説明するための図である。
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
なお、この実施形態では、積層型セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例にとって説明する。
<積層セラミックコンデンサの構成>
図1は、本発明の一実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ(積層型セラミック電子部品)の構成を示す正面断面図、図2は積層セラミックコンデンサの外観構成を示す斜視図である。
この積層セラミックコンデンサ1は、図1および2に示すように、セラミック積層体5を備えている。セラミック積層体5は、積層された複数のセラミック誘電体層2と、その内部に、セラミック誘電体層2を介して互いに対向するように配設された複数の内部電極層3,4を備えている。なお、セラミック誘電体層2の内部に配設された内部電極層3,4は、交互にセラミック積層体5の逆側の端面5a,5bに引き出されている。
この積層セラミックコンデンサ1において、内部電極層3,4としては、Niを主たる成分とする電極とされている。
また、セラミック積層体5の互いに対向する端面5a,5bには、内部電極層3,4と電気的に接続するように外部電極6,7が配設されている。
なお、この実施形態では外部電極6,7を構成する導電材料としてCuを用いているが、外部電極6,7を構成する導電材料としては、他の材料、例えばAgを主成分とするものなどを用いることが可能である。
そして、外部電極6,7は、セラミック積層体5の端面5a,5bから稜線部を経てセラミック積層体の側面5cに回り込むように形成されている。
また、外部電極6,7の、セラミック積層体5の側面5cに回り込んだ部分の先端である回り込み先端部6a,7aとの間に隙間が生じないような態様で、セラミック積層体5の側面5cの回り込み先端部6a,7aと接する領域を覆うようにコーティング層8が形成されている。
そして、コーティング層8の、外部電極6,7の回り込み先端部6a,7aと接する方の辺8xから、セラミック積層体5の側面5cと接する方の辺(逆側の辺)8yまでの寸法(コーティング層8の幅)xは、2〜20μmの範囲となるように構成されている。
なお、この実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、2個の外部電極6,7を備える2端子型のものであるが、本発明は、3個以上の外部電極を備える多端子型の構成のものにも適用することができる。
また、コーティング層8としては、ガラス系材料または樹脂系材料などの絶縁性の材料が用いられている。
上述のように構成された積層セラミックコンデンサ1は、外部電極6,7が、セラミック積層体5の端面5a,5bから稜線部を経てセラミック積層体5の側面5cに回り込むように形成され、かつ、外部電極6,7の、セラミック積層体5の側面5cに回り込んだ部分の先端である回り込み先端部6a,7aと、セラミック積層体5の側面5cが露出した領域との境界部を覆うように、幅が2〜20μmの範囲にあるコーティング層8が帯状に形成されているので、上記境界部からセラミック積層体5の内部への水分やめっき液などの浸入を防止することができる。その結果、セラミック積層体5内への水分やめっき液などの浸入に起因する特性の劣化やはんだ爆ぜの発生などのない信頼性の高い積層型セラミック電子部品を提供することができる。
<積層セラミックコンデンサの作製>
次に、上述の積層セラミックコンデンサ(積層型セラミック電子部品)の製造方法について説明する。
セラミック誘電体層と内部電極層が積層されたセラミック積層体(積層セラミックコンデンサ素子)を準備する。
このセラミック積層体は、例えば、以下のようにして作製することができる。
まず、チタン酸バリウム系セラミック材料などの誘電体セラミック粉末、バインダーなどを含むスラリーをシート状に成形したセラミックグリーンシート上に、内部電極層形成用の導電性ペーストを印刷することにより内部電極パターンを形成する。それから内部電極パターンを形成した、パターン形成シートを内部電極パターンの引き出されている側が交互に逆側になるように複数枚積層し、未焼成のセラミック積層体を作製する。なお、セラミック積層体の上下両主面側には、内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを所定枚数積層して外層部を形成する。
それから、このセラミック積層体を、熱処理して脱バインダーした後、所定の条件で焼成を行う(例えば、酸素分圧10-10〜10-12MPaのH2−N2−H2Oガスからなる還元雰囲気中において、20℃/minの速度で昇温し、1200℃にて20分間の焼成を行う)ことにより、例えば、図1に示すような構造を有するセラミック積層体(積層セラミックコンデンサ素子)5を得る。
次に、この積層セラミックコンデンサ素子5の端部に、Cu金属粒子を導電成分とする導電性ペースト(Cuペースト)を塗布し、これを例えば750〜850℃の温度で焼き付けることにより、セラミック積層体5の両端面に、外部電極6,7(図1,2)を形成した。
なお、この積層セラミックコンデンサ1のサイズは、図2における、L=1.0mm、W=0.5mm、T=0.5mmである。また、外部電極6,7の厚みは4〜10μmである。
次に、外部電極6,7が形成されたセラミック積層体5に、コーティング層形成用の材料(コーティング材)をコーティングした。コーティングは、図5に示すようなコーティング装置(ドラムコーティング装置)を用いて行った。
このコーティング装置(ドラムコーティング装置)11は、2重構造の回転容器12を備えており、回転容器12を構成する内側回転容器12aは、主要部がコーティング材料は通過させるが、セラミック積層体5(図1,2)は通過させないメッシュ状の材料から構成されている。
また、回転容器12を構成する外側回転容器12bは、セラミック積層体5およびコーティング材料を通過させない材料から構成されている。
また、特に図示していないが、回転容器12の外側には、回転容器12(の内部)を加熱するための加熱手段を備えている。
また、回転容器12内には、外部から供給されるコーティング材を内側回転容器12a内のセラミック積層体5に噴霧するコーティング材供給装置13が配設されている。
このコーティング装置11のように、内側回転容器12aをメッシュ状材料から構成した場合、過剰なコーティング材は内側回転容器12aを通過して外側に排出されるので、セラミック積層体5が存在する内側回転容器12aに付着したコーティング材が、セラミック積層体5に再付着することを防止して、コーティング材をセラミック積層体5に均一な厚みで付与することができる。なお、セラミック積層体5の表面に対して、部分的にコーティング材が厚く付着した場合、その後のコーティング層除去工程で除去すべき領域に存在するコーティング層を確実に除去することができなくなるなどの不具合が発生する。
この実施形態では上述のように構成されたコーティング装置11の内側回転容器12aに、外部電極6,7が形成されたセラミック積層体5を投入し、回転容器12を回転させ、かつ、100〜300℃に加熱しながら、シリカゾルと溶剤からなるコーティング材を噴霧し、セラミック積層体5の表面全体にコーティング材塗布膜8aを形成した(図3)。
次に、コーティング材塗布膜8aが形成されたセラミック積層体5を取り出し、再び750〜850℃の温度で熱処理し、コーティング材塗布膜を硬化させることにより、セラミック積層体5の表面全体にコーティング層8を形成した。
それから、カゴ状の容器に、コーティング層8が形成されたセラミック積層体5(図3参照)を入れ、容器を回転させながら研磨媒体を吹き付けてサンドブラスト処理を行った。
このとき、研磨媒体として、平均粒径が0.1mm(100μm)のものを用いた。
なお、研磨媒体としては、例えば、アルミナボールやジルコニアボールなどの公知の種々の媒体を用いることができる。
そして、サンドブラスト処理の時間を変化させて、コーティング層の幅(すなわち、外部電極6,7の回り込み先端部6a,7aと接する方の辺8xから、セラミック積層体5の側面5cと接する方の辺(逆側の辺)8yまでの寸法)x(図1参照)が異なる試料を作製した。
なお、図4は、研磨媒体10により研磨を行っている状態を模式的に示す図である。研磨媒体10の大きさと、外部電極6,7を備えたセラミック積層体5の形状や寸法との関係で、外部電極6,7の回り込み先端部6a,7aとセラミック積層体5(の側面5c)との境界部に所定の幅x(図1)を有するコーティング層8が形成される(残る)ことになる。
作製した各試料についてそれぞれ10個を、幅(W)方向が垂直方向に沿うような姿勢で保持し、試料の周りを樹脂で固め、試料の長さ(L)と、厚さ(T)により規定されるLT面を樹脂から露出させた。その後、研磨機により、各試料のLT面を研磨し、各試料の幅(W)方向の1/2程度の深さまで研磨を行った。
そして、走査型電子顕微鏡(SEM)により外部電極の回り込み先端部と、セラミック積層体の側面との境界部の写真を撮影し、その写真から、セラミック層8の幅x(図1参照)を測定し、各試料について、10個の平均を求めた。
その結果を表1に示す。
Figure 2015115392
表1に示すように、試料番号2〜7の試料は、コーティング層の幅xが2〜20μmの範囲にある本発明の要件を備えた試料である。一方、試料番号1の試料はコーティング層の幅xが1μm、試料番号8の試料はコーティング層の幅xが25μm、試料番号9の試料はコーティング層の幅xが30μmと、本発明の要件を満たさない試料である。
その後、外部電極の上に電解めっきにより、Niめっき被膜、Snめっき被膜を順次形成して、外部電極の表面にNiめっき被膜、Snめっき被膜を備えた積層セラミックコンデンサを得た。
さらに比較のため、上述の従来例の方法(すなわち、特許文献1に記載されている方法に準じる方法)により、表1の試料番号10の積層セラミックコンデンサを作製した。
具体的には、以下に説明する方法で積層セラミックコンデンサを作製した。
(1)まず、上記実施形態の積層セラミックコンデンサを製造するために作製したセラミック積層体と同じセラミック積層体を用意した。
(2)それから、図6に示すように、セラミック積層体(積層セラミックコンデンサ素子)5の内部電極層2が露出している端面5a,5bに、ガラスフリットを含んだAgペースト14を塗布して乾燥させた。
(3)次に、ガラス粉末とバインダーとを含む水性塗料をスプレー法によってスプレーすることにより、図7に示すように、セラミック積層体5の表面の、Agペースト14が塗布された領域およびその他の領域にガラススラリー層15を形成した。
(4)その後、焼成することにより、図8に示すように、セラミック積層体5の表面上に、ガラススラリー層15が焼成されてなるガラス層15Aを備え、かつ、Agペースト14が焼成されてなる外部電極14Aの表層にガラス浸透層(図示せず)が形成された積層セラミックコンデンサ1を作製した。
(5)それから、電解めっきにより、外部電極104aの上に、特に図示しないNiめっき被膜、Snめっき被膜を順次形成し、表1の試料番号10の試料(積層セラミックコンデンサ)を作製した。
さらに比較のため、上記(2)で、端面5a,5bに、ガラスフリットを含んだAgペースト14を塗布して乾燥させたセラミック積層体5を焼成して外部電極を焼き付けた後、コーティング処理を行わずに、電解めっきを行って、外部電極104aの上に、特に図示しないNiめっき被膜、Snめっき被膜を順次形成することにより、表1の試料番号11の試料(積層セラミックコンデンサ)を作製した。
<評価>
上記のようにして作製した試料番号1〜11の試料(積層セラミックコンデンサ)について、以下の方法で耐湿負荷試験、はんだ爆ぜ試験、めっき剥がれ確認試験を行った。
(a)耐湿負荷試験
各試料(積層セラミックコンデンサ)80個について、温度85℃、湿度85%RHの条件で、定格電圧を印加し、耐湿負荷試験を行った。1000時間経過した時点で試料を取り出して、絶縁抵抗(IR)を測定し、IRが1MΩ以下になった試料を不良として、その個数を調べた。試験の結果を表1に併せて示す。
(b)はんだ爆ぜ試験
試料30個をはんだを印刷した基板にマウントし、280℃の温度でリフロー実装した。その後の基板を実体顕微鏡で観察し、はんだボールの飛散が観察された試料を不良として、その個数を調べた。試験の結果を表1に併せて示す。
(c)めっき剥がれ確認試験
試料100個を光学顕微鏡で観察し、外部電極のめっき被膜に剥がれが生じた試料をめっき不良として、その個数を調べた。試験の結果を表1に併せて示す。
表1に示すように、本発明の要件を満たす試料番号2〜7の試料の場合、耐湿負荷試験、はんだ爆ぜ試験、めっき剥がれ確認試験における不良数はいずれも0であり、良好な特性を有する積層セラミックコンデンサが得られることが確認された。
これに対し、コーティング層の幅が1μmと、本発明の要件(2μm以上)を満たしていない試料番号1の試料の場合、はんだ爆ぜ試験およびめっき剥がれ確認試験においては不良が発生しなかったが、耐湿試験において不良が発生することが確認された。これは、コーティング層の幅が小さくて、外部電極とセラミック積層体との境界の封止が不十分になったことによるものである。
また、コーティング層の幅が20μmを超える試料番号8および9の試料の場合、耐湿試験、はんだ爆ぜ試験においては不良が発生しなかったが、めっき不良(剥がれ)の発生が確認された。これは、コーティング層の幅が25μm,30μmと、本発明の範囲(2〜20μm)を超えると、外部電極側にコーティング層が大きく形成され、その後の工程であるめっき工程において、めっき剥がれが発生したものである。
したがって、本発明の積層型セラミック電子部品においては、コーティング層の幅xを、2〜20μmとすることが望ましいことがわかる。
また、セラミック積層体の表面にガラス系のコーティング層を形成するとともに、外部電極の表層にガラス浸透層(図示せず)を形成した試料番号10の試料、およびコーティング層を形成せず、外部電極上に、Niめっき被膜、Snめっき被膜を順次形成した試料番号11の試料の場合、めっき不良(めっき剥がれ)の発生は認められなかったが、耐湿試験およびはんだ爆ぜ試験において不良の発生が認められた。
上記の結果から、試料番号2〜7の試料(本発明の要件を満たす試料)の場合、めっき工程におけるめっき液の浸入によるはんだ爆ぜや水分の浸入による耐湿性の低下を防止できることが確認された。これは、外部電極の回り込み先端部とセラミック積層体との間に隙間が生じないように、幅xが2〜20μmのコーティング層が形成されていることによる。
上記実施形態では、上述のようなドラムコーティングを行うことでセラミック積層体に均一にコーティングを行うことが可能になり、その後、不要部分のコーティング層を確実に除去して、幅が2〜20μmのコーティング層を確実に形成することが可能になり、品位の安定した積層セラミックコンデンサが得られることが確認された。
また、上記実施形態では、研磨媒体として平均粒径が100μm(セラミック積層体の長さ方向の寸法の10%)のものを用いているが、上記実施形態の条件でいえば、研磨媒体として、平均粒径が2μm〜330μmの範囲のものを用いることが望ましい。
なお、上記実施形態では、コーティング材としてシリカゾルと溶剤からなるコーティング材を用いたが、シリカゾルの代わりにガラス粉末などを含有させたコーティング材を用いてもよい。
また、シリカゾルやガラス粉末などコーティング層としてガラス層が形成される材料以外にも、樹脂系のコーティング材を用い、コーティング材を噴霧してコーティング層を形成した後、加熱して樹脂を硬化させるように構成することも可能である。なお、好ましい樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂を上げることができる。
なお、上記実施形態では、積層セラミックコンデンサを例にとって説明したが、本発明は積層セラミックコンデンサ以外にも、積層LC複合部品、積層インダクタ、積層基板などにも適用することが可能である。
本発明はさらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、セラミック積層体を構成するセラミック誘電体層や内部電極層の層数などに関し、発明の範囲内において種々の応用、変形を加えることが可能である。
1 積層セラミックコンデンサ
5 セラミック積層体
2 セラミック誘電体層
3,4 内部電極層
5a,5b セラミック積層体の端面
6,7 外部電極
5c セラミック積層体の側面
6a,7a 外部電極の回り込み先端部
8 コーティング層
8a コーティング材塗布膜
8x コーティング層の一方の辺
8y コーティング層の他方の辺
10 研磨媒体
11 コーティング装置
12 回転容器
12a 内側回転容器
12b 外側回転容器
13 コーティング材供給装置
L セラミック積層体の長さ
T セラミック積層体の厚さ
W セラミック積層体の幅

Claims (6)

  1. セラミック誘電体層と内部電極層が積層された直方体形状を有するセラミック積層体と、前記セラミック積層体の互いに対向する端面のそれぞれに、前記端面に露出した前記内部電極層と導通するように配設された外部電極とを備えた積層型セラミック電子部品であって、
    前記外部電極は、前記セラミック積層体の前記端面から稜線部を経て前記セラミック積層体の側面に回り込むように形成され、
    前記外部電極の、前記セラミック積層体の前記側面に回り込んだ部分の先端である回り込み先端部と、前記セラミック積層体の前記側面との境界部を覆うようにコーティング層が帯状に形成されているとともに、
    前記コーティング層の、前記外部電極の前記回り込み先端部と接する方の辺から前記セラミック積層体の前記側面と接する方の辺までの寸法(以下、「コーティング層の幅」という)が2〜20μmの範囲にあること
    を特徴とする積層型セラミック電子部品。
  2. 前記コーティング層の一部が、前記外部電極の回り込み先端部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1記載の積層型セラミック電子部品
  3. 前記コーティング層を構成する材料がガラス材料、または樹脂系材料であることを特徴とする請求項1または2記載の積層型セラミック電子部品。
  4. セラミック誘電体層と内部電極層が積層されたセラミック積層体を作製するセラミック積層体作製工程と、
    前記セラミック積層体の端面に導電性ペーストを塗布して、焼き付けることにより、前記セラミック積層体の前記端面から稜線部を経て前記セラミック積層体の側面に回り込むように外部電極を形成する外部電極形成工程と、
    前記外部電極が形成されたセラミック積層体にコーティング材を塗布して熱処理することにより、コーティング層を形成するコーティング層形成工程と、
    前記コーティング層が形成された前記セラミック積層体から、前記外部電極の前記回り込み先端部と、前記セラミック積層体の前記側面との境界部とその近傍以外の領域に位置するコーティング層を除去するコーティング層除去工程と
    を備えることを特徴とする積層型セラミック電子部品の製造方法。
  5. 前記コーティング層除去工程が、平均粒径が2μm以上で前記セラミック積層体の互いに対向する前記端面の一方から他方に向かう方向の寸法の33%以内の範囲にある研磨媒体を用いて研磨することにより、前記コーティング層を除去する工程であることを特徴とする請求項4記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
  6. 前記コーティング層除去工程がサンドブラスト工法によって実施されることを特徴とする請求項4または5記載の積層型セラミック電子部品の製造方法。
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