以下に、本発明に係るバッテリー端子の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
[第一実施形態]
図1〜11を参照して第一実施形態を説明する。まず図1〜4を参照して、第一実施形態に係るバッテリー端子1の構成について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1中のL1矢視図であり、図3は、図1に示すバッテリー端子の分解斜視図であり、図4は、図1に示すバッテリー端子をバッテリーに取り付けた状態を示す斜視図である。
本実施形態に係るバッテリー端子1は、図4に示すように、バッテリー50のバッテリーポスト51に組み付けられるものである。バッテリー端子1は、バッテリーポスト51に取り付けられることにより、バッテリー50と、このバッテリー50が搭載される車両等の本体側の電線の末端に設けられた金具等とを電気的に接続するための部品である。
なお、以下の説明では、バッテリーポスト51の中心軸線Xに沿った方向を「軸方向」という。またここでは、以下の説明を分かり易くするために、便宜的に当該軸方向と直交する2方向のうち一方を長辺方向(幅方向)、他方を短辺方向という。これら軸方向、長辺方向、及び、短辺方向は互いに直交する。
ここで、このバッテリー端子1が適用されるバッテリー50は、例えば、車両等に蓄電装置として搭載されるものである。バッテリー50は、図4に示すように、バッテリー液や当該バッテリー50を構成する種々の部品を収容するバッテリー筐体52、当該バッテリー筐体52に設けられた上述のバッテリーポスト51等を含んで構成される。バッテリー筐体52は、いずれか1つの面が開放された略矩形箱状の筐体本体53と、上記開放された面を閉塞させる蓋部材54とを含んで構成され、全体として略直方体形状に形成される。ここでは、バッテリー筐体52は、長辺方向に沿った方向が長辺、短辺方向に沿った方向が短辺となるがこれに限らない。バッテリーポスト51は、鉛等により構成され、蓋部材54のポスト立設面55に立設される。ポスト立設面55は、バッテリー筐体52においてバッテリーポスト51が立設される面である。ここでは、当該ポスト立設面55は、例えば、バッテリー50が車両等に搭載された状態で、蓋部材54の鉛直方向上側の上面である。バッテリーポスト51は、略円柱形状であり、中心軸線Xがポスト立設面55と直交するような位置関係で当該ポスト立設面55上に突出するようにして立設される。より詳細には、本実施形態のバッテリーポスト51は、ポスト立設面55の角位置近傍に形成された凹部56内に立設される。当該凹部56は、ポスト立設面55の角位置近傍において略矩形状に陥没した部分である。つまり、バッテリーポスト51は、バッテリー筐体52の上面であるポスト立設面55に形成された凹部56の底面に立設されている。バッテリーポスト51は、典型的には、軸方向の先端側に進むにつれて径が小さくなるようテーパが付けられている。つまり、バッテリーポスト51は、先端の外径が基端の外径より小さいテーパ形状となる。なお、以下の説明では、バッテリー50が車両等に搭載された状態で、バッテリーポスト51の軸方向が鉛直方向に沿った方向となり、上述の長辺方向、短辺方向が水平方向に沿った方向となる場合を説明する。バッテリー端子1は、上記のように構成されるバッテリーポスト51に締結される。
本実施形態のバッテリー端子1は、バッテリーポスト51に締結する場合に、締結部材(後述の締結ボルト27)を鉛直方向上側から締め付けていく形式の端子である。そして、本実施形態のバッテリー端子1は、軸方向に沿った方向に発生する締結部材による締付力を、軸方向と交差する締め付け方向(幅方向)の押圧力に変換し、当該押圧力によってバッテリー端子1においてバッテリーポスト51が挿入される部分を押圧することで、バッテリーポスト51に締結されるものである。このとき、本実施形態のバッテリー端子1は、締結部材を鉛直方向上方から締め付ける構成とすることで、締結部材を締め付けるための工具の作業スペースをバッテリー50の上方として、バッテリー50の側方の作業スペースの低減を図ったものである。
具体的には、本実施形態のバッテリー端子1は、図1,2に示すように、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部23とを備える。なお、以下の説明では、バッテリー端子1がバッテリーポスト51に取り付けられた状態で軸方向、長辺方向、短辺方向となる方向を、それぞれ単に「軸方向」、「長辺方向」、「短辺方向」という場合がある。
図1〜3に示すように、本実施形態の本体部21は、上側分割体24(第一分割体)と下側分割体25(第二分割体)との二層分割構造となっている。ここでは、本体部21は、バッテリー端子1がバッテリーポスト51に取り付けられた状態で、上側分割体24が鉛直方向上側、下側分割体25が鉛直方向下側となって軸方向(鉛直方向)に対向し積層された状態となる。上側分割体24と下側分割体25との積層方向は、バッテリー端子1がバッテリーポスト51に取り付けられた状態で、バッテリーポスト51の軸方向に沿った方向であり、ここでは後述のスタッドボルト22の軸部22aが突出する側を積層方向上側、反対側を積層方向下側とする。また、積層方向上側とは、バッテリーポスト51の先端側に相当し、積層方向下側とは、バッテリーポスト51の基端側に相当する。つまり、本体部21は、上側分割体24が積層方向上側、下側分割体25が積層方向下側となる。
上側分割体24、下側分割体25は、例えば、導電性を有する金属板のプレス折り曲げ加工により、それぞれ、環状部24a、25a、ボルト保持部24b、25b等が一体で形成される。本実施形態の本体部21は、上側分割体24と下側分割体25との二層分割構造とすることで、例えば、より小型なプレス機によって簡易に製造することができる。
一対の環状部24a、25aは、略円環形状に形成され、それぞれバッテリーポスト51が挿入される略円形状のポスト挿入孔24c、25c、及び、ポスト挿入孔24c、25cと連続するスリット(間隙)24d、25dが形成される。
ポスト挿入孔24cとポスト挿入孔25cとは、上側分割体24と下側分割体25とが上下に積層されてバッテリーポスト51に取り付けられた状態で、積層方向に対向する位置関係となるように、それぞれ環状部24a、25aに形成される。ポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25cは、板金が同一の方向、ここでは上側に折り返されることでそれぞれ内周壁面が形成される。ポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25cは、それぞれの内周壁面に上述したバッテリーポスト51のテーパに対応したテーパを有している。ここでは、ポスト挿入孔24cとポスト挿入孔25cとのうち後述するスタッドボルト22の軸部22aが突出する側、すなわち、ポスト挿入孔24c側の内径が最小となり、反対側のポスト挿入孔25c側の内径が最大となる。ポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25cは、バッテリーポスト51が挿入された状態で、各内周面がバッテリーポスト51と接触する。
スリット24dとスリット25dとは、上側分割体24と下側分割体25とが上下に積層されてバッテリーポスト51に取り付けられた状態で、積層方向に対向する位置関係となるように、それぞれ環状部24a、25aに形成される。ここでは、スリット24d、25dは、ポスト挿入孔24c、25cから環状部24a、25aの一部を分断するように形成される。また、環状部24a、25aは、スリット24d、25dが形成されている側の端部に、後述の締付部23によって保持されて締め付けられる板状突出部24e、25eを有している。板状突出部24eは、当該環状部24aにおいてポスト挿入孔24cが形成されている部分と段付部等を介さずに連続するようにして一体で形成される。同様に、板状突出部25eも、当該環状部25aにおいてポスト挿入孔25cが形成されている部分と段付部等を介さずに連続するようにして一体で形成される。スリット24dは、ポスト挿入孔24cから板状突出部24eを貫通している。スリット25dは、ポスト挿入孔25cから、板状突出部25eを貫通している。
図3に示すように、板状突出部24eは、長辺方向の両端がそれぞれ下側に折り曲げられており、その下側に折り曲げられた縁端部24hには、後述する貫通板26を貫通させるための孔部24iがそれぞれ設けられている。一方、板状突出部25eは、長辺方向の両端がそれぞれ上側に折り曲げられており、その上側に折り曲げられた縁端部25hにも、後述する貫通板26を貫通させるための孔部25iが設けられている。上側分割体24の縁端部24hと、下側分割体25の縁端部25hとは、上側分割体24及び下側分割体25が組み合わされた状態で相互に重畳し、それぞれに設けられた孔部24iと、孔部25iとが長辺方向で貫通するよう形成されている。
すなわち、スリット24dにより分断される板状突出部24eと、それぞれに接続されている縁端部24hとは、環状部24cの一端部及び他端部とも表現することができる。同様に、スリット25dにより分断される板状突出部25eと、それぞれに接続されている縁端部25hとは、環状部25cの一端部及び他端部とも表現することができる。
図3に示すように、一対のボルト保持部24b、25bは、略矩形状に形成される。ボルト保持部24bは、環状部24aのスリット24dが形成される側、すなわち、板状突出部24eが形成された側とは反対側に段付部24f等を介して連続するようにして一体で形成される。ボルト保持部25bは、環状部25aのスリット25dが形成される側、すなわち、板状突出部25eが形成された側とは反対側に段付部等を介さずに連続するようにして一体で形成される。ボルト保持部24bは、スタッドボルト22が挿入される略円形状のボルト挿入孔24gが形成される。ボルト保持部25bは、上側分割体24と下側分割体25とを組み付ける際にスタッドボルト22がスライドするスライド孔25gが形成される。
ここで、ボルト保持部24b、25bが保持するスタッドボルト22は、ボルト保持部24bとボルト保持部25bとの間に保持された状態で、スライド孔25g、及び、ボルト挿入孔24gから軸部22aが突出するようにして露出する。スタッドボルト22は、ボルト挿入孔24gから露出した当該軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される。ボルト保持部24b、25bは、スタッドボルト22の軸部22aが立設される矩形板状の台座部分を保持できるように、長辺方向の両端に所定の折り返し部24j,25jがそれぞれ形成されている(図8,9参照)。
締付部23は、ポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25c内にバッテリーポスト51が挿入された状態で、一対の環状部24a、25aを当該バッテリーポスト51に締結するものである。本実施形態の締付部23は、貫通板26と、締結ボルト27(締結部材)と、スペーサ28とを備える。
貫通板26は、長辺方向に沿って、スリット24d,25dと、板状突出部24e,25eと、を貫通して配置される板状部材である。言い換えると、貫通板26は、環状部24a,25aの一端部からスリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの他端部までを貫通する。貫通板26は、上側分割体24の縁端部24hに設けられた孔部24iと、下側分割体25の縁端部25hに設けられた孔部25iとを貫通させることで、スリット24d,25dを横断するように、長辺方向に沿って本体部21に取り付けられる。
貫通板26は、その一端部に抜け止め部26aを有する。抜け止め部26aは、貫通板26が環状部24a,25aの両端を貫通した状態、すなわち、貫通板26が孔部24i,25iを貫通して本体部21に取り付けられた状態において、この抜け止め部26aが設けられる一端部と反対側の他端部側へ貫通板26が本体部21からの抜け出すのを防止する。具体的には、抜け止め部26aは、短辺方向において、孔部24i,25iの内径より長い寸法で形成されており、貫通板26が孔部24i,25iの通って他端側に所定量入ると縁端部24h,25hに突き当たるように構成されている。
また、貫通板26は、抜け止め部26aが設けられる一端部と反対側の他端部に、軸方向に貫通して螺合孔26b(締結部材支持部、被締結部材)が設けられている。螺合孔26bは、締結ボルト27を軸方向の所定位置で支持する機能も有する。
締結ボルト27は、螺合溝が形成された軸部27aと、軸部27aの一端部に一体形成される頭部27bとを有する。軸部27aは、貫通板26の螺合孔26bと螺合する部分である。頭部27bは、締結ボルト27を軸部27a周りに回転させるために工具等によって把持される部分である。締結ボルト27は、軸方向に沿った所定の位置で、貫通板26の螺合孔26bに軸方向周りに回転可能に支持されると共に、軸部27aがこの螺合孔26bに軸方向に沿って螺合する。さらに、締結ボルト27は、頭部27bの座面に、軸方向周りの全周に亘って第一テーパ面27cが形成されている。第一テーパ面27cは、締結ボルト27が螺合孔26bに螺合している状態において、後述するスペーサ28の第二テーパ面28dと接触状態を維持するように形成されている。
本実施形態の締結ボルト27は、図4等に示すように、バッテリーポスト51がポスト挿入孔24c、25cに挿入され、かつ、貫通板26の螺合孔26bに支持された状態で、少なくとも一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体52の上面(ポスト立設面55)から突出した位置に支持される。
スペーサ28は、螺合孔26bに螺合された状態の締結ボルト27と、本体部21の縁端部25hとの間に配置され、両者の相対位置を調整する。スペーサ28は、略直方体形状の部材である。スペーサ28には、長辺方向で対向して配置される一端面28bと他端面28cとの間を貫通する貫通孔28aが設けられている。貫通孔28aは、孔部24i,25iと略同等の大きさであり、この貫通孔28aに貫通板26が貫通している。これにより、スペーサ28は貫通板26に対して長辺方向に相対移動可能となっている。スペーサ28の長辺方向の一端面28bは、貫通板26の螺合孔26bが設けられた端部(他端部)側から、環状部24aの縁端部24hと当接している。スペーサ28の長辺方向の他端面28cには、軸方向に沿って締結ボルト27の軸部27aの少なくとも一部を嵌合する嵌合溝28eが設けられると共に、この嵌合溝28eの軸方向の上端に第二テーパ面28d(テーパ面)が形成されている。第二テーパ面28dは、締結ボルト27が螺合孔26bに螺合している状態において、締結ボルト27の第一テーパ面27cと接触状態を維持するように形成されている。
ここで、締結ボルト27に設けられる第一テーパ面27cと、スペーサ28に設けられる第二テーパ面28dとは、締結ボルト27が軸方向周りの回転に伴って螺合孔26b側に接近した際に、締結ボルト27と貫通板26との間に発生する締付力によって締結ボルト27がスペーサ28を押圧する軸方向の押圧力F1(図6参照)を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にスペーサ28が環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力F2(図6参照)に変換する方向に傾斜を有するように形成されている。本実施形態では、締結ボルト27に設けられた第一テーパ面27cは、軸方向下側の水平方向の断面積が上側より小さい円錐台の側面であり、締結ボルト27の軸心を中心として、軸方向上側に進むほど軸心周りの長さが広がるような傾斜を有している。一方、スペーサ28に設けられた第二テーパ面28dは、軸方向下側の水平方向の断面積が上側より小さい逆円錐台形状の側面であり、締結ボルト27の軸心を中心として、軸方向上側に進むほど軸心周りの長さが広がるような傾斜を有している。
つまり、スペーサ28は、締結ボルト27と、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの間にて、両者と当接して配置され、軸方向周りの締結ボルト27の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、第一テーパ面27c及び第二テーパ面28dを介して、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力に変換する押圧力変換部材として機能する。
次に、図5,6を参照して、本実施形態に係るバッテリー端子1の動作について説明する。図5は、本発明の第一実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結する前の状態を示す模式図であり、図6は、本発明の第一実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結した後の状態を示す模式図である。
図5に示すように、バッテリー端子1は、貫通板26が、板状突出部24eの縁端部24hに設けられた孔部24iと、板状突出部25eの縁端部25hに設けられた孔部25iを貫通するよう挿入されることで、本体部21の板状突出部24e及び板状突出部25eが一体化される。この状態で、貫通板26の抜け止め部26aと反対側の端部に、スペーサ28の貫通孔28aが嵌合されて、スペーサ28が本体部21の長辺方向外側にて、貫通板26に沿って移動可能に取り付けられる。スペーサ28の本体21側の端面28bを、板状突出部24eの縁端部24hと接触するまで、貫通板26の奥に入れ込んで、貫通板26上の螺合孔26bの全体を露出させる。そして、鉛直方向上方から締結ボルト27が螺合孔26bに螺合されることで、バッテリー端子1は一体的に組み立てられる。図5に示す状態は、締結ボルト27の第一テーパ面27cの下端領域が、スペーサ28の第二テーパ面28dの上端領域と接している状態を示しており、締結ボルト27をさらに下方まで進出可能な状態である。このとき、環状部24a,25aのスリット24d,25dは最大幅に広がっており、ポスト挿入孔24c,25cの内径は、バッテリーポスト51の外径より大きい。この状態が、バッテリー端子1をバッテリーポスト51に締結する前の状態である。
バッテリー端子1は、図5に示す状態でポスト挿入孔24c,25cにバッテリーポスト51が挿入されることで、バッテリーポスト51に組み付けられる。そして、バッテリー端子1は、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態で、締結ボルト27が鉛直方向(軸方向)上側から締め付けられることで、スリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの両側が接近方向に締め付けられ、これにより、バッテリーポスト51に締結される。
より詳細には、図6に示すように、締結ボルト27の頭部27bが工具等によって軸方向(軸部27a)周りに回転されることで、締結ボルト27が軸方向に沿って螺合孔26b(貫通板26)側に接近すると、締結ボルト27と貫通板26との間に軸方向の締付力F1(「押圧力F1」とも表記する)が発生する。この軸方向の締付力F1によって、締結ボルト27は、第一テーパ面27cを介して、スペーサ28の第二テーパ面28dを軸方向に押圧する。この軸方向の押圧力F1(締結力F1)は、第一テーパ面27c及び第二テーパ面28cによって、長辺方向の押圧力F2に変換されて、スペーサ28に伝達される。スペーサ28は、伝達された長辺方向の押圧力F2により、環状部24a,25aの縁端部24h,25hを、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に押圧する。スペーサ28は、スリット24d、25dの間隔が狭まるのに応じて、貫通板26上を反対側端部の抜け止め部26aの方向に移動できるので、締結ボルト27から押圧力F1を受ける間、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの接触を維持して、押圧力F2を付加し続けることができる。このとき、環状部24a,25aが押圧力F2を受ける側と反対側では、貫通板26の抜け止め部26aによって、環状部24a,25aが押圧力F2に対して長辺方向に逃げるのを規制されている。この結果、バッテリー端子1は、スペーサ28による押圧力F2によって、環状部24aの板状突出部24eと共に環状部25aの板状突出部25eが貫通板26の抜け止め部26a側に押圧されることで、スリット24d、25dの間隔が狭まる。
したがって、バッテリー端子1は、締結ボルト27の回転に伴い、第一テーパ面27c及び第二テーパ面28dにより発生する長辺方向の押圧力F2によって、スリット24d、25dの間隔が狭められることで、ポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態でポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25cの径が縮小され、バッテリーポスト51に締結される。そして、バッテリー端子1は、スタッドボルト22の軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される(図4等参照)。
ここでは、締結ボルト27は、図4で説明したように、締め付け作業が行われる状態で、少なくとも頭部27bを含む一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体52の上面(ポスト立設面55)から突出した位置に支持され、締め付けが行われてもこの位置が維持される。この結果、このバッテリー端子1は、少なくとも締結ボルト27の頭部27bを含む一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体52の上面から突出した状態で、締結ボルト27の締め付け作業を完結することができる。
一方、バッテリー端子1は、締結ボルト27が逆回転に回転されることで、第一テーパ面27c及び第二テーパ面28dにより発生する長辺方向の押圧力F2が弱まり、スリット24d、25dの間隔が広がり、ポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25cの径が拡大され、バッテリーポスト51から取り外し可能な状態となる。
本実施形態のバッテリー端子1は、バッテリーポスト51が挿入されるポスト挿入孔24c,25c、及び、このポスト挿入孔24c,25cと連続するスリット24d,25dが形成された環状部24a,25aと、バッテリーポスト51の軸方向と交差する方向であって、スリット24d,25dを横断する方向である長辺方向に沿って、環状部24a,25aの一端部からスリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの他端部までを貫通して配置される貫通板26と、貫通板26の一端部に設けられ、貫通板26の環状部24a,25aからの抜け出しを防止する抜け止め部26aと、貫通板26の他端部に設けられる締結部材支持部としての螺合孔26bと、螺合孔26bに軸方向に回転可能に支持される締結部材としての締結ボルト27と、を備える。螺合孔26bは、締結ボルト27と螺合する被締結部材としても機能する。バッテリー端子1は、さらに、貫通板26の螺合孔26bが設けられる端部側から環状部24a,25aの縁端部24h,25hと当接して配置され、軸方向周りの締結ボルト27の回転に伴って締結ボルト27と螺合孔26bとの間に発生する軸方向の締付力F1を、長辺方向(幅方向)のうち環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力F2に変換する押圧力変換部材としてのスペーサ28と、を備える。
この構成により、押圧力変換部材としてのスペーサ28の作用によって、軸方向周りの締結ボルト27の回転に伴って発生する軸方向の締付力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力F2に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。つまり、締結ボルト27をバッテリーポスト51の軸方向周り、すなわち鉛直方向周りに回転操作することで、バッテリー端子1をバッテリーポスト50に締結することができる。これにより、従来のように、締結ボルト27を回転させるための工具をバッテリーポスト51の側方、すなわちバッテリー50の側方からセットして回転操作するための作業スペースを確保する必要がなくなり、例えば、比較的作業スペースを取りやすいバッテリー50の鉛直方向上方から操作することが可能となる。このように、本実施形態のバッテリー端子1によれば、バッテリー端子1をバッテリーポスト51に締結する際に必要なバッテリー50の周囲の作業スペースを低減できる。
また、本実施形態のバッテリー端子1によれば、スペーサ28と当接する締結ボルト27の頭部27bの座面には、第一テーパ面27cが形成される。スペーサ28は、貫通板26に対して長辺方向に相対移動可能に配置され、長辺方向の一端面28bにて締結ボルト27の頭部27bと当接し、長辺方向の他端面28cにて環状部24a,25aの縁端部24h,25hと当接する。締結ボルト27と当接するスペーサ28の他端面28cには、締結ボルト27の第一テーパ面27cと当接する第二テーパ面28dが形成されている。締結ボルト27に設けられる第一テーパ面27c、及び、スペーサ28に設けられる第二テーパ面28dは、締結ボルト27が軸方向周りの回転に伴って螺合孔26b側に接近した際に、締結ボルト27と貫通板26との間に発生する締付力によって締結ボルト27がスペーサ28を押圧する軸方向の押圧力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にスペーサ28が環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力F2に変換する方向に傾斜を有する。
この構成により、締結ボルト27に設けられる第一テーパ面27c、及び、スペーサ28に設けられる第二テーパ面28dの作用によって、締結ボルト27の螺合孔26bへの締付操作、すなわち軸方向周りの回転運動から、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力F2に効率よく変換することができる。これにより、締付ボルト27の回転軸を、環状部24a,25aの締結方向と同一にする必要がなく、締結ボルト27の締付操作を行いやすい鉛直方向とすることができるので、バッテリー端子1をバッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
さらに、以上で説明したバッテリー端子1によれば、締結ボルト27は、バッテリーポスト51がポスト挿入孔24c、25cに挿入され、かつ、貫通板26の螺合孔26bに支持された状態で、少なくとも一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体52の上面から突出した位置に支持される。したがって、バッテリー端子1は、少なくとも締結ボルト27の一部が軸方向に沿ってバッテリー筐体52の上面から突出した状態で、締結ボルト27の締め付け作業を完結することができるので、例えば、工具等が他の部位に干渉することを抑制し、当該工具等を使った締結ボルト27の締め込みを行いやすくすることができる。
次に、図7〜11を参照して、バッテリー端子1の組み立て工程について説明する。
まず、本体部21の組み立てが行われる。図7は、バッテリー端子の組み立て工程において、スタッドボルトを上側分割体に組み付ける工程を示す斜視図である。図7に示すように、本体部21は、組み立ての際には、まず、矩形板状の台座部分に軸部22aが立設されたスタッドボルト22が上側分割体24に組み付けられる。このとき、スタッドボルト22は、ボルト挿入孔24gに軸部22aが挿入され、当該軸部22aが当該ボルト挿入孔24gから露出した状態で、かつ、矩形板状の台座部分がボルト保持部24bの折り返し部24j内に保持された状態となる。
図8は、バッテリー端子の組み立て工程において、下側分割体を上側分割体に組み付ける工程を示す斜視図であり、図9は、図8中のL2矢視図である。次に、図8に示すように、上側分割体24のボルト保持部24bにスタッドボルト22が保持された状態で、下側分割体25が、ボルト保持部24bの段付部24f側から、上側分割体24に組み付けられる。より詳細には、図9に示すように、スライド孔25gが形成されたボルト保持部25bの上板部分が、ボルト保持部24bの上板部分と、スタッドボルト22の台座部分との間に挿入されるようにして、上側分割体24に組み付けられる。このとき、ボルト保持部25bに形成されたスライド孔25gが、スタッドボルト22の軸部22aの周囲をスライドしていく。
また、このとき、図9に示すように、スタッドボルト22の台座部分を保持するために下側分割体25の長辺方向の両端に設けられている折り返し部25jが、同じくスタッドボルト22の台座部分を保持するために上側分割体24の長辺方向の両端に設けられている折り返し部24jの内側に入れ子状に挿入されている。つまり、上側分割体24の折り返し部24jは、下側分割体25を所定位置に誘導する誘導部材としても機能している。この誘導部材の機能によって、上側分割体24への下側分割体25の組み付けを容易にすることができる。
この結果、本体部21は、上側分割体24の環状部24a及びボルト保持部24bと、下側分割体25の環状部25a及びボルト保持部25bとが上下に対向するような位置関係で積層された状態となる(図10参照)。この状態では、図9に示すように、スタッドボルト22の台座部分が、長辺方向の両端にて、下側分割体25のボルト保持部25bの折り返し部25jによって支持されている。さらに、ボルト保持部25bが、長辺方向の両端にて、上側分割体24のボルト保持部24bの折り返し部24jによって支持されている。したがって、本体部21は、このように上側分割体24と下側分割体25とが積層された状態で、ボルト保持部24bとボルト保持部25bとによってスタッドボルト22が保持される。また、図9に示すように、下側分割体25の縁端部25hは、上側分割体24の縁端部24hの内側に嵌合される。
図10は、バッテリー端子の組み立て工程において、締付部の組み付け工程を示す斜視図であり、図11は、バッテリー端子の組み立て工程が完了し、一体的に組み上げられた状態のバッテリー端子を示す斜視図である。図10に示すように、本体部21は、ボルト保持部24bとボルト保持部25bとによってスタッドボルト22が保持された状態で、締付部23によって保持され、一体化される。まず、締付部23の貫通板26が、螺合孔26bの設けられた方の端部から、上側分割体24の一方の縁端部24hの孔部24iに挿入される。貫通板26は、螺合孔26bと反対側の端部に設けられた抜け止め部26aが、この縁端部24hに突き当たるまで挿入される。この結果、貫通板26は、下側分割体25の縁端部25hの孔部25i及びスリット24d,25dを介して、他方の縁端部24hの孔部24iまで貫通した状態となる。この状態で、貫通板26の螺合孔26b側の端部に、スペーサ28が嵌合され、次いで、鉛直方向上方から締結ボルト27が螺合孔26bに螺合される。この結果、バッテリー端子の組み立て工程が完了し、図11に示すように、バッテリー端子1は一体的に組み上げられる。
次に、本実施形態に係るバッテリー端子1の効果を説明する。
本実施形態のバッテリー端子1は、バッテリーポスト51が挿入されるポスト挿入孔24c,25cを有する本体部21と、ポスト挿入孔24c,25cに挿入されたバッテリーポスト51との間の締付力を調整することで、バッテリーポスト51に締結された締結状態にする締付部23と、を備える。本体部21は、バッテリーポスト51の軸方向に沿って対向する上側分割体24及び下側分割体25から成る二層分割構造であり、上側分割体24及び下側分割体25を組み付けた状態で、締付部23を本体部21に取り付けることにより一体的に構成される。
この構成により、本実施形態のバッテリー端子1では、本体部21を上側分割体24と下側分割体25との二層分割構造とすることで、従来の本体部の上下積層構造を連結する構成と比較して、機械によるプレス加工や折り曲げ加工の工程の一部を省略することが可能となる。これにより、従来より小型なプレス機によって簡易にバッテリー端子の各部品を製造することができ、従来に対して比較的小規模な設備でバッテリー端子を製造できる。
また、本実施形態のバッテリー端子1において、上側分割体24は、上側分割体24及び下側分割体25を組み付ける際に、下側分割体25を所定位置に誘導する誘導部材としての折り返し部24jを有する。この構成により、上側分割体24への下側分割体25の組み付けを容易にすることができる。
なお、上記実施形態では、締結ボルト27に第一テーパ面27cを設け、スペーサ28に第二テーパ面28dを設け、第一テーパ面27c及び第二テーパ面28dを介して締結ボルト27からスペーサ28に押圧力を伝達する構成を例示したが、締結ボルト27とスペーサ28との接触状態を維持できれば、第一テーパ面27cまたは第二テーパ面28dのいずれか一方のみを設ける構成でもよい。
また、上記実施形態では、締結ボルト27と螺合する被締結部材を、貫通板26上の螺合孔26bとし、締結ボルト27と貫通板26との間で軸方向の締付力F1を発生させる構成を例示したが、被締結部材として別体のナットを有する構成としてもよい。つまり、螺合孔26bをネジ溝の無い単なる孔部に置き換え、軸方向に対して貫通板26を挟んで締結ボルト27と反対側(鉛直方向下側)に、締結ボルト27と螺合するナットを配置し、締結ボルト27とナットとの間に発生する軸方向の締付力F1を長辺方向の押圧力F2に変換する構成としてもよい。
[第二実施形態]
図12〜15を参照して第二実施形態を説明する。まず図12,13を参照して、第二実施形態に係るバッテリー端子1aの構成について説明する。図12は、本発明の第二実施形態に係るバッテリー端子の概略構成を示す斜視図であり、図13は、図12に示すバッテリー端子の分解斜視図である。
図12,13に示すように、第二実施形態のバッテリー端子1aは、締付部33の構成が第一実施形態のバッテリー端子1と異なるものである。
本実施形態のバッテリー端子1aは、本体部21と、スタッドボルト22と、締付部33とを備える。締付部33は、貫通板36と、締結ボルト37(締結部材)と、テーパナット38とを備える。なお、本体部21及びスタッドボルト22については、図12,13に示すように、ポスト挿入孔24c,25cが、板金を下側に折り返されることでそれぞれ内周壁面を形成している点のみが、第一実施形態のバッテリー端子1と相違する。
貫通板36は、第一実施形態の貫通板26と同様に、その一端部に抜け止め部26aを有する一方、抜け止め部26aが設けられる一端部と反対側の他端部には、第一実施形態の螺合孔26bの代わりに、図13に示すように、その内周にネジ溝を持たず、長辺方向に沿って長穴形状の孔部36bを有する。さらに、貫通板36には、孔部36bが設けられる端部側にて、短辺方向の両縁端に、後述するテーパナット38の直立部38bと係合する係合溝36cが形成されている。係合溝36cは、貫通板36の短辺方向の端面から貫通板36の中央方向へ端面と平行に掘り下げられて形成されている。
締結ボルト37は、第一実施形態の締結ボルト27と同様に軸部27aを有する一方、第一テーパ面27cを有していない。また、頭部37bは、第一実施形態と比べて軸方向寸法が長い。
テーパナット38は、軸方向に対して貫通板36を挟んで締結ボルト37と対向して配置され、締結ボルト37と螺合されている。テーパナット38は、締結ボルト37の軸部27aと螺合する螺合孔を有する方形状の基部38aと、この基部38aの4辺のうち対向する2辺から鉛直方向上側へ延在する一対の直立部38bとを有する。一対の直立部38bは、例えば基部38aを含んで板金で平面形状を形成し、基部38aから同一方向に略直角に折り曲げることで形成することができる。基部38aは、図12,13に示すように、直立部38bを有する2辺が長辺方向に延在している。テーパナット38の直立部38bは、長辺方向の一端面38cにて環状部24aの縁端部24hと当接している。テーパナット38は、一対の直立部38bの一端面38cがそれぞれ環状部24aの縁端部24hと当接していることにより、軸方向の回転が規制されている。つまり、本実施形態では、テーパナット38が、締結ボルト37(締結部材)と螺合する被締結部材として機能するものである。
また、テーパナット38の直立部38bには、端面38cと長辺方向の反対側にテーパ面38dが形成されている。テーパ面38dは、テーパナット38が貫通板36を挟んで締結ボルト37と螺合している状態において、貫通板36の係合溝36cと接触状態を維持するように形成されている。より詳細には、テーパ面38dは、貫通板36の係合溝36cにおいて、長辺方向で対向する一対の端面のうち、貫通板36の端部に近い方の端面36d(図13参照)と接触する。なお、この端面36dに、テーパ面38dと同一方向に傾斜をつけ、テーパ面38dとの接触面積を増やすよう構成してもよい。
ここで、テーパナット38に設けられるテーパ面38dは、軸方向周りの締結ボルト37の回転に伴ってテーパナット38が軸方向に沿って締結ボルト37側に接近した際に、締結ボルト37とテーパナット38との間に発生する軸方向の締付力を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にテーパナット38が環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力に変換する方向に傾斜を有するよう形成されている。本実施形態では、テーパナット38に設けられるテーパ面38dは、軸方向に沿って締結ボルト37の頭部37b側から離間するにしたがって、直立部38bの長辺方向の幅が徐々に広がるような傾斜を有している。
つまり、テーパナット38は、締結ボルト37と、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの間にて、両者と当接して配置され、軸方向周りの締結ボルト37の回転に伴って発生する軸方向の締付力を、テーパ面38dを介して、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に環状部24a,25aの縁端部24h,25hを押圧する長辺方向の押圧力に変換する押圧力変換部材として機能する。
次に、図14,15を参照して、本実施形態に係るバッテリー端子1aの動作について説明する。図14は、本発明の第二実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結する前の状態を示す模式図であり、図15は、本発明の第二実施形態に係るバッテリー端子をバッテリーポストに締結した後の状態を示す模式図である。
図14に示すように、バッテリー端子1aは、貫通板36が、板状突出部24eの縁端部24hに設けられた孔部24iと、板状突出部25eの縁端部25hに設けられた孔部25iを貫通するよう挿入されることで、本体部21の板状突出部24e及び板状突出部25eが一体化される。この状態で、貫通板36の抜け止め部26aと反対側の端部の一対の係合溝36cに、鉛直方向下方から一対の直立部38bがそれぞれ嵌合されて、テーパナット38が貫通板36の下方に配置され、貫通板36の孔部36bに鉛直方向上方から締結ボルト37が挿入され、テーパナット38の基部38aの螺合孔に螺合されることで、バッテリー端子1aは一体的に組み立てられる。図14に示す状態は、テーパナット38のテーパ面38dの上端領域が、貫通板36の係合溝36cの端面36dと接している状態を示しており、テーパナット38をさらに上方まで進出可能な状態である。このとき、環状部24a,25aのスリット24d,25dは最大幅に広がっており、ポスト挿入孔24c,25cの内径は、バッテリーポスト51の外径より大きい。また、締結ボルト37の軸部27aは、貫通板36の長穴形状の孔部36bのうち、貫通板36の端部に近い方(図14では右側)に位置している。この状態が、バッテリー端子1aがバッテリーポスト51に締結する前の状態である。
バッテリー端子1aは、図14に示す状態でポスト挿入孔24c,25cにバッテリーポスト51が挿入されることで、バッテリーポスト51に組み付けられる。そして、バッテリー端子1aは、ポスト挿入孔24c,25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態で、締結ボルト37が鉛直方向(軸方向)上側から締め付けられることで、スリット24d,25dを挟んで環状部24a,25aの両側が接近方向に締め付けられ、これにより、バッテリーポスト51に締結される。
より詳細には、図15に示すように、締結ボルト37の頭部37bが工具等によって軸方向(軸部27a)周りに回転されることで、締結ボルト37の軸方向の位置はそのままで、テーパナット38が軸方向に沿って締結ボルト37の頭部37b側に接近すると、締結ボルト37とテーパナット38との間に軸方向の締付力F1が発生する。この軸方向の締付力F1によって、テーパナット38は、テーパ面38dを介して、貫通板36の係合溝36cの端面36dを軸方向に押圧する。これにより、テーパナット38は、この端面36dと接触しているテーパ面38dによって、この軸方向の押圧力F1(締結力F1)が、長辺方向に変換された押圧力F2を、貫通板36の端面36dから受ける。テーパナット38は、貫通板36の端面36dから受けた長辺方向の押圧力F2により、環状部24a,25aの縁端部24h,25hを、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向に押圧する。テーパナット38と、このテーパナット38に螺合している締結ボルト37は、スリット24d,25dの間隔が狭まるのに応じて、貫通板36上の長穴形状の孔部36bに沿って抜け止め部26aの方向に一体的に移動できるので、締結ボルト37との締結力F1を発生している間、環状部24a,25aの縁端部24h,25hとの接触を維持して、押圧力F2を付加し続けることができる。このとき、環状部24a,25aが押圧力F2を受ける側と反対側では、貫通板36の抜け止め部26aによって、環状部24a,25aが押圧力F2に対して長辺方向に逃げるのを規制されている。この結果、バッテリー端子1aは、テーパナット38による押圧力F2によって、環状部24aの板状突出部24eと共に環状部25aの板状突出部25eが貫通板36の抜け止め部26a側に押圧されることで、スリット24d、25dの間隔が狭まる。
したがって、バッテリー端子1aは、締結ボルト37の回転に伴い、テーパナット38のテーパ面38dにより発生する長辺方向の押圧力F2によって、スリット24d、25dの間隔が狭められることで、ポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25cの内周面とバッテリーポスト51の外周面とが接触した状態でポスト挿入孔24c、ポスト挿入孔25cの径が縮小され、バッテリーポスト51に締結される。そして、バッテリー端子1aは、スタッドボルト22の軸部22aに電線の末端に設けられた金具等が電気的に接続される。
以上のように、本実施形態のバッテリー端子1aによれば、貫通板36の抜け止め部26aが設けられる一端部とは反対側の他端部には、長辺方向に沿って長穴形状の孔部36bが、締結部材支持部として設けられる。締結部材としての締結ボルト37は、貫通板36の孔部36bに軸方向周りに回転可能に支持される。被締結部材としてのテーパナット38は、軸方向に対して貫通板36を挟んで締結ボルト37と対向し該締結ボルト37と螺合する。また、テーパナット38は押圧力変換部材としても機能し、軸方向周りの回転が規制され、長辺方向の一端に貫通板36と当接するテーパ面38dが形成され、長辺方向の他端の端面38cにて環状部24a,25aと当接する。テーパナット38に設けられるテーパ面38dは、軸方向周りの締結ボルト37の回転に伴ってテーパナット38が軸方向に沿って締結ボルト37側に接近した際に、締結ボルト37とテーパナット38との間に発生する軸方向の締付力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する方向にテーパナット38が環状部24a,25aを押圧する長辺方向の押圧力F2に変換する方向に傾斜を有する。
この構成により、テーパナット38に設けられるテーパ面38dの作用によって、軸方向周りの締結ボルト37の回転に伴って発生する軸方向の締付力F1を、環状部24a,25aのスリット24d,25dの間隔を縮小する長辺方向の押圧力F2に変換することで、環状部24a,25aをバッテリーポスト51に締結することができる。また、バッテリー端子1aは、バッテリーポスト51に締結される際に、締結ボルト37の回転に伴ってテーパナット38が締結ボルト37側に接近する一方、締結ボルト37自体は軸方向の位置が固定されたまま変化しない。この結果、このバッテリー端子1aは、締結ボルト37を軸方向上側から締め付ける構成とした上で、当該締結ボルト37を締め付けていく際に当該締結ボルト37の軸方向の相対位置が変化しないようにすることができる。したがって、このバッテリー端子1aは、バッテリーポスト51に締結する際に、軸方向上側から締結ボルト37を締め付けていっても当該締結ボルト37の締め付け高さの変化が抑制されるので、当該締結ボルト37の締め付け作業を行いやすい位置関係を維持することができ、バッテリーポスト51に締結する際の作業性を向上することができる。
なお、上記実施形態では、締結ボルト37と螺合する被締結部材を、テーパ面38dを備えるテーパナット38とし、締結ボルト37とテーパナット38との間で軸方向の締付力を発生させる構成を例示したが、被締結部材として別体のナットを有する構成としてもよい。つまり、テーパナット38の基部38aの螺合孔をネジ溝の無い単なる孔部に置き換え、テーパナット38よりさらに鉛直方向下側に締結ボルト37と螺合するナットを配置し、締結ボルト37とナットとの間に発生する軸方向の締付力を長辺方向の押圧力F2に変換する構成としてもよい。
なお、第二実施形態のバッテリー端子1aでは、本体部21は、第一実施形態のバッテリー端子1と同様の構成であるので、バッテリー端子1aの本体部21も、図7〜11を参照して説明したように、第一実施形態のバッテリー端子1の本体部21と同様の手順で組み立てることができる。したがって、第一実施形態と同様に、従来の本体部(環状部)の上下積層構造を連結する構成と比較して、プレス加工や折り曲げ加工の工程を省略することができ、従来に対して比較的小規模な設備で製造可能である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。