JP2015113268A - 化学強化用フロートガラス - Google Patents

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鈴木 祐一
Yuichi Suzuki
祐一 鈴木
中島 哲也
Tetsuya Nakajima
哲也 中島
小池 章夫
Akio Koike
章夫 小池
丈宜 三浦
Takenori MIURA
丈宜 三浦
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Abstract

【課題】本発明は、化学強化後の反りを効果的に抑制することができる化学強化用フロートガラスを提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるNa2O濃度をその深さ100μm位置のNa2O濃度で除した値であるトップ面の規格化Na2O表面濃度の2乗から該ボトム面におけるNa2O濃度をその深さ100μm位置のNa2O濃度で除した値であるボトム面の規格化Na2O表面濃度の2乗を減じた差Δ(N−Na2O2)が0.038以下である化学強化用フロートガラスに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、化学強化用フロートガラスに関する。
近年、携帯電話または携帯情報端末(PDA)等のフラットパネルディスプレイ装置において、ディスプレイの保護および美観を高めるために、画像表示部分よりも広い領域となるように薄い板状のカバーガラスをディスプレイの前面に配置することが行われている。ここで、カバーガラスとして、フロート法により製造された化学強化前のガラス(以下、化学強化用フロートガラスという)を化学強化し、その表面に圧縮応力層を形成して耐傷性を高めたガラス(以下、化学強化されたフロートガラスという)が用いられている。
特開2013−6749号公報
しかしながら、化学強化用フロートガラスを化学強化すると、化学強化されたフロートガラスが反ってしまうという問題点がある。
したがって、本発明は、化学強化後の反りを効果的に抑制することができる化学強化用フロートガラスを提供することを目的とする。
本発明者らは、化学強化されたフロートガラスの反りは、フロート成形時に溶融錫と接触していないガラス面(以下、トップ面ともいう。)と、溶融錫と接触しているガラス面(以下、ボトム面ともいう。)との化学強化の入り方が異なることにより生じることを見出した。そして、本発明者らは、その主原因は、必ずしもフロート成形時において溶融金属と接触するガラス面に侵入する当該金属ではなく、トップ面とボトム面におけるヤケ程度の差、すなわち水和・脱アルカリ程度の差であることを見出した。
さらに、これらの影響を抑えることで、トップ面とボトム面との化学強化による強化の入りやすさを均衡化し、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減できることを見出した。また、圧縮応力層の深さ(DOL)が典型的には30μm以下、20μm以下または10μm以下である低DOL領域においてヤケの影響が特に大きくなっており、この領域においてヤケ程度の影響を抑えることで化学強化されたフロートガラスの反りを効果的に低減できることを見出した。この知見に基づいて、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度の2乗から該ボトム面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度の2乗を減じた差Δ(N−Na)が0.038以下である化学強化用フロートガラス。それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析により測定した値である。
2.成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるイオン交換量1から該ボトム面におけるイオン交換量1を減じた値であるΔイオン交換量が0.27以下 である化学強化用フロートガラス。イオン交換量1は下記式(2−1)により求められる値である。
イオン交換量1=7.22×(規格化NaO表面濃度)−0.027×(Sn濃度)…(2−1)
式(2−1)において、規格化NaO表面濃度は表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である。ここで、NaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
また、Sn濃度はトップ面およびボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)である。本明細書で単位面積当たりのSn付着量の単位が「as SnOμg/cm」とされているのは、単位面積当たりのSn付着量が、SnがSnOの形で存在するとしたときの1cmあたりのSnO換算付着質量で示されることを明示するためであり、本明細書においては単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)は単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)と同義である。
3.成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、下記式(3−1)により求められるW1が95以下 である化学強化用フロートガラス。
W1=22×(ΔH/Si)+23×(Sn濃度差)+32×(Δイオン交換量)…式(3−1)
式(3−1)において、ΔH/Siは、トップ面における規格化水素濃度からボトム面における規格化水素濃度を減じた値である。規格化水素濃度とは、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度を深さ105〜110μmにおける平均水素濃度で除した値であり、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度および深さ105〜110μmにおける平均水素濃度は、以下の分析条件下で測定した値である。
(分析条件)
測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
一次イオン種:Cs
一次加速電圧:5.0kV
一次イオンカレント:1μA
一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
ラスターサイズ:200×200μm
検出領域:40×40μm
二次イオン極性:マイナス
中和用の電子銃使用有
式(3−1)において、Sn濃度差はボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)からトップ面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)を減じた差であり、ガラスがSnOを含有しない場合はボトム面単位面積当たりのSn付着量に等しい。
式(3−1)において、Δイオン交換量はトップ面におけるイオン交換量1から該ボトム面におけるイオン交換量1を減じた値である。イオン交換量1は下記式により求められる。
イオン交換量1=7.22×(規格化NaO表面濃度)−0.027×(Sn濃度)
前記式において、規格化NaO表面濃度は、表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である。ここで、NaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
4.成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、下記式(4−1)により求められるW2の絶対値が105以下 である化学強化用フロートガラス。
W2=12×Δ[(イオン交換量)/(H/Si)]+58…式(4−1)
式(4−1)において、Δ[(イオン交換量)/(H/Si)]は、トップ面におけるイオン交換量1を同面における規格化水素濃度H/Siで除した値からボトム面におけるイオン交換量1を同面における規格化水素濃度H/Siで除した値を減じた値である。
イオン交換量1は下記式により求められる。
イオン交換量1=7.22×(規格化NaO表面濃度)−0.027×(Sn濃度)
前記式において、規格化NaO表面濃度は、表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である。ここで、NaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。また、Sn濃度はトップ面およびボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)である。
規格化水素濃度とは、深さ1〜10μmにおける平均水素濃度を深さ105〜110μmにおける平均水素濃度で除した値であり、深さ1〜10μmにおける平均水素濃度および深さ105〜110μmにおける平均水素濃度は、以下の分析条件下で測定した値である。
(分析条件)
測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
一次イオン種:Cs
一次加速電圧:5.0kV
一次イオンカレント:1μA
一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
ラスターサイズ:200×200μm
検出領域:40×40μm
二次イオン極性:マイナス
中和用の電子銃使用有
5.成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、下記式(5−1)により求められるW3が97以下 である化学強化用フロートガラス。
W3=382×(ΔN−NaO)+20×(Sn濃度差)…式(5−1)
式(5−1)において、ΔN−NaOは、トップ面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度からボトム面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた値である。ここで、それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
式(5−1)において、Sn濃度差は、ボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)からトップ面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)を減じた差であり、ガラスがSnOを含有しない場合はボトム面単位面積当たりのSn付着量に等しい。
6.成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるイオン交換量2から該ボトム面におけるイオン交換量2を減じた値が0.30以下 である化学強化用フロートガラス。イオン交換量2は下記式(6−1)により求められる値である。
イオン交換量2=0.17×(H/Si)+7.00×(N−NaO濃度)−0.048×(Sn濃度)…(6−1)
式(6−1)において、H/Siは規格化水素濃度であり、規格化水素濃度とは深さ0〜10μmにおける平均水素濃度を深さ105〜110μmにおける平均水素濃度で除した値であり、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度および深さ105〜110μmにおける平均水素濃度は、以下の分析条件下で測定した値である。
(分析条件)
測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
一次イオン種:Cs
一次加速電圧:5.0kV
一次イオンカレント:1μA
一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
ラスターサイズ:200×200μm
検出領域:40×40μm
二次イオン極性:マイナス
中和用の電子銃使用有
式(6−1)においてN−NaO濃度は表面NaO濃度を深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である規格化NaO表面濃度である。ここで、NaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
Sn濃度は、単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)である。
7.成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度から該ボトム面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた差ΔN−NaOの2乗(ΔN−NaO)が3.8×10−4以下である化学強化用フロートガラス。 それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析により測定した値である。
8.成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、下記式(8−1)により求められるW4が95以下である化学強化用フロートガラス。
W4=22×(ΔH/Si)+22.9(ΔN−NaO)+23.5×(Sn濃度差)]…式(8−1)
式(8−1)において、ΔH/Siは、トップ面における規格化水素濃度からボトム面における規格化水素濃度を減じた値である。規格化水素濃度とは、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度を深さ105〜110μmにおける平均水素濃度で除した値であり、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度および深さ105〜110μmにおける平均水素濃度は、以下の分析条件下で測定した値である。
(分析条件)
測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
一次イオン種:Cs
一次加速電圧:5.0kV
一次イオンカレント:1μA
一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
ラスターサイズ:200×200μm
検出領域:40×40μm
二次イオン極性:マイナス
中和用の電子銃使用有
式(8−1)において、ΔN−NaOは、トップ面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度からボトム面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた値である。ここで、それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
式(8−1)において、Sn濃度差は、ボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)からトップ面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)を減じた差であり、単位面積当たりのSn付着量はSnがSnOの形で存在するとしたときの1cmあたりのSnO換算付着質量である。
9.質量百分率表示で、SiOを60〜80%、Alを0〜8%、NaOを8〜22%、KOを0〜7%、MgOを0〜17%、CaOを0〜22%、SrOを0〜8%、BaOを0〜8%、ZrOを0〜5%含有し、NaO/Alが1.5以上6以下である前項1〜8のいずれか1項に記載の化学強化用フロートガラス。
10.化学強化温度がT(単位:K)、化学強化時間がt(単位:時間)である化学強化に用いられ、且つSiOを含有し、SiO、Al、MgO、CaO、SrO、BaO、ZrO、NaOおよびKOの各質量百分率表示含有量を用いて次式で求められるdolが9以上30以下である前項1〜9のいずれか1に記載の化学強化用フロートガラス。
dol=−0.13×Al−1.88×MgO−2.41×CaO−1.85×SrO−1.35×BaO−1.59×ZrO+1.50×NaO+2.42×KO−129359/T+9.28×t0.5+182.88
なお、Al、MgO、CaO、SrO、BaO、ZrO、NaOおよびKOは必須成分ではない。化学強化に用いられる塩はKNO濃度が95〜100質量%であるものが典型的である。
11.圧縮応力深さが9μm以上30μm以下である化学強化ガラスを製造する方法であって、前項1〜10のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスを化学強化することを特徴とする化学強化ガラスの製造方法。
本発明の化学強化用フロートガラスは、トップ面とボトム面とのヤケ程度の差が小さいため、化学強化による応力を小さくすることなく、また化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
図1は、化学強化前のソーダライムガラス板(素板)の表層の規格化水素濃度[(SIMS分析による(H/Si)0〜10μmの平均H/Siを105〜110μmの平均H/Siで除したもの]と規格化NaO表面濃度(蛍光X線分析による表面NaO濃度を100μm深さ位置のNaO濃度で除したもの)との相関関係を示す図である。 図2は、化学強化前のガラスにおいて、ガラス中のNaと大気中のHがイオン交換するメカニズムを示している。 図3は、化学強化後のソーダライムガラス板のイオン交換量(KO、wt%)(蛍光X線分析)と、化学強化前(素板)の規格化NaO表面濃度(蛍光X線分析による表面NaO濃度を100μm深さ位置のNaO濃度で除したもの)との相関関係を示す図である。なお、wt%は質量%である。 図4は、蛍光X線分析によるイオン交換量の算出方法を示す模式図である。 図5(a)〜(d)は、NaとHがイオン交換しているソーダライムガラス板をKNOの混合溶融塩に浸漬して化学強化した場合にイオン交換量が低下するメカニズムを示す模式図である。 図6は、フロート成形時において溶融金属と接触したガラス面(ボトム面)におけるSn濃度と化学強化後のイオン交換量(wt%)(蛍光X線分析)との相関関係を示す図である。 図7は、化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度の二乗の差であるΔ(N−Na)(Top−Bottom)を横軸に、Δ反り量を縦軸にプロットしたグラフである。 図8は、横軸にトップ面とボトム面におけるイオン交換量の差、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフである。 図9は、トップ面とボトム面におけるイオン交換量を水素濃度で除した値の差を横軸に、Δ反り量を縦軸にプロットしたグラフを示す。 図10は、化学強化前のトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度差(ΔNaO)およびSn濃度差(単位面積当たり付着量)およびΔ反り量を因子として重回帰分析したグラフを示す。 図11は、本発明の化学強化用フロートガラスの製造装置の縦断面図である。 図12は、本発明の化学強化用フロートガラスを化学強化した後、フラットパネルディスプレイ用のカバーガラスとして用いたフラットパネルディスプレイの断面図である。 図13は、横軸にW1、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。 図14は、横軸にW2、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。 図15は、横軸にW3、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。 図16は、横軸にトップ面およびボトム面におけるイオン交換量2の差(Δイオン交換量2)、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。 図17は、横軸にトップ面の規格化NaO表面濃度からボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた差の2乗[ΔN−NaO(Top−Bottom)]、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。 図18は、横軸にW4、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。
1.ガラスのヤケ
フロート法により製造したソーダライムガラスの表面のHプロファイル(30Si)を二次イオン質量分析装置(SIMS)により分析したところ、ヤケ(水和および脱アルカリ)層の深さは約3μmであった。したがって、イオン交換深さを10μm以上30μm以下に化学強化する際には、ボトム面とトップ面の化学強化の入り方に差が生じて反る原因として、トップ面とボトム面におけるヤケ程度の差が重要であると考えられる。
本発明において、「ヤケ」とは、ガラス表面が大気による侵食、通常は湿度の影響で劣化する現象をいうが、本発明においてはガラスの表層のアルカリ金属成分、典型的にはNaOが脱離している現象をいう。ガラスのヤケの程度は、蛍光X線分析によりNaO濃度を測定することにより、分析することができる。
図1に化学強化前のソーダライムガラス板(素板)の表層における規格化水素濃度(SIMS分析)と規格化NaO表面濃度(蛍光X線分析による表面NaO濃度を100μm深さ位置のNaO濃度で除したもの)との相関関係を示す。図1に示すように、化学強化前のソーダライムガラス板の表層の規格化水素濃度と規格化NaO表面濃度とは反比例の関係にある。
図1のグラフは、図2に示すように、化学強化前のガラスにおいて、ガラスを構成するSi−O−Naと大気中のHOが反応し、NaとHがイオン交換していることを示している。したがって、ガラスのヤケ程度が大きい程、ガラス表層の規格化水素濃度が増加すると考えられる。
図3に化学強化後のソーダライムガラス板のイオン交換量(wt%)(蛍光X線分析)と、素板の規格化NaO表面濃度(N−NaO)との相関関係を示す。ここで、イオン交換量は、図4に示すように、化学強化後のKO分析値から化学強化前(素板)のKO分析値を減じた値をイオン交換量とする。
図3のグラフから、化学強化前のガラスにおけるNaO濃度が高いほど、すなわち、ガラスのヤケ程度が小さいほど、化学強化後のイオン交換量が増えることがわかる。
図3のグラフから、次のことも考察される。すなわち、図5に示すように、図2に示すようなNaとHがイオン交換しているソーダライムガラス板をKNOの溶融塩に浸漬して化学強化すると、ガラス中にNaとKのイオン交換はエントロピー支配の下でイオン交換するが、HとKとが交換する場合、ガラス中のHはSiOH(弱酸)としての存在であり、仮にHとKがイオン交換した場合HNO(強酸)が生成することになるため、エンタルピー的にイオン交換しないと考えられる。
したがって、ソーダライムガラスの化学強化前のヤケ程度はイオン交換量に影響し、イオン交換量がトップ面とボトム面とで異なることで化学強化後の反りが生じると考えられる。このことから、ソーダライムガラスの化学強化後の反りを制御するためには、化学強化前のガラスのトップ面およびボトム面における、ガラス表層のヤケの程度の差(トップ面とボトム面とにおけるNaO濃度差)のコントロールが重要であると考えられる。
2.Sn濃度
フロート法により製造したソーダライムガラスのボトム面におけるSn(錫)のプロファイル(120Sn30Si)を二次イオン質量分析装置(SIMS)により分析したところ、イオン交換された層の深さとSnが侵入した深さは、約7μmであった。したがって、イオン交換深さDOLが典型的には9μm以上30μm以下となるような化学強化をする際には、ボトム面とトップ面の化学強化の入り方に差が生じて反る原因として、Sn濃度を考慮する必要がある場合があると考えられる。
なお、前記Δ(N−Na)および(ΔN−NaO)はいずれもヤケ程度の差には依存するがSn濃度には直接には依存していない。しかし、フロートバス内でのボトム面へのSnの侵入はガラス表層のNaとのイオン交換によるものと考えられる。そのため、Sn付着量の多いガラスは表層のNa濃度が低くなると考えられる。したがって規格化NaO表面濃度はSn濃度と関係がある。すなわち、Δ(N−Na)および(ΔN−NaO)はいずれも明示的ではないがSn濃度に依存しているということができる。
フロート成形時においてガラスにSnが侵入することにより、ガラスが高密度化すると、NaイオンとKイオンとがイオン交換する際の経路が小さくなり、イオン交換反応が阻害され、Snが侵入した面(ボトム面)における化学強化が阻害される。このことにより、トップ面とボトム面との化学強化の入り方が異なり、ガラスの反りが生じると考えられる。
図6は、フロート成形時において溶融金属と接触したガラス面におけるSn濃度と化学強化後のイオン交換量との相関関係を示すグラフである。図6のグラフから、Sn濃度が高い程イオン交換量が減少していることがわかる。したがって、ソーダライムガラスの化学強化後の反りにはヤケの影響とともに、Sn濃度の影響を考慮する必要がある場合があると考えられる。
ガラスのSn濃度は単位面積あたりのSn付着量を測定することにより求める。具体的には、例えば、フッ化水素酸溶液でエッチングして溶液中のSn濃度をICP発光分光分析法により定量して求めることができる。
3.水素濃度
本発明の化学強化用フロートガラスは、フロート法により成形され、成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する。以下に述べるように、トップ面とボトム面との水素濃度差はフロートガラスを化学強化することにより生じる反りの原因の一つである場合があると考えられる。
フロート法によるガラスの製造においては、フロートバスに貯留された溶融金属の表面に上流側から溶融ガラスを連続的に供給してガラスリボンを成形しつつ該フロートバスの下流側端部から成形後のガラスリボンを引き出し、レアーで徐冷することにより板ガラスを製造する。
フロート法によるガラスの製造において通常は、ガラス槽窯とフロートバスとの間が、キャナルおよびスパウトでつながっている、流路が絞られるタイプの装置が用いられる。この場合、フロートバス内でガラスを広げる必要があるため、後述する別のタイプの装置に比べてより高温の溶融ガラスを溶融金属表面に流し出して成形する。
ところで、ガラス中の水素濃度が高いと、ガラスのSi−O−Siの結合ネットワークの中に水素がSiOHの形で入り、Si−O−Siの結合が切れる。ガラス中の水素濃度が高いとSi−O−Siの結合が切れる部分が多くなり、ガラス転移点などの熱特性が下がるため、高温でガラスを加熱する化学強化の際に応力緩和し、応力が低下する。
そのため、フロートガラスにおけるトップ面およびボトム面のうち、水素濃度が高いガラス面には化学強化の際に応力の入り方が小さく、水素濃度が低いガラス面には化学強化の際に応力が入りやすいこととなる。
すなわち、ボトム面よりもトップ面の水素濃度が低いフロートガラスを化学強化すると、水素濃度が高いボトム面よりも水素濃度が低いトップ面に応力が強く入り、トップ面側に凸になるようにガラスが反ってしまい、反りが生じると考えられる。
したがって、フロートガラスにおけるトップ面とボトム面とにおける水素濃度が近いほど、すなわち、トップ面とボトム面との水素濃度差の絶対値の値が小さければ小さいほど、化学強化後のトップ面とボトム面との応力の入り方が均衡する状態に近づき、反りが低減されることとなる。
なお、本発明においては平均水素濃度そのものおよび前記平均水素濃度差そのものを精度よく測定することは困難であるので、平均水素濃度に比例する[30Si](H/Siともいう。)を平均水素濃度の直接的な指標として、前記平均水素濃度差に比例する「規格化水素濃度のトップ面とボトム面との差」および「規格化強度のトップ面とボトム面との差」を前記平均水素濃度差の直接的な指標としてそれぞれ用いる。
ここで、本明細書において、[30Si]とは、以下の分析条件下で測定した値である。
(分析条件)
測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
一次イオン種:Cs
一次加速電圧:5.0kV
一次イオンカレント:1μA
一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
ラスターサイズ:200×200μm
検出領域:40×40μm
二次イオン極性:マイナス
中和用の電子銃使用有
次に、[30Si]、規格化強度および規格化水素濃度について説明する。二次イオン質量分析における元素Mの同位体Mの二次イオン強度IM1は、一次イオン強度I、マトリックスのスパッタ率Y、元素Mの濃度C(全濃度に対する比)、同位体Mの存在確率α、元素Mの二次イオン化率β、および質量分析計の透過効率η(検出器の検出効率を含む)に比例する。
M1=A・I・Y・C・α・β・η (式1)
ここで、Aは一次イオンビームの走査範囲に対する二次イオンの検出面積の比である。一般的には装置のηを求めるのは困難なためβの絶対値を求めることができない。そこで、同じ試料の中の主成分元素などを参照元素として用い、(式1)との比をとることによりηを消去する。
ここで参照元素をR、その同位体をRとした場合、(式2)が得られる。
M1/IRj=(C・α・β)/(C・α・β)=C/K (式2)
ここでKは元素Mの元素Rに対する相対感度因子である。
K=(C・α・β)/(α・β) (式3)
この場合、元素Mの濃度は(式4)より求められる。
=K・IM1/IRj (式4)
本発明においては、はMに、30SiはRにそれぞれ対応する。したがって、(式2)より両者の強度比[30Si]は平均水素濃度CをKで除したものに等しい。すなわち、[30Si]は平均水素濃度の直接的な指標である。
規格化強度はある深さxにおける[30Si]を深さ105〜110μmにおける[30Si]で除した値、すなわちある深さxにおけるC/Kを深さ105〜110μmにおけるC/Kで除した値である。Kは消去されるので結局規格化強度は深さxにおけるCを深さ105〜110μmにおけるCで除したものと同じであり、すなわち、深さxにおける規格化水素濃度である。
なお、規格化水素濃度を算出する際に深さ105〜110μmにおける平均水素濃度を基準としたのは、深さ105〜110μmの領域は平均水素濃度が変動しない内部領域と考えられるからである。
フロートガラスにおけるトップ面およびボトム面の規格化強度(Normalized
Intensity)の差の絶対値は、二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry、SIMS分析)により、例えば、以下の(i)〜(iii)の手順で求められる。なお、以下で示す分析条件は例示であり、測定装置、サンプルなどによって適宜変更されるべきものである。
(i)トップ面およびボトム面のそれぞれにおいて、二次イオン質量分析を下記分析条件により、表層からの深さ20μmまで行う。
(分析条件)
測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
一次イオン種:Cs
一次加速電圧:5.0kV
一次イオンカレント:1μA
一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
ラスターサイズ:200×200μm
検出領域:40×40μm
二次イオン極性:マイナス
中和用の電子銃使用有
なお、深さ5μmにおける30Siの強度よりも深さ55μmにおける30Siの強度が3%超小さいような場合には、あらかじめガラス基板の表面を45μm程度エッチングしたサンプルで分析することが好ましい。
より具体的な分析条件は、例えば、以下である。
(分析条件)
測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
一次イオン種:Cs
一次加速電圧:5.0kV
一次イオンカレント:1μA
一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
ラスターサイズ:200×200μm
検出領域:40×40μm
スパッタレート:14nm/sec
二次イオン極性:マイナス
中和用の電子銃使用有
四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置としては、例えば、アルバック・ファイ社製ADEPT1010が挙げられる。
(ii)二次イオン質量分析により得られた[30Si]プロファイルの深さ0〜10μmにおける[30Si]を、深さ105〜110μmの[30Si]で除した値を、深さ0〜10μmの二次イオン質量分析における規格化強度とする。
(iii)二次イオン質量分析により得られた深さ0〜10μmにおける規格化強度について、トップ面とボトム面との差の絶対値を算出する。
4.イオン交換量
イオン交換量は応力発生因子であり、化学強化後のガラスにおけるKO濃度と比例関係にある。したがって、トップ面とボトム面におけるイオン交換量の差はKO濃度の差で分析することができる。KO濃度は蛍光X線分析により分析することができる。
5.反り量
本発明の化学強化用フロートガラスは、化学強化後の反り量の小さいフロートガラスである。フロートガラスの反り量は、接触式表面形状測定器[例えば株式会社東京精密製サーフコム(商品名)]で測定することができる。
反り量は、接触式表面形状測定器で測定した際、測定開始点と測定終了点が同レベルになるようにベースライン補正を実施後、最高点と最下点の差として測定する。トップ面凸方向に反った場合はプラス、ボトム面凸方向に反る場合はマイナスとして表現する。
化学強化前後におけるフロートガラスの反り量の変化は、下記式により測定することができる。
(式)Δ反り量=(化学強化後反り量)−(化学強化前反り量)
本発明においては、10cm角のフロートガラスの中央9cm角の部分について測定し、板厚0.7mmに換算した際のΔ反り量の絶対値が100μm以下、90μm以下、85μm以下または83μm以下であることが好ましい。Δ反り量の絶対値を当該上限以下とすることにより、化学強化後の反りを小さくすることができる。
CS(表面圧縮応力)とDOL(圧縮応力層の深さ)は、表面応力計により測定することができる。本発明の化学強化用フロートガラスは化学強化したガラスの表面圧縮応力が650MPa以上であることが好ましく、圧縮応力層の深さは30μm以下であるところに用いるのに特に好適である。圧縮応力層の深さは30μm以下とすることにより、化学強化後の製品について切断することができ、好ましい。この観点からは圧縮応力層の深さは20μm以下であることがより好ましく、18μm以下であることがさらに好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。 また、強度向上の観点から、9μm以上であることが好ましく、10μm以上であること特に好ましい。
6.パラメータ
上記考察から、以下のパラメータが考えられる。
(1)化学強化前のトップ面とボトム面におけるNaO濃度差とΔ反り量
ソーダライムガラスの化学強化後の反りを制御するためには、化学強化前のガラス表層におけるヤケ程度、水素濃度およびSn濃度のコントロールが重要であると考えられる。
ここで、図1に示すように、化学強化前のガラスにおける表層の規格化水素濃度と規格化NaO表面濃度とは反比例の関係にある。また、図3に示すように、化学強化前のガラスにおける規格化NaO表面濃度が高いほど化学強化後のイオン交換量が増えており、化学強化前のガラスにおける規格化NaO表面濃度とイオン交換量とは反比例の関係にある。
また、図6に示すように、イオン交換量はボトム面におけるSn濃度(トップ面とボトム面とのSn濃度差)と化学強化後のイオン交換量との相関関係があり、トップ面とボトム面とのSn濃度差が大きい程イオン交換量が減少する。化学強化後の反りはトップ面とボトム面におけるイオン交換量の差により生じる。
また、ガラス表層の水素濃度の増加が高いとSi−O−Siの結合が切れる部分が多くなり、ガラス転移点などの熱特性が下がるため、高温でガラスを加熱する化学強化の際に応力緩和し、応力が低下する。そのため、化学強化による応力発生はイオン交換量と緩和程度によると考えられる。したがって、化学強化前のガラスにおけるトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度差とΔ反り量とは相関関係があると考えられる。
(1A)トップ面およびボトム面における規格化NaO表面濃度の2乗の差とΔ反り量
図7に横軸にトップ面の規格化NaO表面濃度の2乗からボトム面の規格化NaO表面濃度の2乗を減じた差Δ(N−Na)(Top−Bottom)、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。
図7に示すグラフから、化学強化前のソーダライムガラス板のトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度の2乗の差Δ(N−Na)とΔ反り量とには下記式(1−1)で表される相関関係があることがわかる。
Δ反り量=855×Δ(N−Na)+62.8…式(1−1)
式(1−1)においてΔ(N−Na)は、化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度を蛍光X線分析により測定した値の2乗の差であり、下式(1−2)により求められる。
Δ(N−Na)=(化学強化前のトップ面における規格化NaO表面濃度)−(化学強化前のボトム面における規格化NaO表面濃度)…式(1−2)
ここでの規格化NaO表面濃度は表面NaO濃度を深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である。それぞれのNaO濃度は蛍光X線法によりNa−Kα線強度を測定し標準試料との相対強度比から算出した値である。なお、深さ100μm位置のNaO濃度は、表面から100μmの深さまでガラスを削り取った後の表面を蛍光X線で測定したNaO濃度である。また、Na−Kα線を用いる蛍光X線分析により測定した値の分析深さは典型的には3μmである。
化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度の2乗の差は、0.038以下であり、好ましくは0.035以下、特に好ましくは0.030である。化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度の2乗の差を0.038以下とすることにより、化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
(1B)トップ面およびボトム面における規格化NaO表面濃度の差の2乗とΔ反り量
図17に横軸にトップ面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度から該ボトム面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた差の2乗[ΔN−NaO(Top−Bottom)]、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。
図17に示すグラフから、トップ面の規格化NaO表面濃度からボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた差の2乗[ΔN−NaO(Top−Bottom)]とΔ反り量とには下記式(7−1)で表される相関関係があることがわかる。
Δ反り量=35800×(ΔN−NaO)+80.9…式(7−1)
式(7−1)において(ΔN−NaO)は、化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度を蛍光X線分析により測定した値の差の2乗であり、下式(7−2)により求められる。
(ΔN−NaO)=[(化学強化前のトップ面における規格化NaO表面濃度)−(化学強化前のボトム面における規格化NaO表面濃度)]…式(7−2)
化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO濃度の差の2乗の差は3.8×10−4以下であり、好ましくは3.7×10−4以下、3.5×10−4以下または3.0×10−4以下である。化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO濃度の差の2乗を3.8×10−4以下とすることにより、化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
「7.ガラスの製造方法」の(A)において後述する方法によりNaO濃度を調整することにより、化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度を調整し、Δ(N−Na)または(ΔN−NaO)を調整することができる。具体的には、例えば、ガラス徐冷時にトップ面に水蒸気やSOガスを吹き付けてトップ面のNaO濃度を下げる、ボトム面に傷防止を目的として吹付けられるSOガス流量を下げてボトム面のNaO濃度を上げることが好ましい。
(2)化学強化後のトップ面とボトム面におけるイオン交換量差とΔ反り量
化学強化後のトップ面とボトム面におけるイオン交換量の差であるΔイオン交換量とΔ反り量には相関関係があると考えられる。
イオン交換量は化学強化前のNaO濃度に比例すること、Snにより阻害されることから、下記式(2−1)により求めることができる。
イオン交換量1=7.22×(規格化NaO表面濃度)−0.027×(Sn濃度)…(2−1)
以下、イオン交換量という語はイオン交換量1を表すためにも用いることがある。
式(2−1)において、規格化NaO表面濃度は表面NaO濃度を深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である。ここで、それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。また、Sn濃度は、トップ面およびボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)である。
トップ面とボトム面におけるイオン交換量の差は下記式(2−2)により求めることができる。
イオン交換量の差=(トップ面におけるイオン交換量)−(ボトム面におけるイオン交換量)…(2−2)
図8に、横軸にトップ面とボトム面におけるイオン交換量の差Δイオン交換量、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図8に示すグラフから、Δイオン交換量とΔ反り量には下記式(2−3)で表される相関関係があることがわかる。
Δ反り量=266×(Δイオン交換量)+24.8…式(2−3)
Δイオン交換量は、0.27以下であり、好ましくは、0.25以下、より好ましくは0.24以下である。
上記式(2−1)および(2−2)により求められる化学強化後のトップ面とボトム面におけるイオン交換量の差を0.27以下とすることにより、化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
「7.ガラスの製造方法」の(A)において後述する方法によりNaO濃度、ボトム面におけるSn濃度を調整することにより、化学強化後のトップ面とボトム面におけるイオン交換量の差Δイオン交換量を調整することができる。具体的には、例えば、ガラス徐冷時にトップ面に水蒸気やSOガスを吹き付けてトップ面のNaO濃度を下げる、ボトム面に傷防止を目的として吹付けられるSOガス流量を下げてボトム面のNaO濃度を上げる、フロートバス上流の温度を下げるもしくは雰囲気水素濃度を上げてボトム面へのSn侵入量を下げることが好ましい。
(3)化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差、Sn濃度差およびイオン交換量差とΔ反り量との相関関係
化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差、Sn濃度差、イオン交換量差およびにΔ反り量を因子として重回帰分析すると、下記式(3−1)が求められる。
W1=22×(ΔH/Si)+23×(Sn濃度差)+32×(Δイオン交換量)…式(3−1)
式(3−1)において、ΔH/Siは化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差をSIMS分析により測定した値の差(規格化水素濃度の差)であり、下記式(3−2)により求められる。
ΔH/Si=(化学強化前のトップ面における規格化水素濃度)−(化学強化前のボトム面における規格化水素濃度)…式(3−2)
式(3−1)において、また、Sn濃度差は、ボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)からトップ面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnOμg/cm)を減じた差であり、ガラスがSnOを含有しない場合はボトム面単位面積当たりのSn付着量に等しい。
Δイオン交換量はトップ面におけるイオン交換量から該ボトム面におけるイオン交換量を減じた値である。イオン交換量は前記式(2−1)により求められる。
図13に横軸にW1、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図13に示すグラフから、W1とΔ反り量には相関関係があることがわかる。
式(3−1)において、W1は95以下であり、好ましくは90以下、85以下または83以下である。W1を95以下とすることにより、化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
「7.ガラスの製造方法」の(A)において後述する方法により、水素濃度、ボトム面におけるSn濃度を調整することにより、式(3−1)において、W1を調整することができる。具体的には、例えば、ガラス徐冷時にトップ面に水蒸気やSOガスを吹き付けてトップ面のNaO濃度を下げる、ボトム面に傷防止を目的として吹付けられるSOガス流量を下げてボトム面のNaO濃度を上げる、フロートバス上流の温度を下げるもしくは雰囲気水素濃度を上げてボトム面へのSn侵入量を下げることが好ましい。
(4)トップ面とボトム面におけるイオン交換量差および化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差とΔ反り量との相関関係
イオン交換量は応力発生因子であり、ガラス表層の水素濃度は応力緩和因子であると考えられる。すなわち、ガラス表層の水素濃度が高くなるほどガラスの密度は下がると考えられる。ガラス中のHはSiOHの状態で存在しており、SiOHはガラス中の連続的な架橋構造Si−O−Siが切断されて生成するため、ガラス表層の水素濃度が増える程ガラスの密度が下がり応力が緩和すると考えられる。
化学強化後のガラスの反りは、トップ面とボトム面との応力差のアンバランスによると考えられることから、イオン交換量を水素濃度で除した値と反り量には相関関係があると考えられる。
図9に、横軸にトップ面とボトム面におけるイオン交換量を化学強化前のトップ面とボトム面における規格化水素濃度で除した値の差、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。
図9に示すグラフから、トップ面とボトム面におけるイオン交換量(イオン交換量)を化学強化前のトップ面とボトム面における規格化水素濃度(H/Si)で除した値の差とΔ反り量には下記式(4−1)で表される相関関係があることがわかる。
また、規格化水素濃度、イオン交換量差およびにΔ反り量を因子として、重回帰分析すると、下記式(4−1)が求められる。
W2=12×Δ[(イオン交換量)/(H/Si)]+58…式(4−1)
式(4−1)において、Δ[(イオン交換量)/(H/Si)]は、トップ面におけるイオン交換量を規格化水素濃度H/Siで除した値からボトム面におけるイオン交換量を規格化水素濃度H/Siで除した値を減じた値である。
式(4−1)において、イオン交換量は前記式(2−1)により求められる。
図14に横軸にW2、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図14に示すグラフから、W2とΔ反り量には相関関係があることがわかる。
式(4−1)において、W2は105以下であり、好ましくは100以下、95以下または90以下、さらには85%以下である。W2を105以下とすることにより、化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
「7.ガラスの製造方法」の(A)において後述する方法により、水素濃度を調整することにより、式(4−1)において、W2を調整することができる。具体的には、例えば、ガラス徐冷時にトップ面に水蒸気やSOガスを吹き付けてトップ面のNaO濃度を下げる、ボトム面に傷防止を目的として吹付けられるSOガス流量を下げてボトム面のNaO濃度を上げる、フロートバス上流の温度を下げるもしくは雰囲気水素濃度を上げてボトム面へのSn侵入量を下げることが好ましい。
(5)化学強化前のトップ面とボトム面におけるNaO濃度差およびSn濃度差とΔ反り量
ソーダライムガラスの化学強化後の反りを制御するためには、化学強化前のガラス表層のヤケの程度およびSn濃度のコントロールが重要であることから、化学強化前のトップ面とボトム面におけるNaO濃度差およびSn濃度とΔ反り量には相関関係があると考えられる。
化学強化前のトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度差(ΔN−NaO)およびSn濃度差およびにΔ反り量を因子として重回帰分析すると、図10に示すように、化学強化前のトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度差およびSn濃度差には下記式(5−1)で表される相関関係があることがわかる。
W3=382×[(ΔN−NaO)+20×(Sn濃度差)]…式(5−1)
式(5−1)においてΔN−NaOは、化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である規格化NaO表面濃度の差であり、下式(5−2)により求められる。ここで、それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
ΔN−NaO=(トップ面における規格化NaO表面濃度)−(ボトム面における規格化NaO表面濃度)…式(5−2)
また、Sn濃度差は、化学強化前のトップ面とボトム面におけるSn濃度差であり、ボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnO2μg/cm)からトップ面単位面積当たりのSn付着量(単位:as SnO2μg/cm)を減じた差であり、ガラスがSnOを含有しない場合はボトム面単位面積当たりのSn付着量に等しい。
図15に横軸にW3、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図15に示すグラフから、W3とΔ反り量には相関関係があることがわかる。
式(5−1)において、W3は97以下であり、好ましくは95以下、より好ましくは93以下である。W3を97以下とすることにより、化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
「7.ガラスの製造方法」の(A)において後述する方法により、NaO濃度差、Sn濃度差を調整することにより、式(5−1)において、W3を調整することができる。具体的には、例えば、ガラス徐冷時にトップ面に水蒸気やSOガスを吹き付けてトップ面のNaO濃度を下げる、ボトム面に傷防止を目的として吹付けられるSOガス流量を下げてボトム面のNaO濃度を上げる、フロートバス上流の温度を下げるもしくは雰囲気水素濃度を上げてボトム面へのSn侵入量を下げることが好ましい。
(6)イオン交換量(水素濃度、NaO濃度およびSn濃度)の差とΔ反り量
化学強化後のガラスの反りには、トップ面及びボトム面におけるイオン交換量の差が影響しており、イオン交換量には水素濃度、NaO濃度およびSn濃度が関与していると考えられる。したがって、イオン交換量と規格化水素濃度、規格化NaO表面濃度およびSn濃度は以下の式(6−1)で表される相関関係を示す。
イオン交換量2=0.17×(H/Si)+7.00×(N−NaO濃度)−0.048×(Sn濃度)…(6−1)
図16に横軸にトップ面およびボトム面におけるイオン交換量2の差(Δイオン交換量2)、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図16に示すグラフから、Δイオン交換量2とΔ反り量には相関関係があることがわかる。
Δイオン交換量2は、下記式(6−2)により求められる値である。
Δイオン交換量2=(トップ面におけるΔイオン交換量2)−(ボトム面におけるΔイオン交換量2)…(6−2)
式(6−1)において、Δイオン交換量2は0.30以下であり、好ましくは0.28以下、0.25以下または0.23以下である。Δイオン交換量2を0.30以下とすることにより、化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
「7.ガラスの製造方法」の(A)において後述する方法により、水素濃度、NaO濃度、Sn濃度を調整することにより、式(6−1)において、イオン交換量2を調整することができる。具体的には、例えば、ガラス徐冷時にトップ面に水蒸気やSOガスを吹き付けてトップ面のNaO濃度を下げる、ボトム面に傷防止を目的として吹付けられるSOガス流量を下げてボトム面のNaO濃度を上げる、フロートバス上流の温度を下げるもしくは雰囲気水素濃度を上げてボトム面へのSn侵入量を下げることが好ましい。
(7)化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差、NaO濃度差およびSn濃度差とΔ反り量
化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差、Sn濃度差、イオン交換量差およびにΔ反り量を因子として重回帰分析すると、下記式(8−1)が求められる。
化学強化後のガラスの反りには、トップ面及びボトム面におけるイオン交換量の差が影響しており、イオン交換量には水素濃度、NaO濃度およびSn濃度が関与していると考えられる。したがって、化学強化前のトップ面とボトム面における規格化水素濃度差、規格化NaO表面濃度差およびSn濃度差は以下の式(8−1)で表される相関関係があることがわかる。
W4=22×(ΔH/Si)+22.9(ΔN−NaO)+23.5×(Sn濃度差)]…式(8−1)
図18に横軸にW4、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図18に示すグラフから、W4とΔ反り量には相関関係があることがわかる。
式(8−1)において、W4は95以下であり、好ましくは90以下、85以下または83以下である。W4を95以下とすることにより、化学強化前の研磨処理等を簡略化または省略しても、化学強化後におけるフロートガラスの反りを低減し、優れた平坦度を得ることができる。
「7.ガラスの製造方法」の(A)において後述する方法により、水素濃度、NaO濃度、Sn濃度を調整することにより、式(8−1)において、W4を調整することができる。具体的には、例えば、ガラス徐冷時にトップ面に水蒸気やSOガスを吹き付けてトップ面のNaO濃度を下げる、ボトム面に傷防止を目的として吹付けられるSOガス流量を下げてボトム面のNaO濃度を上げる、フロートバス上流の温度を下げるもしくは雰囲気水素濃度を上げてボトム面へのSn侵入量を下げることが好ましい。
7.ガラスの製造方法
フロートガラスにおけるトップ面とボトム面とのヤケ程度の差が小さく、且つフロート成形時において溶融金属と接触するガラス面に侵入する金属量の差が小さくしてΔ反り量を低減するための方法としては、例えば、以下の(A)〜(D)に示す方法が挙げられる。これらの方法は単独で用いても、組み合わせてもよい。
(A)フロートバスから出てきたガラスを徐冷する際、SOガスをガラスに吹きつけることによりガラスのアルカリ成分NaOをNaSO4としてガラスから取り出す。ガラスに吹き付けるSOガスの量を調整することで、トップ面とボトム面におけるアルカリの量を同程度にし、ガラスのヤケ程度の差を低減することができる。
(B)レアーにて、ガラスのトップ面側に水蒸気を吹き付ける。
(C)フロートバスにおける溶融ガラスの滞在時間を短くする。
(D)フロートバス上流域の温度を下げる。
以下、図面に基づいて説明するが本発明はこれに限定されない。図11は本発明によるフロートガラスの製造装置の縦断面図である。図11において、12はツイール、22はツイールの下方にある固定耐火物、23はスパウトのリップである。
図面には省略されているが、原料をガラス槽窯内へ連続的供給し、ガラス槽窯内の高温領域で原料を溶解し、得られた溶融ガラスを冷却領域に導き温度を調整する。次いで、温度の調整された溶融ガラス1は、接続溝11を通過し、ツイール12とその下方にある固定耐火物22とで形成される間隙2を通過する。次いで、スパウトのリップ23を経て溶融金属浴5へ供給され、ガラスリボン4に成形される。
フロートガラスは、板厚が1.5mm以下であることが好ましく、1.1mm以下であることがより好ましい。また、典型的には0.7mm以上であるが必要に応じてこれより薄いものも使用される。
本発明の化学強化用フロートガラスは、組成によらずに化学強化後の反りを低減することができるが、化学強化用フロートガラスの組成としては、例えば、以下のガラスの組成が挙げられる。
(i)質量%で表示した組成で、SiOを60〜80%、Alを0〜8%、NaOを8〜22%、KOを0〜7%、RO(R=Mg、Ca、Sr、Ba)を合量で5〜25%、ZrO2を0〜5%を含むガラス
(ii)質量%で表示した組成で、SiOを64〜77%、Alを0.01〜7%、NaOを10〜18%、KOを0〜5%、MgOを1〜10%、CaOを1〜12%、SrOを0〜5%、BaOを0〜5%、ZrOを0〜3%であるガラス
(iii)質量%で表示した組成で、SiOを60〜80%、Alを0.01〜8%、NaOを8〜22%、KOを0〜7%、ZrOを0〜5%含有し、MgO、CaO、SrOまたはBaOを含有する場合MgO、CaO、SrOおよびBaOの含有量の合計が5〜25%であり、NaOおよびAlの含有量の比NaO/Alが1.5以上であるガラス
(iv)質量%で表示した組成で、SiOを60〜80%、Alを0.01〜8%、NaOを8〜22%、KOを0〜7%、ZrOを0〜5%含有し、MgO、CaO、SrOまたはBaOを含有する場合MgO、CaO、SrOおよびBaOの含有量の合計が5〜25%であり、NaOおよびAlの含有量の比NaO/Alが1.5以上6以下であるガラス
(v)質量%で表示した組成で、SiOを60〜80%、Alを0.01〜8%、NaOを8〜22%、KOを0〜7%、ZrOを0〜5%含有し、MgO、CaO、SrOまたはBaOを含有する場合MgO、CaO、SrOおよびBaOの含有量の合計が5〜25%であり、CaO、SrOおよびBaOの含有量の合計が1〜7%であり、NaOおよびAlの含有量の比NaO/Alが1.5以上6以下であるガラス
成形されたフロートガラスを、不図示の切断機で所定のサイズに切断した後、化学強化することにより化学強化フロートガラスを得ることができる。
化学強化は、ガラス転移点以下の温度でイオン交換によりガラス表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的には、LiイオンまたはNaイオン)をイオン半径のより大きなアルカリイオン(典型的には、Kイオン)に交換することで、ガラス表面に圧縮応力層を形成する処理である。化学強化処理は従来公知の方法によって行うことができる。
本発明の化学強化用フロートガラスは、化学強化温度がT(単位:K)、化学強化時間がt(単位:時間)である化学強化に用いられ、且つSiOを含有し、SiO、Al、MgO、CaO、SrO、BaO、ZrO、NaOおよびKOの各質量百分率表示含有量を用いて次式で求められるdolが9以上30以下であることが好ましい。
dol=−0.13×Al−1.88×MgO−2.41×CaO−1.85×SrO−1.35×BaO−1.59×ZrO+1.50×NaO+2.42×KO−129359/T+9.28×t0.5+182.88
dolはDOL(圧縮応力層の深さ)と相関がある。圧縮応力層の深さは30μm以下とすることにより、化学強化後の製品について切断することができ、好ましい。この観点からはdolは20μm以下であることがより好ましく、18μm以下であることがさらに好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。また、強度向上の観点から、dolは9以上であることが好ましく、10以上であることより好ましく、12以上が特に好ましい。
以下、本発明のフロートガラスを化学強化した後、フラットパネルディスプレイ用のカバーガラスとして用いた例について説明する。図2は、カバーガラスが配置されたディスプレイ装置の断面図である。なお、以下の説明において、前後左右は図中の矢印の向きを基準とする。
ディスプレイ装置10は、図12に示すように、概して筐体15内に設けられた表示パネル20と、表示パネル20の全面を覆い筐体15の前方を囲うように設けられるカバーガラス30とを備える。
カバーガラス30は、主として、ディスプレイ装置10の美観や強度の向上、衝撃破損防止などを目的として設置されるものであり、全体形状が略平面形状の一枚の板状ガラスから形成される。カバーガラス30は、図12に示すように、表示パネル20の表示側(前側)から離間するように(空気層を有するように)設置されていてもよく、透光性を有する接着膜(図示せず)を介して表示パネル20の表示側に貼り付けられてもよい。
カバーガラス30の表示パネル20からの光を出射する前面には機能膜41が設けられ、表示パネル20からの光が入射する背面には、表示パネル20と対応する位置に機能膜42が設けられている。なお、機能膜41、42は、図2では両面に設けたが、これに限らず前面または背面に設けてもよく、省略してもよい。
機能膜41、42は、例えば、周囲光の反射防止、衝撃破損防止、電磁波遮蔽、近赤外線遮蔽、色調補正、および/または耐傷性向上などの機能を有し、厚さおよび形状などは用途に応じて適宜選択される。機能膜41、42は、例えば、樹脂製の膜をカバーガラス30に貼り付けることにより形成される。あるいは、蒸着法、スパッタ法またはCVD法などの薄膜形成法により形成されてもよい。
符号44は、黒色層であり、例えば、顔料粒子を含むインクをカバーガラス30に塗布し、これを紫外線照射、または加熱焼成した後、冷却することによって形成された被膜であり、筐体15の外側からは表示パネル等が見えなくなり、外観の審美性を向上させる。なお、符号44は黒色層に限らずたとえば白色層であってもよい。
以下に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
〔フロートガラスの製造〕
以下に示す組成のガラスを板厚が0.7mmとなるようにフロート法で製造し、10cm×10cmに切断して、例1〜5のフロート板ガラスを作製した。組成は質量%表示で、SiO:68.5%、Al:5.0%、NaO:14.6%、KO:0.24%、MgO:4.13%、CaO:7.25%、ZrO:0.03%、Fe:0.085%であった。
〔評価方法〕
(1)ガラス表層の水素濃度の測定
例1〜5の各フロートガラスの水素濃度を、二次イオン質量分析により深さ20μmまで分析した。フロートガラスの二次イオン質量分析による[30Si]プロファイルを示すが、このプロファイルは水素濃度プロファイルと同視してよいものである。
二次イオン質量分析の分析条件は以下とした。
測定装置:アルバック・ファイ社製 ADEPT1010
一次イオン種:Cs
一次加速電圧:5.0kV
一次イオンカレント:1μA
一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
ラスターサイズ:200×200μm
検出領域:40×40μm
スパッタレート:14nm/sec
二次イオン極性:マイナス
中和用の電子銃使用有
表1において、「H/Si」は、深さ0〜10μm平均値を深さ105〜110μm平均値で除した値を表す。また、深さ0〜10μmの平均値および105〜110μmの平均値[30Si]を測定し、深さ0〜10μmの平均値における規格化強度のボトム面(B面)とトップ面(T面)との差を算出した。
なお、検出器のField Aperture:1、検出器のESA Input Lens:550とした。
(2)反り量の測定
化学強化前に株式会社東京精密製接触式表面形状測定器(サーフコム1400D(商品名))で反り量を測定した後、各フロートガラスを硝酸カリウム溶融塩により、425℃にて150分化学強化し、化学強化後の反り量も同様に測定し、(式)Δ反り量=化学強化後反り量−化学強化前反り量で表されるΔ反り量を算出した。なお、Δ反り量は、9cm角のフロートガラスにおけるΔ反り量を測定とした。
(3)NaO濃度およびKO濃度の測定
ガラス表層のNaO濃度およびKO濃度は、株式会社リガク社製ZSX PrimusIIを用いて蛍光X線分析によりそれぞれNa−Kα線、K−Kα線強度を測定し、標準試料との相対強度比から濃度を求めた。
「N−NaO」とは、NaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である規格化NaO表面濃度である。なお、NaO濃度は蛍光X線法によりNa−Kα線強度を測定し標準試料との相対強度比から算出した値である。また、「KOイオン交換量」とは、化学強化後のイオン交換量(KO濃度)を示す。
(4)Sn濃度の測定
ガラス表面のSn濃度は、ガラス表面をフッ化水素酸溶液でエッチングして溶液中のSn濃度をICP発光分光分析法により定量した。ICP発光分光分析装置はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SPS3100を用いた。
表1において、今回のガラスはSnOを含有しないことから、トップ面のSnOは0であることが明らかであり測定しなかった。以下の表2〜6においても同様である。
例1〜5のガラスの化学強化前における規格化水素濃度[0〜10μm平均(H/Si)/105〜110μm(平均H/Si)]、N−NaO濃度(表面濃度/100μm深さ位置濃度、以下規格化NaO表面濃度ともいう)、KO濃度およびSn濃度(単位面積当たり付着量)並びに化学強化後のイオン交換量(KO濃度)およびΔ反り量を求めた結果を表1に示す。
トップ面のN−NaO濃度が1未満であるのは、ボトム面に吹付けられたSOガスがトップ面側に回り込んだためと考えられる。また、トップ面のN−NaO濃度がたとえば例1と例4で異なるのはSOガスの吹付け状態が変動していることによると考えられる。
[実施例2]
化学強化前のトップ面とボトム面におけるNaO濃度差とΔ反り量
化学強化前のソーダライムガラス板のトップ面とボトム面におけるNaO濃度差とΔ反り量とは相関関係があると考えられることから、表1に示すデータからトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度の2乗の差Δ(N−Na)を求め、Δ反り量との相関関係について検討した。
その結果を表2および図7に示す。図7は、横軸に化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度の2乗の差Δ(N−Na)(Top−Bottom)、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフである。
図7に示すグラフから、化学強化前のソーダライムガラス板のトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度の差の二乗Δ(N−NaO)とΔ反り量とには下記式(1−1)で表される相関関係があることがわかった。
Δ反り量=855×Δ(N−Na)+62.8…式(1−1)
式(1−1)においてΔ(N−Na)は、化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度を蛍光X線分析により測定した値の2乗の差であり、下式(1−2)により求められる。ΔNaO=(化学強化前のトップ面における規格化NaO表面濃度)−(化学強化前のボトム面における規格化NaO表面濃度)…式(1−2)
表2および図7に示す結果から、式(1−1)において、Δ(N−Na)を0.038以下とすることにより、Δ反り量を90μm以下とすることができることがわかった。
[実施例3]
化学強化後のトップ面とボトム面におけるイオン交換量差とΔ反り量
トップ面とボトム面におけるイオン交換量の差とΔ反り量には相関関係があると考えられることから、表1に示すデータからイオン交換量の差(Δイオン交換量)を求め、Δ反り量との相関関係について検討した。
Δイオン交換量は、トップ面におけるイオン交換量から該ボトム面におけるイオン交換量を減じた値である。イオン交換量は下記式(2−1)により求めた。
イオン交換量=7.22×(規格化NaO表面濃度)−0.027×(Sn濃度)…(2−1)
イオン交換量の差=(トップ面におけるイオン交換量)−(ボトム面におけるイオン交換量)…(2−2)
その結果を表3および図8に示す。図8は、横軸にトップ面とボトム面における計算イオン交換量の差Δイオン交換量、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフである。
図8に示すグラフから、Δイオン交換量とΔ反り量には下記式(2−3)で表される相関関係があることがわかった。
Δ反り量=266×(Δイオン交換量)+24.8…式(2−3)
表3および図8に示す結果から、Δイオン交換量を0.27以下とすることにより、Δ反り量を90μm以下とすることができることがわかった。
[実施例4]
化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差、Sn濃度差およびイオン交換量差とΔ反り量
化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差、Sn濃度差、イオン交換量差およびにΔ反り量に相関関係があると考えられることから、これらを因子として、表1に示すデータを元に重回帰分析した結果、下記式(3−1)が求められた。表4に、表1に示すデータから用いたデータを示す。
W1=22×(ΔH/Si)+23×(Sn濃度差)+32×(Δイオン交換量)…式(3−1)
式(3−1)において、ΔH/Siは化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差をSIMS分析により測定した値の差(規格化水素濃度の差)であり、下記式(3−2)により求めた。
ΔH/Si=(化学強化前のトップ面における規格化水素濃度)−(化学強化前のボトム面における規格化水素濃度)…式(3−2)
Δイオン交換量はトップ面におけるイオン交換量から該ボトム面におけるイオン交換量を減じた値である。イオン交換量は前記式(2−1)により求めた。
図13に横軸にW1、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図13に示すグラフから、W1とΔ反り量には相関関係があることがわかった。表4および図13に示す結果から、W1を95以下とすることにより、Δ反り量を90μm以下とすることができることがわかった。
[実施例5]
トップ面とボトム面におけるイオン交換量差および化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差とΔ反り量
トップ面とボトム面におけるイオン交換量の差および化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差とΔ反り量には相関関係があると考えられることから、表1に示すデータから、トップ面とボトム面におけるイオン交換量差および化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差とΔ反り量の相関関係について検討した。
その結果を表5および図9に示す。図9は、横軸にトップ面とボトム面におけるイオン交換量の差を化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度の差で除した値、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフである。
また、水素濃度、イオン交換量およびにΔ反り量に相関関係があると考えられることから、これらを因子として、表1に示すデータを元に重回帰分析した結果、下記式(4−1)が求められた。
W2=12×Δ[(イオン交換量)/(H/Si)]+58…式(4−1)
式(4−1)において、Δ[(イオン交換量)/(H/Si)]は、トップ面におけるイオン交換量を規格化水素濃度H/Siで除した値からボトム面におけるイオン交換量を規格化水素濃度H/Siで除した値を減じた値である。イオン交換量は前記式(2−1)により求めた。
図14に横軸にW2、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図14に示すグラフから、W2とΔ反り量には相関関係があることがわかった。表5および図14に示す結果から、W2を105以下とすることにより、Δ反り量を100μm以下とすることができることがわかった。
[実施例6]
化学強化前のトップ面とボトム面におけるNaO濃度差およびSn濃度差とΔ反り量
化学強化前のトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度差およびSn濃度とΔ反り量には相関関係があると考えられることから、これらを因子として、表1に示すデータを元に重回帰分析した。その結果を表6、図10に示す。
図18に示すように、化学強化前のトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度差およびSn濃度差には下記式(5−1)で表される相関関係があることがわかった。
W3=382×[(ΔN−NaO)+20×(Sn濃度差)]…式(5−1)
式(5−1)において、ΔN−NaOは、トップ面における規格化NaO表面濃度からボトム面における規格化NaO表面濃度を減じた値を表面から100μm位置のNaO濃度で除した値の差であり、下式(5−2)により求められる。
ΔN−NaO=(化学強化前のトップ面における規格化NaO表面濃度)−(化学強化前のボトム面における規格化NaO表面濃度)…式(5−2)
図15に横軸にW3、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図15に示すグラフから、W3とΔ反り量には相関関係があることがわかった。表6および図15に示す結果から、W3を97以下とすることにより、Δ反り量を90μm以下とすることができることがわかった。
[実施例7]
イオン交換量(水素濃度、NaO濃度およびSn濃度)の差とΔ反り量
イオン交換量には水素濃度、NaO濃度およびSn濃度が関与していると考えられることから、表7に示すデータから相関式を求めた結果、下記式(6−1)が得られた。
イオン交換量2=0.17×(H/Si)+7.00×(N−NaO濃度)−0.048×(Sn濃度)…(6−1)
式(6−1)で求められるイオン交換量2のトップ面とボトム面との差Δイオン交換量2と化学強化後のガラスの反りには、トップ面及びボトム面におけるイオン交換量の差が影響していると考えられることから、式(6−2)で求められるイオン交換量2のトップ面とボトム面との差Δイオン交換量2とΔ反り量との相関関係を調べた。
Δイオン交換量2=(トップ面におけるΔイオン交換量2)−(ボトム面におけるΔイオン交換量2)…(6−2)
図16に横軸にトップ面およびボトム面におけるイオン交換量2の差(Δイオン交換量2)、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図16に示すグラフから、Δイオン交換量2とΔ反り量には相関関係があることがわかった。
表7および図16に示す結果から、式(6−1)において、Δイオン交換量2を0.30以下とすることにより、Δ反り量を90μm以下とすることができることがわかった。
[実施例8]
化学強化前のトップ面とボトム面におけるNaO濃度差とΔ反り量
化学強化前のソーダライムガラス板のトップ面とボトム面におけるNaO濃度差とΔ反り量とは相関関係があると考えられることから、表1に示すデータからトップ面の規格化NaO表面濃度からボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた差の2乗[ΔN−NaO(Top−Bottom)]を求め、Δ反り量との相関関係について検討した。
その結果を表8および図17に示す。表8中のたとえば「2.1.E−04」は2.1×10−4の意である。図17は、横軸に化学強化に供するトップ面の規格化NaO表面濃度からボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた差の2乗[ΔN−NaO(Top−Bottom)]、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフである。
図17に示すグラフから、化学強化前のソーダライムガラス板のトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度の差の二乗(ΔN−NaO)とΔ反り量とには下記式(7−1)で表される相関関係があることがわかった。
Δ反り量=35800×(ΔN−NaO)+80.9…式(7−1)
式(7−1)において(ΔN−NaO)は、化学強化に供するガラスのトップ面とボトム面における規格化NaO表面濃度を蛍光X線分析により測定した値の差の2乗であり、下式(7−2)により求めた。
(ΔN−NaO)=[(化学強化前のトップ面における規格化NaO表面濃度)−(化学強化前のボトム面における規格化NaO表面濃度)]…式(7−2)
表8および図17に示す結果から、式(7−1)において、(ΔN−NaO)を3.8×10−4以下とすることにより、Δ反り量を90μm以下とすることができることがわかった。
[実施例9]
化学強化前のトップ面とボトム面における水素濃度差、NaO濃度差およびSn濃度差とΔ反り量
化学強化前のソーダライムガラス板のトップ面とボトム面における水素濃度差、NaO濃度差およびSn濃度差とΔ反り量には下記式(8−1)で表される相関関係があることがわかった。
W4=22×(ΔH/Si)+22.9(ΔN−NaO)+23.5×(Sn濃度差)]…式(8−1)
図18に横軸にW4、縦軸にΔ反り量をプロットしたグラフを示す。図18に示すグラフから、W4とΔ反り量には相関関係があることがわかった。表9および図18に示す結果から、W4を95以下とすることにより、Δ反り量を90μm以下とすることができることがわかった。
[ガラス組成例]
本発明の化学強化用フロートガラスの質量百分率表示の組成例1、2 およびG1〜G22並びにそれらについて化学強化したときの圧縮応力CS(単位:MPa)および圧縮応力深さDOL(単位:μm)を表10〜12に示す。
表中のNaO/AlはNaOおよびAlの含有量の比、ROはMgO、CaO、SrOおよびBaOの含有量の合計、CaO+SrO+BaOはCaO、SrOおよびBaOの含有量の合計、強化温度(単位:℃)および強化時間(単位:h)は前記化学強化についてのもの、KNOは化学強化に用いられる溶融塩中のKNOの濃度(単位:質量%)、dolは前記dolである。なお、溶融塩中のKNOの濃度が100%でないものの残りの成分はNaNOである。

以上の開示に関しては、他の多くの特徴、変更及び改良が付与できることは、当業者にとって自明のことである。よって、このような他の特徴、変更及び改良は、本発明の一部に含まれるとみなされる。たとえば、本発明の化学強化用フロートガラスを化学強化前に研磨したり、Liイオン若しくはNaイオンまたはこれらの混合無機塩に浸漬または接触させたりなど反りを低減させる他のプロセスを施すことをしても良いことは言うまでもない。
1 溶融ガラス
5 溶融金属浴
10 ディスプレイ装置
15 筐体
20 表示パネル
30 カバーガラス

Claims (11)

  1. 成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度の2乗から該ボトム面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度の2乗を減じた差Δ(N−Na)が0.038以下である化学強化用フロートガラス。
    それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析により測定した値である。
  2. 成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるイオン交換量から該ボトム面におけるイオン交換量を減じた値であるΔイオン交換量が0.27以下である化学強化用フロートガラス。
    イオン交換量は下記式により求められる値である。
    イオン交換量1=7.22×(規格化NaO表面濃度)−0.027×(Sn濃度)
    ここで、
    規格化NaO表面濃度は、表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である。
    NaO濃度は、Na−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
    Sn濃度は、トップ面およびボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)である。
    単位面積当たりのSn付着量は、SnがSnOの形で存在するとしたときの1cmあたりのSnO換算付着質量である。
  3. 成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、下記式により求められるW1が95以下である化学強化用フロートガラス。
    W1=22×(ΔH/Si)+23×(Sn濃度差)+32×(Δイオン交換量)
    ここで、
    ΔH/Siは、トップ面における規格化水素濃度からボトム面における規格化水素濃度を減じた値である。
    Sn濃度差は、ボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)からトップ面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)を減じた差である。
    単位面積当たりのSn付着量は、SnがSnOの形で存在するとしたときの1cmあたりのSnO換算付着質量である。
    Δイオン交換量は、トップ面におけるイオン交換量から該ボトム面におけるイオン交換量を減じた値である。
    イオン交換量は下記式により求められる。
    イオン交換量1=7.22×(規格化NaO表面濃度)−0.027×(Sn濃度)
    規格化NaO表面濃度は、表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である。
    規格化水素濃度は、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度を深さ105〜110μmにおける平均水素濃度で除した値である。
    深さ0〜10μmにおける平均水素濃度および深さ105〜110μmにおける平均水素濃度は以下の分析条件下で測定した値である。
    (分析条件)
    測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
    一次イオン種:Cs
    一次加速電圧:5.0kV
    一次イオンカレント:1μA
    一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
    ラスターサイズ:200×200μm
    検出領域:40×40μm
    二次イオン極性:マイナス
    中和用の電子銃使用有
    NaO濃度は、Na−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
  4. 成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、下記式により求められるW2の絶対値が105以下である化学強化用フロートガラス。
    W2=12×Δ[(イオン交換量)/(H/Si)]+58
    ここで、
    Δ[(イオン交換量)/(H/Si)]は、トップ面におけるイオン交換量を同面における規格化水素濃度H/Siで除した値からボトム面におけるイオン交換量を同面における規格化水素濃度H/Siで除した値を減じた値である。
    イオン交換量は下記式により求められる。
    イオン交換量=7.22×(規格化NaO表面濃度)−0.027×(Sn濃度)
    ここで、規格化NaO表面濃度は、表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である。
    NaO濃度は、Na−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
    Sn濃度は、トップ面およびボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)である。
    単位面積当たりのSn付着量は、SnがSnOの形で存在するとしたときの1cmあたりのSnO換算付着質量である。
    規格化水素濃度は、深さ1〜10μmにおける平均水素濃度を深さ105〜110μmにおける平均水素濃度で除した値である。
    深さ1〜10μmにおける平均水素濃度および深さ105〜110μmにおける平均水素濃度は、以下の分析条件下で測定した値である。
    (分析条件)
    測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
    一次イオン種:Cs
    一次加速電圧:5.0kV
    一次イオンカレント:1μA
    一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
    ラスターサイズ:200×200μm
    検出領域:40×40μm
    二次イオン極性:マイナス
    中和用の電子銃使用有
  5. 成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、下記式により求められるW3が97以下である化学強化用フロートガラス。
    W3=382×[(ΔN−NaO)+20×(Sn濃度差)]
    ここで、
    ΔN−NaOは、トップ面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度からボトム面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた値である。
    NaO濃度は、Na−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
    Sn濃度差は、ボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)からトップ面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)を減じた差である。
    単位面積当たりのSn付着量は、SnがSnOの形で存在するとしたときの1cmあたりのSnO換算付着質量である。
  6. 成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるイオン交換量2から該ボトム面におけるイオン交換量2を減じた値が0.30以下である化学強化用フロートガラス。
    イオン交換量2は下記式(6−1)により求められる値である。
    イオン交換量2=0.17×(H/Si)+7.00×(N−NaO濃度)−0.048×(Sn濃度)…(6−1)
    式(6−1)において、H/Siは規格化水素濃度であり、規格化水素濃度とは深さ0〜10μmにおける平均水素濃度を深さ105〜110μmにおける平均水素濃度で除した値であり、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度および深さ105〜110μmにおける平均水素濃度は、以下の分析条件下で測定した値である。
    (分析条件)
    測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
    一次イオン種:Cs
    一次加速電圧:5.0kV
    一次イオンカレント:1μA
    一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
    ラスターサイズ:200×200μm
    検出領域:40×40μm
    二次イオン極性:マイナス
    中和用の電子銃使用有
    式(6−1)においてN−NaO濃度は表面NaO濃度を深さ100μm位置のNaO濃度で除した値である規格化NaO表面濃度である。ここで、NaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
    Sn濃度は、単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)であり、Sn付着量はSnがSnOの形で存在するとしたときのSnO換算付着質量である。
  7. 成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、該トップ面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度から該ボトム面におけるNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた差ΔN−NaOの2乗(ΔN−NaO)が3.8×10−4以下である化学強化用フロートガラス。
    それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析により測定した値である。
  8. 成形時に溶融金属と接するボトム面と、該ボトム面に対向するトップ面とを有する化学強化用フロートガラスであって、下記式(8−1)により求められるW4が95以下である化学強化用フロートガラス。
    W4=22×(ΔH/Si)+22.9(ΔN−NaO)+23.5×(Sn濃度差)]…式(8−1)
    式(8−1)において、ΔH/Siは、トップ面における規格化水素濃度からボトム面における規格化水素濃度を減じた値である。規格化水素濃度とは、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度を深さ105〜110μmにおける平均水素濃度で除した値であり、深さ0〜10μmにおける平均水素濃度および深さ105〜110μmにおける平均水素濃度は、以下の分析条件下で測定した値である。
    (分析条件)
    測定装置:四重極型質量分析器を有する二次イオン質量分析装置
    一次イオン種:Cs
    一次加速電圧:5.0kV
    一次イオンカレント:1μA
    一次イオン入射角(試料面垂直方向からの角度):60°
    ラスターサイズ:200×200μm
    検出領域:40×40μm
    二次イオン極性:マイナス
    中和用の電子銃使用有
    式(8−1)において、ΔN−NaOは、トップ面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるトップ面の規格化NaO表面濃度からボトム面における表面のNaO濃度をその深さ100μm位置のNaO濃度で除した値であるボトム面の規格化NaO表面濃度を減じた値である。ここで、それぞれのNaO濃度はNa−Kα線を用いる蛍光X線分析による測定値である。
    式(8−1)において、Sn濃度差は、ボトム面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)からトップ面単位面積当たりのSn付着量(単位:μg/cm)を減じた差であり、単位面積当たりのSn付着量はSnがSnOの形で存在するとしたときの1cmあたりのSnO換算付着質量である。
  9. 質量百分率表示で、SiOを60〜80%、Alを0〜8%、NaOを8〜22%、KOを0〜7%、MgOを0〜17%、CaOを0〜22%、SrOを0〜8%、BaOを0〜8%、ZrOを0〜5%含有し、NaO/Alが1.5以上6以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の化学強化用フロートガラス。
  10. 化学強化温度がT(単位:K)、化学強化時間がt(単位:時間)である化学強化に用いられ、且つSiOを含有し、SiO、Al、MgO、CaO、SrO、BaO、ZrO、NaOおよびKOの各質量百分率表示含有量を用いて次式で求められるdolが9以上30以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載の化学強化用フロートガラス。
    dol=−0.13×Al−1.88×MgO−2.41×CaO−1.85×SrO−1.35×BaO−1.59×ZrO+1.50×NaO+2.42×KO−129359/T+9.28×t0.5+182.88
  11. 圧縮応力深さが9μm以上30μm以下である化学強化ガラスを製造する方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスを化学強化することを特徴とする化学強化ガラスの製造方法。
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